結論
平和不動産は、東京・大阪・名古屋の証券取引所ビルを持つ老舗のビル会社だ。兜町の再開発と札幌の大型ビルに投資し、不動産投資信託(リート)の運用も手がける。
筆者の結論は「割高」である。資産は厚いが、その資産が稼ぐ力は資本コストを下回る。借金の借り換えで利払いが増える10年では、利益はほとんど伸びないと見る。
強みは資産の中身にある。賃貸等不動産の時価は帳簿を約1,400億円上回る。大成建設が2割を持つ安定株主で、取引所ビルという代えのきかない物件もある。
弱みは借金だ。純有利子負債は自己資本の1.9倍で、自己資本比率は28%にとどまる。借り換えが進むと、営業利益が伸びても税引き後の利益は今の水準にとどまりやすい。
札幌の再開発は約1,440億円の大型投資で、完成は2028〜2029年だ。成功すれば賃貸収入の柱になるが、完成前は金利だけが先に出ていく。
10年後の中立の純利益は今とほぼ同じ約100億円。自己資本の厚さの割に稼ぎが小さいので、倍率は高く置けない。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を4割ほど下回る。含み益は悲観の床にだけ使い、中立〜楽観には賃料・売却益が純利益に入っているので足していない。この資産を売って借金を返し、株主に戻せば価値は出る。ただし、中期計画は資産の入れ替えと再投資を前提にしており、全面的な売却は見込みにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず資産の中身を見る。取引所ビルと兜町の再開発は、10年後も存在する資産で、ここは評価できる。含み益を足した純資産は、今の時価総額を大きく上回る。
次に、その資産が株主に何を稼いでくれるかを見る。営業利益は伸びても、借金が多く金利が上がるため、株主に残る利益は伸びにくい。資産は厚いが、稼ぐ力は資本コストに届かない。筆者はここを最も重く見る。
経営の資本配分は、配当性向50%と政策保有株の縮減を評価できる。だが、札幌の約1,440億円の投資は、借金で支える大型案件だ。完成が2028〜2029年で、見返りは先にしか来ない。
安全域はどうか。悲観でも含み益の一部は残るので、床は完全には抜けない。しかし、中立の価値が今の値段を大きく下回るので、安全域は小さいと言わざるをえない。
持ち続けたい会社かと問われれば、答えは「値段しだい」だ。資産の売却と借金の返済が進めば、一転して魅力は増す。今のところ、その兆しは中期計画に書かれていない。
何で稼ぐ会社か
事業は2つで、売上の約9割がビルディング事業、残りが資産運用(アセットマネジメント)事業である。
ビルディング事業の核は賃貸だ。東京証券取引所ビル、大阪取引所ビル、名古屋証券取引所ビルを所有・運営し、日本橋兜町・茅場町や主要都市にオフィスを持つ。2025年10月には兜町でホテル「キャプション by ハイアット 兜町 東京」が開業した。賃貸等不動産の帳簿価額は約2,870億円、時価は約4,230億円である。
物件の入れ替えも稼ぎ頭の一つだ。中期経営計画は3年で約370億円の物件売却を見込む。古いビルを売って再開発に回す、資産の回転が前提だ。
再開発は将来の柱になる。兜町・茅場町に約160億円、札幌に約230億円を3年で投じる。札幌のSAPPORO ONE(2029年8月竣工予定)はオフィス・商業・パーク ハイアットのホテルを備え、完成までの総投資は約1,440億円という大きな案件だ。
資産運用事業は、平和不動産リート投資法人(資産規模約2,560億円)の運用と、売買の仲介が中心である。収益は運用資産に連動する手数料で、設備を抱えないので利益率が高い。連結の従業員は265人で、資産運用に90人がいる。
全社の営業利益は約150億円。内訳はビルディングが約147億円、資産運用が約27億円、本社費などが約25億円のマイナスだ。
収益の波は物件売却で生まれる。賃貸と手数料は安定しているので、利益の振れは売却益の多寡でほぼ決まる。
優良さと弱いところ
強みの第一は、代わりのない立地と取引所との結びつきだ。取引所ビルは移転が難しく、テナントは取引所と証券会社が中心になる。景気の波を受けにくい安定収入である。
第二は、資産の含み益だ。賃貸等不動産で約1,400億円、投資有価証券も大成建設・三菱地所など約200億円を持つ。税引き後で見ても1,000億円近い。ただし、含み益は売らない限り稼ぎにならない。
