結論
ストライダーズは、賃貸管理、不動産売買、ホテル、投資を束ねる小さな持株会社だ。売上の 8 割は不動産で、中身はマンションの借上管理(約 4,150 戸)と家賃保証、中古物件の売買になる。成田のホテルが 1 割強を占める。
筆者の結論は割高だ。10 年後の中立でも、時価総額は今を下回る。最大の理由は、利益の質が低いことにある。直近の営業利益 2 億円は、売買とホテルの増益で前の期の 4 倍になったが、持株会社の費用 2.4 億円が事業別の利益の半分を超える。
事業の入れ替えも多い。2026 年に倉敷のホテルを売って加賀のホテルを買い、IT 会社を株式交換で取り込み、ムラキに 12.25% を出資した。個々の判断は理にかなっても、成果が出るまで時間がかかる。
純現金は 3 億円で薄い。20 億円の現金同等物の多くは、入居者から預かる敷金や借入に重なる。安全域は資産の側にあるが、稼ぐ力に払う値段には慎重でありたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ストライダーズは「事業が毎年入れ替わる会社」だ。オーナーが手元に残せる利益は、持株会社の費用 2.4 億円を引いた後で、年 2 億円ほどにとどまる。
堀と呼べるのは、借上管理の安定した家賃収入と、家賃保証の審査の蓄積だけだ。ホテルと売買は、市況に利益を決められる。
経営の資本配分は読みにくい。ホテルを売って別のホテルを買い、株式交換で IT 会社を取り込み、ムラキに出資する。個々の判断は理にかなって見えても、全体の成果は 10 年の時間でしか測れない。この会社の利益の質は、買収がうまくいくかに大きく左右される。
安全域は、ホテルと不動産の資産と、預り金を除いた現金にある。ただ悲観の床は薄く、事業の稼ぐ力に払う値段には、慎重でありたい。値段が変わった局面で、経営が資本を何に回すかを、よく見たい。
何で稼ぐ会社か
ストライダーズは、東京都中央区に本社を置く持株会社で、不動産、ホテル、投資の 3 事業を持つ。2026 年 3 月期の売上は 82 億円だ。
不動産が売上の 8 割を占める。中身は 3 つある。マンションのオーナーから部屋を借り上げて転貸する賃貸管理で、借上管理は約 4,150 戸、稼働率は 99% 近い。入居者の家賃を保証する家賃保証、中古物件などの売買、2025 年 12 月に立ち上げたリフォーム・原状回復の新会社もある。
ホテルは売上の 1 割強で、成田ゲートウェイホテルが中心だ。2026 年 5 月に倉敷のホテルを手放し、石川県加賀市のホテル・アローレを 12.5 億円で取得した。熊本にも拠点を持つ構想がある。
投資は小さく、アジアを軸にしたファンドの組成と運用を進める。ファンドの運営会社はシンガポールにある。
営業利益は 2 億円で、事業別の利益の合計 4.4 億円から、持株会社の費用 2.4 億円を引いた姿だ。従業員の多くは不動産とホテルの現場にいる。売上に占める比率は、賃貸管理が約 7 割、売買が約 2 割、ホテルが約 1 割強になる。
優良さと弱いところ
優良さは低い。強みは、借上管理の稼働率が 99% 近く、入居者の家賃が毎月入る安定さだ。家賃保証は、入居審査の蓄積が価値になる。
弱みは 4 つある。第 1 に、売買とホテルの利益が大きく振れ、事業の柱が毎年入れ替わる。第 2 に、持株会社の費用が 2.4 億円と、事業別の利益の半分を超える。第 3 に、借上管理は空室が増えると、賃料を保証する側の損失になる。第 4 に、事業の入れ替えが多く、経営の資本配分の成果を測りにくい。
資本の効率は、ROE が過去 10 年の中央値で 5〜6% と低く、2012 年から 2014 年は大きな赤字も出した。新株予約権による希薄化の歴史もある。
10 年後に今より強いとは言いにくい。ただし、2014 年に買ったホテルを売り、ほかの拠点に振り向ける動きは、小さい会社なりの柔軟さでもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
3 つの事業は、市場の動きがほぼ別だ。
賃貸管理と家賃保証は、東京と地方の賃貸住宅の需要に左右される。単身世帯の増加が下支えするが、人口の減少と空室の増加は、地方ほど強い。家賃は物価の上昇に遅れて上がる。家賃保証は、保証会社の競争が激しい。
不動産売買は、中古物件の仕入れ競争と金利が分かれ目になる。金利が上がると、買い手の資金調達が厳しくなり、件数が落ちやすい。
ホテルは、インバウンドの回復が追い風だ。成田は空港に近く、稼働率が 80% を超える。ただ客室単価は低く、人件費と資材費の上昇が利益を圧迫する。景気や為替、感染症の影響を受けやすい。
