結論
レオパレス21は、オーナーからアパートを丸ごと借り上げ、家具付きで法人と個人に貸す会社だ。管理戸数は約54万戸で、賃貸管理の大手では4位前後に入る。筆者の結論は「割高」である。立て直しは本物だが、10年で見た稼ぐ力は今の値段に届かない。
立て直しの中身は、法人の社宅・寮の需要を取り込んだことだ。入居率は88%台まで戻り、家賃も上がった。ただ、戸数は細る方向にある。人口が減るうえ、2030年に借り上げ契約の満期が来て、更新しないオーナーが出ている。利益の源は家賃の差益で、営業利益率は8%ほどと薄い。
今の値段を決めているのは、光通信とファンド2社による非公開化の買い付けだ。発表前の終値に5割前後を上乗せした水準で、買い手の事情を映した値段といえる。事業の本質価値とは別のものだ。
筆者の計算では、10年後の中立の筋書きでも時価総額は今に届かない。戸数が減る事業に、家賃の差益がどこまで残るか。そこに確率を重ねると、価値は今の時価総額を3割ほど下回る。買い付けが成立すれば値段は上に張りつくが、それは事業が稼ぐ力とは関係がない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず見るのは「10年後も同じ形で稼いでいるか」だ。レオパレスの利益は家賃の差益で、その寿命はオーナーとの契約と部屋の入居率に左右される。人口が減る国で戸数は細り、満期を迎える契約は更新されるかが読みにくい。10年先の利益を自信を持って言い切れる事業ではない。
次に、株主のものになる利益の質を見る。物価が上がれば、家賃も人件費も上がる。差益の率が変わらなければ利益は物価並みに増えるが、借り上げ賃料は固定で、入居者の家賃は相場に動く。ここで差益が削れる局面を、筆者は軽く見ない。純利益は営業利益の6〜7割で、現金に近い質はあるが、固定の約束が骨格にある。
経営は、再建では結果を出した。一方で、自己資本を薄くするほど大きな買い付けを自社で行い、さらに買収会社が借入で非公開化する。オーナーとして持ち続けたい姿とは違う。安全域は、払う値段が本質価値より十分に低いことだが、今の値段は買い手の提示で決まっている。買い手と同じ値段で買えば、安全域は取れない。
堀は浅く、固定の約束が重く、10年先が読みにくい。この3つがそろうと、倍率を高くは置けない。事業は良くなったが、値段への余裕は乏しいと筆者は結論する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は「差益」だ。オーナーが建てたアパートを最長35年の約束で借り上げ、決まった賃料を毎月払う。その部屋を入居者に貸し、受け取る家賃との差が利益になる。空室が出ても、オーナーへの支払いは止まらない。入居率が1ポイント動くだけで、利益は大きく揺れる。
お客の中心は法人だ。法人の利用は利用戸数の7割弱に上る。製造業、建設、飲食、医療福祉が、社宅や寮として借りる。首都圏で人を募集し、地方の工場で働いてもらう会社が多く、すぐ住める家具付きの部屋が合った。収益性の低いマンスリー契約は絞り、法人と長期の契約に寄せてきた。
賃貸事業が売上の9割以上を占め、営業利益も賃貸事業が稼ぐ。ほかに建築請負、介護施設、ホテルがあるが、全社の売上に占める割合は小さい。施工不良が見つかった2018年以降、2019年には新規の受注を止めた経緯がある。今の会社は、既存の約54万戸を満室に近づけて回す事業だと考えるのが近い。
本社の経費は賃貸事業の利益から引かれ、全社の営業利益は賃貸事業より約80億円少ない。物価が上がれば、人件費も修繕費も上がる。家賃を物価並みに上げ続けられるかが、利益の伸びを左右する。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、あるにはあるが浅い。54万戸という規模と、法人に直接売り込む営業網が武器だ。家具・家電付きで、すぐ住める部屋を大量に持つ会社は少ない。工場の寮を探す会社にとって、手間のかからない相手だ。
弱みは、値段を自分で決められないことだ。入居者に貸す家賃は地域の相場で決まる。一方、オーナーに払う賃料は契約で固定され、見直しは2年ごとの話し合いになる。相場が下がっても払いは減らない。上がる時は差益が増えるが、下がる時は差益が消える。構造として下には脆い。
