結論
和田興産は、神戸と阪神間でマンションを分譲する会社だ。賃貸のマンションも2,000戸あまり持つ。筆者の結論は、今の値段は妥当で、割安とは言えないというものだ。利益の6倍ほどで買えるのは、借金が重く、金利と建築費に利益が削られると見えているからだ。
強みは、神戸での地盤だ。供給戸数は神戸市内で27年連続の首位を保ち、「ワコーレ」の名は関西で通る。用地の仕入れと企画に特化し、建築と販売は外へ出す身軽な作りだ。2010年2月期に一度赤字を出しただけで、配当も安定して出してきた。
ただ、利益の質は下がっている。2026年2月期は営業利益が50億円と過去最高に近いが、今期の計画は43億円で、中間の分譲の利益率は9%台まで落ちた。建築費の上昇と、借入の金利の上昇が重なる。
純有利子負債は550億円、時価総額の4倍に上る。借り換えの金利が3.5%になれば、利払いは年25億円ほどになる。10年の中立で、利益は今と同じ水準にとどまると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地域に強い回転型の開発会社」だ。投下した資本が回転して利益を生む反面、借金で在庫を持つので、市況が悪くなると株主の取り分が先に削られる。評価できる点と心配な点が、同じ借金に宿っている。
安全域は、純有利子負債が時価総額の4倍という重さの前では、厚くない。価格が下がっても、借入の返済は消えない。賃貸の含み益と、2,000戸の賃貸が生む安定した賃料が、守りになる程度だ。
利益の6倍という値段は、借金の重さと、金利の上昇で利益が減る不安を映す。筆者は、その見方は的外れでないと考える。10年の中立では、利益が今と変わらないので、値段が上がる理由は見当たらない。
持ち続けたいかと問われれば、利益率が回復する確証が出るまで、慎重に見る。創業家の持ち分が厚く、少数株主の立場が弱い点も、割り引く理由になる。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、分譲マンションの開発と販売だ。2026年2月期の売上421億円のうち、分譲マンションが341億円を占め、引き渡しは610戸だった。1戸あたりの価格は5,600万円前後で、近畿圏の中でも手の届く価格帯の物件が多い。
仕組みは、用地の仕入れと企画を自社で行い、設計・施工・販売は外部に任せる型だ。常設のギャラリーで複数の物件を売り、販促費を抑える。物件は30戸から50戸の中規模が中心で、大手や鉄道会社が好む大型の用地とは競合しにくい。
残りの事業は三つあり、いずれも規模は分譲より小さいが、収益の波をならす役目を持つ。賃貸は景気の波に強く、分譲の谷を支える。戸建て住宅は年40戸ほど。その他の不動産販売は、賃貸マンションやアパートを建てて一棟で売る収益物件で、今期は13件の計画だ。不動産賃貸は、2,143戸を持ち、稼働率は97%、年の収入は約33億円になる。
事業別の利益は、決算の開示を基に、全体の営業利益50億円に合うよう筆者が割り振った推定を含む。また、賃貸の含み益は約70億円と開示されている。
優良さと弱いところ
優良さは、地域に根を張った分譲の実績にある。神戸で供給首位を27年続けられるのは、地元の仲介会社から用地の情報が早く入るからだ。大手が入りにくい中規模の用地で、確かな利益を取る。堀、つまり他社がまねしにくい強みは、地域の中では普通に強い。
ただし、全国で見れば小さく、価格を決める力は弱い。マンションの値段は市場が決め、用地は入札で競る。建築費の上昇は、売値に乗せきれない分が利益を削る。2026年2月期の粗利率は22.7%で、前の期より下がった。
資本の使い方は、借入で用地と建物を買い、売って返す回転型だ。自己資本比率は31%、純有利子負債は自己資本の1.6倍ある。中期計画では、自己資本利益率(ROE)を8%以上、借金の自己資本に対する比率(D/E)を2倍以内とする目標を置く。
筆者が評価するのは、2010年を除いて赤字がなく、配当を安定して増やしてきた点だ。弱みは、利益が分譲の引き渡しの波に左右され、金利の影響を強く受けることだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
近畿圏の新築マンション市場は、首都圏より底堅い。2025年の契約率は73.5%と、好不調の目安の70%を上回った。発売戸数は約1.7万戸で、4年ぶりに増えた。首都圏の発売戸数が1973年以降で最少になったのと、対照的だ。
それでも、市場の重しは増えている。建築費は2021年以降の2〜4割の上昇が定着し、さらに年2〜3%で上がる。用地の値段も高い。売値を上げれば、購入できる層が減る。共働きの世帯が主な買い手になっている。住宅ローン金利は上がり始めており、購入者の負担が重くなる。