弱みは資本効率と借金である。ROEは8.7%で、資本コストの8.5%をわずかに上回るにすぎない。過去10年の中央値は6.7%だ。純有利子負債は自己資本の1.9倍で、営業利益が支払利息を6倍しかカバーしていない。
堀は強くないと筆者は見る。大手デベロッパーのような街づくりの規模はなく、中小型ビルは競合も多い。賃料は市況に従う。
経営の資本配分は評価できる面と心配な面がある。連結配当性向50%を方針にし、政策保有株を純資産比10%以下へ減らす点は、バリュー投資家には歓迎できる。一方、札幌の大型投資は金利が上がる局面で借金を増やす賭けでもある。
安全域は借金で削られている。含み益が厚い分、売却に動けば価値は出る。それが唯一の下支えだ。
株主の顔ぶれも見ておきたい。大成建設が約2割を持ち、建設会社が大株主である構図は、安定株主として心強い反面、資産を売って株主に戻す圧力を弱める面もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この領域は、都心の中小型ビルや商業地を保有し、買い・直し・貸す(売る)会社が並ぶ。ヒューリック、京阪神ビルディング、トーセイなどが同じ土俵にいる。平和不動産は、取引所ビルという特別な資産と、リート運用を併せ持つ点で位置が違う。
需給は今は強い。東京都心5区の空室率は1.9%と低く、既存ビルの賃料も上がっている。建築費が高止まりして新築が出にくいため、既存ストックの価値は支えられる。
だが10年で効くのは金利だ。10年国債が3%になれば、ビルの期待利回り(キャップレート)は上がりやすい。資産価格の伸びは抑えられ、借金の利払いは増える。この領域の会社は、どこも借金で資産を持つため同じ影響を受ける。
競合が多いのも特徴だ。中小型ビルの取得競争は激しく、仕入れ値が上がれば利幅が薄くなる。大手の三井不動産・三菱地所は資金力で上を行き、平和不動産は買う側としては劣勢になる。
取引所ビルの周辺は別の話だ。証券市場の取引が電子化して、売買の場の物理的な需要は減ってきた。賃貸の中身が証券会社のオフィスから、より広い企業向けに変わるかが問われる。
札幌は、再開発の中でも特に大きな賭けだ。札幌駅周辺は人気が高いが、ホテルとオフィスが同時に増えるため、需給が緩めば誘致に時間がかかる。
資本政策と M&A
株主還元は連結配当性向50%程度が基本で、自社株買いは機動的に行う。3年で約270億円を還元する計画で、2026年度は普通配当に特別配当を加える見込みだ。
資金の使い道は、再開発約400億円、物件取得約230億円、設備投資約170億円である。原資は物件売却収入約370億円、借入約240億円、事業で得る現金だ。ネットD/Eレシオは2.0倍程度を目安にしており、借金を減らす方針ではない。
政策保有株は縮める方針だ。純資産に対する比率を2026年度までに10%以下にし、2024年12月末の約175億円を半分以下に減らす。ここは資本効率の改善として素直に評価できる。
株主構成では、大成建設が約20%を持つ筆頭株主だ。三菱地所も約5%を持つ。大成建設との関係は兜町の再開発での協業が確認できるが、資本業務提携の発表は確認できなかった。買収提案などの報道も確認していない。
買収される側になる可能性は排除できない。含み益が厚く時価総額が小さい会社は、再編の対象になりやすい。ただし、そのプレミアムを本質価値には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
取引所ビルは代えのきかない資産で、賃料は10年にわたって物価に追随する。都心の空室率は低く、建築費の高止まりで新築は増えにくい。既存ビルを持つ強みが続く。
含み益は大きい。賃貸等不動産で約1,400億円、有価証券で約200億円がある。純資産は時価総額を大きく上回り、PBRで見ればまだ割安だ。物件を売って借金を返し、自社株買いに回せば、ROEは資本コストを超える。中期計画も物件売却と政策保有株の縮減を掲げている。
札幌のSAPPORO ONEは2029年に竣工し、オフィスとパーク ハイアットが賃貸収入を一気に押し上げる。兜町もホテルの開業で街の価値が上がった。リート運用の手数料も、運用資産の拡大とともに積み上がる。
大成建設が2割を持ち、三菱地所も株主に並ぶ。含み益の厚い小型株なので、再編の対象にもなりうる。今の値段は、資産の価値を十分に映していない。
取引所ビルのような代えのきかない資産は、金利が上がっても賃料が物価に追随するので、価値が崩れにくい。経営も政策保有株の縮減や資産の入れ替えで、資本効率を上げる姿勢を見せている。
慎重な見方
