結論
グローム・ホールディングスは、不動産会社から医療機関の経営支援会社へ転じ、さらに系統用蓄電所と海外のエネルギー関連投資へ事業を広げている。筆者の結論は「割高」である。会社の現金や不動産には価値があるが、それを既存株主の利益に変える経営の実績が乏しく、成長投資の失敗と株式希薄化を無視できない。
医療経営支援は、地域の病院が人手不足や経営難に直面する限り必要な仕事である。ただし、同社が支援する病床は2026年3月末の4,826床から同年9月には4,189床へ減った。需要の存在と同社が顧客を維持できることは別の話である。経営指導や事務受託の一部はAIエージェントによる代替も進むため、現在の契約をそのまま10年後の収益基盤とは見なせない。
2026年6月公表の事業計画は、2031年3月期に売上高51.58億円、営業利益6.61億円を目指す。成長の柱は医療関連事業の改善と蓄電所4施設への展開だ。しかし、蓄電所の収益は取引市場の価格や制度に左右され、医療事業の失速を必ず補えるわけではない。2026年9月には米国SunPowerへの約5.45億円の出資も行われ、資本配分の難しさが増した。
10年後の中立では営業利益約2億円、純利益約1.4億円を見込む。利益の再投資効率が資本コストに届かないため、自己資本の多さをそのまま株主価値とはしない。資本コスト8.25%で5つの筋書きを現在に引き直した価値は約11億円となり、基準時点の時価総額約30億円を約63%下回る。上場維持基準への不適合も、現時点では上場廃止の決定ではないものの、長く保有する株主にとって看過できない不確実性である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、この会社を評価するうえで一番難しいのは、資産の多さと稼ぐ力の弱さをどう結び付けるかである。純現金を持ち、貸付金や不動産もある会社を、単に赤字だから無価値とするのは誤りだ。しかし、株主が自由に使えない現金や、貸付先の経営悪化で回収が難しくなる資産には、帳簿額どおりの価値を与えられない。
本当に長く保有したいのは、医療機関から不可欠な業務を任され、価格を上げても契約が続き、追加の資本をほとんど必要とせず利益が積み上がる会社である。グロームにはその姿へ近づく余地があるが、契約病床数は減少している。医療経営支援の仕事の一部はAIエージェントによって内製化・省人化される。顧客にとって重要な仕事であることと、同社が10年後も同じ対価を受け取れることは分けて考えるべきだ。
経営者の資本配分にも厳しい目を向けたい。過去には不動産から医療への転換があり、近年は関連会社の整理、ホスピス施設の閉鎖、蓄電所への参入、米国企業への出資が続いた。変化への対応力と見ることもできるが、長期の稼ぐ力がまだ証明されないまま投資先が増える構図でもある。資本コストを超える利益が確認できない限り、事業を大きくすること自体は株主価値の増加ではない。
さらに、新株予約権の行使で資金が入っても既存株主の取り分は薄まる。設備投資から十分な利益が生まれるなら希薄化は正当化できるが、そうでなければ損失の負担だけが残る。現在の時価総額が帳簿上の自己資本を下回ることだけでは安全域とは呼べない。払う値段に見合う確信を持つには、まず顧客の減少が止まり、投資した設備から実際の現金が生まれる証拠が必要である。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、医療法人に対する経営指導、管理業務の受託、人事・労務支援、医療機器の販売である。グローム・マネジメントは医療機関の経営管理や資金調達、業務改善を支え、グローム・ワークサポートは人材・労務関連の業務を担う。顧客の経営が苦しくなるほど支援の必要性は高まるが、同時に委託料の回収や契約継続も難しくなるという矛盾を抱えている。
2026年3月期の医療関連事業の売上高は約18.69億円で、全社の約93%を占めた。このうち福山医療器の医療機器・医薬品等の販売を約8.52億円、経営支援・人事労務などの役務を約10.17億円と推計する。役務は支援先の病床数と提供業務の深さ、販売は納品件数と案件単価が稼ぎを決める。実際の案件数と平均単価は十分に開示されておらず、後者は売上から逆算した推計である。
医療関連事業には、病院向けの貸付や債権管理も付随する。単なる相談業務ではなく、経営が苦しい医療機関の資金繰りまで引き受ける関係である。この深い関与は顧客との接点になる一方、病院の再建に失敗すると貸付金の損失として自社に跳ね返る。医療関連事業のセグメント利益が黒字でも、過去には本社費や投資損失を差し引いた最終損益が赤字になった。
不動産関連事業は、かつての開発・売買を主力とする姿から大きく縮小し、現在は保有不動産の賃貸が中心である。2026年3月期の売上高は約1.34億円、セグメント利益は約0.49億円だった。土地や建物の売却価値は残るが、新たな不動産開発で大きな超過利益を生む会社としては評価しない。
新事業の系統用蓄電所は、電力を安い時間帯に蓄え、高い時間帯に放出する取引や需給調整から収益を得る。会社は2031年3月期に4施設で約10.42億円の売上を計画している。2026年9月末に第1号施設の検収・引渡しが完了した段階であり、通年の収益性はまだ実績として確認できない。米国SunPowerへの出資は、この電力事業との協業を狙う金融・戦略投資として別途、回収可能性を吟味する必要がある。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、地域の医療機関に経営、人事、機器調達、資金面から入り込めることである。単独の業務受託会社より顧客との接点は多く、病院の再建に成功すれば長い取引関係を築ける。医療機器販売の許認可や現場との関係も一定の参入障壁になる。ただし、値上げを継続して通した実績、低い解約率、長期契約の残存率といった堀の強さを示す定量的な証拠は十分ではない。
