結論
ファースト住建は、一次取得者向けの低価格な戸建を建てて売る会社だ。年 1,100 棟あまりを売り、売上は 429 億円(2025 年 10 月期)。営業利益は 25 億円で、営業利益率は 5.8% と、住宅分譲の中では普通の水準にある。
筆者は、稼ぐ力は並みで、財務の厚みは値段にほぼ織り込まれていると見る。純有利子負債はマイナス 64 億円(純現金)で、時価総額 150 億円の 4 割を占める。自己資本は 407 億円と、時価総額の 2.7 倍ある。PBR は 0.37 倍だ。
問題は資本効率だ。ROE は 3.5% と、資本コストの 9.0% を大きく下回る。棟数の減少に加え、2025 年 10 月期は子会社 KHC の取得の費用(公開買付関連費用 0.65 億円)も重なった。
10 年の価値は、時価総額 151 億円に対し 118 億円ほどで、やや割高と見る。PBR の低さは、ROE が資本コストを下回ることの裏返しだ。配当総額は 6.0 億円で、配当性向は 40% ほど。優待(少額のクオカードなど)が加わるが、還元だけでは資本コストの 9.0% に届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業の質を見る。戸建分譲は、土地を仕入れて建てて売る在庫商売で、堀は薄い。低価格の建売で在庫回転を高く保つのが強みだが、利益率は 5〜8% で、金利と地価の変動に左右される。
次に、財務の安全を見る。純現金があり、自己資本比率は 66%、赤字の期もない。10 年先を見ても、会社が行き詰まる心配はほとんどない。
最後に、値段を見る。時価総額は 150 億円。ここから余った現金 40 億円(戻り方 0.5 で 20 億円)を引くと、事業は 130 億円ほどで評価されており、利益 15 億円の PER は 9 倍弱になる。この値段は、棟数の減少と利益率の低下を既に織り込んでいる。
筆者は、本業の利益には控えめな倍率(9 倍前後)を置き、余った現金には戻り方 0.5 を掛けて見た。10 年の価値は今の時価総額をやや下回る。PBR が低いのは、ROE が資本コストに届かない会社だからで、純現金の厚みは値段に織り込まれている。
何で稼ぐ会社か
事業は戸建事業とマンション事業等の 2 つで、2025 年 10 月期の売上 429 億円のうち戸建が 410 億円(96%)を占める。
戸建事業は、土地を仕入れて戸建を建て、分譲する。販売 1,120 棟(戸建分譲 936 棟・土地分譲 184 区画、売上 345 億円)に加え、子会社が請負工事 208 棟(売上 62 億円)を引き渡した。1 棟の売上は約 3,100 万円。セグメント利益は 31.4 億円で、利益率は 7.65%。
マンション事業等は、賃貸マンションの運営、中古マンションのリノベーション販売、木造集合住宅の請負(特建)を含む。売上は 19 億円、セグメント利益は 4.8 億円。賃貸収益は 7.9 億円で、取得を進めて安定した収益を増やしている。
グループは 3 つの顔を持つ。ファースト住建本体は一次取得者向けの低価格な建売で在庫回転が高い。2024 年 10 月に子会社にしたKHCグループは、設計に強く注文住宅が多い。アオイ建設は相模原周辺でブランド力があり、建売も供給する。
優良さと弱いところ
強みは、低価格な建売に絞った仕入れから販売までの速さと、財務の安定だ。自己資本比率は 66%(2025 年 10 月末)、第 3 四半期末は 67% に高まった。過去 10 年の営業利益率は 5〜11%、最悪でも 2000 年代の 2.3% で、赤字の期はない。
弱みは、収益の水準が低いことだ。ROE の中央値は 6.4% で、資本コストに届かない。土地と建築費の上昇を、買い手の予算の天井がある低価格帯では価格に移しにくい。2026 年 10 月期は第 3 四半期までの棟数が 14% 減り、売上は 9% 減った。それでも営業利益は 12% 増えた。厳選して仕入れる効果で、滞留在庫の整理が進んでいる。
資本配分は無難だ。配当性向は 40% ほどで、残りは在庫と賃貸不動産に回す。自社株買いはなく、現金は借入と見合いで積み上がる。2025 年 12 月に、買収防衛策(大規模買付行為への対応方針)の継続を決めた。少数株主の立場では、TOB の機会を会社が狭める面もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
