結論
東京テアトルは、映画館・飲食店・不動産賃貸・中古マンション再生販売を営む小さな会社だ。時価総額は約120億円で、貸している都心のビルの含み益と、本業の稼ぎの薄さが同居している。
筆者の結論は、10年で測ると今の値段は割高、というものだ。理由は単純で、会社の稼ぎ(営業利益3億円)が資産の厚さに追いつかず、資産が株主の手に渡る約束もないからである。
不動産賃貸だけは強い。2026年3月期の不動産関連の営業利益は15億円で、全社の営業利益3億円の5倍にあたる。映画館は赤字、飲食は薄利で、本社費が8億円かかる。つまり不動産の稼ぎが、ほかを支えている形だ。
見どころは含み益の扱いだ。賃貸不動産の時価は帳簿を数十億円上回る。会社は都心の物件を何度も売り、2025年3月期と2027年3月期に30億円規模の売却益を出している。ただ、売った現金の大半は配当に回らず、自己資本に積まれる。筆者は、この含み益を半分だけ株主の価値として数えた。
映画館は構造的に細る。6館16スクリーンまで縮み、出資基準を見直す最中だ。ここが黒字化するかは、10年を通じた分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資産は良く、事業は平凡、経営は守りに寄りすぎ」と見る。
資産の質は高い。都心の土地は、長く持つだけで価値が上がる。売却の実績も複数あり、含み益が帳簿の飾りでないことは確かだ。
一方、事業の稼ぎは資産に見合わない。営業利益3億円のうち、不動産が15億円を稼ぎ、映画館と本社費が12億円を食う構図である。映画館は黒字になる見込みが薄く、飲食は薄利で、再生販売は景気の波が大きい。
経営の資本配分に、筆者は強い疑問を持つ。売却益を現金や自己資本に積み、配当は下限にとどめる。ROEが1〜2%の会社が現金を抱え続ける姿は、株主から見れば資産の価値が時間とともに目減りする形だ。
安全域はある。含み益を半分数え、さらに現金を足しても、10年の稼ぐ力で測ると今の値段は届かない。資産に厚みがあるので大きく下がる恐れは小さいが、報われる道筋もない。わかりやすい手段(大規模な自社株買い、物件の売却と特別配当)が出れば見方は変わる。
何で稼ぐ会社か
東京テアトルの事業は4つに分かれる。売上の53%を占める不動産、30%の飲食、17%の映像関連だ。不動産は、さらに賃貸と中古マンション再生販売に分けて見るとわかりやすい。
賃貸は、都心の自社ビルや土地を貸す安定した事業だ。1968年に新宿テアトルビルが竣工して以来の本業で、賃貸等不動産の帳簿は約120億円、時価は帳簿を大きく上回る。賃貸損益は年8億円前後とみられる。
中古マンション再生販売は、中古マンションを買って改装し、売る事業だ。エリアを広げており、2026年3月期の不動産関連の売上が前期から大きく増えた主因である。ただ売上の波が大きく、利益率も景気や金利で動く。
飲食は、北海道発の焼鳥専門店「串鳥」36店が中心だ。飲食は全部で47店、販売店が7店ある。利益率は3%前後で、人件費と食材費の上昇に値上げが追いつくかどうかで決まる。
映像関連は、都内中心の映画館6館16スクリーンの運営と、映画の出資・配給だ。スクリーン数は前期から2つ減り、営業損失は5.5億円に達した。会社は映画への出資基準を見直す方針を出している。
全社の営業利益は3億円と小さく、2027年3月期の純利益予想27億円は収益不動産の売却益が押し上げる一過性のものだ。
優良さと弱いところ
事業の質は、筆者の目には3つに分かれる。賃貸は良い、飲食は普通、映画館は悪い。
賃貸の強みは立地にある。長年持ち続けた都心の土地は、帳簿の値段が低く、時価との差が大きい。10年国債が3%の世界でも、都心の物件は貸し手が選べる側にいる。ただし賃料の伸びは物価並みで、金利が上がればキャップレート(物件の利回り)も上がり、物件の値段は賃料ほどには伸びない。
飲食は、店の数が54と少なく、規模の利益は効かない。串鳥は固定客がいるが、他社との差は目立たない。店の賃借料は固定費なので、売上が落ちると利益が一気に削られる。
映画館は構造的に細る。観客数は人口減とともに緩やかに減り、配信との競合もある。6館16スクリーンは東宝のTOHOシネマズ(約660スクリーン)の40分の1にも届かず、規模の差は大きい。ミニシアター系の個性はあるが、赤字を埋めるほどの稼ぎにはなっていない。
資本効率は低い。自己資本利益率(ROE)は過去10年の中央値が1.6%と、資本コストを大きく下回る。経営陣は資産を持ち続けるより、売却益を自己資本に積んできた。配当は連結配当性向40%を目安に、下限を年1.4億円としている。株主への還元は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社は4つの市場に同時にいる。それぞれ違う動きをする。
映画館は、国内の興行収入が大型タイトル次第で振れる市場だ。東宝、松竹、東映、イオンシネマなどのシネマコンプレックス(複数の画面を持つ映画館)が大半を占める。東京テアトルが担うのは、都内のミニシアターの領域だ。観客の高齢化と配信への移行が続き、館数は減りやすい。
