結論
マリオンは東京を中心に単身者向けの賃貸マンションを持ち、その賃料を小口の投資商品にして個人から資金を集める小さな不動産会社だ。筆者の結論は割高寄りである。PBRは1倍を割っているが、金利が上がる10年では借金の重さが利益を削り、自己資本の稼ぐ力が資本コストに届かないと見るからだ。
直近の業績は良い。2025年9月期は都内の3棟を売って最高益を出し、今期も第3四半期までで通期の営業利益予想にほぼ届いた。入居率は97〜98%と高く、賃貸の土台は堅い。
ただ、総資産193億円に対し自己資本は約50億円で、残りは借入83億円と投資家からの預り金約50億円だ。借入の金利は今1%台にとどまるが、借り換えのたびに3%台へ上がる。賃料は物価ほどには上がらないので、売却益が細る年は純利益がすぐ薄くなる。
含み益は会社が自ら「ある」と説明しているが、金額の開示は無い。創業者が筆頭株主で配当性向も2割と低く、含み益が株主の手に渡る道筋も見えにくい。
小さな会社なので、買収の提案が来れば話は別になる。ただ、それを当てにして払う値段を決めることはしない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、マリオンは「資産はあるが、その資産がオーナーのものになりにくい」会社に見える。帳簿の自己資本は時価総額の約1.5倍あり、会社は含み益もあると言う。ところが、この会社の利益は借金の利息を払った残りで、その残りも物件の買い増しに回る。株主の手元に来る利益、つまりオーナー利益は配当の年数千万円だけだ。
筆者がいちばん気にしているのは、金利が上がる10年で借金のてこが逆に効くことだ。賃料は物価ほど上がらず、利払いは倍近くになる。売却益で埋められる年は良いが、毎年は続かない。
含み益は確かに安全域になりうる。ただ、それを現金に変えて株主に配るかは創業者の判断で、少数株主には決められない。数字が開示されていない含み益に、払う値段の根拠を置くことはできない。持ち続けたいと思える会社ではない。
安全域を求めるなら、含み益が開示され、還元が厚くなるのを待ちたい。
何で稼ぐ会社か
事業は3つに分かれるが、根は1つだ。都内を中心に全国41棟、約750戸の住宅を持ち、貸して賃料を得る。主な入居者は地方自治体の職員など、勤め先の安定した単身者である。
1つ目は不動産賃貸だ。自社で持つ物件の賃料に、オーナーから借り上げて又貸しするサブリースと、管理の受託を加えた売上が約12億円ある。利益の土台はここにある。
2つ目は不動産証券化だ。「i-Bond」「マリオンボンド」という商品で、1口1万円から個人の資金を匿名組合の形で集め、対象物件の賃料を投資家と分け合う。物件の持ち主はマリオンのままで、集めたお金は預り金として負債に載る。売上は約3.5億円だが、銀行に頼らない資金の入口という意味が大きい。会社はこれを有価証券のトークンにして証券会社で売る構想を持つ。
3つ目は不動産売買だ。持っている物件を時々売り、買った時より高い値段との差を利益にする。2025年9月期は3棟を売って売上が17億円に膨らんだ。年によって0棟の年もあり、業績の振れはここから来る。
社員は20人ほどで、身軽な会社である。
売上の半分を売買が占める年もあるが、毎年の利益の芯は賃貸と証券化の約15億円の売上だ。
優良さと弱いところ
優良さは中程度より下と筆者は見る。強みは2つある。1つは都内の単身者向けという需要の底堅い立地で、コロナの時期でも入居率は95.6%を割らなかった。もう1つは、個人から小口で資金を集める仕組みを30年近く回してきたことだ。銀行の融資姿勢が厳しくなっても、別の財布がある。
弱みは資本の効率だ。過去10年のROE、つまり自己資本に対する純利益の割合の中央値は6%にとどまる。自己資本は10年で倍以上に増えたが、営業利益は6〜9億円の幅から抜けていない。ためた利益を物件に入れても、借金の利息と管理の費用に吸われ、稼ぎがあまり増えていない。
賃料は地域の相場で決まり、マリオンが自分で上げられるものではない。他社がまねできない堀、つまり長く続く強みは見当たらない。
経営の資本の使い方も物足りない。配当を抑えてトークン化のシステムに資金を回しているが、その投資がどれだけの利益を生むかは、まだ数字で示されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京の賃貸住宅は、人口が減る日本の中では最も底堅い市場だ。単身の世帯は都内でまだ増えており、建築費が2021年から2〜4割上がったことで新築の供給が絞られている。既存の物件を持つ側には追い風で、都心の賃料はこの数年上がっている。
