結論
パーク24は「タイムズ」の名で知られる、国内最大手のコインパーキング運営会社だ。土地を借りて時間貸しし、その利益でカーシェアを育てている。筆者の結論は、10年で見れば「やや割安」。いちばんの理由は、駐車場の網が簡単にはまねできないことにある。利益を貯めず株主に戻す会社の方針も、価値を押し上げる。
稼ぎの柱は国内の駐車場で、営業利益の6割を超える。借りた土地に精算機を置くだけで済み、重い設備投資がない。場所の良い区画を押さえた会社が勝つ商売で、タイムズは全国に2万件近くの拠点を持つ。
伸びしろはカーシェアにある。会員は400万人を超え、会社は2030年に750万人を狙う。ただし車を急いで増やしたため、稼働率が追いついていない。筆者は、この先の伸びを手放しで信じない。
目先の純利益440億円は見かけが良すぎる。英国事業の撤退に伴う税金の戻りという一度きりの益が、300億円ほど乗っているからだ。実力の営業利益は425億円で、こちらを見るのが正しい。
加えて、2026年9月にカーシェア会員の情報約660万件が流出した。免許証の画像も約160万件に及ぶ。損害賠償の訴えが重なれば、費用だけでなく会員の信頼が揺らぐ。10年先の確率は、この傷を織り込んで慎重側に寄せた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を持ち続けたいかを、まず問う。駐車場の網は、人が車を使い続ける限り、毎日お金を生む。重い設備がなく、稼いだ現金を車と区画の増加と還元に回せる。ここは好ましい。
ただし、借りた土地の賃料という固定の約束が大きい。事業の「見かけの強さ」を割り引く必要がある。純有利子負債は約600億円と大きくないが、賃料を借金とみなせば、実質の負担ははるかに重い。景気が崩れた年に利益が急に消えるのは、この構造のせいだ。
カーシェアは、車を増やす競争になった。稼働が追いつかなければ、車は資産でなく重荷になる。筆者が最も警戒するのは、成長を急ぐあまり、稼ぐ力以上に車を抱えることだ。海外の失敗は、そうした拡大の癖を映しているように見える。
個人情報の流出は、事業の核である「顧客の信頼」を傷つけた。費用は一過性で済んでも、会員の離反は長引きかねない。事実が出そろうまでは、悲観側の確率を厚めに置くのが安全だ。
それでも、10年先に駐車場の網が残る確度は高い。今の値段は、悲観をかなり織り込んでいる。安全域は薄いながら、ある。筆者は中立の筋書きで、今の時価総額を上回る価値があると見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは3本に分かれる。最大は国内の駐車場事業で、売上は約1,900億円、利益は約375億円。コインパーキング「タイムズ」を全国で運営し、土地の持ち主から区画を借りて、利用者から時間単位で料金を取る。ほかに月極や管理の受託もある。
2本目がモビリティ事業だ。売上は約1,300億円、利益は約150億円。カーシェア「タイムズカー」とレンタカーを運営する。駐車場をそのままステーションに使えるのが強みで、借りる側は街のどこでも車に乗れる。会員は2026年8月に400万人を超えた。
3本目は海外の駐車場で、売上は約840億円、利益はほぼゼロから赤字だった。英国で赤字が続き、2026年3月に子会社を整理する手続きに入った。シンガポールの会社も売却した。残るのは韓国などの小さな拠点で、これから縮む部分だ。
この会社の特徴は、土地も車も自分で抱え込み切らない点にある。土地は借り、車は買うが中古で売れる。景気の悪い年には、採算の悪い区画を畳める。ただし借りた土地の賃料は毎年必ず出ていく。売上が落ちても賃料は落ちにくく、この固定の重さが利益の振れ幅を大きくする。
料金は駐車場ごとに運営会社が決める。人の動く場所の価値が上がれば、料金も上げられる。逆にオフィスや商業施設の人が減れば、稼働が落ちる。コロナ禍の2020年10月期と2021年10月期は、営業赤字に沈んだ。需要は人の動きに左右される商売だと、この数字が示している。
優良さと弱いところ
駐車場の網そのものが堀、つまり他社がまねしにくい強みだ。駅前や繁華街の一等地を借りた区画は、後から来る会社が同じ場所を取れない。拠点が増えるほど、利用者は「どこにでもタイムズがある」と考えて選ぶ。ここに三井のリパークが対抗しているが、上位2社の寡占という構図は変わらない。
カーシェアでは、駐車場の網が車の置き場になる。専用の車両を置く場所を、既存の拠点から安く確保できる。オリックスや三井のカレコが同じ置き場を集めるのは、時間と費用がかかる。これも規模の効く堀だと、筆者は見る。
