結論
GA technologies は、会員の個人投資家に中古マンションなどの投資物件を売る会社だ。もう 1 本、賃貸向けソフトの ITANDI(イタンジ)を持つ。筆者の結論は、10 年で見れば本質価値は今の時価総額をはっきり上回る、というものだ。いちばんの理由は、お金の回りの速さにある。
会社は、買った物件を平均 22 日ほどで売ると説明している。普通の不動産会社は 1 年近く在庫を抱える。ここが違う。純資産が 308 億円でも、25 年 10 月期の純利益は 39 億円まで来た。資本が少なくて済む商売は、利益が伸びても自己資本が膨らまず、ROE が高く保たれる。
もう 1 つの柱が ITANDI だ。入居申込の約 4 割を処理すると会社は言う。月額課金の収益は物件販売の波を和らげ、利益率も 2 割と高い。
最大の弱みは、収益の大半が個人の住宅ローンに支えられた購入だという点だ。金利が上がる、銀行が融資を絞る、勧誘への規制が強まる。どれか 1 つでも販売は鈍る。筆者はこの点を慎重に見ている。
中立の姿は控えめに置いた。国内の販売は 10 年で 1.5 倍、物件の値段は物価並みに上がる。会社が 3 年後に描く売上規模と、ほぼ同じ水準に 10 年かけてたどり着く。それでも純利益は 100 億円、ROE は 12% 台になる。悲観では販売が細り、2023 年並みの利益に戻る。確率で重みづけした価値は、今の時価総額の 1.3 倍ほどだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社の評価は「よい商売だが、取引のたびに稼ぎ直す商売」になる。
よい点は、少ない資本で回ることだ。物件を長く抱えず、利益に対する自己資本が小さいので、ROE が高く出る。オーナーとして持つなら、この資本効率はいちばんうれしい。ITANDI の月額課金も、長く続く収益として評価できる。
気になる点は、収益の質だ。売上の大半は、物件の売買という 1 回限りの取引で、来年も同じだけ売るには、会員を集め、融資を通し続けなければならない。その土台は個人の住宅ローンで、金利や規制という自分では動かせない要因に左右される。
安全域の考え方も大事だ。会社の計画どおりに行けば価値は大きく膨らむが、筆者は計画を割り引いて、国内の販売は 10 年で 1.5 倍に置いた。悲観では 2023 年並みの利益に戻り、自己資本の半分強まで値が下がる。それでも、悲観を 12% 置いたうえで価値が今の時価総額を上回るなら、払う値段に余裕があると見る。
経営については、資本配分が還元寄りに変わったのを評価する。ただ、増資の履歴と米国への投資の重さから、まだ判断を確定できない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は「RENOSY(リノシー)」だ。投資用の中古・新築マンションを、会員の個人投資家に売る。会員は 60 万人を超える。広告で会員を集め、物件の紹介から融資の相談、契約までを担当者と画面で進める。売ったあとは賃貸の管理も請け負う。管理する戸数は、米国を含めて約 5 万戸にのぼる。
会計上の売上収益は 2,490 億円と大きい。ただし物件の価格がそのまま売上に入る形で、実際に会社に残る粗利は 400 億円台だ。会社はこれを「ネット売上収益」と呼ぶ。筆者もこちらで実力を見る。25 年 10 月期は 442 億円だった。
2 本目の柱は ITANDI だ。賃貸の仲介会社と管理会社に、入居申込、電子契約、賃貸管理のソフトを売る。申込の処理は年 113 万件、国内の申込の約 4 割にあたると会社は推計する。ネット売上は 65 億円、事業利益は 13 億円。月額で課金するので、物件販売より安定している。
3 本目が海外だ。米国では 2024 年 3 月に連結した RW OpCo(旧 Renters Warehouse)の賃貸管理の顧客を足がかりに、投資物件を売る。26 年 10 月期は事業利益 7 億円の黒字を計画している。アジアの顧客に日本の物件を売る事業もある。
ここに本社費など約 70 億円の全社費用がかかる。セグメントの利益を足すと約 140 億円になるが、会社全体の営業利益は 71 億円に縮む。筆者はこの落差を、今後の利益率の伸びしろでもあり、費用が膨らむ危うさでもあると見ている。
優良さと弱いところ
この会社の強みは稼ぐ仕組みにある。堀、つまり他社がまねできない強みは、まだ浅い。
仕組みの証拠は数字に出ている。営業利益は 5 年で約 3.7 倍の 71 億円になり、ROE は 12.6% まで上がった。会社は上場以来、売上の計画を 8 期続けて上回ったと説明する。会員 60 万人のうち、取引の約 6 割がリピートという指摘もある(個人ブログの数字で裏は取れていない)。物件を持つ日数が短いのは、会員の集客と融資審査の仕組みを自前で作り込んだ結果だ。