問題は稼ぐ力だ。借金は自己資本の1.9倍あり、借り換えで金利は3.5%前後に上がる。営業利益が伸びても、利払いの増加で税引き後の利益は今と変わらない。ROEは資本コストを下回り続ける。
含み益は売らなければ株主のものにならない。中期計画は物件を売るが、同時に再開発へ再投資する。売却益は札幌と兜町に消え、借金は減らない。
札幌は約1,440億円の大型投資だ。完成まで金利負担が先行する。金利が上がり、キャップレートが上がれば、完成時の資産価値は想定を割る。ホテルとオフィスが同時に増えると、誘致にも時間がかかる。
取引所ビルは強いが、売買の電子化で取引所に集まる人は減った。賃料の上がり方も鈍い可能性がある。2008年の危機のように市況が崩れれば、借金の重い会社は在庫と評価損の両方で苦しむ。今の値段は、資産の売却益を先取りしすぎている。
株主構成が安定しているのは安心材料だが、安定株主が大きいほど、資産を売って還元する圧力は弱くなる。含み益が評価されないまま、ROEが低い状態が長く続く心配がある。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さについては、強気の見方が正しい。含み益は確かにあり、悲観でも床を支える。ただ、10年の価値は利益の流れで決まる。慎重な見方の指摘、すなわち借り換えで利益が伸びないという点が、計算では勝つ。
確率は中立を最も厚くし、借金の重さを織り込んで、やや悲観と悲観を合わせて4割近くに寄せた。楽観は、資産の売却と自社株買いが進む場合に限り、1割弱にとどめた。結論は割高。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,669 円1,764 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 830 円548 億円)。 今の値に割り戻すと 1,801 円1,190 億円、今との差 −20.6%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,925 円3,915 億円 | 1,816 円1,200 億円 | +241.0% | +13.1% | 619 円409 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,926 円2,594 億円 | 1,059 円700 億円 | +119.6% | +8.2% | 997 円659 億円 |
| 中立 | 34% | 3,131 円2,069 億円 | 908 円600 億円 | +77.9% | +5.9% | 1,373 円907 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,053 円696 億円 | 515 円340 億円 | −30.9% | −3.6% | 392 円259 億円 |
| 悲観 | 13% | 633 円418 億円 | 272 円180 億円 | −60.1% | −8.8% | 118 円78 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,669 円1,764 億円 | 830 円548 億円 | +54.2% | +4.4% | 3,499 円2,312 億円 |
今の株価時価総額 2,270 円1,500 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 資産の入れ替えと自社株買いが進み、札幌も成功 利益 209 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 5,925 円3,915 億円
札幌のSAPPORO ONEは満室に近い形で稼働し、兜町のホテルも軌道に乗る。賃料は物価を上回って上がり、都心の需給の逼迫が続く。
経営は物件の入れ替えを加速する。古いビルを売って借金を減らし、政策保有株も整理する。浮いた資金は自社株買いに回り、株主資本が圧縮されてROEは12%台に上がる。
リート運用の資産は約2倍になり、手数料収入が伸びる。借金は減るので利払いの増加も抑えられる。
この筋書きでは、資産の含み益が実際に株主へ戻る。資本政策がバリュー投資家の望む形になり、10年後の純利益は今の約2倍に達する。
取引所ビルの安定収入が下支えになり、借金の返済も計画より早く進む。兜町の再開発では大成建設との協業も進んでいる。
