結論
毎日コムネットは、学生向けの賃貸マンションと寮を地主から借り上げて運営する会社だ。管理は 235 棟・12,810 戸で、入居は春に満室で始まる。筆者は、この安定した家賃収入に対して今の株価は低すぎると見る。10 年後の価値は、今の時価総額を大きく上回る。
稼ぎの中心は運営部門だ。2026 年 5 月期の売上総利益 73 億円のうち 44 億円を占め、1 戸あたり年 34 万円ほどの粗利が毎年積み上がる。新規オープンは年 300〜450 戸、家賃は物価に沿って上がる。中立の筋書きでは、管理戸数が 1.2 倍、家賃が 1.34 倍になり、利益は今の 1.4 倍に育つ。
利益のぶれは、開発物件の売却で生まれる。2026 年 5 月期は売却が重なって売上が 22% 増えたが、粗利は 5.6 億円にすぎない。会社の 2027 年 5 月期計画は売上が 4% 減で、営業利益はほぼ横ばいだ。見るべきは売却でなく運営の積み上げである。
懸念は 3 つある。借り上げ家賃は年 100 億円規模の固定の約束で、満室が崩れると差益が一気に削れる。18 歳人口は減っていく。支配株主がいて、少数株主の取り分は経営の都合に左右されうる。それでも大学入学者は 60 万人台で安定し、首都圏の在学者は増えている。構造的な負けは 1 割強の確率で起こりうる、と筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの商売があるか」を問う。学生が住む場所は、大学がある限り要る。毎年春に新入生が入れ替わり、4 月に満室で始まる商売は、景気に左右されにくい。堀は深くないが、家賃は物価に連れて上がり、現金は積み上がる。
次に、稼ぎのうち株主の手に残る分を見る。運営は借入と固定の借り上げ家賃を使う商売だが、自己資本は厚く、配当性向も 35% 以上と明確だ。株主が受け取れる利益は、純利益の 19 億円前後。時価総額は 152 億円で、利益の 8 倍しかない。
10 年後の純利益を 27 億円と見ると、資本コスト 7.25% の会社に妥当な倍率は 12〜13 倍。10 年の還元を加えて割り引いても、今の時価総額を上回る。悲観の筋書きでも、在庫と建物と現金で 100 億円規模の資産が残る。
気にかかるのは、固定家賃の約束と、経営者の資本配分だ。開発物件を自社で抱える額が膨らむと、借入が増え、金利 3.5% の負担が利益を削る。新事業への投資が失敗したときの傷も、小さな会社には軽くない。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 つに分かれる。不動産ソリューション事業が売上の 8 割強、学生生活ソリューション事業が残りだ。
中心は不動産のマネジメント部門。地主(法人 9,605 戸・個人 2,217 戸)の土地に学生向けの建物を提案し、完成後は一括で借り上げる。入居者の募集、家賃の集金、建物の管理は会社が担う。食事付きの寮「カレッジコート」は 66 棟 5,453 戸で、全体の 43% になった。食事付きは単価が高く、学生の生活費の負担も軽い。
開発部門は、その建物を自社で企画し、竣工後に投資家へ売る。売ったあともサブリースで運営を続けるので、売却は運営戸数を増やす入り口になる。2026 年 5 月期の売上は 59 億円だが、粗利は 5.6 億円と薄い。稼ぐのは売却でなく、あとに残る運営だ。
エネルギー部門は太陽光発電の 5 施設(合計 8.4 メガワット)で、売上は 3 億円ほど。固定価格の買い取りは 2034〜35 年に終わる。
学生生活ソリューション事業は 2 つ。課外活動部門は大学サークルの合宿・旅行を企画し、売上は 15 億円。人材部門は子会社のワークス・ジャパンが企業の新卒採用の広報と選考管理システムを売り、売上は 32 億円だ。2 部門の営業利益は合わせて 4 億円弱にとどまる。
全社の本社費が営業利益を約 10 億円押し下げる。賃上げでこの費用は増え続ける。
優良さと弱いところ
強みは運営の現場力だ。毎年春に満室で始まる学生賃貸は、ほかの賃貸より空室の読みやすい商売といえる。大学との提携(青山学院大学・日本大学・関東学院大学など)や、東京大学・慶應義塾大学の専用寮の運営といった実績が、地主と大学の信頼になっている。1994 年から学生向け賃貸の管理を続けてきた経験も効く。
ただし堀は深くない。学生マンションの家賃は地域の相場が決め、値決めの力は限られる。大東建託や大和リビングなどのサブリース大手が学生向けにも手を伸ばしうるし、専業のジェイ・エス・ビーなどとも競る。会社が持つのは、大学との関係と運営データという地味な優位だけだ。