オーナーとの信頼にも傷がある。施工不良の問題に加え、借り上げ賃料の減額をめぐって訴訟になった例が過去にある。管理戸数が約57万戸から約54万戸に減ったのは、その後遺症と満期前の見直しが重なった結果だと筆者は読む。
財務は見かけより弱い。自己資本比率は23%で、ROEが30%台に見えるのは自己資本が薄いからだ。純現金はあるが、オーナーへの借り上げ賃料という借金に近い約束が、年に数千億円あると筆者は推定する。経営は再建期に規律を取り戻したが、直近は自己資本を薄くするほど大きな自社株の買い付けを行った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
賃貸住宅の管理は、建築と管理を一体で営む会社が強い。管理戸数は大東建託グループが約129万戸で29年連続の1位、大和リビングが約68万戸、レオパレスが約55万戸だ。大東建託や大和ハウス系は、アパートを建てて売り、その管理も受ける。レオパレスは建築の力を弱め、借り上げて貸す専業に近い。競争の形が違うため、オーナー獲得で正面から戦いにくい。
需要は二つに割れる。都心や工場の周辺では、単身世帯の増加と人手不足の社宅需要が底堅い。地方では人口減で賃貸が余り、空室が増える。レオパレスの部屋は全国に散らばるため、両方の風を受ける。法人が使う比率が高いのは、地方の空室リスクを和らげる点では強みだ。
建築費は2〜4割上がった水準で定着した。新築が減ると、既存のアパートを持つ価値は上がる。これは借り上げの交渉で、オーナーを強気にさせる面もある。2020年には、サブリース契約の説明を厳しくする新しい法律が動き、オーナーとの契約は以前より慎重に扱われる。
10年で見ると、全国の管理戸数は年1%ほど減るのが中立の姿だ。賃料は都心でわずかに上がり、地方で下がる。レオパレスの戸数はそれより少し良くて、10年で7%ほど減る程度とみる。利益の伸びは、戸数ではなく家賃の上昇と入居率の改善から来る。
資本政策と M&A
資本の使い方は、ここ3年で大きく動いた。黒字に戻った後、2023年に5期ぶりの自社株買い、2024年3月期に復配と進み、2025年5月には発行済みの4割強を上限とする自己株の公開買い付けに踏み切った。大株主だった投資ファンド系の千鳥が主な売り手で、新株予約権も約100億円で買い取り、消却した。この消却損が2026年3月期の純利益を押し下げた。
買い付けの後は、2025年9月に発行済みの28%超の自己株を消却した。自己資本は約400億円まで薄くなった。株主への還元は、配当性向を2028年3月期に30%とする目標だ。
2026年9月、光通信、MBKパートナーズ系、NECキャピタルソリューション系の3者が出資する買収会社が、完全子会社化を狙う買い付けを始めた。期間は10月末まで、下限は所有割合の48.56%で、成立すれば2027年1月ごろの株主総会で株式を併合する予定だ。光通信は約18%を持ち続け、千鳥の約15%は応募する契約を結んだ。少数株主の過半数の応募を条件にする仕組みは付いていない。
買い付けの最大総額は約2,676億円と開示されている。買収後は借入が乗るはずで、会社は攻めの経営に切り替わる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
法人の社宅・寮の需要は、構造的に続く。工場も建設も飲食も人手が足りず、住まいごと人を確保する流れは止まらない。レオパレスは家具付きですぐ住める部屋を、全国に54万戸持つ。この規模と営業網は、ほかにまねしにくい。法人の利用が7割弱まで上がり、家賃を上げる交渉もしやすくなった。
入居率は88%台まで戻ったが、まだ上げる余地がある。1ポイント上がるだけで、営業利益は数十億円動くと筆者は試算する。家賃単価の上昇は中期計画でも上方修正され、2028年3月期の営業利益は431億円を目指す。
買い手の側にも、事業を伸ばす道がある。光通信は自社の法人向けサービスを、入居者や法人に売り込める。建て替えで古い物件を新しくし、戸数を増やす道もある。非公開化されれば、四半期ごとの数字に縛られず、投資を先に打てる。物価が3%で続く世界では、固定資産に近い賃貸の価値が高まる。借り上げ賃料の改定が2年ごとにあることを使えば、オーナーとの条件を物価に合わせて動かせる。10年で見れば、差益は今より厚くなる。
慎重な見方