投資は、日本とアジアの中小企業への出資と、ファンドの運営だ。成果が出るまで時間がかかり、数字は小さい。競合は、各分野で資金力のある大手や専門会社になる。単身世帯向けの賃貸管理は、地方ほど人口の減少で需要が細り、東京近郊に集める戦略が要る。ホテルの競合は、空港周辺のビジネスホテルと新設の宿泊特化型だ。いずれの分野も、人口の減少と人手不足、物価の上昇という共通の逆風を受けるので、価格に転嫁できる事業とそうでない事業の差が開く。
資本政策と M&A
資本政策は、小さな会社を取り込み、事業を入れ替える型だ。2026 年 5 月には倉敷のホテルを手放し、加賀のホテルを取得した。同年 9 月には、岡山の IT 会社 block party を株式交換で完全子会社化することを決めた。9 月 15 日にはムラキ(7477)の議決権 12.25% を取得し、地域モビリティ・ハブ構想で提携した。
株式交換は現金を使わない一方、新株を出すので株数が増える。block party の株数が不明で、希薄化の量は確認できなかった。
配当は総額 0.4 億円で、純利益の 2 割ほどだ。2026 年には株主優待を再開した。費用は開示がないが、小さいと見る。
財務は、現金同等物が 20 億円、成田の借入が 9 億円。借入には 2 期連続の経常損失の禁止、純資産の維持などの条件が付く。kabufu のシミュレーションでは、10 年以内の買収の確率は約 2 割だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ストライダーズは、賃貸管理の安定収入を土台に、不動産売買、ホテル、投資を積み上げている。借上管理の稼働率は 99% 近く、家賃保証は件数が伸びている。ホテルはインバウンドの回復で成田が増収増益になり、2026 年に取得した加賀のホテルで拠点を増やす。
倉敷のホテルを売って加賀に振り向けた動きは、資本を成長性の高い場所へ回す判断だ。熊本も視野に入れ、地方のホテルに強みを築く。ムラキへの出資で、SS や遊休地を活用する新しい事業の入口も得た。こうした入口を複数持てる点が、小さな持株会社の強みになる。
財務は自己資本比率が 51% に上がり、現金同等物は 20 億円で、純現金の状態だ。ROE は 7.8% で、中期目標は 10%。株式交換で IT の内製化を進め、外注費を減らす。時価総額が 21 億円と小さく、事業の入れ替えが当たれば、利益は大きく伸びる。投資事業も、ファンドの運用手数料が積み上がれば、持株会社の費用を賄える。
慎重な見方
利益の質が低い。2026 年 3 月期の営業利益 2 億円は、売買とホテルの増益で出たが、前の期は 0.5 億円しかなかった。持株会社の費用が 2.4 億円あり、事業別の利益の半分を超える。
事業の柱が毎年入れ替わるのが問題だ。ホテルは倉敷を売って加賀を買い、すでに圧縮損 6.6 億円と減損を出している。売却益が出ても、買った資産が稼ぐかは別の話だ。株式交換で IT 会社を取り込み、ムラキにも出資するが、本業との相乗効果は示されていない。
借入には財務制限条項が付き、2 期連続の経常損失で触れる。新株予約権の行使で株数が増えてきた歴史もあり、株式交換でさらに増える。配当は純利益の 2 割ほどで、株主への還元は薄い。借上管理は戸数が減り、稼働率も下がった。賃貸管理は、利ざやが薄く、空室が増えると損失になる構造だ。
時価総額が小さく、経営の失敗の影響が直接出る。売買もホテルも市況に利益を決められ、安定した稼ぎは賃貸管理の薄い利ざやだけだ。
どちらに重みを置いたか
利益の質と資本配分の読みにくさという点で、慎重な見方が強い。強気の見方が当たるには、買収と新ホテルが同時に成果を出す必要があり、小さな会社には重い条件だ。確率は、中立を 4 割弱に置き、やや悲観と悲観を合わせて 35% に厚くした。賃貸管理の安定収入と資産の厚みは、中立の利益の置き方と悲観の床に反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 263 円23 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 61 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 153 円14 億円、今との差 −34.4%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 563 円50 億円 | 112 円10 億円 | +188.6% | +11.2% | 47 円4 億円 |
| やや楽観 | 20% | 376 円33 億円 | 83 円7 億円 | +96.2% | +7.0% | 92 円8 億円 |
| 中立 | 38% | 267 円24 億円 | 67 円6 億円 | +43.0% | +3.6% | 127 円11 億円 |
| やや悲観 | 25% | 156 円14 億円 | 39 円4 億円 | −16.6% | −1.8% | 49 円4 億円 |
