結論
JALCOホールディングスは、パチンコホールの土地・建物を買って貸す会社だ。ほかに、物件の売買、M&Aの助言、貸金も手がける。従業員は21人で、借入は約600億円に達する。
筆者の結論は「はっきり割高」だ。10年後の中立でも時価総額は今の2割強にとどまり、確率で重みづけた本質価値は今を7割ほど下回る。理由は単純で、賃貸の営業利益が利払いに届かない。年25億円の利息を、物件の売却益とM&A報酬で埋めている形だ。
2026年3月期の営業利益49億円のうち、17億円はM&Aの報酬で、10億円台は販売用不動産の売却益だ。どちらも毎年は入らない。会社の当初予想でも、2027年3月期の経常利益はほぼゼロだった。
配当は年約20億円で、減配しない方針を掲げる。この配当を続ける体力は、減価償却の積み上げと物件の入れ替えにある。ただし自己資本比率は20%で、物件価格が数%下がるだけで自己資本が削られる。業界の縮小も重い。ホールは4年で24%減った。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、物件の価値と、その上に乗る借金を分けて考える。物件は本物の資産で、帳簿では自己資本が約190億円ある。しかし、問題は資産ではなく、資産が稼ぐ力だ。賃貸の営業利益が約20億円なのに、利息が約26億円かかる。稼ぎより利息が大きい資産の持ち方では、株主に利益は残らない。
利益の多くは、売却益とM&A報酬だ。これは事業というより案件で、毎年繰り返せる保証がない。経営者が優秀であれば案件を積み上げられるが、取引先はオリックス不動産など3社に偏り、人員は21名だ。再現性を見込んで高い値段を払うのは危うい。
筆者が気にするのは、金利上昇の置き方だ。10年国債3%の世界では、借り換えのたびに利息が増え、物件価格の上昇は期待しにくい。物価が3%上がっても、ホールの長期固定の賃料はそこまで上がらない。借金の固定と、賃料の固定が重なるので、名目の資産が増えても自己資本は増えにくい。
安全域は、この値段にはない。物件の帳簿価値(約190億円)でさえ、時価総額(約375億円)の半分だ。帳簿を超える部分は、成長の期待にすぎない。
何で稼ぐ会社か
事業は3つに分けて見ると分かりやすい。1つめは賃貸だ。子会社のジャルコがホール企業から土地建物を買い、事業用の長期契約で貸す。年間の賃貸料はジャルコが約34億円、エイコスが約4億円(2026年3月期)。物件はパチンコホール、商業施設、最近は系統用蓄電所にも広がった。
2つめは売買だ。販売用不動産を仕入れて売る事業で、売上は100億円を超える。買い手は特定の不動産会社に偏り、オリックス不動産が売上の40%、エムエル・エステートが18%、善都が12%を占める。2026年6月には、賃貸用物件の保有目的を販売用に変えると決めた。
3つめがM&Aの助言と貸金だ。2026年3月期のM&A報酬は売上で20億円、利益は17億円で、前期は赤字だった。貸金はソーシャルレンディングを含み、残高が前期の3.4倍の32億円に増えたが、利益は1億円にとどまる。
設備投資は1年で191億円と大きい。ほとんどが賃貸用不動産の取得で、総資産は917億円まで膨らんだ。人員は取締役3名、従業員21名の小さな体制だ。1人あたりの売上は8億円を超え、案件を少人数でこなす会社と言える。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、ホール業界の物件情報と、案件を機動的に組む力にある。ホール企業は設備投資を減らしたい、土地建物を手放して資金をつくりたい、という場面が多い。そこへ資金を出して物件を買い、貸し戻す。買い手が少ない物件を拾える点が、ほかの不動産会社との違いだ。
ただし堀は薄い。借り手はパチンコホールという縮む業界の企業で、物件の用途も限られる。借り手が撤退すると、別の用途に転用する費用と時間がかかる。売買は上位3社に売上が偏り、M&A報酬は関連案件の進み具合で年によって大きく振れる。
資本効率はいびつだ。自己資本利益率は2024年3月期の22%から2025年3月期の0.3%まで振れ、10年の中央値は7%台だ。利益のばらつきが大きいのに、配当を年約20億円で固定している。経営判断が代表取締役社長に集中している点も、有報はリスクとして挙げる。
利息が営業利益の半分を食う構造は、会社の質の最大の弱点だ。営業利益は利払いの1.9倍しかなく、金利が1%上がると利払いが6億円増える。借り換えが毎年続くので、この負担は後ろへ重くなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