飲食は、人手不足と食材高が続くなか、値上げが通る店だけが利益を守る。焼鳥は客単価が低めで、値上げの余地は限られる。
不動産賃貸は、都心の需要が強い一方で、金利上昇の影響を受ける。10年国債が3%なら、物件の期待利回りは4〜5.5%とみるのが妥当で、物件の値段は賃料ほどには伸びない。建築費の高騰で新築が減るため、既存の貸しビルは競争上有利になる。
中古マンション再生販売は、都内のマンション価格の高止まりが追い風だ。買い手の資金力と金利が最大の変数で、金利が上がると在庫の回転が鈍る。
全体として、この会社の良い部分(賃貸)は成長が物価並みにとどまり、悪い部分(映画館)は縮む。業界の追い風で伸びる会社ではない。
資本政策と M&A
還元の方針は、期末配当年1回、連結配当性向40%を目安に、1株あたりの最低配当を定めたもので、総額は年1.4億円だ。2026年3月期の配当総額は約1.4億円で、時価総額の1%強にすぎない。自社株買いはここ数年行っておらず、自己株式が124万株(発行済みの15%)ある。
資本の使い方は、不動産を売って利益を出し、その現金を自己資本に積む形だ。2021年に杉並の物件を売り、2025年3月期に港区の借地権を売り(純利益30億円)、2026年に港区の別の物件を売る(譲渡益36.5億円)。三度の売却で現金は増えたが、株主に戻った分は少ない。
手元には上場株式32.7億円(三井住友トラストグループ約23億円ほか)がある。政策保有株は、売却して還元する方針が示されていない。
株主優待は映画の招待券と割引で、自社の映画館を使うため会社の費用は小さい(年1億円未満とみる)。
M&Aでは、2020年にアクシーを子会社化した。TOBや買収の動きは今のところ出ていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東京テアトルの資産は、株価の2倍近くある。都心の賃貸不動産は帳簿が約120億円、時価は約160億円で、含み益は税引き後でも約29億円ある。これに政策保有株33億円と、売却代金で積んだ現金がある。時価総額約120億円は、資産の半分に届かない水準だ。
経営は売却を繰り返してきた。2021年に杉並、2025年3月期と2027年3月期に港区の物件を売り、毎回30億円規模の益を出している。含み益は絵に描いた餅ではなく、現金に変えられる。
映画館の赤字は、出資基準の見直しで縮む。飲食は店数を増やし、再生販売はエリアを広げる。本社費さえ物価並みに抑えれば、営業利益は10億円に近づく。
小さな会社なので、買収の対象にもなりやすい。kabufuのモデルでも、10年内のTOBは約28%と出ている。資産の半分を株主が受け取るだけで、今の値段を大きく上回る。
映画館は小さな赤字にとどまり、再生販売と賃貸の黒字がそれを覆う。本社費が物価並みに増えても、不動産の稼ぎは全社を黒字に保つ。この下支えがある限り、倒産や増資の恐れはほとんどない。
慎重な見方
資産が厚いのは確かだが、それは株主のものになるとは限らない。東京テアトルは三度の売却益を自己資本に積んだだけで、配当は下限にとどめ、自社株買いの実績もない。ROEは過去10年の中央値で1.6%と、資本コストを大きく下回る。
本業の稼ぎは営業利益3億円で、不動産が15億円稼いでも、映画館の赤字と本社費が12億円を食う。この構図は10年たっても変わらない。映画館は人口減と配信で縮み、飲食は薄利、再生販売は今期が山だ。
含み益も金利に弱い。10年国債が3%なら、物件の期待利回りは4〜5.5%に上がる。賃料が物価並みに伸びても、物件の値段は賃料ほどには伸びない。
売却の現金が配当に回らなければ、資産の厚みは10年の価値に効かない。稼ぐ力で測れば、今の値段は高い。
売却益を出し続ける会社は、売る物件が尽きた時に稼ぎ頭を失う。港区の二つの物件を売ったあとの賃貸の稼ぎは、前より細くなる。売却は一度きりの利益であり、10年の稼ぐ力を高めるものではない。
どちらに重みを置いたか
資産の厚みについては、強気の言い分が正しい。ただ、10年の価値は株主が実際に受け取る額で決まる。会社は売却益を自己資本に積み、配当も下限にとどめてきた。この実績を重くみて、確率は慎重な見方に寄せた。含み益の半分と余った現金は数えたので、下値を資産が支える形は残る。ただしTOBの確率が約28%と高く出ているため、楽観とやや楽観の合計を3割にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,537 円104 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 297 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 896 円61 億円、今との差 −49.1%、 期待の年率 +0.4%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,849 円193 億円 | 664 円45 億円 | +99.6% | +7.2% | 351 円24 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,191 円148 億円 | 443 円30 億円 | +49.6% | +4.1% | 527 円36 億円 |
