結論
エムティジェネックスは、森トラストが過半を持つ子会社だ。親会社のオフィスビルの内装やリニューアルの工事を請け負い、ビルの駐車場を運営し、衛生用品の供給や設備の保守もする。筆者の結論は「やや割高」だ。
事業の土台は堅い。森トラストは東京の都心に大きなビルを持ち、入居する会社が替わるたびに内装の工事が生まれる。出社への回帰でオフィスの手直しの需要は強く、2027年3月期は営業利益が5割近く増える見込みだ。2026年7月には電気・通信工事のネクストを18億円で買い、親会社の外にも仕事を広げようとしている。
弱さは親会社への依存だ。売上の4分の1近くは森トラスト向けで、駐車場も親会社から借りて運営する。手元の現金の半分の20億円は親会社に貸している。余ったお金の使い道を決めるのは親会社で、少数株主に戻る道は細い。10年の中立で積むと、今の時価総額を少し下回る価値になる。筆者は、事業の堅さには値段を払えても、少数株主の取り分の細さには払えないと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業は分かりやすく、堅い。森トラストのビルがある限り、内装と駐車場の仕事は続く。設備もあまり要らず、売上に対して利益をよく残す。オーナーとして持てば、毎年きちんと稼いでくれる会社だ。
問題は、その稼ぎの行き先だ。配当性向は14%で、現金は積み上がり、その半分は親会社に貸されている。少数株主は、親会社の財布の一部を持っているのに近い。現金が株主に戻らないなら、その価値は帳簿の半分程度にしか数えられない。
ネクストの買収は、その現金を事業に回す動きとして評価できる。ただ上乗せの8億円を回収するには、親会社の外の客で稼ぐ力を示す必要がある。
筆者が見方を変えるのは、配当性向を3割以上に上げるか、親会社への貸付をやめて株主に戻す方針が示される時だ。その時、この会社の安全域は今よりずっと厚くなる。
何で稼ぐ会社か
事業は五つある。2026年3月期の売上47億円のうち、リニューアルが20億円、駐車場が16億円、施設等保守管理が11億円、保険の代理が1億円弱だった。これに2026年7月に買ったネクストの電気・通信工事が加わる。
リニューアルは、オフィスビルの内装工事や電気設備の工事だ。主な客は親会社の森トラストで、ビルの入居者が替わる時や、古くなった設備を新しくする時に仕事が出る。大規模なオフィスの工事が増え、2027年3月期は売上が35億円に膨らむ見込みだ。
駐車場は、森トラストのビルの駐車場を借りたり運営を任されたりして、時間貸しと月極で貸す。周りのビルの工事の車が増え、利用は堅調だ。借りた駐車場の家賃は、売上が落ちても払い続ける固定の約束だ。
施設等保守管理は、オフィス向けのトイレットペーパーなど衛生用品の供給と、電気設備の保守だ。保険の代理は小さく、契約を見直している。
ネクストは東京・名古屋・仙台で、通信網や防災、受変電の設備の工事をする会社だ。直近の年の売上は16億円、営業利益は1.3億円で、親会社の外の客を持つ。
優良さと弱いところ
優良さは親会社との結びつきにある。森トラストは都心に大型のビルを持ち、その内装と駐車場の仕事は、ほぼこの会社に回ってくる。競争入札で値段を叩かれることは少なく、セグメントの利益率は内装で14%前後、駐車場で18%と、工事会社としては高い。客を探す費用もかからない。
ただ、この強さは自分のものではない。親会社が工事の発注先を変えたり、駐車場の家賃を上げたりすれば、利益はすぐに動く。値段を決めているのは、実のところ親会社だ。
資本の効率は資本コストに近い。過去10年のROEの中央値は7%だ。手元の現金と親会社への貸付で40億円を持ち、利息の低い資産が自己資本の大半を占めるのが効率を下げている。借金はほぼ無く、財務は堅い。ネクストの買収は、この寝た現金を事業に回す初めての大きな一歩だ。買収の成否で、堀の持ち主が変わるかが決まる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京都心のオフィス市場は堅調だ。出社への回帰と人手の確保のために、企業は働きやすいオフィスへの手直しを進めている。都心の空室率は低く、入居者の入れ替えと改装の工事は続く。古いビルの設備の更新も、建てた時から20〜30年たつビルが増えて重みを増す。内装と設備の工事の数量は、10年で2割ほど伸びると見てよい。
工事の値段は、資材と人件費の上昇で物価並みに上がる。ただ職人の不足が深刻で、工事を受けても人を確保できなければ利益は出ない。利益率は人の手当てで決まる。
駐車場の需要は、都心のビルの来訪者と工事の車に支えられる。車を持つ人は減り、カーシェアや配車の広がりで長い目では細るが、ビルに付いた駐車場は来訪者の需要で底堅い。タイムズを運営するパーク二四や三井のリパークのような大手とは違い、この会社は親会社のビルの中だけで動く。
電気・通信の設備工事は、データ通信や防災、省エネの更新で需要が伸びる分野だ。ネクストはその中の小さな会社だが、技術者を抱えていることが強みになる。地方の拠点を持つことも、親会社のビルの外に出る足場になる。
資本政策と M&A
配当は年の総額0.4億円余りで、配当性向は14%にとどまる。会社は業績に応じた安定配当を掲げるが、利益の大半を社内に残してきた。自社株買いはしていない。中長期でROE10%を目標に掲げる。
親会社の森トラストが53.5%を持つ。手元の現金40億円のうち20億円は親会社への短期の貸付で、利息は1%ほどだ。親会社の資金の融通に使われている形で、少数株主から見れば最も効率の悪い使い道だ。
