結論
空港施設は、羽田空港を中心に格納庫・整備工場・貨物ビルを建てて航空会社に貸す会社だ。ターミナルを運営する会社ではない。売上の約7割が空港内の賃貸と熱供給・給排水で、旅客が増えても減っても賃料は固定で入る。残りは都心の中小型ビルを買い、直して売る回転型の事業で、利益のぶれはここから出る。
筆者の結論は「やや割高」だ。一番の理由は、堅い賃料収入が物価並みにしか伸びず、株主のお金の稼ぎ(ROE)が6%前後で資本コストに届かないことにある。2026年3月期の営業利益は67億円と過去最高に近いが、ビル3棟の売却益が厚かった年で、翌期は49億円に戻る計画だ。羽田一丁目の再編では移転費用と撤去費用がかかり、古い専用施設の寿命が重荷になっている。
支えもある。日本航空とANAホールディングスが各2割強、政策投資銀行が1割強を持ち、配当性向60%以上の還元方針は厚い。10年の中立では、空港内の面積は横ばい、賃料は物価より少し遅れて1.3倍、回転型は年3〜4棟を回して営業利益は74億円前後。悲観は大口テナントが施設を絞り、ビル売買の市場が凍る展開だ。確率で重みづけした価値は、今の時価総額を1割半ば下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見て、空港施設は「悪くはないが、割安とまでは言えない」会社だ。
事業の本質は、航空会社に設備を貸して固定賃料を取る不動産業だ。堀は、空港という限られた場所と、航空会社とのつながりにある。ただし借り手は2社にほぼ限られ、値決めの主導権はこちらにない。専用施設の寿命も短い。
資本の使い方は、筆者がいちばん気にする点だ。稼いだお金を、どれだけ株主のものにできるか。ROEは6%前後で、資本コストの7.75%に届かない。稼ぎを会社の中に溜めても価値は増えず、配当性向60%で出す方針は筋が通っている。回転型への資本配分は、利益を押し上げた半面、市況に左右される。
経営は誠実に見える。優待をやめ、株主資本コストを自分から公表し、PBRの改善に動いている。
安全域は薄い。今の時価総額は10年後の価値の見立てをやや上回り、悲観では売れる資産の値段が下値になる。ただし株主の航空2社は、清算を求めない。少数株主が床の値段を実現する手段は無い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は4つある。
空港内不動産は、羽田を軸に国内12空港と海外2空港で、格納庫・整備工場・多目的ビルを建てて航空会社と関連会社に貸す。羽田の国内貨物ターミナルは約5万㎡。賃料は固定が中心で、旅客の増減が直接は効かない。売上の約4割、営業利益は全社の約半分を占める。
空港内インフラは、羽田の熱供給と給排水を約50年運営し、新千歳でも給排水を担う。基本料金と使用量に応じた料金で、燃料費の上昇は従量料金に転嫁できる。
空港外不動産(ノンアセット)は、2022年に始めた回転型だ。都心の中小型オフィスビルを買い、改装とテナントの入れ替えで価値を上げて売る。4年で11棟を取得し、4棟を売却した。2026年3月期は3棟を売って売上が77%増え、営業利益は倍近くになった。100%子会社のAFCアセットマネジメントは、私募ファンドの投資助言でフィーも得る。
その他に太陽光発電がある。
進行中の大きな動きは羽田一丁目プロジェクトだ。地盤のかさ上げに伴って施設を再編し、テナントを新整備場地区の自社施設へ移す。主要施設は2026年度に営業を終える。移転先のアネックスは同年度中にほぼ満床の見込みだ。本社の移転も重なり、2027年3月期は一時費用が増える。
優良さと弱いところ
空港内の賃貸には、他社が簡単にはまねできない場所の強みがある。空港の敷地の中で、航空会社が必要とする設備を専門に建てて貸す会社は少ない。航空会社は本業に集中でき、設備を任せたい。日本航空とANAホールディングスが各2割強の株主であることも、取引の安定を支える。
弱みも同じ所にある。借り手が日本航空とANAに偏り、賃料交渉の力は強くない。株主でもある相手に、物価を超える値上げを押し通すのは難しい。専用の格納庫や整備工場は、他の用途に転用しにくい。羽田一丁目では、建物の撤去費用が工事費の高騰で膨らみ、2026年3月期に減損と除却損で合わせて20億円ほどを落とした。専用施設は貸せなくなったとき、価値が急に下がる。
