結論
壱番屋は、カレー専門店「CoCo壱番屋」を国内に約 1,250 店、海外に約 220 店持つチェーンの本部会社だ。国内の店の 9 割ほどは、社員から独立したオーナーが営む加盟店である。本部は食材の販売と使用料で稼ぐ。店を自前で持たないので資本は軽く、純現金もある。
筆者の結論は、今の時価総額は割高、というものだ。直近の純利益は 26 億円にすぎず、コメ高と客数減で 2 年続けて減った。それでも時価総額は今期予想の純利益の 60 倍に乗っている。2026 年 8 月に親会社のハウス食品グループ本社が売却・非公開化の検討を認めた。この思惑が値段を支えているとみる。
ココイチがカレー専門店で圧倒的に強いことは動かない。この堀は 10 年先も残る。ただ、堀があっても利益が自動で増えるわけではない。コメと人件費は物価を上回って上がり、値上げのたびに客数が減っている。中立の筋書きでも、10 年後の営業利益は 69 億円、純利益は 42 億円にとどまる。今の利益が倍になる絵は描けない。
売却が決まれば、買い手が利益率を上げる余地はある。だが、その値上がりは、売り手に払う上乗せ(プレミアム)に溶けやすい。持ち続ける株主に残るのは、事業そのものの稼ぎだけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ココイチは「いい事業だが、今の値段は払えない」会社だ。
事業の質は高い。店が多く、のれん分けで加盟店が定着し、本部は店を持たずに食材と使用料を取る。投じるお金が少なくて済むので、ROE が 8〜12% の安定した稼ぎ方だ。10 年後も、カレーの専門店は残り、ココイチが先頭にいる。
問題は、オーナー利益(再投資を引いて株主のものになる利益)の水準だ。純利益は 26 億円しかない。配当に回しても、時価総額から見れば 1 年の利回りは 2% に届かない。コメと人件費の上昇を値上げで吸収する力は限られ、利益の伸びは物価並みが精いっぱいだとみる。
安全域も薄い。売却の思惑で値段が上がっているなら、思惑が消えたときに残るのは事業の稼ぎだけだ。その稼ぎで測ると、10 年たっても今の時価総額には届かない。筆者は、持ち続けたい事業だと考える一方、この値段では安全域がまったく取れないと見ている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 3 本ある。
第一は国内のココイチだ。約 1,250 店のうち直営は約 100 店で、残りは加盟店が営む。本部の収入は、加盟店に売るルウ・米・具材などの食材代と、売上に応じた使用料だ。店が増え、客が来るほど本部に入る。社員が独立してオーナーになる「ブルームシステム」が 1981 年からあり、加盟店の撤退が少ないとされる。国内の店舗売上は約 990 億円で、連結売上の 7 割強に当たる食材と使用料の源になっている。
第二は海外だ。218 店で、中国・台湾・韓国・タイ・米国・インドなどに広がる。ただ海外の店舗売上は 189 億円にとどまり、既存店は為替を除くと前年を下回った。中国は 10 年で店が半分に減った。いま伸びているのは北米だ。
第三は、大黒屋・たけ井・前田屋など、国内の買収・新規ブランドだ。約 30 店で売上は年 40 億円ほど。伸びは速いが、全社の 5% に満たない。
つまり、ココイチ 1 本足の会社だ。国内の店が減らず、客が来続けるかどうかが、そのまま本部の利益になる。子会社ブランドは、そのカレー依存を薄める試みと言える。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。
一つ目は、カレー専門店での圧倒的な店の数だ。2021 年の報道では、2 位以下の十数倍の店舗数を持つ。店が多いほど、食材の仕入れも広告も認知も有利になる。二つ目は、ブルームシステムだ。社員がオーナーに育つので、店長の質と加盟店の定着が保たれる。三つ目は、トッピングで客単価を上げられる商品設計で、値上げの効き目も大きい。
弱みも 3 つある。一つ目は、コメだ。1 皿に 250〜350 グラムのご飯を使い、コメ高が原価に直接響く。二つ目は、客数だ。直近は値上げで客単価が 4% 上がったが、客数は 3.5% 減った。値上げで稼ぐ段階は終わりに近い。三つ目は、海外だ。中国は不採算店の整理が続き、10 年かけた海外展開は利益になっていない。
資本の使い方は悪くない。加盟店方式で自前の店が少なく、純現金があり、配当性向はほぼ 100% だ。ただ ROE は 8% 前後で、資本コストをわずかに超える程度にとどまる。大型の買収には動かず、手堅い経営だが、成長への手は遅い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の外食市場は 24 兆円ほどで、人口減とともに数量は伸びない。伸びるのは物価の分だけだ。その中でカレー専門店は小さな市場で、ココイチが売上の大半を握ると筆者は推定している。競争相手は他のカレー店よりも、牛丼・ラーメン・ファミレス・コンビニのカレーと、家庭のレトルトだ。
いちばんの逆風はコスト高だ。コメの値段は 2025 年夏以降、前年の 5 割増しで推移した。最低賃金も上がり続ける。外食は値上げで吸収するしかないが、ココイチは値上げの後、客が離れた。
