結論
フージャースホールディングスは、地方都市でマンションを分譲し、東京の収益不動産とシニア向けマンションで稼ぐ不動産会社だ。筆者の結論は「やや割高」である。いちばんの理由は借金の重さだ。
利益を押し上げてきたのは、賃貸マンションなどを開発して売る収益不動産だ。旧区分では営業利益の過半をここが稼いだ。売るタイミングで利益が大きく振れる事業であり、本業のマンション分譲は利益率が低い。
会社は 2031 年 3 月期に営業利益 210 億円を掲げる。柱はシニアマンションで、分譲のあとに運営と中古の仲介まで取り込む構想だ。筋は通るが、実績はまだ浅い。計画の 8 割ほどに届く姿を中心に置いた。
ここに金利が効く。有利子負債は約 1,000 億円で、借り換えのたびに利払いが増える。営業利益が伸びても、純利益はほとんど増えない。借金で回す事業は、景気が崩れると安全域が薄い。
今の時価総額は約 500 億円で、純有利子負債より小さい。稼ぐ力は確かだが、金利の負担と在庫のリスクを 10 年先まで織り込むと、今の値段には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見えて、安全域が薄い会社」だ。
最初に問うのは、10 年後もこの事業が今より強いかどうかである。分譲と売却で稼ぐ会社は、毎年ゼロから用地を仕入れ直す。事業が積み上がる性質ではない。シニア事業の運営収入が育てば別だが、まだ利益は小さい。
次に、株主が自由に使える利益を考える。稼いだ利益の多くは、次の用地と在庫に回る。有利子負債は約 1,000 億円あり、利払いはこれから増える。見かけの利益から、この分を差し引いて見る必要がある。
資本の使い方では、増資でシニア事業に賭けた判断が焦点だ。成功すれば、堀の薄い会社に長く稼ぐ柱ができる。外れれば、株数だけが増える。結果が出る前に、確信を持って評価することはできない。
安全域はどうか。悲観の筋書きでは、在庫の評価損が自己資本の半分近くに達する。自己資本比率が 28% の会社に、その余裕は薄い。わかる範囲だけで評価し、わからない部分は確率を悲観側に寄せるべき対象だと考える。
何で稼ぐ会社か
収益の源は 3 つある。分譲マンション、収益不動産、シニアマンションだ。
分譲マンションは、人口 10〜50 万人の地方中核都市を主な舞台に、駅に近い立地を選んで建て、売る。全国 41 都道府県に進出した実績があり、会社の説明では 2024 年の供給で全国 13 位だった。2026 年 3 月期の引き渡しは 1,263 戸で、売上を戸数で割ると 1 戸 4,450 万円ほどになる。都心の物件より手が届きやすい価格帯だ。
収益不動産は、東京の賃貸マンションなどを開発して投資家に売る事業だ。開発から売却まで 2〜3 年かかり、売れたときに利益が一度に入る。私募リートや私募ファンドの運用も手がけ、手数料が入る。売上は約 500 億円だが、利益の振れが大きい。
シニアマンションは「デュオセーヌ」の名で、金融資産に余裕のある 60〜74 歳のアクティブシニアに分譲する。2026 年 3 月期の引き渡しは 250 戸で、会社は年 400〜500 戸まで増やす計画だ。分譲のあとに運営と中古の仲介を重ねる点が特徴である。
このほか、マンション管理(約 2.2 万戸)、シニアマンションの運営(約 2,600 戸)、ホテル、スポーツクラブ、PFI を持つ。収入は安定しているが、利益は 1 桁億円と小さい。
2026 年 3 月期の売上は 1,386 億円、営業利益は 138 億円だった。引き渡しが下期に偏るため、中間期は赤字になる年がある。
優良さと弱いところ
堀は弱い。筆者は、この会社を「よく回すが、値段を決められない会社」と見ている。
分譲の値段は、地域の相場と住宅ローン金利が決める。土地は同業と競り合って仕入れる。強みは、41 の都道府県で積んだ用地の目利きと、企画から販売・管理まで自社で持つ一貫体制だ。管理戸数は約 2.2 万戸あり、買った人との接点が長く続く。ただし、他社がまねできないほどの強みとまでは言えない。
資本の効率は悪くない。ROE は 13〜15% まで上がり、第 2 次中計の 5 年で純利益は 2 倍を超えた。もっとも、これは借金で支えた数字だ。D/E は約 2 倍、自己資本比率は 28% にとどまる。
経営は計画を守る。第 2 次中計の経常利益 100 億円の目標は達成した。創業者の廣岡哲也氏は会長に退き、2022 年から小川栄一氏が社長を務める。廣岡氏は今も約 12% を持つ筆頭株主だ。
弱い点は 2 つある。利益が収益不動産の売却に偏ること。そして、増資で株数が 15% 増えたことだ。シニア事業に使う前提の資金調達だが、成果が出なければ、株主の取り分が薄まっただけに終わる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の前提は、数量が細り、値段だけが上がる市場だ。
