結論
スターゼンは、国産と輸入の食肉を仕入れ、切って加工し、スーパーや外食に届ける食肉の大手である。売上の約 8 割は牛・豚・鶏の肉そのもので、残りがハンバーグやローストビーフなどの加工食品とハム・ソーセージだ。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。事業は堅く、10 年後も肉は食べられている。ただ、利益率は 2% 前後と薄く、相場が振れれば利益は簡単に削られる。薄利の会社に、高い倍率を払う理由は乏しい。
2026 年 3 月期の営業利益は 88 億円で、2 年連続でほぼ横ばいだった。経常利益が 110 億円と営業利益を上回るのは、三井物産などとの持分法の利益が 21 億円あるからだ。これは本業の稼ぎとは分けて考えたい。
弱みは財務にもある。豪州の肥育農場の買収と在庫の積み増しで、純負債は 258 億円から 415 億円に増えた。金利が上がる世界では、この利払いが利益を毎年少しずつ削る。
10 年後の中立は、営業利益 119 億円前後と見る。物価の分は伸びるが、人口が減るので肉の量は細る。強気なら 190 億円近く、慎重なら 80 億円台だ。分かれ目は、和牛輸出と豪州事業が稼ぐ力になるかどうかにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この事業は分かりやすい。人は 10 年後も肉を食べる。ただ、分かりやすいことと、持ち続けたいことは別だ。薄利で、仕入れ値が相場で動く事業は、オーナーの手元に残る利益が小さい。
株主が自由に使える利益は、見かけより少ない。設備と物流に毎年かなりの投資が要り、在庫を持つために運転資金も食う。営業利益の 9 割が純利益になるが、それは持分法の利益が支えている面が大きい。
堀は、あるが浅い。と畜場から店頭までの一貫した供給網は、一朝一夕には作れない。それでも卸の値段は小売が握る。10 年先も同じ利益率を保てるかは、見通しにくい。
資本の使い方には、加点も減点もある。DOE 3% を掲げて還元を厚くする姿勢は評価できる。一方、豪州の農場など、利益の出にくい上流への投資は、成果が見えるまで時間がかかる。
安全域は薄い。事業が堅い割に、上限は低い倍率で決まる。筆者は、今の値段はその上限にほぼ届いていると見ている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの本体は食肉で、2026 年 3 月期の売上は国産と輸入を合わせて 3,500 億円だった。全社の 8 割弱にあたる。生産者や海外の食肉加工会社 から肉を仕入れ、自社の工場でと畜、解体、小分けをして、スーパー、外食、給食に卸す。
利益の源は、仕入れと売りの値段の差と、手を加えた分の付加価値だ。ただ、肉は相場で値が動く。仕入れた肉を売るまでの間に相場が下がれば、利益が消える。この相場リスクを抱えながら薄い利ざやを積むのが、食肉卸の本質である。
2 つ目の柱が加工食品で、売上は 846 億円。ハンバーグ、ローストビーフ、ローストポークなどで、食肉より利益率が高い。自社の工場で作るので、安い肉を売るだけの商売より安定する。3 つ目のハム・ソーセージは 84 億円と小さく、価格改定で量が減り縮小が続いている。
海外は和牛の輸出が軸だ。国内で荷動きの鈍い高級部位を、51 の国と地域に売る。2025 年 4 月には豪州の肥育農場の親会社を買収し、豪州産の和牛(Wagyu)を自前で育てる段階に入った。
中計は 2031 年 3 月期に売上 5,500 億円、経常利益 160 億円、海外比率 15% を掲げる。5 年で 700 億円を投じ、その半分近くを海外に向ける。会社は国内の食肉大手の一角で、2016 年に三井物産が約 16% を出資し、持分法の関連会社にした。
物流の改革も進む。2026 年 8 月に東扇島(東京湾岸)の拠点が動き、保管能力は 2.5 倍になる。グループ全体の物流を一本化し、運賃と人件費の上昇を吸収するねらいだ。
優良さと弱いところ
この会社の堀は、規模と調達網の広さにある。国内の生産者と海外の食肉加工会社 の両方から肉を集め、国産牛から輸入豚まで、客の注文に合わせて品ぞろえできる。と畜場に併設した工場を持つので、内臓肉や豚脂などの副産物まで売り切れる点も強い。
ただ、堀は深くない。肉は同じ品質なら他社でも買える。スーパーは値段で卸を選び、卸同士の競争も激しい。日本ハムや伊藤ハム米久ホールディングスなど、資金力のある大手がいる。値決め力は弱いと見る。
資本の効率は並だ。ROE の過去 10 年の中央値は 10% で、営業利益率は 1.2% から 2.2% の狭い帯にとどまる。借金も使って回すので、純負債は純利益の 5 年分ほどある。数字は良いが、突き抜けてはいない。