ただ、業界ノートの前提では、都心の賃料の伸びは名目で年1%前後にとどまる。物価が年3%なら、実質では少しずつ下がる計算だ。人件費や修繕費、固定資産税は物価並みに上がるので、借りて持つ会社の利益率はじわじわ削られる。
もう1つの大きな変化は金利だ。10年国債が3%の世界では、不動産の期待利回りも上がり、物件の値段は上がりにくい。借入の多い会社ほど利払いが増える。マリオンの借入83億円は今1%台の金利だが、10年で全部が3.5%前後へ借り換わる。
小口の不動産投資は、クラウドファンディングの各社やトークン化の新しい商品で競争が増えている。不動産特定共同事業の許可を持つ会社は増え続けており、マリオンの商品が選ばれ続ける保証は無い。業界の再編では、小さな会社は大手の資産運用会社に買われる側になりうる。
金利の上昇は、小口商品の投資家が求める分配の利回りも押し上げる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当性向20%を目標に掲げるが、2025年9月期の実績は10%で、自社株買いはしていない。会社は配当を抑えた理由を、トークン化のシステム開発に資金を残すためと説明している。
株主は福田敬司社長が筆頭で、SBIホールディングス、マリオン財団、ベルーナが続く。2024年と2025年には旧来の大株主が持ち分を手放し、資本関係が整理された。創業者が経営と株を握る形なので、含み益を売って株主に返す判断は社長次第だ。小さな会社なので、大手の資産運用会社やトークン化を進めたい金融グループに買われる可能性は残るが、今その動きは無い。
今の配当では、利益の8割以上が会社に残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東京の単身者向け賃貸は、人口が減る日本で最も強い住宅の市場だ。建築費の上昇で新築が減り、既存の物件の賃料は上がり続けている。マリオンの入居率は97〜98%で、空室の心配はほとんど無い。
直近の決算はその強さを映している。2025年9月期は3棟の売却で最高益、今期も第3四半期で通期の営業利益予想にほぼ届いた。物件を高く売れるのは、帳簿の値段より時価が高いからで、会社も含み資産があると明言している。
小口の投資商品は30年近い実績があり、累計の販売は90億円を超えた。トークン化で証券会社の窓口に並べば、資金の入口は一気に広がる。SBIホールディングスが大株主にいることも、その道筋を後押しする。
10年で賃料が年3%近く上がり、売却も年3棟のペースが続けば、営業利益は今の1.8倍になる。その時の自己資本の稼ぐ力は資本コストに迫り、帳簿の値段に近い評価を受けてよい。
しかも経営陣は少人数で、本社費は小さい。賃料の上昇がそのまま利益に乗りやすい形だ。
慎重な見方
PBRが1倍を割っていても安いとは限らない。この会社は自己資本の4倍近い資産を、借入と預り金で抱えている。借入の金利は今1%台だが、10年で3.5%前後に借り換わり、利払いは倍近くになる。
賃料はその分だけ上がるわけではない。業界の見通しでは都心の賃料の伸びは名目で年1%前後で、物価より遅い。修繕費や固定資産税は物価並みに上がるので、賃貸の利益率は削られる。
売却益は毎年の稼ぎではない。2021〜2022年は売却が細り、営業利益は2〜3億円まで落ちた。金利が上がれば買い手の利回りの要求も上がり、高く売れる物件は減る。
小口の不動産投資はクラウドファンディングの各社が乱立し、利回りの競争になっている。預り金の配当を上げれば、マリオンの取り分は細る。
含み益は開示されず、確かめられない。創業者が経営を握り、配当性向は1〜2割だ。含み益があっても、少数株主の手には渡りにくい。
自己資本比率は26%しかなく、賃料が1割落ちるだけで利益は大きく削れる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強いと筆者は判断した。賃貸の土台が堅いことは認めるが、借金のてこと金利上昇の組み合わせは数字で避けられない。含み益は開示が無く、創業者の判断に左右されるので、価値の柱にできない。確率は中立を4割とし、悲観側を合わせて3割強、楽観側を3割弱に置いた。借入の金利が実際にどこまで上がるかと、売却の棟数が、確率を見直す分かれ目になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 625 円49 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 91 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 330 円26 億円、今との差 −15.2%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,176 円92 億円 | 154 円12 億円 | +242.1% | +13.1% | 106 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 808 円63 億円 | 121 円10 億円 | +138.8% | +9.1% | 186 円15 億円 |