パチンコ業界は、長い縮小の途中にある。ホールの数は2021年の8,456店から2025年の6,464店へ減り、年に3〜4%のペースで減っている。経営法人も1,130社まで減り、再編が続く。一方で売上は12兆円規模で、スマスロの普及でパチスロの設置台数だけは増えた。客単価は上がっても、人口は減る。
この構造は、貸す側に二重の影響を及ぼす。1つは、店舗の閉鎖や大手への集約で、借り手が減ること。もう1つは、出玉規制や機種の入れ替え費用が重く、ホールの利益が薄いことだ。賃料の引き上げ交渉は難しく、物件は用途が狭いので、空いた時の転用費用も重い。
金利は反対側から効く。10年国債が3%になる世界では、不動産の利回り(キャップレート)が上がり、物件価格に下押しの力がかかる。物件を高い値段で買った会社ほど、売却益が出にくくなる。借入は上がる金利で借り換える。
蓄電所は新しい種だ。電力の需給を調整する系統用蓄電所は、会社が関わる分が11件、約90MWhまで増えた。ただ、金額はまだ小さく、制度や電力市場の価格に左右される。
資本政策と M&A
配当は総額で年約20億円だ。賃貸のストック収入を基準にして、減配しない累進配当を掲げる。2026年3月期の配当性向は連結で110%に上り、純資産配当率は10%を超える。配当は利益ではなく、減価償却を足した現金の流れで払っている。
成長は借入が前提だ。2026年3月期は、営業活動で86億円の現金を得たが、物件取得に191億円を使い、差額を借入で埋めた。借入金は約609億円(短期58億円、長期528億円、社債23億円)、返済期限はジャルコが2027年1月から2034年6月、提出会社が2040年8月に分かれる。
株主には資金を出す大口が並ぶ。代表取締役社長の田辺順一氏が16.2%、カタリストが15.9%を持ち、カタリストは2025年3月末時点で議決権の約35%を握る「その他の関係会社」だった。2024年8月に第4回新株予約権(2,430万株分)を出しており、行使されれば株数は2割ほど増える。行使価額と残数は未確認で、計算には入れていない。
10年以内に買収される確率は、kabufu の目安で18%ある。買い手がつくなら物件の価値(NAV)に近い値段だが、少数株主が受け取る保証はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の稼ぎは、見かけより強い。2026年3月期の営業利益は49億円、営業キャッシュフローは86億円で、年に100億円規模の物件を仕入れて入れ替えられる体制ができた。2027年3月期の会社予想は7月に経常利益1.7億円へ上方修正され、利益が当初予想をはるかに超えた。売買の回転が効いている証拠だ。
ホール業界の再編は、この会社に追い風になる。経営体力が弱いホール企業は、土地建物を手放して資金をつくる。JALCOはその買い手として、他社にない情報と資金調達の速さを持つ。取得から売却までの回転を速めれば、保有期間の短い案件で毎年10億円台の利益を出せる。
蓄電所も加わる。関与する11件、約90MWhの蓄電所は、2026年10月から2027年1月にかけて需給調整市場に参入する計画だ。物件の入れ替えで蓄電所の比率が上がれば、ホール業界の縮小に左右されにくい賃貸の柱が育つ。
配当は減配しない方針で、利回りは5%を超える。5%の利回りと、物件の入れ替えで積み上がる売却益があれば、株主の取り分は十分に厚い。
慎重な見方
賃貸の稼ぎは、利息に届かない。2026年3月期の賃貸の営業利益は約20億円と推定され、利払いは25.6億円だった。この差を埋めたのは、販売用不動産の売却益とM&A報酬だ。どちらも、案件が来なければゼロになる。2027年3月期の当初予想で経常利益がほぼゼロだったのが、実態に近い。
金利は上がる。借入は609億円で、10年国債が3%の世界では新しい借入は5%台になる。借り換えのたびに利払いは増え、物件の利回りが追いつかない。ホールの数は4年で24%減り、借り手は縮む業界の企業だ。賃料の引き上げは難しく、空いた時の転用費用は重い。
取引先も偏る。売買の売上のうち40%はオリックス不動産、18%はエムエル・エステート、12%は善都という3社だ。1社が買わなくなれば、売上は一気に落ちる。M&A報酬は関連案件の進み具合で決まり、前期は赤字、今期は17億円と、毎年は読めない。