強みは、相場の波を乗り切ってきた実績だ。2020 年 3 月期は純利益が 17 億円まで落ちたが、赤字には転じなかった。2002 年の赤字局面から学び、財務を保ってきた。三井物産の出資も、調達と信用の面で支えになる。
弱点は 3 つある。1 つ目は、利益率の薄さだ。2 つ目は、牛の国内生産が細り続け、国産牛の調達が難しくなること。3 つ目は、物流費と人件費の上昇で、薄い利ざやが削られることだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
舞台は国内の食肉流通だ。市場は大きいが、人口が減るので、肉を食べる量は 10 年で 1 割ほど細る。物価の分だけ金額は増えるが、量は伸びない。成熟した需要である。
中身は変わりつつある。牛肉から安い豚・鶏へ需要が移り、国産豚は相場高で、安い輸入豚肉が伸びた。国内の牛肉は、7 割近くを輸入が占める。国産牛は生産者の高齢化で供給が細り、高級部位は輸出に回る流れだ。
流通の担い手は多い。食肉問屋は全国に数千社あり、そこに日本ハム、伊藤ハム米久、プリマハムといった加工大手と、総合商社が入り乱れる。小売側ではイオンやセブン&アイが、価格の決定力を握る。卸は、規模と物流と加工力で生き残るしかない。
追い風が 2 つある。1 つは、外食と中食の肉需要が堅いことだ。もう 1 つは、日本産和牛の輸出で、アジアと欧州の需要が伸びている。ただ、輸出は為替と相手国の規制に左右される。
向かい風は、人件費と運賃の上昇だ。2024 年問題で運賃は上がり、卸の販管費を押し上げている。豚熱やアフリカ豚熱が国内に入れば、供給が乱れて相場が荒れる。10 年の焦点は、高付加価値の商品と海外で、国内の量の減りを補えるかにある。
資本政策と M&A
還元は厚くなる方向だ。従来の「安定配当」から、純資産に対する配当(DOE)3% を目安とする方針に変えた。2025 年 3 月期には前年から大きく増配し、機動的な自社株買いも検討している。中計では 5 年で 200 億円以上の還元を見込む。
一方、投資も重い。5 年で 700 億円を使い、海外に 260 億円を回す。営業の現金で賄う計画だが、豪州の農場の買収で純負債はすでに増えた。筆者は、還元と投資の両方を欲張る形に、資金の余裕は小さいと見る。
M&A は、海外の供給網の確保が軸だ。豪州の肥育農場の次は、シンガポールなど東南アジアの加工・流通会社への出資を狙う。買収の価格が高くなれば、資本の効率を落とす恐れがある。
政策保有株や遊休の不動産は、整理を進める方針だ。三井物産は約 16%(2016 年の出資時)を持つ関連会社の株主で、買収される可能性は低いが、少数株主にとっては安定株主の存在が意思決定を守る面もある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
和牛と加工食品の 2 つが、この会社を食肉卸から、付加価値の高い食品会社へ変えていく。日本産の和牛は、51 の国と地域に売れている。国内で売れにくい高級部位を海外で現金に変えられるのは、と畜から輸出まで自前で持つ強みだ。
豪州の肥育農場を手に入れたことで、和牛の供給を自社で握る。中計は海外比率を経常利益の 15% に高める計画で、実現すれば、国内の人口減を補ってなお余る。海外の利益率は国内の食肉より高い。
加工食品は、売上が 846 億円まで伸び、前期から 8% 増えた。ハンバーグやローストビーフは、働く世代の食卓で定着しており、価格改定も通りやすい。自社の工場で作るので、卸だけの会社より利益率が安定する。
財務の方針も株主に優しい。DOE 3% を掲げて配当を増やし、自社株買いも検討している。三井物産が関連会社として支える安定感があり、調達と信用の面でも強い。物流拠点の整備で販管費を抑えれば、営業利益率が 2.5% 前後まで上がる道が開ける。
慎重な見方
肉の卸は、利益率が 2% を超えることがない業界だ。過去 10 年で営業利益率は 1.2% から 2.2% の間にとどまる。仕入れ値は相場で決まり、売り値は小売が握る。この構造は 10 年たっても変わらない。
直近の純利益は 83 億円で、持分法の利益 21 億円が含まれる。持分法の利益は相手先次第で、スターゼンが自力で稼ぐ本業の利益ではない。2025 年 3 月期の 122 億円は、不動産売却などの一回きりの益が混じった数字だ。
財務は見た目より重い。豪州の農場の買収と在庫の積み増しで、純負債は 415 億円に増え、純利益の 5 年分に迫る。金利が上がれば、利払いが毎年 10 億円ほど利益を削る。
さらに、国産牛の調達は細り続ける。物流費と人件費は上がり、小売は値下げを迫る。海外の和牛輸出は規制と為替に左右され、豪州の農場は価格の読みが外れれば赤字を生む。中計の経常利益 160 億円は、現在の 110 億円から 5 割近い上積みで、実現する前提には慎重になるべきだ。
