結論
ケイアイスター不動産は、埼玉県本庄市で生まれた建売住宅の会社だ。1 次取得層、つまり初めて家を買う若い世帯向けに、低価格のデザイン住宅を土地の仕入れから販売まで一貫して手がける。2026 年 3 月期の売上は 3,939 億円、営業利益は 270 億円で、どちらも過去最高だった。
筆者の結論は「やや割高」である。事業の勢いは強いが、成長の燃料を借金に頼っており、10 年後に株主へ残る利益が今の値段に届きにくい。
稼ぎの源は単純だ。土地を買い、家を建て、早く売って次の土地に回す。売上の 93% が分譲住宅で、在庫の回転が利益の質を決める。回転が止まれば、在庫と借金がそのまま重しになる。
純有利子負債は 1,523 億円と自己資本の 2 倍を超える。自己資本比率は 2 割ほどだ。金利が上がる局面では、利払いだけで利益が年に数十億円削られる。
人口減少で分譲戸建ての着工は縮む。それでも筆者は、低価格帯で大手のすき間を取るこの会社が、棟数をほぼ保てると見ている。物価の分だけ単価が上がれば、売上は 10 年で 3 割強伸びる。ただ、土地の仕入れも家の値段も市場が決めるため、利益率は今より薄くなりやすい。
中立の筋書きでは、10 年後の純利益は今を 1 割強上回る程度で、自己資本利益率は資本コストと同程度にとどまる。5 つの筋書きの加重平均は、今の時価総額を下回る。急成長の途中で買う値段としては、安全域が足りない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い商売だが、安全域のない形」で運営されている。
まず事業の質を問う。建売は、売るたびに仕入れ直さなければ利益が出ない。繰り返し買ってもらえる客や、他社が入れない仕入れ網といった、続く強みは薄い。家を買う客は一生に一度の買い物で、ブランドも長く働かない。
次に、オーナー利益を問う。利益のうち、土地と在庫の積み増しに回る分を引くと、株主が自由に使える金は小さい。前期の純利益は 154 億円でも、同じ期に在庫は 485 億円、借入は 380 億円増えた。利益は在庫に姿を変えて消えている。
経営の資本配分も気になる。借金を使って棟数を伸ばすのは、景気が良い間は正しい。ただ、谷で在庫が傷めば、自己資本の 2 割ほどが簡単に飛ぶ。
10 年先を考えると、人口減少で棟数は細る。物価の分だけ売上は伸びるが、利益は借金の金利が重くなって伸びにくい。自己資本利益率が資本コストと同じ水準に落ち着くなら、帳簿の自己資本に 1 倍以上の値段をつける理由はない。
筆者が払える値段は、中立の利益に低めの倍率を掛けたものになる。いまの値段はそれを上回る。上振れの筋書きでも、価値は今の時価総額を大きくは超えない。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は分譲住宅で、売上の 93% を占める。ブランドは「ケイアイスタイル」などで、デザイン性の高い建売住宅を、手の届きやすい価格で売る。主な客は 30 代の 1 次取得層だ。
特徴は、土地の仕入れ、設計、施工の手配、販売を自社で完結させる点にある。地元の不動産会社から土地の情報を集める営業網が仕入れの命綱だ。建築は協力会社に任せるため、自社の工場は持たない。
本拠は埼玉・北関東だが、足元は首都圏の大都市圏、さらに全国へ出店を広げている。2026 年 3 月期の販売棟数は土地のみの販売を含めて 9,232 棟だった。国内の分譲一戸建ての着工は年 11 万戸あまりで、シェアは 8% ほどになる。
注文住宅は売上が 64 億円と小さく、分譲を補う位置づけにとどまる。
その他の事業は 218 億円で、前期に 7 割増えた。豪州で現地の事業者と組み、宅地の仕入れと分譲を進める。2026 年 5 月には現地で建築会社を立ち上げ、土地から施工までを一貫して手がける形にした。区画の在庫は累計約 1,400 区画、契約は約 500 区画と会社は説明している。
資金の流れは典型的な回転型だ。土地を借金で買い、建てて売り、返す。販売用不動産が膨らむほど、借入も増える。前期は在庫が約 485 億円、借入が約 380 億円増えた。成長の速さと借金の重さは、同じ事業の裏表である。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、低価格帯で土地を安く仕入れ、早く回す運営の腕だ。1 棟あたりの価格を抑えられるのは、仕入れの目利きと、工期・設計の標準化を磨いてきたからである。営業利益率は過去 10 年で 4% から 13% まで振れ、中央値は 7% ほどだ。