競争は、大手と鉄道系、地場の中堅に分かれる。大手は大型の物件を、地場は中規模の物件を取る。和田興産は後者の最大手格で、神戸と明石、阪神間に強い。姫路と大阪へ広げる最中だ。
人口は、関西で長く減る。大阪や神戸の中心部では、共働き世帯の需要が下支えするが、郊外では空室や売れ残りが目立つ。マンションの数量は実質で、10年のうちに1割ほど細ると筆者は見る。物価が3%で上がるので、売値は名目で伸びる。ただし、建築費が同じ速さで上がるので、利益率は伸びない。
資本政策と M&A
還元は、安定配当が基本で、配当性向30%を目安にする。2026年2月期は前の期より増配し、2027年2月期は中間で増配した。利益配分は、事業への再投資に5割から7割、配当に2割から3割、環境関連に1割から2割を回す枠組みだ。株主優待はない。
大株主は、創業家とその資産管理会社が中心で、共同で45%を超える。残りは投資育成会社や信託口だ。流通する株は少なく、買収や非上場化が持ち分の動きで起きる余地はあるが、いま確認できる話はない。
借金は、分譲用地と建物の仕入れに使う。借入金は655億円で、仕掛の販売用不動産は約490億円。売れれば返せる在庫が担保の型だ。金利が上がると、利払いが増え、完成後の売れ行きが鈍れば、借入が残る。
賃貸の含み益は約70億円で、持ち続ければ賃料が利益に入る。したがって、価値に別に足すと二重に数えることになる。新しい分野として、有料老人ホームと系統用の蓄電所に取り組む。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
関西の新築マンション市場は、首都圏より底堅い。契約率は70%を超え、契約済みで未引き渡しの戸数は724戸と、前年より9%増えている。これから引き渡しに入る利益が、すでに積み上がっている。
神戸での27年連続の首位は、用地の仕入れ力の証拠だ。大手と競合しない中規模の物件で、利益率を取れる。収益物件の販売も、今期は一棟の賃貸を13件売る計画で、利益率が高い。投資家向けの売却先も、低金利が続く間は途切れにくい。自己資本比率も31%と、中期計画の目標に向けて上向いてきた。
配当は4期連続で増え、今期も中間で増配した。自己資本は年10%近く増えており、純資産は345億円ある。含み益70億円の賃貸も、土地の値上がりを映して伸びる。
時価総額は純資産の4割で、利益の6倍ほどだ。建築費と金利を差し引いても、この値段には安全域がある。創業家の持ち分が厚いことは、長期の視点で経営する安定要因にもなる。地元の信用がある会社なので、用地情報が先に入る点も、競争で見落とされがちな強みだ。
慎重な見方
金利と建築費が、利益を削っている。今期の営業利益は43億円と、前期より14%減る。中間では、分譲の利益率が9%台まで下がった。建築費の上昇を売値に乗せきれていない。
純有利子負債は550億円と、時価総額の4倍に上る。借り換えの金利が3.5%になれば、利払いは年25億円になる。営業利益の半分近くが利払いで消える計算で、純利益は今の26億円から減る。借入の返済期限が来るたびに、高い金利への借り換えが続く。完成後に売れ残った在庫は、金利を払い続ける重荷になる。新しい分野の老人ホームや蓄電所も、利益が出るまで資金を食う。2010年の赤字が示すとおり、市況が崩れた時の落ち込みは速い。
近畿圏の人口は長く減る。購入者の住宅ローンの金利が上がれば、売れ行きが鈍る。完成後に売れ残ると、金利負担が重くなる。
創業家の持ち分が45%を超え、少数株主が経営に口を出しにくい。時価総額が純資産の4割なのは、市場がこの重さを見ているからだ。安いとは限らない。在庫は値下がりしても借入は減らず、株主の取り分が先に削られる構造は変わらない。
どちらに重みを置いたか
事業の実績と契約の積み上げは確かで、強気の見方を中立の確率の中に取り込んだ。ただし、金利と建築費という慎重な見方の根拠は構造的で、10年のあいだ続く。そのため、中立を最も厚く置き、やや悲観と悲観の合計を4割弱にした。確率は、前の景気後退でも赤字が1期にとどまった実績を考えて、悲観を12%にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,125 円233 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 578 円63 億円)。 今の値に割り戻すと 1,324 円145 億円、今との差 +6.5%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,377 円589 億円 | 867 円95 億円 | +402.3% | +17.5% | 437 円48 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,574 円392 億円 | 730 円80 億円 | +246.3% | +13.2% | 861 円94 億円 |