どちらに重みを置いたか
事業の質では、強気の言い分に分がある。と畜から輸出までの一貫した供給網と、加工食品の伸びは本物だ。一方で、値段と利益の質では、慎重な指摘の方が強い。利益率の薄さと、持分法に頼る利益の構成、純負債の厚みは、事実としてそこにある。
確率は、中立に最も厚く置き、やや悲観を厚めにした。海外と加工食品が育つ道は残しつつ、薄利の構造が崩れにくいと見るためだ。結果として、本質価値は今の値段をやや下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,345 円1,318 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 848 円476 億円)。 今の値に割り戻すと 1,728 円971 億円、今との差 +11.4%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,620 円2,595 億円 | 1,112 円625 億円 | +269.6% | +14.0% | 401 円225 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,429 円1,927 億円 | 958 円538 億円 | +182.8% | +11.0% | 877 円493 億円 |
| 中立 | 40% | 2,542 円1,428 億円 | 833 円468 億円 | +117.6% | +8.1% | 1,350 円758 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,163 円653 億円 | 755 円424 億円 | +23.6% | +2.1% | 441 円248 億円 |
| 悲観 | 10% | 519 円291 億円 | 716 円402 億円 | −20.4% | −2.3% | 123 円69 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,345 円1,318 億円 | 848 円476 億円 | +105.9% | +7.5% | 3,193 円1,794 億円 |
今の株価時価総額 1,551 円871 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 和牛と加工食品が育ち、海外が柱になる 利益 167 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 4,620 円2,595 億円
和牛の輸出先は今の 51 か国と地域から大きく広がり、豪州の農場が高級肉の安定した供給源になる。海外は経常利益の 2 割を占め、中計の 15% を上回る。国内でも、ハンバーグやローストビーフなどの加工食品が外食と中食に定着する。
食肉は取扱量がわずかに増え、単価は物価を上回って上がる。付加価値の高い商品の比率が高まるからだ。営業利益率は 2.6% まで上がり、営業利益は 190 億円近くに達する。
東扇島の拠点と業務のデジタル化が効き、運賃と人件費の上昇を吸収する。DOE 3% 超の配当と自社株買いで、還元も厚くなる。ここまで来れば、薄利の食肉卸ではなく、付加価値で稼ぐ食品会社として評価される。
- 食肉(国産・輸入):数量 30.5(取扱量(万トン・実質))× 価格 1,750(1 キロあたり平均単価(円・名目。相場と物価を含む))→ 売上 5,329 億円・営業利益 101 億円。取扱量 30.45 万トン、平均単価は今の 1.45 倍、営業利益率 1.90%
- 加工食品・ハム・ソーセージ・その他:数量 4.2(取扱量(万トン・実質))× 価格 4,214(1 キロあたり平均単価(円・名目))→ 売上 1,753 億円・営業利益 91 億円。取扱量 4.16 万トン、平均単価は今の 1.40 倍、営業利益率 5.2%
倍率:事業の純利益 167 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.31 倍、時価総額 2,557 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:7% 程度。海外の和牛と加工食品の両方が当たり、利益率も上がる上振れの姿である。10 年先まで外さずに積み上げる必要があるので、確率は低くとどめた。
やや楽観 20% 海外と加工が伸び、利益率が緩やかに上がる 利益 132 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,429 円1,927 億円