全国の新築分譲マンションの発売は、2025 年に約 6 万戸だった。首都圏は 2.2 万戸で、1973 年以降の最少を更新した。建築費と地価が上がり、平均価格は上がり続けている。買える人が絞られるため、戸数は増えにくい。人口が減る地方ではなおさらだ。
地方では、需要が一様に減るのではなく、駅や行政機能が集まる中心部へ寄っていく。会社も同じ見方で、人口 10〜50 万人の都市の駅近に絞ると説明する。この見立ては妥当だ。ただ、立地が良ければ競合も狙う。大京・穴吹工務店(オリックスグループ)、MIRARTH、エスリードなどが同じ土俵にいて、用地の競り合いは厳しい。
10 年先の数量は、中立で 1 割ほど減ると置く。価格は建築費の上昇を映して上がるが、住宅ローンの返済負担が天井になる。
収益不動産の市場は、金利と投資家の求める利回りが決める。10 年国債が 3% なら、求める利回りは今より高い。売れる値段は伸びにくく、買い手の数も減りうる。
シニア分譲は、まだ小さな市場だ。高齢者の増加は追い風だが、供給の増え方と競合の動きは確かめきれていない。会社は参入障壁が高いと言うが、大手が本気で入れば様相は変わる。
資本政策と M&A
資本の使い道は、シニアマンションが最優先だ。
2025 年 9 月に公募増資を行い、手取りで最大約 68 億円を集めた。使い道は全額、シニアマンションの用地と建築費だ。株数は約 15% 増えた。第 3 次中計では、D/E を 2 倍程度、自己資本比率を 30% 水準に保つとする。借金で回す構造は変えない。
還元は配当が中心だ。配当性向 40% 以上と、純資産配当率 4% 以上を掲げる。自己株買いは「機動的に検討」にとどまる。
買収では、買う側に回る動きは見えない。買われる側の可能性は、時価総額が小さいことから、ゼロではない。確率的な試算では 10 年以内の TOB・買収の確率は 2 割強だ。ただ、有利子負債が重く、買い手は借金の引き受けも求められる。創業者の廣岡氏が約 12% を持つ点も、話の進み方を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
第 2 次中計の 5 年で、純利益は 30 億円から 71 億円へ伸びた。経常利益 100 億円の目標も達成した。計画を守る会社だという実績がある。
シニアマンションには、他社がまだ手を付けていない余地がある。金融資産 1 億円以上を持つ 60〜74 歳の世帯は、会社の推計で 60〜85 万に上る。住宅ローンに頼らず、株や資産の値動きで動く客層だから、金利の影響を受けにくい。供給は 250 戸から年 400〜500 戸へ増える。粗利率 25% で売れれば、この事業だけで営業利益 60 億円が積み上がる。
分譲のあとも収入が続く。管理戸数は約 2.2 万戸、運営戸数は約 2,600 戸で、計画では運営が 4,500 戸近くまで増える。景気に左右されにくい収入だ。
収益不動産は、会社が保守的に置いた計画でも営業利益 60 億円を稼ぐ。外部の資金を入れて貸借対照表を軽くする方針で、借金の増え方も抑えられる。
営業利益 210 億円に届けば、金利が上がっても純利益は 100 億円を超える。配当性向 40% 以上で、増配も続く。
慎重な見方
稼ぎの中身が危うい。2026 年 3 月期の営業利益 138 億円の過半は、収益不動産の売却が生んだ。売却益は市況に左右される。分譲マンション自体の利益率は、1 桁台前半にとどまった。
借金は約 1,000 億円ある。借り換えのたびに、利払いは 2 倍近くになる。会社の今期予想でも、営業利益は横ばいなのに経常利益は 9% 減る。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、利払いが響いて最終赤字だった。
シニア事業は実績が浅い。売上 124 億円の初期の収益で、供給を 3 倍に増やす計画だ。用地と建築費に先行投資が要り、売れ残れば在庫が積み上がる。運営は固定費が重く、入居者が高齢になるほど人件費もかさむ。
地方の人口は減り続ける。物価で値段が上がっても、住宅ローン金利の上昇が購買力を削る。増資で株数が 15% 増えた直後でもあり、次の資金調達が必要になれば、さらに薄まる。
財務の余裕も薄い。自己資本比率は 28% で、総資産の大半が販売用不動産と見られる。評価損が出れば自己資本が直接削られ、借り換えの条件が厳しくなる。10 年の見通しは、事業の伸びよりも、この脆さを先に織り込むべきだ。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力そのものは、強気の見方が正しい。計画を守ってきた実績は重く、シニア事業の方向も筋が通る。
一方、金利と借金の議論では慎重な見方が強い。10 年国債が 3% の世界では、営業利益の伸びの大半が利払いに消える。会社の中計自体、5 年先の純利益 100 億円を置いているだけだ。
