結論
地主は、土地だけを買ってテナントに貸し、借地料が安定したところで投資家に売る会社だ。筆者の結論は「やや割安」である。売り先と仕入れの網という強みに比べて、今の値段が低く見えるからだ。
商売の中身は単純である。スーパーやドラッグストアが店を建てたい土地を、地主が先に買う。テナントとは 20〜50 年の定期借地契約を結ぶ。建物は持たない。借地料の安定した底地は、グループが運用する私募リートなどへ 1〜1.5 年で売る。利益の 6〜7 割は、この売却益だ。
追い風は売り先の広がりである。地主リートの資産は 2,911 億円まで育った。2026 年 9 月には、三菱 HC キャピタルリアルティ向けの地主ファンドも動き出した。企業が持つ土地を手放す流れも続く。
懸念は借金と利回りの薄さだ。在庫を積むため、純有利子負債は 571 億円ある。底地の利回りは 4% 弱にすぎない。10 年国債の 3% との差は、1 ポイントに満たない。国債の利回りが上がれば、売値が先に下がる。
それでも、利払いの増加と売値の伸び悩みを織り込んで測ると、確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額を 1 割強上回る。悲観の筋書きでも、売れる資産で自己資本の 7 割近くは残るとみる。
バリュー投資の観点から
この会社を持ち続けたいかと聞かれたら、筆者の答えは「条件つきで持ちたい」だ。事業の形には魅力がある。土地は消えず、建物を持たないので手間もかからない。売り先がいる限り、お金は速く回る。
ただ、本質価値を決めるのは、そのお金の回りが続くかどうかである。回転が速いのは、利益が毎年の売却に左右されることの裏返しでもある。1 年売れなければ、利益は出ない。借金で在庫を積む商売なので、止まると利払いだけが残る。
だから筆者は、利益を長く続く賃料のようには扱わない。売却益は、景気と金利に応じて伸び縮みする所得とみて、倍率は低めに置く。資本コストも基本より厚く見る。借金が自己資本の 1 倍を超え、売り先が偏っているからだ。
安全域はどうか。悲観の筋書きでも、在庫の投げ売りを経て、自己資本の 7 割近くは残るとみる。底地は、テナントが退去しても更地として売れる。この点は、建物を持つ同業より下値が固い。
資本の使い方では、増資で株を薄めた実績が引っかかる。一方、その後に純利益を過去最高まで伸ばした事実は評価できる。強みに対して、本質価値は今の値段をやや上回る。ただし ROE の高さは借金の厚みの裏返しなので、割安の幅が大きいとは言わない。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つに分かれる。稼ぎのほとんどを占める不動産投資事業、借地料が入る賃貸事業、そして私募リートなどの運用を受託する資産運用事業だ。
不動産投資事業は、底地を仕入れて売る回転型の事業である。仕入れの道は 3 つある。転用しやすい土地を自社で開発して買う道、企業が持つ土地を買って貸し戻すセール・アンド・リースバック(新名称は JINUSHI リースバック)の道、そして既存の底地を買う道だ。2025 年 1〜9 月の仕入れ 867 億円では、リースバックが過半を占めたとのアナリストの分析がある。
土地を買う時点で、テナントとの契約はほぼ決まっている。20〜50 年の定期借地契約を結び、借地料が安定したら売る。売り先は、地主リートが約 7 割、外部が約 3 割だった。外部に売るほうが利益率は高い。
賃貸事業は、売るまでの間に持つ土地から借地料を得る。売上は小さいが、利益率は高い。
資産運用事業は、グループの地主アセットマネジメントが地主リートを運用し、報酬を得る。報酬は運用資産に連動するので、規模が増えるほど積み上がる。リートは 2026 年 1 月の増資で約 2,900 億円になった。個人向けの地主倶楽部(1 口 10 万円から)や、機関投資家向けの地主ファンドも売り先に加わった。
優良さと弱いところ
筆者が評価する堀は、売り先と情報網の組み合わせだ。底地を買っても、買い手がいなければ在庫が積み上がるだけである。地主には、自らが運用する私募リートという大きな出口がある。底地だけに投資するリートは国内で唯一と会社は説明する。リートは 10 年続けて増資に成功し、格付けは AA- だ。
もう一つの強みは、仕入れの仕組みである。土地を買う時点でテナントは決まっており、空室の心配がない。建物を持たないので、建築費の高騰も修繕の負担もない。契約が終われば、更地で戻る。取引先は 137 社に増え、土地の情報がテナントのほうから集まるようになった。
弱みは三つある。第一に、売り先が自社グループのリートに偏る。リートの買い余力は年 500〜600 億円が上限で、グループ内の取引なので売値の妥当性も問われやすい。第二に、堀は深くない。底地は他社も買えるし、リースバックはヒューリックなども手がける。第三に、利益の質だ。売却益が利益の 6〜7 割を占め、年ごとに大きく振れる。