国内の食肉は量が横ばいで推移し、単価は物価の分に付加価値の分が乗る。和牛の輸出は着実に伸び、豪州の農場も軌道に乗る。加工食品は取扱量が 2 割近く増え、利益率の高い部分の比率が上がる。
営業利益率は 2.3% に上がり、営業利益は 150 億円ほどになる。会社の目標には少し届かない。
持分法の利益は 20 億円台を保ち、純利益は 130 億円ほどになる。純負債は利益で徐々に減る。還元は DOE 3% を守り、自社株買いも時々入る。三井物産との連携で調達力が上がる。
競合の日本ハムや伊藤ハム米久も輸出と加工に力を入れるが、スターゼンはと畜から物流まで握る強みで差を保つ。人口の減る国内でも、外食向けの肉の需要が堅く、卸の地位は揺らがない。
- 食肉(国産・輸入):数量 29.0(取扱量(万トン・実質))× 価格 1,690(1 キロあたり平均単価(円・名目。相場と物価を含む))→ 売上 4,901 億円・営業利益 81 億円。取扱量 29.0 万トン、平均単価は今の 1.40 倍、営業利益率 1.65%
- 加工食品・ハム・ソーセージ・その他:数量 3.8(取扱量(万トン・実質))× 価格 4,124(1 キロあたり平均単価(円・名目))→ 売上 1,559 億円・営業利益 73 億円。取扱量 3.78 万トン、平均単価は今の 1.37 倍、営業利益率 4.7%
倍率:事業の純利益 132 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.29 倍、時価総額 1,886 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:20% 程度。中計の経常利益 160 億円にほぼ届く、会社の計画に近い姿である。実現の確度は半分に届かないが、無理のない上振れとして厚めに置いた。
中立 40% 国内の量は細り、物価の分だけ伸びる 利益 104 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,542 円1,428 億円
人口が減るので、国内の食肉の量は 5% ほど細る。物価の分だけ単価は上がり、売上は 5,800 億円ほどに増える。海外の和牛と加工食品が伸びて、細る国内の量を埋める。
営業利益率は今と同じ 2.0% で、営業利益は 120 億円近くになる。物価の分だけ増えるにすぎない。中計の 160 億円には届かない。
純利益は 100 億円ほどで、ROE は 7% 台にとどまる。純資産が積み上がる分だけ、資本の効率は落ちる。会社は食肉大手の一角としての地位を保つが、突き抜けた成長は描けない。
競合の大手とは共存が続き、卸の値段は小売と相場が決める。三井物産との連携は続き、調達力は保たれる。豪州の農場は黒字になるが、会社全体を変えるほどの利益にはならない。物流の効率化が運賃の上昇を吸収し、利益率は今の水準にとどまる。
- 食肉(国産・輸入):数量 27.6(取扱量(万トン・実質))× 価格 1,617(1 キロあたり平均単価(円・名目。相場と物価を含む))→ 売上 4,455 億円・営業利益 65 億円。取扱量 27.55 万トン、平均単価は今の 1.34 倍、営業利益率 1.45%
- 加工食品・ハム・ソーセージ・その他:数量 3.4(取扱量(万トン・実質))× 価格 4,033(1 キロあたり平均単価(円・名目))→ 売上 1,355 億円・営業利益 57 億円。取扱量 3.36 万トン、平均単価は今の 1.34 倍、営業利益率 4.2%
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,386 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:40% 程度で最も厚く置いた。国内の人口が減る中、海外と加工食品が量の減りを補う程度で、利益率は今のままという姿である。
やや悲観 23% 相場と人件費に押され、利益率が薄くなる 利益 71 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,163 円653 億円
国内の食肉の量は 1 割細り、単価は物価ほどには上がらない。小売の値下げ要求が強まり、卸は人件費と運賃の上昇分を売り値に乗せきれない。国産牛の調達も細り、高級部位の輸出に頼る形が崩れる。
営業利益率は 1.6% に下がり、営業利益は 84 億円ほどと、今とほぼ同じ額にとどまる。物価で売上は増えても、利益は増えない。
豪州の農場は黒字化が遅れ、投資の回収が長引く。純利益は 70 億円ほどで、ROE は 5% 台に下がる。還元は DOE 3% を守るが、資本の効率は落ち、評価も下がる。