堀が浅い理由は 3 つある。1 つ目は営業利益率が 3% 前後と薄いこと。2 つ目は、売る物件そのものに差がなく、会員の集客と審査の速さで勝っているだけで、広告費が上がれば削られること。3 つ目は、個人の融資と勧誘のルールが他人の手の中にあることだ。
財務は悪くない。自己資本比率は 37%、純現金は 79 億円ある。ただし在庫を融資で回す商売なので、借入の大きさは見かけ以上だ。営業利益は支払利息の 7 倍あり、余裕は普通である。
経営は、創業者の樋口龍氏が社長を続けている。資本配分は、買収と新規事業から還元へ重心を移した。25 年 10 月期に上場後初の配当を出し、ROE の目標も 20% に置く。一方で同じ期に株数が 11% 増えている。成長のための資金調達は、これからも起こりうる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場の中心は、個人向けの投資用不動産の流通だ。数量が伸びるかどうかは、人口ではなく、投資家の数と融資の出方で決まる。
新築の投資用マンションは小さな市場だ。首都圏の供給は 2024 年に 4,241 戸、平均 3,599 万円だった。2026 年上期は 2,401 戸と前年から 29% 増えた。中古はもっと大きいが、公的な統計がなく、規模は推定になる。会社自身は、中期経営計画で対象市場を 1.5 兆円と置いている。今の売上収益はその約 16% にあたる。
追い風は 2 つある。1 つは、老後資金や分散投資のために不動産を持つ会社員が増えていること。もう 1 つは、建築費が物価と同じ速さで上がり、新築の値段を押し上げて中古の値段も引っ張ることだ。逆風は金利である。10 年国債が 3% になる世界では、投資用ローンの金利も上がり、利回りの薄い物件は売れにくくなる。
競争は、新築側ではシノケンハーモニーや日本ワークスが上位にいる。中古は対面営業の専業が多い。将来、LIFULL のような不動産ポータルが、集客力を使ってこの領域を強める可能性が指摘されている。
ITANDI の賃貸ソフトは別の勝負だ。賃貸の申込件数は人口とともに横ばいか減少で、数量は伸びない。伸ばせるのは、シェアと 1 件あたりの単価である。競合は、いえらぶ CLOUD やいい生活など。賃貸管理のソフトは乗り換えにくく、一度入ると離れにくい。
米国は、会社の説明で日本の 3〜4 倍の市場だ。賃貸管理を入口に物件を売る形が、日本と同じように回るかどうかが分かれ目になる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、拡大一辺倒から還元を入れた形に変わった。25 年 10 月期に上場後初の配当を出し、26 年 10 月期は増配を予想する。会社は配当だけでなく自社株買いを含めた総還元性向を重視すると言う。ROE を 26 年 10 月期に 16〜17%、中期で 20% 以上にする目標も掲げた。
M&A は今も続く。2024 年に米国の RW OpCo を連結し、2026 年 4 月には金融商品取引業のライセンスを持つ SPC 証券の全株取得を決めた。狙いは、不動産の証券化と小口化商品である。運用資産の残高に比例する収益が増えれば、利益の質は上がる。ただし、買収額は開示されておらず、のれんの重さは確認できていない。
気になるのは株数の増え方だ。25 年 10 月期には株数が 11% 増えた。成長のために資金が要るたびに増資をすれば、1 株の価値は薄まる。還元と増資が同時に起こらないかを、筆者は見ていく。
創業者が経営を握っているため、買収される可能性は低い。ただし、それはガバナンスの緩さの裏返しにもなりうる。
点検済み(見落とし点検 2026-10-19):起点の純利益 39 億円は IFRS の実績で特別益は見当たらない。戸数・件数は実物で二重がけなし。25 年 10 月期に株数が 11% 増えたが、今の株数が基準。k は 8.5% と高めに置き、悲観側の確率は 34%。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社の計画に実績の裏づけがある。売上は上場以来 8 期続けて計画を上回った。26 年 10 月期は売上収益 3,230 億円、事業利益 100 億円、純利益 54 億円を見込み、27・28 年 10 月期も売上と事業利益を 3 割以上伸ばすと言う。
金利が上がっても影響は限られる。物件を持つのは平均 22 日。普通の不動産会社の約 300 日と比べて、価格の下落や金利の上昇にさらされる時間がほとんどない。借金で資産を積む商売ではなく、仲介と販売の商売に近い。
成長の入口も広い。会員は 60 万人を超え、潜在顧客は約 1,000 万人と会社は見る。26 年度は小口化商品を始め、広告の効率と 1 人あたりの取引額を引き上げる。SPC 証券の取得で、運用残高に比例する収益も加わる。