戸建分譲は、地価と建築費が上がるなかで、一次取得者が買いにくくなっている。住宅ローン金利の上昇も重なり、需要は弱い。着工も弱含みで、大工など職人の減少と高齢化は建築費だけでなく工期も長くする。中低価格帯の回復には時間がかかる、と会社も見ている。
長い目では、世帯数の減少が効く。新築の戸建は 10 年で数が細る方向にある。ただ、中古より新築を選ぶ一次取得者は一定数残り、低価格の建売は数が減っても残る。大手の住宅会社が手を出しにくい低価格帯に強みがある。
収益用不動産の市況は堅調で、賃貸マンションの取得を進める会社の方針には追い風だが、取得価格も上がっている。
建築費は、資材の高止まりと職人の高齢化で上がり続ける。住宅の性能基準も厳しくなり、2025 年の建築基準法の改正は着工を一時的に落とした。低価格帯は価格を上げにくく、利益率が削られやすい。この環境で、仕入れを厳選して在庫を軽くする会社が生き残る、と見る。大手が手を出しにくい低価格帯は、残るが数は細る。世帯数の減少は 10 年を通じて続く。
資本政策と M&A
配当は 2025 年 10 月期が総額 6.0 億円、2026 年 10 月期予想も同額で、配当性向は 40% ほど。自社株買いはなく、自己株式は 299 万株(発行済みの 17.7%)を持つ。
株主優待は、毎年 10 月末に 100 株以上を 1 年以上持つ株主に、100〜299 株で少額のクオカード、300 株以上でうどんセット(2026 年 9 月に決定)を贈る。株主数の開示がなく、1 年以上の継続保有者を 6,000〜8,000 人と置くと、費用は年 0.45 億円ほど(推定)。優待の費用は販管費に入って利益を下げているので、10 年の還元には「年 0.45 億円 × 10 年 × 続く見込み」を足した(中立 1.0、やや悲観 0.75、悲観 0.5)。
純現金 64 億円(現預金 223 億円−有利子負債 159 億円)は時価総額の 43%。ただし棚卸資産 235 億円を借入で持つ事業なので、全部を余った現金とは見ない。事業の資金繰りの余裕を引いて、40 億円を余った現金とした。戻り方は 0.5。自社株買いがなく、買収防衛策も継続するなど、現金を株主に戻す実績に乏しい。
2026 年 2 月に取締役 5 名に株式報酬型ストック・オプション 1,198 個(11.98 万株、発行済みの 0.9%)を発行した。希薄化は小さい。TOB の確率は kabufu の推定で 24.5%。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
住宅の需要は、人口が減っても世帯数がしばらく保たれ、一次取得者は新築の建売を選ぶ。ファースト住建は低価格帯に強く、在庫回転が高く、赤字の期がない。
KHCとアオイ建設の取り込みで、請負工事の比率が上がり、収益性が少しずつ改善している。第 3 四半期までの営業利益は +12%、戸建のセグメント利益は +12.6% と、棟数が減っても利益は増えた。
財務は厚い。純現金が時価総額の 4 割を占め、自己資本は時価総額の 2.7 倍ある。賃貸マンションの取得を重ね、安定収益を積む方針も明確だ。
配当性向は 40%、優待も加わって利回りは 4% 弱ある。PBR 0.37 倍は、悲観を織り込みすぎている。
10 年の先も、低価格の新築を選ぶ一次取得者は残り、大手が手を出しにくい帯域で在庫回転の高さが武器になる。会社は用地仕入れを厳選し、不採算の滞留在庫を減らしてきた。利益率の改善が続けば、純現金と賃貸不動産の厚みが評価に表れる。
慎重な見方
ROE の中央値は 6.4% で、資本コストを下回る。2025 年 10 月期は 3.5% まで落ちた。会社の営業利益率は 5〜6% で、棟数が少し動くだけで利益が消える。
第 3 四半期までの戸建分譲の棟数は 14% 減った。住宅ローン金利の上昇、地価と建築費の高止まり、職人不足は続く。低価格の建売はもともと買い手の予算に天井があり、コストの上昇を価格に移せない。
純現金は見かけほど自由ではない。棚卸資産 235 億円が借入と対になり、土地の仕入れに現金が要る。自社株買いはなく、買収防衛策もあり、少数株主に現金が戻る道は細い。
今期の第 3 四半期までに、現預金は 24 億円減った。賃貸不動産の取得に使っており、現金は事業に回って積み上がらない。PBR が低いのは、市場がこれを織り込んでいるからだ。
買収した子会社の連携も途中で、請負工事の引渡棟数は前年同期を下回る。取得の費用に見合う利益が出ないおそれがある。
どちらに重みを置いたか