資本の稼ぎも物足りない。ROEは過去10年の中央値が4%、2026年3月期で5.7%。会社自身も株主資本コストを5.5〜6.5%と認識し、ROE6%は最終目標ではないと説明する。自己資本比率は55%、純有利子負債は自己資本の約0.2倍で、財務は堅い。
経営は資本の使い道を変えつつある。2026年1月にプライムからスタンダードへ移り、優待を廃止して配当と自社株買いに回した。回転型への傾きは利益を押し上げたが、売却益は年ごとにぶれる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
空港内不動産の需要は、航空会社の地上設備を誰が持つかで決まる。航空会社は固定資産を軽くしたい。設備を外に出す流れは長く続いており、空港施設には追い風だ。一方、羽田の発着枠は上限に近く、旅客の増加は鈍る。空港の物理的な容量が先に天井になるため、賃貸面積が伸びる余地は限られる。
羽田の旅客は2025年に9,158万人、国際線は2,503万人と過去最高だった。インフラの使用量はこれに沿うが、人口減で国内線は細る。中立の旅客は10年で1割強の増加にとどまる。賃料は更新時に見直され、物価には1〜2年遅れて追いつく。
回転型の市場は別の世界だ。都心の中小型ビルは参入が多く、価格は市況に従う。10年国債が3%の世界では、ビルの期待利回りが4〜5%台で、金利が上がれば出口の価格が下がる。2008年からのミニバブル崩壊では、中小型の不動産会社の多くが在庫の評価損と資金繰りで苦しんだ。回転型は大手より市況への感度が高い。
空港施設は、この二つの異なる商売を一つの会社で抱えている。安定した賃料が土台で、回転型が利益の上振れと下振れを作る。競合は空港ごとに事実上おらず、競合になりうるのは、航空会社が自前で持つ選択と、都心では地場の業者・ファンドだ。
資本政策と M&A
還元は手厚い。配当は連結配当性向60%、または純資産配当率3%の高い方を目安とし、2026年3月期は過去最高だった。これに10億円の自社株買い(2025年10月開始、2026年2月に全株を消却)を加えた。追加の買い入れは未定だが、機動的に実施する構えだ。中期計画(FY2022〜2028)は売上400億円・純利益38億円・ROE6.0%を掲げ、期間中の成長投資は330億円とする。
資本の使い方は二つに分かれる。空港内は一丁目の再編に投資が集まる。回転型はビルの取得費が先に出て、売却で戻る。2025年度は2棟を取得し3棟を売った。私募ファンドの組成も始めた。
株主は固い。日本航空とANAホールディングスが各21.3%、日本政策投資銀行が約14%で、合わせて約56%を占める。市場からの買収は成り立ちにくい一方、大株主が組んで非公開化する筋書きは考えられる。会社は2026年1月にスタンダードへ移り、優待を廃止して上場維持の基準を緩めた。株式を長く持つ相手にとって、株価が低いことがむしろ都合の良い局面でもある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
空港施設の賃料は固定で、旅客が減っても入る。羽田の一丁目再編が終われば、新整備場地区の施設は満床になり、撤去費用の山は2027年3月期で過ぎる。会社の中期計画は売上400億円・純利益38億円・ROE6.0%を掲げるが、2026年3月期にはすでに売上368億円・純利益35億円まで来ており、計画は前倒しで達成できる。ノンアセットは4年で11棟を取得し、売却益の率は計画を上回った。私募ファンドの助言フィーと出資の運用収益が加われば、回転型は資産を重く持たない収益源になる。株主は日本航空・ANAホールディングス・政策投資銀行の3者で56%を占め、航空会社と同じ側に立っているので、賃料の交渉も長期の取引の中で安定する。配当性向60%以上の還元は、利益が増えるほど株主に届く。
今のPBRは0.7倍台で、帳簿の資産の価値を下回る。空港内の建物は賃貸中の価値があり、回転型の物件は市場価値が簿価より高い。株主資本コストは5.5〜6.5%と会社が見ており、7.5%の資本コストは高すぎる。
慎重な見方