| 悲観 | 10% | 79 円7 億円 | 6 円1 億円 | −64.0% | −9.7% | 8 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 263 円23 億円 | 61 円5 億円 | +38.2% | +3.3% | 323 円29 億円 |
今の株価時価総額 234 円21 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 買収で拠点が増え、賃貸管理とホテルが育つ 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 563 円50 億円
ストライダーズが取り込んだ会社と、成田・加賀・熊本のホテルが収益を支える。借上管理は 4,800 戸まで増え、家賃の上昇と保証事業の拡大で利益率が 4.5% に上がる。ホテルはインバウンドの回復を受けて稼働率が 85% を超え、客室単価も物価を上回って上がる。不動産売買は年 30 件を超えて安定し、投資事業はファンドの運用手数料が積み上がる。本社費は買収で増えるが、売上の伸びがそれを上回る。ムラキとの提携は、SS や遊休地を活用する新しい収益の柱に育つ。純利益は 4.6 億円と今の 2 倍になり、ROE は 9% を超える。
- 賃貸管理・家賃保証(レジデンス):数量 4,778(借上管理戸数(戸))× 価格 0.02(1 戸あたり年間売上(億円・名目、家賃保証・管理を含む))→ 売上 89 億円・営業利益 4 億円。借上管理 4,800 戸 × 1 戸 185 万円、営業利益率 4.5%
- 不動産売買:数量 32.5(年間の売買件数(件、推定))× 価格 0.76(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。売買 32 件 × 1 件 0.76 億円、営業利益率 7%
- ホテル(成田・倉敷・加賀):数量 15.5(年間の稼働客室数(万室・夜、推定))× 価格 1.71(稼働 1 室・夜あたり売上(万円・名目、飲食等を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 3 億円。稼働客室 15.5 万室・夜 × 1 室 1.71 万円、営業利益率 10%
- 投資事業:数量 12.2(運用・投資の残高(億円、推定))× 価格 0.12(残高あたりの年間収益率(名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。運用 12 億円 × 手数料・収益率 12%、営業利益率 35%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:M&A が実を結び、ホテルが 3 拠点に育つ複合の筋書き。小さな会社が実行を重ねる難しさがあり、確率は低い。
やや楽観 20% ホテルの稼働が上がり、賃貸管理は微増 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 376 円33 億円
成田ゲートウェイホテルは稼働率が 80% 台を保ち、加賀のホテルも 3 年ほどで黒字になる。倉敷を手放した分は、加賀と熊本でほぼ補える。借上管理は戸数が 5% 増え、家賃は物価並みに上がる。不動産売買は売りに出る物件の質次第で件数が振れるが、均せば年 27 件ほどになる。本社費は物価で増えるので、営業利益の伸びは売上の伸びより小さい。ムラキとの提携は小さな収益にとどまり、株式交換で取り込んだ IT 会社も本業の外注費の節約にとどまる。純利益は 2.9 億円まで増え、ROE は 6% 台になる。買収の成果は小さいが、失敗もなく、ゆっくりと前に進む姿だ。
- 賃貸管理・家賃保証(レジデンス):数量 4,363(借上管理戸数(戸))× 価格 0.02(1 戸あたり年間売上(億円・名目、家賃保証・管理を含む))→ 売上 77 億円・営業利益 3 億円。借上管理 4,360 戸 × 1 戸 177 万円、営業利益率 4.2%
- 不動産売買:数量 27.5(年間の売買件数(件、推定))× 価格 0.72(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。売買 27.5 件 × 1 件 0.72 億円、営業利益率 6.5%
- ホテル(成田・倉敷・加賀):数量 13.2(年間の稼働客室数(万室・夜、推定))× 価格 1.60(稼働 1 室・夜あたり売上(万円・名目、飲食等を含む))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。稼働客室 13.2 万室・夜 × 1 室 1.60 万円、営業利益率 8.5%
