結論
日本グランデは札幌を地盤に分譲マンションを開発し、高齢者向け住宅の賃貸とマンション管理も営む小規模な不動産会社だ。筆者の結論は「やや割高」である。保有する賃貸不動産には相応の実物資産価値があるが、分譲の稼ぐ力が弱まり、借入金と本社費を差し引いた株主の取り分は厚くない。
会社を理解する鍵は、売上高の大きい分譲よりも、毎年賃料を生む高齢者住宅にある。2026年3月期の分譲事業は28.6億円の売上に対しセグメント利益が約1.0億円だった。一方、賃貸事業は売上6.1億円から約2.0億円のセグメント利益を生んでいる。分譲が不振でも会社全体が直ちに行き詰まらないのは、この賃貸収入があるためだ。
ただし、賃貸不動産の簿価は約28.9億円、開示時価は約32.1億円であるものの、そこには多額の借入が対応している。2026年3月期末の純有利子負債は約12.9億円であり、賃貸資産の時価をそのまま株主価値に足すことはできない。実際の現金創出力、老朽化した建物の更新費、返済条件を一体で見る必要がある。
札幌市の新築分譲マンション供給は減少しており、2025年には調査によって約800〜1,200戸という低水準だった。金利が上がる世界では、今までのように建築費を販売価格に転嫁し続けることも難しい。10年後の中立では、分譲戸数が減る一方、賃貸と管理の積み重ねによって営業利益は現在を少し上回ると考える。
5つの筋書きを資本コスト9.0%で現在価値に戻すと、推定本質価値は約7.54億円となる。基準時価総額約9.20億円に対して約18%低い。帳簿上の資産価値には魅力があるものの、少数株主がその価値を現金として受け取れる経路はまだ弱い。価値がある不動産を持っていることと、その株式を長く保有して十分な利益を得られることは別である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本グランデを一つの不動産会社としてまとめて評価するより、分譲事業と賃貸不動産を分けて考える方が本質に近い。分譲では土地を仕入れて建築費を負担し、買い手に引き渡して初めて利益が確定する。完成在庫が売れなければ借入利息が積み上がる。この事業に継続的な超過利益を生む強い堀は見当たらない。
他方、札幌市内に所有する高齢者住宅は実物資産だ。入居者から毎月賃料を受け取り、施設の運営を続けられる限り、分譲が不振でも一定の現金を生む。2026年3月期の賃貸等不動産は開示時価32.1億円に対し簿価28.9億円で、税引き後の含み価値は概算2.3億円となる。しかし、その利益を現在の賃料収益にも将来の資産売却価値にも二重に数えてはならない。保有を続けるなら、必要な修繕と借入返済を控除したオーナー利益が価値の基礎になる。
経営者には用地を厳選し、分譲の資本効率が資本コストを下回るなら、無理に成長を追わない選択が求められる。自己資本を積み上げるだけではROEがさらに低下し、株主価値は増えない。保有不動産を整理して負債を減らすことや、利益を生む賃貸資産に資本を集中することも重要な選択肢になる。
長く保有する株主にとって難しいのは、資産価値と株主への還元が一致しない点である。帳簿上の自己資本が時価総額を大きく上回っていても、売却、増配、自社株買いといった形でその価値が株主に返らなければ、投資の成果は十分にならない。支配株主の意向に左右される部分も大きい。
筆者は高齢者住宅の賃貸収益を評価するが、それだけで10年先の高い成長を買うことはできないと考える。分譲市場の縮小、金利、将来の修繕費、資本配分の不確実性を考えると、今の時価総額に対して十分な安全域があるとは言えない。
何で稼ぐ会社か
日本グランデの事業は、不動産分譲、不動産賃貸、不動産関連の3つに分かれる。連結子会社のグランホームが戸建分譲を担い、グランコミュニティがマンション管理と高齢者住宅の運営を支えている。自社で企画、設計、施工監理、販売、完成後の管理まで関与することが事業の特徴であり、建設工事そのものは外注する。
主力商品は「グランファーレ」シリーズの分譲マンションだ。2026年3月期には新築43戸と繰越在庫18戸の合計61戸を引き渡し、マンション売上は約21.0億円となった。同じ期には「ラ・レジーナ」シリーズの戸建住宅4戸を販売した。開発では土地を仕入れて建物を建て、完成物件を顧客に引き渡した時に利益を計上するため、竣工時期や販売速度で年ごとの業績が大きく変わる。
その他の分譲収入には、用地売却、買取再販、仲介、リフォームなどが含まれる。2026年3月期のその他売上は5.6億円だったが、そのうち4.3億円はジン不動産向けの売却に対応する大口取引と考えられる。こうした案件は翌年も同額が繰り返される収益ではない。長期の稼ぐ力を測る際には、通常のマンション引渡しと大口の土地処分を区別しなければならない。
不動産賃貸では、札幌市内のサービス付き高齢者向け住宅「グランウエルネス」6施設を中心に、一般の賃貸不動産も所有する。入居者からの家賃に加え、見守りや生活支援などのサービス収入を得る。2026年3月期の賃貸関連売上は6.15億円で、分譲より規模は小さいものの利益率が高い。マンション管理では、管理組合からの継続的な管理委託料や保険代理店収入などを得ている。
この構成には循環と蓄積の両方がある。新築分譲は用地と住宅ローン市場に左右されるが、一度分譲したマンションから管理契約が続けば比較的安定した収入になる。高齢者住宅にも継続収入がある。ただし施設の新設には土地と建物への大きな投資が必要であり、管理契約の増加だけで分譲の資金需要を賄えるほどの規模にはまだ達していない。
優良さと弱いところ
競争上の強みは、札幌の住宅事情に合わせた商品企画と、完成後の管理まで手掛ける地域密着の事業体制にある。「グランファーレ」には炭を利用した換気システムや自由設計、共用設備などの特徴があり、住宅を単なる箱として売る同業との差別化を図っている。寒冷地の断熱、換気、維持管理に関する経験も蓄積している。しかし、これらは他社が追随できないほど強い参入障壁ではない。