稼ぐ力の中身を見ると、強気の見方は成り立たない。2026年3月期の営業利益67億円は、ビル3棟の売却益が厚く出た年だ。会社自身が翌期は49億円と27%の減益を見込み、一過性の費用だけでなく、売却益の反動も含んでいる。回転型は金利が上がれば出口の価格が下がり、在庫の評価損と資金繰りの重さが来る。2008年からの不動産市況の崩壊では、同じ中小型ビルの回転型の会社の多くが苦しんだ。
空港内は、借り手が日本航空とANAに偏る。株主でもある相手に、物価を超える賃料は取れない。専用の格納庫と整備工場は転用しにくく、羽田一丁目では建物の撤去費用が膨らんで20億円ほどを減損と除却に落とした。同じことが他の古い施設で繰り返されない保証は無い。
資本の効率が低い点は動かない。ROEは過去10年の中央値で4%、会社の目標でも6%で、資本コストに届かない。溜めた利益は額面を下回る価値しかなく、PBRが1倍を割るのは割安の根拠ではなく、稼ぎの水準の映しだ。
どちらに重みを置いたか
堅い賃料を土台にする点は強気が正しい。一方で、ROEが資本コストに届かない点と、売却益のぶれ、専用施設の寿命という弱みは、慎重な見方が突いている。確率は中立を厚くし、大口テナントの縮小とビル市況の頭打ちが重なる側にやや寄せた。羽田一丁目で施設の撤去と減損が実際に起きたからだ。価値は賃料の安定をそのまま認めても、今の時価総額を1割半ば下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,135 円561 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 481 円238 億円)。 今の値に割り戻すと 869 円430 億円、今との差 −4.8%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,146 円1,061 億円 | 686 円339 億円 | +210.1% | +12.0% | 227 円112 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,550 円766 億円 | 585 円289 億円 | +133.8% | +8.9% | 470 円232 億円 |
| 中立 | 40% | 1,211 円599 億円 | 512 円253 億円 | +88.7% | +6.6% | 689 円341 億円 |
| やや悲観 | 20% | 469 円232 億円 | 366 円181 億円 | −8.5% | −0.9% | 167 円83 億円 |
| 悲観 | 10% | 436 円216 億円 | 194 円96 億円 | −31.0% | −3.6% | 63 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,135 円561 億円 | 481 円238 億円 | +76.9% | +5.9% | 1,615 円799 億円 |
今の株価時価総額 913 円451 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 一丁目の再編が成功し、回転型も積み上がる 利益 76 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 2,146 円1,061 億円
羽田一丁目の再編がうまく運び、新整備場地区の施設が満室で回る。航空会社が地上設備の保有をさらに外部に任せる流れも追い風になり、空港内の賃貸面積は1割近く増え、賃料は物価を少し上回って上がる。ノンアセットは取得・売却の回転が年5棟まで上がり、AFCアセットマネジメントの私募ファンドからは助言フィーと運用収益が積み上がる。熱供給と給排水は空港の拡張で使用量が増え、基本料金の改定も通る。営業利益は10年で117億円まで伸び、配当性向60%超の還元が続いて、株主のお金の稼ぎ方は資本コストを上回る。株主の日本航空・ANAホールディングス・政策投資銀行が長期の安定株主として働き続けることが前提になる。
- 空港内不動産(格納庫・整備工場・貨物ビルなどの賃貸):数量 82.0(賃貸面積(万㎡・推定))× 価格 3.13(1㎡当たり年間賃料(万円・推定))→ 売上 257 億円・営業利益 59 億円。面積+9%・賃料+36%