資本の使い方は積極的である。ROE は過去 10 年の中央値で 13% 近い。ただ、借金で在庫を回した結果でもある。筆者は、この高さが今後も続くとは見ない。経営は計画を上回る実績を重ねてきた。過去 5 期は期初予想を平均 15% 上回って着地し、2025 年は純利益が過去最高だった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
底地の市場は、いま広がっている最中だ。日本経済新聞は、国内の規模が 2026 年に約 10 兆円に達するとの推計を伝えている。会社も同じ規模を前提に置く。背景には、企業が持つ土地を手放して資金に変える動きがある。株主から資産の効率化を求められた企業が、本社や店舗の土地を売って借り直す。
この流れは続くが、勢いは一定ではない。2027 年度から新リース会計基準が始まり、借りた土地も貸借対照表に載る。売って借り直しても資産が小さく見える効果は薄れる。それでも、資金を調達する手段としての価値は残る。
売り先の側には、金利の壁がある。地主リートの物件の利回りは 4% 弱で、分配金の利回りも 4% 程度だ。10 年国債が 3% なら、その差は 1 ポイントに満たない。国債の利回りが上がれば、投資家は底地にもっと高い利回りを求める。借地料が上がらなければ、売値が下がる。
借地料が長期で固定されやすい点も重い。物価や金利に連動して借地料を直すインフレ条項は、会社が一部で入れ始めた段階だ。物価が年 3% で上がる世界では、固定の借地料の実質は目減りする。新しい契約でどこまで条項を入れられるかが、10 年先の売値を左右する。
競合は、同じ土地を狙う不動産会社である。リースバックを手がけるヒューリックや、再生型のトーセイ・サンフロンティア不動産と、案件が重なる。底地の専業は自社だけと会社は言うが、市場が広がれば参入は増える。会社は参入を歓迎するとも説明する。他社の底地開発が、仕入れの種になるからだ。
建物を持たない点は、物価の上がる局面で効く。建築費や光熱費が上がっても、地主の費用は増えない。負担するのは借り手のテナントだ。土地の値段が物価に連れて上がるなら、持ち分の価値も守られる。
資本政策と M&A
資本政策は、借金で在庫を積み、利益の一部を配当で返す形である。自己資本比率は 2025 年末で 34% あり、中計は 30% 程度を保つとする。年 1,000 億円以上の仕入れを続けても、増資は要らないというのが会社の説明だ。
配当は 2026 年 12 月期も増やす予定で、累進配当(減らさず、利益に応じて増やす配当)を掲げる。2024 年には株主優待をやめ、現金配当に一本化した。配当性向などの指標は決めていない。2023 年には、約 35 億円の自社株買いもあった(IR Bank の掲載)。
増資の記憶は新しい。2024 年の公募増資で財務を厚くしたが、1 株の価値は薄まった。説明は「仕入れを増やす基盤のため」だ。バリュー投資家は、成長のために株を薄めた実績を覚えておく。
M&A は、買う側でも買われる側でも目立たない。筆頭株主は創業者の松岡氏(13.4%)で、2023 年に一部を資産管理会社へ移し、安定株主として持つと開示した。
2026 年 9 月に始めた地主ファンドは、売り先を機関投資家へ広げる動きだ。三菱 HC キャピタルリアルティが初弾の投資家で、2 年で 1,000 億円規模を目指す。出口が増えれば、リート頼みの偏りは和らぐ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
地主の強さは、まねしにくい出口にある。底地だけを専門に買う私募リートが、毎年の増資に応じて資産を 2,911 億円まで育てた。仕入れの網があり、売り先が決まっているから、1,420 億円の仕入れもこなせた。
市場は広い。底地は 10 兆円規模とされ、企業の土地の売却は株主の圧力で増え続ける。地主リートの買い余力は年 500〜600 億円だが、地主ファンド、個人向けの地主倶楽部、外部売却が加わる。売り先が増えれば、仕入れを年 1,000 億円以上に増やしても詰まらない。
利益の質も良くなる。外部へ売ると利益率が高いと会社は説明する。売り先が多いほど、高く買う先を選べる。リースバックは利益率が薄いが、取得した日から借地料が入るので、在庫を抱えるリスクは小さい。
物価が上がる世界は、土地の持ち主に味方する。建物を持たないので、建築費の高騰に傷まない。借地料にインフレ条項を入れる動きも進む。新しい契約から物価連動が広がれば、国債の利回りが上がっても売値は守られる。
会社は計画を上回ってきた。過去 5 期は期初の予想を平均 15% 上回った。2028 年の純利益 100 億円は、仕入れが計画どおり進めば超えられる。
