結論
アズ企画設計は、空室の多い中古の収益ビルやマンションを買い、直して満室に近づけ、富裕層や投資家に売る会社だ。筆者の結論は「割高」だ。売上は3期続けて過去最高を更新したが、もうけは借金で買った在庫の売り買いの差で、不動産の相場と金利に左右される。しかも成長の資金は、株を新しく出す新株予約権で集めている。
会社は2027年2月期に営業利益12.5億円を見込み、新しい中期計画では3年後に18億円を目指す。物件は大きくなり、1棟あたりの売値は10億円を超えるものが増えた。だが在庫を倍にすれば借金も倍になり、金利の上昇で利払いはさらに重くなる。営業利益と純利益の間には大きな利払いが挟まる。
2026年7月に出した新株予約権は、すべて行使されると株数が4分の1近く増える。不動産の再生は景気の良い時に大きく稼ぎ、悪い時に在庫の値下がりで大きく失う商売だ。10年をならして積み上げると、今の時価総額は良い時の利益を前提にした値段に見える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この事業は持ち続けたい種類のものではない。稼ぐ仕組みは、借りたお金で物件を仕入れ、相場が良いうちに売ることだ。うまく回る年は大きく稼ぐが、相場が崩れれば在庫の値下がりが利益を一気に消す。10年の間に一度は来るその年を、株主は避けられない。
経営の資本の使い方も気になる。成長の資金を新株予約権で集めると、規模は大きくなっても、既存の株主の取り分は薄まる。時価総額100億円という目標も、1株の価値の目標ではない。
良い点もある。物件を直して価値を上げる腕はあり、管理の子会社で毎月の収入も増やし始めた。筆者が見方を変えるのは、借入を増やさずに利益を伸ばし、新株予約権の行使より自社の稼ぎで成長できると示した時だ。それまでは、払う値段に安全域を感じない。勢いのある年の利益に倍率を掛けた値段は、相場の崩れを数えていない。
何で稼ぐ会社か
事業は不動産の販売、賃貸、管理の三つで、売上の9割以上を販売が占める。2026年2月期の売上135億円のうち、販売が約126億円だった。
販売は、都心や埼玉の中古の一棟の収益ビル、区分のマンションや事務所を買い取り、外装や設備を直し、空室を埋めて賃料を上げてから売る。千代田区のオフィスビルでは、1階の外装を直し、空いた区画を家具付きの事務所にして地方の富裕層に売った。物件を探す力、直す力、売る相手を見つける力の三つで稼ぐ。2027年2月期の第1四半期には、1棟の平均の売値が13億円を超えた。
賃貸は、売るまでの間に持つ物件の家賃だ。売れば家賃は消えるので、規模は小さい。管理は、2025年に完全子会社にした浅草の富士ホームを中心に、ビルや住宅の管理を請け負う。毎月決まって入る収入だが、売上の2%に満たない。
在庫の販売用不動産は約105億円あり、その多くを銀行からの借入でまかなう。物件を1つ仕入れるたびに、数億円から十数億円の借入が動く。本社は東京の丸の内に置き、社員は約70人と少ない。一人あたりの売上は2億円近く、少人数で大きな金額を動かす商売だ。
優良さと弱いところ
優良さは平均並みかそれ以下と見る。物件を直して価値を上げる力は本物で、空室を埋め、賃料を上げる手順を持っている。ただ、同じことをする会社は多い。サンフロンティア不動産やトーセイ、ムゲンエステート、ランドネットなど、規模の大きな相手が同じ物件を取り合う。堀、つまり他社がまねできない強みは、仕入れの情報網と担当者の腕に頼っている。
値決めの力は弱い。売値は投資家が求める利回りで決まり、その利回りは金利で動く。金利が上がれば、同じ家賃のビルでも売値は下がる。仕入れの値段も同じ相場で決まるので、差を取る余地は景気しだいだ。
資本の効率は、相場の良い時は高い。ROEは過去10年の中央値で14%台ある。ただし2022年2月期には在庫の評価損で最終赤字を出した。借入は自己資本の1.4倍あり、相場が崩れた時の守りは薄い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
中古の収益不動産の売買は、2020年代に入って大きく伸びた。低金利で国内外の投資家の資金が流れ込み、都心のビルやマンションの値段は上がり続けた。相続対策の富裕層も、現金より不動産を持ちたがった。アズ企画設計の売上の伸びは、この追い風の上にある。
風向きは変わりつつある。日銀の利上げで、借りて買う投資家の負担は増えた。10年国債の利回りが3%に向かう世界では、投資家が求める不動産の利回りも上がり、同じ家賃なら売値は下がる。一方で物価が上がれば家賃も上がる。10年をならせば、売値は名目で物価並みか少し下に落ち着くと見るのが筋だ。
相手は多い。大手の不動産会社に加え、サンフロンティア不動産、トーセイ、ムゲンエステートのような再生の専業、不動産ファンドが同じ物件を狙う。小さな会社は物件を大きくすれば利益は伸びるが、一つの物件が売れ残った時の痛手も大きくなる。数量の取引件数は、景気の良し悪しで大きく振れる。
建築費の上昇は、古いビルを直して使う仕事には追い風だ。新しく建てるより安く、早く使えるからだ。ただ、その追い風は同じ再生の業者すべてに吹き、仕入れの値段を押し上げる。