自己資本比率は20%で、物件の評価が数%下がるだけで自己資本が削られる。配当は純利益を大きく上回り、純資産配当率は10%を超えている。減価償却の積み上げで払っているが、物件の価値が下がれば、続けられない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が圧倒的に強いと判断した。賃貸の稼ぎが利息に届かない構造は、数字の上で動かせない。楽観の見方が頼る売却益とM&A報酬は、毎年入る保証がなく、取引先も3社に偏る。中立の確率は4割弱に置いたが、そこでも自己資本利益率は資本コストを下回る。悲観側に3割台後半を寄せたのは、借入の重さと業界の縮小が同時に効くからだ。楽観は6%にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 99 円110 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 126 円139 億円)。 今の値に割り戻すと 120 円133 億円、今との差 −62.8%、 期待の年率 −3.5%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 295 円326 億円 | 208 円230 億円 | +55.7% | +4.5% | 30 円33 億円 |
| やや楽観 | 17% | 154 円170 億円 | 181 円200 億円 | +3.7% | +0.4% | 57 円63 億円 |
| 中立 | 37% | 106 円117 億円 | 167 円185 億円 | −15.5% | −1.7% | 101 円112 億円 |
| やや悲観 | 28% | 51 円57 億円 | 63 円70 億円 | −64.5% | −9.8% | 32 円35 億円 |
| 悲観 | 12% | 17 円19 億円 | 27 円30 億円 | −86.3% | −18.0% | 5 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 99 円110 億円 | 126 円139 億円 | −30.2% | −3.5% | 226 円249 億円 |
今の株価時価総額 323 円357 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 6% ホール再編を捉えて物件を回し、蓄電所も育つ 利益 26 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 295 円326 億円
縮むホール業界の再編が進み、体力の弱い企業が土地建物を手放す。JALCOは買い手として物件を積み上げ、賃貸残高は10年で1.5倍に増える。蓄電所の比率が上がり、賃料の伸びは物価並みの1.45倍に届く。
売買は取引先を広げて売却額が1.1倍になり、利益率も15%に上がる。M&Aの報酬は件数が定着して売上25億円規模になる。営業利益は80億円近くまで増える。
利息は借入が800億円に増えて42億円だが、営業利益が上回り、純利益は25億円ほど。配当は減配せず、段階的に増える。それでも自己資本利益率は17%どまりで、倍率はほどほどだ。
- 賃貸(ホール・商業・蓄電所):数量 905(賃貸用不動産の期末簿価ベース残高(億円・実質。今の値段で測る))× 価格 0.09(残高あたりの賃料(賃料÷残高。物価込みの名目。期中取得の通年化を含む))→ 売上 84 億円・営業利益 49 億円。残高1.5倍・賃料1.45倍(通年化と物価)、営業利益率58%
- 売買(販売用不動産):数量 23.9(売却した標準物件の件数相当(実質。1件=今の値段で5億円相当))× 価格 6.25(1件あたりの平均売却額(億円・名目))→ 売上 149 億円・営業利益 22 億円。件数1.1倍・単価1.25倍(物件の利回りが上がり、物価に届かない)、営業利益率15%
- M&A助言・貸金・その他:数量 41.2(成約・実行した標準案件の件数相当(実質。1件=今の値段で0.5億円相当))× 価格 0.63(1件あたりの平均報酬・収益(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 17 億円。件数0.9倍・単価1.25倍、営業利益率65%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.2% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.73 倍、時価総額 326 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売買の回転が毎年続き、M&A報酬が定着し、金利の負担を賃貸の拡大が上回る筋書き。条件が多く重なるので6%にとどめた。
