結論
ランドビジネスは、都心のオフィスビルやレジデンスを持って貸し、手を入れて売る不動産の会社だ。2023 年からは婦人服のフランドルを買い、飲食店も始め、三つの事業を抱える複合の会社になった。筆者の結論は、今の値段は帳簿の 3 分の 1 ほどだが、それでも割高だというものだ。
理由は稼ぐ力の弱さと借金の重さにある。不動産は年 40 億円前後の利益を生むが、服と飲食で合わせて 20 億円近い赤字を出し、本社の費用も重い。有利子負債は 339 億円あり、借り換えの金利が上がれば利払いは今の倍近くに増える。過去 10 年の ROE の中央値は 2% で、資本コストのはるか下にある。
2026/09 期は物件の売却で利益が大きく戻る。ただし売却の利益は、昔に安く買った物件の含み益を一度だけ実現するものだ。売るたびに賃料の元も減る。10 年で見ると、服と飲食を立て直せるか、たたむかが最大の分かれ目になる。上位 2 人の株主が 6 割を持ち、少数株主が資本の使い方を変える余地は小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の 3 分の 1 という値段に飛びつくのは危うい。帳簿の自己資本 161 億円の多くは、借金で買った物件だ。その物件は年に 2% ほどの ROE しか生んでおらず、資本コストに遠く届かない。稼がない資産は、帳簿の値段で売れない限り株主の価値にならない。
オーナー利益で見ると、さらに薄い。不動産の利益は服と飲食の赤字と本社の費用に食われ、残りは利払いに消える。建物の修繕と建て替えの費用は建築費とともに膨らみ、減価償却を上回って現金を吸う。
経営の資本の配分が最大の弱点だ。本業で生んだ利益を、経験の無い事業に注いでいる。株主の 6 割を経営側が持つ会社で、この方針が変わる保証は無い。筆者は、物件を売って借金を返し、服と飲食をたたむ決断が見えるまで、この会社を長く持ちたいとは考えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は都心の不動産だ。会社は「都市にヨーロッパの光と風」を掲げ、オフィスビルやレジデンスを買ってリニューアルし、貸して賃料を得る。1〜5 年持った後に売るのが基本の方針で、2025/09 期の不動産の売上は 100 億円、利益は 41 億円だった。このうち半分ほどが賃料、残りが物件を売った額だと筆者は見ている。
二つ目は服飾だ。2023 年 12 月に婦人服の会社フランドルを買い、企画から生産・販売までを抱えた。2025/09 期の売上は 72 億円まで増えたが、9 億円の赤字だった。生産の設備の更新と人の育成をやり直している最中だ。
三つ目は外食だ。子会社の TAKEWAKA が飲食店を開き、売上は 12 億円に増えたが、出店の準備の費用が重く、赤字は 10 億円を超えた。売上とほぼ同じ額の赤字で、事業として成り立つ形にはまだ遠い。
本社と連結の調整で 15 億円ほどの費用がかかり、三つの事業の利益を合わせても営業利益は 6 億円にとどまった。そこから借金の利払いを引くと、最終損益は赤字だった。2026 年 2 月には長野の会社を買い、事業はさらに広がっている。
優良さと弱いところ
不動産の部分には確かな資産がある。都心の物件は人口が減っても需要が残り、賃料は物価とともに上がりやすい。賃貸等不動産の時価は簿価を 42 億円上回ると会社は開示している。昔に安く買った物件を売れば、利益は大きく出る。
しかし会社全体の質は低い。物件を持つための借金が 339 億円あり、総資産の 6 割に達する。営業利益で利払いを 1 倍ほどしか賄えず、金利が上がれば最終利益はすぐに消える。財務制限条項の付いた借入もある。
資本の使い方にも疑問が残る。不動産で稼いだ利益を、経験の無い服飾と飲食に注ぎ、両方で大きな赤字を出している。ROE の中央値 2% は、株主の資本がほとんど増えていないことを示す。上位 2 人の株主が 6 割を持ち、経営に外の目が届きにくい構図だ。
筆者がいちばん気にしているのは、この配分の癖が 10 年で変わる兆しが見えないことだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
都心の不動産は、10 年の物差しで見れば悪い市場ではない。東京の中心部は人口が減る日本の中で例外的に人が集まり、オフィスもレジデンスも空室は少ない。物価が年 3% 上がる世界では、賃料も少しずつ上がる。
ただし金利の上昇が、不動産の値段と借金の重さの両方に効く。10 年国債が 3% になれば、投資家が物件に求める利回りも上がり、物件の値段は伸びにくくなる。借金で物件を抱える会社は、利払いが増える分だけ稼ぎが削られる。手を入れて売る商売は、買う値段と売る値段の差で稼ぐので、値上がりが鈍ると利ざやも細る。
服飾の市場は厳しい。百貨店の婦人服は長く縮んでおり、ファストファッションと海外のネット通販に客を奪われてきた。生産を国内に抱える会社は、人件費の上昇も重い。