- 空港外不動産(ノンアセット:都心の中小型ビルを買って直して売る):数量 5.0(年間の売却棟数(棟))× 価格 55(1棟当たり売上高(億円・保有中の賃料と売却額の合計))→ 売上 273 億円・営業利益 60 億円。棟数5・単価+45%
- 空港内インフラ(熱供給・給排水・共用通信)とその他(太陽光):数量 112(羽田空港の旅客数(百万人・使用量の代理))× 価格 123(旅客1人当たり売上(円))→ 売上 138 億円・営業利益 22 億円。旅客+22%・単価+38%
倍率:事業の純利益 76 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.05 倍、時価総額 1,061 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:一丁目の再編が計画以上に進み、ノンアセットの回転も積み上がる展開は起こりうるが、羽田専用の施設は用途が限られるため確率は抑える。
やや楽観 22% 固定賃料が積み上がり中期計画の線を超える 利益 59 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,550 円766 億円
空港内の賃貸は埋まり続け、一丁目の移転は計画どおりに終わる。賃料は改定のたびに物価へ追いつき、10年で1.33倍になる。ノンアセットは年4棟ほどを回し、売却益が利益の2〜3割を占めるが、都心のビル市況の追い風は続かない。インフラは旅客の増加に沿って伸びる。中期計画の売上400億円、純利益38億円という線は2〜3年のうちに超え、その先も緩やかに伸びる。空港外の売上は10年で1.8倍に育ち、私募ファンドの助言フィーも加わる。営業利益は94億円、ROEは7%台半ばまで上がるが、資本コストにはわずかに届かない。還元は配当性向60%を守り、自社株買いは余力があるときだけ機動的に足される。
- 空港内不動産(格納庫・整備工場・貨物ビルなどの賃貸):数量 78.0(賃貸面積(万㎡・推定))× 価格 3.07(1㎡当たり年間賃料(万円・推定))→ 売上 239 億円・営業利益 53 億円。面積+4%・賃料+33%
- 空港外不動産(ノンアセット:都心の中小型ビルを買って直して売る):数量 4.2(年間の売却棟数(棟))× 価格 53(1棟当たり売上高(億円・保有中の賃料と売却額の合計))→ 売上 222 億円・営業利益 44 億円。棟数4.2・単価+40%
- 空港内インフラ(熱供給・給排水・共用通信)とその他(太陽光):数量 108(羽田空港の旅客数(百万人・使用量の代理))× 価格 120(旅客1人当たり売上(円))→ 売上 129 億円・営業利益 19 億円。旅客+18%・単価+34%
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 766 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:固定賃料が積み上がり中期計画の線を超える展開は、会社の実績(ROE5.7%、27/03期の減益を含めても営業利益は49億円)からみて現実的で、やや楽観に相応の厚みを置く。
中立 40% 空港内は横ばいで、賃料は物価に遅れて追いつく 利益 46 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,211 円599 億円
空港内の賃貸面積は横ばい。一丁目の撤去と移転の費用は2027年3月期で山を越え、そのあとは新整備場の施設の稼働で賃料が戻る。賃料は契約更新のたびに見直されるが、物価に1〜2年遅れ、10年で1.30倍。ノンアセットは年3〜4棟を回し、営業利益率は18%と、2026年3月期の26%よりかなり低い。ビル価格の上昇が止まると売却益は細るためだ。インフラは旅客の緩やかな増加と料金の改定で伸びる。全体の営業利益は10年で74億円、純利益は46億円。配当性向は60%を少し上回る水準を保つ。資本の稼ぎ方は6%台で、資本コストには届かないまま先へ進む。