最大の弱点は、顧客基盤が縮んでいることである。2026年3月末の50施設、4,826床から、同年9月の47施設、4,189床へと後退した。単なる景気循環ではなく、経営支援先の入れ替わりや関係解消が売上の土台を揺らしている。病床数の回復なしに、長期の高収益を前提とすることは難しい。
資本効率にも課題がある。2019年3月期には約148億円の売上を計上したが、2026年3月期は約20億円に縮んだ。事業構造が変わったため単純比較はできないものの、稼いだ利益を継続的に高い利回りで再投資できた実績は見えにくい。2026年3月期は最終赤字となり、自己資本に対する利益率もマイナスだった。
財務面では2026年3月期末の自己資本比率が約90%、純現金が約25億円ある。これは借金の重い会社より明確に有利である。しかし、現金以外に医療機関向け貸付金や換金に時間を要する不動産を抱えるため、帳簿上の自己資本すべてを安全な現金とは呼べない。蓄電所への設備投資と海外企業への出資によって、流動性の厚みも変わりつつある。
経営支援の業務知識には価値があるが、特定の事業で何十年も価格を支配できるほどの堀は確認できない。現段階では、優良な再投資先を保有する会社ではなく、蓄積した資産を使って収益基盤を再構築している会社と評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医療機関の経営支援市場には、構造的な需要がある。高齢化は医療需要を支えるが、人口減少、診療報酬による価格統制、医師・看護師の不足、人件費の上昇が病院経営を圧迫する。経営効率化や共同購買、事業承継への需要は続くだろう。ただし、病院が支援会社に支払える委託料には限界があり、必要な仕事だから高い利益率が続くとは限らない。
全国の病床数を約150万床とし、同社の医療経営支援関連売上を2026年3月期末の4,826床で割ると、病床当たりの年間売上は約21万円となる。すべての病床が同じサービスを外注するという非現実的な条件で計算した市場の上限は約3,150億円である。これは実際に契約可能な市場規模ではない。大病院グループには管理機能を内製する能力があり、地域の独立病院でも外部委託の範囲は大きく異なる。同社の実績病床は全国の約0.3%にすぎず、シェアを伸ばす余地はあるが、顧客獲得の実行力が必要になる。
競争相手は、CUCのような医療機関支援会社だけではない。徳洲会などの大規模医療グループが持つ内部の管理組織、地域医療連携推進法人、会計・人事の専門家、地域金融機関も競合または代替手段となる。どの競合も事業範囲が異なるため、医療支援全体の厳密なシェアは算定できない。10年先のシェアは業界全体の成長率より、失った提携先を補い、新たな病院から選ばれる力によって決まる。
医療機器は別の市場である。厚生労働省による2024年の国内出荷金額は約4.7兆円で、同社の推計販売額8.52億円は全国市場の約0.018%に相当する。ただし、国内出荷額には製造販売業者の出荷金額が含まれ、地域ディーラーの売上高とは取引段階が違うため、厳密な市場シェアではない。メディアスホールディングスなど大手販売会社との規模の差は大きく、価格と仕入れ条件による競争が続く。
蓄電所の需要は、太陽光や風力の導入拡大と電力需給の調整需要に支えられる。一方で、容量市場、需給調整市場、卸電力市場の制度変更や参加事業者の増加は、施設当たりの売上を下げうる。設備の数だけを増やしても高利回りが保証される事業ではない。インフレで建設費が上がる世界では、既存設備の償却額と将来の更新投資額の差も広がる。地域医療支援と電力取引の双方で、同社が市場の値段を自ら決める力は限定的だ。
資本政策と M&A
2026年6月公表の事業計画には、2031年3月期の売上高51.58億円、営業利益6.61億円が掲げられている。内訳では医療関連事業39.83億円、不動産関連事業1.33億円、系統用蓄電所事業10.42億円を見込む。ROE、DOE、総還元性向、自社株買い額についての具体的な数値目標は確認できない。株主還元は純利益の15%を目安とする配当方針があり、近年の実績は安定していない。
同社は2026年5月に第三者割当で約4.60億円を調達し、135万7,500株を発行した。この株式は今回の株数に既に含まれている。さらに第6回新株予約権には最大769万2,500株の潜在株式があり、全額行使なら約26.08億円の追加資金が入る一方、現時点の株主の持分割合は約57.5%へ低下する。成長投資の成否だけでなく、成果を誰が受け取るかが大きな論点である。
同年9月には米国SunPowerに約5.45億円を出資した。同社は財務基盤に懸念があり、グローム自身も評価損の可能性を開示している。蓄電所の増設と合わせると、既存事業の再建前に大きな投資判断が重なっている。筆者は、資金調達額の大きさより、投資後の現金収益と既存株主への還元を重視する。
上場維持については、2026年3月末の時価総額がグロース市場の基準40億円を下回ったため、2027年3月末まで改善期間に入っている。基準に適合せず、その後の審査でも確認されなければ2027年10月1日に上場廃止となる可能性がある。ただし現時点で上場廃止が決定したわけではない。会社はスタンダード市場への変更申請の準備も表明している。2026年3月期の継続企業の前提に関する注記は該当事項なしである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