慎重な見方
地主は、借金で在庫を積み、グループのリートに売って利益を出す会社だ。この構造は、金利が上がると真っ先に傷む。底地の利回りは 4% 弱で、10 年国債の 3% との差は薄い。国債が 4% に向かえば、リートは同じ物件にもっと高い利回りを求める。売値が下がれば、仕入れた時の利幅が消える。
売り先の偏りも重い。売却の約 7 割はグループ運用のリートだ。リートの買い余力は年 500〜600 億円が上限で、会社の言う 1,000 億円の仕入れを吸収しきれない。外部へ売る割合が増えれば、競争で利益率が落ちる。私募リートの調達環境が厳しくなる点は、会社も認めている。
利益の質も弱い。売却益が利益の 6〜7 割を占め、年ごとに振れる。2025 年は純利益が過去最高でも、営業利益は前年を下回った。仕入れは 1,420 億円と一気に増えたが、案件が重なった結果で、今後は年によって増減すると会社自身が語る。
借金は純有利子負債が 571 億円で、時価総額とほぼ同じだ。営業利益の約 7 倍にあたる。借り換えのたびに、金利は 3.5% 前後へ上がる。利払いの増加に、リースバックの薄い利益率が重なる。ROE 15% の目標は、借金を増やさなければ届かない。
底地の借地料は 20〜50 年の固定が多く、インフレ条項は一部にとどまる。物価が年 3% で上がる世界では、固定の借地料の価値は目減りし、投資家は底地にもっと高い利回りを求める。
どちらに重みを置いたか
売り先の広がりと借地料の物価連動が進めば強気が勝つが、売値は国債の利回りにまだ縛られる。筆者は、利回りの薄さと借金の重さをより重く見て、確率は中立の周りに厚く置いた。
強気の見方は、売り先の広がりと 2028 年までの利益の伸びとして、楽観とやや楽観に合わせて 3 割を割り当てた。慎重な見方は、金利と借金の壁として、やや悲観と悲観に合わせて 3 割半ばを割り当てた。やや悲観を厚くしたのは、利益が売却益に偏り、年ごとの振れが大きい構造のためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 5,645 円1,211 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,436 円308 億円)。 今の値に割り戻すと 3,384 円726 億円、今との差 +24.4%、 期待の年率 +10.0%(資本コスト 8.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,721 円2,728 億円 | 2,215 円475 億円 | +448.9% | +18.6% | 1,195 円256 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,138 円1,745 億円 | 1,809 円388 億円 | +265.6% | +13.8% | 2,188 円469 億円 |
| 中立 | 34% | 6,013 円1,290 億円 | 1,576 円338 億円 | +178.9% | +10.8% | 2,580 円553 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,536 円544 億円 | 1,119 円240 億円 | +34.3% | +3.0% | 877 円188 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,536 円329 億円 | 466 円100 億円 | −26.4% | −3.0% | 240 円52 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,645 円1,211 億円 | 1,436 円308 億円 | +160.2% | +10.0% | 7,081 円1,519 億円 |
今の株価時価総額 2,721 円584 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 底地が土地流動化の標準の出口になり、売り先が広がって大きく伸びる 利益 190 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 12,721 円2,728 億円
底地が、企業の土地の流動化の標準的な出口になる。売却件数は 10 年で倍の 125 件に増え、売値も借地料の物価連動とともに 1.4 倍に上がる。リースバックの案件が増え、大手企業の本社や工場の土地が持ち込まれる。
売り先は、地主リートの増資、地主ファンド、地主倶楽部、外部と広がり、それぞれ最も高く買う先に売れる。外部売却が半分を超え、利益率は 17% まで上がる。運用資産は 1 兆円を超え、運用報酬が大きな柱になる。