ただし、堀、つまり他社がまねできない強みは弱いと見る。建売の値段は市場が決める。土地の仕入れは同業や投資家との競り合いで、安く買い続けられる保証はない。飯田グループホールディングスやオープンハウスグループという大手が同じ客層を狙う。
自己資本利益率は、直近で 21% と高い。ただ、これは借金を厚く使った結果であり、事業の稼ぐ力そのものではない。過去 10 年の中央値 23% も、自己資本が薄かった時期の数字だ。稼いだ利益を配当と在庫に回し続けるうちに、この率は自然に下がる。
財務は脆い側にある。純有利子負債は自己資本の 2.1 倍で、営業利益が支払利息の 7 倍しかない。一部の借入には財務制限条項、つまり指標が悪化すると返済を迫られる約束が付く。
経営は社長への依存が大きいと会社自身が認めている。資産管理会社を通じた議決権は 35% 弱で、経営の意思決定は速いが、少数株主の目から見ると牽制は効きにくい。
筆者が気にするのは、在庫の質だ。値下げが続く局面で、土地と建物をどれだけ傷まずに売り切れるか。そこが優良かどうかを分ける。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の分譲一戸建ての着工は 2025 年に約 11.6 万戸で、新設住宅全体は 62 年ぶりの低水準まで落ちた。人口と世帯数が減る国で、新築の需要が細る流れは変わらない。業種のノートは、10 年で棟数が年 3〜5% ずつ縮む可能性を置いている。
一方、価格は上がる。資材と人件費が物価並みに上がり、建売住宅の物件価格は 5 年で 4 割近く上がった。値上がりで買える層が狭まるため、低価格を売りにする会社に需要が集まりやすい。
競合は大きく 2 つある。全国最大手の飯田グループホールディングスは、郊外の量産型で棟数を稼ぐ。オープンハウスグループは都心の狭小地に特化する。ケイアイスターは、その中間の価格帯、つまり郊外から都市近郊の 1 次取得層を狙う。同じ客を取り合う場面は増える。
地場の工務店も多く、市場は分散している。再編の余地はあるが、土地の仕入れ競争は激しくなる一方だ。
金利が最大の変数だ。10 年国債が 3% に上がれば、住宅ローン金利も上がる。月々の返済を意識する 1 次取得層は金利に敏感で、需要は金利の上がり方で振れる。リーマン期には着工が 3 割ほど減り、建売の在庫が投げ売りになって中堅の破綻が相次いだ。
筆者は、この領域の 10 年を「棟数は細るが単価は物価並み」と見る。その中で、シェアを取る側に回れるかが分かれ目になる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向は 2 割台半ばにとどまる。2026 年 3 月期の性向は 23.7% だった。残りは土地と在庫に回し、成長を優先する姿勢だ。2026 年 4 月に株式を 1 株から 2 株へ分割した。
自己株買いは、役員と従業員の株式報酬に充てる小さな枠が中心で、株主への還元とは言いにくい。
資金の出どころは銀行借入だ。有利子負債は総資産の 6 割を超える。借入は前期に約 380 億円増え、在庫は約 485 億円増えた。成長を借金で買う構図は続く。
M&A では、大型の買収で成長を買う会社ではない。豪州では現地事業者との合弁で、少しずつ広げる。一方で、同じ住宅業界の再編に巻き込まれる可能性は残る。会社の規模が小さく、同業の大手に取り込まれる側に回る場面も想定できる。
議決権は社長の資産管理会社が 35% 弱を持つ。買収提案に対する防御は固いが、少数株主への還元を強く求める力は弱い。筆者は、この資本の使い方に慎重だ。成長が止まった時に配当を増やす習慣がないからだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
低価格の建売という領域で、この会社は大手に挟まれながらも棟数を伸ばし続けてきた。2026 年 3 月期は営業利益が 56% 増え、2027 年 3 月期の会社予想はさらに純利益を上方修正した。1 次取得層は家の値段が上がるほど、安い選択肢を探す。ケイアイスターの客層は、そこにちょうど重なる。
土地の仕入れ網は 30 年以上かけて築いた。地元の不動産会社から情報が集まる営業網は、新参には簡単にまねできない。出店を大都市圏へ広げれば、棟数はまだ伸びる余地がある。
借金が多いのも、回転が速いからだ。土地を買って半年から 1 年で売れば、借金は在庫とともに返る。実際、売上に対する利益率は過去最高の水準まで戻っている。
