結論
飯田グループホールディングスは、分譲戸建の国内最大手だ。一建設・飯田産業・東栄住宅・タクトホーム・アーネストワン・アイディホームの6社を束ね、全国の着工の約3割を握る。筆者の結論は、今の値段はやや割高、というものだ。PER9倍台は安く見えるが、稼ぐ力の弱さをそのまま映した値札である。
2026年3月期の営業利益は944億円まで戻った。戸建の粗利益率が16.0%に上がり、棟数を追わず利益を取る方針が効いた。それでも自己資本の稼ぐ力(ROE)は6%台で、資本コスト8.25%(基本7.5%に、循環・値決めの弱さ・借金・国内の縮小の分として+1.75%)に届かない。会社は2030年3月期にROE10%を掲げる。だが前の中期計画は大きく外した。
先の景色は厳しい。人口が減り、建築費が上がり、分譲戸建の棟数は細っていく。単価は物価並みに上がるので、戸建の売上は10年たってもほぼ横ばいだ。頼みは米国・リフォーム・賃貸住宅などの新しい柱だが、まだ小さい。
純負債は3,665億円に増えた。営業キャッシュフローは約970億円の流出で、在庫と土地への投資が先行している。住宅ローン金利が上がる局面で、この在庫が重荷になる。
確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額を2割ほど下回る。割安と言い切る材料は見当たらない。安全域は資産の厚みにあり、利益の成長にはない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、飯田グループは「安いが、持ち続けたい会社」とは言い切れない。
良い点はある。事業は単純で、10年後も家は建てられる。財務は固く、自己資本比率は5割ある。土地という実物の資産が貸借対照表を支える。
だが、持ち続ける価値は、稼いだ利益を再び高い率で働かせられるかで決まる。飯田のROEは平均で8%ほどで、資本コストとほぼ同じだ。稼いだ利益を事業に回しても、価値は増えにくい。オーナー利益(再投資に回さず、株主が自由に使える利益)は、見かけの純利益より薄いと筆者は見る。在庫と土地の仕入れが先に出ていくからだ。
経営の資本配分は、まじめだが冴えはない。累進配当は評価できる。しかし、資本効率が低いのに、利益をためて在庫に回す姿勢は、ROE10%という目標と食い違う。
安全域はどうか。今のPBRは0.58倍で、自己資本を4割ほど下回る。在庫が帳簿どおり現金に戻るなら、この差が安全域になる。ただ、悲観の筋書きでは在庫の評価損で自己資本が削られる。帳簿の値を丸ごと信じることはできない。
結論として、確実に積み上がる価値がある会社というより、市況の循環に乗る会社として値段を見るのが誠実だ。確信度は中くらいに留める。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は戸建分譲だ。2026年3月期の売上は約1.2兆円で、全体の8割を占める。土地を仕入れ、建売住宅を建てて売る。販売は3万7千棟、平均の販売価格は3千万円台前半と、郊外・ミドル層向けの手の届く価格帯に絞っている。
強みは「束ね方」にある。一建設、飯田産業、東栄住宅、タクトホーム、アーネストワン、アイディホームの6社は、それぞれ地域と顧客層が違う。2013年に経営統合したあとも、各社の営業と施工の体制は残した。一方で、資材の調達や設計の標準化はグループでまとめ、1棟あたりの原価を抑える。土地の仕入れも各社が競い合うため、情報の網が広い。
残りは4つの事業だ。マンション分譲は約950億円で、リビングコーポレーションなどが手がける。請負(注文住宅や法人向けの建築)は約830億円。リフォーム・不動産売買・賃貸住宅・米国事業などのストック型・海外の事業が、残りの約1,100億円を占める。
会社は今、戸建への依存を下げようとしている。戸建の売上比率は2024年3月期の85%から、2030年3月期に70%へ下げる計画だ。2025年4月に米国のシニア向け住宅会社の過半を取得した。2026年3月には米ユタ州の住宅会社3社を約96億円で買い、同年4月には都内の賃貸住宅開発会社ATCを傘下に入れた。
ただし新しい事業はまだ小さい。利益の大半は、いまも戸建分譲が生んでいる。
優良さと弱いところ
この会社の堀は、規模と原価の低さにある。ただし、堀としては浅いと筆者は見る。
分譲戸建は、買い手が値段を見て選ぶ商品だ。ブランドで高く売れるわけではない。飯田グループは着工の約3割を握り、仕入れと施工で他社より安く作れる。それでも競争相手は地場の工務店とオープンハウスグループ、ケイアイスター不動産などで、値決めは市場に従う。利益率が上がるのは、市中の在庫が少ない年だけだ。この数年の営業利益率が4%から11%の間を行き来したことが、それを物語る。