資本の使い方は堅実だ。自己資本比率は 50%、純有利子負債はほぼゼロ。連結配当性向 35% 以上を 2019 年度から続け、2026 年 5 月期は 50 万株(4.6 億円)の自社株買いも実施した。ROE は過去 10 年の中央値で 12.6% と、資本コストを上回る。
弱みは 3 つある。借り上げ家賃という固定の約束、利益の小さい学生生活事業を抱えること、支配株主の存在だ。単身社会人向けやシニア向けの新事業は、まだ収益の柱になっていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
学生向け賃貸の需要は、大学生の数で決まる。18 歳人口は 2015 年の約 120 万人から 2025 年の約 110 万人へ減ったが、大学入学者は 62〜64 万人でほぼ変わらない。進学率の上昇が人口減を埋めてきた。首都圏の大学在学者も 117 万人から 121 万人へ、女子学生を中心に増えている。
10 年先はどうか。18 歳人口はさらに減り、進学率の上昇余地も小さくなる。筆者は、後半の 5 年に全国の大学入学者が 1 割ほど減ると見る。首都圏は大学が集まるので、減り方は小さい。会社は地方の国立大学周辺の物件も運営しており、そこから先に空室が出やすい。
供給の側では、建築費の上昇が効く。新築のコストは 2021 年以降で 2〜4 割上がり、新規の供給は絞られる。既存の物件を運営する会社には有利で、家賃は物価並みに上げやすい。会社も鉄骨造や木造に挑み、建築費を抑えようとしている。
もう 1 つの変化は、食事付き寮の拡大だ。親の安心感と学生の生活費の負担軽減を同時に満たす。単価が高く、会社の差別化の中心になる。
学生生活の側では、サークルの合宿・旅行がコロナ前の 96% まで戻り、貸切バスの原価上昇も価格に転嫁できている。人材部門は企業の中途採用の需要を追い風にするが、採用広報の制作は AI で置き換わる部分も出てくる。
資本政策と M&A
還元は連結配当性向 35% 以上が方針だ。2026 年 5 月期は性向 35% に当たる配当を出し、2027 年 5 月期は微増の計画である。2026 年 1〜5 月には 50 万株、4.6 億円の自社株買いも実施した。10 年の還元は純利益の 4 割前後と見る。
借入は 2026 年 5 月期に 40 億円返済し、現金と借入がほぼ釣り合った。開発用の土地と建物(販売用不動産)が 89 億円あり、売却で現金に戻る在庫だ。現預金 92 億円には預かった敷金などが混じるため、余った現金としては足さない。
M&A は目立たないが、中期経営計画は他業種との提携や買収の検討をうたう。単身社会人向けやシニア向けの住宅を新しい柱にする計画で、資本の使い方の論点はここになる。
支配株主がいる。2026 年 8 月に「支配株主等に関する事項」を開示した。会社の判断が少数株主の利益に沿うかは、見ておきたい。株主優待はベネフィット・ステーションの会員サービスで、費用は年 1 億円に満たず、還元には足さない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
運営の積み上げが利益を押し上げ続ける。管理戸数はこの 2 年、毎年 380 戸ほど増えた。2029 年に 1.5 万戸という目標があり、新規はほとんどが単価の高い食事付き寮だ。大学入学者は安定し、建築費の上昇で新築の供給が絞られるので、既存の運営会社には家賃の上げ余地が出る。
1 戸あたりの粗利は年 34 万円。管理戸数が 1.2 倍、家賃が 1.34 倍になれば、運営の営業利益は 32 億円から 48 億円へ増える。本社費を差し引いても、純利益は 27 億円になる。
資本も軽い。純現金に近く、配当性向は 35% 以上、自社株買いまで実施した。ROE は 13% と資本コストを超える。時価総額は純利益の 8 倍、配当利回りは 4% を超える。学生向けという地味さと、小型で売買が薄いことが生んだ過小評価だ。
単身社会人向けやシニア向けが立ち上がれば、18 歳人口の減少も補える。支配株主が還元を保つ限り、少数株主にも利益は回る。
慎重な見方
良い数字は波の上に立っている。2026 年 5 月期の増益は、開発物件の売却の上振れと満室の運営に支えられた。2027 年 5 月期の会社計画は売上 4% 減で、営業利益は 0.4% 増にとどまる。中間期は営業利益が 4 割減る計画だ。
運営は、借り上げ家賃という固定の約束の上にある。年 100 億円規模と推定する家賃を、満室でなければ回収できない。空室が 5 ポイント増えるだけで運営の差益は 2 割以上削れる。地主との更新で増額を求められれば、さらに削られる。