値決め力は限定的だ。建築費が上がれば販売価格も上げなければならないが、購入者は住宅ローンの毎月返済額で判断する。価格が所得に対して高くなりすぎれば、立地を変えるか、中古住宅を選ぶか、購入そのものを延期する。過去の販売単価上昇を、そのまま同社の値上げ力の証拠とは評価できない。クリーンリバーのような地元大手や、明和地所など資本力のある競合と土地の取得でも争う。
賃貸事業の品質は分譲より高い。立地のよいサービス付き高齢者向け住宅は入居者との長期的な関係を作りやすく、生活支援と建物管理を組み合わせることで一般賃貸とは異なるサービスを提供できる。高齢者の生活を支える現場はAIだけで置き換えにくい。ただし運営人員を要し、建物は古くなり、修繕や設備更新の支出が必要になるため、見た目の賃貸利益をすべて自由に配れるわけではない。
資本効率の実績には厳しい目を向けたい。過去8年のROE中央値は約7.1%だが、直近の2026年3月期は4.3%にとどまり、2025年3月期には赤字を計上した。現在の借入と販売リスクを考えた資本コストを安定的に超えているとは言い難い。分譲用地への再投資が株主価値を増やすには、単に売上高を戻すだけでなく、土地の仕入れから販売までの利回りを改善する必要がある。
2026年3月期末の賃貸等不動産には、簿価を上回る評価額が開示されている。この含み価値は株主にとって支えになるが、評価は主として固定資産税評価額に基づく会社算定であり、現在の高金利環境で直ちに全額換金できる保証はない。事業の堀は全社として弱めであり、長期の価値は、土地と建物からどれだけ現金を生むかに大きく依存すると考える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
札幌の新築分譲マンション市場は、人口構造よりも供給能力と購入者の支払能力が先に制約になっている。長谷工総合研究所が不動産経済研究所の資料を基にまとめた2025年の札幌市の新規供給は1,033戸であり、過去10年間で最低水準となった。別の調査では843戸、さらに調査対象や発売の定義が異なる統計では1,193戸という数字もある。数字は一致しないが、供給が大きく減っているという方向は共通している。
日本グランデの2026年3月期のマンション引渡し61戸は、1,033戸の市場に対して約5.9%に相当する。ただし会社は年度の引渡戸数、市場統計は暦年の新規発売戸数であるため、これは正確な市場シェアではなく規模感の比較だ。現在の市場全体の平均販売価格を約5,739万円とみると、札幌の新築マンション市場は年500〜600億円程度の規模になる。同社の売上金額でみた存在感は、戸数比較よりさらに小さい。
競合には、道内で多数の分譲実績を持つクリーンリバー、全国展開する明和地所、タカラレーベン系などの企業がある。クリーンリバーは道内累計で180棟超、約1万1,000戸の供給実績を公表し、2024年まで北海道内の供給戸数で上位を維持している。日本グランデには独自の商品企画があるが、資金調達力や用地取得の規模では大手に及ばない。主要競合の2025年の札幌市内シェアを同一定義で確認できる資料は得られず、具体的なシェア数字は断定しない。
2036年の中立では、札幌市のマンション市場が年700戸程度まで縮むと考える。人口減少に加え、建築費と住宅ローン金利が購入可能な戸数を制限するためだ。同社が市場で約6%の存在感を保っても、年間引渡しは40戸台になる。上振れするには用地取得で競合に勝ち、駅近など購入者の選別が強い場所に供給を集中する必要がある。
サービス付き高齢者向け住宅は方向が異なる。札幌市の2025年3月時点の登録住宅は276棟、14,359戸であり、日本グランデの主要6施設は棟数で約2%の存在感を持つ。高齢者の住まいへの需要は長期に残るものの、介護事業者や住宅運営会社も参入しており、施設を増やすだけで高収益を保証する市場ではない。築年数、サービス品質、職員確保、家賃の支払能力が競争を分ける。
資本政策と M&A
資本配分では、分譲の拡大より先に財務の余裕を確保することが望ましい。2026年3月期は在庫減少によって営業キャッシュフローが約11.0億円のプラスとなり、借入の返済も進んだ。ただし、在庫を売却して現金化した効果が大きく、毎年同額を稼げる構造ではない。2027年3月期の会社予想は売上25.4億円、営業利益約1.0億円、純利益約0.4億円で、分譲の利益回復はまだ確実ではない。
株主還元の姿勢は安定的とは言い難い。2025年3月期は無配となり、2026年3月期は配当総額約0.134億円で復配した。配当性向は15.4%であり、明確なDOEや総還元性向の目標は確認できない。正式な中期経営計画として、将来の売上高、利益、ROE、配当性向、自社株買いを数値で約束する資料も確認できず、これらについては「数字の約束なし」と評価する。
一方、株主優待として保有株数と保有期間に応じたQUOカードを設けている。株主数約1,100人と優待金額から年間費用を0.02億円前後と概算し、長期還元に含めた。実費の開示は確認できないため、これは予測上の推定額である。
2026年には資本金を1億円へ減額したが、資本剰余金への振替であり、それ自体が株主への資金還元ではない。2020〜2023年には新株予約権の行使による株数増加があり、既存株主の持分は薄まった。直近では潜在株式がないものの、今後の財務状況次第では再び増資が必要になる可能性がある。