地域の病院には経営支援がますます必要になる。診療報酬の制約、人件費の上昇、医療従事者不足が続くほど、独立した医療法人は人事、購買、資金調達、病院間連携を外部の専門会社に任せる動機が強くなる。グロームは単独の業務代行にとどまらず、医療機器供給や病院向け貸付を含めて関係を築いてきた。支援先の入れ替わりを乗り越えられれば、全国の病床に占める現在の小さなシェアを広げる余地は十分にある。
医療関連事業のセグメント利益は2026年3月期に約3.19億円となり、全社が赤字でも現場の事業は利益を出した。今後、本社管理費の増加を抑え、医療機器販売先を既存の提携病院以外へ広げられれば、規模拡大が利益に結び付く。AIも社内で活用すれば定型作業の原価を下げられる。ただし、AIの新製品による売上実績は確認できないため、AI自体を急成長商品として扱う必要はない。
系統用蓄電所は医療と異なる成長源になる。第1号施設が引き渡され、第2号施設も進み、会社は4施設への拡大を掲げる。電力市場での取引経験が蓄積されれば、立地選定や運用改善を通じて収益性を上げられる可能性がある。米国SunPowerとの提携も、北米事業で実際の案件獲得につながれば、投資の意味が生まれる。
新株予約権の行使により、事業拡大に必要な資金を借入金なしで調達できることも利点である。金融機関からの返済圧力に追われずに蓄電所の建設を進め、2031年の計画を上回る利益を生み出せば、既存株主は希薄化後でも現在より大きな価値を受け取れる。市場で信頼を回復できれば、上場維持基準の問題を解消する道も開ける。
慎重な見方
医療機関の経営が苦しいという事実は、その病院から委託料を回収しやすいことを意味しない。支援先は2026年3月から9月の半年だけで637床減った。事業の土台となる顧客数が縮む一方で、医療機関向けの貸付や保証に伴うリスクは残る。病院が倒れれば業務委託料を失うだけでなく、債権の回収不能や貸倒損失に発展しかねない。
経営支援の仕事には、相談・交渉・現場対応のように人が必要な部分と、事務処理、資料作成、分析、人事労務管理のようにAIエージェントが置き換えやすい部分が混在している。後者は契約の人員や工数を減らし、病院自身が低費用で処理する方向に進む。会社が独自の医療情報基盤を握り、顧客が他社に移れないという定量的な証拠は乏しい。高齢化による需要増を、そのまま同社の売上増と考えるのは危険である。
蓄電所にも安定した利幅は保証されていない。電力価格の差や需給調整市場の単価が下がれば、投資額が大きいまま収益だけが縮む。更新時には建設費が上昇し、減価償却費以上の現金が必要になる。米国SunPowerへの出資も、既存株主から見れば事業の不確実性をもう一段増やす投資である。
過去10年の売上縮小、繰り返された赤字と増資、関連会社の整理を踏まえると、資本配分の実績を高く評価することは難しい。新株予約権の全額行使による希薄化は大きく、成功した場合の利益も新しい株主と分け合う必要がある。反対に行使されなければ調達資金が不足し、設備投資を縮小する可能性がある。上場維持基準を満たせない場合の市場流動性の喪失も、少数株主には深刻な問題となる。
どちらに重みを置いたか
医療機関の経営支援という仕事の必要性と、蓄電所が新たな利益源になる可能性は認める。しかし、契約病床の減少、医療機関向け債権の回収リスク、海外出資、潜在的な希薄化は、いずれもこの会社に固有の問題である。中立では成長計画の一部が実現するものの、株主が求める資本コストには届かないと考えた。確率は楽観側30%、中立31%、悲観側39%とした。悲観側をやや厚くするのは事業の縮小実績と投資先の不確実性のためであり、AIによる縮小は主に数量と長期成長率に織り込み、確率や資本コストで重ねて罰してはいない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 215 円22 億円(+ 還元の換算額還元の合計 13 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 75 円8 億円、今との差 −74.0%、 期待の年率 −2.4%(資本コスト 12.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 464 円48 億円 | 31 円3 億円 | +71.3% | +5.7% | 59 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 259 円27 億円 | 17 円2 億円 | −4.5% | −0.5% | 50 円5 億円 |
| 中立 | 31% | 191 円20 億円 | 17 円2 億円 | −28.0% | −3.4% | 65 円7 億円 |
| やや悲観 | 25% | 150 円16 億円 | 3 円0 億円 | −47.3% | −6.2% | 38 円4 億円 |
| 悲観 | 14% | 115 円12 億円 | 2 円0 億円 | −59.5% | −8.7% | 16 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 215 円22 億円 | 13 円1 億円 | −21.1% | −2.4% | 228 円24 億円 |