| 中立 | 40% | 642 円50 億円 | 98 円8 億円 | +90.4% | +6.6% | 296 円23 億円 |
| やや悲観 | 20% | 425 円33 億円 | 63 円5 億円 | +25.4% | +2.3% | 98 円8 億円 |
| 悲観 | 12% | 231 円18 億円 | 18 円1 億円 | −36.0% | −4.4% | 30 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 625 円49 億円 | 91 円7 億円 | +84.0% | +6.3% | 716 円56 億円 |
今の株価時価総額 389 円30 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 賃料が物価並みに上がり、トークン化で資金の入口が広がる 利益 8 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,176 円92 億円
東京の単身世帯は増え続け、建築費の高止まりで新築は少ない。都内の賃料は物価に近い年2.5%で上がり、マリオンの戸数も買い増しで950戸に増える。
i-Bondは有価証券のトークンになり、SBIグループなど証券会社の窓口で売られる。対象の戸数は500戸に広がり、銀行の借入に頼る割合が下がる。
売却は年3棟のペースが続く。物件の値段は名目で年3%上がり、売却益の率も今より厚い。営業利益は今の約1.8倍の15億円台になり、利払いの増加を吸収して純利益は8億円に届く。それでも自己資本の稼ぐ力は資本コストにわずかに届かない。
大手の金融グループとの提携も進む。
- 不動産賃貸(自社保有・サブリース・管理):数量 950(運営する居住用の戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 8 億円。950戸×1戸年220万円(今の1.38倍)、営業利益率37%
- 不動産証券化(i-Bond・マリオンボンド):数量 500(証券化の対象の戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。トークン化で500戸、単価は今の1.37倍
- 不動産売買:数量 3.0(1年に売る棟数(棟))× 価格 7.66(1棟あたり売却額(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 6 億円。年3棟×1棟7.7億円(今の1.35倍)、売却益の率28%
倍率:ROE 8.4%(純利益8.07億円÷自己資本95.8億円)が k 8.75% に届かないので、ためた利益は額面未満で、PER の上限は 1÷k=11.43 倍。楽観でも上限の10割の11.43倍までとした。
確率:都内の賃料が物価並みに上がり、売却も年3棟が続き、トークン化も当たるという、良いことが3つ重なる筋書き。どれも実績はあるが、10年そろって続く確率は低いので8%とした。
やや楽観 20% 賃料が年2%強で上がり、売却も平年並みより多い 利益 6 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 808 円63 億円
都内の賃料は名目で年2.4%ほど上がり、900戸まで物件を買い増す。入居率は97%台を保つ。
i-Bondの対象は400戸に広がり、預り金の調達は銀行の借入の代わりとして機能し続ける。ただし、小口の不動産投資の競争で、投資家への分配の利回りは少しずつ上がる。
売却は年2.6棟で、売却益の率は26%。営業利益は今の1.4倍の約12億円になる。借入の金利は3.5%前後へ借り換わり、利払いは今の2倍を超えるが、純利益は5.5億円と今より少し上に出る。自己資本の稼ぐ力は6%台で、資本コストには届かない。
還元は配当性向2割のままである。
- 不動産賃貸(自社保有・サブリース・管理):数量 900(運営する居住用の戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 7 億円。900戸×1戸年207万円(今の1.30倍)、営業利益率35.5%