そこで確率は、中立の 35% を中心に、やや悲観を 25%、悲観を 13% と悲観側に厚く置いた。楽観は 7%、やや楽観は 20% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,775 円726 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 573 円234 億円)。 今の値に割り戻すと 1,101 円450 億円、今との差 −10.5%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 9.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,209 円1,313 億円 | 929 円380 億円 | +236.2% | +12.9% | 290 円118 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,605 円1,065 億円 | 831 円340 億円 | +179.1% | +10.8% | 687 円281 億円 |
| 中立 | 35% | 2,145 円877 億円 | 721 円295 億円 | +132.8% | +8.8% | 1,003 円410 億円 |
| やや悲観 | 25% | 778 円318 億円 | 269 円110 億円 | −15.0% | −1.6% | 262 円107 億円 |
| 悲観 | 13% | 648 円265 億円 | 171 円70 億円 | −33.4% | −4.0% | 107 円44 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,775 円726 億円 | 573 円234 億円 | +90.8% | +6.7% | 2,348 円961 億円 |
今の株価時価総額 1,231 円503 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 計画を上回って届き、金利も落ち着く 利益 117 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 3,209 円1,313 億円
シニアマンションが年 600 戸の規模に育ち、分譲のあとの運営と中古の仲介が収益の柱になる。収益不動産は外部の資金を入れて貸借対照表を軽くし、売却のたびに安定して利益を出す。地方の分譲は立地を絞り、1 戸あたりの値段を物価以上に伸ばす。
営業利益は 2036 年 3 月期に約 260 億円となり、会社が 2031 年 3 月期に掲げる 210 億円を上回る。借金は 4.5% 前後で借り換わるが、利益の伸びがそれを吸収し、純利益は 117 億円に達する。ROE は 10% を超え、配当は利益に合わせて増える。
10 年国債が 3% の世界で、地方の分譲が値上げを通し続けるのは難しい。それでも、客層を住宅ローンに頼らないシニアへ寄せられれば、この筋書きは成り立つ。
- 分譲マンション(実需・地方中核都市):数量 1,263(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.62(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 787 億円・営業利益 83 億円。戸数横ばい・単価+40%
- シニアマンション(分譲):数量 600(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.69(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 417 億円・営業利益 58 億円。年600戸・単価+40%
- 収益不動産・私募ファンド運用:数量 14.0(売却・開発の件数(推定))× 価格 51(1 件あたり売上(億円))→ 売上 718 億円・営業利益 90 億円。売却14件・単価+45%
- 管理・運営・ホテル等の関連サービス:数量 36,000(管理・運営戸数(戸))× 価格 0.01(1 戸あたり売上(億円))→ 売上 208 億円・営業利益 19 億円。管理・運営36,000戸
- 海外開発・その他:数量 6.0(引渡件数(推定))× 価格 21(1 件あたり売上(億円))→ 売上 126 億円・営業利益 13 億円。海外は6件
倍率:事業の純利益 117 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.2 倍。全体の PER 11.22 倍、時価総額 1,313 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シニアマンションの立ち上がり、収益不動産の市況、金利の三つが同時にうまくいく必要がある。借金が重い会社でこれが揃う確率は 1 割に届かないと見て 7% に置いた。