ITANDI は入居申込の約 4 割を処理し、電子契約と管理システムの上乗せで単価が伸びる。米国は 26 年 10 月期に黒字になり、日本の 3〜4 倍の市場で第 3 の柱になる。
資本配分も株主寄りになった。初配当を出し、ROE 20% 以上を目標に置いた。この 10 年で売上が数倍になれば、純利益は 300 億円規模に届き、価値は今の数倍になる。
慎重な見方
収益の大半は、個人が組む住宅ローンに支えられている。10 年国債が 3% になる世界では、投資用ローンの金利も上がる。利回りの薄い物件は売れにくくなり、融資する銀行も慎重になる。この商売は、金利と融資姿勢が少し変わるだけで止まる。
規制も重い。投資用不動産の勧誘は、過去に社会問題になってきた。口コミには電話勧誘の強さを指摘する声もある。規制や指導が強まれば、営業のやり方そのものを変えなければならない。広告費をかけて会員を集める仕組みも、検索や広告の単価が上がれば利益率を削る。
利益率は薄い。営業利益率は 3% 前後で、売上が少し落ちるだけで利益は大きく振れる。25 年 10 月期の純利益 39 億円は、取引が毎年増えるという前提の上にある。会社の計画のように 3 割の成長を何年も続けるのは、人口が減る国内では難しい。
海外は、まだ通期の黒字が確認できていない。黒字は四半期のものだ。米国で日本のような会員制の仕組みが再現できる保証はない。
資本の面では、25 年 10 月期に株数が 11% 増えた。さらに SPC 証券の買収で金融業に入る。本業の外に出るたびに資金と経営の注意が分散し、ROE の目標が遠のく。ROE の目標を 20% に置くのは、会社自身が資本コストを 12〜14% と見ているからで、その高さも重い。
どちらに重みを置いたか
どちらにも根拠があるが、筆者は慎重な見方の言い分を重く見て、悲観側に合計 34% の確率を置いた。決め手は規制と金利だ。個人向けの投資用不動産は、制度の変更ひとつで需要が細りうる。
それでも強気の見方が勝つ部分がある。資本の回りの速さと ITANDI の積み上げ収益は、実績で裏づけられている。そこで中立を 36%、やや楽観を 20% に置き、楽観は 10% にとどめた。
会社の計画をそのまま使わず、中立の売上は 3 年後の計画規模を 10 年かけて追う程度に抑えた。それでも価値が今の時価総額を上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 4,180 円1,716 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 556 円228 億円)。 今の値に割り戻すと 2,219 円911 億円、今との差 +67.5%、 期待の年率 +13.6%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 10,541 円4,327 億円 | 989 円406 億円 | +770.2% | +24.2% | 1,153 円473 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,142 円2,932 億円 | 777 円319 億円 | +497.7% | +19.6% | 1,584 円650 億円 |
| 中立 | 36% | 3,784 円1,554 億円 | 529 円217 億円 | +225.5% | +12.5% | 1,553 円637 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,300 円534 億円 | 395 円162 億円 | +27.9% | +2.5% | 373 円153 億円 |
| 悲観 | 12% | 413 円170 億円 | 207 円85 億円 | −53.2% | −7.3% | 74 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,180 円1,716 億円 | 556 円228 億円 | +257.5% | +13.6% | 4,737 円1,945 億円 |
今の株価時価総額 1,325 円544 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 計画が実現し、米国とソフトが第 2・第 3 の柱になる 利益 247 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 10,541 円4,327 億円
会社計画がほぼ実現し、その勢いが 10 年続く姿だ。国内の販売は年 2 万 500 戸まで増え、物件の値段は物価を上回る速さで上がる。会員のリピート購入が増え、広告費の割合は下がる。