資本効率は悪くない。ROEは過去10年の中央値で15%台。ただし財務は強くない。純有利子負債は約600億円で、自己資本比率は28%にとどまる。コロナ禍では2期連続で赤字となり、増資で資本を厚くした。
弱い点もはっきりしている。まず、海外で大きな損を出した。英国は何年も赤字が続き、整理に至った。経営の判断が遅かったと言わざるを得ない。次に、カーシェアの稼働率が伸び悩む。車を増やす速度に需要が追いついておらず、利益率が上がりにくい。
さらに、情報管理の甘さが露呈した。免許証の画像など、本人確認の書類が大量に流出した。顧客の信頼を預かる企業として重い失点だ。社長の西川光一氏は2004年から舵を取っており、経営の安定は長所だが、一方で緊張感の欠如を招かないかが問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の駐車場は、台数が増える市場ではない。人口は減り、都心の再開発で空き地が建物に変わる。だが違法駐車の取り締まりと、車の保有コストの高さから、お金を払って止める習慣は定着した。筆者は、国内の駐車場の台数は10年でほぼ横ばいと見る。
料金は物価に沿って上がる余地がある。人が集まる場所の区画は希少で、料金改定がしやすい。一方、賃料も物価で上がる。値上げが賃料の上昇を上回るかどうかが、利益率の分かれ目になる。
成長の主役はカーシェアだ。車を持たない若者や、2台目を持たない家庭が増え、会員は伸びてきた。市場は2030年に2022年比で2.5倍との予測もある。会社も2030年に会員750万人、専用車両11.6万台を掲げる。ただし車が増えても、稼働しなければ赤字の種になる。足元でも利用率の低迷が課題とされる。
競争の相手は、同じ寡占の仲間だけではない。ライドシェアや自動運転のタクシーが広がれば、「自分で運転して使う車」の需要自体が細る。これは10年で最も気になる変化だ。逆に電気自動車の充電を駐車場に組み込めれば、拠点の価値は上がる。
景気との関係も押さえておきたい。駐車場の売上は、人出と来街者数に連動する。インバウンド、出張、買い物が止まれば、稼働が落ちる。コロナ禍では国内の駐車場も大きく傷んだ。今は人出が戻り、駐車場もカーシェアも売上が伸びている。山の手前にいるのか、平常なのかは、まだ判断がつかない。
資本政策と M&A
還元は強める方向だ。2024年12月の中期計画は、ROE20%程度と配当性向50%程度を掛け合わせ、株主資本に対する配当率(DOE)10%程度を目標に置いた。株主資本は900億円程度が適正で、配当性向50%の残りも留保せず追加の還元を検討する、とも明言している。2026年10月期からは、6年ぶりに株主優待も再開した。
資本の使い道はカーシェアの車両と駐車場の確保が中心だ。借金で車を増やす成長なので、金利が上がる世界では利益を削る。自社株買いは直近数年の実績がなく、追加の還元は約束ではない。それでも筆者は、中立で利益の7割が株主に戻ると見ている。約束は配当性向50%までで、追加は「検討」にとどまる。コロナ前の配当性向は7割前後(68〜88%)だった。利払いの増加は、10年で十数億円の利益を押し下げる。
整理も進んだ。英国は子会社を清算し、シンガポールは売却した。これで赤字の海外を切り離せる。一方、英国の撤退では特別損失と、税金の戻りが同時に出て、2026年10月期の純利益は見かけ上440億円に膨らんだ。繰り返さない益だ。
筆頭株主は有限会社千寿で、持ち分は12.7%。残りは信託口や海外の機関投資家が中心だ。買収を持ちかけられた事実は確認できていない。ただ、時価総額が3,000億円台で、駐車場の網は魅力が大きい。筆者は、買収や非公開化は十分ありうると見ている。
10 年の還元は、約束の配当性向 50% に、検討中の追加還元を一部足した水準で、中立は純利益の合計の 70%。方針の意図(株主資本 900 億円程度を適正とし、残りは留保しない)どおりなら 8 割を超えるが、追加は約束でなく自社株買いの実績もないので、そこまでは見ない。
点検済み:中立の営業利益率11.7%は過去の山(11.0%)を0.7ポイント超えるが、赤字だった海外(英国は清算、シンガポールは売却済み)が小さな収支とんとんの拠点に縮む構造の変化による。国内駐車場(19.5%)とモビリティ(11.5%)は今の水準のままで、会社予想の今期・来期(10.3〜10.5%)からの上積みは海外の赤字解消の分に限る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
駐車場とカーシェアが同じ拠点を共有する、この仕組みはほかに例がない。国内最大の駐車場網を持つタイムズは、拠点が増えるほど車の置き場が安くなり、会員が増えるほど拠点の稼働が上がる。この相乗効果が、10年かけて効く。