この事業は、下から崩れる形をしている。オーナーに払う賃料は固定で、入居者から受ける家賃は相場で動く。空室が増えて相場が下がれば、差益は一気に消える。2019〜2021年には、施工不良の問題と入居率の低下が重なり、最終赤字が累計で1,700億円ほどに膨らみ、債務超過に落ちた。同じ構造は残っている。
戸数は細る。人口が減るうえ、2030年には借り上げ契約の満期が来て、更新しないオーナーが出ている。管理戸数は約57万戸から約54万戸に減り、会社の計画でも2028年3月期は53.4万戸まで減る。増えない戸数に、増やせない入居率を掛けて、利益を伸ばし続けるのは難しい。
法人の需要は景気に敏感だ。製造業が採用を絞れば、寮の契約は真っ先に切られる。入居率が88%から85%に戻るだけで、営業利益の3〜4割が消える計算になる。
非公開化の後も心配が残る。買収会社が借入で資金を調達すれば、利払いの分だけ余裕が減る。買い手は5割前後の上乗せをして買うので、期待する利益は高い。その要求に応えるには、家賃を上げ、オーナーへの賃料を下げる圧力が強まる。それは過去に訴訟になった道と同じだ。新しいリース会計の基準も、2028年3月期から見かけの財務を大きく変える。数字の形が変わる中で、固定の約束の重さが改めて意識される。
どちらに重みを置いたか
事業の立て直しは確かで、法人需要を取り込んだ強気の見方の指摘は正しい。ただ、固定の借り上げ賃料と減る戸数という構造は、慎重な見方の指摘どおり消えていない。中立でも利益の伸びは物価に届く程度で、倍率を高く置ける根拠がない。
確率は慎重な側に寄せた。やや楽観を2割、中立を4割弱、やや悲観を2割強、悲観を1割強に置いた。悲観を1割強にしたのは、2019年からの危機が、この構造で実際に起きたからだ。結果として、価値は今の時価総額を3割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,780 円5,655 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 357 円1,134 億円)。 今の値に割り戻すと 1,089 円3,462 億円、今との差 +9.2%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,655 円1.16 兆円 | 566 円1,800 億円 | +323.0% | +15.5% | 338 円1,073 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,810 円8,929 億円 | 472 円1,500 億円 | +228.9% | +12.6% | 656 円2,086 億円 |
| 中立 | 36% | 2,138 円6,795 億円 | 362 円1,150 億円 | +150.5% | +9.6% | 900 円2,860 億円 |
| やや悲観 | 24% | 610 円1,937 億円 | 346 円1,100 億円 | −4.2% | −0.4% | 229 円729 億円 |
| 悲観 | 12% | 77 円244 億円 | 31 円100 億円 | −89.1% | −19.9% | 13 円41 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,780 円5,655 億円 | 357 円1,134 億円 | +114.1% | +7.9% | 2,137 円6,789 億円 |
今の株価時価総額 998 円3,171 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 建て替えと法人営業で戸数が持ち直し、差益が広がる 利益 566 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 3,655 円1.16 兆円
建て替えと法人営業が当たり、10年で戸数が持ち直す。2030年に満期を迎える契約は、オーナーの多くが更新に応じる。古い物件を新しい部屋に建て替える提案が通り、管理戸数は約55万戸と今を上回る。入居率は93%まで上がり、法人の寮と社宅が埋まり続ける。
家賃は物価を上回って上がり、10年で1.45倍になる。光通信が持つ法人の顧客網と、入居者向けのサービス販売が、賃貸の差益に上乗せされる。賃貸の営業利益率は14%まで広がり、売上は6,900億円ほどになる。