大株主上位10名の保有比率は約79%で、経営への影響力が集中している。過去5年間には増配実績があり、SCHEMAの条件上、将来の余剰現金の株主への戻り方を0.5まで引き下げることはしない。ただし自社株買いの実績は乏しく、高い配当性向も定着していないため、戻り方は0.75とする。TOBやMBOが発表されている事実は確認できず、再編価値を現在の基本評価には含めない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の価値は、短期的なマンション販売の不振で過小評価されやすい。2026年3月期末の賃貸等不動産の時価は32.1億円に達し、6施設の高齢者住宅と一般賃貸不動産は継続して賃料を生んでいる。これらは将来の住宅分譲の成否とは異なる収益源であり、会社の時価総額だけを見れば実物資産を安く取得できるように見える。
札幌市内では建築費の高騰により新築マンションの供給が減少しているが、供給不足は必ずしも事業者に悪いことだけではない。購入者の所得に合う商品を開発できれば、競合の撤退によって販売機会が増える。地元で設計、販売、管理を行う体制と独自の共用施設を生かし、駅に近い物件や高齢者の住み替え需要を取り込める可能性がある。
さらに、住宅を販売した後の管理契約は年を追って積み上がる。高齢者住宅の稼働も維持され、費用の一部が物価に対して緩やかにしか増えなければ、賃貸利益率は改善し得る。賃貸物件の帳簿上の減価償却が進めば会計利益には追い風となる。既存の借入が減り、分譲が回復すれば、少数株主への配当余力も大きくなる。
同業の経営統合や不動産会社による買収も考えられる。支配株主と買付者の条件が一致すれば、株式市場では十分に反映されていない賃貸資産の価値が表面化する可能性がある。もっとも、正式なTOBや売却計画が存在しない以上、それを必ず起こる出来事とみなしてはいけない。
慎重な見方
賃貸不動産があるからといって、株主にその資産価値が必ず帰属するとは限らない。賃貸物件には借入金が結び付き、修繕や更新の支出も必要だ。賃料収入だけを見れば高収益に見えるが、会社全体では本社費、金利、分譲不振による損失がそれを削る。資産の売却額から債務と税金を控除すれば、少数株主が受け取れる現金は大きく減る。
札幌市の新築マンション市場が縮んでいることは、同社の販売戸数にも不利に働く。2026年3月期の61戸の引渡しに対し、新規契約はマンション18戸にとどまり、期末のマンション契約残もなくなっている。竣工時期によるずれを考慮しても、10年先まで同じ販売水準が続くと考えるには用地と受注の裏付けが弱い。
建築費高騰と住宅ローン金利上昇は、販売価格を上げれば解決する問題ではない。値段を上げるほど購入可能な世帯が減り、在庫処分や販売長期化によって利益率が崩れる。2025年3月期には、販売の鈍化が金融機関への返済や建築代金の支払いに影響し得るとして、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が認識されていた。2026年3月期の決算短信では継続企業の前提に関する注記は該当なしとなったが、事業の循環リスクが消えたわけではない。
高齢者住宅も永遠に現在の利益率を維持できるわけではない。築年数が進めば修繕費が増し、競合施設が増えれば入居率や家賃にも圧力がかかる。分譲と賃貸の両方が弱くなった時には、資産の評価額より金融機関との交渉力が価値を左右する。株主還元の弱さと所有の集中も考えれば、資産の割安さだけに依存する投資には危うさがある。
どちらに重みを置いたか
賃貸不動産に価値があるという見方は正しい。しかし、少数株主がその価値を十分に受け取れるかという点では慎重な見方が優勢だ。札幌のマンション供給縮小と過去の販売鈍化、純有利子負債の重さを踏まえ、楽観側28%、悲観側40%と下側に確率を寄せた。中立には32%を与え、分譲の減少を賃貸と管理が補う構図を中心にする。現在の株価に対する期待価値の不足は、資産がないためではなく、資産から株主へ利益が戻る経路が弱いためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,273 円17 億円(+ 還元の換算額還元の合計 122 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 617 円8 億円、今との差 −11.6%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,597 円48 億円 | 313 円4 億円 | +460.1% | +20.2% | 313 円4 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,123 円29 億円 | 201 円3 億円 | +232.9% | +13.6% | 465 円6 億円 |
| 中立 | 32% | 1,149 円15 億円 | 127 円2 億円 | +82.8% | +6.6% | 408 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 601 円8 億円 | 56 円1 億円 | −5.9% | −0.6% | 164 円2 億円 |
| 悲観 | 15% | 283 円4 億円 | 15 円0 億円 | −57.3% | −8.3% | 45 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,273 円17 億円 | 122 円2 億円 | +99.8% | +7.6% | 1,395 円19 億円 |
今の株価時価総額 698 円9 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 好立地への集中と賃貸拡大が成功 利益 4 億円 · PER 11.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,597 円48 億円