カーシェア会員は400万人を超え、2030年には750万人を狙う。まだ会員の稼働は伸びしろが大きく、車が増えても稼働が上がれば利益率は急に改善する。利用が増えるほど1台あたりの固定費が薄まるからだ。
海外の赤字は片付いた。英国とシンガポールを整理したことで、連結の足を引っ張っていた損失が止まる。国内だけで営業利益425億円を稼ぐ力がある。ここから物価に沿った料金改定と、ステーションの拡大が積み上がれば、営業利益は10年で2倍近くになりうる。
還元も強まる。ROE20%と配当性向50%の目標が実現すれば、株主への還元は大きくなる。時価総額が3,000億円台と小さいうちは、自社株買いの効果も大きい。個人情報の流出は痛いが、再発防止の費用で済み、事業の骨格は傷まない。
慎重な見方
カーシェアの成長は、稼働が伴っていない。車が増えても利用が追いつかず、利益は前年から減った時期がある。会員400万人は数字として大きいが、毎月使う人はごく一部で、会員が収益に直結するわけではない。
自動運転とライドシェアが広がれば、「車を借りて自分で運転する」需要は縮む。10年は、その転換が現実になる期間だ。国内の駐車場も、無人タクシーが路上で客を拾えば、止める需要は減る。
固定費が重い。賃料は景気が悪くても出ていく。コロナ禍で2期連続の営業赤字を出し、増資に追い込まれた事実は消えない。自己資本比率は28%で、借金が増える世界では利払いが重くなる。
情報流出は軽くない。660万件のうち160万件は免許証の画像で、悪用されれば被害は長引く。2,000人超が集団訴訟への参加意向を示す。損害賠償に加え、入会の足が止まれば、成長の柱が折れる。海外の失敗が示すとおり、この会社は拡大の判断を誤る癖もある。
どちらに重みを置いたか
駐車場の網という堀の強さでは強気の見方が勝つ。一方、カーシェアの稼働と情報流出の後始末は慎重な見方が優勢だ。筆者は中立を最も厚くしつつ、悲観側の確率を楽観側より少し高く置いた。
もう1つの決め手は還元だ。会社は利益を貯めず戻す方針を開示している。ただ約束は配当性向50%までで、追加は検討にとどまる。中立は利益の7割が戻ると見て、ROEは17%前後と置いた。
決め手は、駐車場の利益の安定感だ。国内駐車場だけで、今の時価総額に見合う稼ぎが出ている。カーシェアが失敗しても、会社が傾く筋書きは遠い。一方、10年かけて大きく伸びる筋書きには、稼働率の改善という条件がつく。その条件が満たされる確度は、半分に届かないと見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/10 期)
確率で加重した株価時価総額 4,113 円7,022 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,201 円2,051 億円)。 今の値に割り戻すと 2,832 円4,836 億円、今との差 +58.1%、 期待の年率 +11.5%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,138 円1.39 兆円 | 1,670 円2,851 億円 | +447.6% | +18.5% | 785 円1,340 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,676 円1.14 兆円 | 1,552 円2,650 億円 | +359.4% | +16.5% | 1,646 円2,809 億円 |
| 中立 | 36% | 4,919 円8,399 億円 | 1,375 円2,348 億円 | +251.5% | +13.4% | 2,266 円3,869 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,330 円2,270 億円 | 843 円1,440 億円 | +21.3% | +2.0% | 522 円890 億円 |
| 悲観 | 12% | 304 円519 億円 | 499 円852 億円 | −55.2% | −7.7% | 96 円165 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,113 円7,022 億円 | 1,201 円2,051 億円 | +196.7% | +11.5% | 5,314 円9,073 億円 |
今の株価時価総額 1,791 円3,058 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% カーシェアが稼働を上げ、利益が倍に近づく 利益 615 億円 · PER 22.1 倍 · 株価時価総額 8,138 円1.39 兆円