外食は人手の不足と食材の値上がりで、どの会社も利益率を削られている。小さな会社が新しい業態で成功するには、店を増やす前に 1 店ごとの採算を固める必要がある。筆者は、この会社が服と飲食で同業より強い何かを持つ証拠を見つけられなかった。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。年 1 回の配当を、赤字の年も同じ額で続けている。総額は年 1.2 億円ほどで、利益に比べれば小さい。自社株買いの実績は乏しい。
資本の多くは不動産と、服飾・飲食の買収と出店に使われてきた。2023 年にフランドルを買い、2026 年にも長野の会社を買った。いずれも本業の不動産とのつながりは薄い。
上位 2 人の株主が合わせて 6 割を持つ。少数株主が還元を求めても届きにくく、物件の含み益が株主に戻る道筋も示されていない。経営者が会社を非公開にする可能性もあるが、今の時点で兆しは無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の値段は帳簿の 3 分の 1 にすぎない。会社は都心の物件を多く持ち、賃貸等不動産だけで時価が簿価を 42 億円上回る。売るための物件にも含み益があり、2026/09 期は売却で営業利益が 35 億円を超える見込みだ。物件を売れば利益が出て、借金も返せる。
服と飲食の赤字は立ち上げの費用によるところが大きい。フランドルは生産の設備を入れ替え、旗艦店を出す計画を進めている。飲食は出店の準備の費用が先に出ているだけで、店が育てば赤字は縮む。どちらかを売るか閉じるだけでも、毎年 10 億円前後の利益が戻る。
都心の不動産は物価とともに賃料が上がる。会社が売却を続けて借金を減らし、利払いを抑えられれば、ROE は今の数倍に戻る。上位の株主が会社を非公開にする場合も、帳簿に近い値段が付きうる。今の値段は、こうした道をほとんど何も見込んでいない。
株主の 6 割を持つ経営側にとっても、会社の価値を上げることは自分の利益になる。方針を改める動機は十分にある。
慎重な見方
帳簿の安さには理由がある。会社は 10 年以上、ROE 2% 前後しか稼いでこなかった。借金 339 億円で物件を抱え、利払いが利益の大半を食う。金利が 3% の世界では、借り換えのたびに利払いが増え、最終利益は消えていく。
物件の売却益は繰り返せない。昔に安く買った物件を売れば一度は大きな利益が出るが、その後に買う物件は今の高い値段で、売っても差は小さい。売るたびに賃料の元も減る。2026/09 期の好調は、含み益の前借りに近い。
服と飲食は立て直しの途中ではなく、まだ形になっていない。服飾は縮む市場で国内の生産を抱え、外食は売上とほぼ同じ額の赤字を出した。経営は不動産で稼いだ利益をここに注ぎ続けている。株主の 6 割を経営側が持ち、少数株主にはこの流れを止める手段が無い。帳簿の値段で株主に戻る道は見えない。
建物の修繕と建て替えの費用も、建築費の高騰で膨らむ。減価償却は昔の値段のままなので、会計の利益は見かけ上よく見えても、現金は細っていく。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。物件に含み益があるという強気の根拠は事実だが、それが株主に戻る道筋が無い。経営は利益を服と飲食に注ぎ、借金の利払いは金利とともに増える。確率はやや悲観と悲観に厚く置き、楽観は物件の売却と赤字事業の整理が同時に進む場合に限った。帳簿の 3 分の 1 という値段でも、稼ぐ力から見ると高い。強気の筋書きが実るかは、経営の決断ひとつにかかっている。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 344 円68 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 51 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 179 円35 億円、今との差 −29.1%、 期待の年率 +4.6%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,335 円265 億円 | 76 円15 億円 | +459.7% | +18.8% | 99 円20 億円 |
| やや楽観 | 18% | 711 円141 億円 | 66 円13 億円 | +208.1% | +11.9% | 140 円28 億円 |
| 中立 | 37% | 235 円47 億円 | 60 円12 億円 | +17.4% | +1.6% | 109 円22 億円 |
| やや悲観 | 24% | 125 円25 億円 | 40 円8 億円 | −34.2% | −4.1% | 40 円8 億円 |
| 悲観 | 14% | 40 円8 億円 | 15 円3 億円 | −78.0% | −14.1% | 8 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 344 円68 億円 | 51 円10 億円 | +56.9% | +4.6% | 395 円78 億円 |
