結論
明豊エンタープライズは、東京23区の城南・城西で土地を仕入れ、新築の一棟マンション(EL FARO・MIJAS・LOS ARCOS)を建てて投資家に売る会社だ。売上の8割がこの開発で、建設と賃貸管理も自前で持つ。筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。
2026年7月期の売上は369億円、営業利益は47億円、純利益は27億円。この3年で利益は3倍以上になった。会社は2028年7月期に売上450億円、営業利益52億円の計画を掲げる。
強みは、土地の情報から施工、販売、管理まで一貫して持つ点だ。狭い土地や旗竿地でも商品に仕上げる。一方で、事業は借入で回る。自己資本比率は3割で、純有利子負債は自己資本を上回る。
筆者がいちばん気にするのは、この利益の山が10年続くかだ。賃料は物価で上がるが、金利が上がれば買い手の期待利回りも上がり、売値は物価ほど伸びない。中立の純利益は23億円で、今より下がる。さらに過去には、3期連続の赤字と増資を経験している。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、今の利益が山にあり、持ちたいと言い切れない会社だ。理由は、利益を毎年同じ形で積めない事業であること、借入が重いこと、資本の使い方を外から見張れないことにある。
良い点は、仕入れから管理までの一貫体制と、高い回転だ。借入で回すとはいえ、1年ほどで物件を売り切り、現金に戻す。上期の売却契約は、通期計画の約8割まで進んだ。2026年7月期の営業利益率は12.8%で、過去の山(2018年の19%)には届いていない。
気になる点は、事業の性質だ。買い手は銀行融資に頼り、融資姿勢が変われば売上が一度に止まる。過去に3期連続の赤字と増資を経験した会社に、安全域は大きくない。
今のPERは5倍台と安いが、利益の持続性が低い会社が安く見えるのは自然だ。10年後の中立は、純利益23億円、ROE 7.5%。資本コストに届かず、ためた利益は額面より低い。
筆者は、計画の達成と同時に、借入の重さがどう変わるかを見る。自己資本比率が3割を下回らないか、売却益が借入の返済に回るかが、安全域の分かれ目になる。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。2026年7月期上期の売上149億円のうち、不動産開発が80%、建設が14%、賃貸・管理が5%を占めた。
中心の不動産開発は、新築の一棟投資用マンションを建てて売る。ブランドは三つある。RC造の「EL FARO」は価格5〜15億円、木造・鉄骨の低層が中心の「MIJAS」は1〜10億円、中層の高価格帯「LOS ARCOS」は10億円以上だ。立地は東京23区の城南・城西で、駅から徒歩10分以内に絞る。上期は16棟を売り、1棟の平均は6.8億円だった。通期は37棟前後を計画する。
買い手は、相続や節税、運用の目的で一棟を持つ個人や法人だ。台湾の現地法人を通じて、海外の顧客にも売る。
建設は、協栄組と明豊エンジニアリングが担う。自社物件に加えて、グループ外の工事も取り、2026年7月期上期は黒字に転じた。
賃貸・管理は、自社ブランド物件の賃貸管理とサブリースだ。管理は5,951戸で、稼働率は97.7%と高い。
事業の元手は借入だ。用地を買い、建て、売るまでに1年ほどかかり、棚卸資産の回転は年に0.7回。物件が売れる前の借入が、利益を超えて膨らむ。
優良さと弱いところ
強みは、仕入れから施工、販売、管理までの一貫体制にある。累計の土地取得は200件を超え、「一棟収益といえば明豊」と業界で知られる。用地の情報が早く集まり、嫌われがちな狭い土地や旗竿地を、独自の商品に変える。自前の施工会社を持つため、前面道路が細い土地でも建てられる。
管理まで持つため、買い手に対して「建てて終わり」でなく、入居者の確保や修繕まで面倒を見る。管理戸数の稼働率は97%台だ。
しかし堀は強くない。理由は三つある。第一に、土地は競りで仕入れ、売値は市場が決める。第二に、買い手が銀行の融資に頼るため、融資姿勢が変われば売れなくなる。第三に、他社も同じ商品を作れる。
資本効率は高く見えるが、借入で作った数字だ。ROEは2025年7月期で19.9%と高いが、自己資本比率は3割。過去10年のROEの中央値は16.7%だが、その間に3年の赤字期と増資もあった。
経営は創業者の矢吹満会長兼社長が引き、44.8%を持つ。トップの意思が速く通る反面、少数株主の発言力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
一棟の投資用マンションは、金利と融資で動く市場だ。買い手の多くは、銀行から借りて物件を買う。期待利回りは、10年国債が3%に乗れば上がる。賃料が上がっても、利回りが上がれば売値は伸びにくい。
足もとは追い風だ。東京23区の賃貸需要は強く、物価の上昇で賃料も上がっている。会社は、金利上昇の影響を限定的とみる。政策金利は0.75%、10年国債は2%を超える水準まで来たが、上期の売却は計画どおりに進んだ。
構造の追い風は、東京への人口流入と、建築費の上昇だ。新築の供給が絞られるほど、既存の建物の価値が上がる。海外の富裕層の購入も続く。