カーシェアが車の増加より速く使われ、稼働率が上がる。会員は750万人の目標に近づき、車両は今の倍になる。1台あたりの売上が伸び、固定費が薄まって、利益率は15%に届く。駐車場は台数をわずかに増やし、人の集まる区画の料金改定が定着する。
充電設備を駐車場に組み込み、電気自動車の利用者を囲い込む。無人運転のタクシーが広がっても、車を自分で使う需要は残り、拠点の網は引き続き価値を持つ。海外の整理は完了し、残る小さな拠点は黒字に変わる。
情報流出の訴訟は、費用として一度きりで片付く。会員の信頼は戻り、入会は止まらない。借金で車を増やす成長を、稼いだ現金の範囲に収められる。営業利益は10年で2倍半に届き、還元も厚くなる。配当性向50%に追加の還元を重ねる。車を増やす投資も要るので戻す割合は6割台半ばにとどまり、ROEは20%強に乗る10年だ。
- 国内の駐車場(タイムズ):数量 74.0(国内の運営台数(万台))× 価格 39(1 万台あたりの売上(億円・名目、料金と稼働の結果))→ 売上 2,866 億円・営業利益 602 億円。74 万台、料金・稼働の改善で 1 台あたり 1.40 倍、利益率 21%
- モビリティ(カーシェア・レンタカー):数量 16.1(車両台数(万台、カーシェアとレンタカーの合計))× 価格 216(1 万台あたりの売上(億円・名目、稼働と料金の結果))→ 売上 3,488 億円・営業利益 523 億円。16.1 万台(2.0 倍)、1 台あたり 1.36 倍、利益率 15%
- 海外の駐車場:数量 6.0(海外の運営台数(万台、推定))× 価格 70(1 万台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 421 億円・営業利益 25 億円。6 万台、残る拠点が黒字化
倍率:事業の純利益 615 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.1 倍。全体の PER 22.07 倍、時価総額 13,573 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:カーシェアの稼働の改善、料金の実質上昇、情報流出の傷の早期解消が全部そろう必要があり、連続成功の確度は高くない。
やや楽観 20% カーシェアが順調に伸び、駐車場は安定 利益 515 億円 · PER 21.6 倍 · 株価時価総額 6,676 円1.14 兆円
駐車場は台数が横ばいから微増で、料金は物価に沿って上がる。営業利益率は20%台前半で安定する。人の動きが戻った都市部の区画が稼ぎを支える。
カーシェアは会員が600万人台まで伸び、車両は今の1.8倍になる。稼働率は少しずつ上がるが、車の増加に追いつききれず、利益率は13%台にとどまる。それでも利益の絶対額は倍以上に増える。
海外は残る小さな拠点が小さな黒字に収まり、連結への影響はほぼ消える。情報流出の訴訟は費用が出るが、会員の離反は限られる。借金の増加は穏やかで、還元は配当性向50%に自社株買いなどを足し、利益の7割弱を戻す。ROEは20%近くと、会社目標の20%とほぼ並ぶ。
- 国内の駐車場(タイムズ):数量 73.5(国内の運営台数(万台))× 価格 38(1 万台あたりの売上(億円・名目、料金と稼働の結果))→ 売上 2,765 億円・営業利益 567 億円。73.5 万台、1 台あたり 1.36 倍、利益率 20.5%
- モビリティ(カーシェア・レンタカー):数量 14.5(車両台数(万台、カーシェアとレンタカーの合計))× 価格 213(1 万台あたりの売上(億円・名目、稼働と料金の結果))→ 売上 3,087 億円・営業利益 417 億円。14.5 万台(1.8 倍)、1 台あたり 1.34 倍、利益率 13.5%
- 海外の駐車場:数量 5.5(海外の運営台数(万台、推定))× 価格 66(1 万台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 362 億円・営業利益 14 億円。5.5 万台、小さな黒字
倍率:事業の純利益 515 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.6 倍。全体の PER 21.6 倍、時価総額 11,124 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画に近い成長が、遅れながらも実現する想定。稼働の改善は半分程度にとどまる。
中立 36% 駐車場が安定し、カーシェアは物価並みに育つ 利益 395 億円 · PER 20.7 倍 · 株価時価総額 4,919 円8,399 億円