競合の大手は加工食品と輸出で先を行き、スターゼンは値段で勝負する局面が増える。会社は成長の物語を保てず、安定した食肉卸として、低めの倍率で評価される。
- 食肉(国産・輸入):数量 26.1(取扱量(万トン・実質))× 価格 1,569(1 キロあたり平均単価(円・名目。相場と物価を含む))→ 売上 4,095 億円・営業利益 47 億円。取扱量 26.1 万トン、平均単価は今の 1.30 倍、営業利益率 1.15%
- 加工食品・ハム・ソーセージ・その他:数量 3.0(取扱量(万トン・実質))× 価格 3,913(1 キロあたり平均単価(円・名目))→ 売上 1,190 億円・営業利益 40 億円。取扱量 3.04 万トン、平均単価は今の 1.30 倍、営業利益率 3.4%
倍率:純利益 71 億円・ROE 5.4% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=11.8 倍。利益率が下がり資本効率が落ちる筋書きなので、上限の約 72% の 8.5 倍に置いた。
確率:23% 程度。中立と同じくらい起きやすい姿として置いた。小売の値下げ圧力と物流費の上昇で、利益率が 1% 台前半へ下がる。10 年は何が起きてもおかしくない。
悲観 10% 構造的に負け、薄利のまま利益が縮む 利益 32 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 519 円291 億円
豚熱の国内上陸や、輸入先の規制で調達が乱れ、相場が荒れる。大手小売は自前の調達を広げ、卸を飛ばして加工メーカーと直接組む。取扱量は 2 割近く減り、単価も物価に追いつかない。
営業利益率は 0.9% まで落ち、営業利益は 40 億円ほどになる。過去の最悪期(2002 年の 0.6%)に近づく。
豪州の農場への投資は減損し、海外展開は縮む。純利益は 30 億円ほどで、ROE は 3% を割る。倒産の恐れは小さいが、資本の効率は大きく落ち、評価は稼ぐ力の水準まで下がる。
大手の加工メーカーや商社が調達を握り、スターゼンは物流と小分けの下請けに近づく。会社は存続するが、成長の物語は終わり、株主にとって長い低迷になる。
- 食肉(国産・輸入):数量 23.8(取扱量(万トン・実質))× 価格 1,473(1 キロあたり平均単価(円・名目。相場と物価を含む))→ 売上 3,503 億円・営業利益 25 億円。取扱量 23.78 万トン、平均単価は今の 1.22 倍、営業利益率 0.70%
- 加工食品・ハム・ソーセージ・その他:数量 2.6(取扱量(万トン・実質))× 価格 3,612(1 キロあたり平均単価(円・名目))→ 売上 925 億円・営業利益 20 億円。取扱量 2.56 万トン、平均単価は今の 1.20 倍、営業利益率 2.2%
倍率:純利益 32 億円・ROE 2.8% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=11.8 倍。構造的に負け、稼ぐ力が資本コストを大きく下回る筋書きで、やや悲観(8.5 倍)よりさらに低い、上限の約 64% の 7.5 倍に置いた。稼ぐ力(純利益÷k)で測り、帳簿の自己資本には掛けない。
確率:10% 程度。アフリカ豚熱の国内上陸、海外調達の混乱、小売の中抜きが重なり、卸の利ざやが構造的に消える姿。10 年のうちにこの形に落ちる可能性は 1 割ほどと見る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食肉(国産・輸入)
牛・豚・鶏の肉を仕入れ、と畜・解体・小分けをして、スーパー・外食・給食に卸す。和牛の輸出もここに入る。
| 数量取扱量(万トン・実質) | 価格1 キロあたり平均単価(円・名目。相場と物価を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.0 | 1,207 | 3,500 | 50 |
| 10 年後 中立 | 27.6 | 1,617 | 4,455 | 65 |
取り方:食肉の売上 3,500 億円を、牛・豚・鶏と国産・輸入が混ざった平均単価 1,207(円 ÷ キロ、推定)で割り、取扱量 29 万トンとした。取扱量は開示がなく推定。国内の食肉の消費は年 600 万トン台とみられ、シェアは 4〜5% ほど。セグメント利益は開示がなく、全社の営業利益 88 億円から、食肉 50 億円・加工等 40 億円・本社費など −2 億円と置いた推定。
加工食品・ハム・ソーセージ・その他
ハンバーグ、ローストビーフなどの加工食品と、ハム・ソーセージ、その他の事業。
| 数量取扱量(万トン・実質) | 価格1 キロあたり平均単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.2 | 3,010 | 963 | 40 |