やや楽観 20% 中計は届くが、5 年遅れる 利益 98 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 2,605 円1,065 億円
計画は遅れながらも届く。シニアマンションは年 480 戸まで増え、分譲の粗利率は 25% 近くを保つ。収益不動産は、市況が荒れても売却の時期を選べる。地方の分譲は戸数をわずかに減らしつつ、立地を選んで単価を上げる。
営業利益は約 216 億円で、会社が 5 年後に置く 210 億円に 5 年遅れで届く姿だ。ただし借金の利払いが増え、純利益は 98 億円にとどまる。ROE は 10% 近くで、資本コストをわずかに上回るだけだ。
事業は計画に近いのに、株主の手元には思ったほど残らない。借金が利益を削る構造は、この筋書きでも変わらない。
- 分譲マンション(実需・地方中核都市):数量 1,238(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.60(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 738 億円・営業利益 70 億円。戸数-2%・単価+34%
- シニアマンション(分譲):数量 480(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.68(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 329 億円・営業利益 41 億円。年480戸・単価+38%
- 収益不動産・私募ファンド運用:数量 14.0(売却・開発の件数(推定))× 価格 49(1 件あたり売上(億円))→ 売上 693 億円・営業利益 83 億円。売却14件・単価+40%
- 管理・運営・ホテル等の関連サービス:数量 33,500(管理・運営戸数(戸))× 価格 0.01(1 戸あたり売上(億円))→ 売上 185 億円・営業利益 16 億円。管理・運営33,500戸
- 海外開発・その他:数量 6.0(引渡件数(推定))× 価格 20(1 件あたり売上(億円))→ 売上 122 億円・営業利益 10 億円。海外は6件
倍率:事業の純利益 98 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.9 倍。全体の PER 10.87 倍、時価総額 1,065 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:これまで 5 年の計画を守ってきた実績があり、シニア事業の方向も筋が通る。強気の根拠は厚いが、増資直後で借金も重く、計画どおりとまではいかないと見て 20% に置いた。
中立 35% シニア事業は育つが計画の 8 割、金利が利益を削る 利益 72 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 2,145 円877 億円
シニアマンションは年 360 戸まで増え、計画の 8 割に届く。ただし用地の確保と運営の立ち上げに手間取り、利益率は 1 割台前半にとどまる。分譲マンションは地方の人口減で戸数が 1 割減り、値上げで補う。収益不動産は売却件数を減らし、利益率は計画並みの 11% 台に落ち着く。
営業利益は約 168 億円で、今より 2 割ほど増える。計画の 210 億円には届かない。借金は新しい水準に借り換わり、利払いは 50 億円を超える。純利益は 72 億円と、今とほぼ同じだ。
自己資本は積み上がるが、稼ぐ効率は資本コストを下回る。ROE は 7〜8% に落ちる。事業は前に進んでいるのに、株主の取り分は増えない。
- 分譲マンション(実需・地方中核都市):数量 1,137(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.58(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 658 億円・営業利益 56 億円。戸数-10%・単価+30%
- シニアマンション(分譲):数量 360(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.66(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 239 億円・営業利益 28 億円。年360戸・単価+34%
- 収益不動産・私募ファンド運用:数量 12.6(売却・開発の件数(推定))× 価格 47(1 件あたり売上(億円))→ 売上 597 億円・営業利益 69 億円。売却-10%・単価+34%