大東建託や大和リビングは建築を軸にするため、人手不足と建築費の上昇で新築を絞る場面が増える。借り上げの専業は、既存のアパートを抱えるオーナーの受け皿になる。非公開化の後に、借入を計画どおり返しながら投資も続けられる、会社にとって最良の10年だ。
- 賃貸事業(サブリース・入居者への貸し出し):数量 51.0(入居中の戸数(万戸・期中平均))× 価格 130(1戸あたり年間売上(万円・名目、家賃と付帯サービスを含む))→ 売上 6,650 億円・営業利益 931 億円。入居中51.0万戸(管理約55万戸×入居率93%)× 1戸年130万円(今の1.45倍)、営業利益率14%
- 開発・シルバー・ホテルなどその他:数量 11.0(稼働している施設と建築案件の合計(百件・推定))× 価格 21(百件あたり売上(億円・名目))→ 売上 229 億円・営業利益 15 億円。施設・案件11.0百件、建築と介護が小さく伸びる、営業利益率は約8%
倍率:事業の純利益 566 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 86.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 34.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍。全体の PER 19.2 倍、時価総額 10,867 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建て替えで戸数を増やし、法人の需要も景気に左右されずに続くという揃い方は、この会社の10年では起きにくい。実現すれば大きいが、低めに置いた。
やや楽観 20% 法人需要が続き、入居率と家賃がゆっくり上がる 利益 439 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 2,810 円8,929 億円
法人の社宅・寮の需要が続き、入居率は91%台で落ち着く。管理戸数は約52万戸まで細るが、法人向けの値上げが効き、家賃は10年で1.40倍になる。会社が計画する家賃の上昇がほぼ実現する形だ。
2030年の満期は、半分以上のオーナーが更新に応じ、残りは建て替えの提案で引き止める。解約は想定の範囲に収まる。光通信連合の下で、入居者向けのサービス販売が少しずつ収益に加わる。賃貸の営業利益率は12.5%まで上がる。
建築請負や介護は小さいままで、全体の利益を左右しない。配当は利益の3〜4割で、残りは建て替えの投資に回る。売上は6,300億円ほど、営業利益は650億円ほどになる。
- 賃貸事業(サブリース・入居者への貸し出し):数量 48.0(入居中の戸数(万戸・期中平均))× 価格 126(1戸あたり年間売上(万円・名目、家賃と付帯サービスを含む))→ 売上 6,043 億円・営業利益 755 億円。入居中48.0万戸(管理約52.5万戸×入居率91.5%)× 1戸年126万円(今の1.40倍)、営業利益率12.5%
- 開発・シルバー・ホテルなどその他:数量 10.5(稼働している施設と建築案件の合計(百件・推定))× 価格 20(百件あたり売上(億円・名目))→ 売上 208 億円・営業利益 12 億円。施設・案件10.5百件、小さく伸びる、営業利益率は約6%
倍率:事業の純利益 439 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 73.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 29.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍。全体の PER 18.93 倍、時価総額 8,310 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:法人需要が続き、満期の更新も比較的うまくいくという、現状の延長に近い想定。立て直しの勢いを素直に引き延ばした筋書きとして、2割に置いた。
中立 36% 戸数は細り、家賃は物価並みに上がって利益は緩やかに増える 利益 335 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 2,138 円6,795 億円