資本の稼ぎも弱い。ROEは過去12年で3.8%から11.7%まで振れ、平均は8%ほどだ。会社自身が、2024年3月期のROE3.8%は資本コストを下回ったと認めている。足元は6%台で、10%への道のりは遠い。
財務は固い。自己資本比率は50.8%と高く、利息の支払いを営業利益で割ると12倍の余裕がある。倒産を心配する会社ではない。ただ、純負債が時価総額の6割に膨らんだ点は気になる。
経営は、2025年4月に副社長だった西野弘氏が社長を引き継いだ。前社長の兼井雅史氏は取締役に残る。急な方針転換は無く、引き継ぎは穏当だった。一方、前の中期計画は営業利益1,650億円超を狙いながら、実績は592億円で大きく外した。計画の数字より、実績を信じるのが筋である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
分譲戸建の市場は、棟数が減り、単価が上がる形で小さくなっている。2025年の分譲一戸建の着工は11.6万戸で、新設住宅全体は62年ぶりの低水準だった。人口と世帯の減少に加え、建築費の高騰が若い世帯の手を遠ざけている。
飯田グループの販売は約3.7万棟で、着工の約3割に当たる。首都圏の着工シェアも約3割だ。市場が縮んでも、シェアを少しずつ伸ばして踏みとどまる。ただ、前の期は無理に棟数を追わず、販売は約1,600棟減った。利益を取る代わりに量を手放した形である。
筆者は、これから10年で棟数は年に2〜3%ずつ減るとみる。業界の見通しは3〜5%減だが、飯田は弱い同業の退場でシェアを足せる。単価は物価並みに上がる。建築費は年2〜3%上がり続け、土地も都市部は強い。
競争の形は穏やかだ。オープンハウスグループは都心の狭小地、飯田は郊外の量産と、土俵が分かれている。ケイアイスター不動産やタマホームなども競うが、仕入れと施工の規模では飯田が上だ。中古再生のカチタスとは、需要の受け皿がそもそも違う。
最大の変数は金利だ。10年国債が3%に上がれば、住宅ローン金利も上がる。建売の買い手は月々の返済額で家を選ぶので、金利は需要に直接効く。2008〜2009年のリーマン危機では、着工が前の年より3割ほど減り、中堅の建売会社が相次いで倒れた。同じ構図が、いつ来てもおかしくない。
会社の側の対応は、戸建の外へ出ることだ。リフォームは累計80万棟超の顧客基盤を持つ。米国でも州を広げている。ただ、どれも戸建の利益に比べると小さい。
資本政策と M&A
還元は、前期より下げない累進配当が土台だ。2026年3月期の配当性向は4割強で、2027年3月期の予想はわずかに下げた。自社株買いは機動的に足す(過去に上限106億円の実績)。
筆者は、資本の使い方に二つの疑問を持つ。一つは、在庫への投下が先行している点だ。2026年3月期は営業キャッシュフローが約970億円のマイナスで、純負債は1,486億円から3,665億円へ増えた。売れ行きが落ちれば、この在庫は利益ではなく負担に変わる。二つ目は、ROEが資本コスト未満のまま、資金を内部にためている点だ。還元を厚くするほうが、株主には得になる。
M&Aは小さな案件を重ねる型だ。米国ではシニア向け住宅会社(2025年4月)とユタ州の住宅会社3社(2026年3月)を買い、国内では賃貸住宅開発のATC(2026年4月)を取得した。金額はいずれも百億円前後で、会社の価値を壊す規模ではない。大型の買収より、地場の工務店を飲み込む動きが続くと筆者は見る。
TOBや買収を受ける側になる可能性は、低いが零ではない。PBRが0.6倍前後と、資産を下回って売られているからだ。ただし、時価総額が約6,000億円と大きく、買い手は限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
飯田グループの強みは、分譲戸建で国内最大の量と原価の低さにある。人口が減る中で弱い同業が退場すれば、シェアはさらに上がる。2026年3月期は、棟数を無理に追わずに売上総利益率を2.1ポイント上げた。値決めを守る力が戻った証拠だ。2027年3月期の第1四半期は営業利益が前の年より8割増え、戸建の販売棟数も増えた。
利益率の改善は、一過性とは言いにくい。市中の在庫が少ない状態が続き、建築費の上昇が新築の価格を押し上げる。東京圏への人口集中も、首都圏に厚い飯田に追い風だ。
新しい柱も育ち始めた。リフォームは累計80万棟超の顧客を持ち、需要が見込める。米国は2州に広がり、賃貸住宅開発のATCも加わった。2030年3月期に戸建依存を70%へ下げる計画が進めば、利益の波は小さくなる。ROE10%を達成できれば、PERは12倍以上に見直されてよい。
資産の面でも安い。PBRは0.58倍で、在庫と土地は値下げすれば現金に戻る。累進配当を下げない方針があり、還元は自社株買いでさらに厚くできる。会社の資本効率の改善が確かなら、今の値札には明確な安全域がある。