資本政策と M&A
配当は1株あたりの額を毎年据え置く形で、総額は年0.5億円前後だ。株主優待でQUOカードを年2回配り、総額は年0.2億円前後と推定する。配当と優待を合わせても、純利益に対する還元の割合は2割に満たない。
資金集めは株主にとって重い。2026年7月に、マッコーリー・バンクなどを相手に第7〜9回の新株予約権を出した。すべて行使されると37.5万株、今の株数の約25%が新しく増え、手取りは約13億円になる。使い道は物件の仕入れと買収だ。過去にも増資や新株予約権で株を増やしてきた。
買収は2025年の富士ホームが最初で、管理の収入を厚くする狙いだ。会社は時価総額100億円を目標に掲げる。目標の達成が株数を増やして進むなら、1株の価値の伸びは小さくなる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アズ企画設計は勢いに乗っている。売上は3期続けて過去最高で、2027年2月期の第1四半期は営業利益が前年の3倍近くになった。1棟の平均の売値は5億円から13億円へ上がり、扱う物件が大きくなった分、1件あたりのもうけも大きい。
新しい中期計画では3年後の営業利益を18億円、その先を30億円とする。新株予約権で集める13億円を頭金にすれば、借入と合わせて数十億円の物件を仕入れられる。富士ホームのような管理の会社を買えば、毎月の収入も増える。
物価が上がる世界では、家賃も物件の値段も名目で上がる。古いビルを直して価値を上げる仕事の出番は、建築費の上昇でかえって増える。新しく建てるより、今あるビルを直す方が安いからだ。営業利益が30億円に届けば、今の時価総額は利益の数倍にすぎない。
2022年2月期の赤字は、コロナ禍の特別な年の評価損だ。その後は4期続けて黒字で、在庫の回転も速くなった。一度の失敗で、会社の腕まで疑うのは公平ではない。
慎重な見方
この会社の利益は、相場の追い風の上にある。低金利で不動産の値段が上がり続けた数年は、仕入れた物件が何もしなくても値上がりした。金利が上がる世界では、その追い風が逆になる。投資家が求める利回りが上がれば、同じ家賃でも売値は下がる。
借金も重い。在庫105億円を借入でまかない、2026年2月期は営業利益7.7億円のうち3億円近くが利払いなどで消えた。金利がさらに上がれば、利払いは利益をもっと削る。在庫を大きくする計画は、相場が崩れた時の損も大きくする。2022年2月期には在庫の評価損で最終赤字を出した。
そして株主の取り分が薄まる。新株予約権がすべて行使されれば株は4分の1増える。成長の資金を株主から集め続ける会社で、1株の価値が規模と同じだけ増えることはない。会社予想の純利益が5億円台なら、今の値段は決して安くない。
大型の物件に寄せるほど、一つの売れ残りの痛手は大きい。売上の数字が伸びても、それは在庫と借金を大きくした結果で、腕が上がった証拠とは限らない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強い。物件を直す腕と勢いは本物だが、利益の源は相場と借金で、10年の間に一度は来る相場の崩れを避けられない。新株予約権の希薄化で、株主の取り分も細る。確率は同じ買取再販の会社と同じく、中立を中心に悲観側を3割余り置いた。勢いを否定はしないが、良い年の利益を10年の平均と見なすことはしない。新株予約権で株数が増える分も、楽観側の値段から差し引いて考える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 4,559 円69 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 560 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 2,196 円33 億円、今との差 −28.6%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 9.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,988 円167 億円 | 1,160 円18 億円 | +295.0% | +14.7% | 850 円13 億円 |
| やや楽観 | 19% | 7,760 円118 億円 | 843 円13 億円 | +179.8% | +10.8% | 1,635 円25 億円 |
| 中立 | 38% | 5,228 円79 億円 | 527 円8 億円 | +87.2% | +6.5% | 2,187 円33 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,108 円17 億円 | 395 円6 億円 | −51.1% | −6.9% | 361 円5 億円 |
| 悲観 | 12% | 527 円8 億円 | 198 円3 億円 | −76.4% | −13.5% | 87 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,559 円69 億円 | 560 円9 億円 | +66.5% | +5.2% | 5,120 円78 億円 |
