結論
エストラストは、山口県下関を地盤に、山口・福岡・九州の地方都市で分譲マンション「オーヴィジョン」と戸建を建てて売る会社だ。筆者の結論は、PER 4 倍台という見かけの安さほどには割安でない、というものだ。
直近の 2026 年 2 月期は純利益 14 億円と過去最高に並ぶ山だった。建築費の上昇を値段に転嫁でき、引渡し戸数は減っても売上は伸びた。だが利益の大半は 1 年に 400 戸前後のマンションの引渡しに依存する。工期の都合で年ごとに大きく揺れ、2027 年 2 月期の中間は赤字だった。
10 年で見ると、地方都市の分譲の戸数は人口とともに細る。借入は在庫とともに膨らみ、借り換えの金利は 3.5% へ上がる。管理戸数 6,700 戸ほどのストックの稼ぎは堅いが、分譲の波を埋めるには小さい。
親会社の西部ガスホールディングスが株の 52% を持つ。完全子会社化の可能性は上振れの材料だが、余った資金が少数株主に戻る力は弱い。利益が山から平年並みに戻ると見れば、今の値段は本質価値をやや上回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オーナーとして持ち続けたい事業とまでは言いにくい。稼ぎの大半は、土地を買い、建て、売り切る回転型の分譲から来る。売り切れば次の用地を買い直す必要があり、株主の手元に残るオーナー利益は会計の利益より小さい。
安全域の面では、PER 4 倍台、PBR 0.5 倍の見かけは安い。だが利益は山にあり、平年の純利益は 7〜9 億円とみるのが妥当だ。そこに借り換えの金利が加わると、10 年後の稼ぎは今より細る。ためた利益が在庫と借入の上に積み上がるだけなら、ROE は資本コストに届かない。
筆者は、親会社の支配と地方の人口減という二つの重しを考えると、帳簿の自己資本を価値の床とはみない。親会社による完全子会社化は上振れの芽だが、それに賭けて払う値段ではない。値段に見合うかは、平年の利益と借入の重さで測るべきだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は分譲だ。2026 年 2 月期はマンション 404 戸と戸建 68 戸を引き渡し、売上 187 億円、営業利益 21 億円を上げた。全社の売上の 8 割強にあたる。
分譲マンションは山口・福岡・北九州・大分など、地方の中核都市の駅近くに建てる。1 戸の値段は 4,000 万円前後で、買い手は地元の家族と、駅近くへの住み替えを考える世帯が中心とみられる。売上は建物が完成して引き渡した年に一度に立つ。このため着工と竣工の巡り合わせで、年ごとの戸数が 100 戸単位で動く。
残りは三つある。一つは自社で分譲した物件などの管理で、管理戸数は 6,749 戸、売上は 8 億円。二つ目は自社で持つ賃貸物件の家賃で、売上は 5 億円、利益率は 35% と高い。三つ目は「その他」の収益物件などの売却で、2026 年 2 月期は売上 24 億円、利益 4 億円と大きく伸びた。
2027 年 2 月期の中間は引渡しが 47 戸にとどまり赤字だった。ただ通期のマンションの引渡し予定 366 戸のうち 8 割が契約済みで、下期に利益が集まる形だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは弱い。地方都市の駅近くの用地をいち早く押さえる目と、地元での施工と販売の段取りはある。だが土地は入札や仲介で仕入れ、売値はその街の所得と金利が決める。
強みは二つある。一つは地方の中核都市で、大手が来にくい規模の案件を手がけて、20 年近く黒字を続けてきたことだ。営業利益率の最悪は 2008 年の 2.9% で、リーマン危機でも赤字は一度きりだった。もう一つは建築費の上昇を値段に転嫁できたことで、戸数が減っても利益は保った。
弱みは資本の重さだ。マンションは着工から引渡しまで 2〜3 年かかり、その間の在庫を借入で賄う。純有利子負債は自己資本の 1.5 倍あり、ROE 13% の裏には借入の厚みがある。過去 10 年の ROE の中央値は 12% だが、利益が平年並みの年は 6% 台まで落ちた。
経営は親会社の西部ガス出身者と生え抜きが担う。親の信用で借入が安く済む利点がある一方、資本の使い方を少数株主の目線で決める力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方の分譲マンションの市場は、量が細り値段が上がる局面にある。2025 年の新設住宅着工は 74 万戸と 62 年ぶりの低さだった。建築費は 2021 年から 2〜4 割上がり、新築の値段を押し上げた。