米国は賃貸管理の顧客に物件を売る形が当たり、取扱いが年 2,000 戸に届く。ITANDI は入居申込の約 6 割を処理し、管理システムの単価が積み上がる。SPC 証券を使った小口化商品が運用残高に比例する収益を生み、ストックの利益が厚くなる。
営業利益は 426 億円、純利益は 247 億円。ROE は 18% 台を保つ。ただしこの姿には、金利が高止まりしても個人の購入意欲と融資が保たれるという前提が入っている。
- RENOSY 国内(投資用不動産の販売):数量 20,500(年間の販売戸数(推定・戸))× 価格 0.32(1 戸あたり販売額(億円・名目))→ 売上 6,609 億円・営業利益 416 億円。20,500 戸 × 0.322 億円、利益率 6.3%
- RENOSY 海外(米国・アジア):数量 2,000(取扱戸数(売買の成約と管理を戸数に換算・推定))× 価格 0.59(1 戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,176 億円・営業利益 71 億円。2,000 戸 × 0.588 億円、利益率 6.0%
- ITANDI(賃貸業界向けソフト):数量 165(処理する入居申込の件数(万件))× 価格 1.50(1 万件あたり売上(億円)。値上げと機能追加の合計)→ 売上 248 億円・営業利益 74 億円。165 万件 × 1.500 億円、利益率 30.0%
倍率:事業の純利益 247 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍。全体の PER 16.81 倍、時価総額 4,154 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の実績はあるが、10 年を通じて金利と規制の壁を越える必要がある。融資と規制の不確実性を考え、1 割にとどめた。
やや楽観 20% 計画には届かないが、成長が 2 桁で続く 利益 174 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 7,142 円2,932 億円
計画には届かないが、成長は続く。国内の販売は年 1 万 7,500 戸、今の約 1.8 倍になる。物件の値段は物価をやや上回る。米国は黒字が定着するが、現地の競争で利益率は 5% にとどまる。
ITANDI は電子契約と管理システムの利用が広がり、単価が上がる。小口化商品は小さく始まり、数年かけて育つ。会社が掲げる ROE 20% 以上には届かず、16% 台に落ち着く。
営業利益は 310 億円、純利益は 174 億円。配当と自社株買いで純利益の 3 割強を返す。成長を支えるのは、会員基盤と回転の速さだ。
金利は高めに残るが、購入の意欲を折るほどではない。規制は強まるものの、営業のやり方を改めれば対応できる範囲にとどまる。中立との差は、国内の販売戸数と米国の広がりに出る。
- RENOSY 国内(投資用不動産の販売):数量 17,500(年間の販売戸数(推定・戸))× 価格 0.32(1 戸あたり販売額(億円・名目))→ 売上 5,521 億円・営業利益 331 億円。17,500 戸 × 0.316 億円、利益率 6.0%
- RENOSY 海外(米国・アジア):数量 1,500(取扱戸数(売買の成約と管理を戸数に換算・推定))× 価格 0.57(1 戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 857 億円・営業利益 43 億円。1,500 戸 × 0.571 億円、利益率 5.0%
- ITANDI(賃貸業界向けソフト):数量 158(処理する入居申込の件数(万件))× 価格 1.36(1 万件あたり売上(億円)。値上げと機能追加の合計)→ 売上 215 億円・営業利益 58 億円。158 万件 × 1.360 億円、利益率 27.0%
倍率:事業の純利益 174 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.17 倍、時価総額 2,809 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:実績と会員基盤から、計画未達でも成長が続く筋書きの確率を 2 割とした。中立に次いで大きい。
中立 36% 計画より控えめに伸び、国内の販売は 1.5 倍にとどまる 利益 100 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 3,784 円1,554 億円
国内の販売は年 1 万 4,500 戸と、今の 1.5 倍にとどまる。会社が今から 3 年後に描く規模を、10 年かけてやっと追いつく程度だ。物件の値段は物価と同じ 3% で上がり、利益率は今と同じ 5% 台が続く。