慎重な見方
売上の8割が戸建一本という構図は変わらない。人口と世帯が減り、着工は2025年に62年ぶりの低水準まで落ちた。今後10年も棟数は減り続ける。単価が物価並みに上がっても、売上はほぼ横ばいで、利益は増えにくい。
利益率の回復は、市中在庫が少ないという需給の追い風に乗った面が大きい。飯田の営業利益率は過去に4%から11%の間を行き来し、好況の年だけ高い。粗利率16%を前提に先を見るのは危うい。前の中期計画は営業利益1,650億円超を狙ったが、実績は592億円だった。
財務の姿も変わった。営業キャッシュフローは約970億円の流出で、純負債は1,486億円から3,665億円へ2倍以上になった。在庫と土地への投資が先行しており、売れ行きが落ちれば評価損と金利負担が同時に来る。リーマン危機のときは、着工が3割落ちて中堅の建売会社が倒れた。10年国債が3%へ上がる世界は、住宅ローンの返済を重くする。
資本効率も弱い。ROEは6%台で、資本コストの9.25%に届かない。会社は10%を掲げるが、稼ぎの水準が変わらない限り、積み上がる自己資本は稼ぎを薄めるだけだ。PBRが0.58倍と低いのは、市場がこの弱さを織り込んでいるからで、見落としではない。
どちらに重みを置いたか
利益率の戻りは本物だが、棟数の細りと資本効率の低さの指摘のほうが長い期間では重い。このため確率は中立に最も厚く置き、やや悲観と悲観の合計を3割台後半まで広げた。
強い面は、地力と資産の厚みだ。戸建の原価の低さと自己資本比率の高さは、悲観の筋書きでも会社を壊さない。一方、楽観の筋書きは新しい柱が育つことが条件で、確率は1割以下に抑えた。結果として、本質価値は今の時価総額を2割ほど下回る水準に落ち着く。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,877 円7,949 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,285 円3,550 億円)。 今の値に割り戻すと 2,166 円5,986 億円、今との差 +1.8%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,448 円1.51 兆円 | 1,882 円5,200 億円 | +244.5% | +13.2% | 513 円1,418 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,132 円1.14 兆円 | 1,592 円4,400 億円 | +169.0% | +10.4% | 1,259 円3,480 億円 |
| 中立 | 34% | 2,947 円8,145 億円 | 1,448 円4,000 億円 | +106.6% | +7.5% | 1,494 円4,129 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,805 円4,987 億円 | 1,086 円3,000 億円 | +35.9% | +3.1% | 723 円1,997 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,108 円3,063 億円 | 326 円900 億円 | −32.6% | −3.9% | 172 円476 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,877 円7,949 億円 | 1,285 円3,550 億円 | +95.6% | +6.9% | 4,161 円1.15 兆円 |
今の株価時価総額 2,128 円5,879 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 米国・リフォーム・賃貸が戸建の穴を埋めて育つ 利益 1,227 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 5,448 円1.51 兆円
人口は減るが、世帯の細分化と東京圏への集中で、飯田の棟数は 10 年で 1 割も減らない。粗利率は高めを保ち、営業利益率は 8% 近くになる。米国は州を広げて数十州規模に、国内ではリフォームと賃貸住宅が収益の柱になる。ストック・海外の売上は戸建を除く事業の半分以上を占め、会社の掲げる戸建依存 70% を超えて低下する。ROE は 8% を超え、中期計画の ROE10% に近づく。累進配当に加えて自社株買いも継続し、資本効率が改善する。戸建の利益率が高く保たれるため、利益の波も小さくなり、市場の評価が一段上がる。ただし、この姿には新しい事業を買収で広げながら失敗しない運営力が要る。
