結論
LAホールディングスは、九州・沖縄と東京都心で不動産を仕入れ、手を加えて売る会社だ。大きな土地を造成して売る事業、中古マンションの再生、新築の開発が柱で、賃貸は小さい。筆者の結論は、腕は確かだが今の値段は高すぎる、というものだ。
第一の理由は、利益が引き渡しの時期で大きく振れることだ。今期の営業利益は175億円の計画で、その約9割が下期に集中する。上期の実績は20億円にとどまった。福岡県古賀市の大型案件を予定どおり引き渡せるかで、今期の景色が変わる。
第二の理由は、借金が事業の燃料になっている点だ。在庫は742億円、有利子負債は729億円まで膨らんだ。金利が上がれば、その分だけ利益が削られる。
強みも本物だ。過去5年、会社は期初の計画を上回り続けてきた。安く仕入れて価値を足す目利きは、簡単にはまねできない。10年先も同じ腕で稼ぎ続けると、筆者は見る。ただ、それでも利益の伸びは物価を少し上回る程度にとどまる。
総合の本質価値は今の時価総額を7割ほど下回り、割高と出た。長期計画どおりに進む楽観の筋書きでも、今の値段には届かない。
バリュー投資の観点から
オーナーとして持ち続けたい会社か。筆者の見立ては、事業は評価できるが、安全域がない、だ。安全域とは、払う値段と本質価値の差のことである。
理由は三つある。一つ目は利益の中身だ。売った時に一度だけ入る利益が大半で、翌年も同じ額が入る保証はない。毎年、新しい土地を仕入れ直す必要がある。二つ目は借金だ。在庫を借入で抱える商売は、市況が良い間は高い利回りを生む。悪くなれば、傷は一気に深くなる。三つ目は堀の浅さだ。腕のある経営者が去れば、稼ぐ力は目に見えて落ちる。
評価できる点もある。再建の経験を持つ経営者が、資本効率を意識して動いている。過去5年の計画超えも、運だけの産物には見えない。
それでも、バリュー投資で最も大事なのは、値段に見合う安全域だ。この会社の利益に十分な倍率を認めても、10年後の姿は今の時価総額に届かない。事業が悪いのではない。値段が先を行き過ぎている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、不動産を安く仕入れて価値を上げ、買い手に売ることだ。会社は事業を、新築・再生・価値向上・賃貸の四つに分けて開示している。
新築と価値向上は、開発型の事業だ。造成した土地を売る、都市型の商業ビルや賃貸レジデンスを建てて売る、といった案件が中心になる。1件10億〜50億円の中規模に絞り、2〜3年で回収する。古賀市で進む約28万平方メートルの造成は、会社として過去最大級だ。次の候補地も確保している。
再生は、中古マンションを1戸ずつ買い、内装を作り替えて売る事業だ。主力は都心3区や福岡・沖縄の高額帯で、1億円台から9億円台までそろえる。今期の上期は再生が売上の最大部門になり、新築を抜いた。ただ、利益率は開発型の半分ほどだ。再生の比率が上がると、全体の粗利益率は下がる。
賃貸は規模こそ小さいが、粗利益率が高く、景気に左右されにくい。会社はここを育てる方針だ。北海道ではホスピス住宅や障がい者グループホームの開発を、ヘルスケア企業と組んで始めた。
つまり、この会社の利益の大半は「売る」ことで生まれ、「持つ」ことでは生まれない。在庫を抱え、借入で回し、売却益で返す。回転が止まれば、利益だけでなく資金繰りにも響く。
優良さと弱いところ
優良さをどう見るか。筆者は「腕はあるが、堀は浅い」と見る。堀とは、他社がまねできない強みのことだ。
腕の証拠は数字に出ている。営業利益は5年で約9倍になり、利益率は17〜23%、ROE(自己資本利益率)は20%台を保ってきた。再生では価格競争に巻き込まれにくい高額帯を、開発では「未来の一等地」になるエリアを選ぶ。
だが、堀は深くない。不動産の開発と販売には、他社にまねできない技術も、顧客を縛る仕組みもない。強いのは仕入れの目利きと、金融機関との関係だ。目利きは人に宿り、再現が難しい。しかも市況が崩れれば、誰が仕入れても利益は薄れる。
資本の面でも注意がいる。自己資本比率は27%で、純有利子負債は自己資本の1.4倍に当たる。借入が増えるほど回転は上がるが、谷での傷も深くなる。
経営は、2012年に経営再建のため招かれた脇田栄一社長が率いる。創業者ではなく再建を担った経営者で、還元にも前向きだ。一方、脇田氏と共同保有者の持ち株は約11%にとどまる。株主と運命をともにしているとまでは言いにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社は、不動産市況の追い風に乗って伸びてきた。その風の行方が、10年の最大の論点になる。
追い風は大きかった。都心6区の中古マンションの平均売り出し価格は、2023年に初めて1億円を超えた。建設費は2021年以降に2〜4割上がり、新築の供給が細った。その分、既存の物件と造成済みの土地の価値が上がり、仕入れて売る側に利益が残りやすかった。