- 賃貸(取引所ビル・オフィス・ホテル・再開発):数量 0.6(賃貸等不動産の時価(兆円。今の値段で測った実質。再開発の完成で増える))× 価格 0.11(時価に対する賃貸収入の比率 × 賃料の物価の指数(今=1))→ 売上 701 億円・営業利益 260 億円。時価+47%・賃料1.45倍
- 物件売却(ポートフォリオの入れ替え):数量 10.0(年間の売却件数(件))× 価格 25(1 件あたりの平均売却額(億円))→ 売上 251 億円・営業利益 80 億円。件数10・単価1.51倍
- 資産運用・仲介(リート運用・売買仲介):数量 0.6(運用資産残高(兆円。今の値段に直した実質))× 価格 0.02(運用資産に対する収入の比率 × 物価の指数(今=1))→ 売上 133 億円・営業利益 80 億円。運用資産2倍弱・手数料1.5倍
倍率:事業の純利益 209 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.28 倍、時価総額 3,194 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:札幌の成功、賃料の物価超え、資産売却と自社株買いが同時にそろう必要があり、重なる確率は低い。
やや楽観 20% 札幌が計画どおりに立ち上がり、賃貸が物価並みに伸びる 利益 140 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,926 円2,594 億円
取引所ビルと都心のオフィスは、賃料が物価並みに上がって安定収入を保つ。兜町のホテルと茅場町の再開発も、計画どおりに完成して収益に加わる。
札幌は2029年に竣工し、オフィスの誘致も予定どおりに進む。借金は増えるが、増えた分の賃貸収入が利払いの増加をおおむねカバーする。
物件の入れ替えは年10件近くに増え、売却益が積み上がる。政策保有株の縮減も計画どおりに進み、配当性向50%に自社株買いが加わる。
10年後の純利益は今より3割ほど多い。ROEは資本コストにやや届かない水準にとどまるが、再開発が収益の柱として定着する。
都心の空室率が低い状態が続き、賃料の改定も順調に進む。借金は多いものの、返済の見通しが立つ。
- 賃貸(取引所ビル・オフィス・ホテル・再開発):数量 0.6(賃貸等不動産の時価(兆円。今の値段で測った実質。再開発の完成で増える))× 価格 0.10(時価に対する賃貸収入の比率 × 賃料の物価の指数(今=1))→ 売上 585 億円・営業利益 205 億円。時価+32%・賃料1.34倍
- 物件売却(ポートフォリオの入れ替え):数量 9.0(年間の売却件数(件))× 価格 24(1 件あたりの平均売却額(億円))→ 売上 212 億円・営業利益 64 億円。件数9・単価1.42倍
- 資産運用・仲介(リート運用・売買仲介):数量 0.5(運用資産残高(兆円。今の値段に直した実質))× 価格 0.02(運用資産に対する収入の比率 × 物価の指数(今=1))→ 売上 107 億円・営業利益 62 億円。運用資産+67%・手数料1.4倍
倍率:事業の純利益 140 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,750 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の路線で札幌・兜町が育ち、金利も想定内に収まる姿。やや楽観として相応の厚みを置いた。
中立 34% 札幌と兜町が完成するが、利払いの増加で利益は伸びない 利益 98 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,131 円2,069 億円
賃料は取引所ビルなど長期の契約が多く、物価ほどは上がらない。10年で約1.3倍にとどまる。札幌と兜町の完成で、賃貸の規模は2割強広がる。
借金は借り換えのたびに高い金利へ移る。再開発の資金も加わり、純有利子負債は3,000億円超になる。営業利益は約240億円に伸びるが、利払いが約110億円に増えて、純利益は約100億円と今とほぼ同じだ。
物件の売却は年8件ほどで、売却益は営業利益に一部が入る。リート運用は約1.4倍に増える。配当性向50%は守られ、自社株買いも少し行う。
ROEは5〜6%で資本コストを下回る。資産は増えても、稼ぎは増えない。10年後も、資産が大きく見える割に、利益の小さい会社のままだ。