戸建分譲の薄い収益と、資本効率の低さは変わらない。慎重な見方の、棟数の減少と金利の上昇には、やや悲観の確率を厚く置いた。一方、純現金と賃貸不動産の厚み、赤字にならない実績、配当と優待の還元は、悲観の床を高くする。結論は、慎重の言い分がやや強い。確率は、楽観 7%・やや楽観 20%・中立 38%・やや悲観 23%・悲観 12%。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 1,636 円228 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 489 円68 億円)。 今の値に割り戻すと 1,069 円149 億円、今との差 −1.1%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,155 円439 億円 | 829 円115 億円 | +268.6% | +13.9% | 279 円39 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,335 円325 億円 | 635 円88 億円 | +174.7% | +10.6% | 594 円83 億円 |
| 中立 | 38% | 1,875 円261 億円 | 530 円74 億円 | +122.5% | +8.3% | 914 円127 億円 |
| やや悲観 | 23% | 712 円99 億円 | 364 円51 億円 | −0.5% | 0.0% | 248 円34 億円 |
| 悲観 | 12% | 599 円83 億円 | 157 円22 億円 | −30.1% | −3.5% | 91 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,636 円228 億円 | 489 円68 億円 | +96.6% | +7.0% | 2,125 円296 億円 |
今の株価時価総額 1,081 円150 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 戸建の需要が戻り、グループの連携で利益率が上がる 利益 34 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 3,155 円439 億円
住宅ローン金利が落ち着き、土地と建築費の上昇も止まって、一次取得者向けの戸建需要が戻る。ファースト住建の低価格帯の建売に、KHCの設計力、アオイ建設のブランドが加わり、棟数は今の 1.12 倍、1 棟の価格は物価並みの 1.40 倍、戸建の営業利益率は 9.0% に上がる。
賃貸マンションは取得を重ねて売上が 1.8 倍になり、営業利益率は 28%。本社費用は物価並みに 1.34 倍。営業利益は 55 億円、純利益は 34 億円。配当性向は 45% に高まり、10 年の還元は優待を含めて 115 億円ほど。中立との差は、棟数が 1.12 倍に増えることと、営業利益率が 1.3 ポイント高いことだ。需要の戻りが続き、仕入れの競争も弱まる前提になる。
- 戸建事業:数量 1.5(販売・引渡棟数(千棟))× 価格 4,320(1 棟あたり売上(万円・名目))→ 売上 642 億円・営業利益 58 億円。1,487 棟(今の 1.12 倍)× 1 棟 1.40 倍、営業利益率 9.0%
- マンション事業等:数量 34.2(売上規模(億円・戸数の開示なし))× 価格 1.30(売上あたり係数(倍・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 13 億円。賃貸・分譲・特建の売上 1.8 倍 × 1.3 倍、営業利益率 28%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 12.8 倍、時価総額 439 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が目標にする戸建 1,370 棟(今期 1,328 棟)を超えて伸び、金利が下がって一次取得者が戻り、グループ 3 社の連携が効く筋書き。10 年の間に住宅市場が追い風になる年が続く必要があり、過去 12 年の最高の営業利益率 10.8% に近づく利益率も要る。実現の幅は狭いので 7% にとどめた。
やや楽観 20% 需要は緩やかに戻り、利益率が少し上がる 利益 25 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 2,335 円325 億円