米国は黒字が続くが、会員制の仕組みを現地で再現するのに時間がかかる。取扱いは 1,000 戸。今の小さな赤字は、黒字になっても利益率 1.5% どまりだ。ITANDI は入居申込の処理が 150 万件に増え、機能の追加で単価は物価を 3 割ほど上回る。
営業利益は 182 億円、純利益は 100 億円。ROE は 12% 台で、今よりやや高い。純利益の 3 割強を配当と自社株買いで返す。成長は物価と、シェアのわずかな上積みでできている。
- RENOSY 国内(投資用不動産の販売):数量 14,500(年間の販売戸数(推定・戸))× 価格 0.31(1 戸あたり販売額(億円・名目))→ 売上 4,475 億円・営業利益 246 億円。14,500 戸 × 0.309 億円、利益率 5.5%
- RENOSY 海外(米国・アジア):数量 1,000(取扱戸数(売買の成約と管理を戸数に換算・推定))× 価格 0.56(1 戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 563 億円・営業利益 8 億円。1,000 戸 × 0.563 億円、利益率 1.5%(今は小さな赤字で、黒字化は半分だけ置いた)
- ITANDI(賃貸業界向けソフト):数量 150(処理する入居申込の件数(万件))× 価格 1.00(1 万件あたり売上(億円)。値上げと機能追加の合計)→ 売上 150 億円・営業利益 38 億円。150 万件 × 1.000 億円(今の 1.74 倍。物価の 1.34 倍に機能追加の上乗せ)、利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 100 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.74 倍、時価総額 1,476 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:実績と構造的なリスクの両方を重く見る。会社が 3 年後に描く規模を 10 年かけて追う姿が最も起こりやすいとみて、3 割台半ばの確率を置いた。
やや悲観 22% 金利と融資の逆風で、販売が横ばいになる 利益 53 億円 · PER 8.7 倍 · 株価時価総額 1,300 円534 億円
金利が上がり、投資用ローンの審査が厳しくなって、販売が伸びない。国内は年 1 万 1,000 戸で、今と大きく変わらない。物件の値段は物価を下回って上がり、広告費の負担で利益率は 5% に下がる。
ITANDI は競合に押されて単価が据え置きになる。米国は赤字を脱するが、利益率は 1.5% にとどまる。
営業利益は 102 億円、純利益は 54 億円と、26 年 10 月期の計画水準で 10 年が止まる。ROE は 9% で、資本コストをわずかに超える程度。配当は出すが、自社株買いに回す余力は小さい。
- RENOSY 国内(投資用不動産の販売):数量 11,000(年間の販売戸数(推定・戸))× 価格 0.29(1 戸あたり販売額(億円・名目))→ 売上 3,243 億円・営業利益 162 億円。11,000 戸 × 0.295 億円、利益率 5.0%
- RENOSY 海外(米国・アジア):数量 600(取扱戸数(売買の成約と管理を戸数に換算・推定))× 価格 0.55(1 戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 328 億円・営業利益 5 億円。600 戸 × 0.546 億円、利益率 1.5%
- ITANDI(賃貸業界向けソフト):数量 130(処理する入居申込の件数(万件))× 価格 1.00(1 万件あたり売上(億円)。値上げと機能追加の合計)→ 売上 130 億円・営業利益 23 億円。130 万件 × 1.000 億円、利益率 18.0%
倍率:事業の ROE 8.8% は k 8.5% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k の 11.1 倍。成長が止まり利益の質も低いので、上限の 78% の 8.7 倍に置いた。
確率:10 年国債 3% の世界で金利の上昇と融資の厳格化が重なる筋書き。本業の構造から見て、2 割強の確率はあると考えた。
悲観 12% 規制と融資の絞り込みで、個人向け販売が細る 利益 11 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 413 円170 億円
個人向けの投資用不動産が制度で絞られる。勧誘と融資への規制が強まり、銀行が提携ローンを絞る。国内の販売は年 6,000 戸まで落ち、広告費の回収が悪くなって利益率は 4% に下がる。
米国は赤字が続いて縮小し、ITANDI も無料に近い競合の登場で単価が下がる。会員は残るが、買う人は減る。