取引所ビルの安定収入と物件売却が下支えとなり、減益にはならないが、増益にもならない。
- 賃貸(取引所ビル・オフィス・ホテル・再開発):数量 0.5(賃貸等不動産の時価(兆円。今の値段で測った実質。再開発の完成で増える))× 価格 0.10(時価に対する賃貸収入の比率 × 賃料の物価の指数(今=1))→ 売上 519 億円・営業利益 177 億円。時価+23%・賃料1.28倍
- 物件売却(ポートフォリオの入れ替え):数量 8.0(年間の売却件数(件))× 価格 22(1 件あたりの平均売却額(億円))→ 売上 178 億円・営業利益 48 億円。件数8・単価1.34倍
- 資産運用・仲介(リート運用・売買仲介):数量 0.4(運用資産残高(兆円。今の値段に直した実質))× 価格 0.02(運用資産に対する収入の比率 × 物価の指数(今=1))→ 売上 86 億円・営業利益 49 億円。運用資産+40%・手数料1.34倍
倍率:事業の純利益 98 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,225 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再開発は計画どおり完成するが、金利負担と投資の重さで利益が伸びにくい姿。落としどころとして最も厚くした。
やや悲観 25% 金利と建設費で札幌の収益が遅れ、売却益も薄れる 利益 29 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,053 円696 億円
10年国債が3%に上がり、キャップレートも切り上がる。札幌の誘致に時間がかかり、賃貸収入の立ち上がりが2年ほど遅れる。
物件の売却は、買い手の資金調達が苦しくなって件数が減り、売却益も薄れる。売却を前提にした再開発の資金計画が狂い、借金が増える。
借金は3,300億円ほどになり、利払いが約115億円に達する。営業利益は約150億円で足踏みし、純利益は30億円弱まで細る。配当は減らさざるをえない。
資産の含み益は薄くなるが、残る。稼ぐ力だけで測れば価値は低いが、売れる資産が床を支える。
取引所ビルの賃料は安定するが、札幌のホテルとオフィスの収益は立ち上がりが遅れ、稼ぐ力は伸びない。
- 賃貸(取引所ビル・オフィス・ホテル・再開発):数量 0.5(賃貸等不動産の時価(兆円。今の値段で測った実質。再開発の完成で増える))× 価格 0.09(時価に対する賃貸収入の比率 × 賃料の物価の指数(今=1))→ 売上 449 億円・営業利益 135 億円。時価+13%・賃料1.20倍
- 物件売却(ポートフォリオの入れ替え):数量 5.0(年間の売却件数(件))× 価格 18(1 件あたりの平均売却額(億円))→ 売上 90 億円・営業利益 13 億円。件数5・単価1.08倍
- 資産運用・仲介(リート運用・売買仲介):数量 0.3(運用資産残高(兆円。今の値段に直した実質))× 価格 0.02(運用資産に対する収入の比率 × 物価の指数(今=1))→ 売上 65 億円・営業利益 34 億円。運用資産+13%・手数料1.25倍
倍率:事業の ROE は 2% 弱で資本コスト 8% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)は約 340 億円、売れる資産の税後は約 1,100 億円。床の PBR は今の自己資本に掛け、その間の 0.50 倍に置いた(今の自己資本 1,268 億円 × 0.50)。 EV÷営業利益は約 20 倍で、借金を含めても割安とは言えない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.531 倍・時価総額 673 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:借金が重く、金利と市況に敏感な会社なので、慎重な筋書きの確率を厚くした。
悲観 13% 札幌の失敗と市況の悪化で、借金の重さが利益と資産を削る 利益 −60 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 633 円418 億円
金利が想定を超えて上がり、キャップレートが大きく切り上がる。賃貸等不動産の時価は3割ほど下がり、含み益はほぼ消える。