2026年7月、電気・通信工事のネクストを18億円で買った。純資産10億円の会社に8億円の上乗せを払っており、のれんは毎年の利益を削る。会社はM&Aを成長の柱に据え、今後も買収を探す。親会社が残りの株を買い取って完全子会社にする可能性は常にあるが、その時期と値段は読めない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
都心のオフィスの改装の需要は強い。出社への回帰で企業はオフィスに投資し、森トラストは大型のビルの再開発と改装を続ける。2027年3月期はリニューアルの売上が7割増え、営業利益は5割近く増える見込みだ。
ネクストの買収で、親会社の外の客と電気・通信の技術者を手に入れた。設備の工事は人手不足で技術者を持つ会社が強く、データ通信や防災の更新で需要は伸びる。2025年10月期のネクストの営業利益は前の年の倍近くに増えた。この先も買収で事業を広げる余地は大きい。
財務は極めて堅い。買収の後も現金と親会社への貸付で20億円余りを持ち、借金はほぼ無い。親会社が過半を持つので、いずれ残りの株を買い取る時には上乗せの値段が付く。利益は伸び、ROE10%の目標にも近づく。今の値段は、伸びる利益と厚い現金を考えれば高くない。
親会社との関係も、見方を変えれば強みだ。都心の一等地のビルを持つ親会社が、30年近く仕事を回し続けてきた。この関係が急に切れる理由は見当たらない。
慎重な見方
利益の土台は親会社の発注だ。森トラスト向けの売上は4分の1近くあり、駐車場も親会社から借りている。親会社が工事の発注先を競わせたり、駐車場の家賃を上げたりすれば、利益率はすぐに下がる。今期の大型の工事も、親会社の改装の山にすぎない。
現金の使い方も心配だ。20億円は利息1%で親会社に貸され、配当性向は14%だ。ネクストの買収では純資産の1.8倍を払い、のれんの償却が10年にわたって利益を削る。小さな工事会社の買収は、職人が辞めれば価値が消える。
人手不足は工事会社の利益を直撃する。資材と人件費は上がり続け、親会社がその値上げを全部認める保証はない。駐車場は車離れで長い目では細る。少数株主にとって、親会社の都合で決まる会社に高い値段を払う理由は乏しい。
今期の大きな伸びは、親会社の改装の山に乗っただけだ。山の後の定常の量で見れば、利益は今期の予想を下回る。少数株主には、その谷を避ける手段も無い。
どちらに重みを置いたか
両者の言い分はほぼ拮抗する。都心のオフィスの改装の需要と堅い財務は本物で、ネクストの買収も方向は正しい。一方で、利益と現金の行き先を決めるのは親会社で、少数株主の取り分は細い。確率は中立を4割に、楽観側に4分の1強、悲観側に3分の1を置いた。親会社がいる限り会社が傾く筋書きは薄く、深い悲観は厚くしない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,735 円72 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 568 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 3,584 円39 億円、今との差 −1.0%、 期待の年率 +7.3%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 15,564 円168 億円 | 929 円10 億円 | +355.6% | +16.4% | 1,155 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 11,287 円121 億円 | 743 円8 億円 | +232.3% | +12.8% | 2,406 円26 億円 |
| 中立 | 40% | 7,205 円78 億円 | 557 円6 億円 | +114.4% | +7.9% | 3,105 円33 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,988 円21 億円 | 465 円5 億円 | −32.3% | −3.8% | 515 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 736 円8 億円 | 279 円3 億円 | −72.0% | −11.9% | 122 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,735 円72 億円 | 568 円6 億円 | +101.7% | +7.3% | 7,303 円79 億円 |
今の株価時価総額 3,620 円39 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 親会社の外に広げ、設備工事の会社になる 利益 9 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 15,564 円168 億円
森トラストの都心の再開発と改装は10年続き、内装の工事は件数で8割増える。ネクストは親会社のビルと外の客の両方で通信と防災の設備工事を伸ばし、件数は倍近くになる。工事の値段は資材と人件費の上昇を映して物価並みに上がる。会社はさらに小さな工事会社を買い、技術者を増やす。
駐車場は来訪者の車で底堅く、保守の仕事も親会社の外のビルに広がる。全社の営業利益は14億円に近づき、ROEは目標の10%を超える。配当性向も2割に上がる。のれんの償却は続くが、稼ぐ力がそれを上回る。親会社にとっても手放せない子会社になる。
- リニューアル:数量 720(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.07(1件あたりの売上(億円))→ 売上 50 億円・営業利益 8 億円。720件×単価1.38倍、利益率16%