豪州でも仕入れと施工を一貫して手がける体制ができた。国内の人口減少に頼らない第二の柱になりうる。
物価が 3% で上がる世界では、土地も建物も値上がりし、在庫の価値は名目で膨らむ。回転型の会社には追い風だ。10 年後に利益が今の 2 倍になる筋書きは、十分にありうる。
慎重な見方
この会社の利益は、借金で買った在庫の回転に支えられているだけだ。純有利子負債は自己資本の 2 倍を超え、営業利益は支払利息の 7 倍しかない。10 年国債が 3% になれば、借り換えのたびに利払いが増える。利益のうち数十億円が、金利に消える。
国内の分譲戸建ての着工は縮み続ける。大手の飯田グループホールディングスは棟数で圧倒し、オープンハウスグループは都心の土地を押さえる。中間の価格帯は、双方から削られやすい。
土地は競りで仕入れ、建売は市場が値段を決める。つまり、売る値段も買う値段も自分で決められない。利益率が高かった 2022 年 3 月期の 12.8% から、2 年で 4.0% まで下がった事実を忘れてはならない。
前期は在庫が 485 億円増えた。売れ行きが鈍れば、この在庫は一気に重荷になる。リーマン期には建売の在庫が投げ売りになり、中堅が破綻した。
議決権の 35% 弱を社長の資産管理会社が持つ。少数株主が経営の資本配分に口を出す余地は小さい。利益が出ても、配当性向は 2 割台半ばで、残りは在庫に消える。
自己資本利益率が資本コストと同じ水準まで落ちれば、成長しても株主の価値は増えない。今の値段は、その現実を織り込んでいない。
どちらに重みを置いたか
強気の主張には、事業の回転力という本物の根拠がある。一方、慎重な見方は、借金の重さと在庫の質という、数字で確かめられる弱みを突いている。
10 年という長さでは、慎重な見方がやや勝つ。人口減少の中で棟数を保てても、借金の利払いと土地の競りで、利益率は今より薄くなりやすい。景気の谷が 10 年に一度はあり、その時に在庫が傷む確率を軽く見られない。
確率は、楽観に 6%、やや楽観に 20% とし、悲観側に 41% を置いた。借金が自己資本の 2 倍を超えるため、悲観の確率を同業の中でも厚めにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,829 円2,120 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,316 円409 億円)。 今の値に割り戻すと 3,520 円1,093 億円、今との差 +11.0%、 期待の年率 +9.9%(資本コスト 9.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 16,246 円5,044 億円 | 2,702 円839 億円 | +497.7% | +19.6% | 1,137 円353 億円 |
| やや楽観 | 20% | 11,727 円3,641 億円 | 2,041 円634 億円 | +334.3% | +15.8% | 2,754 円855 億円 |
| 中立 | 33% | 8,430 円2,617 億円 | 1,498 円465 億円 | +213.2% | +12.1% | 3,276 円1,017 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,326 円722 億円 | 931 円289 億円 | +2.7% | +0.3% | 879 円273 億円 |
| 悲観 | 14% | 707 円220 億円 | 0 円0 億円 | −77.7% | −13.9% | 99 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,829 円2,120 億円 | 1,316 円409 億円 | +156.9% | +9.9% | 8,145 円2,529 億円 |
今の株価時価総額 3,170 円984 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 低価格の建売で大手のすき間を取り続け、海外も育つ 利益 354 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 16,246 円5,044 億円
東京一極集中と 1 次取得層の価格感度が続く中で、ケイアイスターは低価格帯の定番として大都市圏へ広がる。分譲戸建ての市場は縮むが、同社のシェアは 8% から 13% 近くへ上がり、棟数は今より 3 割近く増える。