今の株価時価総額 289 円30 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 医療の取引拡大と蓄電所6基の成功 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 464 円48 億円
医療機関の経営支援では、失った提携先を新規契約で補い、物理的な支援病床数を回復させる。事務作業はAIによって大幅に省力化されるが、現場の再建支援や専門家による交渉が残り、より広い病院網を少人数で支えられるようになる。AI自体の販売収入は実証されていないため、事務の業務量換算数量は現在を超えない。
医療機器販売では、福山医療器が既存の提携病院以外へ販路を広げ、医療用品の継続供給と保守サービスを組み合わせる。蓄電所は6基まで増え、電力取引の実務と設備の保守管理を標準化する。追加投資には新株予約権の行使資金も充てるため、事業全体の利益は伸びるが、新たな株主とその利益を分け合う。
米国SunPowerへの出資が重大な損失を生まず、海外での協業も限定的ながら成果につながる。上場維持の問題は解消し、地域医療と電力設備という異なる事業を管理できる経営体制が整う。ただし、蓄電所の更新投資と医療機器販売の運転資金が必要であり、売上が増えても自己資本利益率は資本コストを大きく超えない。
- 医療機関の経営・人事労務支援:数量 4,820(年間の経営支援業務量を換算した病床数(床相当))× 価格 0.00(業務量換算1床当たりの年間報酬(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。経営支援の業務量換算4,820床、単価は約1.34倍。AIで事務工程は減るが現場支援が残る。
- 医療機器・医薬品等の販売:数量 1,600(年間の代表的な機器・医療用品納品案件数(件相当、推計))× 価格 0.02(代表的な納品案件1件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。外部販路開拓が大きく成功し、代表納品案件数は約2.25倍になる。
- 保有不動産の賃貸:数量 2.0(年間収益を生む保有賃貸物件数(件))× 価格 0.90(物件1件当たり年間賃料売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。既存2物件の入居が続き、家賃は概ね物価上昇に沿う。
- 系統用蓄電所事業:数量 6.0(年間を通じて営業する蓄電所施設数(基))× 価格 2.90(蓄電所1基当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 7 億円。6基が安定稼働し、需給調整市場の採算と運用効率が想定以上に維持される。
倍率:資本コストk=8.25%。純利益6.5億円に対する事業自己資本の収益率は資本コストを下回るため、再投資の超過利益を認めず、PER上限1÷k=12.12倍をそのまま使用する。事業の純利益から余剰現金9億円の税後利息1.4%を除き、現金の株主帰属価値75%を別に足す。時価総額は会社全体84.00億円で、潜在株式行使後の既存株主の取り分はholder_shareで別に反映する。
確率:医療機器販売先の大幅な拡大と蓄電所6基の安定収益化が同時に必要である。資金調達と設備稼働の進展は好材料だが、いずれも10年間の実績がなく、成功を当然とはできない。
やや楽観 18% 蓄電所4基が軌道に乗り医療も回復 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 259 円27 億円
医療機関との提携は再び拡大するが、採算の悪い支援契約は整理し、対象病院の質を優先する。AIエージェントによって経理、資料作成、人事労務の事務作業が減るため、収益の源泉は病院の現場改善と専門家による支援へ移る。業務量換算の数量は現在より少なく、単価の引き上げも医療機関が受け入れられる範囲にとどまる。
福山医療器は既存の地域以外にも販売を広げ、医療機器の定期供給と保守を積み重ねる。賃貸不動産は保有を続け、病院関連の資産を無理に買い増さない。蓄電所は4基が稼働し、電力市場の単価低下を設備運用の効率化である程度補う。
新株予約権は全額行使され、調達資金によって借金を増やさずに設備投資を行う。追加された自己資本に対して利益の伸びは限定的であり、株主の取り分も薄まる。米国SunPowerへの投資は大幅な減損を避けるが、利益を押し上げる主要因にはならない。成長は実現するものの、資本効率が高い会社へ変わったとまでは言えない。
- 医療機関の経営・人事労務支援:数量 4,300(年間の経営支援業務量を換算した病床数(床相当))× 価格 0.00(業務量換算1床当たりの年間報酬(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。業務量換算は現在の約0.89倍。事務代替と現場支援の維持を両立する。
- 医療機器・医薬品等の販売:数量 1,100(年間の代表的な機器・医療用品納品案件数(件相当、推計))× 価格 0.02(代表的な納品案件1件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。地域外顧客を増やし、実質案件数を約1.55倍にする。
- 保有不動産の賃貸:数量 2.0(年間収益を生む保有賃貸物件数(件))× 価格 0.87(物件1件当たり年間賃料売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。2物件を維持し、賃料は物価に概ね連動する。