- 空港内不動産(格納庫・整備工場・貨物ビルなどの賃貸):数量 75.0(賃貸面積(万㎡・推定))× 価格 3.00(1㎡当たり年間賃料(万円・推定))→ 売上 225 億円・営業利益 47 億円。面積横ばい・賃料+30%
- 空港外不動産(ノンアセット:都心の中小型ビルを買って直して売る):数量 3.5(年間の売却棟数(棟))× 価格 51(1棟当たり売上高(億円・保有中の賃料と売却額の合計))→ 売上 177 億円・営業利益 32 億円。棟数3.5・単価+34%
- 空港内インフラ(熱供給・給排水・共用通信)とその他(太陽光):数量 105(羽田空港の旅客数(百万人・使用量の代理))× 価格 116(旅客1人当たり売上(円))→ 売上 122 億円・営業利益 17 億円。旅客+15%・単価+30%
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 599 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:空港内は横ばいで物価並みの賃料改定、回転型は年3〜4棟という姿をいちばん厚くする。
やや悲観 20% 大口テナントの縮小とビル市況の頭打ちが重なる 利益 26 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 469 円232 億円
大口テナントの航空会社が地上の設備を絞り、古い専用施設の退去が続く。空いた建物は用途が限られ、貸し直しに時間がかかる。賃貸面積は4%減り、賃料の改定も物価に追いつかない。ノンアセットは金利の上昇で出口のビル価格が頭打ちになり、年2〜3棟まで落ちて売却益の厚みも減る。インフラは旅客の伸び悩みで横ばいに近い。固定費である本社費と建物の修繕費は物価で上がるため、営業利益は10年で46億円に下がる。還元は配当性向60%の下限に張りつく。会社の資本は積み上がっていくが、そこで生まれる稼ぎは増えず、株主のお金の効率は下がる。航空会社の株主も、赤字になるまでは賃料の引き下げを求めて静かに交渉を続ける。純利益は26億円、ROEは3〜4%に沈む。
- 空港内不動産(格納庫・整備工場・貨物ビルなどの賃貸):数量 72.0(賃貸面積(万㎡・推定))× 価格 2.86(1㎡当たり年間賃料(万円・推定))→ 売上 206 億円・営業利益 39 億円。面積-4%・賃料+24%
- 空港外不動産(ノンアセット:都心の中小型ビルを買って直して売る):数量 2.5(年間の売却棟数(棟))× 価格 45(1棟当たり売上高(億円・保有中の賃料と売却額の合計))→ 売上 113 億円・営業利益 16 億円。棟数2.5・単価+20%
- 空港内インフラ(熱供給・給排水・共用通信)とその他(太陽光):数量 100(羽田空港の旅客数(百万人・使用量の代理))× 価格 109(旅客1人当たり売上(円))→ 売上 109 億円・営業利益 13 億円。旅客+9%・単価+22%
倍率:事業のROE 3.6%は資本コスト7.75%以下。新しく投じるお金が価値を増やさないので、PERの上限は1÷k=12.9倍。大口テナントの縮小と回転型の失速で稼ぐ力そのものが細る筋書きで、倍率は上限の7割へ引き上げない。上限の6.8割、8.8倍に置く。
確率:大口テナントの縮小とビル市況の頭打ちが重なる展開は、羽田一丁目で現に施設の撤去・減損が起きた実例があるため、やや厚めに置く。
悲観 10% 専用施設の退去・減損が続き、回転型も凍る 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 436 円216 億円
羽田の旧い専用施設が一丁目と同じ道をたどり、撤去・減損が相次ぐ。日本航空・ANAホールディングスなどの大口が地上設備の保有を自社に戻すか、拠点を移して退去し、賃貸面積は17%減る。残るテナントへの賃料も据え置かれる。ノンアセットは融資の締まりでビル市場が凍り、買い手が見つからないまま在庫の賃料だけが入る。感染症や地震で旅客が落ちればインフラの使用量も減る。本社費と修繕費は残り、営業利益は10年で11億円まで落ちる。減損で自己資本が削られ、会社は売れる資産の値段で評価されるが、少数株主に清算を決める力はなく、床を割る値が付く。