営業利益は 23 億円と、2023 年 10 月期に近い水準まで戻る。自己資本は 470 億円ほど残るが、稼ぐ力が弱いので、値段は今の自己資本の半分強まで下がる。
全社費用は縮めても追いつかず、営業人員の削減と広告の絞り込みで下支えするのが精一杯になる。配当は出すが、自社株買いは止まる。買う側にとっては、物件を売る力が構造的に落ちた会社である。
- RENOSY 国内(投資用不動産の販売):数量 6,000(年間の販売戸数(推定・戸))× 価格 0.26(1 戸あたり販売額(億円・名目))→ 売上 1,589 億円・営業利益 64 億円。6,000 戸 × 0.265 億円、利益率 4.0%
- RENOSY 海外(米国・アジア):数量 250(取扱戸数(売買の成約と管理を戸数に換算・推定))× 価格 0.48(1 戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 121 億円・営業利益 −2 億円。250 戸 × 0.483 億円、利益率 -2.0%
- ITANDI(賃貸業界向けソフト):数量 100(処理する入居申込の件数(万件))× 価格 0.80(1 万件あたり売上(億円)。値上げと機能追加の合計)→ 売上 80 億円・営業利益 6 億円。100 万件 × 0.800 億円、利益率 8.0%
倍率:利益が小さく ROE 2.4% は k 8.5% を大きく下回る。稼ぐ力は事業の純利益 11 億円 ÷ k で約 129 億円。床は今の自己資本 308 億円に 0.55 を掛けて 170 億円とし、純現金と売れる在庫の税後の目安(floor_assets_oku)の範囲に収めた。
確率:個人向けの投資用不動産は、規制や融資の変更ひとつで需要が細る。2008 年のような融資の収縮もありえる。構造的に負ける筋書きとして 12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
RENOSY 国内(投資用不動産の販売)
会員の個人投資家に中古・新築の投資用マンションを売る。売れた後の賃貸管理や買取も含む。売上収益は物件価格の全額で計上される。
| 数量年間の販売戸数(推定・戸) | 価格1 戸あたり販売額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 9,800 | 0.23 | 2,257 | 131 |
| 10 年後 中立 | 14,500 | 0.31 | 4,475 | 246 |
取り方:戸数は開示がない。売上収益 2,490 億円から海外の約 168 億円と ITANDI の 65 億円を引いた約 2,257 億円を、1 戸約 2,300 万円(中古・新築の投資用ワンルーム中心という推定)で割って約 9,800 戸とした。利益は RENOSY の事業利益 127 億円に海外の赤字約 4 億円を戻した 131 億円。
RENOSY 海外(米国・アジア)
米国は 2024 年 3 月に連結した RW OpCo(旧 Renters Warehouse)の賃貸管理を足がかりに投資物件を売る。アジアの顧客に日本の物件を売る事業も含む。
| 数量取扱戸数(売買の成約と管理を戸数に換算・推定) | 価格1 戸あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 400 | 0.42 | 168 | −4 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.56 | 563 | 8 |
取り方:海外のネット売上 43 億円と、米国の売上 82 億円・粗利 28 億円の開示から、海外全体の売上収益を約 168 億円と推定した。戸数と単価は米国の住宅価格とアジア向けの日本物件の価格を混ぜた換算で、精度は低い。米国の事業利益は 25 年 10 月期に約 4 億円の赤字。 数量は戸数(実物)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は米国・アジアの拠点の拡大(精度は低い推定)。
ITANDI(賃貸業界向けソフト)
賃貸の仲介会社・管理会社に、入居申込・電子契約・賃貸管理のソフトを月額課金などで提供する。
| 数量処理する入居申込の件数(万件) | 価格1 万件あたり売上(億円)。値上げと機能追加の合計 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 113 | 0.58 | 65 | 13 |
| 10 年後 中立 | 150 | 1.00 | 150 | 38 |
取り方:2025 年度の入居申込は 113 万件(会社の推計で国内 272 万件の約 4 割)。ネット売上 65 億円を件数で割った値には、申込以外のソフトの利用料も含む。事業利益は 13 億円。
リスクと懸念