- 系統用蓄電所事業:数量 4.0(年間を通じて営業する蓄電所施設数(基))× 価格 2.55(蓄電所1基当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 4 億円。計画の4基が稼働するが、施設当たり売上は2031年計画より低い。
倍率:資本コスト8.25%に対して長期の事業ROEは約3%であり、再投資による超過価値は認めない。PERは1÷8.25%=12.12倍の上限そのものとする。余剰現金15億円の利息を純利益から除き、現金の75%を別途評価する。会社全体の時価総額46.88億円を算出し、株式希薄化はholder_shareで処理する。
確率:2031年の4基計画の達成と、医療機器販売の着実な成長を想定する。会社計画に沿った現実的な上振れだが、病床数減少と初期の設備投資負担を乗り越える必要がある。
中立 31% 医療支援は細り蓄電所3基が収益を補う 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 191 円20 億円
医療経営支援の必要性は続くが、地方の病院の統廃合と顧客の入れ替わりで、同社の契約基盤は大きく伸びない。病院の管理業務ではAIエージェントが経理、労務、報告書の作成を代替し、人が提供するサービス量は減る。経営再建の相談や現場調整は残るものの、実質の業務量換算は2026年3月期の約7割になる。委託単価は上昇するが、医療機関の厳しい予算のため物価の上昇には届かない。
医療機器の販売は、物理的な納品・保守が残るため市場を維持し、緩やかに顧客を増やす。不動産は2物件の賃貸を続ける。蓄電所は3基を通年稼働させるが、電力価格差や需給調整市場の収入は会社の当初計画より小さくなる。
本社費は物価上昇を受けて増える一方、経営支援事業の縮小に合わせて業務を合理化する。海外への出資から大きな継続利益は得られず、追加増資による株主価値の創出も確認できない。新株予約権は行使されない筋書きとし、事業は存続して黒字を保つが、資本を十分に生かせない状態が続く。
- 医療機関の経営・人事労務支援:数量 3,500(年間の経営支援業務量を換算した病床数(床相当))× 価格 0.00(業務量換算1床当たりの年間報酬(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替により数量は0.725倍、価格は1.24倍。事務工数の削減を営業利益率に反映する。
- 医療機器・医薬品等の販売:数量 820(年間の代表的な機器・医療用品納品案件数(件相当、推計))× 価格 0.02(代表的な納品案件1件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。医療機器の実質納品案件数は約1.15倍、競争により単価の上昇は物価を下回る。
- 保有不動産の賃貸:数量 2.0(年間収益を生む保有賃貸物件数(件))× 価格 0.84(物件1件当たり年間賃料売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。2物件を継続賃貸し、修繕・管理費の上昇を織り込む。
- 系統用蓄電所事業:数量 3.0(年間を通じて営業する蓄電所施設数(基))× 価格 2.20(蓄電所1基当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。3基稼働。競争と市場制度の変更により1基当たり売上は計画を下回る。
倍率:事業純利益1.4億円、自己資本86.1億円でROEは約1.6%にとどまり、資本コスト8.25%を下回る。成長投資の超過利益は評価せず、正当化PERの上限1÷k=12.12倍をそのまま採用する。余剰現金5億円の税後利息0.07億円を除いた事業利益にPERを掛け、現金の75%を別に加えて時価総額19.87億円とする。
確率:過去の病床減少実績、医療機器の販路拡張余地、蓄電所の初期実績を総合した中心シナリオ。2031年の会社計画を全面的に達成するとは前提にしない。
やや悲観 25% 病院の契約減少と蓄電所の低採算が重なる 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 150 円16 億円
地方病院の再編が進むなかで、同社との支援契約は減少し、経営支援の業務量も縮む。AIエージェントにより管理業務の一部を医療機関が内製化し、従来の事務委託から得られる収益が減る。病院の経営が厳しくなるほど貸付金の回収に時間を要し、受託料の回収遅延も増える。
医療機器の納品は継続するが、顧客が購入を抑制し、価格競争によって利幅が薄くなる。保有不動産では賃料の改定が遅れ、維持管理費だけが上がる。蓄電所は2基を稼働させるものの、需給調整市場の単価が低下し、減価償却と保守費用の負担を十分に吸収できない。
固定費を削るため、本社機能や不採算事業を縮小する。それでも全社は営業赤字が続く。SunPowerへの出資や病院向け債権から一部の価値を回収できない可能性が高まり、経営の関心は成長投資より資産保全へ移る。株主還元はほぼ止まり、会社が保有する換金可能な資産の価値が下支えになる。
- 医療機関の経営・人事労務支援:数量 3,000(年間の経営支援業務量を換算した病床数(床相当))× 価格 0.00(業務量換算1床当たりの年間報酬(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。AI代替と顧客流出により数量0.62倍、低採算の契約が増えて利益率も悪化する。