| 中立 | 36% | 2,093 円229 億円 | 639 円70 億円 | +119.7% | +8.2% | 983 円108 億円 |
| やや悲観 | 25% | 817 円90 億円 | 456 円50 億円 | +2.4% | +0.2% | 318 円35 億円 |
| 悲観 | 12% | 633 円69 億円 | 228 円25 億円 | −30.7% | −3.6% | 103 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,125 円233 億円 | 578 円63 億円 | +117.5% | +8.1% | 2,703 円296 億円 |
今の株価時価総額 1,243 円136 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 関西の需要が底堅く、利益率が山に戻る 利益 50 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 5,377 円589 億円
近畿圏の契約率が高い水準で続き、姫路や大阪への展開が当たる。分譲は年700戸まで増え、1戸あたりの売値は物価を上回って伸びる。営業利益率は過去の最高13%台に近づく。収益物件の販売は年16件に増え、賃貸は3,000戸に広がる。借入は増えるが、利益の伸びが利払いを上回る。配当は性向3割を保ち、増配が続く。建築費の上昇は売値に乗せ、金利の上昇も販売の鈍化を招かない。ただし、この姿が10年続く保証はなく、筆者は楽観の上限として扱う。この筋書きでは自己資本が膨らみ、借入の比率も中期計画の2倍以内に収まるため、株主の取り分も厚くなる。
- 分譲マンション(ワコーレ):数量 700(年間の引き渡し戸数(戸))× 価格 0.84(1戸あたり売上(億円))→ 売上 587 億円・営業利益 73 億円。700戸×単価1.12倍(物価込み)・営業利益率12.5%
- 戸建て住宅:数量 60.0(年間の引き渡し戸数(戸))× 価格 0.62(1戸あたり売上(億円))→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。60戸・営業利益率7%
- その他不動産販売(収益物件・用地):数量 16.0(年間の売却プロジェクト数(件))× 価格 4.99(1件あたり売上(億円))→ 売上 80 億円・営業利益 12 億円。16件・営業利益率15%
- 不動産賃貸:数量 3,000(賃貸戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間賃料(億円))→ 売上 62 億円・営業利益 19 億円。3,000戸・営業利益率31%
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 589 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:近畿圏の契約率が高いまま保たれ、建築費の上昇を売値に乗せられる必要がある。金利の上昇は構造的で、利益率が過去最高に戻る確率は低く、1割に満たない。
やや楽観 20% 需要は堅く、建築費は売値に乗る 利益 33 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,574 円392 億円
近畿圏の契約率は70%台で保たれ、分譲は年630戸と、今よりわずかに多い。契約済みの未引き渡し戸数が724戸と多く、数年の引き渡しの見通しは立っている。売値は物価を少し上回って伸び、建築費の上昇を吸収する。営業利益率は11%まで戻る。収益物件の販売は年14件で、賃貸は2,800戸に増える。借入は増えるが、借り換えの金利は3.5%で、利払いが年26億円になる。用地の仕入れは慎重に進める。賃貸が生む家賃は安定し、下支えになる。利払いが利益を削るので、純利益は今の1.3倍にとどまる。配当は性向3割で増え、中期計画の自己資本利益率8%に近づく。ただし利払いの重みは残り、純利益の伸びは営業利益の伸びより小さい。
- 分譲マンション(ワコーレ):数量 630(年間の引き渡し戸数(戸))× 価格 0.81(1戸あたり売上(億円))→ 売上 510 億円・営業利益 56 億円。630戸×単価1.08倍・営業利益率11%
- 戸建て住宅:数量 45.0(年間の引き渡し戸数(戸))× 価格 0.62(1戸あたり売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。45戸・営業利益率5.5%