| 10 年後 中立 | 3.4 | 4,033 | 1,355 | 57 |
取り方:加工食品 846 億円、ハム・ソーセージ 84 億円、その他 33 億円の合計 963 億円を、平均単価 3,010(円 ÷ キロ、推定)で割り、取扱量 3.2 万トンとした。数量・単価とも推定。加工食品は食肉より利益率が高いとみて、営業利益は約 4% の 40 億円と置いた。
リスクと懸念
相場の振れと在庫
肉は相場で値が動く。仕入れた肉を売るまでの間に相場が下がれば、薄い利ざやは簡単に消える。2026 年 3 月期は在庫と前渡金を積み増し、純負債も増えた。相場の急落と高値づかみが重なれば、利益が 1 期で大きく落ちる。
薄利と小売の値下げ圧力
営業利益率は過去 10 年 1.2% から 2.2% の帯にある。イオンなど大手小売は値段の決定力が強く、卸は人件費や運賃の上昇を売り値に乗せきれない。利益率が 0.5 ポイント落ちれば、営業利益は 4 分の 1 ほど減る。
利益の質(持分法と一回きりの益)
経常利益 110 億円のうち、持分法の利益は 21 億円を占める。持分法の利益は相手先の業績次第で、自力で稼ぐ本業の利益ではない。2025 年 3 月期の純利益 122 億円は、不動産売却などの一回きりの益を含み、繰り返せる額ではない。
純負債の増加と金利
豪州の肥育農場の買収と在庫の積み増しで、純負債は 258 億円から 415 億円に増えた。金利が上がる世界では、借り換えのたびに利払いが増え、10 年で税引き前の利益を 10 億円ほど削る。5 年で 700 億円の投資計画は、財務の余裕をさらに減らす。
海外投資の回収
中計は海外に 260 億円を回し、経常利益の 15% を目標にする。豪州の農場は、牛の価格と為替、相手国の規制に左右される。買収の価格が高ければ、資本の効率を落とす。輸出の失速や減損が出れば、成長の物語が崩れる。
家畜の疫病と調達
アフリカ豚熱や豚熱が国内に入れば、豚肉の供給が乱れ、相場が荒れる。輸入先の疫病や貿易規制でも、調達が止まりうる。国産牛は生産者の高齢化で供給が細り、国内の調達は年々難しくなっている。
物流費・人件費の上昇
2024 年問題で運賃は上がり、人件費も上昇が続く。冷凍・冷蔵の物流は費用が重い。東扇島の拠点の整備と業務のデジタル化で吸収する計画だが、効果が出る前に費用が先行する期が続く恐れがある。
今後の分かれ目
- アフリカ豚熱が国内で確認されたら
- 豚肉の相場と供給が乱れる。短期は在庫益が出ても、中期は取扱量の減少と費用の増加で悲観側に重みを移す。
- 営業利益率が 2.5% を超える年が出たら
- 加工食品と海外の比率が上がり、構造が変わった合図。やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- 豪州の農場や東南アジアの出資先で減損が出たら
- 海外投資の回収が遅れる合図。海外 15% の目標は見直しが要り、やや悲観に重みを移す。
- 自社株買いが DOE 3% の配当に上乗せで出たら
- 資本の使い方の規律が高まる合図。同じ利益でも株主に回る分が増え、評価は上向く。
- 純負債が 500 億円を超えたら
- 投資が先行して財務の余裕が薄れる合図。金利の上昇で利益が削られ、悲観側のリスクが高まる。
- 大手小売が食肉の直接調達を広げたら
- 卸の中抜きが進む合図。値決め力がさらに弱まり、薄利が構造として固まる。
見ておくもの
- 営業利益率(2% 前後)と、持分法を除いた経常利益
- 和牛の輸出量・輸出先と、豪州農場の収支
- 純負債の水準と、利払いの増減
- DOE 3% の配当と自社株買いの実績
- 国産豚・牛と輸入牛肉の相場、疫病の発生
倍率と資本コストの決め方
倍率は、純利益と資本コスト 7.5%(基本 7.5%、quality 合計 +1.0%)・長期成長 g 3.5% から求めた正当化 PER の上限(ROE が k 以下の筋書きは 1÷k=11.8 倍)に対し、利益の質に応じて 72〜99% に置いた。確率は今の株価で動かしていない。今の PER・PBR は倍率の根拠に使っていない。純負債 415 億円(時価総額の 48%)は借り換え 3.5% の利払いの変化を純利益に入れた。純現金の会社ではないので余った現金は立てない。新リース会計基準(2028/03 期から)で営業利益と純負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→15.31 倍・やや楽観 PER 11.8→14.29 倍・中立 PER 10→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。