- 不動産証券化(i-Bond・マリオンボンド):数量 400(証券化の対象の戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。400戸、単価は今の1.30倍
- 不動産売買:数量 2.6(1年に売る棟数(棟))× 価格 7.26(1棟あたり売却額(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 5 億円。年2.6棟×1棟7.3億円(今の1.28倍)、売却益の率26%。金利3%の世界では買い手の利回りの要求が上がり、物件の値段は物価より遅く上がる
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 63 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:都内の賃料の上昇がこの数年の勢いで続き、売却も年2〜3棟を保つ筋書き。直近2期の実績に近いので2割とした。
中立 40% 賃料は物価に遅れ、利払いの増加が伸びを食う 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 642 円50 億円
都内の賃料は名目で年2%ほど上がるが、物価の3%には届かない。マリオンはためた利益で物件を買い増し、戸数は860戸になる。入居率は高いまま保つ。
賃料の伸びは修繕費や固定資産税の上昇でほぼ相殺されるが、建物の償却は買った時の値段のまま増えないので、賃貸の利益率は今の35%前後を保つ。i-Bondは330戸に少し広がる。
売却は年2棟強の平年並みで、1棟の値段は今の1.25倍で、物価より遅い。金利3%の世界では買い手の求める利回りが上がるからだ。営業利益は約9億円と今と同じ程度にとどまる。
一方で借入は全部が3.5%前後へ借り換わり、利払いは今の倍以上になる。純利益は3.7億円と今より少なく、自己資本の稼ぐ力は5%弱だ。資本コストの9%には遠く、ためた利益は帳簿の額ほどの価値を生まない。
- 不動産賃貸(自社保有・サブリース・管理):数量 860(運営する居住用の戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 6 億円。860戸×1戸年194万円(今の1.22倍)。償却は今の約2億円から2.6億円(新しく買う分だけ増える)、営業利益率34.5%
- 不動産証券化(i-Bond・マリオンボンド):数量 330(証券化の対象の戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。330戸、単価は今の1.22倍
- 不動産売買:数量 2.2(1年に売る棟数(棟))× 価格 7.09(1棟あたり売却額(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。年2.2棟×1棟7.1億円(今の1.25倍)、売却益の率24%。金利3%の世界では買い手の利回りの要求が上がり、物件の値段は物価より遅く上がる
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 42 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界ノートの中立(都心の賃料は名目で年1〜2%、金利は3%台)をそのまま当てた中心の筋書き。直近の好調と、2021〜2022年の売却の細りの両方を平らにならした姿なので4割とした。
やや悲観 20% 賃料が伸びず、売却益も細る 利益 1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 425 円33 億円
10年国債が3%で定着し、不動産の買い手が求める利回りも上がる。物件の値段は名目でもほとんど上がらず、マリオンが高く売れる物件は減る。売却は年1.5棟に落ち、売却益の率も20%に下がる。
都内の賃料は年1%強しか上がらない。修繕費と固定資産税は物価並みに上がり、賃貸の利益率は29%に下がる。小口投資の競争で投資家への分配を上げざるをえず、i-Bondの取り分も細る。
営業利益は約5億円に落ち、3.5%への借り換えで膨らんだ利払いを引くと、純利益は1億円を割る。稼ぐ力は資本コストに遠く及ばない。価値の支えは物件そのもので、売れば帳簿の値段近くにはなるが、創業者が売って配る保証は無い。
- 不動産賃貸(自社保有・サブリース・管理):数量 800(運営する居住用の戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 4 億円。800戸×1戸年178万円(今の1.12倍)、営業利益率29%