今の株価時価総額 252 円50 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 物件を売って借金を返し、赤字の事業を整える 利益 23 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,335 円265 億円
会社は昔に安く買った物件を毎年売り、含み益を利益に変えて借金を返す。新しく買う物件も、手を入れて高く売る腕を発揮し、売却の利益率は 25% を保つ。賃料は物価を少し上回って上がる。服飾はフランドルの生産の立て直しが実り、旗艦店と百貨店の両方で黒字に戻る。飲食も 1 店ごとの採算を固めてから店を増やし、利益を出す。借金が減って利払いは年 9 億円に抑えられ、最終利益は 20 億円を超える。それでも ROE は資本コストにわずかに届かず、配当は小さいままだ。株主の 6 割を持つ経営側が、会社の価値を上げる方向に舵を切る筋書きだ。物件の含み益は、ここで初めて株主の価値になる。
- 不動産の賃貸:数量 60.0(貸している床面積(千㎡、推定))× 価格 10(1 ㎡あたりの年間賃料(万円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 25 億円。60.0 千㎡ × 1 ㎡ 10.08 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 42%
- 不動産の売却(再生・開発):数量 8.0(売った物件の数(件・年、推定))× 価格 15(1 件あたりの売却額(億円・名目))→ 売上 123 億円・営業利益 31 億円。8 件 × 1 件 15.4 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 25%
- 服飾:数量 50.0(売った服の点数(万点・年、推定))× 価格 2.10(1 点あたりの売上(万円・名目))→ 売上 105 億円・営業利益 4 億円。50 万点 × 1 点 2.10 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 4%
- 外食:数量 25.0(店の数(店))× 価格 1.14(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。25 店 × 1 店 1.14 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 5%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.37 倍、時価総額 265 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物件の売却で借金を減らし、服と飲食を同時に黒字にする筋書き。経営がこれまでの資本の使い方を大きく変える必要があり、確率は低く置いた。
やや楽観 18% 不動産で稼ぎ、赤字を止める 利益 13 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 711 円141 億円
都心の物件の需要は続き、会社は年に 7 件ほどの物件を売る。売却の利益率は 22% と、含み益の厚い物件が減る分だけ下がる。賃料は物価並みに上がり、貸す床は売った分だけ少し減る。服飾は損益がほぼ均衡し、飲食も赤字が止まる。本社の費用は物価とともに膨らむが、事業の整理で一部を削る。借り換えで利払いは年 10 億円に増え、最終利益は 13 億円前後に戻る。ROE は 6〜7% で資本コストには届かない。配当は今の額を保つ。建物の修繕の費用は建築費とともに増えるが、売却で古い建物を手放すので、重さは限られる。会社は不動産の会社としての形を取り戻すが、資本の稼ぐ力はまだ弱い。
- 不動産の賃貸:数量 58.0(貸している床面積(千㎡、推定))× 価格 9.79(1 ㎡あたりの年間賃料(万円・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 23 億円。58.0 千㎡ × 1 ㎡ 9.79 万円(今の 1.36 倍)、営業利益率 41%
- 不動産の売却(再生・開発):数量 7.0(売った物件の数(件・年、推定))× 価格 15(1 件あたりの売却額(億円・名目))→ 売上 105 億円・営業利益 23 億円。7 件 × 1 件 15.0 億円(今の 1.36 倍)、営業利益率 22%
- 服飾:数量 48.0(売った服の点数(万点・年、推定))× 価格 2.04(1 点あたりの売上(万円・名目))→ 売上 98 億円・営業利益 1 億円。48 万点 × 1 点 2.04 万円(今の 1.36 倍)、営業利益率 1%