海外は成長の期待と不採算が同居する。中国は店が 10 年で半減し、台湾やタイでも退店が続く。一方、北米は店を増やしており、インドにも進出した。会社の計画は 2026 年 4 月に引き下げられ、グループ店舗の目標は 1,660 店から 1,545 店になった。
再編の話もある。2026 年 8 月に親会社が売却を含む選択肢の検討を認め、報道では複数のファンドが関心を示した。親子上場の解消は、少数株主にとって値段が動く材料になる。ただ、事業の稼ぐ力が変わるわけではない。
資本政策と M&A
親会社のハウス食品グループ本社が 51% を持つ。2015 年に TOB(株式の公開買い付け)で出資を 5 割超に引き上げ、300 億円ほどを投じた。2026 年 8 月 31 日には、非公開化を含む選択肢を検討していると開示したが、具体的な決定はないとしている。
還元は配当が中心で、配当性向はほぼ 100% に達する。自社株買いは目立った実績がない。純現金は 128 億円あるが、時価総額の 1 割に届かず、事業の運転資金と加盟店向けの与信にも要るため、余った現金としては分けない。
買収はラーメンなど新ブランドの小さなものにとどまる。売却が実現すれば、ファンドは現金と借入を使って買うだろう。そのとき、少数株主が受け取るのは TOB の上乗せ価格であり、事業の本質価値とは別の話だ。原材料の供給は資本関係が変わっても続くとみられる。
還元の置き方:配当性向はほぼ100%が実績で、10年の中立は純利益の合計の約96%、方針の内側。
点検済み(2026-10-19):余った現金(運転資金で分けない)、株数、親会社の非公開化を入れていないことを確かめた。割高に見せる見落としは見つからなかった。
株主優待(現物の還元):年およそ4億円を会社の費用ベースで見込む(食事券(100株で年数千円)×優待株主約4万人×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ココイチは国内カレー専門店で他を寄せつけず、店の数がそのまま食材の調達力と認知になっている。コメ高は 2026 年で山を越える。コメの値段が落ち着けば、国内の営業利益率は 11% 台を回復できる。会社も下期に原価が下がる前提を置く。
客数減は値上げの反動で、次の新商品とトッピングで取り戻せる。国内の店は 1,250 店で止まらず、住宅地・商業施設の空白地に出せる。海外は中国の不採算店の整理が終われば、北米とインドで店を増やせる。海外が 330 店・営業利益率 9% なら、全社の営業利益は 100 億円を超える。
さらに、親会社の売却で経営が変わる。ファンドは食材の調達、店舗オペレーション、海外の選別を徹底的に見直すだろう。非公開化の下で、利益率は一段上がる。ラーメンなどの新ブランドが育てば、カレー依存も薄まる。ココイチは、資本を軽く使って安定して稼ぐ、日本でも数少ない外食だ。
国内では、1 皿に使うご飯の量やトッピングの設計を見直せば、コメ高の影響をやわらげる余地がある。海外では、中国のような小型の市場に頼らず、単価の高い北米に店を集めれば、1 店当たりの利益も上がる。
慎重な見方
利益は 2 年続けて減った。会社は営業利益の目標を、70 億円から 50 億円に下げた。コメの値段は元に戻らない可能性が高い。農業の担い手不足と買い支えで、高止まりが構造になると見る。
値上げをすれば客が減る。直近は客単価 4% 増に対して客数は 3.5% 減だった。国内の成熟した外食が、物価を上回る値上げを何度も通すことはできない。最低賃金の上昇も続く。加盟店の利益が削られれば、オーナーのなり手と店の数に響く。実際、国内の店は新規 13 に対し退店 10 で、ほぼ横ばいに近い。
海外は 10 年かけても儲かっていない。中国は半減し、既存店は為替を除くと前年割れだ。
売却の話は、少数株主には罠にもなる。ファンドが買うなら、現金 128 億円と借入を使い、利益率を絞って最後に高く売る。買収が流れれば、思惑で上がった値段は戻る。親会社が 51% を持つので、少数株主に決定権はない。成長が弱いのに、時価総額は予想純利益の 60 倍だ。10 年たっても、この値段には届かない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、堀と、コメ高からの回復と、経営が変わる期待に立つ。慎重な見方は、利益が 10 年かけても物価並みにしか伸びず、売却の上乗せが事業の価値に入らない点を突く。どちらも一理あるが、強いのは慎重な見方だと筆者は判断した。
理由は 3 つある。第一に、客数が値上げに負け続けており、利益率が元の 10% 台に戻る筋が見えない。第二に、海外は 10 年かけても利益に貢献していない。第三に、強気の最大の材料である売却は、持ち続ける株主の取り分を増やさない。確率は、中立に 33%、やや悲観に 25%、悲観に 12% を置き、悲観側へ寄せた。ただ、堀は本物なので、悲観でも事業が消えるほどにはしていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 421 円672 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 211 円336 億円)。 今の値に割り戻すと 358 円571 億円、今との差 −66.2%、 期待の年率 −5.0%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 893 円1,426 億円 | 308 円491 億円 | +13.6% | +1.3% | 96 円153 億円 |