- 投資事業:数量 9.2(運用・投資の残高(億円、推定))× 価格 0.10(残高あたりの年間収益率(名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。運用 9 億円 × 収益率 10%、営業利益率 35%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 32 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:成田のインバウンド需要が続き、加賀の新ホテルが軌道に乗る。賃貸管理の戸数は横ばいから微増で、買収の成果は限られる。
中立 38% 賃貸管理は微減で家賃の物価上昇が相殺し、利益は横ばい 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 267 円24 億円
借上管理の戸数は 10 年で 5% ほど減り、家賃は物価並みに 1.34 倍になる。賃貸管理の利益率は 4% 台を保つが、空室の増加と原状回復費の上昇が押し下げ、伸びは小さい。不動産売買は年 25 件前後と、波を均した水準だ。ホテルは成田が稼ぐものの、加賀は黒字化に時間がかかり、客室単価は物価並みに上がる。本社費は物価で 1.34 倍に増え、営業利益は 2 億円台前半にとどまる。純利益は 1.9 億円前後で、今の水準とほぼ同じだ。持株会社の費用の負担は変わらず、事業の入れ替えが当たっても、利益の質は大きくは改善しない。
- 賃貸管理・家賃保証(レジデンス):数量 3,947(借上管理戸数(戸))× 価格 0.02(1 戸あたり年間売上(億円・名目、家賃保証・管理を含む))→ 売上 70 億円・営業利益 3 億円。借上管理 3,950 戸 × 1 戸 177 万円、営業利益率 4.0%
- 不動産売買:数量 25.0(年間の売買件数(件、推定))× 価格 0.72(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。売買 25 件 × 1 件 0.72 億円、営業利益率 6%
- ホテル(成田・倉敷・加賀):数量 12.1(年間の稼働客室数(万室・夜、推定))× 価格 1.53(稼働 1 室・夜あたり売上(万円・名目、飲食等を含む))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。稼働客室 12.1 万室・夜 × 1 室 1.53 万円、営業利益率 7%
- 投資事業:数量 8.5(運用・投資の残高(億円、推定))× 価格 0.10(残高あたりの年間収益率(名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。運用 8.5 億円 × 収益率 10%、営業利益率 35%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 21 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:借上管理の戸数は小さく減ってきた。物価並みの家賃上昇、ホテルの回復、本社費の増加が打ち消し合う姿を中心に置く。
やや悲観 25% 空室と競争で賃貸管理の利益率が下がり、買収は成果が出ない 利益 1 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 156 円14 億円
借上管理は戸数が 1 割強減り、空室の増加で転貸の利ざやが薄くなる。家賃保証は競合の大手に押され、新規の件数が伸びない。不動産売買は仕入れの競争が厳しく、件数が今の 7 割に落ちる。ホテルは加賀の立ち上げが遅れ、成田も円高やインバウンドの減速で稼働が落ちる。取り込んだ IT 会社や投資の成果は小さい。経営は本社費を削って利益を守るが、営業利益は 1 億円強にとどまり、配当を維持するのがやっとになる。株主優待も、費用の負担が重く縮小の対象になる。事業の入れ替えに使う資金も細り、新しい拠点の取得は止まる。
- 賃貸管理・家賃保証(レジデンス):数量 3,656(借上管理戸数(戸))× 価格 0.02(1 戸あたり年間売上(億円・名目、家賃保証・管理を含む))→ 売上 63 億円・営業利益 2 億円。借上管理 3,660 戸 × 1 戸 172 万円、営業利益率 3.5%
- 不動産売買:数量 17.5(年間の売買件数(件、推定))× 価格 0.70(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。売買 17.5 件 × 1 件 0.70 億円、営業利益率 5%
- ホテル(成田・倉敷・加賀):数量 10.4(年間の稼働客室数(万室・夜、推定))× 価格 1.48(稼働 1 室・夜あたり売上(万円・名目、飲食等を含む))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。稼働客室 10.4 万室・夜 × 1 室 1.48 万円、営業利益率 5.5%