- 管理・運営・ホテル等の関連サービス:数量 31,000(管理・運営戸数(戸))× 価格 0.01(1 戸あたり売上(億円))→ 売上 171 億円・営業利益 14 億円。管理・運営31,000戸
- 海外開発・その他:数量 4.0(引渡件数(推定))× 価格 19(1 件あたり売上(億円))→ 売上 78 億円・営業利益 5 億円。海外は4件
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 778 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事業の伸びは計画の 8 割に届くが、利払いの増加で株主の利益はほぼ増えないという、強気と慎重の中間に置いた。確率は慎重な見方の側へわずかに寄せ、同じ領域の会社の置き方(中立 33〜35%)に合わせた。
やや悲観 25% 金利が高止まりし、分譲と売却が痩せる 利益 16 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 778 円318 億円
10 年国債が 3% を超えて居座り、住宅ローン金利も上がり続ける。地方の分譲は戸数が 2 割以上減り、値上げも物価に追いつかない。収益不動産は、買い手が求める利回りが上がって売値が伸びず、売却件数も減る。シニアマンションは立ち上がりが遅れ、供給は年 200 戸台で止まる。
営業利益は約 70 億円と、今の半分に落ちる。借金は減らせても、利払いは 40 億円台が残る。純利益は 16 億円で、配当は抑えられる。
在庫の評価損も出る。販売用不動産の 1 割を切り下げ、自己資本は思うように増えない。それでも会社が行き詰まるほどではなく、規模を縮めながら借金を返していく。
- 分譲マンション(実需・地方中核都市):数量 985(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.51(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 504 億円・営業利益 28 億円。戸数-22%・単価+15%
- シニアマンション(分譲):数量 220(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.60(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 131 億円・営業利益 9 億円。年220戸・単価+20%
- 収益不動産・私募ファンド運用:数量 9.0(売却・開発の件数(推定))× 価格 41(1 件あたり売上(億円))→ 売上 366 億円・営業利益 26 億円。売却9件・単価+15%
- 管理・運営・ホテル等の関連サービス:数量 27,500(管理・運営戸数(戸))× 価格 0.01(1 戸あたり売上(億円))→ 売上 147 億円・営業利益 10 億円。管理・運営27,500戸
- 海外開発・その他:数量 2.0(引渡件数(推定))× 価格 16(1 件あたり売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。海外は2件
倍率:ROE が資本コストを大きく下回り、稼ぐ力(純利益÷k)は約 160 億円しかない。価値は事業の稼ぎでなく、評価損後の資産から借金を引いた残りで測り、今の自己資本 530 億円に 0.60 倍を掛けた。中立の PBR を下回る。
確率:借金が重く、10 年国債が 3% を超えて居座るだけで利益の大半が利払いに消える。会社自身の今期予想も営業利益は横ばいで経常利益は減る。慎重な見方が強いと見て 25% に置いた。
悲観 13% 地方の需要が細り、在庫の評価損で財務が傷む 利益 −25 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 648 円265 億円
地方のマンション需要が細り、住宅ローン金利の上昇が追い打ちをかける。分譲の戸数は 4 割近く減り、値段も物価に追いつかず、利益率は 2% まで落ちる。収益不動産は市況が冷え、在庫を安く売らざるを得ない。
シニアマンションは、増資で広げた分が売れ残る。運営は赤字が続き、計画を大幅に縮小する。販売用不動産の評価損は 25% に達し、税引き後で約 250 億円の損失が出る。
営業利益はほぼゼロで、利払いだけが残って純損益は赤字になる。自己資本は 330 億円まで縮み、借り換えの条件も厳しくなる。配当は止まり、会社は資産の売却や増資で財務を立て直す。事業は残るが、もう優良とは呼べない。