- 空港内不動産(格納庫・整備工場・貨物ビルなどの賃貸):数量 62.0(賃貸面積(万㎡・推定))× 価格 2.54(1㎡当たり年間賃料(万円・推定))→ 売上 157 億円・営業利益 24 億円。面積-17%・賃料+10%・退去
- 空港外不動産(ノンアセット:都心の中小型ビルを買って直して売る):数量 1.0(年間の売却棟数(棟))× 価格 38(1棟当たり売上高(億円・保有中の賃料と売却額の合計))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。棟数1・単価横ばい・買い手不在
- 空港内インフラ(熱供給・給排水・共用通信)とその他(太陽光):数量 88.0(羽田空港の旅客数(百万人・使用量の代理))× 価格 98(旅客1人当たり売上(円))→ 売上 87 億円・営業利益 7 億円。旅客-4%・単価+10%
倍率:事業のROEは0.3%で資本コスト以下。新しく投じるお金が価値を増やさず、稼ぐ力(純利益1億円÷k)はほぼゼロ。この筋書きは売れる資産の床(floor_assets_oku)で測り、床とほぼ同じ0.35倍を今の自己資本616億円に掛けた。EV÷営業利益が高く出るのは営業利益が11億円と小さいためで、一年の利益で測る数字ではない。やや悲観より時価総額が低い。
確率:大口の退去と回転型の凍結が同時に来る構造的な負けは、株主の航空2社が支えるため起こりにくいが、起これば深いので10%置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
空港内不動産(格納庫・整備工場・貨物ビルなどの賃貸)
羽田空港を中心に、航空会社や関連会社へ格納庫・整備工場・貨物ターミナル・多目的ビルを貸す。賃料は固定が中心で、売上の約4割を占める。
| 数量賃貸面積(万㎡・推定) | 価格1㎡当たり年間賃料(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 75.0 | 2.31 | 173 | 40 |
| 10 年後 中立 | 75.0 | 3.00 | 225 | 47 |
取り方:賃貸面積と賃料は会社が開示していない。売上172.9億円を、貨物ターミナル約5万㎡を含む国内12空港・海外2空港の施設群の延べ面積を75万㎡と見て割った推定値(賃料2.3万円/㎡・年)。面積は実質、賃料は名目。営業利益率は23%(2026/03期。前期の減損で減価償却が減った分を含み、27/03期予想は19%)。
空港外不動産(ノンアセット:都心の中小型ビルを買って直して売る)
都心の中小型オフィスビルを取得し、改装とテナント入れ替えで価値を上げて売る回転型。保有中の賃料と売却益が売上になる。
| 数量年間の売却棟数(棟) | 価格1棟当たり売上高(億円・保有中の賃料と売却額の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 38 | 113 | 29 |
| 10 年後 中立 | 3.5 | 51 | 177 | 32 |
取り方:2026/03期は3棟を売却(前期は1棟)。売上113.1億円を売却棟数3で割った1棟当たり37.7億円で置く(保有中の賃料を含むため、売却額そのものではない)。棟数は実質、1棟当たり売上は名目。営業利益率は26%と高いが、売却益の厚い年で、27/03期予想は17%。
空港内インフラ(熱供給・給排水・共用通信)とその他(太陽光)
羽田空港の熱供給と給排水を約50年運営し、新千歳でも給排水を担う。使用量に応じた従量料金と基本料金で稼ぐ。太陽光発電などの小さな事業を含む。
| 数量羽田空港の旅客数(百万人・使用量の代理) | 価格旅客1人当たり売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 91.6 | 89 | 82 | 14 |
| 10 年後 中立 | 105 | 116 | 122 | 17 |
取り方:熱・水の使用量は開示が無く、空港の旅客数に比例すると見て羽田の旅客数(2025年9,158万人)で割った。売上はインフラ74.6億円とその他7.3億円の合計81.9億円、営業利益は11.5億円と2.6億円の合計14.1億円。旅客数は実質、1人当たり売上は名目。熱供給は燃料費の上昇を従量料金へ転嫁できる。