土地の仕入れ網は全国で厚みを増し、家の標準化で建築費の上昇も抑えられる。営業利益率は過去の山に近い水準まで戻る。
豪州では宅地の分譲と施工が一体になり、国内の人口減少を補う柱になる。借金は利益の伸びに追いつかれ、自己資本利益率は 14% まで上がる。
それでも、10 年後の姿は「高回転で安定して稼ぐ成熟企業」にとどまる。成長が止まれば倍率も落ち着く。
- 分譲住宅(土地販売を含む):数量 11,817(年間販売棟数(棟、土地販売を含む))× 価格 0.55(1 棟当たり平均売上(億円))→ 売上 6,461 億円・営業利益 549 億円。棟数+28%・単価+38%
- 注文住宅:数量 257(年間引渡棟数(棟))× 価格 0.34(1 棟当たり平均売上(億円))→ 売上 88 億円・営業利益 3 億円。棟数横ばい・単価+38%
- その他(豪州の宅地分譲などの海外・周辺事業):数量 4,900(年間取引件数(区画・案件、推定))× 価格 0.21(1 件当たり売上(億円、推定))→ 売上 1,020 億円・営業利益 92 億円。件数3.5倍・単価+34%
倍率:事業の純利益 354 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.9% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.59 倍、時価総額 4,462 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:低価格帯で大手のすき間を取り続け、豪州も育ち、利益率が山の水準に近づく組み合わせ。複数が同時に揃う必要があるので 6%。
やや楽観 20% 棟数は微増、単価は物価を上回って伸びる 利益 255 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 11,727 円3,641 億円
分譲戸建ての市場は 10 年で 4 分の 1 縮むが、ケイアイスターは出店を広げてシェアを 8% から 12% 近くへ伸ばし、棟数は今より 1 割強増える。単価は資材と人件費の上昇で物価を少し上回る。
営業利益率は 7% 台の後半を保ち、豪州の宅地分譲も 2 倍半に育つ。国内の住宅需要の細りは、単価の上昇と出店の効率化で相殺される。
借金は返しながら増やす形が続き、利払いは重いまま。自己資本利益率は 12% と資本コストをやや上回る。
会社はこの姿を「中計の延長」と呼ぶだろうが、人口減少の中での棟数増は、毎年の土地仕入れが競争に勝ち続けることが前提になる。
- 分譲住宅(土地販売を含む):数量 10,340(年間販売棟数(棟、土地販売を含む))× 価格 0.54(1 棟当たり平均売上(億円))→ 売上 5,572 億円・営業利益 429 億円。棟数+12%・単価+36%
- 注文住宅:数量 244(年間引渡棟数(棟))× 価格 0.34(1 棟当たり平均売上(億円))→ 売上 82 億円・営業利益 2 億円。棟数-5%・単価+36%
- その他(豪州の宅地分譲などの海外・周辺事業):数量 3,500(年間取引件数(区画・案件、推定))× 価格 0.21(1 件当たり売上(億円、推定))→ 売上 729 億円・営業利益 58 億円。件数2.5倍・単価+34%
倍率:事業の純利益 255 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.2% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.13 倍、時価総額 3,092 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:棟数が増え、単価が物価を上回り、豪州が育つ筋書き。今の勢いの延長で、相応の厚みを置く。
中立 33% 棟数はほぼ保ち、単価は物価並み、利益率は中央値に戻る 利益 178 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 8,430 円2,617 億円
分譲戸建ての市場は人口減少で 3 割ほど縮む。ケイアイスターはシェアを 8% から 10% 台へ上げて、棟数は今より 5% 減にとどめる。単価は物価並みに上がり、売上は 10 年で 3 割強伸びる。