- 分譲マンション(実需・地方中核都市):数量 783(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.45(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 348 億円・営業利益 7 億円。戸数-38%・単価据え置き
- シニアマンション(分譲):数量 120(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.50(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 −3 億円。年120戸・運営赤字
- 収益不動産・私募ファンド運用:数量 6.0(売却・開発の件数(推定))× 価格 35(1 件あたり売上(億円))→ 売上 212 億円・営業利益 6 億円。売却6件・単価据え置き
- 管理・運営・ホテル等の関連サービス:数量 24,000(管理・運営戸数(戸))× 価格 0.00(1 戸あたり売上(億円))→ 売上 108 億円・営業利益 4 億円。管理・運営24,000戸
- 海外開発・その他:数量 1.0(引渡件数(推定))× 価格 15(1 件あたり売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 −2 億円。海外は1件
倍率:赤字で稼ぐ力はなく、価値は評価損後の資産から借金を引いた残り(約 285 億円)で測る。今の自己資本 530 億円に 0.50 倍を掛けた。中立の PBR を下回る。EV(時価総額+純有利子負債)÷ 営業利益 は 80 倍超になり、営業利益がほぼ消えるため倍率では測れない。資産の残りで見るのが妥当と判断した。
確率:借金が重く、在庫の評価損が自己資本の半分近くに達しうる。10 年先の構造的な負けとして 13% に置いた。同じ領域の会社の悲観は 11〜14%。借金の重さに見合う分、やや厚めにした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
分譲マンション(実需・地方中核都市)
地方中核都市の駅近を中心に、ファミリー向けマンションを企画・分譲する。中計では戸数を追わず、単価と粗利率で伸ばす方針。
| 数量年間引渡戸数(戸) | 価格1 戸あたり平均価格(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,263 | 0.45 | 562 | 27 |
| 10 年後 中立 | 1,137 | 0.58 | 658 | 56 |
取り方:2026 年 3 月期の分譲マンション売上 562 億円(中計の資料)を引渡 1,263 戸で割り、1 戸 0.445 億円を使う。営業利益 27 億円は旧区分の不動産開発の値(みんかぶ要約。資料で食い違いあり)を当てた推定。
シニアマンション(分譲)
金融資産に余裕のある 60〜74 歳向けの分譲マンション(デュオセーヌ)。分譲のあとに運営・中古仲介へ広げる、中計の成長ドライバー。
| 数量年間引渡戸数(戸) | 価格1 戸あたり平均価格(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 0.50 | 124 | 7 |
| 10 年後 中立 | 360 | 0.66 | 239 | 28 |
取り方:売上 124 億円(中計の資料)を引渡 250 戸で割り、1 戸 0.496 億円。営業利益 7 億円は旧 CCRC 事業の値からの推定。
収益不動産・私募ファンド運用
賃貸マンションなどを開発して投資家に売る収益不動産と、私募リート・私募ファンドの運用。市況で利益が大きく動く可変型の事業。
| 数量売却・開発の件数(推定) | 価格1 件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.0 | 35 | 495 | 90 |
| 10 年後 中立 | 12.6 | 47 | 597 | 69 |
取り方:売上 495 億円(中計の資料)を、年 14 件の売却と推定して 1 件 35.4 億円とした(件数は開示がなく推定)。営業利益 90 億円は旧不動産投資事業 95 億円から海外分を除いた推定。
管理・運営・ホテル等の関連サービス
マンション管理、シニアマンションの運営、ホテル、スポーツクラブ、PFI。ストック収入だが利益は小さい。
| 数量管理・運営戸数(戸) | 価格1 戸あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24,491 | 0.00 | 101 | 8 |
| 10 年後 中立 | 31,000 | 0.01 | 171 | 14 |
取り方:売上 101 億円(中計の資料)を、管理 21,860 戸と運営 2,631 戸の合計で割った。ホテル等も含むため 1 戸あたりは薄い。営業利益は 8 億円(計画の 10 億円には届かない水準と推定)。
海外開発・その他