学生の数は構造的に減る。18 歳人口は減り続け、地方の国立大学周辺では募集が苦しくなる。大手が学生向けにも入れば、食事付き寮の優位も長続きしない。
開発物件の在庫は 89 億円ある。金利が上がれば買い手の利回り要求が上がり、売却価格が下がる。新リース会計基準で借り上げ家賃が貸借対照表に載ると、自己資本比率は大きく下がって見える。人材部門は AI で採用広報の制作が置き換わる。支配株主がいる以上、少数株主の取り分は経営判断にも左右される。
どちらに重みを置いたか
運営の稼ぎは固定家賃の約束と引き換えの安定で、満室が続く限り崩れにくい。慎重な指摘のうち、固定家賃の重さと人口減は確率を悲観側に 3 割強まで寄せた。それでも、在庫と建物と現金で床が支えられ、時価総額が利益の 8 倍と低いため、強気の言い分がやや強い。確率は、楽観 10%・やや楽観 22%・中立 36%・やや悲観 20%・悲観 12% とした。悲観が 1 割を超えるのは、固定家賃の約束がある以上、満室が崩れたときの傷が深いからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 2,689 円460 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 490 円84 億円)。 今の値に割り戻すと 1,681 円288 億円、今との差 +92.5%、 期待の年率 +13.8%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,566 円782 億円 | 764 円131 億円 | +510.5% | +19.8% | 533 円91 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,852 円660 億円 | 639 円110 億円 | +414.5% | +17.8% | 988 円169 億円 |
| 中立 | 36% | 3,156 円540 億円 | 540 円93 億円 | +323.4% | +15.5% | 1,331 円228 億円 |
| やや悲観 | 20% | 909 円156 億円 | 324 円56 億円 | +41.2% | +3.5% | 247 円42 億円 |
| 悲観 | 12% | 555 円95 億円 | 116 円20 億円 | −23.1% | −2.6% | 81 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,689 円460 億円 | 490 円84 億円 | +264.1% | +13.8% | 3,179 円544 億円 |
今の株価時価総額 873 円149 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 食事付き寮と地方の国立大学周辺で管理戸数が 1.8 万戸へ 利益 39 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 4,566 円782 億円
建築費の上昇で新築の供給が絞られ、学生向けの運営会社に追い風が続く。会社は食事付き寮を軸に、地方の国立大学周辺と単身社会人向けへ広げ、2029 年の目標 1.5 万戸を超えて 2036 年に 1.8 万戸を運営する。食事付きの比率が上がり、1 戸あたりの売上は 1.4 倍になる。
開発は年 4〜5 件を売却して運営戸数の入り口にする。運営の営業利益率は今よりわずかに低い 19.5% で落ち着き、全社の営業利益は 61 億円に達する。純利益は 39 億円。配当と自社株買いで 10 年に 131 億円を株主へ返す。
- 学生マンション運営(借り上げ・管理)と太陽光:数量 18.0(管理戸数(千戸・期中平均))× 価格 183(1 戸あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 329 億円・営業利益 64 億円。18,000 戸(食事付きが 6 割)× 1 戸 1.4 倍、営業利益率 19.5%
- 開発物件の売却:数量 4.5(売却件数(件・年))× 価格 17(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 5 億円。4.5 件 × 1 件 17.2 億円(1.45 倍)、利益率 7%