向かい風もはっきりある。10年国債が3%まで上がる世界では、賃貸物件の期待利回り(キャップレート)が上がり、買い手が払える値段は下がる。開発の利益は薄くなる。金融機関も融資先を選び始めた。借入で在庫を積む会社にとって、これは最大の制約だ。
競合は用途ごとに違う。再生マンションでは、スター・マイカ、イーグランド、サンフロンティア不動産、インテリックスが並ぶ。開発では大手デベロッパーや外資系ファンドが、同じ土地を取りに来る。LAの武器は、大手が手を出しにくい中規模の案件に絞ったことだ。
成長領域のヘルスケア施設は、高齢化で需要が伸びる。ただ、建築費の上昇と運営会社の確保が壁になる。10年で見れば、数量は人口の減少に引っ張られ、地方では伸びにくい。価格は物価並みに上がるが、利益は調達金利の分だけ削られる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、積極的な拡大と手厚い還元の両立を狙っている。
還元では、配当性向の目標を40%に引き上げ、株主資本配当率(DOE)6%の下限を新設した。今期は6期連続の増配を見込み、株主優待も始めた。借金で在庫を積みながら還元を増やす形で、筆者はやや背伸びだと見る。
成長投資では、長期計画「LA Next Stage 2031」で賃貸不動産を大きく積み増す。経常利益は2029年までに180億円、2031年には220億円を目指す。大型案件はパートナーのファンドと組み、貸借対照表に載せない形で進める。借入の負担を抑える工夫で、これは評価できる。
M&Aでは、2024年に始めたM&A支援と企業投資の事業がある。地方の中堅企業が相手だが、実績はまだ薄い。買収で価値を壊さないかを、見ていく必要がある。
過去の増資と新株予約権の行使で、株数は増えてきた。希薄化の癖があるため、1株当たりの価値は利益の伸びより遅れやすい。東証グロース上場の中堅で、買収提案が出る可能性もゼロではない。
点検済み(2026-10-19):株数(分割後)、起点の利益、悲観の確率を確かめた。割高に見せる見落としは見つからなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
長期計画「LA Next Stage 2031」は、現実的な目標だ。会社は過去5期連続で期初の計画を上回ってきた。営業利益は5年で約9倍になり、実績の裏付けがある。
仕込みも済んでいる。古賀市では約28万平方メートルの造成が8月末に終わり、下期に引き渡す。次の候補地(約17万平方メートル)も押さえた。1件が大きい土地の案件が毎年のように続けば、利益は階段状に増える。
資金面も整ってきた。金融機関の融資枠が大きく広がり、100億円規模の案件はパートナーのファンドと組んで貸借対照表に載せずに進められる。借入への依存を抑えながら、規模を追える形だ。
賃貸は、2025年度の約110億円から2031年度に400億円へ積む計画だ。北海道のホスピス住宅など、高齢化で需要が確かな施設が中心になる。売却益に頼らない土台ができれば、利益の質が上がり、倍率も切り上がる。
還元も厚い。DOE6%の下限と配当性向40%の目標で、増配が続く。上期の低い進捗は例年の下期偏重にすぎない。通期の計画は変更されていない。
慎重な見方
今期の計画は、実績から見て相当に高い。上期の営業利益は20億円で、前年の半分に満たない。粗利益率も前年の32%から23%に下がった。残りの約155億円を下期で稼ぐには、古賀市の引き渡しが1日も遅れてはならない。
しかも、計画は新築の粗利益率を4割台に引き上げる前提で組まれている。2024年は27%だった。一度きりの大型の土地売却で作る利益を、毎年の稼ぐ力と見るのは危うい。
財務は攻めの姿勢だ。在庫は742億円まで積み上がり、自己資本比率は27%に下がった。営業のキャッシュフローは赤字が続いている。金利が0.75%上がれば、利払いは年に約5億円増える。借り換えのたびに新しい金利になるため、負担はこれから重くなる。
市況は10年近く追い風だった。都心の中古マンションも福岡の土地も、高値圏にある。売れ行きが鈍れば、在庫は資産から重荷に変わる。リーマン後には、開発型の不動産会社が相次いで行き詰まった。
最後に値段がある。2025年の利益に対して約30倍で、十分な成長を織り込んでいる。計画が少しでもずれれば、利益と倍率が同時に縮む。
どちらに重みを置いたか
事業の腕では強気の見方が優勢だが、利益の質と値段では慎重な見方が的を射ている。計画の超過実績と古賀市の仕込みは本物だ。ただ、利益が引き渡しの時期に偏り、借入で在庫を回す構造は変わらない。