営業利益率は、過去 10 年の中央値の 7% に落ち着く。土地の競りと建築費の上昇で、今の水準を保つのは難しい。
借金の利払いは、借り換えの金利が 3.5% 前後になるため、10 年で 38 億円ほど重くなる。純利益は今を 1 割強上回る程度にとどまり、名目の伸びは年 1% ほどだ。
利益の 3 割弱を還元し、残りを在庫に回すため、自己資本は積み上がる。そのぶん自己資本利益率は 9% 台まで下がり、資本コストとほぼ並ぶ。成長しても、株主の価値は増えにくい。
- 分譲住宅(土地販売を含む):数量 8,770(年間販売棟数(棟、土地販売を含む))× 価格 0.53(1 棟当たり平均売上(億円))→ 売上 4,657 億円・営業利益 326 億円。棟数-5%・単価+34%
- 注文住宅:数量 231(年間引渡棟数(棟))× 価格 0.33(1 棟当たり平均売上(億円))→ 売上 77 億円・営業利益 2 億円。棟数-10%・単価+34%
- その他(豪州の宅地分譲などの海外・周辺事業):数量 2,800(年間取引件数(区画・案件、推定))× 価格 0.21(1 件当たり売上(億円、推定))→ 売上 583 億円・営業利益 41 億円。件数2倍・単価+34%
倍率:事業の純利益 178 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.6% が k 9.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍。全体の PER 11.61 倍、時価総額 2,069 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:棟数は市場の縮みをシェア拡大で打ち消して微減、単価は物価並み、利益率は過去の中央値へ。議論の落としどころなので最も厚い 33%。
やや悲観 27% 分譲戸建てが細り、在庫を値引きして凌ぐ 利益 53 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 2,326 円722 億円
金利が想定より高く、新築の需要が一段と細る。分譲戸建ての市場は 3 割強縮み、ケイアイスターも棟数が 3 割減る。単価は物価ほど上がらず、値引きで売る場面が増える。
土地の仕入れ競争は続くので、利益率は 5% まで薄くなる。借金の利払いは減らず、純利益は今の 3 分の 1 ほどになる。
在庫の評価損は避けられず、一部は景気の谷で処分する。配当も絞られる。出店は止まり、新しい土地の仕入れは慎重になり、棟数の減りがさらに利益を削る。銀行は融資姿勢を厳しくし、借り換えの条件も悪くなる。豪州の事業も拡大を止める。
会社は生き残るが、もう成長企業ではない。大手との価格競争で、低価格帯の優位も薄れる。自己資本利益率は 4% 弱にとどまり、資本コストを大きく下回る。
- 分譲住宅(土地販売を含む):数量 6,462(年間販売棟数(棟、土地販売を含む))× 価格 0.50(1 棟当たり平均売上(億円))→ 売上 3,201 億円・営業利益 160 億円。棟数-30%・単価+25%
- 注文住宅:数量 180(年間引渡棟数(棟))× 価格 0.31(1 棟当たり平均売上(億円))→ 売上 56 億円・営業利益 0 億円。棟数-30%・単価+25%
- その他(豪州の宅地分譲などの海外・周辺事業):数量 1,820(年間取引件数(区画・案件、推定))× 価格 0.19(1 件当たり売上(億円、推定))→ 売上 354 億円・営業利益 14 億円。件数1.3倍・単価+25%
倍率:自己資本利益率 3.6% は資本コスト 9.75% を大きく下回る。在庫の評価損と利幅の薄さで稼ぎが細り、純利益 53 億円に利益の質の低さを見て 1÷k の 10.3 倍から大きく割り引いた 7.0 倍に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 6.8 倍・時価総額 358 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:金利上昇と需要の細りで棟数が 3 割減り、土地の仕入れ競争で利益率が薄くなる筋書き。借金が重い会社なので厚めの 27%。
悲観 14% 金利と在庫の評価損で資金繰りが詰まり、整理に入る 利益 −90 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 707 円220 億円