- 学生生活ソリューション(課外活動・人材):数量 2.1(取引先の数(千件・企業と学生団体の合計の推定))× 価格 312(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 6 億円。件数 2,100 × 1.34 倍、営業利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍。全体の PER 19.26 倍、時価総額 755 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:管理戸数が 10 年で 1.4 倍になる伸び方は、この 2 年の年 380 戸の純増ペースを倍近くに上げる必要がある。単身社会人向けとシニア向けが立ち上がる前提も重なるので 1 割にとどめた。
やや楽観 22% 管理戸数は 1.65 万戸、家賃は物価に連れて上がる 利益 33 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 3,852 円660 億円
1.5 万戸の目標を 2029 年前後に達成し、その後も年 250 戸ほど増やす。食事付き寮が増え、家賃は物価を少し上回って 1.37 倍になる。
開発は年 4 件の売却。学生生活事業は課外活動が回復し、人材が中途採用の需要を取り込む。営業利益は 52 億円、純利益は 33 億円。ROE は 11% 台で資本コストを上回り、還元は 10 年で 110 億円ほど。
中立との差は、新規の純増が年 250 戸から 330 戸に上がることと、運営の営業利益率が 0.5 ポイント高いことだ。会社の中期経営計画が示す 2029 年の売上 300 億円、営業利益 31 億円の道筋にも合う。支配株主が還元を保てば、株主への返しも厚くなる。
- 学生マンション運営(借り上げ・管理)と太陽光:数量 16.5(管理戸数(千戸・期中平均))× 価格 179(1 戸あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 295 億円・営業利益 56 億円。16,500 戸 × 1 戸 1.37 倍、営業利益率 19%
- 開発物件の売却:数量 4.0(売却件数(件・年))× 価格 17(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 4 億円。4 件 × 1 件 16.6 億円
- 学生生活ソリューション(課外活動・人材):数量 2.0(取引先の数(千件・企業と学生団体の合計の推定))× 価格 312(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 5 億円。件数 2,000 × 1.34 倍、営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍。全体の PER 18.81 倍、時価総額 624 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の 1.5 万戸(2029 年)を達成し、その後も小幅に増やす筋書き。計画の進み具合は毎年 +380 戸前後で、達成の可能性は高いが、10 年先まで同じ速度が続くかは読めないので 2 割強にした。
中立 36% 運営は戸数 1.2 倍・家賃 1.34 倍で伸びるが、利益率は少し下がる 利益 27 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 3,156 円540 億円
大学入学者は 60 万人台で横ばいを保ち、首都圏の学生数も大きくは崩れない。会社は食事付き寮を中心に新規を重ね、管理戸数は 1.48 万戸(今の 1.2 倍)になる。家賃は物価並みの 1.34 倍。ただし賃上げと借り上げ家賃の更新で、運営の営業利益率は 18.5% へやや下がる。
開発物件の売却は年 3〜4 件で、運営戸数を増やすための入り口にとどまる。本社費は物価で 1.34 倍に増える。営業利益は 43 億円、純利益は 27 億円。配当性向 35% 以上に自社株買いを加え、10 年で 93 億円を返す。ROE は 10% 弱に下がるが、資本コストは上回る。
- 学生マンション運営(借り上げ・管理)と太陽光:数量 14.8(管理戸数(千戸・期中平均))× 価格 175(1 戸あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 259 億円・営業利益 48 億円。14,800 戸(今の 1.2 倍)× 1 戸 1.34 倍、営業利益率 18.5%(今は 19.6%)