今の株価時価総額 3,075 円47 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 大型物件と管理で倍々に 利益 18 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 10,988 円167 億円
金利の上昇は緩やかで、物価とともに家賃が上がり、都心の収益不動産の値段は名目で上がり続ける。会社は新株予約権で集めたお金を頭金に、10億〜20億円の物件を次々に仕入れる。年の売却件数は40件、1件の平均の売値は8億円台になる。
管理の会社の買収も重なり、毎月の収入は今の3倍になる。営業利益は30億円を超え、中期計画のさらに先の目標に届く。それでも借入は200億円規模に膨らみ、利払いは年7億円を超える。株数は新株予約権の行使で4分の1増えている。ROEは12%台に上がり、資本コストを上回る。時価総額100億円の目標は、この姿なら届く。ただ、それは相場の追い風が10年続くという前提の上にある。
- 不動産販売:数量 40.0(売却の件数(件・年、推定))× 価格 8.50(1件あたりの平均の売値(億円))→ 売上 340 億円・営業利益 32 億円。40件×8.5億円、利益率9.5%
- 不動産賃貸:数量 33.0(保有物件の賃貸面積(指数ではなく千㎡、推定))× 価格 0.40(1千㎡あたりの年間の家賃(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 3 億円。3.3万㎡×家賃1.34倍
- 不動産管理:数量 6.0(管理戸数(千戸、推定))× 価格 1.12(1千戸あたりの年間の管理収入(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。6千戸×1.4倍(買収込み)
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍。全体の PER 11.64 倍、時価総額 206 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画のその先の営業利益30億円に届く姿。相場と金利の両方が味方する必要があるので1割未満。
やや楽観 19% 中期計画どおりに伸びる 利益 13 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 7,760 円118 億円
中期計画どおり、3年後に営業利益18億円に届く。その後は相場が落ち着き、売却件数は年34件、1件の平均の売値は8億円前後で伸びが止まる。物件を直す腕は保たれ、粗利益の率も大きくは崩れない。
新株予約権は行使され、集めたお金で在庫は今の2倍近くになる。借入も増え、利払いは年5億円を超える。管理の収入は買収で倍になる。純利益は13億円近くになるが、株数も増えているので、1株の伸びは利益ほどではない。ROEは資本コストとほぼ同じ10%前後にとどまる。相場の追い風が続けば届く姿だが、借金の大きさは変わらない。
- 不動産販売:数量 34.0(売却の件数(件・年、推定))× 価格 8.00(1件あたりの平均の売値(億円))→ 売上 272 億円・営業利益 24 億円。34件×8億円、利益率9%
- 不動産賃貸:数量 27.0(保有物件の賃貸面積(指数ではなく千㎡、推定))× 価格 0.40(1千㎡あたりの年間の家賃(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。2.7万㎡×家賃1.34倍
- 不動産管理:数量 5.0(管理戸数(千戸、推定))× 価格 1.12(1千戸あたりの年間の管理収入(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。5千戸×1.4倍
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.0 倍。全体の PER 11.03 倍、時価総額 141 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の新しい中期計画の18億円に届き、その後は物価並みに伸びる姿。勢いは本物なので2割弱を置いた。
中立 38% 規模は大きくなるが、金利が利益を削る 利益 9 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 5,228 円79 億円
物件の大型化は進み、1件の平均の売値は7億円台になる。ただ、金利が上がる中で投資家の求める利回りも上がり、売値は物価ほどは上がらない。年の売却件数は30件前後で、営業利益率は8%前後だ。
新株予約権は行使され、在庫と借入は今の1.5倍から2倍になる。利払いは年4〜5億円で、営業利益の4分の1以上を食う。管理の収入は少しずつ増える。純利益は9億円弱に届くが、株数も増えている。
配当と優待は続くが、還元の割合は純利益の1割余りだ。ROEは資本コストを下回る8%前後にとどまる。規模は大きくなっても、株主から見た稼ぐ力は今とあまり変わらない。