営業利益は 320 億円ほど、純利益は 190 億円ほどになる。経営は自社の目標を何度も上方に更新する。借金は 2,000 億円を超えるが、利益が利払いを大きく上回る。ROE は 15% 近い水準を保つ。
- 不動産投資事業(底地の仕入れ・売却):数量 125(年間の売却件数(件))× 価格 17(1 件当たりの売却額(億円、名目))→ 売上 2,151 億円・営業利益 366 億円。件+108%・売値+40%・利益率17%
- 賃貸事業:数量 32.0(保有する賃貸中の物件数(件))× 価格 1.25(1 件当たりの年間賃料(億円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 21 億円。件+113%・賃料+34%
- 資産運用事業(地主リート・地主ファンドの運用):数量 8,800(運用資産(億円、今の値段で測った実質))× 価格 0.01(報酬率に資産価値の名目の伸びを掛けた指数(億円当たりの報酬、億円))→ 売上 56 億円・営業利益 27 億円。運用資産+232%・資産価値+40%
倍率:事業の純利益 190 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.94 倍、時価総額 2,649 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売り先の広がり・借地料の物価連動・利回りの低位安定が重なる必要があるため、確率は抑えた。同じ領域の楽観(8〜10%)の下端に置いた。
やや楽観 22% 仕入れが計画どおり進み、地主ファンドも立ち上がって、利益が着実に伸びる 利益 130 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 8,138 円1,745 億円
売り先が増え、リースバックと新規開発の両方で仕入れが伸びる。売却件数は 10 年で 8 割増え、売値は 1.3 倍になる。借地料にインフレ条項の入る契約が増え、利回りの上昇は小幅にとどまる。
地主ファンドは 1,000 億円を超え、地主倶楽部も広がる。外部売却の比率が 5 割近くまで上がり、利益率は 16% を保つ。運用資産は 9,000 億円規模に近づき、報酬も増える。
営業利益は 230 億円ほど、純利益は 130 億円ほどになる。2028 年の純利益 100 億円は前倒しで超える。ただ、借金も増え、金利負担が利益の伸びを一部食う。ROE は 11% 台に落ち着く。
- 不動産投資事業(底地の仕入れ・売却):数量 108(年間の売却件数(件))× 価格 16(1 件当たりの売却額(億円、名目))→ 売上 1,726 億円・営業利益 276 億円。件+80%・売値+30%・利益率16%
- 賃貸事業:数量 26.0(保有する賃貸中の物件数(件))× 価格 1.19(1 件当たりの年間賃料(億円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 16 億円。件+73%・賃料+28%
- 資産運用事業(地主リート・地主ファンドの運用):数量 7,000(運用資産(億円、今の値段で測った実質))× 価格 0.01(報酬率に資産価値の名目の伸びを掛けた指数(億円当たりの報酬、億円))→ 売上 41 億円・営業利益 19 億円。運用資産+164%・資産価値+30%
倍率:事業の純利益 130 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.78 倍、時価総額 1,661 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:仕入れが計画どおり進み、地主ファンドが立ち上がる筋書き。同じ領域のやや楽観(20〜24%)の中ほどに置いた。
中立 34% 売り先は広がるが売値は利回りの上昇で物価ほど伸びず、利益は緩やかに増える 利益 98 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 6,013 円1,290 億円
仕入れと売却は、リートと外部の両方に売りながら着実に伸びる。売却件数は 10 年で 5 割ほど増え、1 件当たりの売値は 1.25 倍になる。借地料は物価に連れて上がるが、売却時の利回りが緩やかに上がるため、売値は物価ほどは伸びない。
売り先は、地主リートが約 6 割、外部と地主ファンドが約 4 割になる。外部の比率が増える一方、リースバックの比率も高まり、利益率は今の 15.8% から 15.5% へわずかに下がる。