- その他不動産販売(収益物件・用地):数量 14.0(年間の売却プロジェクト数(件))× 価格 4.99(1件あたり売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 9 億円。14件・営業利益率13.5%
- 不動産賃貸:数量 2,800(賃貸戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間賃料(億円))→ 売上 58 億円・営業利益 17 億円。2,800戸・営業利益率30%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 392 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:契約の積み上がり(未引き渡し724戸)と神戸の地盤から、数量は大きく崩れない。利益率が少し戻る筋書きは、強気と慎重のどちらから見ても十分あり得る。
中立 36% 数量は細り、売値は物価並み、利益率は下がる 利益 20 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,093 円229 億円
近畿圏の人口は減り、分譲は年550戸と今より1割細る。売値は物価並みに上がるが、建築費の上昇も同じ速さで、分譲の営業利益率は今の12%から9.5%に下がる。今ある賃貸の償却は取得時の値段のままだが、新しく建てる建物の償却は今の建築費で積み上がる。収益物件は年12件、賃貸は2,600戸へ増える。借入は750億円ほどに増え、借り換えの金利が3.5%になって、利払いは年26億円になる。営業利益は今とほぼ同じ54億円だが、純利益は20億円と今より減る。配当は性向3割を目安に、年70億円ほどの10年の合計になる。
- 分譲マンション(ワコーレ):数量 549(年間の引き渡し戸数(戸))× 価格 0.79(1戸あたり売上(億円))→ 売上 432 億円・営業利益 41 億円。550戸×単価1.05倍・営業利益率9.5%
- 戸建て住宅:数量 40.0(年間の引き渡し戸数(戸))× 価格 0.62(1戸あたり売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。40戸・営業利益率4%
- その他不動産販売(収益物件・用地):数量 12.0(年間の売却プロジェクト数(件))× 価格 4.99(1件あたり売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 7 億円。12件・営業利益率12%
- 不動産賃貸:数量 2,600(賃貸戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間賃料(億円))→ 売上 54 億円・営業利益 15 億円。2,600戸・営業利益率28%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 229 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の見方(契約の積み上がりと地盤)と慎重な見方(金利と建築費)の落としどころ。中間の利益率が9%台まで下がっている足元の動きを、10年の中立にそのまま延ばした。
やや悲観 25% 金利と建築費が利益を食い、赤字に近づく 利益 −5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 817 円90 億円
近畿圏の契約率が70%を割り、分譲は年440戸に減る。買い手の収入は伸びず、住宅ローンの返済負担が重く映る。売値は物価に届かず、建築費だけが上がって、営業利益率は6%に落ちる。収益物件は年8件にとどまる。借入は760億円のまま、金利が3.5%になって利払いが年27億円になり、純利益は赤字に沈む。配当は性向を守れず、年50億円ほどの10年の合計に縮む。販売用の不動産に評価損が出て、自己資本は約50億円減る。倒れはしないが、借入の返済が利益を上回る。賃貸の収入と在庫の売却で資金を回し、新規の用地の仕入れを絞って守りに入る形だ。
- 分譲マンション(ワコーレ):数量 440(年間の引き渡し戸数(戸))× 価格 0.71(1戸あたり売上(億円))→ 売上 313 億円・営業利益 19 億円。440戸×単価0.95倍・営業利益率6%
- 戸建て住宅:数量 25.0(年間の引き渡し戸数(戸))× 価格 0.59(1戸あたり売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。25戸・営業利益率−1%