戸数は人口減と満期の見直しで細り、家賃は物価並みに上がって、利益はゆっくり増える。管理戸数は約50.5万戸と今から7%ほど減り、入居率は90%に改善する。入居中の戸数は5%ほど減るだけで、家賃の上昇がそれを上回る。
法人の寮・社宅の需要は続くが、景気の波で戸数が上下する。2030年の満期では、約3分の1のオーナーが更新せず、建て替えの提案で一部を引き止める。賃貸の営業利益率は11%と、会社の計画の水準に収まる。
本社の経費は物価で増え、全社の営業利益は500億円弱になる。10年間で営業利益は4割ほど増えるが、年率では3%強だ。高い成長の物語ではなく、薄い差益を物価並みに伸ばす地味な会社になる。配当は利益の4割台で、残りは建て替えと財務の強化に回る。
- 賃貸事業(サブリース・入居者への貸し出し):数量 45.5(入居中の戸数(万戸・期中平均))× 価格 121(1戸あたり年間売上(万円・名目、家賃と付帯サービスを含む))→ 売上 5,483 億円・営業利益 603 億円。入居中45.5万戸(管理約50.5万戸×入居率90%)× 1戸年120.5万円(今の1.34倍=物価並み)、営業利益率11%
- 開発・シルバー・ホテルなどその他:数量 9.5(稼働している施設と建築案件の合計(百件・推定))× 価格 20(百件あたり売上(億円・名目))→ 売上 194 億円・営業利益 10 億円。施設・案件9.5百件、価格は物価並み、営業利益率は約5%
倍率:事業の純利益 335 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 61.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 25.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.59 倍、時価総額 6,228 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:戸数は細り、家賃は物価並みに上がり、差益は今より少し厚くなる。会社の計画の延長線で、特別なことが起きない筋書きとして最も重く置いた。
やや悲観 24% 満期後の解約と地方の空室で、差益が薄くなる 利益 205 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 610 円1,937 億円
2030年の満期で解約が増え、管理戸数は47万戸まで細る。地方の空室が増え、入居率は88%と今から改善しない。家賃は物価ほど上がらず、10年で1.30倍にとどまる。法人の契約は景気の揺れで入れ替わり、安定した家賃の上昇が続かない。
オーナーへの借り上げ賃料は2年ごとの見直しが難しく、差益が薄くなる。賃貸の営業利益率は8.5%に下がる。本社の経費は物価で増えるため、全社の営業利益は300億円ほどと今を下回る。
買収後の借入と、建て替えの資金も重い。配当は利益のほとんどになり、自己資本は増えない。事業は崩れないが、利益が伸びず、倍率も縮む。優良とは言えない普通の賃貸会社になる。
- 賃貸事業(サブリース・入居者への貸し出し):数量 41.4(入居中の戸数(万戸・期中平均))× 価格 117(1戸あたり年間売上(万円・名目、家賃と付帯サービスを含む))→ 売上 4,840 億円・営業利益 411 億円。入居中41.4万戸(管理約47万戸×入居率88%)× 1戸年117万円(今の1.30倍)、営業利益率8.5%
- 開発・シルバー・ホテルなどその他:数量 8.5(稼働している施設と建築案件の合計(百件・推定))× 価格 19(百件あたり売上(億円・名目))→ 売上 162 億円・営業利益 5 億円。施設・案件8.5百件、営業利益率は約3%
倍率:ROE 19.0%(事業の純利益÷自己資本)。k 7.75%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC=k+残る割合 1/3×(ROE−k)=12.3%、長期の成長率 g 3.0%(戸数が年0.5%ほど減り、物価が3%上がる事業)から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.6 倍。やや悲観は戸数の減りと差益の薄さで利益の質が落ちるので、上限の 6.3 割の 8.0 倍に置いた(上限の7割へは引き上げない)。