札幌のオフィスとホテルは、供給が重なって誘致が進まない。完成後も満室にならず、金利と減価償却だけが重くのしかかる。兜町・茅場町の再開発も採算が悪化し、減損を計上する。
売却は買い手がつかず、売却益どころか評価損が出る。借金は3,300億円規模で残り、利払いが営業利益をほぼ食う。純利益は赤字になり、自己資本は約900億円へ減る。
2008〜2009年の不動産市況の崩れと同じ展開だ。取引所ビルの安定収入は残るが、それだけでは借金を支えきれない。配当は大きく減る。
大成建設などの株主が支援に動く可能性はあるが、増資や資産の売却を迫られれば、既存の株主の取り分は薄まる。
- 賃貸(取引所ビル・オフィス・ホテル・再開発):数量 0.4(賃貸等不動産の時価(兆円。今の値段で測った実質。再開発の完成で増える))× 価格 0.09(時価に対する賃貸収入の比率 × 賃料の物価の指数(今=1))→ 売上 343 億円・営業利益 76 億円。時価縮小・賃料1.10倍
- 物件売却(ポートフォリオの入れ替え):数量 3.0(年間の売却件数(件))× 価格 17(1 件あたりの平均売却額(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 −3 億円。件数3・評価損
- 資産運用・仲介(リート運用・売買仲介):数量 0.3(運用資産残高(兆円。今の値段に直した実質))× 価格 0.02(運用資産に対する収入の比率 × 物価の指数(今=1))→ 売上 47 億円・営業利益 21 億円。運用資産ほぼ横ばい
倍率:赤字で稼ぐ力は測れない。床は純有利子負債を引いた売れる資産の税後。今の自己資本 1,268 億円に 0.33 倍を掛けた。 営業利益が小さいので EV÷営業利益は 40 倍超で、借金込みで見ると価値は床に近い。
確率:10 年国債 3% への金利上昇に加え、市況の下落と札幌の失敗が重なる構造的な負け。借金の重い会社で起こりうるので 13% 置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸(取引所ビル・オフィス・ホテル・再開発)
東京・大阪・名古屋の証券取引所ビルや兜町・茅場町、札幌のオフィス・ホテルを保有して貸す中核事業。
| 数量賃貸等不動産の時価(兆円。今の値段で測った実質。再開発の完成で増える) | 価格時価に対する賃貸収入の比率 × 賃料の物価の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 0.08 | 330 | 110 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 0.10 | 519 | 177 |
取り方:有報の賃貸等不動産の期末時価 4,231 億円を数量とし、ビルディング売上約 463 億円のうち賃貸・ホテルを約 330 億円と推定して比率 7.8% を置いた。営業利益はビルディング約 147 億円から物件売却の分を除いた約 110 億円と推定。賃料は物価ほど上がらない前提を価格の指数に入れる。
物件売却(ポートフォリオの入れ替え)
古いビルを売って売却益を得て、再開発や新規取得に回す事業。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1 件あたりの平均売却額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 17 | 133 | 37 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 22 | 178 | 48 |
取り方:中期計画の物件売却収入約 370 億円(3 年)から年約 125 億円とし、件数は 1 件あたり約 16 億円と置いて推定した(開示なし)。売却益の利益率は約 28% と推定。1 件あたり売却額は物件の値段で、物価並みに上がる。
資産運用・仲介(リート運用・売買仲介)
平和不動産リート投資法人と私募ファンドの運用、不動産売買の仲介で手数料を得る事業。
| 数量運用資産残高(兆円。今の値段に直した実質) | 価格運用資産に対する収入の比率 × 物価の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 0.02 | 46 | 27 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 0.02 | 86 | 49 |