- 駐車場:数量 2,200(運営する車室(台、推定))× 価格 0.01(1台あたりの年間売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 5 億円。2,200台×単価1.32倍
- 施設等保守管理・保険代理:数量 205(契約するビル(棟、推定))× 価格 0.12(1棟あたりの年間売上(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。205棟×単価1.31倍
- 電気・通信工事(ネクスト):数量 1,500(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1件あたりの売上(億円))→ 売上 41 億円・営業利益 4 億円。1,500件×単価1.37倍、利益率9%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 17.03 倍、時価総額 163 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ネクストの成長と追加の買収、親会社の再開発の続きが全部そろう必要がある。親会社の外で稼いだ実績がまだ無いので1割未満。
やや楽観 20% 改装の需要とネクストで利益が倍になる 利益 7 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 11,287 円121 億円
親会社の改装の山は越えるが、入居者の入れ替えと古いビルの設備の更新で、内装の工事は件数で5割増える。ネクストは通信と防災の工事で件数を5割伸ばし、親会社のビルの電気工事も引き受ける。工事の値段は物価並みに上がり、人の手当てもつく。
駐車場は横ばいの台数で、値段は物価にやや遅れて上がる。保守は親会社の外のビルに少し広がる。全社の営業利益は10億円に乗り、今の2倍余りになる。のれんの償却を引いても純利益は7億円近い。配当性向は少し上がるが、現金はなお積み上がる。ROEは資本コストをわずかに上回る。親会社の外の売上の割合も、少しずつ上がる。
- リニューアル:数量 600(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.07(1件あたりの売上(億円))→ 売上 41 億円・営業利益 6 億円。600件×単価1.36倍、利益率15%
- 駐車場:数量 2,100(運営する車室(台、推定))× 価格 0.01(1台あたりの年間売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 4 億円。2,100台×単価1.28倍
- 施設等保守管理・保険代理:数量 170(契約するビル(棟、推定))× 価格 0.12(1棟あたりの年間売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。170棟×単価1.3倍
- 電気・通信工事(ネクスト):数量 1,200(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1件あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。1,200件×単価1.34倍、利益率8.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 16.2 倍、時価総額 116 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年3月期の計画とネクストの取り込みを素直に延ばし、山の後も改装が続く姿。都心のオフィスの改装の需要は確かなので中立の次に厚く置いた。
中立 40% 親会社の仕事で堅く、伸びは緩やか 利益 5 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 7,205 円78 億円
親会社の改装の山が過ぎると、内装の工事は入居者の入れ替えと設備の更新の定常の量に戻る。それでも古いビルが増え、件数は10年で2割増える。値段は資材と人件費を映して物価並みに上がり、利益率は14%前後を保つ。
ネクストは技術者を保ち、件数を2割半増やす。利益率は7.5%前後だ。駐車場は台数が横ばいで、値段は物価にやや遅れる。親会社に払う家賃も上がり、利益率は少し下がる。本社の費用は物価で増え、のれんの償却も年0.8億円ほど続く。全社の営業利益は7億円前後で、2027年3月期の見込みとほぼ同じだ。
配当性向は1割台のままで、現金は親会社への貸付として積み上がる。ROEは6%前後で、資本コストに届かない。
- リニューアル:数量 480(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.07(1件あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 5 億円。480件×単価1.34倍、利益率14%
- 駐車場:数量 2,000(運営する車室(台、推定))× 価格 0.01(1台あたりの年間売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 4 億円。2,000台×単価1.25倍(来訪者の車が細り物価をやや下回る)
- 施設等保守管理・保険代理:数量 145(契約するビル(棟、推定))× 価格 0.12(1棟あたりの年間売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。145棟×単価1.3倍