九州の中核都市では、福岡市への人の集まりが続く一方、北九州や山口・大分の市部では人口が年 0.5〜1% ずつ減っている。高齢の世帯が郊外の戸建から駅近くのマンションへ住み替える需要は底堅い。だが買い手の数そのものは、10 年で 1〜2 割細るとみるのが自然だ。
値段の側では、建築費の上昇を転嫁できるかが分かれ目になる。地方の所得の伸びは物価に届かず、住宅ローンの金利も上がる。1 戸の値段は 10 年で物価並みの 1.3 倍前後が上限で、それを超えると売れ残りが出やすい。
競合は全国の大手より、地場のデベロッパーと福岡の中堅が中心だ。大手は福岡市の中心部に集まり、エストラストが得意とする地方の中核都市には来にくい。リーマン危機のような谷では、地方の分譲の戸数は 3〜4 割減り、在庫の値引きで利幅が消える。その深さを悲観の物差しにする。
資本政策と M&A
配当は 2026 年 2 月期が総額 1.8 億円で、配当性向は 13% と低い。2027 年 2 月期は 1 割強の増配を予想する。2026 年 10 月には発行済株式の 1.6% にあたる 1.3 億円の自社株買いを決めた。
大株主は親会社の西部ガスホールディングスで、2017 年の公開買付けで 52% を握った。残りの株を買い取る完全子会社化は、親子上場を減らす東証の流れの中で、10 年の間に起きてもおかしくない。
利益の大半は次の用地と在庫に回り、手元の現金は在庫の回転に使う運転資金だ。少数株主に戻る資金は、配当と小さな自社株買いにとどまる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
地方の中核都市で駅近くのマンションに住み替える需要は、人口が減っても細らない。郊外の戸建に住む高齢の世帯が、車を手放して街なかへ移る流れは、これから本番を迎える。建築費の上昇を転嫁できた実績は値決めの力の証拠で、1 戸の値段は物価を上回って伸びる。地方の中核都市で駅近くの用地は限られ、新しい供給は増えにくい。
2027 年 2 月期のマンションの契約残は 147 億円と前年より 58% 多く、通期の引渡しの 8 割が契約済みだ。中間の赤字は工期の巡り合わせにすぎず、通期の予想も据え置いた。管理戸数は毎年 200 戸ずつ増え、収益物件の売却も育ってきた。ストックと売却の稼ぎが厚くなれば、分譲の波は小さくなる。
親会社の西部ガスにとって、不動産は都市ガスの次の柱だ。親の信用で安く借りられる利点は大きく、完全子会社化の公開買付けが出れば、少数株主は割増しの値段で報われる。親子上場を減らす東証の流れも、その時期を早める方向に働く。
慎重な見方
分譲の戸数は、すでに細り始めている。2026 年 2 月期の引渡しは戸数で減り、値上げで売上を保っただけだ。地方の所得は物価に届かず、住宅ローンの金利が 1〜2% 上がれば、4,000 万円台のマンションを買える世帯は目に見えて減る。郊外からの住み替えも、手元の家が売れなければ進まない。地方の中古の戸建は値がつきにくく、住み替えの元手が細る。
借入は在庫とともに膨らみ、純有利子負債は自己資本の 1.5 倍だ。借り換えの金利が 3.5% へ上がれば、利払いだけで税前利益が年 4 億円削られる。今の利益は山で、平年に戻れば純利益は半分になる。
親会社が 52% を持つ限り、余った資金の使い道は親の都合で決まる。配当性向 13% は少数株主に冷たく、ためた利益は在庫と借入の上に積み上がるだけだ。在庫を抱えた谷が来れば、値引き販売で自己資本が削られる。2027 年 2 月期の中間の赤字は、その脆さを示している。
どちらに重みを置いたか
両者とも分譲の需要が細ること自体は認めている。差は値段の転嫁がどこまで続くかだ。強気の見方は契約残の厚さを、慎重な見方は借入と金利を根拠にする。過去 10 年の利益の波と借入の重さを見れば、慎重な見方の方が裏づけは強い。確率は悲観側にやや寄せ、中立に最も重みを置いた。親会社による完全子会社化は強気側の上振れの材料にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,861 円113 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 293 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 956 円58 億円、今との差 +6.2%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 9.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,435 円209 億円 | 525 円32 億円 | +339.6% | +16.0% | 317 円19 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,601 円158 億円 | 410 円25 億円 | +234.2% | +12.8% | 662 円40 億円 |