住宅ローン金利の急上昇と景気の悪化が重なり、リーマン期のような谷が来る。分譲戸建ての売れ行きは半減し、在庫の土地と建物は値引き販売でも売れ残る。
営業利益は赤字に沈み、借入の財務制限条項に触れて、銀行は追加の担保と返済を求める。
会社は在庫を投げ売りし、豪州の事業も売却して借金を返す。配当は止まり、増資や他社の傘下入りが現実味を帯びる。
株主に残るのは、在庫を処分して借金を返した後の分だけで、今の自己資本の 3 割ほどにとどまる。2008 年前後の中堅の建売会社が通った道を、同じ借金の重さで辿る姿である。
- 分譲住宅(土地販売を含む):数量 4,154(年間販売棟数(棟、土地販売を含む))× 価格 0.44(1 棟当たり平均売上(億円))→ 売上 1,844 億円・営業利益 0 億円。棟数-55%・単価+12%
- 注文住宅:数量 129(年間引渡棟数(棟))× 価格 0.27(1 棟当たり平均売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 −1 億円。棟数-50%・単価+10%
- その他(豪州の宅地分譲などの海外・周辺事業):数量 1,120(年間取引件数(区画・案件、推定))× 価格 0.17(1 件当たり売上(億円、推定))→ 売上 195 億円・営業利益 −4 億円。件数0.8倍・単価+12%
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。株主に残るのは、土地と建売を値引きで売り、借入を返したあとの分。今の自己資本 732 億円に在庫の評価損と処分値引きを見込み、その 3 割を床に置いた(内訳は筆者の推定)。EV÷営業利益は一年の利益が赤字で意味を持たないため、この筋書きは資産で測る。
確率:リーマン期のように在庫が投げ売りになり、借金の返済に追われる。自己資本の 2 倍超の純負債では、この谷が現実味を持つので 14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
分譲住宅(土地販売を含む)
埼玉・北関東から首都圏、全国の大都市圏へ、1 次取得層向けの低価格な建売戸建てを土地の仕入れから販売まで一貫して手がける中核事業。
| 数量年間販売棟数(棟、土地販売を含む) | 価格1 棟当たり平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,232 | 0.40 | 3,658 | 276 |
| 10 年後 中立 | 8,770 | 0.53 | 4,657 | 326 |
取り方:有報の分譲住宅売上 3,657.8 億円を販売棟数 9,232(土地販売を含む)で割った 1 棟当たり約 3,960 万円。土地のみの販売を含むので純粋な建売の単価ではなく目安。営業利益はセグメント利益 275.6 億円。
注文住宅
注文住宅の請負。規模は小さく、分譲住宅の補完にとどまる。
| 数量年間引渡棟数(棟) | 価格1 棟当たり平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 257 | 0.25 | 64 | 1 |
| 10 年後 中立 | 231 | 0.33 | 77 | 2 |
取り方:有報の注文住宅売上 63.8 億円と引渡し 257 棟から 1 棟当たり約 2,480 万円。セグメント利益 1.05 億円。
その他(豪州の宅地分譲などの海外・周辺事業)
豪州の宅地分譲と建築、リフォームや金融の周辺事業。前期に 7 割増えた。
| 数量年間取引件数(区画・案件、推定) | 価格1 件当たり売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,400 | 0.16 | 218 | 15 |
| 10 年後 中立 | 2,800 | 0.21 | 583 | 41 |
取り方:有報のその他売上 217.5 億円。中身(豪州の区画・周辺事業)の内訳は開示を開いておらず、件数 1,400 件・1 件約 1.55 千万円は推定の置き方。営業利益は全社 270 億円からの逆算の推定。 数量は件数(実物)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は豪州の区画分譲の拡大(推定の置き方で根拠は弱い)。
リスクと懸念
住宅ローン金利の上昇
10 年国債が 3% へ上がれば、住宅ローン金利も上がる。月々の返済に敏感な 1 次取得層の需要は、金利の上がり方で振れる。値段の安さを売りにする会社ほど、買い手が少し減るだけで棟数が落ちる。