運用資産は 7,000 億円ほどに育ち、資産運用の報酬が下支えになる。借金は在庫とともに増え、借り換えの金利で利払いは 50 億円を超える。営業利益は 170 億円台、純利益は 100 億円弱になる。会社の目標には届くが、ROE は 9% 台に下がり、今の 14.8% から薄まる。
- 不動産投資事業(底地の仕入れ・売却):数量 92.0(年間の売却件数(件))× 価格 15(1 件当たりの売却額(億円、名目))→ 売上 1,413 億円・営業利益 219 億円。件+53%・売値+25%・利益率15.5%
- 賃貸事業:数量 19.0(保有する賃貸中の物件数(件))× 価格 1.17(1 件当たりの年間賃料(億円、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 11 億円。件+27%・賃料+25%
- 資産運用事業(地主リート・地主ファンドの運用):数量 5,500(運用資産(億円、今の値段で測った実質))× 価格 0.01(報酬率に資産価値の名目の伸びを掛けた指数(億円当たりの報酬、億円))→ 売上 31 億円・営業利益 14 億円。運用資産+108%・資産価値+25%
倍率:事業の純利益 98 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.95 倍、時価総額 1,171 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:領域の物差し(中立 32〜37%)の中央に置いた。強気と慎重の言い分が拮抗するので、落としどころに厚く置いた。
やや悲観 24% 利回りの上昇と金利負担で、売値と利益率が下がり、利益が細る 利益 44 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,536 円544 億円
10 年国債が 3% を超え、売却時の利回りが 4% 台半ばへ上がる。借地料は物価ほど上がらず、売値は 10 年で 1.15 倍にとどまる。リートの調達環境が厳しくなり、取得額は年 500 億円を下回る。
売却件数は 10 年で 25% の増加にとどまる。外部売却の割合は増えるが、競争で利益率は 13.5% まで下がる。リースバックの比率が上がり、薄い利益率が全体を引き下げる。
借金は在庫とともに増えるが、売却が遅れて回転が鈍る。利払いは 40 億円ほどに膨らみ、営業利益 95 億円ほどの 4 割を食う。純利益は 45 億円と今の 6 割にとどまり、ROE は 5% まで落ちる。赤字にはならないが、成長企業という評価は後退する。
- 不動産投資事業(底地の仕入れ・売却):数量 75.0(年間の売却件数(件))× 価格 14(1 件当たりの売却額(億円、名目))→ 売上 1,060 億円・営業利益 143 億円。件+25%・売値+15%・利益率13.5%
- 賃貸事業:数量 18.0(保有する賃貸中の物件数(件))× 価格 1.05(1 件当たりの年間賃料(億円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 9 億円。件+20%・賃料+12%
- 資産運用事業(地主リート・地主ファンドの運用):数量 4,200(運用資産(億円、今の値段で測った実質))× 価格 0.01(報酬率に資産価値の名目の伸びを掛けた指数(億円当たりの報酬、億円))→ 売上 21 億円・営業利益 9 億円。運用資産+58%・資産価値+12%
倍率:事業の ROE 5.3% は資本コスト 8.75% 以下。新しく投じるお金が価値を増やさないので、PER は 1÷k=11.4 倍まで。この筋書きは稼ぐ力(純利益 44 億円÷k=約 500 億円)で測り、利益の質が低いので上限の 7.9 割、9.0 倍に置いた。
確率:利益が売却益に偏り、国債との利回りの差が薄いので、同じ領域のやや悲観(20〜25%)の上端に近く置いた。
悲観 12% 売り先が閉じて在庫が積み上がり、投げ売りで赤字になるが、底地の資産は残る 利益 −60 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 1,536 円329 億円
金利が急に上がり、リートが増資を止める。売り先が閉じると、仕入れた底地が在庫として積み上がる。売却利回りは 5% 台へ上がり、売値は 15% 下がる。2009 年に中小の不動産会社が経験した、仕入れ値より出口が安い局面と重なる。
売却件数は半分近くへ減る。在庫は投げ売りになり、3 割ほどの評価損が出て、赤字になる。リースバックで買った土地は、テナントの信用を頼りに値がつくが、大型の案件ほど売り先が限られる。地主ファンドの拡大も止まる。
借金の返済のため、新規の仕入れを絞る。配当は大きく減らさざるを得ない。ただ、底地はテナントが退去しても更地として売れる。評価損で自己資本は 1 割ほど減る。投げ売りに踏み切っても、売れる資産の税後は自己資本の 7 割近くが残り、存続の危機に陥る筋書きではない。