| 中立 | 35% | 2,038 円124 億円 | 328 円20 億円 | +162.6% | +10.1% | 828 円50 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,051 円64 億円 | 164 円10 億円 | +34.9% | +3.0% | 279 円17 億円 |
| 悲観 | 12% | 493 円30 億円 | 66 円4 億円 | −38.0% | −4.7% | 67 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,861 円113 億円 | 293 円18 億円 | +139.1% | +9.1% | 2,154 円131 億円 |
今の株価時価総額 901 円55 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 住み替え需要と値上げで戸数の細りを埋める 利益 18 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 3,435 円209 億円
建築費の転嫁が続き、地方の中核都市での住み替え需要が戸数の細りを埋める。マンションの引渡しは年 480 戸前後を保ち、1 戸の値段は物価を上回って 5,500 万円に届く。分譲の利益率は 11% 台を保つ。
管理戸数は 9,000 戸へ増え、収益物件の売却も年 10 件規模に育つ。ストックの稼ぎが厚くなり、分譲の波を一部埋める。
借入は増えるが、親会社の信用で上乗せの金利は小さい。営業利益は 33 億円、純利益は 18 億円に伸びる。ただ利益の多くは次の用地と在庫に回り、ROE は資本コストに届かない。親会社が残りの株を買い取る話が出れば、少数株主は割増しの値段で報われる。
- 不動産分譲(マンション・戸建):数量 480(年間の引渡し戸数(マンション+戸建、戸))× 価格 0.55(1 戸あたりの分譲売上(億円))→ 売上 264 億円・営業利益 30 億円。戸数 +2%・単価 +39%(建築費の転嫁が続く)
- 不動産管理・賃貸:数量 9,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(管理 1 戸あたりの管理・賃貸の売上(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 5 億円。管理戸数 +33%・単価 +43%
- その他(収益物件などの売却):数量 10.0(年間の売却件数(件、推定))× 価格 4.20(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 42 億円・営業利益 7 億円。収益物件の売却 +25%・単価 +42%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 194 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:戸数を保ち、値上げも物価を超える二つが要る。同じ領域の会社の強気(6〜10%)に揃えた。
やや楽観 22% 戸数は緩やかに減るが値段が支える 利益 13 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 2,601 円158 億円
マンションの引渡しは年 430 戸前後へ緩やかに減るが、1 戸の値段は 5,300 万円へ上がり、売上は保たれる。分譲の利益率は 10% 台半ばを保つ。
管理戸数は 8,500 戸へ増え、収益物件の売却も年 9 件ほど続く。営業利益は 25 億円、純利益は 12 億円台と、今の山をやや下回る水準に落ち着く。
借り換えの金利の上昇で利払いは増えるが、親会社の信用が支えになる。配当は少しずつ増えるが、還元の厚みは変わらない。親会社は支配を保ち、完全子会社化は起きない。ためた利益は在庫と借入の上に積み上がり、ROE は 6% 台にとどまる。