札幌の新築マンション市場が年間1,250戸程度に回復し、日本グランデは約7%の存在感を獲得する。クリーンリバーや全国大手との競争が続く中でも、駅近立地と独自の商品企画が評価され、年間88戸を引き渡せるようになる。戸建の販売も増え、用地売却や買取再販も収益を補う。
住宅価格は建築費を十分に吸収して上昇し、分譲事業の利益率も改善する。高齢者住宅は既存6施設の高稼働を維持し、部分的な新規取得や増床が進む。管理契約も自社分譲物件の累積によって増え、連結営業利益は現在を大きく上回る。
借入返済と成長投資を両立し、現金創出が増えることで株主還元も改善する。M&Aは既存の管理会社や小規模不動産事業者の取得に限定し、過大な借入を伴う大型買収には踏み込まない。2036年には資本効率が資本コストを上回る不動産会社となるが、分譲の競争そのものは残り、独占的な企業にはならない。
- 新築分譲マンション:数量 88.0(年間引渡し戸数(戸))× 価格 0.56(1戸当たり平均引渡売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 4 億円。札幌市場1,250戸×約7%の引渡規模。好立地中心の構成改善で単価上昇。
- 新築分譲戸建住宅:数量 9.0(年間引渡し戸数(戸))× 価格 0.75(1戸当たり平均売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。戸建の小規模開発が継続し、販売規模と採算が改善。
- 用地売却・買取再販・仲介等:数量 0.8(大口用地売却案件換算(件・年、期待値))× 価格 8.10(大口案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。大口売却の発生頻度が高まり、採算のよい買取再販も増える。
- 高齢者住宅・その他賃貸:数量 7.8(運営する主要賃貸不動産の稼働棟数換算(棟))× 価格 1.35(主要稼働棟1棟当たり年間売上(億円、支援サービスを含む))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。高い稼働率を維持し、追加施設取得と賃料改定が成功。
- マンション管理・その他不動産関連:数量 70.0(管理受託マンション棟数(棟・推定))× 価格 0.07(管理1棟当たり年間関連売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。管理物件が蓄積し、現場管理の効率化で利益率が上昇。
倍率:ROEは4.3÷39.9=10.78%、資本コスト9.0%を上回る。moat=weakなので超過ROEの残存割合は1/3とし、RONIC=9.0%+(10.78%−9.0%)÷3=約9.59%。2036年以降の名目成長率は1.5%であり、正当化PER=(1−1.5%÷RONIC)÷(9.0%−1.5%)=約11.25倍。式の上限に近い11.24倍を用いる。現在のPERや市場の評価水準は使用していない。
確率:札幌市の供給縮小が反転し、同社が用地取得と販売シェア拡大に成功する必要がある。加えて高齢者住宅と管理受託も伸びる複合的な成功を想定するため、確率は8%にとどめる。
やや楽観 20% 分譲回復とストック収入の着実な増加 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,123 円29 億円
札幌市の新築マンション供給は年間1,000戸前後を維持する。日本グランデは駅へのアクセスや価格を重視した開発を続け、市場で6%台半ばの存在感を確保する。マンション引渡しは65戸となり、戸建の小規模開発や買取再販も収益を支える。
建築費の上昇は続くが、土地の取得条件を厳選することで分譲の採算が改善する。価格を一方的に引き上げるのではなく、住戸面積や共用設備を調整し、購入者の支払能力に合った商品を供給する。売上総利益の回復によって、分譲は安定した黒字へ戻る。
高齢者住宅は既存施設の入居率を維持しながら改修と賃料改定を進める。大規模な新築投資は控えるが、収益物件の部分的な取得によってストック収入が増える。マンション管理契約も積み上がり、資本効率は改善するものの、借入負担と競争によって突出した高ROEにはならない。
- 新築分譲マンション:数量 65.0(年間引渡し戸数(戸))× 価格 0.52(1戸当たり平均引渡売上(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。市場1,000戸前後で約6.5%の規模を確保。
- 新築分譲戸建住宅:数量 6.0(年間引渡し戸数(戸))× 価格 0.70(1戸当たり平均売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。小規模戸建を安定販売し、粗利を改善。
- 用地売却・買取再販・仲介等:数量 0.6(大口用地売却案件換算(件・年、期待値))× 価格 7.70(大口案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。用地売却と買取再販が適度な頻度で発生。
- 高齢者住宅・その他賃貸:数量 7.3(運営する主要賃貸不動産の稼働棟数換算(棟))× 価格 1.24(主要稼働棟1棟当たり年間売上(億円、支援サービスを含む))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。高齢者住宅の稼働を維持し、小規模な収益物件取得。
- マンション管理・その他不動産関連:数量 58.0(管理受託マンション棟数(棟・推定))× 価格 0.06(管理1棟当たり年間関連売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。管理受託棟数と関連サービスが着実に増える。