やや楽観 17% 物件の入れ替えが回り、M&A報酬も一部残る 利益 15 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 154 円170 億円
賃貸残高は10年で1.25倍、賃料は物価と契約の更新で1.40倍に上がる。売買はこれまでの水準を保ち、利益率は13.5%。M&A報酬は定着の途中で、売上は15%ほど減る。
営業利益は59億円。借入は700億円で、利息は36億円まで増える。純利益は15億円ほどで、2028年3月期の会社計画(純利益14億円)と同じ水準が10年続く姿だ。
配当は今の額を維持し、減価償却を足した現金で賄う。それでも純利益を上回るので、自己資本は127億円まで細る。
ホール業界の縮小は続くが、再編の買い手としての役割が評価され、取引先も広がる。蓄電所は小さく、賃貸の稼ぎを大きくは変えない。利息の増加と売却益の波が、利益をならして見ると横ばいに近い10年だ。
- 賃貸(ホール・商業・蓄電所):数量 754(賃貸用不動産の期末簿価ベース残高(億円・実質。今の値段で測る))× 価格 0.09(残高あたりの賃料(賃料÷残高。物価込みの名目。期中取得の通年化を含む))→ 売上 67 億円・営業利益 37 億円。残高1.25倍・賃料1.40倍、営業利益率55%
- 売買(販売用不動産):数量 21.7(売却した標準物件の件数相当(実質。1件=今の値段で5億円相当))× 価格 6.00(1件あたりの平均売却額(億円・名目))→ 売上 130 億円・営業利益 18 億円。件数1.0倍・単価1.2倍(物件の利回りが上がり、物価に届かない)、営業利益率13.5%
- M&A助言・貸金・その他:数量 34.4(成約・実行した標準案件の件数相当(実質。1件=今の値段で0.5億円相当))× 価格 0.60(1件あたりの平均報酬・収益(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 12 億円。件数0.75倍・単価1.2倍、営業利益率60%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.36 倍、時価総額 170 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年3月期の上方修正と、2028年3月期の会社計画(売上210億円・営業利益59億円)の方向を一部織り込む。実現しやすい形として17%を置いた。
中立 37% 売買益とM&A報酬が細り、賃貸は利息とほぼ同じ 利益 11 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 106 円117 億円
賃貸残高は10年で1.1倍にとどまる。蓄電所と商業施設が加わっても、ホール向けは借り手の減少で伸びない。賃料は契約の更新と通年化で1.36倍、利益率は52%に下がる。
売買は件数が横ばい、利益率は12.5%。M&A報酬は件数0.8倍、売上は19億円。営業利益は50億円ほどで、いまの水準を保つ。
利息は借入640億円で33億円まで増える。純利益は11億円前後で、営業利益の2割強だ。配当は今の額を維持し、純利益を大きく上回る。自己資本は119億円まで細り、自己資本比率は12%台に下がる。
この筋書きでは、会社は物件の入れ替えを続け、借入の総額は大きく変えない。ただし、新しい金利で借り換えるたびに利息が増え、賃貸の稼ぎは利息とほぼ同じになる。株主の取り分は、売買益とM&A報酬が続く間だけ厚い。
- 賃貸(ホール・商業・蓄電所):数量 663(賃貸用不動産の期末簿価ベース残高(億円・実質。今の値段で測る))× 価格 0.09(残高あたりの賃料(賃料÷残高。物価込みの名目。期中取得の通年化を含む))→ 売上 57 億円・営業利益 30 億円。残高1.1倍・賃料1.36倍(通年化1.18倍×契約更新1.15倍)、営業利益率52%
- 売買(販売用不動産):数量 21.7(売却した標準物件の件数相当(実質。1件=今の値段で5億円相当))× 価格 5.75(1件あたりの平均売却額(億円・名目))→ 売上 125 億円・営業利益 16 億円。件数1.0倍・単価1.15倍(金利上昇で物件の利回りが上がり、物価の1.34倍に届かない)、営業利益率12.5%