国内の駐車場は台数が横ばいで、料金は物価に沿って上がる。営業利益率は今と同じ20%近く。賃料も物価で上がるが、料金改定でほぼ相殺できる。
カーシェアは車両が今の1.55倍になるが、1台あたりの売上は物価の伸びに届かない。ライドシェアなどとの競争と稼働の壁があるからだ。利益率は11〜12%で、規模が増えた分だけ利益が増える。
海外は撤退の後始末が終わり、小さな拠点が収支とんとんで残る。情報流出の訴訟は数十億円の費用と信頼の回復に数年をかけるが、事業の骨格は変わらない。営業利益は650億円台、純利益は400億円弱。
還元は、約束の配当性向50%に追加の自社株買いを少し足し、利益の7割を戻す。追加は「検討」にとどまり、自社株買いの実績もないので、方針の意図(自己資本を厚くしない)どおりには見ない。自己資本は2,300億円ほどまで積み上がり、ROEは17%前後と会社の目標20%に届かない10年になる。
- 国内の駐車場(タイムズ):数量 72.8(国内の運営台数(万台))× 価格 37(1 万台あたりの売上(億円・名目、料金と稼働の結果))→ 売上 2,698 億円・営業利益 526 億円。72.8 万台(1.04 倍)、1 台あたり 1.34 倍(物価並み)、利益率 19.5%
- モビリティ(カーシェア・レンタカー):数量 12.5(車両台数(万台、カーシェアとレンタカーの合計))× 価格 207(1 万台あたりの売上(億円・名目、稼働と料金の結果))→ 売上 2,582 億円・営業利益 297 億円。12.5 万台(1.55 倍)、1 台あたり 1.30 倍(稼働と競争で物価に届かない)、利益率 11.5%
- 海外の駐車場:数量 5.0(海外の運営台数(万台、推定))× 価格 66(1 万台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 329 億円・営業利益 10 億円。5 万台、利益率 3%
倍率:事業の純利益 395 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.7 倍。全体の PER 20.67 倍、時価総額 8,165 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:駐車場の網が10年続き、カーシェアは伸びるが稼働の壁で利益率は大きく上がらない、という最も起こりやすい中間。
やや悲観 24% カーシェアが伸び悩み、固定費が重くなる 利益 204 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 1,330 円2,270 億円
カーシェアは車が増えても稼働が上がらず、1台あたりの売上は物価の伸びに大きく届かない。ライドシェアの広がりと、若者の車の使い方の変化で、会員は増えても使う回数が増えない。利益率は6%まで下がる。
駐車場は台数がわずかに減り、人の動く区画でも料金改定が進まない。賃料が物価で上がる分を吸収できず、利益率は17%台まで下がる。
情報流出の訴訟が長引き、本人確認の厳格化で入会の手間が増える。海外は収支とんとんのまま残る。営業利益は今とほぼ同じ水準で、物価の分を考えれば実質では2割以上減る。還元は配当が中心になり、利益の6割ほどにとどまる。優良さが薄れ、普通の運営会社になる10年だ。
- 国内の駐車場(タイムズ):数量 68.0(国内の運営台数(万台))× 価格 36(1 万台あたりの売上(億円・名目、料金と稼働の結果))→ 売上 2,445 億円・営業利益 428 億円。68 万台、1 台あたり 1.30 倍、利益率 17.5%
- モビリティ(カーシェア・レンタカー):数量 9.5(車両台数(万台、カーシェアとレンタカーの合計))× 価格 194(1 万台あたりの売上(億円・名目、稼働と料金の結果))→ 売上 1,842 億円・営業利益 110 億円。9.5 万台(1.18 倍)、1 台あたり 1.22 倍、利益率 6%
- 海外の駐車場:数量 4.0(海外の運営台数(万台、推定))× 価格 66(1 万台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 263 億円・営業利益 0 億円。4 万台、収支とんとん
倍率:ROE 9.0%(事業の純利益÷自己資本)。k 7.5%。RONIC=k+残る割合 1/2×(ROE−k)=8.5%、g 4% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.2 倍。伸びと堀の持ちを低く見て、ライドシェアに削られる事業として。上限の 7 割の 9.3 倍に置いた。