- 不動産分譲(マンション・戸建):数量 430(年間の引渡し戸数(マンション+戸建、戸))× 価格 0.53(1 戸あたりの分譲売上(億円))→ 売上 228 億円・営業利益 24 億円。戸数 −9%・単価 +34%
- 不動産管理・賃貸:数量 8,500(管理戸数(戸))× 価格 0.00(管理 1 戸あたりの管理・賃貸の売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 5 億円。管理戸数 +26%・単価 +39%
- その他(収益物件などの売却):数量 9.0(年間の売却件数(件、推定))× 価格 4.00(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 6 億円。売却 +13%・単価 +36%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 135 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:契約残が厚く、値上げの転嫁の実績もあるので、強気側の中心に置いた。
中立 35% 戸数が 2 割細り、利益は平年並みに戻る 利益 9 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 2,038 円124 億円
地方の中核都市の分譲の戸数は、人口減と金利の上昇で 10 年に 2 割ほど細る。マンションと戸建の引渡しは年 380 戸前後になり、1 戸の値段は物価よりやや低い 1.3 倍の 5,150 万円に上がる。分譲の利益率は 10% と、過去の平均並みに戻る。
管理戸数は 8,000 戸へ増え、管理と賃貸の稼ぎは物価並みに伸びる。収益物件の売却は件数が横ばいで、値段だけが上がる。
本社の費用は物価で増え、借り換えの金利で利払いが年 4 億円ほど増える。営業利益は 18 億円、純利益は 9 億円弱と、今の山から平年並みに戻る。配当性向は 2 割前後のままで、自己資本は 180 億円まで積み上がり、ROE は 5% 弱に下がる。
- 不動産分譲(マンション・戸建):数量 380(年間の引渡し戸数(マンション+戸建、戸))× 価格 0.52(1 戸あたりの分譲売上(億円))→ 売上 196 億円・営業利益 20 億円。戸数 −19%・単価 +30%(物価よりやや下)
- 不動産管理・賃貸:数量 8,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(管理 1 戸あたりの管理・賃貸の売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 4 億円。管理戸数 +19%・単価 +34%(物価並み)
- その他(収益物件などの売却):数量 8.0(年間の売却件数(件、推定))× 価格 3.95(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 5 億円。売却の件数は横ばい・単価 +34%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種のノートの中立(戸数は年 −3〜−5%)よりやや緩い 10 年 −2 割を中心に置いた。地方の住み替え需要を足した分だ。
やや悲観 23% 金利と所得の重さで分譲の利益が細る 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,051 円64 億円
住宅ローンの金利が上がり、地方の所得が物価に届かないため、マンションの買い手が細る。引渡しは年 300 戸に減り、値引きで 1 戸の値段は物価に届かない。分譲の利益率は 7% へ下がる。
管理と賃貸の稼ぎは残るが、分譲の波を埋めるには小さい。収益物件の売却も買い手が減り、件数が 4 分の 3 になる。借入の利払いが増え、純利益はほぼゼロ近くまで細る。
利益が出ない年が続き、在庫の一部は値引きで売る。親会社は支配を保つが完全子会社化には動かず、少数株主に戻る資金は小さな配当だけになる。価値は、在庫を値引きして借入を返した後の正味の資産で決まる。
- 不動産分譲(マンション・戸建):数量 300(年間の引渡し戸数(マンション+戸建、戸))× 価格 0.47(1 戸あたりの分譲売上(億円))→ 売上 141 億円・営業利益 10 億円。戸数 −36%・単価 +19%(値引きで物価に届かない)