- その他不動産販売(収益物件・用地):数量 8.0(年間の売却プロジェクト数(件))× 価格 4.49(1件あたり売上(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 3 億円。8件・営業利益率7%
- 不動産賃貸:数量 2,300(賃貸戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間賃料(億円))→ 売上 45 億円・営業利益 11 億円。2,300戸・営業利益率24%
倍率:ROE が負で、稼ぐ力が小さい。売れる資産の税後を床とみて、今の自己資本 347 億円に PBR 0.25 倍を掛けた。中立の PBR より低い。EV ÷ 営業利益は29倍と高い(純有利子負債を足した企業価値で見る)が、借金が重い会社は利益の倍率で測れないので、売れる資産から借入を引いた残りを床として見る。
確率:金利は3%台で定着し、建築費の上昇は売値に乗らず、近畿圏の人口減で数量が細る。高い金利の下で借入を抱えたまま、分譲の利益率が6%に下がる筋書きは、十分あり得る。
悲観 12% 在庫の評価損と金利の重みで、株主の取り分が削られる 利益 −19 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 633 円69 億円
近畿圏でも契約率が60%台に落ち、分譲は年300戸に減る。売値は物価に追いつかず、完成在庫の値引きで営業利益は赤字になる。会社は資産を売って借入を450億円まで減らし、利払いは年16億円に下がる。収益物件は年5件、賃貸は戸数を保つが、家賃は下がる。配当は大きく縮み、販売用不動産の評価損で自己資本は約90億円減る。創業家の持ち分は厚いが、少数株主の取り分は、在庫と賃貸の売却価値から借入を引いた残りで測られる。会社は新規の用地の仕入れをほぼ止め、完成在庫と賃貸の売却で借入を返す守りの経営に入ると筆者は見る。
- 分譲マンション(ワコーレ):数量 300(年間の引き渡し戸数(戸))× 価格 0.66(1戸あたり売上(億円))→ 売上 198 億円・営業利益 −4 億円。300戸×単価0.88倍・営業利益率−2%
- 戸建て住宅:数量 15.0(年間の引き渡し戸数(戸))× 価格 0.56(1戸あたり売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。15戸・営業利益率−5%
- その他不動産販売(収益物件・用地):数量 5.0(年間の売却プロジェクト数(件))× 価格 3.99(1件あたり売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。5件・営業利益率0%
- 不動産賃貸:数量 2,143(賃貸戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間賃料(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 9 億円。2,143戸・営業利益率22%
倍率:稼ぐ力が赤字で、売れる資産の税後が床になる。今の自己資本 347 億円に PBR 0.20 倍を掛けた。
確率:金融危機の後にも、同社の赤字は2010年2月期の1期にとどまり、深い悲観の確率は高くない。ただし借金が重く、売れ行きが落ちた時に在庫の評価損と利払いが重なる脆さは実際にあり、無視しない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
分譲マンション(ワコーレ)
神戸・阪神間を中心に、中規模の新築分譲マンションを企画し販売する。
| 数量年間の引き渡し戸数(戸) | 価格1戸あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 610 | 0.56 | 341 | 42 |
| 10 年後 中立 | 549 | 0.79 | 432 | 41 |
取り方:2026年2月期の引き渡し610戸、売上約341億円(約0.56億円/戸)。利益は中間期のセグメント利益率13.6%と通期の粗利率22.7%から、約12%(42億円)と推定。通期のセグメント利益は未確認。
戸建て住宅
神戸周辺の戸建ての分譲。年40戸前後と規模は小さい。
| 数量年間の引き渡し戸数(戸) | 価格1戸あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 38.0 | 0.46 | 18 | 0 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.62 | 25 | 1 |
取り方:引き渡し38戸、売上17.63億円。中間期の利益は赤字、前年は1.3億円の黒字で、通期は小幅な黒字と推定。