- M&A助言・貸金・その他:数量 36.6(成約・実行した標準案件の件数相当(実質。1件=今の値段で0.5億円相当))× 価格 0.60(1件あたりの平均報酬・収益(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 13 億円。件数0.8倍・単価1.2倍、営業利益率58%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 117 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の利益のうち、売買益とM&A報酬を会社の計画の7割ほど残し、金利上昇とホール業界の縮小で賃貸の伸びを削る。2つの見方の落としどころなので最も厚い確率を置いた。
やや悲観 28% ホール再編で賃料が下がり、売買が細って赤字になる 利益 −9 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 51 円57 億円
ホールの閉鎖が続き、賃料の引き下げと空室が出る。賃貸残高は物件の売却で0.95倍に減り、賃料は更新時の値下げで1.12倍にとどまる。
売買は取引先のオリックス不動産などが買わなくなり、半分に減る。M&A報酬も関連案件が尽き、売上は10億円に届かない。営業利益は19億円まで落ちる。
借入は売却で520億円まで減らすが、利息は29億円で、利益を超える。純損失が続き、配当は2年で減らして削る。自己資本は物件の評価損も含め、今の3分の1に縮む。
会社は存続するが、株主への還元はほとんどなくなる。M&A助言は小さな案件に限られ、貸金も回収の遅れで利益を出せない。ホール業界の縮小の速さと、金利の上がり方が、同時に悪い方へ振れた姿である。
- 賃貸(ホール・商業・蓄電所):数量 573(賃貸用不動産の期末簿価ベース残高(億円・実質。今の値段で測る))× 価格 0.07(残高あたりの賃料(賃料÷残高。物価込みの名目。期中取得の通年化を含む))→ 売上 41 億円・営業利益 20 億円。残高0.95倍・賃料1.12倍(更新時の値下げ)、営業利益率48%
- 売買(販売用不動産):数量 10.9(売却した標準物件の件数相当(実質。1件=今の値段で5億円相当))× 価格 5.00(1件あたりの平均売却額(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 4 億円。件数0.5倍・単価1.0倍、営業利益率8%
- M&A助言・貸金・その他:数量 13.7(成約・実行した標準案件の件数相当(実質。1件=今の値段で0.5億円相当))× 価格 0.55(1件あたりの平均報酬・収益(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 3 億円。件数0.3倍・単価1.1倍、営業利益率40%
倍率:赤字で稼ぐ力から値を出せない筋書きなので、今の自己資本(189億円)に掛けて置いた。ROEがマイナスで、k 9.5%に届かない会社の価値は帳簿を大きく下回る。0.3倍は、物件を売って借入を返したあとの残りが小さいことを織り込んだ。EVでも見た結果、EV÷営業利益は33倍と高く出るが、営業利益が谷にある筋書きなので、利益の倍率では価値を測れない。
確率:2025年3月期のような純利益ほぼゼロの年が、利息の増加で赤字に変わる筋書き。2024〜2026年の3期で1回起きており、金利上昇が加わるので28%を置いた。
悲観 12% ホールの縮小が加速し、借入の返済のため物件を投げ売る 利益 −17 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 17 円19 億円
出玉規制の強化と若者離れで、ホール数が今の半分に向かって減る。借り手が撤退した物件は転用先がなく、賃貸残高は0.8倍まで減り、賃料も下がる。売買は買い手がつかず、M&A報酬も消える。
営業利益は4億円まで落ち、借入の利息だけで30億円近い。金融機関は担保余力を見て追加の担保や返済を求め、会社は物件を安値で売って借入を縮める。売却損と減損で自己資本は50億円を割る。
配当は1年半で止まる。株主の取り分は、売って借入を返したあとにわずかに残る分だけで、稼ぐ力では測れない。
この筋書きでは、買収される話も出にくい。物件の価値が借入を下回れば、買い手が見るのは担保余力で、株式に価値を認める人はいない。