本質価値の計算では、長期計画に近い楽観の筋書きでさえ、10年後の価値は今の時価総額を下回った。確率は、腕を評価して中立と楽観側に厚く置きつつ、市況の反転と調達環境の悪化を重く見て、悪い側にも相応の重みを残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,857 円1,278 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 427 円294 億円)。 今の値に割り戻すと 1,106 円761 億円、今との差 −59.0%、 期待の年率 −1.7%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,271 円2,939 億円 | 651 円448 億円 | +82.4% | +6.2% | 492 円339 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,811 円1,934 億円 | 522 円359 億円 | +23.5% | +2.1% | 667 円459 億円 |
| 中立 | 36% | 2,009 円1,382 億円 | 475 円327 億円 | −8.0% | −0.8% | 894 円615 億円 |
| やや悲観 | 22% | 539 円371 億円 | 347 円239 億円 | −67.2% | −10.5% | 195 円134 億円 |
| 悲観 | 12% | 217 円149 億円 | 87 円60 億円 | −88.7% | −19.6% | 36 円25 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,857 円1,278 億円 | 427 円294 億円 | −15.4% | −1.7% | 2,285 円1,572 億円 |
今の株価時価総額 2,699 円1,857 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 長期計画をやり切り、中堅の総合デベロッパーへ 利益 181 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 4,271 円2,939 億円
長期計画「LA Next Stage 2031」が、ほぼ計画どおりに進む。古賀市のような大型の造成案件が毎年のように続き、福岡・沖縄・北海道で中規模の開発と再生が積み上がる。経常利益は2031年に220億円へ届き、その後も物価並みに伸びる。
賃貸は北海道のヘルスケア施設を中心に膨らみ、売却益に頼らない土台ができる。大型案件は共同事業にして貸借対照表に載せない工夫が利き、自己資本比率は3割台を保つ。金利は3.5%前後で落ち着き、利払いは売却益で吸収できる。
10年後の営業利益は今の3倍を超え、純利益は180億円前後になる。ROEは17%ほどに落ち着く。これが10年続くには、地価と中古マンションの値段が崩れないことが前提だ。
- 開発型(新築・価値向上):数量 50.0(年間の売却案件数(件))× 価格 18(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 900 億円・営業利益 279 億円。50 件 × 18.00 億円、営業利益率 31.0%
- 再生(中古マンション):数量 100(年間の販売戸数(戸))× 価格 3.50(1戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 350 億円・営業利益 30 億円。100 戸 × 3.50 億円、営業利益率 8.5%
- 賃貸(ヘルスケア施設ほか):数量 400(賃貸用不動産の簿価(億円・今の値段のまま))× 価格 0.13(簿価あたりの賃料収入(比率))→ 売上 54 億円・営業利益 24 億円。簿価 400 億円(実質)× 0.134、営業利益率 45%
倍率:事業の純利益 181 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.73 倍、時価総額 2,853 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の超過実績と古賀市の仕込みは確かだが、10年連続で市況の追い風に乗り続ける必要がある。借入と市況の反転を考えると、確率は1割にとどめた。
やや楽観 20% 計画の7割で、成長は続く 利益 119 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 2,811 円1,934 億円
計画には届かないが、成長は続く。大型の造成は数年に1件のペースになり、中規模の開発と再生が主力であり続ける。経常利益は2031年に150億円前後まで伸び、会社の目標の7割ほどに収まる。
賃貸はヘルスケア施設の積み増しが計画より遅れる。運営会社の確保や建築費の上昇が足かせになるためだ。それでも、借入は物価の分だけ増え、利払いは利益の2割強を食う。金融機関との関係は保たれ、大型案件もパートナーと組んで進められる。ただ、成立する件数は計画の半分ほどだ。