- 不動産証券化(i-Bond・マリオンボンド):数量 280(証券化の対象の戸数(戸))× 価格 0.01(1戸あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。280戸(今と同じ)、分配の利回りを上げて利益率36%
- 不動産売買:数量 1.5(1年に売る棟数(棟))× 価格 6.24(1棟あたり売却額(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。年1.5棟×1棟6.2億円(今の1.10倍)、売却益の率20%
倍率:この筋書きの稼ぐ力は純利益0.9億円(k 8.75%で割って約10億円)しかない。価値の支えは物件で、今の自己資本47.5億円に0.47倍を掛けた。売れる資産の税後(floor_assets_oku)の30億円を下回る。倍率は市場の値付けからでなく、資産の売却価値と戻り方から置いた。EVで見ても営業利益5億円に対して約17倍で、借金の重さから利益の倍率では高く評価できない。
確率:金利の上昇で不動産の期待利回りが上がり、物件が高く売れなくなる筋書き。2021〜2022年に売却が細った実例があるので2割とした。
悲観 12% 利回りの競争と空室で、借金のてこが逆に効く 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 231 円18 億円
金利が上がる中で、都内の単身者向け賃貸にも供給が戻り、賃料は名目でも横ばいになる。地方の2割の物件は空室が増え、戸数を720戸まで減らす。
小口の不動産投資は大手の資産運用会社とトークン化の新しい商品に客を取られ、i-Bondの対象は150戸に縮む。集めた預り金の返還に応えるため、物件を安く手放す場面も出る。売却は年0.5棟で、売却益はほとんど出ない。
営業利益はほぼゼロになり、3.5%への借り換えで重くなった利払いを引くと、純利益は赤字が続く。配当は細り、自己資本はためた利益で少し増えるだけだ。価値の支えは物件の売却価値だけになり、創業者が売らない限り少数株主には届かない。
- 不動産賃貸(自社保有・サブリース・管理):数量 720(運営する居住用の戸数(戸))× 価格 0.02(1戸あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。720戸×1戸年159万円(今と同じ)、営業利益率18%
- 不動産証券化(i-Bond・マリオンボンド):数量 150(証券化の対象の戸数(戸))× 価格 0.01(1戸あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。150戸に縮む、利益率20%
- 不動産売買:数量 0.5(1年に売る棟数(棟))× 価格 5.40(1棟あたり売却額(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。年0.5棟、安く手放して売却益の率5%
倍率:赤字で稼ぐ力からは価値が出ないので、売れる資産の税後に戻り方0.5を掛けた約30億円(floor_assets_oku)を上限に、物件を安く手放す分を引いて、今の自己資本47.5億円に0.38倍を掛けた(やや悲観の0.47倍より低く)。純有利子負債65億円を足したEVでは営業利益のほぼゼロに対して数百倍になり、利益の倍率では測れない。価値は資産の売却価値だけで見た。
確率:金利の上昇に加え、小口投資の競争と地方物件の空室が重なる構造的な負けの筋書き。自己資本比率が26%と薄く、借金のてこが逆に効く会社なので、普通より少し厚い12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産賃貸(自社保有・サブリース・管理)
都内を中心に約750戸の単身者向け住宅を持ち、または借り上げて貸す。賃料と管理料が稼ぎの土台。
| 数量運営する居住用の戸数(戸) | 価格1戸あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 751 | 0.02 | 12 | 4 |
| 10 年後 中立 | 860 | 0.02 | 17 | 6 |
取り方:有報の居住用751戸(2025年9月末)で賃貸の売上11.96億円を割り、1戸あたり年約159万円とした(店舗・駐車場も含む)。セグメントの利益の開示が無いので、営業利益は全社の利益率と費用の性質から推定した。費用7.8億円のうち償却を約2億円と見る。
不動産証券化(i-Bond・マリオンボンド)
物件の賃料を匿名組合の小口商品にして個人から資金を集める。物件は会社が持ち続け、集めたお金は預り金になる。