金利は高止まりのまま需要が持ち直し、分譲用地の仕入れを厳選した効果が出て、棟数は今の 1.02 倍、1 棟の価格は 1.37 倍。請負工事の比率が上がり、戸建の営業利益率は 8.0%。
賃貸マンションは取得が続いて売上が 1.5 倍、営業利益率は 28%。本社費用は物価並みの 1.34 倍。営業利益は 41 億円、純利益は 25 億円。配当性向は 42% で、10 年の還元は優待を含めて 88 億円ほど。中立との差は、棟数が 1.02 倍に増えることと、営業利益率が 0.3 ポイント高いことだ。仕入れの厳選が利益率に効き続ける前提になる。
- 戸建事業:数量 1.4(販売・引渡棟数(千棟))× 価格 4,228(1 棟あたり売上(万円・名目))→ 売上 573 億円・営業利益 46 億円。1,355 棟(今の 1.02 倍)× 1 棟 1.37 倍、営業利益率 8.0%
- マンション事業等:数量 28.5(売上規模(億円・戸数の開示なし))× 価格 1.27(売上あたり係数(倍・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 10 億円。売上 1.5 倍 × 1.27 倍、営業利益率 28%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 13.05 倍、時価総額 325 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の今期計画(営業利益 26.5 億円、1,160 棟+請負 210 棟)を足がかりに、棟数はやや増え、利益率は少し改善する筋書き。第 3 四半期までは営業利益 +12% で計画線に乗っているが、棟数は 14% 減っており、期の後半の巻き返しが要る。確度は中くらいなので 2 割にした。
中立 38% 棟数は細り、価格は物価並み。利益はゆっくり伸びる 利益 20 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,875 円261 億円
戸建は 10 年で棟数が 5% 減り、1 棟の価格は物価並みの 1.34 倍。戸建の営業利益率は今の 7.65% から 7.7% へほぼ横ばい。厳選した用地仕入れで在庫の質は上がるが、土地と建築費の上昇を価格に移せる範囲に限られる。
賃貸マンションは取得を続けて売上が 1.3 倍、1.2 倍の賃料で営業利益率は 25%。本社費用は物価並みの 1.34 倍。営業利益は 33 億円、純利益は 20 億円。配当性向は 40% を保ち、10 年の還元は優待を含めて 74 億円ほど。ROE は 4% 台で、資本コストを下回り続ける。優待の費用は利益から引き済みで、受け取りの分を還元に足している。
- 戸建事業:数量 1.3(販売・引渡棟数(千棟))× 価格 4,135(1 棟あたり売上(万円・名目))→ 売上 522 億円・営業利益 40 億円。1,262 棟(今の 0.95 倍)× 1 棟 1.34 倍、営業利益率 7.7%(今 7.65%)
- マンション事業等:数量 24.7(売上規模(億円・戸数の開示なし))× 価格 1.20(売上あたり係数(倍・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 7 億円。売上 1.3 倍 × 1.2 倍、営業利益率 25%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 13.31 倍、時価総額 261 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:住宅の需要は人口と世帯数の減少で細るが、価格は物価並みに上がる。会社は低価格の建売で在庫回転が高く、利益率の悪化は食い止めている。この形が最も起こりやすいと見て、強気と慎重の中間に 4 割弱を置いた。
やや悲観 23% 金利と建築費の上昇で棟数が減り、利益率が薄くなる 利益 10 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 712 円99 億円
金利上昇と建築費の高止まりで、棟数は今の 0.85 倍。1 棟の価格は 1.28 倍にとどまり、戸建の営業利益率は 6.0% に落ちる。売れ残りの在庫は値引きで処分する。
賃貸マンションは売上 1.1 倍、営業利益率 22%。本社費用は物価並みの 1.34 倍で、売上が減っても下がらない。営業利益は 17 億円、純利益は 10 億円。配当性向は 40% を保てず 38% に下がり、10 年の還元は優待を含めて 51 億円ほど。優待は 75% の継続とみた。純現金は谷で食う。