- 医療機器・医薬品等の販売:数量 680(年間の代表的な機器・医療用品納品案件数(件相当、推計))× 価格 0.01(代表的な納品案件1件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。納品案件が減り、競争で採算が悪化する。
- 保有不動産の賃貸:数量 2.0(年間収益を生む保有賃貸物件数(件))× 価格 0.74(物件1件当たり年間賃料売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。賃料の上昇が遅く、修繕費負担が増える。
- 系統用蓄電所事業:数量 2.0(年間を通じて営業する蓄電所施設数(基))× 価格 1.60(蓄電所1基当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。電力市場収益が大幅に低下し、設備収益率が悪化する。
倍率:継続赤字のため利益にPERを掛けず、換金可能な資産の税後回収価値から評価する。床となるPBRは将来の積み上がった自己資本74.1億円や増資後の75.9億円ではなく、2026年3月期末の現在の自己資本71.3億円に掛ける。71.3億円×0.2182=約15.56億円であり、過去の市場PBRの底を根拠としていない。現金、賃貸不動産、病院向け貸付金、蓄電池設備の税後売却・回収価値の合計15.4億円を下回らない。
確率:既に医療機関との提携数が減少していること、蓄電所の収益が市場価格と制度に依存することから、中心より弱い展開にも相応の確率がある。
悲観 14% 経営支援事業の構造的縮小と投資損失 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 115 円12 億円
医療機関の経営再編が進み、同社の主要顧客が他の支援会社や病院グループへ移る。事務受託はAIエージェントによる代替で数量・単価ともに厳しくなり、経営再建の高付加価値業務も十分に獲得できない。病院に対する貸付金は一部回収不能となり、委託料の債権にも貸倒れが発生する。
医療機器販売は小規模な地域事業として残るが、価格競争でほとんど利益を出せない。不動産の一部を処分して運転資金を確保するため、賃貸収入も縮む。蓄電所は1基を残すだけとなり、電力市場での採算悪化と設備の修繕費で営業赤字になる。
米国SunPowerへの出資価値が大きく損なわれ、病院向け債権の追加引当と合わせて、10年間の累積損失は単純な最終年度の利益から予測する額より深くなる。本社費を削減しても全社の赤字は止まらない。市場での信用が回復せず、上場維持にも問題が生じる場合、少数株主は企業の清算を強制できない。残る株主価値は、実際に換金できる不動産や設備、現金に大きく依存する。
- 医療機関の経営・人事労務支援:数量 2,000(年間の経営支援業務量を換算した病床数(床相当))× 価格 0.00(業務量換算1床当たりの年間報酬(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。支援業務の数量が現在の約0.41倍に縮み、AI代替と病院予算削減により価格もほぼ据え置きとなる。
- 医療機器・医薬品等の販売:数量 480(年間の代表的な機器・医療用品納品案件数(件相当、推計))× 価格 0.01(代表的な納品案件1件当たり売上高(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。現物の販売は残るが、仕入れ競争と顧客減少で利益をほぼ失う。
- 保有不動産の賃貸:数量 1.0(年間収益を生む保有賃貸物件数(件))× 価格 0.60(物件1件当たり年間賃料売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。資金確保のため1物件を売却し、残る物件の収益も細る。
- 系統用蓄電所事業:数量 1.0(年間を通じて営業する蓄電所施設数(基))× 価格 0.70(蓄電所1基当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。残る設備の市場取引収益が低迷し、運転費用と償却を回収できない。
倍率:継続赤字のためPERで評価できず、2026年3月期末の現在の自己資本71.3億円を基準にPBR0.1682倍とすると約11.99億円となる。将来の積み上がった自己資本46.4億円や増資後の75.9億円に床の倍率を掛けることはしない。これは過去の安値PBRではなく、現金・不動産・病院向け債権・蓄電池設備を厳しい売却条件で回収した価値約11.8億円に基づく。10年間に病院貸付金・海外株式等の減損を含む累積純損失約29.3億円を見込み、自己資本を46.4億円まで減らす。
確率:契約病床数の減少が止まらず、医療機関向け債権と海外出資の双方に損失が出る複合シナリオ。必ず起きるとは考えないが、過去の赤字と資本配分の変遷から無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
医療機関の経営・人事労務支援
医療機関の経営指導、管理業務の受託、人事労務、業務改善、事業承継支援など。収益の中心は継続的な役務報酬であり、事務・コンサル部分にはAIエージェント代替リスクがある。
| 数量年間の経営支援業務量を換算した病床数(床相当) | 価格業務量換算1床当たりの年間報酬(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,826 | 0.00 | 10 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3,500 | 0.00 | 9 | 3 |