| やや楽観 | 22% | 667 円1,065 億円 | 266 円425 億円 | −11.7% | −1.2% | 205 円328 億円 |
| 中立 | 33% | 464 円741 億円 | 227 円363 億円 | −34.6% | −4.2% | 228 円364 億円 |
| やや悲観 | 25% | 161 円257 億円 | 174 円277 億円 | −68.4% | −10.9% | 84 円134 億円 |
| 悲観 | 12% | 79 円126 億円 | 75 円120 億円 | −85.4% | −17.5% | 18 円30 億円 |
| 加重平均 | 100% | 421 円672 億円 | 211 円336 億円 | −40.2% | −5.0% | 632 円1,009 億円 |
今の株価時価総額 1,057 円1,687 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% コメ高が峠を越え、海外も利益の柱になる 利益 69 億円 · PER 20.7 倍 · 株価時価総額 893 円1,426 億円
コメが落ち着き、値上げした客も戻る。国内の営業利益率は 11% 台へ回復し、店は 1,300 店まで増える。海外は中国の整理を終え、北米とインドで 330 店に伸び、営業利益率 9% の黒字事業になる。国内の新ブランドも 90 店に広がり、カレー依存が薄まる。
親会社の売却で経営が変わり、食材の調達、店舗運営、海外の選別が徹底される。10 年後の営業利益は 110 億円、純利益は 69 億円で、今の 2.6 倍だ。ここまで揃うのは、コスト高と客数減の両方が反転する場合に限られる。
国内の客数は値上げの後も戻り、トッピングと新商品で 1 皿当たりの単価が伸びる。加盟店オーナーの利益が厚くなり、店の撤退は減る。ブルームシステムの強みが利益に効く形だ。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に40億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内ココイチ(食材販売・使用料・直営):数量 1,300(国内ココイチの店舗数(店))× 価格 0.53(1 店当たりの本部の連結売上(億円))→ 売上 693 億円・営業利益 80 億円。営業利益率 11.5%
- 海外(中国・北米・アジアなど):数量 330(海外の店舗数(店))× 価格 0.81(1 店当たりの本部の連結売上(億円))→ 売上 266 億円・営業利益 24 億円。営業利益率 9%
- 国内の買収・新規ブランド:数量 90.0(ブランドの店舗数(店))× 価格 1.81(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 163 億円・営業利益 15 億円。営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 69 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.7 倍。全体の PER 20.67 倍、時価総額 1,426 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コメ高の反転、客数の回復、海外の黒字化、経営の改善が 10 年間そろって進む必要があり、重なる確率は低い。
やや楽観 22% 国内の利益率が戻り、海外が黒字で伸びる 利益 55 億円 · PER 19.4 倍 · 株価時価総額 667 円1,065 億円
コメが徐々に落ち着き、客数の減少も止まる。国内の営業利益率は 10.5% まで戻る。店は 1,250 店でほぼ横ばいだが、1 店当たりの売上は物価と新商品で 1.35 倍になる。海外は北米を中心に 300 店へ増え、営業利益率は 7.5% の黒字になる。新ブランドも 75 店に増える。
営業利益は 88 億円、純利益は 55 億円。今の 2 倍強に当たる。経営の改善が一部は効き、堀が利益に素直に出るケースだ。
親会社の売却先が経営に入る場合も、食材の調達と店の運営の改善が一部は進む。だが、コスト高を完全に取り戻すほどではなく、国内の営業利益率は昔の 10% 台の上のほうには届かない。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に40億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内ココイチ(食材販売・使用料・直営):数量 1,250(国内ココイチの店舗数(店))× 価格 0.52(1 店当たりの本部の連結売上(億円))→ 売上 652 億円・営業利益 68 億円。営業利益率 10.5%
- 海外(中国・北米・アジアなど):数量 300(海外の店舗数(店))× 価格 0.78(1 店当たりの本部の連結売上(億円))→ 売上 233 億円・営業利益 17 億円。営業利益率 7.5%