分譲用地の仕入れを絞って在庫を減らすが、固定費の本社費用は下がらない。賃貸マンションの利益は安定するものの、戸建の落ち込みを埋めるには小さい。
- 戸建事業:数量 1.1(販売・引渡棟数(千棟))× 価格 3,950(1 棟あたり売上(万円・名目))→ 売上 446 億円・営業利益 27 億円。1,129 棟(今の 0.85 倍)× 1 棟 1.28 倍、営業利益率 6.0%
- マンション事業等:数量 20.9(売上規模(億円・戸数の開示なし))× 価格 1.15(売上あたり係数(倍・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 5 億円。売上 1.1 倍 × 1.15 倍、営業利益率 22%
倍率:ROE 2% 台は k 8.25% を大きく下回る。上限は 1÷k=11.1 倍。棟数が減り利益率も薄いので、その 8 割強の 9.0 倍にした。
確率:住宅ローン金利がさらに上がり、一次取得者が買えなくなって棟数が 15% 減る筋書き。足元でも第 3 四半期までの棟数は 14% 減っており、逸脱ではなく延長にすぎない。過去にも 2020 年 10 月期に営業利益率が 6.1%、2024 年に 5.1% まで落ちている。2 割強にした。
悲観 12% 需要の縮小と在庫の値引きで、赤字に近い低採算が続く 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 599 円83 億円
一次取得者の需要が縮み、棟数は今の 0.65 倍。1 棟の価格は 1.10 倍にとどまり、戸建の営業利益率は 4.5% まで落ちる。滞留在庫の値引きが続き、仕入れた用地の評価損も出る。
賃貸マンションは売上が横ばいで営業利益率は 15%。本社費用は物価並みに 1.34 倍かかり、営業利益は 1 億円に近い。純利益は 0.5 億円。配当は 25% まで下がり、10 年の還元は優待を含めて 22 億円ほど。優待は半分に縮む。自己資本は積み上がらないが、純現金と賃貸不動産が床になる。分譲用地の評価損や、売れ残り在庫の値引きが続き、現金は借入の返済と在庫の維持に消える。会社の存続は揺るがないが、株主に戻る額は小さくなる。
- 戸建事業:数量 0.9(販売・引渡棟数(千棟))× 価格 3,395(1 棟あたり売上(万円・名目))→ 売上 293 億円・営業利益 13 億円。863 棟(今の 0.65 倍)× 1 棟 1.10 倍、営業利益率 4.5%
- マンション事業等:数量 19.0(売上規模(億円・戸数の開示なし))× 価格 1.00(売上あたり係数(倍・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。売上 横ばい、営業利益率 15%
倍率:ROE ほぼ 0% は k 8.25% を大きく下回る。稼ぐ力がなく、在庫は借入と対で現金も戻らないので、今の自己資本 407 億円の 20% の PBR 0.20 倍にした。床の資産 150 億円(自己資本の 37%)の 5 割強で、売る手間と時間、現金が少数株主に戻らない分を引いた。悲観では積み上がった利益を床に数えない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.205 倍・時価総額 83 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:住宅需要が構造的に縮み、棟数が 35% 減る負けの筋書き。世帯数の減少、金利の上昇、建築職人の不足が重なると、低価格帯の建売はまず買い手が消える。過去 25 年の最悪の営業利益率は 2.3% で、これを下回らない範囲に置いた。1 割強にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
戸建事業
土地を仕入れて戸建を建てて売る(戸建分譲・土地分譲)。子会社が注文住宅の請負も行う。
| 数量販売・引渡棟数(千棟) | 価格1 棟あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 1.3 | 3,086 | 410 | 31 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 4,135 | 522 | 40 |
取り方:売上 409.76 億円(営業利益 31.36 億円)。販売 1,120 棟(戸建分譲 936・土地分譲 184)と請負 208 棟の合計 1,328 棟で割り、1 棟あたり約 3,086 万円。