倍率:2036年ROEは2.4÷33.4=7.19%で資本コスト9.0%を下回る。追加投資が株主資本コストを超える超過収益を生むとはみなさず、正当化PERの上限1÷k=11.11倍を用いる。分譲の収益回復は10年間の純利益に反映しており、PER側で重複して成長を評価しない。
確率:供給減少が緩やかになれば会社の既存ブランドでも年間60戸台の販売は可能だが、土地仕入れと資金調達に制約が残る。賃貸・管理の緩やかな拡大は現実的なため20%とする。
中立 32% マンション販売は細るが賃貸が会社を支える 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,149 円15 億円
札幌市の新築マンション供給は年間700戸程度へ減少する。日本グランデは物件の立地と価格帯を絞り、約6%の市場内での存在感を維持するものの、年間引渡しは43戸に縮小する。販売単価は物価上昇に沿って上がるが、住宅ローン金利と購入者の所得が販売数量を制約し、分譲の売上は大きく伸びない。
戸建は少量販売を続け、土地売却や買取再販は年度ごとに発生する案件の平均的な利益だけを見込む。過去のような大口土地売却を毎年繰り返せる前提にはしない。分譲は黒字を確保するが、高い利益率が安定して続く事業には戻らない。
高齢者住宅では主要施設の稼働を維持し、賃料と生活支援サービスの料金が物価に沿って緩やかに上昇する。建物の償却費は取得原価に基づくため一律には増えないが、修繕・設備更新の現金支出は増える。マンション管理は自社分譲物件からの継続契約が積み上がり、全社の営業利益は現在をやや上回る。
金融機関との関係は維持されるが、借入を大きく増やす成長戦略は取れない。会社は存続し、小幅な配当と優待を続ける。しかし自己資本が積み上がる割に純利益の伸びが乏しく、ROEは資本コストを下回る。株主にとっては大きな成長よりも、安定収益と資本配分の改善を待つ10年になる。
- 新築分譲マンション:数量 43.0(年間引渡し戸数(戸))× 価格 0.46(1戸当たり平均引渡売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。市場700戸×約6.1%。価格は約1.34倍で物価前提と整合。
- 新築分譲戸建住宅:数量 4.0(年間引渡し戸数(戸))× 価格 0.64(1戸当たり平均売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。実質の引渡戸数は横ばい、価格は物価に沿って上昇。
- 用地売却・買取再販・仲介等:数量 0.4(大口用地売却案件換算(件・年、期待値))× 価格 7.50(大口案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。2026年の大口土地売却を常態化させず、発生頻度を縮小。
- 高齢者住宅・その他賃貸:数量 7.0(運営する主要賃貸不動産の稼働棟数換算(棟))× 価格 1.16(主要稼働棟1棟当たり年間売上(億円、支援サービスを含む))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。保有棟数は大きく変えず、賃料上昇と修繕費増加が併存。
- マンション管理・その他不動産関連:数量 50.0(管理受託マンション棟数(棟・推定))× 価格 0.06(管理1棟当たり年間関連売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。管理受託の増加と現場管理料の緩やかな改定。
倍率:2036年ROEは1.0÷27.4=3.65%で、資本コスト9.0%に届かない。資本コストを下回るROEの企業については、将来の成長投資が価値を増すと見なさず、正当化PERの上限1÷9.0%=11.11倍を用いる。これは過去のPERやPBRから決めた数字ではない。賃貸物件の利益はすでに純利益に含むため、保有不動産の開示時価を別に加算しない。
確率:札幌の新築マンション市場の縮小と賃貸収入の継続という、同社の2つの特徴を最も自然に組み合わせた中心シナリオ。土地売却の一過性を除き、分譲の採算回復は限定的とみる。
やや悲観 25% 分譲が低迷し、賃貸の利益が本社費に吸収される 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 601 円8 億円
札幌の新築マンション供給は年間500戸程度まで落ち込み、日本グランデも販売に適した土地を確保できなくなる。年間マンション引渡しは25戸となり、顧客の購入可能価格を超えないよう販売価格を抑える。完成在庫の販売期間が長引き、分譲事業の利益はほぼ消える。
高齢者住宅は運営を継続するが、入居者の家賃負担能力と競合施設の増加によって値上げが難しくなる。築年数が進んだ建物では浴室、給排水、空調などの更新費も増える。生活支援サービスの人件費上昇も収益を圧迫し、賃貸事業の利益率は低下する。
マンション管理の契約は残るが、管理組合の費用削減要求が強まり、事務の自動化が進むことで手数料の一部に下押し圧力がかかる。本社費の削減だけでは補えず、営業損益は小幅な赤字に沈む。新規開発を抑え、所有資産と金融機関との関係を守ることが優先される。
株主還元は縮小し、物件の処分益を安定的な配当原資とはみなせなくなる。事業が直ちに消滅するわけではないが、賃貸資産を保有していても、少数株主が十分な利益を得られない会社になる。
- 新築分譲マンション:数量 25.0(年間引渡し戸数(戸))× 価格 0.43(1戸当たり平均引渡売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。市場500戸×約5%。建築費を十分に転嫁できず利益が消える。