- 外食:数量 22.0(店の数(店))× 価格 1.10(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。22 店 × 1 店 1.10 億円(今の 1.36 倍)、営業利益率 0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 141 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:服と飲食の赤字が止まり、不動産の売却が年に数件続く形。2026/09 期の売却の好調が、規模を落としつつ続けば届く。
中立 37% 不動産の稼ぎを利払いと赤字が食う 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 235 円47 億円
不動産は今と同じように稼ぐ。賃料は物価並みに上がり、年に 6 件ほどの物件を売って 20% ほどの利益を得る。ただし昔に安く買った物件は減り、新しい物件の売却益は薄くなる。服飾は赤字を縮めるが黒字には届かず、飲食も小さな赤字が残る。本社の費用は物価とともに膨らむ。建物の修繕の費用は建築費とともに増え、減価償却を上回って現金を吸う。借金は物件とともに残り、借り換えで利払いは年 11 億円に増える。最終利益は 5〜6 億円にとどまり、ROE は 3% 前後のままだ。配当は年 1.2 億円を続ける。株主の資本は 10 年でほとんど増えない。
- 不動産の賃貸:数量 55.0(貸している床面積(千㎡、推定))× 価格 9.65(1 ㎡あたりの年間賃料(万円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 21 億円。55.0 千㎡ × 1 ㎡ 9.65 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 40%
- 不動産の売却(再生・開発):数量 6.0(売った物件の数(件・年、推定))× 価格 15(1 件あたりの売却額(億円・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 18 億円。6 件 × 1 件 14.7 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 20%
- 服飾:数量 45.0(売った服の点数(万点・年、推定))× 価格 2.01(1 点あたりの売上(万円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 −2 億円。45 万点 × 1 点 2.01 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 -2%
- 外食:数量 18.0(店の数(店))× 価格 1.09(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。18 店 × 1 店 1.09 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 -5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 47 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:服と飲食の赤字が縮みつつも残り、借金の利払いが金利とともに増える形。過去 10 年の ROE 2% の延長に近く、最もありそうな姿として厚く置いた。
やや悲観 24% 売れる物件が尽き、赤字が残る 利益 −13 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 125 円25 億円
金利の上昇で投資家の求める利回りが上がり、都心の物件の値段は伸びない。会社は年に数件しか物件を売れず、売却の利益率も 12% に落ちる。服飾は縮む市場で赤字を続け、飲食も店を閉じきれずに損失を出す。本社の費用は減らない。借り換えで利払いは年 12 億円に増え、最終損益は赤字になる。会社は物件を売って借金を返そうとするが、売るほど賃料の元も減り、利益の柱が細っていく。株主に残るのは、物件の含み益のうち、借金を返して残る分にとどまる。配当は続くが、資本は損失で削られ、自己資本は今の半分以下になる。財務制限条項に触れないよう、物件を安く手放す場面も出てくる。
- 不動産の賃貸:数量 50.0(貸している床面積(千㎡、推定))× 価格 9.22(1 ㎡あたりの年間賃料(万円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 18 億円。50.0 千㎡ × 1 ㎡ 9.22 万円(今の 1.28 倍)、営業利益率 38%
- 不動産の売却(再生・開発):数量 3.0(売った物件の数(件・年、推定))× 価格 13(1 件あたりの売却額(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 5 億円。3 件 × 1 件 13.2 億円(今の 1.20 倍)、営業利益率 12%