確率:満期後の解約が想定より多く、地方の空室で差益が薄れる展開。これまでの戸数の減り方が続けば普通に起こるので、2割強に置いた。
悲観 12% 借り上げ賃料の重みで、また赤字に沈む 利益 12 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 77 円244 億円
景気の谷と満期後の解約が重なり、固定の借り上げ賃料が差益を食い切る。製造業が採用を絞って法人の寮が一斉に解約され、入居率は83%まで落ちる。管理戸数は40万戸まで減る。家賃は相場に押され、10年で1.25倍にとどまる。
オーナーへの賃料は固定で、入居者の家賃は下がる。賃貸の営業利益率は4%まで下がり、本社の経費を引くとほぼゼロになる。買収後の借入の利払いと、賃料をめぐる訴訟の費用が残る。純利益は消え、配当は払えなくなる。
過去の危機のように、信頼の低下がオーナーの解約を呼ぶ悪循環に入る。事業が優良さを失い、固定の約束を抱えた普通の賃貸会社に戻る10年だ。
- 賃貸事業(サブリース・入居者への貸し出し):数量 33.2(入居中の戸数(万戸・期中平均))× 価格 112(1戸あたり年間売上(万円・名目、家賃と付帯サービスを含む))→ 売上 3,732 億円・営業利益 149 億円。入居中33.2万戸(管理約40万戸×入居率83%)× 1戸年112万円(今の1.25倍)、営業利益率4%
- 開発・シルバー・ホテルなどその他:数量 7.0(稼働している施設と建築案件の合計(百件・推定))× 価格 17(百件あたり売上(億円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 −10 億円。施設・案件7.0百件、営業利益率は赤字(−10億円)
倍率:ROE 2.8%が k 7.75%以下なので、ためた利益は額面未満で、正当化 PER は 1÷k=11.1 倍が上限になる。この筋書きは稼ぐ力(純利益 12 億円÷k)がほとんどなく、価値は純現金などの床に近い。今の自己資本407億円に 0.6 倍を掛けた(床は250億円)。倍率は市場の値付けからでなく、稼ぐ力と床から置いた。
確率:2019〜2021年に同じ構造で債務超過まで落ちた実例がある。固定の借り上げ賃料と減る戸数は今も残るので、悲観を1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸事業(サブリース・入居者への貸し出し)
オーナーから借り上げた単身者向けアパートを、家具・家電付きで法人と個人に貸す。会社の売上のほぼすべて。
| 数量入居中の戸数(万戸・期中平均) | 価格1戸あたり年間売上(万円・名目、家賃と付帯サービスを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 47.8 | 90 | 4,297 | 443 |
| 10 年後 中立 | 45.5 | 121 | 5,483 | 603 |
取り方:管理戸数は期中平均で約54.3万戸、入居率は期末88.78%、期中は88%前後と推定し、入居中の戸数を約47.8万戸とした(推定)。賃貸事業の売上4,296億円をこれで割ると1戸あたり年約90万円(月7.5万円)。物価の分と値上げは価格に入れ、戸数は実質の数。
開発・シルバー・ホテルなどその他
アパートの建築請負、介護施設(シルバー事業)、ホテルなど。全社売上に占める割合は小さい。
| 数量稼働している施設と建築案件の合計(百件・推定) | 価格百件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 15 | 152 | 5 |
| 10 年後 中立 | 9.5 | 20 | 194 | 10 |
取り方:全社売上4,448億円から賃貸事業の4,296億円を引いた152億円を、開発・シルバー・ホテルなどの合計とみた(セグメント間の取引は考えない推定)。営業利益は小さな黒字と置く。件数はおおまかな推定で、結論への効きは小さい。
リスクと懸念
固定の借り上げ賃料
オーナーへの賃料は契約で決まり、入居者の家賃が下がっても減らない。年に数千億円と推定される固定の約束があり、入居率が数ポイント下がるだけで営業利益は大きく削れる。景気の谷では差益が逆ざやになりかねない。