- 不動産販売:数量 30.0(売却の件数(件・年、推定))× 価格 7.50(1件あたりの平均の売値(億円))→ 売上 225 億円・営業利益 18 億円。30件×7.5億円(大型化と物価)、利益率8%
- 不動産賃貸:数量 22.0(保有物件の賃貸面積(指数ではなく千㎡、推定))× 価格 0.40(1千㎡あたりの年間の家賃(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。2.2万㎡×家賃1.34倍
- 不動産管理:数量 4.5(管理戸数(千戸、推定))× 価格 1.07(1千戸あたりの年間の管理収入(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。4.5千戸×1.34倍
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 92 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物件の大型化は進むが、金利の上昇で売値の伸びが鈍り、利払いが利益を削る姿を中心に置いた。
やや悲観 24% 金利の上昇で売れ行きが鈍る 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,108 円17 億円
日銀の利上げが続き、都心の収益不動産の取引利回りは1ポイント近く上がる。同じ家賃でも売値は下がり、投資家の買いも細る。会社は在庫を売り切るために値下げし、売却件数は年22件、1件の平均の売値は6億円台に落ちる。
営業利益率は4%に下がり、利払いを引くと純利益はほとんど残らない。株価は新株予約権の行使価額を下回り、行使は進まない。仕入れを絞り、借入の返済を優先する。配当は続けるが優待を見直す。ROEは1%台で、帳簿の価値に見合う稼ぎはない。会社は残るが、勢いのあった数年は過去の話になる。株価は帳簿の3分の1ほどに沈み、新株予約権は紙くずに近くなる。
- 不動産販売:数量 22.0(売却の件数(件・年、推定))× 価格 6.50(1件あたりの平均の売値(億円))→ 売上 143 億円・営業利益 6 億円。22件×6.5億円、利益率4%
- 不動産賃貸:数量 20.0(保有物件の賃貸面積(指数ではなく千㎡、推定))× 価格 0.38(1千㎡あたりの年間の家賃(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。2万㎡×家賃1.25倍
- 不動産管理:数量 3.5(管理戸数(千戸、推定))× 価格 1.00(1千戸あたりの年間の管理収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。3.5千戸
倍率:ROE1%台で資本コストに遠く届かない。稼ぐ力(純利益÷k≒6億円)は小さいので、在庫を割り引いて売れば残る価値を目安に、今の自己資本39.9億円に0.35倍を掛けた。中立のPBRより低い。
確率:金利が上がる世界で収益不動産の売買が細る姿。同じ買取再販の会社と同じく悲観側を厚めにした。
悲観 12% 相場の崩れで評価損 利益 −9 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 527 円8 億円
金利の急な上昇と景気の後退が重なり、収益不動産の買い手が消える。大型の物件が売れ残り、会社は在庫の評価損を何年かに分けて出す。売却件数は年15件に落ち、売値も仕入れの値段を下回る。
営業赤字に利払いが重なり、最終赤字が続く。銀行は新しい仕入れの借入に慎重になり、会社は在庫を投げ売りして借入を返す。新株予約権は行使されず、資金の手当てのために不利な条件の増資を迫られる。帳簿の自己資本は大きく減る。2022年2月期の赤字を、在庫が倍の規模で繰り返す姿だ。株主の取り分は、増資でさらに薄まる。管理の収入だけが残り、会社は小さな管理会社に近い姿になる。
- 不動産販売:数量 15.0(売却の件数(件・年、推定))× 価格 5.50(1件あたりの平均の売値(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 −7 億円。15件×5.5億円、評価損で赤字
- 不動産賃貸:数量 18.0(保有物件の賃貸面積(指数ではなく千㎡、推定))× 価格 0.36(1千㎡あたりの年間の家賃(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。1.8万㎡×家賃1.2倍
- 不動産管理:数量 3.0(管理戸数(千戸、推定))× 価格 1.00(1千戸あたりの年間の管理収入(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。3千戸
倍率:赤字なのでPBRで置く。評価損で自己資本は細る。稼ぐ力がないので床は帳簿でなく、今の自己資本39.9億円に0.2倍を掛けた。
確率:2022年2月期に在庫の評価損で最終赤字を出した会社で、在庫は当時の倍ある。1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産販売