- 新築分譲戸建住宅:数量 2.0(年間引渡し戸数(戸))× 価格 0.57(1戸当たり平均売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。販売数が減少し、採算は損益均衡程度。
- 用地売却・買取再販・仲介等:数量 0.2(大口用地売却案件換算(件・年、期待値))× 価格 7.20(大口案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。用地売却案件が減り、利益もほぼ生まない。
- 高齢者住宅・その他賃貸:数量 7.0(運営する主要賃貸不動産の稼働棟数換算(棟))× 価格 1.08(主要稼働棟1棟当たり年間売上(億円、支援サービスを含む))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。賃料改定が物価に追い付かず、修繕と人件費が増える。
- マンション管理・その他不動産関連:数量 42.0(管理受託マンション棟数(棟・推定))× 価格 0.06(管理1棟当たり年間関連売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。管理契約は続くが、効率化の利益は価格競争で一部失われる。
倍率:2036年の最終利益は赤字であり、PERによる評価は適切ではない。自己資本21.4億円のうち賃貸不動産と運転資本の回収可能性を考慮し、事業継続下で少数株主に帰属する実現価値を8.0億円程度と評価する。PBRは8.0÷21.4=約0.374倍である。過去の市場PBRを根拠にはしていない。極端な換価価値の床3.6億円も下回らない。
確率:札幌市場の縮小、住宅ローン金利の上昇、既存施設の修繕費増加が同時に進む筋書き。既に分譲の赤字経験と低い新規契約実績があるため、25%という比較的大きな確率を与える。
悲観 15% 住宅市場で競争力を失い、資産の処分を迫られる 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 283 円4 億円
札幌市の新築マンション市場は年間400戸程度へ縮小し、日本グランデは用地取得と商品競争で地元大手に後れを取る。引渡しは年間12戸に落ち込み、価格を引き下げても完成在庫を十分に処分できない。工事契約と金融機関への返済が先に来るため、販売価格の下落は利益率に強く響く。
分譲事業は継続的な赤字となり、土地と建築中の物件には評価損を計上する。高齢者住宅でも入居率低下と建物更新費が重なり、賃貸利益は現在の大部分を失う。管理事業は存続するものの、本社費と利払いを賄える規模ではなくなる。
銀行は新規開発への融資を絞り、会社は保有物件の売却や不採算事業の整理を進める。資産があるため直ちにすべての価値が失われるとは限らないが、売り急ぐ不動産の価格は通常の開示時価を大きく下回る。過去に販売不振と資金繰りに関する重要事象があったことも、貸し手の慎重姿勢を強める。
10年間の前半に残った利益は後半の損失と資産減損に吸収され、自己資本は大きく縮む。少数株主は配当や優待の縮小に直面し、場合によっては不利な条件の再編を受け入れざるを得ない。企業の存在は続いても、かつての不動産開発会社としての優良さを失う。
- 新築分譲マンション:数量 12.0(年間引渡し戸数(戸))× 価格 0.39(1戸当たり平均引渡売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。市場400戸×約3%。値引きと在庫負担で赤字化。
- 新築分譲戸建住宅:数量 1.0(年間引渡し戸数(戸))× 価格 0.50(1戸当たり平均売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。戸建販売を実質的に縮小し、固定費を回収できない。
- 用地売却・買取再販・仲介等:数量 0.1(大口用地売却案件換算(件・年、期待値))× 価格 6.50(大口案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。案件不足と処分損の発生。
- 高齢者住宅・その他賃貸:数量 6.2(運営する主要賃貸不動産の稼働棟数換算(棟))× 価格 1.00(主要稼働棟1棟当たり年間売上(億円、支援サービスを含む))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。物件売却、低稼働、老朽化による費用増加。
- マンション管理・その他不動産関連:数量 36.0(管理受託マンション棟数(棟・推定))× 価格 0.05(管理1棟当たり年間関連売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。管理契約の減少と価格競争。
倍率:継続的な赤字と資産減損を伴うため、利益倍率による事業価値ではなく危機時の回収可能資産を基準にする。2036年自己資本は10.9億円まで縮小し、時価総額3.8億円はその約0.349倍に相当する。床の3.6億円をわずかに上回るが、2026年3月期の純資産20.1億円を無条件の床とはみなさない。過去のPBRの谷ではなく、強制売却の換価価値から判断する。
確率:地域住宅市場の急縮小、金利負担、賃貸施設の稼働低下という複数の悪材料が重なる筋書き。2025年の赤字と継続企業に関する重要事象の経験を考慮し、単なる景気循環ではない構造的な敗北に15%を与える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
新築分譲マンション
札幌を中心とする「グランファーレ」シリーズの企画、開発、販売。新築物件と前期以前からの完成在庫の引渡しを含む。