確率:稼働の低迷が続く現状の延長で十分起こりうる。景気の悪化や訴訟の長期化が重なればさらに深まる。
悲観 12% 自動運転とライドシェアに押され、優良さを失う 利益 57 億円 · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 304 円519 億円
自動運転のタクシーとライドシェアが都市部で広がり、カーシェアの会員は増えず、使う回数も減る。車を整理して台数を絞るが、賃料と人件費の固定費が残り、モビリティは損益とんとんまで落ちる。
駐車場も、無人タクシーが路上で客を拾う街から稼働が落ち、料金を上げられない。借りた土地を解約して区画を絞るが、賃料の重さで利益率は15%にとどまる。情報流出の訴訟は賠償が膨らみ、会員の離反が長引く。
営業利益は今の3分の1ほどに縮み、利払いを引くと純利益はわずかになる。減損で自己資本も削られる。拠点網という堀は残るが、稼ぐ力はもう優良とは言えない。
- 国内の駐車場(タイムズ):数量 62.0(国内の運営台数(万台))× 価格 33(1 万台あたりの売上(億円・名目、料金と稼働の結果))→ 売上 2,058 億円・営業利益 309 億円。62 万台、1 台あたり 1.20 倍、利益率 15%
- モビリティ(カーシェア・レンタカー):数量 7.5(車両台数(万台、カーシェアとレンタカーの合計))× 価格 167(1 万台あたりの売上(億円・名目、稼働と料金の結果))→ 売上 1,251 億円・営業利益 0 億円。7.5 万台、1 台あたり 1.05 倍、損益とんとん
- 海外の駐車場:数量 3.0(海外の運営台数(万台、推定))× 価格 55(1 万台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 165 億円・営業利益 −5 億円。3 万台、小さな赤字
倍率:ROE 3.6% は k 7.5% 以下。無人タクシーに押され利益が毎年3%ずつ縮み続ける事業は、成長でなく目減りを払う側になる。永続の式は使わず、縮む利益の倍率 1÷(k+3%)=9.1 倍に置いた。減損300億円を自己資本から引いた。
確率:車を自分で運転して借りる需要が構造的に細り、情報流出で会員の信頼も傷む複合の筋書き。起こる確度は低いが、10年は長い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の駐車場(タイムズ)
借りた土地に精算機を置いて時間貸しするコインパーキングと、月極・管理受託。
| 数量国内の運営台数(万台) | 価格1 万台あたりの売上(億円・名目、料金と稼働の結果) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 70.0 | 28 | 1,936 | 375 |
| 10 年後 中立 | 72.8 | 37 | 2,698 | 526 |
取り方:月次資料の国内運営台数約 70 万台(2025 年 10 月末)。売上 1,936 億円(セグメント)を台数で割り、1 台あたり年約 27.7 万円(価格の欄は 27.7 億円÷万台)とした。月極や管理の売上も含む。台数は実質の数量で、物価の分は 1 台あたりの売上に入れた。
モビリティ(カーシェア・レンタカー)
カーシェア「タイムズカー」とレンタカー。駐車場の拠点に車を置いて貸す。
| 数量車両台数(万台、カーシェアとレンタカーの合計) | 価格1 万台あたりの売上(億円・名目、稼働と料金の結果) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 8.1 | 159 | 1,282 | 149 |
| 10 年後 中立 | 12.5 | 207 | 2,582 | 297 |
取り方:月次資料のタイムズカー車両数 80,691 台(2025 年 10 月末、うち専用 63,880 台)。売上 1,282 億円を台数で割り、1 台あたり年約 160 万円。台数は実質の数量。稼働率の低下は 1 台あたりの売上の伸びを抑える形で価格に入れる。
海外の駐車場
英国・シンガポール・韓国などの駐車場。英国は整理中、シンガポールは売却済み。
| 数量海外の運営台数(万台、推定) | 価格1 万台あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 17.2 | 49 | 844 | −14 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 66 | 329 | 10 |