その他不動産販売(収益物件・用地)
賃貸マンションや鉄骨アパートを建てて一棟で売る収益物件と、用地の販売。
| 数量年間の売却プロジェクト数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 8.0 | 3.73 | 30 | 4 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 4.99 | 60 | 7 |
取り方:全体の売上421億円から他の事業を除いた約30億円を、8件で割った推定(件数は開示が無い)。今期は13件の計画で、中間期は12件を販売した。利益率は中間期の高さから約13%と推定。
不動産賃貸
賃貸マンションや店舗を2,143戸持ち、稼働率は97%。
| 数量賃貸戸数(戸) | 価格1戸あたり年間賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 2,143 | 0.02 | 33 | 11 |
| 10 年後 中立 | 2,600 | 0.02 | 54 | 15 |
取り方:賃貸収入は今期の計画32億円(前期比−2.5%)から、前期の約33億円と置き、2,143戸で割った。利益は中間期の利益率26〜35%から約34%と推定。全社の本社費など約−7.5億円は、筋書きの調整に入れる。
リスクと懸念
金利の上昇
純有利子負債は550億円で、時価総額の4倍。借り換えの金利が3.5%になれば、利払いは年26億円と営業利益の半分近くに達する。購入者の住宅ローン金利が上がれば、売れ行きも鈍る。
建築費の上昇
建築費は2021年以降の2〜4割上昇が定着し、年2〜3%でなお上がる。売値に乗せきれない分は利益を削る。今期の中間は、分譲の利益率が前年の13.6%から9%台に下がった。
在庫の評価損
仕掛と販売用の不動産が約600億円ある。市況が崩れれば、値引き販売と評価損が出て、借入の返済が重くなる。2010年2月期の赤字が、その例だ。
近畿圏の人口減
近畿圏の人口は10年のうちに減る。今は契約率が70%を超えるが、数量は実質で細る方向にある。姫路や大阪への展開が、地盤の外で実績を作れるかが問われる。
創業家の支配
創業家と資産管理会社の共同保有は45%を超える。少数株主の発言力は弱く、資本の使い方や非上場化の判断が創業家の意向に左右される。
新しい分野の実行
住宅型有料老人ホームと系統用の蓄電所は、同社にとって新しい分野だ。投資額と採算が開示されておらず、失敗すれば損失と借入の増加を招く。
今後の分かれ目
- 分譲の営業利益率が2期続けて11%を超えたら
- 楽観・やや楽観の筋書きに重みを移す。建築費を売値に乗せられた証拠だ。
- 契約率が近畿圏で70%を割り、契約済みの未引き渡し戸数が減り始めたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 借入の平均金利が3%を超え、経常利益が営業利益の6割を割ったら
- 利払いの重みが表に出たとみて、中立の純利益を下げて読む。
- 創業家が持ち分を整理する、または非上場化を発表したら
- 価格と条件が焦点になる。今の値段を大きく上回る提示なら、本質価値に近づく動きとして重みを見直す。
- 有料老人ホームや蓄電所の投資額と採算が開示されたら
- 新分野の資本効率を確かめ、中立の利益率に織り込むか判断する。
見ておくもの
- 分譲の契約率と未引き渡し戸数(契約残)
- 分譲の営業利益率と粗利率
- 借入金の平均金利と経常利益
- 創業家と大株主の持ち分の動き
- 収益物件の販売件数と利益率
倍率と資本コストの決め方
戸数を数量、1戸あたりの売上を名目の価格として積み、利益率は建築費と競争から出した。費用は償却とそれ以外に分け、今ある賃貸の償却は取得時の値段のまま、新築の償却だけ今の建築費で足した。倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限(k 8.5%、g 4.0%)の約9割を置き、今の株価や過去のPBRは根拠にしていない。賃貸の含み益は、賃料が利益に入っているため価値に足さず、悲観の床だけに数えた。10年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえ、2028年からの新リース会計基準で数字の形が変わる点は別にみる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→11.76 倍・やや楽観 PER 8.2→11.76 倍・中立 PER 6.7→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。