| 数量年間引渡し戸数(戸) | 価格1戸当たり平均引渡売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 61.0 | 0.35 | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 43.0 | 0.46 | 20 | 1 |
取り方:2026年3月期有報の販売実績はマンション売上2,104,773千円、引渡61戸(新築43戸、前期繰越18戸)。これを割って平均単価約3,450万円とした。マンション単独の営業利益は非開示のため、分譲事業全体のセグメント利益95,984千円から、戸建と用地売却の寄与を推定して0.90億円を配分した。営業利益の内訳は推定であり、監査済みの個別利益ではない。
新築分譲戸建住宅
「ラ・レジーナ」シリーズなど札幌圏の新築戸建住宅。用地を取得し、外注施工を管理して販売する。
| 数量年間引渡し戸数(戸) | 価格1戸当たり平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 0.48 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 0.64 | 3 | 0 |
取り方:有報の戸建売上192,661千円と引渡4戸から単価約4,817万円を算出。戸建単独利益は未開示であるため、4戸の少量販売と建築原価の構造を踏まえ0.10億円を推定配分した。
用地売却・買取再販・仲介等
販売用土地の売却、既存物件の買取再販、仲介やリフォームなど。大口売却がある年度は売上が膨らむ。
| 数量大口用地売却案件換算(件・年、期待値) | 価格大口案件換算1件当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 5.64 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 7.50 | 3 | 0 |
取り方:有報の不動産分譲事業『その他』の売上563,576千円を使用。うち主要顧客ジン不動産への売上430,000千円は大口の販売用不動産売却に対応するとみられる。その他の取引も含めて当期売上を大口1案件相当と正規化した。将来の0.4件などは各年度の実際の売却件数ではなく、10年間における平均的な案件発生頻度を意味する。費用の個別開示がないため、セグメント利益の残差を割り当てた。
高齢者住宅・その他賃貸
「グランウエルネス」6施設を中心とした賃貸料、生活支援サービス、その他の収益不動産の賃料。
| 数量運営する主要賃貸不動産の稼働棟数換算(棟) | 価格主要稼働棟1棟当たり年間売上(億円、支援サービスを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.0 | 0.88 | 6 | 2 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 1.16 | 8 | 2 |
取り方:有報の賃貸事業売上614,599千円、セグメント利益199,694千円を使用。売上内訳は高齢者住宅賃料353,333千円、その他賃料67,872千円、高齢者住宅支援サービス等193,393千円。主要6施設のサ高住と一般賃貸不動産群を合わせ、規模を主要7棟換算に正規化した。1棟当たり0.878億円は管理・生活支援を含む売上換算であり、純粋な家賃単価ではない。保有賃貸不動産の当期償却は約0.86億円で、2036年中立では既存資産の償却が減る一方、補修・新設備の償却が加わるため年0.8〜1.0億円程度を想定した。
マンション管理・その他不動産関連
分譲マンション管理組合からの管理委託料、点検・保守業務、保険代理店業務など。
| 数量管理受託マンション棟数(棟・推定) | 価格管理1棟当たり年間関連売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.04 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 0.06 | 3 | 1 |
取り方:有報の不動産関連事業売上179,691千円、セグメント利益28,740千円を使用。内訳はマンション管理141,736千円とその他37,954千円。管理棟数は開示されていないため、2003年の創業以来の分譲物件と一般的な1棟数十戸の規模から約40棟と仮定した。年間単価は関連事業売上をこの推定棟数で割った換算単価であり、実際の管理契約単価ではない。AIエージェント代替の検討対象は会計・連絡などの事務部分であり、建物点検や現場管理の契約を人月・席課金の業務と同一には扱わない。
リスクと懸念
札幌の新築住宅市場の構造的縮小
札幌市の新築マンション供給は大幅に減少しており、建築費と住宅ローン金利が家計の購入可能価格を圧迫している。同社のように引渡しが数十戸単位の会社では、1物件の竣工遅延や販売不振で年間の売上と利益が大きく動く。将来の人口減少が進めば、名目販売価格が上がっても実質の取引数量は細る可能性が高い。
借入金と資金繰り
2026年3月期末の純有利子負債は12.9億円で、基準時価総額9.2億円を上回る。賃貸住宅の収入があるため一定の返済原資はあるが、販売用不動産の換金が遅れると工事代金と借入返済が重なる。2025年には販売鈍化による資金繰りの重要事象が開示されており、住宅の販売環境が再び悪化した際の金融機関の対応を重視する。
高齢者住宅の老朽化と更新投資
保有する主要高齢者住宅は運営開始から年数が経過しており、今後は給排水、空調、浴室、共用設備などの更新が必要になる。会計上の減価償却が進むことで利益が増えて見えても、建築費が上昇した世界での現実の更新支出はむしろ大きくなる。更新を借入で行えば利息が増え、利益で賄えば株主に戻せる現金が減る。
含み資産の実現性と支配株主