- 不動産管理・賃貸:数量 7,500(管理戸数(戸))× 価格 0.00(管理 1 戸あたりの管理・賃貸の売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。管理戸数 +11%・単価 +28%
- その他(収益物件などの売却):数量 6.0(年間の売却件数(件、推定))× 価格 3.50(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。売却 −25%・単価 +19%
倍率:純利益 0.7 億円で、稼ぐ力(純利益÷k)は 7 億円にすぎない。価値は売れる資産の床(floor_assets_oku)45 億円で決まる。今の自己資本 108 億円に対する PBR 0.42 倍。EV(時価総額+純有利子負債 162 億円)÷営業利益は 36 倍と高いが、利益が薄い年で、価値は資産の側で決まる。
確率:借入が自己資本の 1.5 倍と重く、金利の上昇に弱い。強気側より厚く置いた。
悲観 12% 地方の分譲が崩れ、在庫の値引きで赤字が続く 利益 −13 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 493 円30 億円
地方の分譲の需要が構造的に崩れる。人口減と金利の上昇が重なり、マンションの引渡しは年 200 戸まで減る。売れ残りの在庫を値引きで売り、分譲は赤字に落ちる。
収益物件の売却も買い手が消えて止まり、管理と賃貸の稼ぎだけが残る。借入の利払いは重く、10 年で赤字が続いて自己資本を削る。
親会社は事業の縮小を選び、少数株主の取り分は在庫の処分と借入の返済の後に残る資産だけになる。配当はほぼ止まり、自己資本は 10 年で 6 割近く減る。リーマン危機の谷より深く、長い負けの筋書きだ。地盤の地方都市そのものが縮む。
- 不動産分譲(マンション・戸建):数量 200(年間の引渡し戸数(マンション+戸建、戸))× 価格 0.40(1 戸あたりの分譲売上(億円))→ 売上 80 億円・営業利益 −2 億円。戸数 −58%・単価 +1%(在庫の値引き)
- 不動産管理・賃貸:数量 6,500(管理戸数(戸))× 価格 0.00(管理 1 戸あたりの管理・賃貸の売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。管理戸数 −4%・単価 +17%
- その他(収益物件などの売却):数量 3.0(年間の売却件数(件、推定))× 価格 3.00(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。売却 −63%・利益なし
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。価値は売れる資産の床(floor_assets_oku)30 億円で決まる。今の自己資本 108 億円に対する PBR 0.28 倍。
確率:2008 年の谷でも赤字は一度きりだったが、借入は当時より重い。同業の悲観(10〜14%)と同じ 12% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産分譲(マンション・戸建)
山口・福岡・九州の地方中核都市で分譲マンション「オーヴィジョン」と戸建を建てて売る。売上は引渡しの年に立つ。
| 数量年間の引渡し戸数(マンション+戸建、戸) | 価格1 戸あたりの分譲売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 472 | 0.40 | 187 | 21 |
| 10 年後 中立 | 380 | 0.52 | 196 | 20 |
取り方:分譲セグメントの売上 186.8 億円を、マンション 404 戸と戸建 68 戸の計 472 戸で割った実効単価(1 戸約 0.40 億円)。2027 年 2 月期のマンションの契約残は 1 戸 0.43 億円で、建築費の転嫁が進む。営業損益はセグメント利益 21.4 億円。
不動産管理・賃貸
自社で分譲したマンションなどの管理と、自社で持つ賃貸物件の家賃。
| 数量管理戸数(戸) | 価格管理 1 戸あたりの管理・賃貸の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 6,749 | 0.00 | 13 | 3 |
| 10 年後 中立 | 8,000 | 0.00 | 20 | 4 |
取り方:管理の売上 7.76 億円と賃貸の売上 4.94 億円の計 12.7 億円を、管理戸数 6,749 戸で割った値(賃貸物件の数は開示が無いので管理戸数を物差しにした推定)。営業損益は管理 0.83 億円と賃貸 1.75 億円の計。