- 不動産投資事業(底地の仕入れ・売却):数量 35.0(年間の売却件数(件))× 価格 10(1 件当たりの売却額(億円、名目))→ 売上 366 億円・営業利益 11 億円。件-42%・売値-15%・利益率3%
- 賃貸事業:数量 15.0(保有する賃貸中の物件数(件))× 価格 0.93(1 件当たりの年間賃料(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 6 億円。件横ばい・賃料横ばい
- 資産運用事業(地主リート・地主ファンドの運用):数量 3,000(運用資産(億円、今の値段で測った実質))× 価格 0.00(報酬率に資産価値の名目の伸びを掛けた指数(億円当たりの報酬、億円))→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。運用資産+13%・資産価値-10%
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。2025/12 期末の自己資本 499 億円に掛ける形で床を置いた。中身は、在庫 792 億円の投げ売りの損(3 割、税後で約 170 億円)を引いた売れる資産の税後 330 億円。ためた利益には掛けていない。純有利子負債を足した EV÷営業利益は赤字のため意味を持たず、この筋書きは利益でなく資産で測る。
確率:売り先がグループのリートに偏り、借金も重い。同じ領域の悲観(10〜14%)の中ほどに置いた。2009 年に中小の不動産会社が仕入れ値より出口の安い局面に陥った例から、一度は市況が止まりうると見た。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産投資事業(底地の仕入れ・売却)
底地を仕入れ、20〜50 年の定期借地契約を付けて、地主リート・外部・地主ファンドなどへ売る回転型の事業。リースバックと新規開発を含む。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1 件当たりの売却額(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 12 | 737 | 116 |
| 10 年後 中立 | 92.0 | 15 | 1,413 | 219 |
取り方:開示は売上 737 億円・セグメント利益 116 億円(2025/12 期)。件数は開示されないので、2025 年の仕入れ 115 件・1,420 億円(1 件約 12.3 億円)に合わせ、売却は約 60 件・1 件約 12.3 億円と推定。利益率 15.8%。売値は、借地料の上昇(物価並みなら 1.34 倍)と売却利回りの上昇(国債 3% に対し底地は 4% 弱で薄い)が相殺し、中立は 10 年 1.25 倍とした。
賃貸事業
売るまでの間に持つ底地・賃貸不動産から得る借地料と賃料。
| 数量保有する賃貸中の物件数(件) | 価格1 件当たりの年間賃料(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15.0 | 0.93 | 14 | 7 |
| 10 年後 中立 | 19.0 | 1.17 | 22 | 11 |
取り方:売上 14 億円・利益 7 億円(2025/12 期)。保有物件を約 15 件・1 件約 0.93 億円と推定。利益率 50%。借地料は長期固定が多く、中立の伸びは物価より低い 10 年 1.25 倍とした。
資産運用事業(地主リート・地主ファンドの運用)
地主アセットマネジメントが地主リートなどを運用し、運用資産に連動する報酬を得る。
| 数量運用資産(億円、今の値段で測った実質) | 価格報酬率に資産価値の名目の伸びを掛けた指数(億円当たりの報酬、億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,650 | 0.00 | 12 | 5 |
| 10 年後 中立 | 5,500 | 0.01 | 31 | 14 |
取り方:売上 12 億円・利益 5 億円(2025/12 期、利益率約 42%)。運用資産は 2025 年末で約 2,650 億円と推定(2026/01 の第 10 次増資後は 2,911 億円)。報酬率は 12÷2,650=約 0.45% と推定。資産価値の名目の伸びは中立で 10 年 1.25 倍とした。
リスクと懸念
売却時の利回りの上昇
底地の利回りは 4% 弱で、10 年国債の 3% との差は 1 ポイントに満たない。国債の利回りが上がれば、リートや外部の投資家は同じ底地にもっと高い利回りを求める。借地料が上がらなければ売値が下がり、仕入れで確保した利幅が薄くなる。この会社の利益の質を左右する最大の変数である。