- 国内の買収・新規ブランド:数量 75.0(ブランドの店舗数(店))× 価格 1.76(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 132 億円・営業利益 11 億円。営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.4 倍。全体の PER 19.37 倍、時価総額 1,065 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コメが落ち着き、国内の利益率が戻る現実的な上振れ。会社の予想も下期の改善を見込む。
中立 33% 堀は残るが、利益は物価並みに伸びる 利益 42 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 464 円741 億円
10 年後も、ココイチは国内カレー専門店の首位にいる。店は 1,200 店と少し減るが、値上げは物価に沿って通り、1 店当たりの売上は 1.32 倍になる。コメと人件費は物価を上回って上がり、国内の営業利益率は 9.5% と今より低い水準で落ち着く。
海外は 270 店で、北米などが育つ一方、中国の縮小が続き、営業利益率は 6% にとどまる。新ブランドは 60 店になる。営業利益は 69 億円、純利益は 42 億円。堀は守られるが、成長は物価の範囲だ。売却があっても、事業の稼ぐ力は変わらない。
親会社の売却や非公開化が起きても、10 年後の事業の姿は大きくは変わらない。売却で上がるのは買い手が払う価格であり、事業の稼ぐ力とは別の話だ。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に40億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内ココイチ(食材販売・使用料・直営):数量 1,200(国内ココイチの店舗数(店))× 価格 0.51(1 店当たりの本部の連結売上(億円))→ 売上 612 億円・営業利益 58 億円。営業利益率 9.5%
- 海外(中国・北米・アジアなど):数量 270(海外の店舗数(店))× 価格 0.75(1 店当たりの本部の連結売上(億円))→ 売上 201 億円・営業利益 12 億円。営業利益率 6%
- 国内の買収・新規ブランド:数量 60.0(ブランドの店舗数(店))× 価格 1.71(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 102 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.64 倍、時価総額 741 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:堀は残るが、コメと人件費で利益は物価並みにしか伸びない中心の筋書き。同じ領域の会社と同じ厚みの確率を置いた。
やや悲観 25% コスト高と客離れで利益が足踏みする 利益 26 億円 · PER 9.9 倍 · 株価時価総額 161 円257 億円
コメは高止まりし、値上げすると客が減る状態が続く。国内の営業利益率は 7.5% まで下がる。店は 1,150 店に減り、1 店当たりの売上は 1.26 倍にとどまる。海外は不採算店の整理が長引き、230 店で営業利益率は 3% にすぎない。
新ブランドも 45 店で伸び悩み、営業利益は 42 億円まで下がる。純利益は 26 億円で、今とほぼ同じだ。堀は残るが、コスト高を価格に乗せきれず、10 年かけても利益が増えない。親会社の売却が流れれば、少数株主に支えは残らない。
人件費は毎年上がり、加盟店オーナーの利益が薄まる。新規オーナーのなり手が減り、出店が止まる。ココイチの堀は店の数だが、その店が増えなくなる。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に30億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内ココイチ(食材販売・使用料・直営):数量 1,150(国内ココイチの店舗数(店))× 価格 0.49(1 店当たりの本部の連結売上(億円))→ 売上 560 億円・営業利益 42 億円。営業利益率 7.5%
- 海外(中国・北米・アジアなど):数量 230(海外の店舗数(店))× 価格 0.69(1 店当たりの本部の連結売上(億円))→ 売上 158 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 3%
- 国内の買収・新規ブランド:数量 45.0(ブランドの店舗数(店))× 価格 1.58(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 71 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 4%