| 中立 | 35% | 1,897 円129 億円 | 295 円20 億円 | +24.6% | +2.2% | 767 円52 億円 |
| やや悲観 | 22% | 472 円32 億円 | 177 円12 億円 | −63.1% | −9.5% | 143 円10 億円 |
| 悲観 | 13% | 354 円24 億円 | 0 円0 億円 | −79.9% | −14.8% | 46 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,537 円104 億円 | 297 円20 億円 | +4.2% | +0.4% | 1,834 円124 億円 |
今の株価時価総額 1,760 円119 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 含み益が株主に戻り、本業の赤字も止まる 利益 9 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,849 円193 億円
筆者が描く上振れは、資産が株主に向く姿だ。映画への出資基準を絞り込み、映像関連の赤字は止まる。飲食は中食と卸の強化で店の数を増やし、利益率は4%に乗る。賃貸は、売却後も都心の物件が物価並みに賃料を上げ、営業利益は12億円近くまで増える。償却は取得時の値段のままなので、賃料の伸びがそのまま利益に残る。
再生販売は売れ行きが落ち着きつつ、エリアの拡大で戸数を保つ。本社費は物価ほどには増えない。営業利益は13億円台で、過去の最良の営業利益率5.7%に近い。
何より大きいのは資本政策だ。売却益と政策保有株を使って、配当と自社株買いで10年に45億円を返す。10年内にTOBを受ける確率は、kabufuのモデルでも約28%と出ている。
- 映像関連(映画館・映画製作配給):数量 235(年間の観客数(万人、売上から逆算した推定))× 価格 2,010(観客1人あたりの売上(円。製作配給の収入を含む))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。出資を絞り黒字化
- 飲食関連(串鳥ほか):数量 60.0(店舗数(飲食と販売の合計))× 価格 1.52(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 91 億円・営業利益 4 億円。中食・卸で店を増やす
- 不動産賃貸:数量 10.5(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 24(平均賃料(万円/平方メートル・年、推定))→ 売上 25 億円・営業利益 11 億円。物件1つ売却・賃料は物価並み。償却は据え置き
- 中古マンション再生販売:数量 160(販売戸数(戸、推定))× 価格 6,204(1戸あたり販売価格(万円、推定))→ 売上 99 億円・営業利益 7 億円。エリア拡大で戸数を保つ
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)87 億円。全体の PER 13.45 倍、時価総額 193 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:本社の資産を売って特別配当や自社株買いに回す動き、または買収提案が出る必要がある。売却の実績は三度あるが、還元に回した実績がないので1割にとどめた。
やや楽観 20% 映画館の赤字が縮み、売却益を少し配当に回す 利益 7 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,191 円148 億円
映画館の赤字はゼロ近くまで縮み、出資案件を絞る。飲食は薄利のまま店数を少し増やす。賃貸は都心の物件を1つ売り、賃料は物価並みに伸びる。
再生販売は戸数を保ち、利益率は7.5%に戻る。本社費は物価並みに増える。営業利益は9億円台となる。
還元は、配当性向40%の目安を守り、売却益の一部を特別配当に回して10年で30億円。自社株買いの実績は薄いまま、現金は積み上がる。株主の取り分は、利益の伸びより資産の厚みから出る。
筆者がこの筋書きを上振れの中心に置くのは、映画館を黒字にできなくても、赤字を止めるだけで全体の景色が変わるからだ。映像の赤字5.5億円が消えるだけで、営業利益は9億円の水準になる。
- 映像関連(映画館・映画製作配給):数量 225(年間の観客数(万人、売上から逆算した推定))× 価格 2,010(観客1人あたりの売上(円。製作配給の収入を含む))→ 売上 45 億円・営業利益 0 億円。赤字が止まる