- 戸建分譲:数量 35,140(年間販売棟数(棟))× 価格 0.46(1 棟当たり平均販売価格(億円))→ 売上 16,207 億円・営業利益 1,297 億円。棟 -5%・単価 +40%
- マンション分譲:数量 2,530(年間引渡戸数(戸、推定))× 価格 0.58(1 戸当たり平均価格(億円))→ 売上 1,468 億円・営業利益 103 億円。戸 +10%・単価 +40%
- 請負:数量 1,900(年間引渡棟数(棟、推定))× 価格 0.62(1 棟当たり請負金額(億円))→ 売上 1,169 億円・営業利益 47 億円。棟 ±0・単価 +40%
- ストック・海外ほか:数量 33,000(取扱件数(件、リフォーム・不動産・米国の販売の合計、推定))× 価格 0.14(1 件当たり売上(億円))→ 売上 4,687 億円・営業利益 422 億円。件 3 倍・単価 +40%
倍率:事業の純利益 1,227 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍。全体の PER 12.27 倍、時価総額 15,055 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:戸建の減少を新事業が埋め、利益率も保つ組み合わせは条件が多い。前の中期計画を外した実績もあり、1 割未満に抑える。
やや楽観 22% 戸建を守りつつ、ストック・海外が着実に伸びる 利益 942 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,132 円1.14 兆円
棟数は 10 年で 1 割強の減少にとどまり、単価は物価を少し超えて上がる。営業利益率は 7% 台を保つ。米国とリフォームが着実に伸び、ストック・海外の売上は 2.5 倍ほどになる。小さな買収が積み重なるが、大型の失敗は無い。累進配当を守りつつ、自社株買いを増やす。ROE は 7% 近くで、資本コストにほぼ並ぶ。倍率は今よりやや高い。戸建の人口減少に対する守りを、新しい事業が少しずつ厚くしていく姿である。ただ、戸建の外の利益は全体の 2 割ほどにとどまり、ここでも戸建の動きが全体を決める。米国は州ごとに住宅市況が違い、現地の経営人材の確保が伸びの上限になる。
- 戸建分譲:数量 32,550(年間販売棟数(棟))× 価格 0.45(1 棟当たり平均販売価格(億円))→ 売上 14,584 億円・営業利益 1,050 億円。棟 -12%・単価 +36%
- マンション分譲:数量 2,300(年間引渡戸数(戸、推定))× 価格 0.56(1 戸当たり平均価格(億円))→ 売上 1,296 億円・営業利益 84 億円。戸 ±0・単価 +36%
- 請負:数量 1,805(年間引渡棟数(棟、推定))× 価格 0.60(1 棟当たり請負金額(億円))→ 売上 1,079 億円・営業利益 38 億円。棟 -5%・単価 +36%
- ストック・海外ほか:数量 27,500(取扱件数(件、リフォーム・不動産・米国の販売の合計、推定))× 価格 0.14(1 件当たり売上(億円))→ 売上 3,794 億円・営業利益 304 億円。件 2.5 倍・単価 +36%
倍率:事業の純利益 942 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 11,417 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:小さな買収を積み、新しい柱が徐々に太る姿は現実的で、相応の厚みを置く。
中立 34% 戸建の売上は横ばい、新しい柱が少し育つ 利益 672 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,947 円8,145 億円
人口と世帯の減少で、分譲戸建の市場は年に 3% 前後のペースで縮む。飯田は弱い同業の退場でシェアを足し、棟数の減りを 10 年で 2 割強にとどめる。単価は物価並みに上がり、戸建の売上は今とほぼ同じだ。ストック・海外は買収とリフォームで 2 倍になるが、利益への寄与は限られる。営業利益率は 6% 台で、ROE は 5% 前後に落ち着く。累進配当を維持し、還元は純利益の 6 割ほどになる。成熟した、成長しない会社になる。純負債は在庫の回転で今より減り、利払いの負担は軽くなる。それでも、10 年たっても売上と利益はほとんど動かない。株主の取り分は、配当と自社株買いの積み重ねに限られる。
- 戸建分譲:数量 28,851(年間販売棟数(棟))× 価格 0.44(1 棟当たり平均販売価格(億円))→ 売上 12,737 億円・営業利益 790 億円。棟 -22%・単価 +34%