- 開発物件の売却:数量 3.5(売却件数(件・年))× 価格 16(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。3.5 件 × 1 件 15.9 億円(1.34 倍)、利益率 6%
- 学生生活ソリューション(課外活動・人材):数量 1.9(取引先の数(千件・企業と学生団体の合計の推定))× 価格 312(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 5 億円。件数 1,900(人材の制作の一部が AI に置き換わり 5% 減)× 1.34 倍、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍。全体の PER 18.25 倍、時価総額 498 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大学入学者が横ばいで、会社の純増ペース(年 380 戸)が少し鈍る筋書き。強気と慎重の中間で、最も起こりやすい形として 3 割台後半に置いた。
やや悲観 20% 地方の空室が増え、借り上げ家賃の重みで利益が半分に 利益 13 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 909 円156 億円
18 歳人口の減少が地方から効く。募集に苦しむ物件が増え、管理戸数は 1.3 万戸に伸び悩み、入居率は今より数ポイント下がる。借り上げ家賃は更新のたびに上がる一方、入居者の家賃は物価に届かず、1 戸の売上は 1.25 倍にとどまる。
運営の営業利益率は 14% まで下がる。開発物件は買い手が減り、売却は年 2〜3 件に減って利幅も薄い。人材は AI で採用広報の制作が置き換わり、利益率が 5% に落ちる。営業利益は 21 億円、純利益は 13 億円。ROE は 5% 台で資本コストを割る。
配当性向は 35% を守っても、配当の総額は今より小さい。開発の在庫は金利上昇で売却が遅れ、借入が増えて利払いが重い。それでも満室を保つ運営の土台は残り、清算価値に近い崩れ方にはならない。
- 学生マンション運営(借り上げ・管理)と太陽光:数量 13.0(管理戸数(千戸・期中平均))× 価格 163(1 戸あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 212 億円・営業利益 30 億円。13,000 戸 × 1 戸 1.25 倍、営業利益率 14%
- 開発物件の売却:数量 2.5(売却件数(件・年))× 価格 15(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。2.5 件 × 1 件 15.4 億円、利益率 4%
- 学生生活ソリューション(課外活動・人材):数量 1.8(取引先の数(千件・企業と学生団体の合計の推定))× 価格 291(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 3 億円。件数 1,800 × 1.25 倍、営業利益率 5%
倍率:ROE 5.3% は k 7.25% を下回る。RONIC は 6.7% まで薄れ、式の PER は 10 倍。稼ぐ力も弱いので上限の 9 割の 9.0 倍にした。
確率:18 歳人口の減少が地方の国立大学周辺から効き、家賃の上げが物価に届かない筋書き。固定家賃の約束があり下振れが大きい。コロナ禍でも課外活動が止まった実例があるので、2 割に置いた。
悲観 12% 満室が崩れて借り上げ家賃が重荷になり、赤字に沈む 利益 −3 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 555 円95 億円
少子化が加速し、国立大学周辺の物件を中心に入居率が 85% 前後まで下がる。地主との借り上げ家賃を引き下げる交渉も難航し、管理戸数は 1 万戸に縮む。1 戸の売上は 1.1 倍までしか上がらず、運営の営業利益率は 6% に落ちる。
開発物件は買い手がつかず、売却は年 1 件。人材は AI の影響で営業利益がゼロになる。本社費を 1.2 倍に抑えても、営業利益は赤字(マイナス 4 億円)に沈む。配当は 10 年で 20 億円ほどに縮み、自己資本は 200 億円にとどまる。
固定家賃の約束は残るので、売上が落ちても費用は落ちない。新リース会計基準が適用され、貸借対照表の見え方も悪くなる。資本の厚さが、倒産を遠ざける最後の支えだ。それでも株主の取り分は、現金と在庫の売却価値に近づく。