- 投資事業:数量 6.1(運用・投資の残高(億円、推定))× 価格 0.10(残高あたりの年間収益率(名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。運用 6 億円、営業利益率 0%
倍率:ROE が k を大きく下回り、正当化 PER は 1÷k=11.8 倍が上限。稼ぐ力が薄く、利益が事業の入れ替えに左右されるので、上限の 7.2 割の 8.5 倍に置いた。
確率:借上管理は戸数が減っており、家賃保証も競争が厳しい。ホテルは新規取得の立ち上がりに失敗しうる。本社費の削減で下支えする筋書き。
悲観 10% 買収と新ホテルが失敗し、財務制限条項に触れる 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 79 円7 億円
加賀と熊本のホテルが想定の客数に届かず、取得額に見合う収益を上げられない。株式交換で取り込んだ IT 会社と投資事業も赤字が続き、借上管理は空室が増えて利益が消える。不動産売買は仕入れ難で件数が半分に落ちる。経営は 2 期連続の経常損失の禁止という借入の条件に近づき、ホテルの売却と減損で自己資本が削られる。新株予約権による希薄化も重なる。売却と整理を経て、価値はホテルなどの資産から借入を引いた残りにとどまる。ムラキへの出資も、回収できる額は小さい。経営は、ホテルや不動産の売却で借入を返しながら、事業を絞り込むことになる。
- 賃貸管理・家賃保証(レジデンス):数量 3,116(借上管理戸数(戸))× 価格 0.02(1 戸あたり年間売上(億円・名目、家賃保証・管理を含む))→ 売上 52 億円・営業利益 1 億円。借上管理 3,120 戸 × 1 戸 166 万円、営業利益率 1%
- 不動産売買:数量 12.5(年間の売買件数(件、推定))× 価格 0.68(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。売買 12.5 件 × 1 件 0.68 億円、営業利益率 −2%
- ホテル(成田・倉敷・加賀):数量 9.2(年間の稼働客室数(万室・夜、推定))× 価格 1.43(稼働 1 室・夜あたり売上(万円・名目、飲食等を含む))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。稼働客室 9.2 万室・夜 × 1 室 1.43 万円、営業利益率 −2%
- 投資事業:数量 4.9(運用・投資の残高(億円、推定))× 価格 0.10(残高あたりの年間収益率(名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。運用 4.9 億円、営業損失
倍率:稼ぐ力が消えるので床は売れる資産で測る。今の自己資本 28 億円に 0.25 倍(純現金の半分と、ホテルを簿価の 7 割で売って借入を返した残りの合計に近い額)を掛けた。
確率:M&A の失敗と新ホテルの不振が重なり、赤字が続く複合の筋書き。経営の実行力に疑いが出るほど小さな会社の失敗は致命的になりうるため、1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸管理・家賃保証(レジデンス)
マンションの借上管理(転貸)、リーシング、建物管理、家賃保証、リフォーム・原状回復。
| 数量借上管理戸数(戸) | 価格1 戸あたり年間売上(億円・名目、家賃保証・管理を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,155 | 0.01 | 55 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3,947 | 0.02 | 70 | 3 |
取り方:借上管理は 2026 年 4〜6 月期の 4,155 戸(開示)。不動産売上 68.5 億円のうち、売買を 13.5 億円と推定し、残り 55 億円を賃貸管理・家賃保証・管理として戸数で割り、1 戸 132 万円とした(内訳は開示がなく推定)。不動産のセグメント利益 3.12 億円を 2.2 億円と 0.92 億円に分けたのも推定。
不動産売買
中古マンションなどの仕入れと販売。
| 数量年間の売買件数(件、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 0.54 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 0.72 | 18 | 1 |