- 飲食関連(串鳥ほか):数量 56.0(店舗数(飲食と販売の合計))× 価格 1.52(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 85 億円・営業利益 3 億円。店を少し増やす
- 不動産賃貸:数量 10.9(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 24(平均賃料(万円/平方メートル・年、推定))→ 売上 26 億円・営業利益 11 億円。物価並み
- 中古マンション再生販売:数量 160(販売戸数(戸、推定))× 価格 6,204(1戸あたり販売価格(万円、推定))→ 売上 99 億円・営業利益 7 億円。戸数を保つ
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)72 億円。全体の PER 13.67 倍、時価総額 148 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:映画館の赤字縮小は経営方針に沿う。再生販売と賃貸も崩れないので、上振れの中で最も起こりやすい筋書きとして2割。
中立 35% 賃貸が稼ぎ、ほかが足を引く。資産は積み上がるだけ 利益 5 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 1,897 円129 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、今の形が続く姿だ。映画館は1館減って、観客は人口減で緩やかに減る。入場料は物価並みに上がるが、出資の損は残る。飲食は店数を維持し、利益率は3%弱で保つ。
賃貸は、港区の物件を売った分だけ面積が2割減り、残りの賃料は物価並みに上がる。償却は取得時のままなので、賃料の伸びが利益に効く。ただし更新の投資は建築費高騰で膨らむ。
再生販売は今期の山から戸数が2割減り、価格は物価並みに上がる。本社費は物価並みで年11億円になる。営業利益は6.5億円、純利益は4.8億円だ。
還元は配当性向40%を目安に年2億円で、10年に20億円。残りは自己資本に積み上がり、ROEは2%台にとどまる。
- 映像関連(映画館・映画製作配給):数量 212(年間の観客数(万人、売上から逆算した推定))× 価格 2,010(観客1人あたりの売上(円。製作配給の収入を含む))→ 売上 43 億円・営業利益 −1 億円。1館減・観客は緩やかに減る
- 飲食関連(串鳥ほか):数量 54.0(店舗数(飲食と販売の合計))× 価格 1.52(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 82 億円・営業利益 2 億円。店数維持
- 不動産賃貸:数量 10.9(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 24(平均賃料(万円/平方メートル・年、推定))→ 売上 26 億円・営業利益 10 億円。物件1つ売却後。償却は据え置き
- 中古マンション再生販売:数量 152(販売戸数(戸、推定))× 価格 6,204(1戸あたり販売価格(万円、推定))→ 売上 94 億円・営業利益 6 億円。山から2割減
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)74 億円。全体の PER 14.48 倍、時価総額 128 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年、営業利益率は1〜2%で動いてきた。映画館・飲食・再生販売が足を引き、賃貸が支える構図が続く最も自然な筋書きとして3割台半ば。
やや悲観 22% 映画館と飲食が崩れ、再生販売も縮む 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 472 円32 億円
映画館は2館が閉じ、赤字が膨らむ。飲食は値上げが通らず、店の賃借料が固定費として残って利益率は2%に落ちる。
再生販売は金利上昇で売れ行きが鈍り、戸数が3割減る。賃貸は面積が減り、賃料の伸びは物価を下回る。営業利益は2億円台で、本社費が重い。
資産の価値も下がる。キャップレートの上昇で物件の時価が伸び悩み、含み益は今の4分の3にとどまる。還元は減って10年で12億円。
三つの崩れ方のうち、飲食の薄利と再生販売の波は、この会社が昔から抱える性質だ。新しいのは映画館の閉鎖と、金利上昇による物件の評価の鈍りである。それでも賃貸は黒字を保つので、会社は赤字にはならない。
- 映像関連(映画館・映画製作配給):数量 195(年間の観客数(万人、売上から逆算した推定))× 価格 2,010(観客1人あたりの売上(円。製作配給の収入を含む))→ 売上 39 億円・営業利益 −2 億円。2館閉鎖