2030年の満期と家主離れ
約54万戸の戸数は、2020年以降にじわじわ減ってきた。2030年に一括借り上げの満期が来るため、更新しないオーナーが出ている。会社の計画も戸数は減る方向で、建て替えで新しい部屋を足せるかが分かれ目になる。
賃料改定をめぐる訴訟と規制
借り上げ賃料の減額をめぐり、オーナーが訴えた例は過去にある。2020年のサブリース新法で、契約前の説明は厳しくなった。賃料を下げる交渉が強引だと見られれば、訴訟や信頼の低下につながり、戸数がさらに細る。
法人需要の景気依存
利用戸数の7割弱を法人が占める。製造業や建設が採用を絞れば、寮や社宅の契約は先に減る。法人主体のため家賃は上げやすいが、景気が反転すれば入居率と家賃が同時に下がる。
非公開化後の借入と攻めの経営
買収会社は最大約2,676億円を投じる。出資と借入で調達するため、買収後は利払いと高い収益目標が乗る。オーナーへの賃料を下げる圧力や、入居者へのサービス販売の行き過ぎが、信頼の傷になる恐れがある。
新リース会計基準での財務の見え方
2028年3月期から、借り上げ契約が使用権資産とリース負債として貸借対照表に載る見通しだ。自己資本比率は今の23%から下がりうる。利益そのものは大きく変わらないが、固定の約束の重さが数字で見えるようになる。影響額は開示されていない。
施工不良の記憶と品質
2018年に見つかった施工不良で、2019年に新規の受注を止めた。信頼の回復は進んだが、古い物件の維持費と修繕費は物価で上がる。再び品質の問題が出れば、オーナーも入居者も離れる。
今後の分かれ目
- 入居率が90%を超えて定着したら
- 差益が厚くなる。楽観寄りの筋書きに確率を移し、利益率の前提を上げて価値を見直す。
- 2030年の満期を迎える契約の更新率が、想定を大きく下回ったら
- 戸数の減り方が速まる。やや悲観の確率を上げる。
- 法人契約の割合が下がり、入居率が3ポイント以上落ちたら
- 景気の谷が差益を削る展開が始まったと見て、悲観側に重みを移す。
- 非公開化が成立し、買収会社が借入の返済を最優先にしたら
- オーナーへの賃料を下げる圧力が強まる。家主離れと訴訟のリスクを上げて見る。
- 建て替えの受注が増え、管理戸数が下げ止まったら
- 戸数が横ばいなら、家賃の上昇がそのまま利益に効く。中立より上の筋書きの確率を上げる。
- 新リース会計の影響額が、想定より大きく開示されたら
- 利益は変わらなくても、財務の見え方が変わる。借入余力と配当の方針を見直す。
見ておくもの
- 月次の入居率(公表値)と成約家賃の上昇率
- 管理戸数の増減と、満期を迎える借り上げ契約の更新率
- 法人契約の割合と、製造業・建設の採用動向
- 買い付けの成否と、非公開化後の借入・配当の方針
倍率と資本コストの決め方
今の値段は光通信連合の買い付けで決まっているので、倍率の根拠にしていない。倍率は、10年後の事業の自己資本利益率と資本コスト7.75%から、利益ベースの正当化PERで決めた。長期の成長率は、戸数が年0.5%ほど減り、物価が3%上がる事業として3%にした。堀は浅いので、新しく投じるお金の稼ぎは資本コストを超える分の3分の1だけ残るとした。
中立のPERは、ROEが資本コストを超える会社の下限である1÷kに近い11.4倍に置いた。買い付けの価格や、助言会社の算定の幅(上限は今の時価総額の1.8倍ほど)には寄せていない。新リース会計の基準で2028年3月期から営業利益と負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。悲観は、赤字に近い稼ぐ力と純現金の床で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.6→19.2 倍・やや楽観 PER 11.7→18.93 倍・中立 PER 11.4→18.59 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に、循環+0.5%・値決め力+0.25%・借金(固定の借り上げ賃料)+0.5%・寿命+0.25%を足して9.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 7.75%。