取り方:件数と売上は開示がない。不動産売上のうち売買を 13.5 億円、1 件 0.54 億円で 25 件と推定した(売買は年によって大きく振れる)。
ホテル(成田・倉敷・加賀)
成田ゲートウェイホテルと倉敷ロイヤルアートホテル(2026 年 5 月に譲渡)、加賀のホテル・アローレ(2026 年 5 月取得)。
| 数量年間の稼働客室数(万室・夜、推定) | 価格稼働 1 室・夜あたり売上(万円・名目、飲食等を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.5 | 1.14 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 12.1 | 1.53 | 18 | 1 |
取り方:客室数・稼働の開示がない。成田の客室単価 0.76 万円・稼働率 81.5%(2026 年 4〜6 月期)と倉敷の規模から、稼働客室を約 11.5 万室・夜と推定し、売上 13.1 億円を割って 1 室 1.14 万円(飲食等を含む)とした。
投資事業
ファンドの組成・運用と、アジア・国内の出資。
| 数量運用・投資の残高(億円、推定) | 価格残高あたりの年間収益率(名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.1 | 0.10 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 0.10 | 1 | 0 |
取り方:残高は開示がなく、売上 0.61 億円を収益率 10% として 6.1 億円と推定した。ファンドの運用手数料と出資の収益が混ざる。
リスクと懸念
持株会社の費用と利益の質
事業別の利益の合計 4.4 億円に対し、持株会社の費用が 2.4 億円ある。売買とホテルの増益で出た営業利益は、前の期の 4 倍だが、翌年に続く保証がない。
ホテルの入れ替えと新規取得
倉敷を売って加賀を買い、圧縮損 6.6 億円と減損を出した。加賀の立ち上げが遅れれば、取得額に見合う収益が出ず、減損の対象になる。
不動産売買と金利
売買は年によって件数も利益も大きく振れる。金利が上がると、買い手の資金調達が厳しくなり、仕入れも売りも細る。
借上管理の空室と家賃保証
借上管理は、空室が増えても賃料を保証する側だ。戸数は 4,201 戸から 4,155 戸へ減り、稼働率も 99.5% から 98.8% に下がった。
株式交換による希薄化
block party を株式交換で取り込む。株数が増えるが、その量は確認できない。新株予約権による希薄化の歴史もあり、1 株あたりの価値が薄まる。
財務制限条項
成田の借入に、2 期連続の経常損失の禁止、純資産の維持、出資比率 100% の維持が付く。業績が崩れると、借入の返済を迫られる。
ムラキとの提携の成果
ムラキの議決権 12.25% を取得し、地域モビリティ・ハブ構想を進める。収益化までの道筋は示されておらず、出資額が回収できないおそれもある。
今後の分かれ目
- 借上管理の戸数が 4,000 戸を割り込み、稼働率が 97% を下回ったら
- 賃貸管理の利益率が下がり、やや悲観の確率を上げる。
- 加賀のホテルが 2 年以内に営業黒字になったら
- ホテルの利益率の置き方を上げ、やや楽観の確率を上げてよい。
- 持株会社の費用が売上の 2% を割り込むほど減ったら
- 営業利益の置き方を上げてよい。
- 2 期連続で経常損失が出たら
- 財務制限条項に触れる。悲観に近づく。
- ムラキ以外にも持分を取得し、現金を投じ続けたら
- 資本配分の成果を測り直す。純現金が減り、床が下がる。
見ておくもの
- 借上管理戸数と稼働率(四半期の決算説明)
- 成田・加賀のホテルの稼働率・客室単価・営業利益
- 持株会社の費用と営業利益の差
- 株式交換・新株予約権による株数の増加
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 8.75%(基本 7.5% に、循環 +0.25%・値決め +0.25%・寿命 +0.5%)と、事業の ROE(5〜9%)から置いた。ROE が k 未満の筋書きは 1÷k の 11.8 倍が上限で、利益の質に応じて 7〜9 割に置いた。今の株価や同業の PER は見ていない。ホテル・借上管理の賃借は営業費用に入れた形で 10 年後もそろえ、新リース会計基準(2028 年 3 月期から)は価値の式に効かない。成田ゲートウェイの借入の減価償却は取得時の値段のままで、物価で増やしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.43 倍・やや楽観 PER 10→11.43 倍・中立 PER 9.5→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。