| 数量証券化の対象の戸数(戸) | 価格1戸あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 280 | 0.01 | 3 | 2 |
| 10 年後 中立 | 330 | 0.02 | 5 | 2 |
取り方:有報の証券化対象280戸で売上3.47億円を割った。預り金の残高は49.5億円。営業利益は推定。
不動産売買
持っている物件を売り、帳簿の値段との差を利益にする。年により件数が大きく振れる。
| 数量1年に売る棟数(棟) | 価格1棟あたり売却額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 3.0 | 5.67 | 17 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2.2 | 7.09 | 16 | 4 |
取り方:2025年9月期は都内3棟の売却で売上17.02億円。1棟約5.7億円。売却益の率は開示が無く、全社の利益から推定した。過去10年の平均はこれより少ない年2棟前後と見る。
リスクと懸念
借り換えの金利
借入83億円の金利は今1%台だが、10年で3.5%前後へ借り換わる。利払いは今の約1.4億円から3億円近くに増える。営業利益が9億円前後の会社には重く、純利益の伸びをほぼ食う。
売却益への依存
利益の約4割は物件の売却益で、年により0棟の年もある。2021〜2022年は売却が細り、営業利益は2〜3億円まで落ちた。金利が上がって買い手の利回りの要求が上がれば、高く売れる物件は減る。
預り金の返還
i-Bondなどの預り金は約50億円で、総負債の3割を超える。運用の期間が終われば返す約束で、次の募集が集まらなければ借入か物件の売却で埋めることになる。小口投資の競争が厳しくなると、この入口が細る。
含み益が確かめられない
会社は含み資産があると説明するが、賃貸等不動産の時価の開示は無い。安全域の根拠を含み益に置くことはできず、筆者は価値の計算に足していない。開示されれば見方は変わりうる。
創業者の支配と低い還元
福田社長が筆頭株主で、配当性向は1〜2割、自社株買いはしていない。含み益を現金に変えて配るかどうかは創業者次第で、少数株主の声は届きにくい。
トークン化の投資
会社は配当を抑えてトークン化のシステムに資金を回している。許可の取得や証券会社での販売が計画どおり進まなければ、投じた資金は利益を生まない。
今後の分かれ目
- 賃貸等不動産の時価が開示され、含み益が自己資本を大きく上回ると確かめられたら
- 悲観の床を引き上げる。ただし還元の方針が変わらない限り、戻り方0.5は据え置く。
- 配当性向を3割以上に上げる、または自社株買いを始めたら
- ためた利益が株主に戻る道ができるので、戻り方を0.75へ上げ、中立の確率を楽観側に寄せる。
- i-Bondのトークン化が証券会社で売られ、募集額が年20億円を超えたら
- やや楽観の筋書きに近づく。銀行借入の代わりが太くなり、金利上昇の痛みが和らぐ。
- 売却が2期続けて年1棟以下になったら
- やや悲観の筋書きに近づく。利益の土台が賃貸だけになり、利払いの増加を吸収できない。
- 大手の資産運用会社や金融グループが買収を提案したら
- 物件の時価に近い値段で評価される可能性がある。少数株主にとっては含み益を受け取る唯一の道になりうる。
見ておくもの
- 売却の棟数と売却益の率
- 借入の平均金利と借り換えの条件
- i-Bondの募集額と預り金の残高
- 都内の単身者向け賃料と入居率
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRからでなく、ROEとkの関係だけで置いた。10年中立のROEは4.7%でk 8.75%を下回るので、PER の上限は1÷k=11.1倍とし、売却益への依存を見て8割に置いた。今のPBRは0.6倍台だが、それを割安の根拠にしていない。含み益は開示が無いので価値に足さず、悲観の床だけで半分に割り引いて使った。2028年9月期からの新リース会計で、サブリースの借上げが負債に載り、純負債と自己資本比率の見え方が変わる。10年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.11→11.43 倍・やや楽観 PER 10→11.43 倍・中立 PER 8.89→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 1.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。