- 電気・通信工事(ネクスト):数量 1,000(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1件あたりの売上(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。1,000件×単価1.33倍、利益率7.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 14.49 倍、時価総額 72 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年3月期の山を割り引き、親会社の改装の需要とネクストの今の稼ぐ力をそのまま延ばした姿を中心に置いた。
やや悲観 21% 親会社が発注を絞り、買収が重荷になる 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,988 円21 億円
森トラストは改装の費用を抑えるため、内装の工事を他の会社と競わせる。エムティジェネックスの件数は2割減り、利益率も9%に下がる。ネクストは技術者の流出で受注が伸びず、利益率は5%にとどまる。
駐車場は来訪者の車が減り、親会社に払う家賃は下がらない。利益率は14%に下がる。本社の費用とのれんの償却は残り、全社の営業利益は2億円を割り込む。配当は据え置かれ、現金は親会社への貸付として残る。ROEは2%を下回り、少数株主に残るのは細った稼ぎと、戻るかどうかわからない現金だけだ。親会社の都合ひとつで、稼ぎの形が変わる会社だ。
- リニューアル:数量 330(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.06(1件あたりの売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。330件×単価1.2倍、利益率9%
- 駐車場:数量 1,900(運営する車室(台、推定))× 価格 0.01(1台あたりの年間売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。1,900台×単価1.16倍、家賃は固定
- 施設等保守管理・保険代理:数量 115(契約するビル(棟、推定))× 価格 0.11(1棟あたりの年間売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。115棟×単価1.17倍
- 電気・通信工事(ネクスト):数量 750(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1件あたりの売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。750件×単価1.24倍、利益率5%
倍率:ROEは2%を下回り資本コストに遠い。悲観側の上限は稼ぐ力(事業の純利益÷k)と余った現金(谷で食う分を引いた0.75倍)に戻り方0.5を掛けた額で、PERは1÷kより低い12.09倍。
確率:親会社の発注の方針と工事の山の谷は外から読めない。ネクストの買収の上乗せが大きいことも踏まえ2割強。
悲観 12% 親会社の仕事を失い赤字に沈む 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 736 円8 億円
森トラストはグループの再編で、駐車場の運営と内装の工事を大手の専門会社に任せる。エムティジェネックスは駐車場の一部の賃借を解かれ、台数は4割減る。残った駐車場の家賃は下がらず、利益率は8%に落ちる。内装の工事も件数が4割減る。
ネクストは技術者が辞め、のれんを減損する。全社は営業赤字になり、自己資本は減損と赤字で40億円を割る。借金は無くつぶれはしないが、手元の現金は赤字と配当で減る。親会社が残りの株を安く買い取る提案をしても、少数株主には断る力が無い。30年近い親会社との関係も、再編の一枚の紙で終わる。
- リニューアル:数量 250(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.06(1件あたりの売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。250件×単価1.1倍、利益率3%
- 駐車場:数量 1,200(運営する車室(台、推定))× 価格 0.01(1台あたりの年間売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。1,200台、家賃は固定
- 施設等保守管理・保険代理:数量 100(契約するビル(棟、推定))× 価格 0.10(1棟あたりの年間売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。100棟
- 電気・通信工事(ネクスト):数量 600(工事の件数(件・年、推定))× 価格 0.02(1件あたりの売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。600件、ほぼ収支とんとん
倍率:赤字なのでPBRで置く。稼ぐ力は無く、床は残る現金に戻り方0.5を掛けた額。今の自己資本44.0億円に0.18倍を掛けた。
確率:親会社が駐車場の運営を自ら行うか、工事を大手に切り替える構造的な負けの筋書き。親会社との長い関係から急な変化は考えにくく1割余り。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リニューアル