- マンション分譲:数量 2,070(年間引渡戸数(戸、推定))× 価格 0.56(1 戸当たり平均価格(億円))→ 売上 1,149 億円・営業利益 69 億円。戸 -10%・単価 +34%
- 請負:数量 1,615(年間引渡棟数(棟、推定))× 価格 0.59(1 棟当たり請負金額(億円))→ 売上 951 億円・営業利益 29 億円。棟 -15%・単価 +34%
- ストック・海外ほか:数量 22,000(取扱件数(件、リフォーム・不動産・米国の販売の合計、推定))× 価格 0.14(1 件当たり売上(億円))→ 売上 2,991 億円・営業利益 209 億円。件 2 倍・単価 +34%
倍率:事業の純利益 672 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 8,145 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:棟数の減少と単価の上昇が釣り合い、売上は伸びず、利益も今の延長にとどまる姿を中心に置く。
やや悲観 25% 人口減と空き家の増加で棟数が大きく細る 利益 288 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,805 円4,987 億円
人口減が首都圏にも明確に及び、空き家の増加が新築需要を削る。飯田の棟数は 10 年で 4 割ほど減り、単価の上昇も物価に届かない。固定費の重さで営業利益率は 4% 台まで下がる。ストック・海外は伸びるが、戸建の減少を補えない。ROE は 2% 台で、会社の掲げた 10% は遠い。累進配当は守るが、自社株買いは止まり、自己資本は積み上がるだけになる。リフォームは顧客基盤に支えられて続くが、利益率が低く、戸建の減少を埋めるには足りない。在庫の評価損も一部で出て、会社の評価は資産の値段に近づく。戸建の営業網を各社で維持する費用が重くなり、拠点の統合も進めるが、削減の効果は売上の減少に追いつかない。
- 戸建分譲:数量 22,933(年間販売棟数(棟))× 価格 0.41(1 棟当たり平均販売価格(億円))→ 売上 9,444 億円・営業利益 425 億円。棟 -38%・単価 +25%
- マンション分譲:数量 1,725(年間引渡戸数(戸、推定))× 価格 0.50(1 戸当たり平均価格(億円))→ 売上 858 億円・営業利益 34 億円。戸 -25%・単価 +20%
- 請負:数量 1,330(年間引渡棟数(棟、推定))× 価格 0.53(1 棟当たり請負金額(億円))→ 売上 702 億円・営業利益 14 億円。棟 -30%・単価 +20%
- ストック・海外ほか:数量 15,400(取扱件数(件、リフォーム・不動産・米国の販売の合計、推定))× 価格 0.12(1 件当たり売上(億円))→ 売上 1,875 億円・営業利益 94 億円。件 1.4 倍・単価 +20%
倍率:この筋書きは純利益 288 億円で ROE 2.4%、稼ぐ力(÷k)は約 3,200 億円。在庫(販売用の土地・建物)は値下げすれば現金に戻るので、売れる資産の税後は今の自己資本 10,210 億円の 4 割の 4,084 億円と見積もった(在庫の内訳は開示を確認できず、筆者の推定)。稼ぐ力より資産が大きいので資産を床にした。
確率:10 年という長さでは、人口減少の影響が戸建の棟数を深く削る可能性が高い。業界の見通しの下側に当たる姿として厚く置く。
悲観 12% 構造的に負け、在庫の評価損が続く 利益 −88 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,108 円3,063 億円
価格競争と人口減の両方が効き、分譲戸建の棟数は現在の半分以下になる。単価も物価を下回り、戸建の利益はほぼ消える。在庫を抱える回転型の弱点が出て、評価損が続く。ストック・海外は伸びないまま、赤字の戸建を支えられない。配当は減額し、自社株買いは止まる。自己資本は評価損で 1,500 億円ほど削られるが、土地という実物資産が下支えし、PBR は 0.4 倍付近で止まる。配当は在庫と保有不動産の売却で得た現金で細く続け、会社が倒れる展開にはならない。ただし、優良な会社とはもう呼べない。リフォームや賃貸住宅の事業は残るが、全体の利益を支えるには小さく、株主の取り分は資産の切り売りで得た現金に頼る。
- 戸建分譲:数量 16,645(年間販売棟数(棟))× 価格 0.35(1 棟当たり平均販売価格(億円))→ 売上 5,758 億円・営業利益 86 億円。棟 -55%・単価 +5%
- マンション分譲:数量 1,150(年間引渡戸数(戸、推定))× 価格 0.41(1 戸当たり平均価格(億円))→ 売上 476 億円・営業利益 5 億円。戸 -50%・単価 ±0