倍率:ROE 7.7%(純利益 26 億円 ÷ 自己資本 336 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.25% + 残る割合 1/2 ×(7.7 − 7.3)= 7.5%、長期の成長率 g 3.8% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 14.1 倍。利益が足踏みして堀の持ちも弱く見るので、上限の 7.0 割の PER に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.9 倍・時価総額 257 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:コメ高の定着と客離れで、10 年たっても利益が増えない筋。直近の 2 年の減益と客数減から、慎重に厚めに置いた。
悲観 12% 客が離れ、加盟店網がやせて優良さを失う 利益 6 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 79 円126 億円
コメと人件費の上昇を価格に転嫁できず、客が離れる。国内の営業利益率は 4% まで落ち、加盟店オーナーの利益が削られて、退出が増える。店は 1,050 店に減り、ブルームシステムの強みが崩れる。海外は 180 店まで縮み、赤字が続く。
営業利益は 9 億円、純利益は 6 億円になる。事業は消えないが、もう優良な外食ではない。このときの価値は、稼ぐ力ではなく、純現金 128 億円という床で測る。売却の話はまとまらず、思惑の値段は消える。
海外の不採算が重荷になり、新ブランドも黒字化に届かない。国内の店舗網が縮み、食材の販売も細る。ココイチ 1 本足の弱みが、ここで一気に表に出る。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に20億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内ココイチ(食材販売・使用料・直営):数量 1,050(国内ココイチの店舗数(店))× 価格 0.46(1 店当たりの本部の連結売上(億円))→ 売上 487 億円・営業利益 19 億円。営業利益率 4%
- 海外(中国・北米・アジアなど):数量 180(海外の店舗数(店))× 価格 0.63(1 店当たりの本部の連結売上(億円))→ 売上 113 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率 −2%
- 国内の買収・新規ブランド:数量 30.0(ブランドの店舗数(店))× 価格 1.44(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0%
倍率:ROE 約 2% と谷の利益で、稼ぐ力(事業の純利益 6 億円 ÷ k 7.25% = 88 億円)は小さい。そこで、純現金 128 億円という床を価値とみて、今の自己資本 323 億円に対する PBR 0.39 倍で置いた。店は加盟店が持つので処分できる資産は小さく、床は純現金だけで立てた。
確率:客数減と加盟店の退出が重なり、堀が崩れる複合の筋。事業は消えないが、ココイチ 1 本足の会社で、同じ領域の悲観より少し厚く置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内ココイチ(食材販売・使用料・直営)
国内のカレー専門店「CoCo壱番屋」の本部収益。加盟店への食材販売と使用料、約 100 店の直営店の売上からなる。
| 数量国内ココイチの店舗数(店) | 価格1 店当たりの本部の連結売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,250 | 0.39 | 483 | 48 |
| 10 年後 中立 | 1,200 | 0.51 | 612 | 58 |
取り方:国内の店舗数約 1,285 店から子会社ブランド分の約 30 店を引いて 1,250 店とした。連結売上 655 億円から海外と子会社ブランドの推定分を引き、国内ココイチを約 483 億円と推定し、店数で割って 1 店当たりを逆算した。営業利益は海外・子会社ブランド・本社費の推定を引いた残りで約 48 億円(営業利益率約 10%)。1 店当たり売上は、物価 3% の値上げが通る一方、客数が年に 0.3% ほど減ることを織り込み、中立で 10 年 1.32 倍に置いた。
海外(中国・北米・アジアなど)
中国・台湾・韓国・タイ・米国・インドなどのココイチ。直営と現地法人への食材販売、フランチャイズ収入からなる。
| 数量海外の店舗数(店) | 価格1 店当たりの本部の連結売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 218 | 0.60 | 130 | 4 |
| 10 年後 中立 | 270 | 0.75 | 201 | 12 |
取り方:海外の店舗数は 2026 年 2 月末で 218 店。海外の店舗売上 189 億円のうち、本部の連結売上になる分を約 130 億円と推定した。営業利益は、不採算店の整理を進める中で小さな黒字(営業利益率約 3%)とみた。1 店当たり売上は、北米など単価の高い国の比率が上がる一方、為替は 150 円で動かさず、小型・低単価の国の店が混ざるため、中立で 10 年 1.25 倍と物価より低く置いた。