10年後の営業利益は今の2倍強。再生の比率が高まり、全体の利益率は今よりやや低い。配当性向40%は守られ、ROEは14%ほどになる。
- 開発型(新築・価値向上):数量 38.0(年間の売却案件数(件))× 価格 17(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 647 億円・営業利益 184 億円。38 件 × 17.02 億円、営業利益率 28.5%
- 再生(中古マンション):数量 80.0(年間の販売戸数(戸))× 価格 3.43(1戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 274 億円・営業利益 22 億円。80 戸 × 3.42 億円、営業利益率 8.0%
- 賃貸(ヘルスケア施設ほか):数量 280(賃貸用不動産の簿価(億円・今の値段のまま))× 価格 0.13(簿価あたりの賃料収入(比率))→ 売上 38 億円・営業利益 16 億円。簿価 280 億円(実質)× 0.134、営業利益率 42%
倍率:事業の純利益 119 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.27 倍、時価総額 1,812 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:腕と資金調達力が保たれ、計画の7割まで進むという現実的な上振れ。過去5年の超過実績を評価し、2割を置いた。
中立 36% 腕は保たれるが、追い風は消える 利益 84 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,009 円1,382 億円
腕は保たれるが、市況の追い風は消える。開発の件数は今の1.2倍ほど、再生は高額帯で戸数が横ばい圏にとどまる。価格は物価並みに上がり、売上は物価を少し上回って伸びる。
10年のうち一度は、市況の谷が来る。2〜3年は在庫の回転が落ち、利益が半分近くに減る年も出る。借入は増えるが、金融機関との関係が保たれ、資金繰りは詰まらない。大型案件の毎年の積み上げは起きず、利益の柱は中規模の開発と再生になる。
10年後の営業利益は160億円前後。利払いが重くなり、純利益は80億円台にとどまる。ROEは12%ほどで、資本コストをわずかに上回る程度の普通の不動産会社になる。
- 開発型(新築・価値向上):数量 31.0(年間の売却案件数(件))× 価格 16(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 505 億円・営業利益 134 億円。31 件 × 16.29 億円、営業利益率 26.5%
- 再生(中古マンション):数量 68.0(年間の販売戸数(戸))× 価格 3.35(1戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 228 億円・営業利益 17 億円。68 戸 × 3.35 億円、営業利益率 7.5%
- 賃貸(ヘルスケア施設ほか):数量 210(賃貸用不動産の簿価(億円・今の値段のまま))× 価格 0.13(簿価あたりの賃料収入(比率))→ 売上 28 億円・営業利益 11 億円。簿価 210 億円(実質)× 0.134、営業利益率 40%
倍率:事業の純利益 84 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.81 倍、時価総額 1,248 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:腕は保たれるが追い風が消え、一度は谷が来るという落としどころ。確率が最も高い筋書きとして3割台半ばを置いた。
やや悲観 22% 調達が細り、回転が鈍る 利益 35 億円 · PER 6.7 倍 · 株価時価総額 539 円371 億円
調達が細り、回転が鈍る。金利が3%台で定着し、買い手が払える値段が下がる。キャップレートの上昇で、開発の利益は構造的に薄くなる。
金融機関が融資先を選別するようになり、在庫を積み増せない。大型案件は成立しにくく、中規模の開発も件数が減る。再生は都心の高額帯の値上がりが止まり、利益率が5%まで下がる。
10年後の営業利益は今の8割ほど。借入の利払いが利益の4割を食い、純利益は35億円前後になる。還元は続けるが、ROEは6%台で資本コストに届かない。会社は事業の幅を広げようとするが、新しい分野で成果は出ず、中規模の開発と再生を細々と回す普通の会社になる。
- 開発型(新築・価値向上):数量 22.0(年間の売却案件数(件))× 価格 15(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 326 億円・営業利益 69 億円。22 件 × 14.84 億円、営業利益率 21.0%