売り先がグループのリートに偏る
売却の約 7 割は、グループが運用する地主リートだ。リートの買い余力は年 500〜600 億円とされ、会社の掲げる年 1,000 億円以上の仕入れを吸収しきれない。私募リートの調達環境が厳しくなれば、増資が止まり、在庫が積み上がる。地主ファンドなど売り先を広げられるかが分かれ目になる。
借金と借り換えの金利
純有利子負債は 571 億円で、自己資本の 1.1 倍、営業利益の約 7 倍にあたる。借り換えのたびに金利は 3.5% 前後へ上がる。仕入れを増やすほど借金も増えるので、利払いが営業利益を食う割合は高まる。自己資本比率 30% 程度を保つ方針のため、大型の仕入れが続けば財務は薄くなる。
利益の振れと計上時期のずれ
利益の 6〜7 割は底地の売却益で、会社の計画でも第 4 四半期に集中する。案件の売却が翌期へずれ込めば、その期の利益は大きく減る。2025 年は純利益が過去最高でも、営業利益は前年を下回った。年ごとの数字より、数年の平均で見る必要がある。
借地料が固定されやすい
借地料は 20〜50 年の長期で固定されることが多い。物価が年 3% で上がる世界では、固定の借地料の実質は目減りし、投資家は底地に高い利回りを求める。インフレ条項は一部の契約に入れ始めた段階で、全体への広がりはまだ課題だと会社は認める。
リースバックの比率上昇
仕入れの過半を占めるようになったリースバックは、取得した日から借地料が入る一方、利益率は新規開発より低いと会社は説明する。比率が上がるほど、1 件当たりの利益は薄くなる。企業が土地を売って借り直す動きは、新リース会計基準の適用で勢いが弱まる可能性もある。
テナントの信用と大口案件
底地は、テナントが退去しても更地として売れるので下値は固い。ただ、借地料はテナントの支払いに頼る。リースバックの大型案件が増えるほど、売れる先は限られ、テナントの信用が値段に直接効く。企業の業績が悪化した時の売却の難しさが、価格に出る。
今後の分かれ目
- 10 年国債が 3% を大きく超えて上がり、底地の売却利回りが 4% 台半ばに乗る
- 売値が下がり、再販の利幅が薄くなる。本質価値は中立よりやや悲観に近づく。
- 地主ファンドと外部売却の比率が 5 割に近づき、リート頼みが薄れる
- 高く買う先に売れるので利益率が上がり、売却の詰まりも減る。やや楽観の確率が増える。
- 地主リートの増資が止まる、または取得額が年 500 億円を割る
- 在庫が積み上がり、借金が膨らむ。やや悲観から悲観の筋書きに近づく。
- 新しい借地契約の大半にインフレ条項が入る
- 借地料が物価に連れて上がり、売値の伸びが物価並みに近づく。中立の売値の置き方が上方にずれる。
- 純利益が 2028 年より前に 100 億円を超え、仕入れも年 1,000 億円を保つ
- 計画を上回る実績が続く形で、楽観寄りの確率が増える。ただし借金の増え方も同時に見る。
- 販売用不動産が 1,000 億円を超え、売却が翌期へずれ込む案件が増える
- 利益の計上が遅れ、利払いだけが先に出る。利益の質が下がり、倍率を低めに見る。
見ておくもの
- 底地の売却利回りと 10 年国債の差(リート・外部への売却時の利回り)
- 地主リートの増資額と取得額、地主ファンドの運用資産
- 期末の販売用不動産と有利子負債、自己資本比率
- 新規の借地契約に入るインフレ条項の割合
- 仕入れの内訳(リースバック・新規開発・既存底地)と外部売却の比率
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から倍率を作っていない。セグメントごとに数量(売却件数・賃貸件数・運用資産)と名目の価格を積み、利益率は構造(リースバックの比率・利回りの上昇・借り換えの金利)から置いた。倍率は資本コスト 8.75%(基本 7.5% に quality +1.25%)と正当化 PER の式で決め、市場の倍率や同業の PER は根拠にしていない。悲観の床は今の自己資本から在庫の投げ売りの損を引いて置き、過去の PBR の底は使っていない。地主は貸す側なので、新リース会計基準で数字の形は変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→13.94 倍・やや楽観 PER 12→12.78 倍・中立 PER 11.5→11.95 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.25% を足した 8.75%。事業は傾いていないので extra は置かない。同じ領域のトーセイ(+1.2%)に近く、サンフロンティア不動産・ヒューリック(+1.0%)より高い。純負債が自己資本の 1.1 倍と重く、売り先が偏るためだ。