オフィスビルの内装工事・リニューアル工事・電気設備工事。主な客は森トラスト。
| 数量工事の件数(件・年、推定) | 価格1件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 0.05 | 20 | 3 |
| 10 年後 中立 | 480 | 0.07 | 32 | 5 |
取り方:件数の開示は無い。売上20億円を、オフィスの内装と設備の工事の平均を1件0.05億円と置いて約400件と推定。
駐車場
森トラストのビルなどの駐車場を借りたり運営を受託したりして、時間貸しと月極で貸す。
| 数量運営する車室(台、推定) | 価格1台あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.01 | 16 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 0.01 | 20 | 4 |
取り方:台数の開示は無い。売上15.9億円を、都心のビルの駐車場の1台あたりの年間売上を0.008億円前後と置いて約2,000台と推定。親会社に払う家賃は固定費。
施設等保守管理・保険代理
オフィス向けの衛生用品の供給、電気設備の保守、損害保険の代理。
| 数量契約するビル(棟、推定) | 価格1棟あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 125 | 0.09 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 145 | 0.12 | 17 | 2 |
取り方:施設等保守管理10.57億円(利益0.85億円)と保険代理0.65億円(利益0.30億円)の合計。棟数の開示は無く、1棟あたり年0.09億円前後と置いて約125棟と推定。
電気・通信工事(ネクスト)
2026年7月に買った株式会社ネクスト。通信網・防災・受変電などの設備工事。
| 数量工事の件数(件・年、推定) | 価格1件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 800 | 0.02 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.03 | 27 | 2 |
取り方:取得前の2025年10月期の実績(買収の開示)。件数の開示は無く、1件0.02億円前後と置いて約800件と推定。2026年3月期の連結には入っていない。
リスクと懸念
親会社への依存
売上の4分の1近くが森トラスト向けで、内装工事も駐車場も親会社のビルが土台だ。親会社が発注先を競わせたり、駐車場の家賃を上げたりすれば、利益率はすぐに下がる。
工事の山と谷
2027年3月期の大型の改装は親会社の再開発の山に乗っている。山が過ぎれば内装の売上は大きく落ちる。オフィス市況が悪化すれば、入居者の入れ替えの工事も減る。
職人と人件費
工事の現場は職人の不足が深刻だ。人を確保できなければ受注を逃し、人件費の上昇を親会社が認めなければ利益率は削られる。
ネクストの買収
純資産10億円の会社に18億円を払い、のれん約8億円が毎年の利益を削る。小さな工事会社の価値は技術者に宿り、人が辞めれば減損の恐れがある。
駐車場の家賃と車離れ
駐車場は親会社から借りており、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。車を持つ人が減り、来訪者の車も細れば、利益は家賃に食われる。
現金が株主に戻らない
手元の現金の半分は親会社に貸され、配当性向は14%だ。親会社が残りの株を安く買い取れば、少数株主は帳簿の価値を受け取れない。
今後の分かれ目
- ネクストが親会社の外で受注を伸ばし、利益率8%以上を保つ
- やや楽観の筋書きに近づく。全社の営業利益は10億円を超える。
- 配当性向を3割以上に上げ、親会社への貸付を減らす
- 余った現金が株主に戻る道が見え、価値は上がる。
- 親会社が内装工事の発注先を競わせる
- リニューアルの利益率が下がり、やや悲観の筋書きに寄る。
- 親会社が残りの株の買い取りを提案する
- 少数株主は上乗せを受け取れる。値段は提案の条件しだいになる。
- ネクストののれんを減損する
- 買収の失敗がはっきりし、悲観側に寄る。
見ておくもの
- 森トラスト向けの売上の割合
- リニューアルの受注と利益率
- ネクストの売上と利益
- 親会社への貸付金の残高
- 配当性向
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPERから置いていない。中立の事業のROEは7%前後で資本コスト7.75%に届かないので、PERの上限は1÷kの約11.8倍で、親会社への依存を見て約85%の10倍。楽観側は事業のROEがkを上回り、普通の堀で下限の1÷k以上に置いた。余った現金16億円は戻り方0.5で足した。悲観側は稼ぐ力(純利益÷k)と、残る現金に戻り方を掛けた床で置いた。親会社から借りる駐車場の家賃は営業費用に入っており、新しいリース会計で形が変わっても今の形で揃えている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→17.03 倍・やや楽観 PER 11.8→16.2 倍・中立 PER 10→14.49 倍・やや悲観 PER 11→12.09 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ1.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。