- 再生(中古マンション):数量 54.0(年間の販売戸数(戸))× 価格 3.00(1戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 162 億円・営業利益 8 億円。54 戸 × 3.00 億円、営業利益率 5.0%
- 賃貸(ヘルスケア施設ほか):数量 150(賃貸用不動産の簿価(億円・今の値段のまま))× 価格 0.13(簿価あたりの賃料収入(比率))→ 売上 20 億円・営業利益 8 億円。簿価 150 億円(実質)× 0.134、営業利益率 38%
倍率:ROE 6.4%(事業の純利益÷自己資本)が k 8.5% 以下なので、正当化 PER は 1÷k=10.3 倍が上限。利益が引き渡しの谷で薄く、案件を仕入れ直す必要もあるので、上限の 6.5 割の 6.7 倍に置いた。
確率:金利上昇と融資の選別で、開発の利益が構造的に薄くなる。借入で回す不動産会社にとって起こりやすく、2割強を置いた。
悲観 12% 市況が反転し、在庫が重荷になる 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 217 円149 億円
市況が反転し、在庫が重荷になる。2008年のリーマン後と同じく、不動産の買い手が資金を引き、開発中の物件が売れなくなる。会社は在庫を値下げして売り、減損を出す。
借入は返済の期限が来るたびに借り換えが必要で、金融機関は新しい融資を絞る。大型案件は止まり、件数は半分以下になる。再生も、高額帯の買い手が消えて利益が出ない。
自己資本は減損と赤字で減る。10年後に会社は生き残るが、営業利益は今の4分の1にとどまる。利払いでほぼ消え、純利益は数億円。配当も大きく減らす。在庫と賃貸物件の売却で借入を返し、配当をまかなう。売れる資産の価値が、そのまま会社の価値になる。
- 開発型(新築・価値向上):数量 12.0(年間の売却案件数(件))× 価格 13(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 153 億円・営業利益 18 億円。12 件 × 12.77 億円、営業利益率 12.0%
- 再生(中古マンション):数量 36.0(年間の販売戸数(戸))× 価格 2.63(1戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 95 億円・営業利益 3 億円。36 戸 × 2.62 億円、営業利益率 3.0%
- 賃貸(ヘルスケア施設ほか):数量 110(賃貸用不動産の簿価(億円・今の値段のまま))× 価格 0.13(簿価あたりの賃料収入(比率))→ 売上 15 億円・営業利益 6 億円。簿価 110 億円(実質)× 0.134、営業利益率 38%
倍率:ROE 0.8% が k 8.5% を大きく下回り、稼ぐ力(純利益÷k)は20億円足らず。価値は純現金+売れる資産の税後(floor_assets_oku)の水準まで下がる。今の自己資本298億円に0.5を掛けた。EV÷営業利益でも見た。純有利子負債427億円を足すと約21倍で高く見えるが、営業利益が谷の底に近い年の値で、倍率で語る水準ではない。
確率:リーマン級の市況の反転と調達の停止が重なる複合の筋書き。借入依存度が高い会社なので、無視できない1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
開発型(新築・価値向上)
土地の造成販売、都市型商業ビル・賃貸レジデンス・マンションの新築開発と、完成物件の価値向上後の売却。古賀市の大型造成を含む。
| 数量年間の売却案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25.0 | 12 | 304 | 85 |
| 10 年後 中立 | 31.0 | 16 | 505 | 134 |
取り方:2025年12月期の売上465億円から、再生と賃貸の推定額を引いた約304億円を開発型とした(会社の事業別の通期開示は未確認で推定)。1件10億〜50億円の中規模案件に大型の造成売却が混じるので、年25件・1件平均約12億円と置いた。件数は実質の数量、物価と大型化は1件あたり売上に入れる。営業利益は粗利益の約35%から販売費を引いた約85億円。
再生(中古マンション)
中古マンションを1戸ずつ仕入れ、内装を作り替えて売る。都心3区や福岡・沖縄の高額帯が中心。
| 数量年間の販売戸数(戸) | 価格1戸あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 2.50 | 150 | 11 |
| 10 年後 中立 | 68.0 | 3.35 | 228 | 17 |
取り方:2025年12月期の再生の売上は、第3四半期累計の約113億円から通期150億円前後と推定した。1億円台〜9億円台の高額帯なので、年60戸・1戸平均2.5億円と置く。粗利益率は15%前後で、販売費を引いた営業利益率は約7%。