賃貸不動産の開示時価は簿価を上回っているが、売却しない限り少数株主に現金は戻らない。しかも不動産には借入が対応しており、売却すれば債務の返済や税金が先に発生する。大株主への持株集中により、資産売却、増配、自社株買いなどの判断を少数株主が主導することは難しい。
施工外注先の不足と建築費高騰
マンション建築と戸建建設の施工は外部会社に依存する。技能労働者不足や材料費の上昇で工期が遅れると、販売契約から引渡しまでの期間が延び、土地と建物に投じた資金を長く拘束される。販売価格を引き上げられなければ、土地仕入れ時に想定した事業採算が崩れる。
AIエージェント代替と管理業務の効率化
建物の点検、清掃、対人サービス、建築施工といった現場業務はAIエージェントが直接代替しにくい。一方、マンション管理に付随する会計処理、報告書、通知、問い合わせの一部は自動化が進む。これらの事務部分には手数料の引下げ圧力が生じ得るが、管理契約全体は現場業務と建物の継続管理が中心であり、席課金型SaaSや純粋な人月BPOほどの数量崩壊は想定しない。
株式流動性と再編条件
札幌証券取引所アンビシャス市場の小規模銘柄であり、大株主の保有割合も高い。株式の売買が薄い場合、理論的な価値と実際に大きな数量を売買できる価格には差が生じ得る。将来のTOBやMBOは可能性として存在するが、正式な条件が示されていない段階で必ず株主に有利な価格で成立すると考えるのは危険である。
今後の分かれ目
- マンション契約戸数が2年連続で年間60戸以上に回復したら
- 分譲数量の下振れリスクを見直し、やや楽観の確率を引き上げる。契約だけでなく、竣工・引渡しと粗利益率の改善を確認する。
- 札幌市の新築マンション供給が年間700戸を下回り、その状態が数年続いたら
- 中立の引渡し数量43戸も下方修正を検討する。用地取得の遅れや完成在庫の販売日数も同時に点検する。
- サービス付き高齢者向け住宅の賃料収入が増え、稼働率と修繕費の両方が安定したら
- 賃貸事業の利益率と資産の実現可能価値を引き上げる。家賃の上昇が補修費や人件費の増加を上回ることが重要になる。
- 純有利子負債が恒常的に5億円以下へ減り、営業キャッシュフローが継続してプラスになったら
- 財務の危うさが和らぐため、資本コストの借金部分と悲観の確率を見直す。ただし在庫売却による一時的な現金増加だけでは判断しない。
- 所有する賃貸不動産を開示時価に近い金額で売却し、借入返済後の資金を配当や自社株買いに回したら
- これまで株主に返るか不明だった資産価値が現実化するため、適正価値を上方修正する。売却益だけでなく税金、返済、失われる賃料収益も反映する。
- 配当性向50%以上やDOEなど、数値を伴う資本政策を公表し実行したら
- 将来の余剰現金の戻り方を0.75から1.0へ変更できるか検討する。現金が確実に株主へ戻ることは資産価値の実現性を高める。
- 資金繰り懸念が再燃し、金融機関による融資条件変更や大幅な増資が必要になったら
- 悲観の確率を大きく引き上げる。現有株主の取り分を減らす増資が確定した場合にはholder_shareを明示的に再計算し、資産の床も借入返済と希薄化後の帰属価値で評価する。
見ておくもの
- マンション新規契約戸数、引渡し戸数、契約残高、完成在庫
- 札幌市の新築マンション新規供給戸数と平均販売価格
- 不動産分譲事業のセグメント利益率と大口土地売却の有無
- サービス付き高齢者向け住宅の稼働率、賃料収入、施設別修繕費
- 賃貸不動産の簿価・開示時価・減価償却費・更新投資
- 純有利子負債、借入金利、短期借入の返済期限、金融機関の融資姿勢
- 配当総額、株主優待費用、自社株買い、増資の有無
- 大株主の持分変化、TOB・MBOなどの正式な開示
- マンション管理棟数と管理事業の利益率
- 中期経営計画における数値目標と資本政策の有無
倍率と資本コストの決め方
2026年10月19日の株価685円と発行済株式数1,343,600株から基準時価総額を9.20366億円と確認したが、この値を使って将来の利益や倍率を逆算していない。2036年のセグメント売上は、マンション・戸建の引渡戸数と平均価格、用地売却の案件発生頻度、賃貸稼働棟数、管理受託棟数から積み上げた。現在の売上をそのまま物価で膨らませる方法は取らず、数量の縮小と価格上昇を分離した。
倍率は資本コスト9.0%、2036年のROE、弱い堀による超過利益の残存割合、2036年以降の名目成長率1.5%から正当化した。中立はROEが資本コストを下回るためPER11.11倍の稼ぐ力を上限とし、悲観側は赤字事業のPERを使わず資産の換価価値と事業継続下の評価からPBRを決めた。賃貸不動産の利益は全社純利益に含まれているため、含み資産の時価を別に重複加算していない。
2026年3月期の有利子負債と現金の関係を反映し、余剰現金はゼロとした。将来の余剰現金の戻り方は0.75とし、株主への還元の確実性を過大評価していない。2027年4月以後開始年度に適用される新リース会計基準により表示上の使用権資産や負債は変わり得るが、事業の10年後の費用は現行の賃料費用を含む基準で比較した。
5つの時価総額と累積還元を9.0%で割り引いた確率加重価値は約7.54億円で、基準時価総額との差は約マイナス18.1%。現在の株価が半分になっても2倍になっても、事業前提が同じならこの推定本質価値の金額自体は動かない。資産の通常売却と危機時の強制売却を混同せず、少数株主に返る現金を中心に評価した。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3.0%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、事業の循環0.5%、値決め力0.5%、借金0.5%を加えた9.0%。赤字は2025年3月期の単年度で、2026年3月期には黒字へ戻ったため、継続的な経営危機としての追加上乗せは行わない。