- 服飾:数量 40.0(売った服の点数(万点・年、推定))× 価格 1.86(1 点あたりの売上(万円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 −4 億円。40 万点 × 1 点 1.86 万円(今の 1.24 倍)、営業利益率 -5%
- 外食:数量 15.0(店の数(店))× 価格 0.97(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 −2 億円。15 店 × 1 店 0.97 億円(今の 1.20 倍)、営業利益率 -10%
倍率:最終損益が赤字なので PBR で。稼ぐ力は残らず、賃貸の物件の含み益の税後を床とし、今の自己資本に 0.155 倍を掛けた。
確率:金利の上昇で物件の値段が伸びず、売却益が細る一方、服と飲食の赤字が続く形。経営の資本の使い方を見ると、慎重な見方に厚い重みを置くべきだ。
悲観 14% 不動産の値下がりで借金だけが残る 利益 −25 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 40 円8 億円
金融の引き締めで都心の物件の値段が 3 割下がる。会社が持つ物件の値打ちは借金の額に近づき、銀行は財務制限条項を盾に返済を求める。会社は値下がりした物件を投げ売りし、売却で損を出す。服飾と飲食も赤字を広げ、最後はたたむことになる。利払いは年 13 億円に増え、自己資本は減損と損失で大きく削られる。生き残るために、上位の株主が安い値段で会社を引き取る可能性もある。少数株主に残るのは、借金を返した後のわずかな正味の資産だけだ。服と飲食に注いだ資本も、ほとんど戻らない。会社は存続しても、もう不動産で稼ぐ会社とは呼べない姿になる。
- 不動産の賃貸:数量 42.0(貸している床面積(千㎡、推定))× 価格 8.28(1 ㎡あたりの年間賃料(万円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 12 億円。42.0 千㎡ × 1 ㎡ 8.28 万円(今の 1.15 倍)、営業利益率 33%
- 不動産の売却(再生・開発):数量 1.0(売った物件の数(件・年、推定))× 価格 11(1 件あたりの売却額(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。1 件 × 1 件 11.0 億円(今の 1.00 倍)、営業利益率 -10%
- 服飾:数量 30.0(売った服の点数(万点・年、推定))× 価格 1.73(1 点あたりの売上(万円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 −5 億円。30 万点 × 1 点 1.72 万円(今の 1.15 倍)、営業利益率 -10%
- 外食:数量 8.0(店の数(店))× 価格 0.89(1 店あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 −1 億円。8 店 × 1 店 0.89 億円(今の 1.10 倍)、営業利益率 -20%
倍率:赤字なので PBR で。物件の値下がりで正味の資産はほぼ消え、借金を返した後に残る分(約 8 億円)を床とし、今の自己資本に 0.05 倍を掛けた。
確率:金融の引き締めや景気の深い谷で都心の物件の値段が 3 割落ちる、リーマン級の筋書き。借金が総資産の 6 割に達するので、無視できない重みを置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産の賃貸
都心のオフィスビル・レジデンスを貸して賃料を得る。売るまでの 1〜5 年に持つ物件の賃料も含む。
| 数量貸している床面積(千㎡、推定) | 価格1 ㎡あたりの年間賃料(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 62.5 | 7.20 | 45 | 18 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 9.65 | 53 | 21 |
取り方:賃料の開示が無いので推定。物件の売却が少なかった 2015〜2023 年の売上が毎年 45 億円前後なので、これを賃料とみた。都心の賃料を 1 ㎡あたり月 6 千円(年 7.2 万円)として床面積は約 6.25 万㎡。利益は不動産の利益 41.4 億円のうち約 18 億円を賃貸の分と推定した。減価償却は取得した時の値段のままで物価で増えない(固定資産の建物 19 億円の償却は年 1 億円前後で 10 年後もほぼ同じ。売るための物件は償却しない)。修繕と建て替えは建築費で膨らむので、利益率は 40% 前後に置き、物価の分だけ上げなかった。
不動産の売却(再生・開発)
買ってリニューアルした物件や開発した物件を、投資家や事業会社に売る。