- 請負:数量 950(年間引渡棟数(棟、推定))× 価格 0.44(1 棟当たり請負金額(億円))→ 売上 418 億円・営業利益 2 億円。棟 -50%・単価 ±0
- ストック・海外ほか:数量 11,000(取扱件数(件、リフォーム・不動産・米国の販売の合計、推定))× 価格 0.10(1 件当たり売上(億円))→ 売上 1,116 億円・営業利益 34 億円。件 ±0・単価 ±0
倍率:赤字に近く稼ぐ力は 0 とみる。在庫と土地の評価損が続き、投げ売りに近い値下げで処分する前提で、今の自己資本 10,210 億円の 3 割の 3,063 億円を床に置いた(内訳は筆者の推定)。EV÷営業利益は一年の利益が薄いために高く出るが、この筋書きは資産で測る。
確率:棟数が半分近くまで落ち、価格競争で採算が崩れる負け筋は、在庫を抱える回転型である以上、1 割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
戸建分譲
土地を仕入れ、建売住宅を建てて売る中核事業。6 社の営業網と施工をグループの調達力で支える。売上の約 8 割。
| 数量年間販売棟数(棟) | 価格1 棟当たり平均販売価格(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 36,989 | 0.33 | 12,186 | 790 |
| 10 年後 中立 | 28,851 | 0.44 | 12,737 | 790 |
取り方:売上 12,186 億円と販売棟数 36,989 棟(前期比 1,638 棟減)から、1 棟 0.33 億円(3,290 万円ほど)。営業利益は未開示のため、売上総利益 1,950 億円(率 16.0%)と全体の営業利益 944 億円から、利益率 6.5% で 790 億円と推定。単価は中立で物価並み(3 年 1.09 倍・10 年 1.34 倍)。
マンション分譲
リビングコーポレーションなどが手がけるマンションの分譲。戸建より単価は高く、数量は小さい。
| 数量年間引渡戸数(戸、推定) | 価格1 戸当たり平均価格(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,300 | 0.41 | 953 | 55 |
| 10 年後 中立 | 2,070 | 0.56 | 1,149 | 69 |
取り方:売上約 952 億円(前期比 6.8% 増)。戸数は未確認で、1 戸 0.41 億円(約 4,100 万円)と置いて約 2,300 戸と推定。営業利益は推定(利益率 6%)。単価は物価並み。
請負
注文住宅や法人向けの建築を請け負う事業。仕入れの在庫を持たないぶん、利益率は低い。
| 数量年間引渡棟数(棟、推定) | 価格1 棟当たり請負金額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,900 | 0.44 | 835 | 25 |
| 10 年後 中立 | 1,615 | 0.59 | 951 | 29 |
取り方:売上約 835 億円(前期比 6.5% 増)。件数は未確認で、1 棟 0.44 億円と置いて約 1,900 棟と推定。営業利益は推定(利益率 3%)。単価は物価並み。
ストック・海外ほか
リフォーム・不動産売買・賃貸住宅・米国事業など。会社が戸建の外に育てようとしている柱。
| 数量取扱件数(件、リフォーム・不動産・米国の販売の合計、推定) | 価格1 件当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11,000 | 0.10 | 1,116 | 74 |
| 10 年後 中立 | 22,000 | 0.14 | 2,991 | 209 |
取り方:売上は、全体 15,089 億円から戸建・マンション・請負を引いた差の約 1,116 億円。1 件 0.10 億円(約 1,000 万円)と置いて約 11,000 件と推定した粗い置き方。営業利益は推定(利益率 6.6%)。拡大は買収と、累計 80 万棟超の顧客基盤へのリフォーム営業。単価は物価並み。 数量は件数(実物)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は買収と顧客基盤へのリフォーム営業。
リスクと懸念
住宅ローン金利の上昇と建売の買い手
10 年国債が 3% へ上がれば、住宅ローン金利も上がる。建売の買い手は月々の返済額で家を選ぶので、金利は棟数と価格に直接効く。2008〜2009 年のリーマン危機では着工が 3 割ほど減り、在庫の投げ売りで利ざやが消えた。
在庫と土地の仕入れが先行する負担