取り方:月次の総駐車場数約 86.9 万台から国内の約 69.7 万台を引いた約 17.2 万台を海外とした(推定。開示ではない)。売上 844 億円を割って 1 台あたり約 49 億円÷万台。英国・シンガポールの撤退で、残るのは約 5 万台と推定する。
リスクと懸念
個人情報の流出と訴訟
2026年9月に、カーシェア会員の約660万件が流出した。免許証画像は約160万件。損害賠償の集団訴訟には2,000人超が参加の意向を示した。費用と信頼の低下が長引けば、入会の勢いが止まる。クレジットカード情報の流出は確認されていない。
カーシェアの稼働の低迷
会社は車両を増やしているが、利用が追いついていない。足元でも稼働率の低迷が課題とされる。車は買った瞬間から固定費になる。稼働が上がらなければ、成長のたびに利益率が下がる構図になる。
自動運転とライドシェア
無人タクシーやライドシェアが広がれば、「借りて自分で運転する」需要が細る。駐車場の需要も、路上で客を拾う車が増えれば減る。10年でもっとも大きな構造変化だが、規制と普及の速度は読み切れない。
賃料という固定の約束
駐車場の土地は借りたものだ。売上が落ちても賃料は落ちにくい。新リース会計基準が2028年10月期から適用され、賃借が貸借対照表に載る。数字の形は変わるが、固定の重さは変わらない。
海外事業の後始末
英国は子会社の清算に入り、シンガポールは売却した。特別損失は想定より小さく済んだが、残る海外の拠点の採算は不明だ。過去にも英国の年金基金の解散で損失を出しており、同じ失敗の繰り返しに注意が必要だ。
利益の一過性と金利
2026年10月期の純利益440億円は、英国事業の再編に伴う税金の戻り310億円ほどを含み、繰り返さない。また借金は借り換えで金利が上がる。10年で利払いは十数億円増え、利益を圧迫する。
経営の判断の遅れ
社長は2004年から経営を担っている。長期の安定は長所だが、英国の赤字を長く放置した点と、本人確認画像の管理の甘さは、緊張感の欠如を疑わせる。筆頭株主の持ち分は12.7%で、経営を厳しく問う声は強くない。
今後の分かれ目
- カーシェアの稼働率が、車両の増加に先んじて上がり始めたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。利益率が10%台半ばに上がり、営業利益の伸びが早まる。
- 情報流出の訴訟が数百億円規模の賠償や、会員数の減少に発展したら
- やや悲観・悲観に確率を寄せる。信頼の毀損は数年かけて効くので、入会の勢いを見る。
- 国内の駐車場の1台あたりの売上が、物価を超えて上がり続けたら
- 中立の利益率を上方に直す。区画の希少性が料金に表れている証拠になる。
- 自動運転のタクシーが都市部で定着し、駐車場の稼働が落ち始めたら
- 構造的な負けの筋書きが近いと見て、悲観の確率を上げる。
- 買収や非公開化の提案が出たら
- 拠点網の価値が市場で認められる形になる。ただし提示の値が10年の本質価値と比べてどうかで判断する。
- 海外の残る拠点が黒字に転じ、撤退が完了したら
- 連結の足かせが消えたと見て、営業利益の下振れ幅を狭める。
見ておくもの
- タイムズカーの会員数・車両数・稼働率
- 国内駐車場の1台あたり売上と運営台数
- 情報流出の訴訟の進み方と、会員の増減
- 配当・自社株買いの方針(ROE20%・配当性向50%の目標の進み方)
- 海外の整理の完了と、新リース会計の影響
倍率と資本コストの決め方
まず3つのセグメントで台数×1台あたり売上を置き、10年後の営業利益を積んだ。次に会社の還元方針(配当性向50%程度は約束、追加還元と株主資本900億円程度は検討・意図)とコロナ前の配当性向(68〜88%)から、中立の還元を純利益の7割に置き、自己資本を「起点+10年の純利益の合計−還元」で流した。2026年10月期の440億円は税効果310億円を含む一過性なので、利益や倍率の基準にせず、自己資本の起点にだけ加えた(純利益の起点は27年10月期の会社予想276億円)。倍率は正当化PERの9割(中立)で、今の株価や同業の倍率は見ていない。2028年10月期の新リース会計で営業利益と純有利子負債の形が変わる点は、今と同じ形でそろえて置き、筋書きには織り込んでいない。同じ領域の会社が少なく、物差しの比較は十分でない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.3→22.07 倍・やや楽観 PER 16→21.6 倍・中立 PER 15.3→20.67 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。