マンション事業等
賃貸マンションの運営、中古マンションのリノベーション販売、木造集合住宅の請負(特建)。
| 数量売上規模(億円・戸数の開示なし) | 価格売上あたり係数(倍・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 19.0 | 1.00 | 19 | 5 |
| 10 年後 中立 | 24.7 | 1.20 | 30 | 7 |
取り方:売上 18.98 億円(賃貸 7.92・分譲 8.42・特建 2.60)、営業利益 4.76 億円。戸数の開示がないので、売上を数量とし、価格の係数を 1.0 とした(推定)。
リスクと懸念
金利上昇と住宅需要
住宅ローン金利の上昇は、一次取得者の購買力に直接効く。第 3 四半期までの戸建分譲は 693 棟で、前年同期比 14% 減。需要の戻りは見えない。
土地と建築費の上昇
用地の仕入れは競争が厳しく、建築費も職人不足で上がる。低価格の建売は価格を上げにくく、利益率が削られる。
在庫の評価損
棚卸資産は 235 億円(総資産の 38%)。需要が冷えると、滞留在庫の値引きと評価損が利益を食う。
買収したグループとの連携
KHC他 6 社とアオイ建設の取り込みは途中。注文住宅の請負は、前年同期比で引渡棟数が 9% 減っている。連携の成果が出ないと、取得の費用が重い。
現金の戻り方
自社株買いがなく、買収防衛策も継続する。純現金 64 億円が時価総額の 4 割ある一方、少数株主に戻る道が細い。
世帯数の減少
10 年の先では、新築戸建の総数が細る。低価格帯に残る需要は一定だが、棟数は今より減る見込み。
新リース会計基準
2028 年 10 月期から、賃借している土地・設備がリース負債として載る。影響は限定的だが、自己資本比率は少し下がる。
今後の分かれ目
- 戸建分譲の販売棟数が 2 年続けて前年を下回る
- 需要の縮小が構造的になっている。やや悲観の確率を高め、戸建の営業利益率を 6% に見直す。
- 営業利益率が 7% を超えて 2 年続く
- 仕入れの厳選とKHCとの連携が利益率に効いている。やや楽観の確率を厚くできる。
- 自社株買いや増配の発表が出る
- 現金の戻り方を 0.5 から 0.75 に上げる材料になる。評価が一段上がる。
- 住宅ローン金利が下がり、新設住宅着工が持ち直す
- 需要の底打ち。棟数の見通しを上げる。
- 優待を廃止する、または大幅に縮める
- 還元の受け取りが減る。優待分の継続率を 0.5 に下げる。
- TOB の提案が出る
- 純現金と賃貸不動産の厚みに、プレミアムがつく可能性がある。買収防衛策があるので、価格が少数株主に公正かを確かめる。
見ておくもの
- 戸建分譲の販売棟数と営業利益率(四半期ごと)
- 請負工事の引渡棟数とKHCグループの利益
- 棚卸資産の残高と、完成在庫の回転
- 現預金と有利子負債(純現金の推移)
- 配当性向、自社株買い、優待の内容
- 住宅ローン金利と新設住宅着工
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト 8.25%(基本 7.5% に、循環 +0.75%・値決め +0.5%・寿命 +0.25%・借入 0)と ROE から式で出した。今の PBR 0.37 倍や同業の倍率は見ていない。ROE が 2〜7% と資本コストを下回るので、PER の上限は 1÷k=11.1 倍で、その 6〜9 割に置いた。
純現金 64 億円のうち、事業の資金繰りの余裕 24 億円を引いた 40 億円を余った現金とみて、戻り方を 0.5 とした。現金の利息は純利益にほぼ入っていない(利息収入は 0.1 億円)。優待の費用は利益から引き済みで、受け取りを還元に足した。10 年後の数字は、本社費用が物価並みに 1.34 倍かかり、償却は物価で膨らませない形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.8 倍・やや楽観 PER 9.8→13.05 倍・中立 PER 9→13.31 倍・悲観 PBR 0.2→0.205 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に、循環 +0.75%・値決め +0.5%・寿命 +0.25%、借入 0 を足して 9.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。