- 賃貸(ホール・商業・蓄電所):数量 482(賃貸用不動産の期末簿価ベース残高(億円・実質。今の値段で測る))× 価格 0.06(残高あたりの賃料(賃料÷残高。物価込みの名目。期中取得の通年化を含む))→ 売上 31 億円・営業利益 9 億円。残高0.8倍・賃料1.0倍、営業利益率30%(空室と値下げ)
- 売買(販売用不動産):数量 4.3(売却した標準物件の件数相当(実質。1件=今の値段で5億円相当))× 価格 5.00(1件あたりの平均売却額(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。件数0.2倍・単価1.0倍、営業利益率5%
- M&A助言・貸金・その他:数量 4.6(成約・実行した標準案件の件数相当(実質。1件=今の値段で0.5億円相当))× 価格 0.50(1件あたりの平均報酬・収益(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。件数0.1倍・単価1.0倍、営業利益率20%
倍率:赤字で、稼ぐ力は価値にならない。床は今の自己資本(189億円)に掛けた0.1倍で、物件を安値で売って借入を返したあとの残り(約25億円)より低く置いた。EVでも見た結果、EV÷営業利益は157倍と極端に高いが、営業利益が谷にある筋書きで、利益の倍率では価値を測れない谷の姿。
確率:業界規制の強化とホールの閉鎖が重なり、物件価格が下がって借入の担保余力が尽きる筋書き。自己資本比率が20%しかなく、物件価格が1割下がると自己資本の半分が消えるので、5%を超えて12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸(ホール・商業・蓄電所)
パチンコホールの土地建物と商業施設、系統用蓄電所を保有して貸す。長期の事業用契約が中心。
| 数量賃貸用不動産の期末簿価ベース残高(億円・実質。今の値段で測る) | 価格残高あたりの賃料(賃料÷残高。物価込みの名目。期中取得の通年化を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 603 | 0.06 | 38 | 21 |
| 10 年後 中立 | 663 | 0.09 | 57 | 30 |
取り方:賃料は有報の開示で、ジャルコ約34.4億円とエイコス約3.9億円の計38.4億円。残高は有形固定資産603億円に近いとみて、賃料÷残高=6.4%を価格とした(期中に191億円を取得したため、通年では約7.5%に上がる)。営業利益21億円は、賃料から減価償却(連結で約12億円)と固定資産税・維持費・人件費を引いた筆者の推定で、開示はない。セグメント利益10.6億円は、売買と合わせた不動産の営業利益約36億円から、割り当てた利息約25億円を引いた値と読める。数量は実質で、物価は賃料の価格に入れる。
売買(販売用不動産)
物件を仕入れて、不動産会社などに売る。売却の時期と額は年で大きく振れる。
| 数量売却した標準物件の件数相当(実質。1件=今の値段で5億円相当) | 価格1件あたりの平均売却額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.7 | 5.00 | 109 | 15 |
| 10 年後 中立 | 21.7 | 5.75 | 125 | 16 |
取り方:不動産事業の売上147億円から賃料38.4億円を引いた108.6億円を、販売用不動産の売却とした(開示は不動産事業の合計のみ)。1件5億円相当の標準物件に換算して21.7件分。営業利益15億円は、全体の営業利益48.75億円から、賃貸21億円、M&A・貸金18.7億円を引き、全社費用5.9億円を戻した差で、筆者の推定。相手先はオリックス不動産40%、エムエル・エステート18%、善都12%で偏る。
M&A助言・貸金・その他
M&Aの助言(成功報酬)、ソーシャルレンディングを含む貸金、設備機器のレンタル。
| 数量成約・実行した標準案件の件数相当(実質。1件=今の値段で0.5億円相当) | 価格1件あたりの平均報酬・収益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.8 | 0.50 | 23 | 19 |
| 10 年後 中立 | 36.6 | 0.60 | 22 | 13 |
取り方:M&Aコンサルティング事業の売上20.1億円(利益17.1億円)と、貸金事業2.84億円(利益0.98億円)の合計22.9億円。1件0.5億円相当で45.8件分。前期はM&Aが1.6億円の赤字、今期は関連案件で大きく黒字で、年による振れが大きい。営業利益18.7億円は両事業の利益の合計。