国内の買収・新規ブランド
大黒屋・たけ井・前田屋など、ココイチ以外の国内ブランド。成長は速いが規模は小さい。
| 数量ブランドの店舗数(店) | 価格1 店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 32.0 | 1.31 | 42 | 2 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 1.71 | 102 | 7 |
取り方:2026 年 2 月期の 3 四半期累計で大黒屋 13.8 億円・たけ井 10.0 億円・前田屋 7.7 億円(店舗は 11・14・7 店)。年換算で売上約 42 億円、約 32 店で割って 1 店当たりを求めた。出店の初期で営業利益率は 5% 程度とみた。1 店当たり売上は、物価 3% の値上げが通る前提で、中立で 10 年 1.30 倍に置いた。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
リスクと懸念
コメ高の定着
カレーは 1 皿に 250〜350 グラムのご飯を使う。コメが前年比 5 割高の水準で定着すれば、年 10 億円規模の原価増が続く。値上げで返すと客数が減る。国内の営業利益率を 10 年にわたり押し下げる最大の要因だ。
客数の減少
直近の国内既存店は客単価が 4% 増える一方、客数は 3.5% 減った。値上げで稼ぐ段階が終わり、客数が戻らなければ、物価並みの成長も保てない。加盟店の利益が薄れ、店の数にも響く。
親会社の売却・非公開化
ハウス食品グループ本社は 51% を持つ。売却や非公開化が決まっても、少数株主は上乗せ価格を受け取るだけで、決定権はない。交渉が流れれば、思惑で上がった値段が戻る。買い手が借入で買えば、現金が使われ、配当が細る恐れもある。
海外の不採算
海外は 218 店でも店舗売上は 189 億円にとどまり、中国は 10 年で店が半減した。既存店は為替を除くと前年割れだ。北米とインドの拡大が採算に乗らないと、10 年かけた海外展開が利益に貢献しないまま終わる。
加盟店オーナーの確保
国内の店の約 9 割は加盟店だ。人件費とコメの上昇でオーナーの利益が削られると、のなり手と既存オーナーの継続が細り、閉店が増える。ブルームシステムの強みが崩れる筋だ。
ココイチ 1 本足
国内売上の大半がカレー 1 業態だ。新ブランドは全社売上の 5% に満たず、まだ収益を支えない。カレーの消費の流行や競合の新業態に押されると、代わりの稼ぎがない。
今後の分かれ目
- コメの値段が下がり、国内の営業利益率が 11% 台へ戻ったら
- 強気の筋書きの確率を上げてよい。コメ高が山を越えたとみる。
- 値上げをしても国内の客数が前年を上回るようになったら
- 客数の底打ちを意味する。中立から、やや楽観へ確率を寄せる。
- 親会社の売却先が決まり、ファンドが経営に入ったら
- 利益率の改善余地は広がるが、上乗せ価格が先に払われる。持ち続ける株主の本質価値は、中身の改善の確認が先だ。
- 海外の営業利益が黒字で安定し、北米の店が増え続けたら
- 楽観の筋書きの確率を上げる。海外が 10 年で利益の柱になる筋だ。
- 国内の店が純減に転じ、加盟店オーナーの退出が増えたら
- 悲観側の確率を上げる。堀であるはずの加盟店網が崩れる合図だ。
- 買い手が借入で買い、配当を絞るなら
- 少数株主に残る還元が細る。還元を重く見る筋書きを下げる。
見ておくもの
- 国内既存店の客単価と客数の月次(客数が前年を上回るか)
- コメの仕入れ価格と原価率の推移
- 国内の店舗数の純増減と加盟店の撤退
- 海外の既存店売上、北米・インドの出店と営業利益
- 親会社の売却先・買付価格・非公開化の発表
倍率と資本コストの決め方
国内ココイチ・海外・国内新ブランドの 3 区分で、店舗数(実質)× 1 店当たり売上(名目)を積み上げた。自己資本は今の値に純利益を足し、還元を引いて流し、ROE は結果として出た。倍率は k 7.25%・g 3.8% の正当化 PER を出し、上限の 7〜8.5 割に置いた。売却の報道や TOB の上乗せは筋書きに入れず、今の株価や市場の倍率にも寄せていない。悲観は市場の倍率や過去の谷の PBR でなく、純現金 128 億円という床で置いた。リースは直営約 100 店だけで小さく、純現金を弱くは書かなかった。新リース会計基準で BS の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.5→20.67 倍・やや楽観 PER 15.4→19.37 倍・中立 PER 13.7→17.64 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality −0.2% を足した 7.3%。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。売却・非公開化の動きや親会社の支配という個別の事情は、k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.30% → 7.25%。