リスクと懸念
大口テナントの縮小・退去
借り手は日本航空とANAホールディングスなどの航空会社に偏る。地上設備を自社に戻す、拠点を移す、再編で施設を絞るといった判断が出れば、専用の格納庫や整備工場は貸し直しに時間がかかる。固定賃料が収益の土台なので、退去は利益に直接効く。2027年3月期も一部契約の終了で空港内の売上が減る。
専用施設の寿命と撤去費用
羽田一丁目の再編では、建物の撤去費用が工事費の高騰で膨らみ、2026年3月期に減損と除却損で合わせて20億円ほどを計上した。古い専用施設は、貸せなくなったとき価値が急に落ち、撤去にも費用がかかる。他の施設で同じことが起きれば、利益と自己資本を削る。
回転型の売却益のぶれ
ノンアセットは、買ってから売るまでの1年前後に市況が変われば、売却益が消える。2026年3月期は3棟の売却益が営業利益を押し上げたが、翌期は取得費用が増えて減益予想だ。金利が上がるとビルの期待利回りが上がり、出口の価格が下がる。在庫の評価損と資金繰りも重くなる。
大株主の意向と少数株主の立場
日本航空とANAホールディングス、政策投資銀行で約56%を持つ。賃料の交渉相手でもあるため、利益相反の面がある。非公開化や再編の決定は大株主主導になり、少数株主が価値を実現する手段は限られる。上場維持の基準を緩めたスタンダード市場への移行も、市場からの圧力を弱める。
金利上昇と借り換え
純有利子負債は144億円で時価総額の約3割。借り換えのたびに利払いが増え、10年で年4億円ほど利益を削る。ビルの価格にも金利が効く。ただし自己資本比率は55%、営業利益は支払利息の20倍以上で、財務の危険は小さい。
熱供給・給排水の更新投資
インフラは設備の更新が続く。2027年3月期は計画修繕と通信設備の更新で減価償却が増え、営業利益が27%減る見込みだ。更新費用が料金に転嫁できるかは、空港や航空会社との交渉に左右される。
今後の分かれ目
- 羽田一丁目の移転が終わり、新整備場の施設が満床になる
- 撤去と移転の費用の山が過ぎて営業利益が戻り、中立からやや楽観の筋書きに近づく。
- 日本航空・ANAホールディングスが地上設備の保有を自社に戻す、または拠点を移す
- 専用施設の空室が長引き、やや悲観から悲観の確率を引き上げる必要が出る。
- ビル市況が反転し、回転型の売却利回りが上がる
- 在庫の評価損と売却益の消失で、回転型の利益が大きく減る。
- 大株主が非公開化や再編に動く
- 買い取り価格は大株主が決める。割安に見える局面では少数株主に不利な条件になりうるので、実現価値は低く見る。
- 私募ファンドの運用資産が積み上がり、フィー収益が安定する
- 回転型の利益が資産を重くしない形に変わり、利益の質が上がって倍率の上振れ材料になる。
- 追加の自社株買いが続く
- 株主の分け前が増え、ROEは上がるが、利益そのものは変わらない。
見ておくもの
- 羽田一丁目の移転の進捗と新整備場の入居率(決算説明)
- 空港内不動産の売上・営業利益と契約終了の動き
- ノンアセットの取得・売却棟数と売却益の率
- 配当性向60%の維持と追加の自社株買い
- 日本航空・ANAホールディングス・政策投資銀行の持株の変化
倍率と資本コストの決め方
今の株価(PBR0.74倍)や市場の倍率からは筋書きを作っていない。空港内の面積(推定75万㎡)と賃料、ノンアセットの売却棟数と1棟当たり売上、インフラの使用量の代理として羽田の旅客数を積み、物価の分は賃料・単価に入れた。純利益は営業利益から借り換えによる利払いの増加7億円を引き、税を3割と置いて出した。倍率は資本コスト7.75%(基本7.5%に寿命+0.25%)の式から出し、ROEが資本コスト以下なので1÷kの上限の7〜8割に置いた。悲観は売れる資産の床の少し下で測り、過去のPBRの底は使っていない。結論は計算が決めた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.05 倍・やや楽観 PER 10.4→12.9 倍・中立 PER 10.3→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に寿命の不安を映した+0.25%を足した7.75%。