その他(収益物件などの売却)
収益不動産などの売却と付随の事業。
| 数量年間の売却件数(件、推定) | 価格1 件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 8.0 | 2.95 | 24 | 4 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 3.95 | 32 | 5 |
取り方:その他の売上 23.6 億円を、1 件約 3 億円の収益物件の売却とみて 8 件と推定した(件数の開示は無い)。営業損益はセグメント利益 4.36 億円。前期の 2.4 倍に伸びた年なので、10 年の利益率は今より低く置く。
リスクと懸念
引渡しの巡り合わせで利益が年ごとに揺れる
マンションの売上は引き渡した年に一度に立つ。工期の遅れや竣工の巡り合わせで戸数が 100 戸単位で動き、2027 年 2 月期の中間のように赤字の半期が出る。建築業者の人手不足で工期が延びれば、利益の山と谷がさらに深くなる。
住宅ローン金利の上昇と地方の所得
10 年国債 3% の世界では、住宅ローンの金利も 1〜2% 上がる。地方の所得は物価に届かず、4,000 万円台のマンションを買える世帯が減る。値上げで売上を保つ形は、金利が上がるほど続けにくい。
在庫と借入の重さ
純有利子負債は自己資本の 1.5 倍で、在庫を借入で賄う。市況が崩れて在庫を値引きで売れば、評価損が自己資本を直接削る。借り換えの金利が 3.5% へ上がり、利払いは税前で年 4 億円ほど増える。
親会社の支配と少数株主の取り分
西部ガスホールディングスが 52% を持つ。配当性向は 13% と低く、余った資金の使い道は親の都合で決まる。完全子会社化の値段が、本質価値を下回る水準で決まる恐れもある。
地方の中核都市の人口減
山口・北九州・大分の市部では人口が年 0.5〜1% ずつ減る。住み替えの需要が尽きれば、分譲の戸数は 10 年で 3 割以上細る。福岡市に集中すれば、大手との競合も厳しくなる。
今後の分かれ目
- 親会社の西部ガスホールディングスが残りの株を買う公開買付けを出す
- 少数株主は割増しの値段で持ち分を手放す。値段が本質価値を上回るかが焦点になる。
- 建築費の上昇が止まり、1 戸の値段が物価を上回って伸び続ける
- 戸数の細りを値段で埋められ、強気側の筋書きに近づく。
- 住宅ローン金利が 2% 以上上がり、契約の進みが 6 割を切る
- 売れ残りの在庫が積み上がり、値引き販売でやや悲観の筋書きに近づく。
- 管理戸数が 1 万戸を超え、収益物件の売却が年 10 件規模に育つ
- ストックの稼ぎが分譲の波を埋め、利益の振れが小さくなる。
- 配当性向を 3 割以上へ引き上げ、自社株買いを続ける
- 少数株主に戻る資金が増え、ためた利益が資本の重さにならなくなる。
見ておくもの
- マンションの通期の引渡し予定戸数と契約の進み(四半期の開示)
- 分譲の契約残高(戸数・金額)と 1 戸の平均単価
- 九州・山口の新設住宅着工(分譲マンション)
- 住宅ローン金利(フラット 35・変動)
- 親会社西部ガスホールディングスの中期経営計画での不動産の位置づけ
- 純有利子負債と在庫(販売用不動産)の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER 4 倍・PBR 0.5 倍から置かず、戸数×1 戸の値段で積んだ利益と、ROE が k を下回る時の上限 1÷k から決めた。k は 9.25%(循環・値決め・借金・寿命)。中立の利益は今の山でなく、過去 10 年の利益率の平均並みに置いた。悲観側は今の自己資本から在庫の値引きを引いた売れる資産で置き、過去の PBR の底は使っていない。減価償却は小さく物価で増やさない。新リース会計基準(2028/02 期から)は借りる店が無く影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.7→10.81 倍・やや楽観 PER 9.2→10.81 倍・中立 PER 8.7→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 2.25% = 9.75%。同じ領域(9.0〜10.0%)の中では、地方の人口減を寿命に足した分だけ高い。親子上場・工期の遅れなど個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.75% → 9.25%。