取り方:リート約 0.256 兆円(資産規模 2,561 億円)に私募・受託分を加えて約 0.30 兆円と推定。資産運用事業の営業利益は計画の約 27 億円、売上は約 46 億円と推定(仲介の手数料を含む)。
リスクと懸念
借り換えの利払い増
純有利子負債は自己資本の1.9倍で、借り換えのたびに金利が3.5%前後へ上がる。営業利益が伸びても利払いが食い、株主に残る利益は伸びにくい。中立でも純利益は今とほぼ同じで、悪化すれば減益になる。
札幌の大型投資
約1,440億円を投じる札幌の再開発は、完成が2028〜2029年だ。完成までは金利負担が先行し、ホテルとオフィスの誘致が遅れれば利回りが下がる。事業規模に比べて投資額が大きく、失敗の影響も大きい。
キャップレートの上昇
10年国債が3%になると、ビルの期待利回りが上がりやすい。含み益の約1,400億円は、この上昇で目減りする。含み益を床の一部と考えるなら、前提が揺らぐ最大の要因になる。
取引所ビルの先行き
株式売買の電子化で、取引所に集まる人と機関は減ってきた。取引所ビルは平和不動産の看板資産だが、賃貸の中身が証券会社のオフィス中心のままだと、需要が細るおそれがある。
市況悪化と回転型事業
物件の入れ替えは、売却益が利益の一部を占める。市況が悪化すれば売却が止まり、評価損も出る。2008〜2009年には中小型の不動産会社の多くが資金繰りに苦しんだ。借金の重い会社ほど影響は大きい。
再開発での資本の使い方
再開発に再投資する方針は、売却益が借金返済や株主還元に回りにくいことを意味する。含み益が厚くても、資本効率が上がらない可能性がある。政策保有株の縮減も、再開発の原資に消える公算が大きい。
今後の分かれ目
- 10年国債の利回りが3%を大きく上回る
- キャップレートが上がって含み益が減り、利払いも増える。本質価値はやや悲観や悲観の筋書きに近づく。
- 札幌のSAPPORO ONEが計画どおり満室近くで稼働する
- 賃貸収入の柱が育ち、利払いの増加を吸収できる。本質価値はやや楽観に近づく。
- 物件売却で得た資金を借金の返済と自社株買いに回し、純有利子負債が減り始める
- 含み益が株主へ戻り、ROEが資本コストを超える。楽観の筋書きに近づく。
- 大成建設や三菱地所などが出資比率を高める、または買収提案が出る
- 含み益が一括で評価される可能性があり、中立の価値を上回る水準もありうる。
- 札幌や兜町で大型の減損が出る
- 再開発の投資判断への信頼が落ち、悲観の筋書きに近づく。
- 取引所ビルのテナントが大きく入れ替わる、または退去が続く
- 看板資産の収益力が下がり、賃貸の安定性への評価が変わる。
見ておくもの
- 都心5区の空室率・賃料・キャップレート(三鬼商事・不動産研究所)
- 10年国債の利回りと平和不動産の借入金利
- 札幌SAPPORO ONEと北4西3地区の竣工・テナント決定の状況
- 物件売却の件数・売却益と純有利子負債の推移
- 政策保有株の縮減の進み具合と自社株買いの有無
- 大成建設・三菱地所の持株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、セグメントごとに数量(賃貸等不動産の時価・売却件数・運用資産。実質)と価格(賃料の指数・1 件の売却額・手数料率。名目)を積んだ。純利益は、借り換えの利払い増(推定 10 年で税前 60 億円)と再開発の借入増を引いた。倍率は資本コスト 8%(基本 7.5% に借金+1.0%)と、ROE が k 以下なので上限 1÷k から出し、中立は上限の 9 割に置いた。悲観の床は過去の PBR の底ではなく、売れる資産の税後から出した。新リース会計基準で BS の形は変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。含み益は悲観の床にだけ使い、中立〜楽観には賃料・売却益が純利益に入っているので足していない。結論は「割高」。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.4→15.28 倍・やや楽観 PER 11→12.5 倍・中立 PER 10.6→12.5 倍・やや悲観 PBR 0.5→0.531 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に借金の重さ+1.0% を足した 8.5%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。