取り方:2026年3月期の医療関連事業売上約18.69億円から福山医療器の医療機器等販売相当約8.52億円を除き、残額10.17億円を経営支援・人事労務等の役務と推計した。会社開示のアライアンス先4,826床を数量の代替指標とし、10.17億円÷4,826床で1床当たり年間約21.1万円とした。子会社間取引や提携先以外への売上があるため、正確な契約単価ではない。営業利益2.70億円は医療セグメント利益3.19億円の推計配分であり非開示値。AIエージェント代替の型は人月・工数型で、独自の記録基盤や低解約率などの証拠が2つ以上確認できず、『記録の正本』型には分類しない。2036年中立の業務量は現状の0.725倍、単価は1.24倍、2036年より先のこの業務の名目成長率は0%とする。
医療機器・医薬品等の販売
福山医療器などによる医療機器、医薬品、介護用品等の販売・修理・点検。現物の供給と現場対応が中心で、医療経営支援の事務部分とは区別する。
| 数量年間の代表的な機器・医療用品納品案件数(件相当、推計) | 価格代表的な納品案件1件当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 710 | 0.01 | 9 | 0 |
| 10 年後 中立 | 820 | 0.02 | 12 | 1 |
取り方:福山医療器の売上規模約8.52億円を起点に、平均売上120万円の納品案件約710件相当と換算した。実際の納品件数と単価は会社が開示していないため、120万円は分析上の代表単価であって実績の平均価格ではない。厚生労働省の2024年の国内医療機器出荷額約4兆7,195億円との単純比率は約0.018%だが、製造販売業者の出荷額と卸・小売売上高では取引段階が違い、厳密なシェアではない。営業利益0.49億円は医療セグメントからの推計配分。現物販売・修理はAIエージェント代替の人月型には該当しない。
保有不動産の賃貸
保有する商業施設等の賃貸。旧来の不動産開発から縮小した事業で、売却も選択肢になる。
| 数量年間収益を生む保有賃貸物件数(件) | 価格物件1件当たり年間賃料売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 0.67 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 0.84 | 2 | 1 |
取り方:会社が保有する主要商業施設2件を代表的な物件単位とし、不動産関連事業売上1.34億円を2件で割った。物件別の賃料は開示されておらず、0.67億円は平均換算額。セグメント利益は約0.49億円。医療経営支援のAI代替型には該当しない。将来の更新工事や空室による収益変動を営業利益率に反映する。
系統用蓄電所事業
電力市場と需給調整市場での蓄電池の運用による売買差益・調整力提供収入。2026年3月期時点では立ち上げ前の新規事業である。
| 数量年間を通じて営業する蓄電所施設数(基) | 価格蓄電所1基当たり年間売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 2.61 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 2.20 | 7 | 2 |
取り方:2026年3月期には通年稼働施設がないため実績売上は0。価格2.605億円は2026年6月公表の2031年3月期計画『4施設、売上10.42億円』から逆算した計画上の1基当たり売上であり、実現済みの価格ではない。2036年の数量は実際の施設数、価格は需給調整・電力市場で稼ぐ年間売上で測る。市場参加者の増加と制度変更により、物価が上がっても収益単価が下がることがある。設備の実体を持つ事業なので人月・席課金のAI代替型には該当しない。
リスクと懸念
AIエージェント代替による業務受託の縮小
経営コンサルティング、人事労務、資料作成、事務処理などは、人の工数を収益源にする限りAIエージェントによる代替にさらされる。病院が同じ業務を少ない人員で内製化すれば、契約当たりの受託額が下がる。独自データ基盤、低解約率、値上げ実績といった堀の証拠は十分ではないため、中立で業務量換算を10年で約0.73倍とした。
支援病床の減少と医療機関向け債権
支援先は2026年3月末の4,826床から9月には4,189床へ減少した。病院の経営悪化や提携解消によって委託料が減るだけでなく、資金支援先の貸付金や未収金の回収が難しくなる。2026年3月期の貸付金等には多額の残高と貸倒引当金があり、通常のコンサル会社より顧客の信用悪化が財務に直結しやすい。
蓄電所の市場単価と設備更新
蓄電所の年間収益は電力の価格差、需給調整市場の取引単価、稼働率に左右される。市場参加者の増加や制度改定で単価が下がっても、設備取得費と保守費はすぐには減らない。既存設備の減価償却額は取得時の建設費に基づく一方、将来の電池交換や更新工事は物価上昇後の価格になるため、会計利益と実際の現金収支が乖離しうる。
海外出資と資本配分の失敗
2026年9月の米国SunPowerへの約5.45億円の出資は、基準時点の時価総額約30億円に対して大きい。同社の財務には懸念があり、グロームも株式評価損の可能性を開示した。医療事業が安定していない時期に、新分野への投資と海外株式取得が重なることで、余裕資金を株主に返す選択肢が狭まり、投資失敗時の損失も集中する。
潜在株式による既存株主の希薄化