| 数量売った物件の数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの売却額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 5.0 | 11 | 55 | 23 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 15 | 88 | 18 |
取り方:不動産の売上 100.1 億円から賃料の約 45 億円を引いた 55 億円を売却とし、5 件 × 1 件 11 億円と推定した。利益は不動産の利益 41.4 億円から賃貸の分を引いた約 23 億円で、昔に安く買った物件の含み益が利益になっている。
服飾
子会社のフランドルなどが婦人服を企画・生産し、百貨店や自社の店で売る。
| 数量売った服の点数(万点・年、推定) | 価格1 点あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 47.8 | 1.50 | 72 | −9 |
| 10 年後 中立 | 45.0 | 2.01 | 91 | −2 |
取り方:点数の開示は無いので推定。服飾の売上 71.7 億円を、百貨店向けの婦人服の 1 点あたり平均 1.5 万円とみて約 48 万点と置いた。
外食
子会社の TAKEWAKA などが飲食店を営む。
| 数量店の数(店) | 価格1 店あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 15.0 | 0.81 | 12 | −10 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 1.09 | 20 | −1 |
取り方:店の数の開示は無いので推定。外食の売上 12.2 億円を 1 店あたり年 0.81 億円とみて 15 店と置いた。出店の準備の費用が重く、損失が売上に近い。
リスクと懸念
借金と金利
有利子負債は 339 億円で総資産の 6 割に達する。営業利益で利払いを 1 倍ほどしか賄えず、借り換えで金利が上がれば利払いは倍近くに増える。財務制限条項の付いた借入もあり、業績が悪化すると返済を求められるおそれがある。
服飾と外食の赤字
2025/09 期は服飾で 9 億円、外食で 10 億円の赤字を出した。不動産の利益の半分近くを食っている。立て直しが進まなければ、毎年の利益は利払いと赤字に消え、株主の資本は増えない。
売却益の先細り
物件を売って出る利益は、昔に安く買った物件の含み益によるところが大きい。そうした物件が減れば売却益は細り、売るたびに賃料の元も減る。2026/09 期の好調が続く保証は無い。
不動産の値下がり
金利の上昇や景気の谷で都心の物件の値段が下がれば、売却益が消えるだけでなく、借金に対する資産の厚みが失われる。借金の重い会社ほど、値下がりの痛みは株主に集中する。
経営と少数株主
上位 2 人の株主が 6 割を持ち、経営の判断に外の目が届きにくい。本業と関係の薄い事業への投資が続いても、少数株主には止める手段が乏しい。会社を非公開にする時の値段も、経営側の都合で決まりうる。
今後の分かれ目
- 服飾か外食を売るか閉じると発表したら
- 毎年の赤字が止まるとみて、やや楽観の重みを上げ、中立の利益を見直す。
- 物件の売却で有利子負債が 250 億円を下回ったら
- 利払いの負担が軽くなるとみて、中立の利益と k の借金の分を見直す。
- 服飾と外食の赤字が 2 年続けて広がったら
- 資本の使い方が変わらない証拠とみて、やや悲観と悲観に重みを移す。
- 都心の物件の取引利回りが 1% 以上上がったら
- 売却益と資産の厚みが削られるとみて、悲観側の床を下げる。
- 上位の株主が会社の非公開化を打ち出したら
- 提示の値段を本質価値と比べて評価し直す。
見ておくもの
- 不動産・服飾・外食のセグメント利益
- 有利子負債の残高と支払利息
- 物件の売却の件数と利益率
- 賃貸等不動産の時価と簿価の差
- 新しい買収や出店の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は市場の値付けから置かず、事業の ROE と資本コスト 9% から決めた。全部の筋書きで ROE が k に届かないので、PER の上限は 1÷k にした。悲観側は赤字で PBR を使い、床は帳簿でなく、物件の含み益の税後と借金を返した後に残る正味から出した。今の PBR 0.3 倍は割安の根拠にしていない。新リース会計の影響は、服飾と外食の店の賃借が BS に載る点だけで小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.72→11.37 倍・やや楽観 PER 7.69→11.11 倍・中立 PER 8.21→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。