賃貸(ヘルスケア施設ほか)
ヘルスケア施設・レジデンシャルホテル・商業施設・オフィスの保有と運用。北海道ではホスピス住宅の開発を進める。
| 数量賃貸用不動産の簿価(億円・今の値段のまま) | 価格簿価あたりの賃料収入(比率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 110 | 0.10 | 11 | 4 |
| 10 年後 中立 | 210 | 0.13 | 28 | 11 |
取り方:賃貸の売上約11億円を、賃貸用不動産の簿価約110億円(会社資料では2025年度108億円とされる)で割り、簿価あたり0.10と置いた。簿価は取得時の値段で数量とし、物価と賃料の上昇は価格に入れる。営業利益率は償却と管理費を引いて約35%。 数量は賃貸用不動産の簿価(実物の積み上がり)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は取得の積み増し。
リスクと懸念
引き渡しの時期への依存
今期の営業利益175億円の約9割が下期の計上予定で、上期は20億円にとどまった。大型の案件が1件ずれるだけで、通期の利益が大きく変わる。売る事業なので、利益が毎期なめらかに入る保証はない。
借入への依存と金利
在庫は742億円、有利子負債は729億円で、自己資本比率は27%。金利が0.75%上がると利払いは年に約5億円増える。借り換えのたびに新しい金利になるため、負担は時間をかけて重くなる。融資の枠が狭まれば、在庫を積む事業そのものが止まる。
市況の反転
都心の中古マンションも福岡の土地も、高値圏にある。10年国債が3%の世界では、買い手が払える値段が下がる。売れ行きが鈍ると、在庫は資産から重荷に変わる。リーマン後には、開発型の不動産会社が相次いで行き詰まった。
利益率の低下
上期の粗利益率は23%で、前年の32%から下がった。利益率の低い再生の比率が上がったことと、新築の案件構成が原因だ。計画は新築の粗利益率を4割台に置いており、達成できなければ利益が計画を大きく割る。
希薄化と株主の利害
新株予約権の行使や増資で、株数は増えてきた。経営陣の持ち株は共同保有を含めて約11%にとどまる。成長を急いで株数を増やせば、1株当たりの価値は利益の伸びより遅れる。
新規事業の不確かさ
2024年に始めたM&A支援と企業投資は、実績がまだ薄い。ヘルスケア施設は建築費の上昇と運営会社の確保が課題で、計画どおりに賃貸を積み増せるかは見通せない。本業から離れた分野で、資本の使い方を誤るおそれがある。
今後の分かれ目
- 古賀市の大型案件が予定どおり下期に引き渡されたら
- 今期の利益は計画に近づき、中立から楽観側へ確率を移してよい。ただし一度きりの売却益で、毎年の稼ぐ力とは区別して見る。
- 引き渡しが翌期にずれ込み、通期の計画が下方修正されたら
- 利益の偏りという弱点が表に出たとみて、悪い側へ確率を移す。在庫の増加と借入の伸びも同時に確かめる。
- 金融機関の融資姿勢が厳しくなり、在庫が積み上がったら
- 大型案件が止まる、やや悲観の筋書きに近づく。自己資本比率が25%を割るかが目安になる。
- 都心の中古マンションの売り出し価格が下がり始めたら
- 再生の利益率が下がり、在庫の評価損も出る。やや悲観から悲観へ重みを移す。
- 北海道のホスピス住宅など、賃貸が計画どおり積み上がったら
- 売却益に頼らない収益の柱ができ、利益の質が上がる。楽観寄りに見直してよい。
- M&A支援や企業投資で、大きな損失が出たら
- 資本配分の規律に疑いが生じる。ガバナンスの点検が要り、確率を悪い側へ移す。
見ておくもの
- 四半期ごとの在庫(販売用・仕掛)と、売上の下期偏重の度合い
- 新築と再生の粗利益率の推移
- 有利子負債と自己資本比率、借入の平均金利
- 古賀市の今在家地区など、次の大型用地の取得と引き渡し
- 賃貸不動産の残高と、ヘルスケア施設の稼働
倍率と資本コストの決め方
先に売却案件の件数と1件あたり売上、再生の戸数と単価、賃貸の簿価と賃料で10年の利益を積み、そのあとで倍率を決めた。倍率は資本コスト8.5%(基本7.5%に循環・値決め・借金・寿命の+2.25%)と、ROEから決まる正当化PERで置いた。利益は今の借入と、借り換えで3.5%前後になる金利を織り込んだ形で書いた。中立のPERは10倍で、今の実績PERに寄せてはいない。事業別の通期開示は確かめられず、2025年12月期の事業別の値は推定だ。新リース会計の影響は小さく、家賃を営業費用に入れる今の形に合わせている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→15.73 倍・やや楽観 PER 11→15.27 倍・中立 PER 10.4→14.81 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。