- 飲食関連(串鳥ほか):数量 50.0(店舗数(飲食と販売の合計))× 価格 1.45(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 73 億円・営業利益 1 億円。値上げが通らず
- 不動産賃貸:数量 10.9(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 23(平均賃料(万円/平方メートル・年、推定))→ 売上 25 億円・営業利益 9 億円。賃料が物価に届かない
- 中古マンション再生販売:数量 125(販売戸数(戸、推定))× 価格 6,020(1戸あたり販売価格(万円、推定))→ 売上 75 億円・営業利益 3 億円。戸数3割減
倍率:稼ぐ力はほぼ0(純利益1億円前後)で、PER は当てられない。価値は資産で測り、今の自己資本168億円に0.19倍をかけた約32億円に置く。純有利子負債は売却代金でほぼ0になるので、EV÷営業利益は倍率の根拠にしない。
確率:映画館は配信との競合、飲食は人手不足と食材高。再生販売は金利上昇で在庫が回らない。三つのうち二つが同時に起きる確率は2割台。
悲観 13% 映画館の赤字が止まらず、本業の損が資産を食う 利益 −9 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 354 円24 億円
映画館と飲食の赤字が10年続き、再生販売は在庫の評価損を出す。本社費は物価並みに増え、営業損失は11億円規模に膨らむ。年に8億円ほどの現金が出ていき、積んだ現金は尽きる。
賃貸は、金利上昇でキャップレートが5.5%に上がり、物件の時価は下がる。空室も増え、賃料は物価を大きく下回る。
会社は清算されず、少数株主は使い道を決められない。床は、残った賃貸不動産と政策保有株の手取りの半分とみる。
10年たつと、積んだ現金は赤字の穴埋めに消え、売れるのは不動産と保有株だけになる。会社は小さく、事業の再建に使える資金も限られるので、立て直しより売却による縮小が現実的だ。
- 映像関連(映画館・映画製作配給):数量 170(年間の観客数(万人、売上から逆算した推定))× 価格 2,010(観客1人あたりの売上(円。製作配給の収入を含む))→ 売上 34 億円・営業利益 −5 億円。赤字が止まらない
- 飲食関連(串鳥ほか):数量 42.0(店舗数(飲食と販売の合計))× 価格 1.40(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 59 億円・営業利益 −1 億円。店を閉じる
- 不動産賃貸:数量 9.6(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 21(平均賃料(万円/平方メートル・年、推定))→ 売上 20 億円・営業利益 6 億円。賃料が伸びず空室増
- 中古マンション再生販売:数量 85.0(販売戸数(戸、推定))× 価格 5,556(1戸あたり販売価格(万円、推定))→ 売上 47 億円・営業利益 0 億円。在庫の評価損
倍率:赤字が続き、稼ぐ力はほぼ0。価値は資産で測る。今の自己資本168億円ではなく、床の資産(賃貸の売却手取りと政策保有株の半分)に近い値で置く。PBRは今の自己資本168億円に対して0.14倍。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.143 倍・時価総額 24 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:映画館・飲食・再生販売の三つが同時に崩れる深い筋書き。三度の売却益で現金がある会社なので、1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
映像関連(映画館・映画製作配給)
都内中心の映画館6館16スクリーンの運営と、映画の出資・製作・配給。
| 数量年間の観客数(万人、売上から逆算した推定) | 価格観客1人あたりの売上(円。製作配給の収入を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 231 | 1,500 | 35 | −6 |
| 10 年後 中立 | 212 | 2,010 | 43 | −1 |
取り方:2026年3月期の映像関連の売上34.6億円、営業損失5.55億円。観客数は開示がないので、映画館と製作配給をまとめて「1人あたり売上を一定額」で割り戻した推定値。製作配給の出資損が赤字の主因。
飲食関連(串鳥ほか)
焼鳥専門店「串鳥」36店を中心に飲食47店、販売店7店を運営する。
| 数量店舗数(飲食と販売の合計) | 価格1店あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 54.0 | 1.13 | 61 | 2 |
| 10 年後 中立 | 54.0 | 1.52 | 82 | 2 |
取り方:2026年3月期の飲食関連の売上61.2億円、営業利益1.83億円(利益率3.0%)。店舗数は飲食47店と販売店7店の合計。