個人の住宅ローンと金利への依存
収益の大半は、個人が組む投資用ローンに支えられている。10 年国債 3% の世界では、ローン金利が上がり、利回りの薄い物件は売れにくくなる。銀行が融資を絞れば、販売は 1 四半期で細る。物件を持つ日数が短いので価格の損は小さいが、売上の減少は避けられない。
勧誘・融資への規制
投資用不動産の勧誘は、過去にも問題になった分野だ。口コミには電話勧誘の強さへの不満もある。規制や行政の指導が強まれば、営業のやり方を変えざるをえず、集客コストが上がる。国土交通省の処分情報に掲載はないと報じられているが、これからを保証するものではない。
利益の質と取引量の波
売上収益の大半は物件の価格そのものだ。利益は取引の件数に比例する。営業利益率は 3% 前後と薄く、取引が 1 割落ちるだけで営業利益は大きく振れる。会社の計画は 3 割成長を続ける前提で、この前提が崩れると費用が先に膨らむ。
米国事業の投資負担
米国は 26 年 10 月期に事業利益 7 億円の黒字化を計画する。黒字は四半期でしか確認できておらず、通期は未達だ。日本の会員制の仕組みが現地で再現できなければ、広告と人員の投資が重くなる。為替は 150 円で変わらないと置いたが、現実の円高は海外利益を目減りさせる。
増資による価値の希薄化
25 年 10 月期に株数が 11% 増えた。成長に資金が要るたびに増資をすれば、1 株の価値は薄まる。SPC 証券の買収も加わり、金融業に入る負担が出る。ROE の目標と増資が両立するかは、これから確かめる点だ。
競合とポータルの参入
新築ではシノケンハーモニーなどが上位にいる。中古は対面営業の専業が多く、物件そのものに差がつけにくい。LIFULL のような不動産ポータルが、集客力を使って投資用に本格参入すれば、広告費の競争が激しくなる。
今後の分かれ目
- 投資用ローンの金利が上がり、提携銀行の審査が厳しくなる
- 国内の販売戸数が先に細る。やや悲観から悲観へ確率を移す。在庫日数が 22 日から延びていないかも合わせて見る。
- 投資用不動産の勧誘や広告に、規制や行政指導が入る
- 営業のやり方と会員の集め方を変える必要が出る。利益率の前提を下げ、悲観の確率を引き上げる。
- 米国事業が通期で黒字になり、取扱いが 2 倍に広がる
- 第 3 の柱として育つ。海外の戸数をやや楽観の側に移し、楽観の確率を少し上げる。
- SPC 証券を使った小口化商品が軌道に乗り、運用残高に比例する収益が増える
- 利益の質が上がる。中立の倍率を上限に近づける材料になる。
- 増資が再び起こり、株数が 1 割以上増える
- 資本効率の目標と矛盾する。経営の資本配分への見方を厳しくし、中立の倍率を下げる。
- ITANDI の導入社数が伸びても、単価が上がらない
- ソフトの利益の積み上がりが遅れる。賃貸ソフトの売上を中立の値からやや悲観へ寄せる。
見ておくもの
- 物件の平均保有日数(22 日が延びていないか)と在庫の水準
- 投資用ローンの金利と、提携銀行の審査の姿勢
- RENOSY 国内のネット売上と事業利益率(34.6% を保てるか)
- 米国の通期の事業利益と、取扱戸数
- ITANDI の導入社数、入居申込の処理件数、1 件あたりの単価
- 配当・自社株買いの総還元性向と、株数の増減
倍率と資本コストの決め方
国内の販売戸数と 1 戸あたりの値段、米国の取扱戸数、ITANDI の申込件数を 10 年で積み上げ、その利益から倍率を決めた。k は基本 7.5% に quality 1.5% を足した 9.0%。事業の ROE 12.7% から導いた正当化 PER は 12.6 倍で、利益の質が並みなので上限の 87%(11.0 倍)に置いた。今の株価は見ていない。国内の販売戸数と海外の戸数は会社の開示がなく、売上と 1 戸 2,300 万円などの仮定からの推定である。会計は IFRS で、リースは今も貸借対照表に載っているため、新リース会計基準による数字の形の変化は起きない。 【点検 2026-10-20】中立の全社営業利益率が 3.9% で過去の山(3.4%)と会社予想(3.1%)を超えていたので、海外の利益率(3.5%→1.5%)と ITANDI の単価の伸び(2.1 倍→1.74 倍)を下げ、3.5% にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→16.81 倍・やや楽観 PER 11.9→16.17 倍・中立 PER 11→14.74 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 1.5% を足した。同じ領域の 3 社(2.0〜2.5%)より低いのは、在庫日数が短く、月額課金のソフトを持つため。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。