中古の一棟の収益ビル・区分の物件を買い、直して売る。
| 数量売却の件数(件・年、推定) | 価格1件あたりの平均の売値(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 24.0 | 5.25 | 126 | 9 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 7.50 | 225 | 18 |
取り方:件数の開示は無い。販売の売上約126億円(1Qの構成比から推定)を、1棟と区分を混ぜた平均の売値5億円台で割って約24件と推定。利益は全社の営業利益と各事業の構成から推定。
不動産賃貸
販売までの間に持つ物件と保有物件の家賃。
| 数量保有物件の賃貸面積(指数ではなく千㎡、推定) | 価格1千㎡あたりの年間の家賃(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 22.0 | 0.30 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 22.0 | 0.40 | 9 | 2 |
取り方:面積の開示は無い。賃貸の売上6.6億円(四半期の推移から推定)を、都心の事務所・住宅の平均の家賃で割って約2.2万㎡と推定。
不動産管理
富士ホームを中心にしたビル・住宅の管理。
| 数量管理戸数(千戸、推定) | 価格1千戸あたりの年間の管理収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 3.0 | 0.80 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.5 | 1.07 | 5 | 1 |
取り方:管理戸数の開示は無い。管理の売上2.4億円を、1戸あたり年8万円前後の管理収入と置いて約3千戸と推定。
リスクと懸念
金利の上昇と売値の下落
投資家が求める不動産の利回りは金利に連動する。10年国債が3%に向かえば、同じ家賃でも売値は下がる。仕入れた時より安くしか売れない物件が増えれば、在庫の評価損で利益は一気に消える。
借金の重さ
在庫約105億円を主に借入でまかない、借入は自己資本の1.4倍ある。2026年2月期は営業利益の4割近くが利払いなどで消えた。借り換えの金利が上がるほど、純利益は細る。
新株予約権の希薄化
第7〜9回の新株予約権がすべて行使されると、株数は約25%増える。行使の値段が修正される型もあり、株価が下がる局面でも株が増えうる。
大型の物件の売れ残り
1件の売値が10億円を超える物件が増えた。1つの売れ残りや値下げが、年の利益を大きく左右する。小さな会社ほど、この偏りは重い。
競争の激しさ
サンフロンティア不動産、トーセイ、ムゲンエステートなど同じ再生の専業や不動産ファンドが、良い物件を取り合う。仕入れの値段が上がれば、直して売る差は縮む。
今後の分かれ目
- 新株予約権の行使が進まず、行使価額が下に修正される
- 株価の重しになる。行使されても集まるお金は少なく、仕入れの計画は遅れる。
- 中期計画の営業利益18億円を借入の増加なしで達成する
- やや楽観の筋書きに近づく。資本の使い方への見方も変わる。
- 日銀の利上げが続き、都心の収益不動産の取引利回りが1ポイント上がる
- 在庫の値下がりで利益が消え、やや悲観から悲観の筋書きに寄る。
- 管理の会社の買収が続き、毎月の収入が全社の利益の3割を超える
- 相場の波に強くなり、倍率を少し上げて見てよくなる。
- 在庫の評価損や大型物件の値下げ販売が出る
- 2022年2月期のような最終赤字の再来を疑い、悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 販売用不動産の在庫と借入の残高
- 1棟の平均の売値と粗利益率
- 新株予約権の行使の進みと行使価額の修正
- 都心の収益不動産の取引利回り
- 管理戸数と管理の利益
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPERから置いていない。中立の10年ROEは8%前後で資本コスト9.5%を下回るので、PERの上限は1÷kの10倍で、同じ買取再販のランドネット(8.5倍)と同じ物差しの8.5倍に置いた。楽観側だけROEがkを上回り、弱い堀(残る割合1/3)の正当化PERの8割強。悲観側は今の自己資本に掛けたPBRで置いた。新株予約権の行使は株主の取り分0.80として、行使の払い込みは自己資本に入れた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.5→11.64 倍・やや楽観 PER 8.5→11.03 倍・中立 PER 8.5→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ2.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.00% → 9.50%。