不動産賃貸
東京都内を中心に、ビルや土地を貸す。
| 数量賃貸面積(千平方メートル、推定) | 価格平均賃料(万円/平方メートル・年、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.8 | 18 | 23 | 9 |
| 10 年後 中立 | 10.9 | 24 | 26 | 10 |
取り方:不動産関連は売上110.8億円、営業利益15.33億円で、内訳は開示がない。賃貸損益が2025年3月期で約8億円という要約情報から、賃貸を売上23億円・営業利益8.5億円、残りを中古マンション再生販売と推定した。面積は月1.5万円/平方メートル相当の賃料で割り戻した値で、実際の面積ではない。
中古マンション再生販売
中古マンションを買い、改装して売る。エリアを広げている。
| 数量販売戸数(戸、推定) | 価格1戸あたり販売価格(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 190 | 4,630 | 88 | 7 |
| 10 年後 中立 | 152 | 6,204 | 94 | 6 |
取り方:不動産関連の売上110.8億円から賃貸の推定23億円を引いた87.8億円、営業利益は同様に6.83億円(利益率7.8%)と推定。戸数は1戸4,600万円前後で割り戻した値。前期は大きく増えた年で、中立では戸数を減らす。
リスクと懸念
映画館の赤字と出資の損
映像関連は2026年3月期に営業損失5.5億円。映画館は6館16スクリーンまで縮み、製作・配給の出資は当たり外れが大きい。会社は出資基準を見直すとするが、黒字化の道筋は示していない。人口減と配信が続けば、損は10年たっても残る。
売却益の一過性と稼ぐ力の薄さ
2027年3月期の純利益予想27億円は収益不動産の売却益が押し上げる。営業利益は3億円にすぎず、売却益を除いた稼ぐ力は5億円前後。売却益に慣れると、本業の薄さを見誤る。
金利上昇と物件の値段
10年国債が3%の世界では、物件の期待利回りが上がり、時価が賃料の伸びほど上がらない。含み益の半分を数えたが、キャップレートが5.5%に上がれば含み益は4割減る。
株主に戻らない資本
売却益は自己資本に積まれ、配当は下限にとどまる。自社株買いの実績はない。経営がこの姿勢を変えなければ、含み益は株主の手に渡らず、ROEは1〜2%にとどまる。
中古マンション再生販売の波
2026年3月期に売上が大きく増えたが、価格と金利、在庫の回転に左右される。金利が上がれば、在庫の金利負担と買い手の購入力の両方に響く。AIエージェントの影響は小さい。
飲食の人件費と賃借料
店の賃借料は固定費で、売上が落ちても減らない。人件費と食材費の上昇に値上げが追いつかなければ、利益率3%は一気に赤字に傾く。新リース会計基準で、借りている店の賃借の約束が貸借対照表に載り、見かけの財務は弱く見える。
今後の分かれ目
- 港区の売却代金で借入を返済し、残りが特別配当や自社株買いに回る
- 含み益が株主に向く最も大きな分かれ目。戻り方を0.75〜1.0に見直し、強気の側に確率を寄せる。
- 映像関連の営業損失が2期連続で2億円未満に縮む
- 出資基準の見直しが効いている。中立の映像の利益率を引き上げ、筋書きを一段上に寄せる。
- 東京テアトルにTOBや買収提案が出る
- 提案価格が含み益を織り込むか次第。資産の半分を数えた本質価値と比べて、応じる価値があるかを見る。
- 賃貸等不動産の含み益(時価−簿価)が有報で大きく減る
- キャップレート上昇か売却による減少。残りの含み益を見直し、余った資産の額を下げる。
- 中古マンション再生販売の売上が前期から3割以上減る
- 今期の水準が山だった証拠。中立の戸数をさらに減らす。
- 串鳥の店数が増え、飲食の営業利益率が4%に乗る
- 飲食が育つ道が見える。飲食の中立の利益率を引き上げる。
見ておくもの
- 映像関連の営業損益(出資基準見直しの効果)
- 賃貸等不動産の時価と帳簿の差(有報の注記)
- 売却代金の使い道(配当・自社株買い・借入返済)
- 中古マンション再生販売の売上と在庫
- 串鳥の店数と飲食の営業利益率
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEが資本コスト8.25%を下回るため、式の上限1÷k=12.5倍を基準に、中立は8割の10倍に置いた。今の株価も同業のPERも見ていない。含み益は、sector共通の決まりどおり税後7割に戻り方0.5をかけて足し、賃料が利益に残る分との二重を避けた。新リース会計基準で営業利益が少し増え純負債が増える点は、10年後も今と同じ家賃を費用に入れる形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.45 倍・やや楽観 PER 10.5→13.67 倍・中立 PER 10→14.48 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。