- 学生マンション運営(借り上げ・管理)と太陽光:数量 10.0(管理戸数(千戸・期中平均))× 価格 143(1 戸あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 9 億円。10,000 戸 × 1 戸 1.1 倍、営業利益率 6%
- 開発物件の売却:数量 1.0(売却件数(件・年))× 価格 14(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 −1 億円。1 件 × 1 件 14.2 億円、薄い赤字
- 学生生活ソリューション(課外活動・人材):数量 1.5(取引先の数(千件・企業と学生団体の合計の推定))× 価格 233(1 件あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。件数 1,500 × 1.0 倍、営業利益ゼロ
倍率:赤字で稼ぐ力はほぼ無い。今の自己資本 139.8 億円に 0.68 倍をかけて 95 億円(床の PBR)。値は床の資産 105 億円の内側に収まる。
確率:少子化が加速し、満室を保てなくなる構造的な負けの筋書き。固定家賃の約束が重く、借り上げ運営で行き詰まった業界の前例(レオパレス 21 の施工不良後の入居率低下)もある。1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
学生マンション運営(借り上げ・管理)と太陽光
地主から借り上げた学生マンション・寮を運営し、入居者の募集・集金・管理で稼ぐ。小さな太陽光発電 5 施設を含む。
| 数量管理戸数(千戸・期中平均) | 価格1 戸あたり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 12.6 | 130 | 165 | 32 |
| 10 年後 中立 | 14.8 | 175 | 259 | 48 |
取り方:管理戸数は 2025 年 5 月期末 12,469 戸と 2026 年 5 月期末 12,810 戸の平均 12,640 戸。売上はマネジメント部門 161.5 億円とエネルギー部門 3.3 億円の計 164.8 億円で、1 戸あたり年 130 万円。営業利益は不動産 S 事業の 35.3 億円から開発の推定 3.0 億円を引いた値(推定)。
開発物件の売却
自社で企画した学生向けの建物を竣工後に投資家へ売る。売却後も運営は会社が続ける。
| 数量売却件数(件・年) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 5.0 | 12 | 59 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3.5 | 16 | 56 | 3 |
取り方:売上 59.2 億円。2027 年 5 月期計画は 3 件で 33.9 億円(1 件 11 億円強)なので、2026 年 5 月期は約 5 件相当と推定。営業利益は粗利 5.6 億円から販管費の配分を引いた推定。
学生生活ソリューション(課外活動・人材)
大学サークルの合宿・旅行の企画と、企業の新卒採用の広報・選考管理システム。
| 数量取引先の数(千件・企業と学生団体の合計の推定) | 価格1 件あたり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 2.0 | 233 | 47 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 312 | 59 | 5 |
取り方:課外活動 14.9 億円と人材 31.7 億円の計 46.5 億円。取引先数は人材の公開取引企業約 740 社と学生団体約 1,300 を足した約 2,000 件と推定し、1 件 232 万円とした(推定)。営業利益は学生生活 S 事業の 3.9 億円。
リスクと懸念
固定の借り上げ家賃
地主には空室でも家賃を払う約束をしている。年 100 億円前後と推定する固定の支出に対し、入居が崩れると差益が一気に削れる。空室 5 ポイントで運営の営業利益の 2 割強が消える。景気より人口と競合で決まる点が怖い。
18 歳人口の減少と地方
大学入学者は安定してきたが、18 歳人口は減る。地方の国立大学周辺の物件は、首都圏より先に空室が出やすい。会社は地方の開発を増やす方針なので、新規の物件ほど需要の読みが難しくなる。
開発物件の売却のぶれ