リスクと懸念
利払いが営業利益に迫る借入の重さ
借入は約609億円で、営業利益は利払いの1.9倍しかない。10年国債が3%の世界では、借り換えのたびに利息が増える。金利が1%上がると利払いは約6億円増え、賃貸の稼ぎはさらに薄くなる。
パチンコホール業界の縮小
ホールは2021年の8,456店から2025年の6,464店へ4年で24%減った。借り手が閉鎖すると、物件の転用に費用と時間がかかる。出玉規制や若年層の離脱が強まると、賃料の引き下げ要求も出る。
売買益とM&A報酬の再現性
営業利益49億円のうち、M&A報酬が約17億円、売却益が約15億円と推定される。どちらも案件次第で、M&Aは前期は赤字だった。売買の相手は上位3社に偏り、1社が離れると売上が落ちる。
自己資本の薄さと物件価格の下落
自己資本比率は20.6%で、総資産917億円に対し自己資本が189億円しかない。物件の評価が1割下がると、自己資本の半分近くが消える。減損や売却損が出ると、借入の条件緩和や追加担保を求められる。
ガバナンスと人員の細さ
従業員は21名、取締役3名で、社長への依存を有報もリスクに挙げる。売買の取引先との関係、関連案件のM&A報酬、新株予約権の割当先との関係など、少数株主の目で確認しにくい取引が多い。
新株予約権による希薄化
2024年8月に第4回新株予約権(2,430万株分)を出した。一部は放棄されたが、残数と行使価額は確認できていない。行使されれば株数は2割ほど増え、1株の価値が薄まる。この計算は入れていない。
蓄電所など新規事業の実行
系統用蓄電所は関与する11件、約90MWhまで増えたが、投資額と収益はまだ小さく、制度や電力市場の価格に左右される。新しい事業に借入で投資する形は、金利上昇の中で負担が増える。
今後の分かれ目
- 賃貸の営業利益が利払いを上回る水準まで、取得物件の利回りが通年で上がったら
- 中立の純利益を上げる余地が出る。ただし、利益の質は売買益に頼らない形になるので、倍率も上限寄りに置いてよい。
- 売買の取引先(オリックス不動産など)が買わなくなる、または売却が計画を大きく下回ったら
- やや悲観に確率を移す。営業利益が利払いを下回るため、赤字の筋書きを厚くする。
- 金融機関が担保余力を理由に追加の担保や返済を求めたら
- 悲観の確率を引き上げる。配当の継続は難しくなり、物件の売却を急ぐので、売却損も見込む。
- 第4回新株予約権が大量に行使されたら
- 株数が増える分の希薄化を計算に入れる。払い込みで借入を返せるなら、利息の負担は軽くなる。
- ホールの閉鎖が想定を超えて加速し、出玉規制が強まったら
- 賃貸の残高と賃料の前提を引き下げる。ホール向けの比率が高いほど、悲観に寄せる。
- TOBや大株主による買い増しが起きたら
- 提示価格が物件の価値(NAV)に近いかを確かめる。今の値段がNAVを大きく上回るので、TOBが実現しても少数株主が得をするとは限らない。
見ておくもの
- 賃貸の営業利益と利払い額(連結の支払利息25.6億円)
- 売買の取引先の構成(上位3社の比率)と売却額
- 借入の平均金利と、2027年1月以降の借り換え条件
- ホール数と設置台数の推移(警察庁の統計)
- 新株予約権の行使状況と株数
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROE(中立で約9%)が k 9.5%(基本7.5%に循環+0.5%・値決め+0.5%・借金+1.0%・寿命+0.75%)に届かないので、PERの上限は1÷k=約9.8倍。そこから利益の質(売却益とM&A報酬に偏る)と借入の重さを考えて約7.7割の7.5倍に置いた。今の株価や今のPER・PBR、同業の倍率は使っていない。時価総額の値は、物件の帳簿価値(自己資本189億円)より低く出るが、これは稼ぐ力が資本コストに届かない会社の「ためた利益は額面未満」の考えによる。ただし、これは少数株主が現金化を決められない前提であり、買収や清算が起きれば物件の価値に近づく。その可能性は楽観側(TOB、18%)と悲観の床に入れた。利払いは、brief.py の10年−14億円の目安でなく、実際の利払い25.6億円から、借入620〜640億円×新しい金利5.2%(国債3%+弱い会社の上乗せ2.2%)で置いた。数量は実質、物価と契約の固定は賃料の価格に入れ、二重がけはしていない。新リース会計基準は、会社が賃借人でなく貸し手なので影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。