2026 年 3 月期は営業キャッシュフローが約 970 億円の流出で、純負債は 1,486 億円から 3,665 億円へ増えた。需要が落ちれば、仕入れた土地と建築中の在庫が評価損と金利負担を同時に生む。借り換えのたびに、利払いも今より重くなる。
戸建一本足と棟数の長期的な減少
売上の 8 割が戸建分譲で、棟数は人口減で細る。単価が物価並みに上がっても、売上は横ばいに近い。2025 年の分譲戸建の着工は 11.6 万戸と低く、空き家率の上昇も新築需要を削る。会社は戸建依存を 7 割に下げる計画だが、道のりは長い。
中期計画の達成力
前の中期計画は 2024 年 3 月期に営業利益 1,650 億円超を狙ったが、実績は 592 億円だった。今回の ROE10% と戸建依存率 70% の目標も、稼ぎが変わらない限り届きにくい。計画の数字は割り引いて読む。
利益率が市中在庫の少なさに乗っている点
戸建の売上総利益率は 16.0% まで上がったが、市中の在庫が増えて同業が値引きに動けば、すぐ戻る。営業利益率は過去に 4% から 11% の間を往復した。今の水準が長く続くとは限らない。利益率が 1 ポイント下がるだけで、営業利益は 150 億円ほど減る。
海外・新規事業の実行リスク
米国は 2025 年 4 月のシニア向け住宅会社、2026 年 3 月のユタ州の住宅会社 3 社と、小さな買収を重ねている。米国の住宅市況や金利、現地の人材と文化の統合がうまくいかなければ、投下した資金が回収できない。
今後の分かれ目
- 住宅ローン金利が想定より速く上がり、棟数が 1 割以上減る
- 戸建の利益率が一気に薄れ、在庫の評価損も出る。確率は、やや悲観と悲観の筋書きに寄せる。
- 戸建の売上総利益率が 16% 前後を 3 年以上保つ
- 利益率の回復が一過性でなかったと分かり、中立と楽観の確率を高める。
- リフォーム・賃貸住宅・米国の売上が戸建を除いて 5,000 億円を超える
- 戸建依存が下がり、利益の波が小さくなる。倍率の見直しも期待でき、楽観の筋書きに近づく。
- 純負債が 5,000 億円を超えて増える
- 在庫の積み上がりが続いていることになる。売れ行きが落ちた時の傷が深くなり、悲観の確率を引き上げる。
- ROE が 3 年続けて 8% を超える
- 資本コストを上回る稼ぎが定着した証拠になる。倍率の上限が上がり、本質価値は中立より上に寄る。
- 自社株買いを大型に増やし、資本を厚く返す
- 資本効率が改善し、PBR の低さが縮む。本質価値の上積みになる。
見ておくもの
- 新設住宅着工・分譲一戸建の着工戸数(国土交通省の統計)
- 住宅ローン金利(フラット 35・民間の変動金利)と 10 年国債の利回り
- 戸建分譲の販売棟数・平均単価・売上総利益率(四半期の決算)
- 営業キャッシュフローと純負債の動き(在庫・土地の積み上がり)
- リフォーム・賃貸住宅・米国事業の売上と利益率
- ROE の推移と、自社株買いの規模(中期計画 ROE10% への道のり)
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、セグメントごとに棟数(実質)× 価格(物価 3% 込みの名目)で積み、借り換えによる利払いの増加を純利益から引いた。倍率は資本コスト 8.25%(基本 7.5% に、循環+0.75・値決めの弱さ+0.5・借金+0.25・国内の縮小+0.25)から出した。ROE が k に届かない楽観〜中立は PER の上限 1÷k(11.1 倍)の 75〜85% に置いた。悲観側は稼ぐ力(純利益÷k)より大きい、在庫が現金に戻る分の資産(筆者の推定、今の自己資本の 3〜4 割)を床にした。過去の PBR の底は使っていない。今の時価総額は最後に比べただけで、会計は IFRS でリースはすでに貸借対照表に載っている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.2→12.27 倍・やや楽観 PER 8.6→12.12 倍・中立 PER 8.1→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β 0.87 × 5% + 規模 0.50%。k は基本 7.5% に quality +1.75%(循環+0.75・値決め+0.5・借金+0.25・寿命+0.25)を足した 9.25%。住宅の循環・純負債の増加・新規事業の実行といった個別のリスクは k に足さず、棟数・利益率・確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.25%。
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