開発の売上は 2025 年 5 月期 24 億円、2026 年 5 月期 59 億円、2027 年 5 月期計画 34 億円と大きくぶれる。販売用不動産は 89 億円あり、金利が上がって買い手の利回り要求が上がれば、売却が遅れ、借入が膨らむ。
新リース会計基準
2028 年 5 月期から、借り上げ家賃の約束が使用権資産とリース負債として貸借対照表に載る。自己資本比率は大きく下がって見え、営業利益の形も変わる。価値は変わらないが、借入の目で見られると資金調達の条件に響く恐れがある。
支配株主
支配株主を持つ会社で、2026 年 8 月に関連する事項を開示している。配当や自社株買い、新事業への投資が少数株主の利益に沿わない決定になりうる。親会社との取引の条件は、毎年の開示で確かめたい。
賃上げと本社費の増加
2026 年 5 月期は基本給 1 か月分の一時金を出し、人件費が営業利益を 1.7 億円押し下げた。運営は人手が要る商売で、賃上げは続く。本社費は 10 億円ほどあり、物価で増え続ける。家賃の上げで吸収できないと利益率が下がる。
人材部門の AI 代替と太陽光の終了
人材部門は採用広報の制作と選考管理システムで稼ぐ。AI エージェントが制作と事務を置き換えると、人月で売る部分が先に縮む。太陽光は 2034〜35 年に固定価格の買い取りが終わり、売上が落ちる。どちらも小さいが、利益の下支えが減る。
今後の分かれ目
- 管理戸数が 2029 年に 1.5 万戸の目標を達成する
- 中立の筋書きが固まり、やや楽観の確率を厚くできる。運営の積み上げが計画どおりと確かめられ、会社の見立てへの信頼が増す。
- 入居率が 95% を下回る期が続く
- 借り上げ家賃の重みが出る。差益が 2 割以上削れ、やや悲観の筋書きに近づく。地方の新規物件の見直しが先になる。
- 開発物件の売却が計画どおりに進まず、販売用不動産が 100 億円を超える
- 借入が増え、金利 3.5% の負担で純利益が減る。売却の遅れが 2 期続けば、資本の使い方への評価を引き下げる。
- 単身社会人向け・シニア向けの住宅で黒字の事例が出る
- 学生人口の減少を補う道が開く。楽観の確率を上げる材料になる。
- 支配株主が少数株主に不利な取引や再編を提案する
- 時価総額の見方を下げる。逆に完全子会社化の提案が出れば、プレミアムがつく可能性がある。
- 新リース会計基準で自己資本比率が 20% 前後まで下がって見える
- 価値そのものは変わらないが、借入の条件と株式の見られ方に影響する。開示の読み方を確かめる。
見ておくもの
- 管理戸数と入居率(年 4 月の満室スタートの可否)
- 開発物件の売却件数と販売用不動産の残高
- 運営の売上総利益(1 戸あたり)と、地方物件の稼働
- 支配株主等に関する事項の開示と、配当性向・自社株買いの方針
- 新リース会計基準の適用時期と貸借対照表への影響
- 大学入学者数・首都圏在学者数の統計
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト 7.25%(基本 7.5% に、固定の借り上げ家賃と値決め力の弱さで +0.5%)と ROE から式で出した。今の株価や過去の PER、同業の倍率は見ていない。中立の ROE は 9.8% と資本コストをわずかに上回る。そこで下限 12.5 倍に近い 12.6 倍を置いた。今の PER 8 倍に寄せていない。
10 年後の数字は、借り上げ家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。新リース会計基準で形が変わる点は、価値には影響しない。償却は今の建物・設備の簿価のままで年 2.5 億円ほど、10 年で 25 億円前後、新規に自社で持つ分だけ新しい建築費で増える。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、借入が増えれば利払い 3.5% が利益を削る。悲観の床は、販売用不動産と建物の売却価値に、預かり金の戻りを差し引いて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→19.26 倍・やや楽観 PER 13.5→18.81 倍・中立 PER 12.6→18.25 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に、値決め力 +0.25% と固定家賃の約束 +0.25% を足して 8.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。