海外の不動産開発と、整理が進むその他の開発。中計では縮小の方向。
| 数量引渡件数(推定) | 価格1 件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 15 | 116 | 6 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 19 | 78 | 5 |
取り方:海外 42 億円とその他 74 億円の合計 116 億円を、年 8 件の引渡と推定して 1 件 14.5 億円。営業利益 6 億円は残りの推定。
リスクと懸念
借り換えと金利
有利子負債は約 1,000 億円。借り換えのたびに金利が国債の 3% に上乗せされ、利払いが約 2 倍になる。営業利益が伸びても、利払いの増加が純利益を食う。会社の今期予想もすでにその形になっている。
収益不動産への利益の偏り
旧区分で営業利益の過半を占めた収益不動産は、売る時期と市況で利益が大きく動く。投資家の求める利回りが上がると、売値が下がり、売却件数も減る。会社自身がこの事業の売上と利益率を下げる計画を置いている。
シニア事業の実行
供給を 250 戸から 400〜500 戸へ増やす計画は、用地の確保、販売、入居後の運営という三つの難しさがある。運営は固定費が重く、高齢の入居者が増えるほど人手が要る。増資で集めた資金の成果が出なければ、株主の取り分は薄まるだけだ。
地方の人口減と在庫
地方の人口は減り、需要は中心部へ寄る。立地を誤ると売れ残り、在庫が積み上がる。総資産の 7 割強が棚卸資産と見られ、評価損が出ると自己資本への打撃が大きい。
自己資本の薄さと増資
自己資本比率は 28%、D/E は約 2 倍だ。2026 年 3 月期にも増資で株数が約 15% 増えた。市況が悪化したとき、再び増資に頼れば株主の持ち分はさらに薄まる。
期ごとの振れ
引き渡しが下期に偏り、中間期は赤字になる年がある。2027 年 3 月期の第 1 四半期も、利払いの増加で最終赤字だった。通期の見通しからの外れ幅が、株価の揺れにつながりやすい。
建築費と人手
建築費は 2015 年比で約 3 割上がった水準にある。地方の分譲は値上げが難しく、建築費の上昇を吸収できないと粗利率が 23〜24% の水準から下がる。人手不足で工期が延びれば、利払いも増える。
今後の分かれ目
- 10 年国債が想定の 3% を大きく超えて居座る
- 利払いが営業利益の伸びを食い、住宅ローン金利も上がって分譲が細る。価値はやや悲観の筋書きに近づく。
- シニアマンションの引き渡しが 2027 年度に 400 戸を超える
- 計画の看板事業が立ち上がった証拠になる。価値は中立よりやや楽観の筋書きに近づく。
- 収益不動産の売却が 2 期続けて計画を下回る
- 利益の過半が揺らぐ。営業利益の水準が下がり、やや悲観の筋書きに近づく。
- 分譲の在庫の販売が遅れ、評価損を計上する
- 自己資本が削られ、悲観の筋書きが現実味を帯びる。借り換えの条件も厳しくなる。
- 追加の増資や、借入条件の悪化が表に出る
- 株数が増え、利払いも重くなる。1 株あたりの価値は下がる。
- ほかの会社から TOB や資本提携の申し出がある
- 借金を含めた価格で評価されるため、時価総額の上乗せは限られる。創業者の持ち株の動きも見る。
見ておくもの
- シニアマンションの引渡戸数と粗利率(四半期の決算説明資料)
- 収益不動産の売却件数と利益率
- 有利子負債の残高と平均金利(借り換え後の支払利息)
- 分譲マンションの契約進捗率と在庫の回転
- 全国・地方の新築分譲マンション発売戸数(不動産経済研究所)
- 住宅ローン金利と 10 年国債利回り
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式(g、k、残る割合)だけで決め、今の株価や同業の倍率は使っていない。セグメントごとに戸数と単価で 10 年を積み、金利は新しい水準 4.5% で純利益に入れた。時価総額が純有利子負債より小さい点は、倍率を割り引かず、悲観の確率と在庫の評価損で表した。ホテルやスポーツクラブの賃借は小さく、新リース会計基準(2028 年 3 月期から)の影響は 10 年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.4→11.22 倍・やや楽観 PER 9→10.87 倍・中立 PER 8.2→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。4 つの目安のうち、借金がいちばん重い。純有利子負債は EBITDA の 4 倍を超え、借り換えで利払いが利益を大きく削る。値段を市場に決められる点と循環は並み。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.75% → 9.25%。