2026年5月に135万7,500株の増資を実施したうえ、最大769万2,500株の新株予約権が発行されている。すべて行使された場合、基準時点の既存株主の持分割合は約57.5%になる。行使資金は会社に入るため希薄化だけを損失とはできないが、調達した資本から資本コストを超える利益を生まなければ、事業の成長が既存株主の価値増加につながらない。
上場維持基準と市場流動性
2026年3月末の時価総額が東証グロース市場の維持基準40億円を下回り、2027年3月末まで改善期間に入っている。改善できず審査でも適合が確認できなければ上場廃止となる条件付きの状態であり、すでに廃止が決定しているわけではない。市場区分変更の準備は進むが、未達の場合は売買の流動性と少数株主の出口に重大な影響が生じる。
医療政策・許認可・ガバナンス
診療報酬の抑制や医療機関の人手不足は、経営支援への需要を増やす一方、顧客が支払える委託料を削る。医療機器販売、職業紹介、貸金業にはそれぞれ法令対応が必要であり、内部管理が不十分なら事業継続に影響する。過去の関連会社の整理や事業転換を考えると、成長の数字だけでなく、債権管理と投資案件の審査体制を継続して確認すべきである。
今後の分かれ目
- アライアンス先の病床数が再び5,000床を超え、同一条件で1年以上増加が続いたら
- 医療関連事業の顧客基盤が回復しつつある証拠と見て、中立の業務量を引き上げる。ただし、業務委託料と貸付債権の回収状況が改善していることも同時に確認する。
- 経営支援の契約継続率や契約単価、AI導入後の顧客当たり利益が数値で開示されたら
- 事務受託の数量減少と単価の前提を再検討する。独自の記録基盤や顧客の高い切替費用が複数の証拠で確認できれば、当該部分に限り堀の評価を引き上げる。
- 蓄電所4基が稼働し、年間売上10億円前後と設備投資後の十分な現金収益を実証したら
- やや楽観の確率を上げる。売上だけでなく、償却、保守、将来の電池更新費用、資金調達費用を差し引いた投資利回りが資本コストを上回るかで判断する。
- 需給調整市場の収益単価が低下し、施設当たり売上が年間2億円を継続的に下回ったら
- 蓄電所の追加投資を高く評価せず、中立の設備利益率と施設数を引き下げる。既存設備の減損や更新費用を確認し、悲観側へ確率を移す。
- SunPower株式に大きな評価損が発生するか、病院向け債権の追加貸倒引当が増えたら
- 自己資本の減少と残存する自由現金を反映し、悲観の資産の床を見直す。特に投資損失を穴埋めする追加の株式発行が必要になるかを確認する。
- 第6回新株予約権が大きく行使され、発行済株式数が急増したら
- 行使によって会社へ入った現金と新しい投資先の利益を検証したうえで、既存株主の取り分を更新する。会社の利益増加だけでなく希薄化後の持分価値を比較する。
- 2027年3月末の上場維持基準に適合せず、監理銘柄指定または上場廃止の正式決定が出たら
- 市場で長期保有するという前提を根本から見直す。市場区分変更や他の具体的な上場維持策の成否、少数株主への現金還元の有無を優先して確認する。
見ておくもの
- アライアンス先医療機関の施設数・病床数の四半期推移と契約解消の理由
- 医療経営支援の委託報酬、契約継続率、病床当たり売上の変化
- 医療機関向け貸付金・未収金・貸倒引当金の残高と回収実績
- 福山医療器の売上高、実際の納品件数、粗利益率と提携先以外への販売比率
- 蓄電所の実稼働基数、施設別売上、償却後利益、営業キャッシュフロー
- SunPower出資の評価損益と提携から実際に生じた契約・利益
- 第6回新株予約権の行使株数、追加調達額、発行済株式総数
- 2027年3月末の上場維持基準の適合状況とスタンダード市場への変更申請結果
- 2031年3月期の売上高51.58億円・営業利益6.61億円の計画達成状況
- 配当性向15%方針の実施状況と株主還元の継続性
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約30.18億円や過去のPBRから10年後の価値を逆算していない。2026年3月期の医療関連事業を役務と医療機器販売に分け、役務は病床当たり委託料、販売は代表納品案件数と単価で評価した。不動産は賃貸物件数、蓄電所は施設数と年間売上で置き、実質数量と名目価格を分離した。AIエージェント代替は経営支援の数量と長期成長率に反映し、資本コストの寿命や悲観確率へ同じ理由を二重に加えていない。資本コストは8.25%であり、楽観から中立のROEがこれを下回るため、PERは正当化上限の1÷k=12.12倍そのものとした。現金は運転資金、蓄電所投資、海外出資を控除した余裕資金だけを別に評価している。悲観側のPBRは積み上がった将来の自己資本や増資後の出発自己資本ではなく、2026年3月期末の現在の自己資本71.3億円に掛け、売却可能な資産の税後回収価値と照合した。楽観側の新株予約権行使資金は自己資本に加え、既存株主の持分57.5%を別に反映する。2027年4月以後に始まる事業年度からの新リース会計基準による表示変更は、家賃を含む実質の現金負担を減らすものとは見なさない。2026年10月22日の株価・株数を最後に比較した結果、確率加重した10年価値は約11.05億円、時価総額との差は約−63.4%であり、判定は割高となる。
資本コスト 12.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本資本コスト7.5%に、利益の不安定さと値決め力の弱さを加え、純現金の厚さを差し引いた8.25%。個別の投資失敗や上場維持リスクは確率と各筋書きで扱い、資本コストに重ねて加算しない。