借金の重さと借り換え
純有利子負債は自己資本の 2.1 倍で、営業利益は支払利息の 7 倍しかない。借り換えのたびに金利が 3.5% 前後に上がり、10 年で利益が 38 億円ほど削られる。一部の借入には財務制限条項が付き、触れれば返済を迫られる。
在庫の評価損
前期は在庫が約 485 億円増えた。売れ行きが鈍ると在庫は長期化し、値引きでしか売れなくなる。リーマン期のように建売の在庫が投げ売りになれば、自己資本の大きな部分が飛ぶ。
土地の仕入れ競争と大手との競合
飯田グループホールディングスは量産で、オープンハウスグループは都心の立地で強い。同じ 1 次取得層を狙う場面が増え、土地の競りで仕入れ値が上がれば、利益率が過去の谷の 4% 台まで下がる。
人口減少による新築需要の細り
分譲戸建ての着工は年 11 万戸あまりまで落ち、空き家率は 13% 台で上がり続ける。シェアを取っても、市場が毎年 3〜5% 縮めば棟数は保ちにくい。若い世帯の数そのものが減る。
社長への依存と少数株主への配慮
会社自身が社長への依存を事業のリスクに挙げる。資産管理会社を通じた議決権は 35% 弱で、経営の判断は速い反面、少数株主の意見は届きにくい。社長に不測の事態があれば、意思決定が止まりうる。
豪州事業の海外リスク
豪州では現地事業者と組んで宅地分譲と施工を広げる。現地の住宅市況・金利・為替・施工体制の立ち上げが想定どおりに進まなければ、国内の細りを補う柱にならず、投資が重荷になる。
今後の分かれ目
- 10 年国債と住宅ローン金利が想定を超えて上がる
- 1 次取得層の需要が冷え、借金の利払いも増えるため、利益は悲観側の筋書きに近づく。
- 2027 年 3 月期の純利益が会社予想の 175 億円を上回り、棟数も伸びる
- 低価格帯のシェア拡大が計画以上に進んでいる証拠で、やや楽観の筋書きの確からしさが高まる。
- 販売用不動産が売上の伸び以上に膨らむ
- 売れ行きの鈍化や在庫の長期化を示す。在庫の評価損と借入の増加を通じて、悲観側の確率を引き上げる必要が出る。
- 配当性向を引き上げ、自己株買いを本格化する
- 成長より株主還元を優先する方針転換で、自己資本の積み上がりが止まり、自己資本利益率が改善する。価値は少し上がる。
- 豪州の宅地分譲が想定を超えて育つ
- 国内の人口減少を補う第二の柱になり、中立から楽観寄りの筋書きに近づく。逆に立ち上がりが遅れれば重荷になる。
- 財務制限条項への抵触や追加担保の要求が出る
- 資金繰りの不安が現実になり、悲観の筋書きに近づく。他社の傘下入りや増資も視野に入る。
見ておくもの
- 新設住宅着工・分譲一戸建て着工戸数(国土交通省)
- 住宅ローン金利(フラット 35・民間)と 10 年国債利回り
- 販売棟数・平均単価・分譲住宅の営業利益率(四半期)
- 販売用不動産(在庫)と有利子負債の残高、財務制限条項の記載
- 豪州事業の区画契約数と建築会社の稼働
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER からは倍率を置いていない。セグメントごとに棟数(実質)× 価格(物価 3% 込みの名目)で 10 年を積み、利払いの増加を純利益に入れ、自己資本を今+純利益の合計−還元で流してから、事業の自己資本利益率と資本コスト 9.75% で倍率を決めた。中立は自己資本利益率が k とほぼ並ぶので、倍率は 1÷k の 7.5 割に置いた。同じ領域の会社(9.0% 前後)より k を高くしたのは、借金の重さを借金の欄で厚く見たため。リースは店舗の賃借が小さく、分譲主体のため影響は小さいと見るが、新リース会計基準で形が変わる点は 10 年後も今と同じ形に揃えた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.2→12.59 倍・やや楽観 PER 8.3→12.13 倍・中立 PER 8.4→11.61 倍)。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +2.5%(循環+0.75・値決め+0.5・借金+1.0・寿命+0.25)を足した 10.0%。同じ領域の飯田グループ・オープンハウス(9.0%)より高いのは、借金の重さを借金の欄で厚く見たため。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.00% → 9.75%。