逆風は、融資と税制だ。2018年に不正な融資が表に出てから、銀行は投資用不動産の貸し出しに慎重になった。相続税の評価を使った節税の余地を狭める動きも続く。
競合は、FJネクスト、GA technologies、日本管理センターなどだ。市場全体の販売棟数は、年によって大きく動く。リーマン級の谷では、投資用マンションの取引が止まり、各社が赤字に沈んだ。この会社も2009〜2011年に3期連続の赤字を出した。
資本政策と M&A
配当は、2025年8月に累進配当(減配せず維持か増配)を導入した。2026年7月期の配当は前期から増え、2027年7月期は同額を予想する。配当性向は19%と低い。
株主優待は、2026年10月末の基準日から、2,000株以上の株主にデジタルギフトを年2回(各1万円分)贈る形に変わった。対象の株主数は分からないが、年1億円には届かないとみて、還元には数えない。
資金は借入が中心だ。2026年7月期上期は、用地の取得で長期借入を56億円実行し、物件の売却に伴い41億円を返した。営業活動の現金は9.4億円の流出で、棚卸資産が13億円増えた。千葉銀行とコミットメントライン(借入枠)の契約も結んだ。
創業者の矢吹満氏が44.8%を持つ。持ち分が高く、少数株主への還元や再編は、創業者の意思が左右する。TOBの参考確率は25%だが、筋書きには入れていない。
過去に2008年7月期と2023年7月期に、株数が増える資金調達を行った。借入が重い会社として、必要になれば増資に動く可能性は残る。減価償却は小さく、物価で増やさない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東京23区の城南・城西は、賃貸需要が強く、新築の供給も絞られている。会社は累計200件を超える土地の仕入れ実績を持ち、情報が先に集まる。上期だけで18件の用地を取得し、通期計画の売却の8割はすでに契約済みだ。
3つ目のブランドLOS ARCOSは、10億円以上の高価格帯だ。1棟あたりの売値が上がれば、同じ棟数でも売上と利益が伸びる。建設も黒字に転じ、賃貸管理はサブリースで利益が約8倍になった。
中期計画は、2028年7月期に売上450億円、営業利益52億円。2026年7月期は営業利益47億円で、計画の線に乗っている。ROE 15%以上の目標も保たれる。
さらに累進配当と株主優待で、還元を厚くする姿勢が明確だ。海外顧客も取り込み、市場の外側へ広げている。競合の中堅が減るなか、一貫体制で用地を確保できる会社は少ない。賃料と物価が上がる世界で、東京の好立地は資産として選ばれ続ける。10年後に売上620億円、純利益45億円まで伸び、時価総額は今の3倍になる。
慎重な見方
利益は山にある。2026年7月期の営業利益率12.8%は、過去10年の中央値(9〜10%台)を上回る。会社の2027年7月期予想は、営業利益50億円で伸びが鈍い。さらに、利益の一部は、違約金など一過性の収入に支えられた。
借入が重い。自己資本比率は3割、純有利子負債は自己資本を上回る。借り換えで金利が3.5%になれば、利息が利益を削る。上期は用地の取得で、借入が差し引き16億円増えた。
最大の弱点は、買い手の側だ。個人や法人が一棟を買うには、銀行の融資が要る。融資が絞られれば、売上が止まる。過去にこの会社は3期連続の赤字を出し、増資に追い込まれた。
売値は賃料と期待利回りで決まる。金利が上がれば、物価ほど売値が伸びない。土地の仕入れ値は上がり、利益率は下がる。創業者が44.8%を持ち、少数株主の立場は弱い。資本効率が資本コストを下回るなら、今の値段が妥当とも言える。足もとの好調は、金利が低かった時期の貸し出しの積み上げによる面もあり、同じ速さで続くとは限らない。
どちらに重みを置いたか
一貫体制と、足もとの需要は確かだが、利益の山と借入の重さ、買い手の融資への依存も同じくらい確かだ。確率は強気7%、やや強気19%、中立34%、やや悲観26%、悲観14%に置いた。同じ領域の他社と同じ物差しで、悲観をやや厚めにした。
中立の純利益は23億円、ROEは7.5%で資本コストに届かない。価値は今の時価総額をやや下回る。強気に寄せなかった点は、確認しておく。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 1,098 円336 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 178 円54 億円)。 今の値に割り戻すと 592 円181 億円、今との差 +23.3%、 期待の年率 +10.3%(資本コスト 8.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,443 円747 億円 | 360 円110 億円 | +483.8% | +19.3% | 196 円60 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,856 円568 億円 | 278 円85 億円 | +344.4% | +16.1% | 405 円124 億円 |
| 中立 | 34% | 1,317 円403 億円 | 203 円62 億円 | +216.7% | +12.2% | 517 円158 億円 |
| やや悲観 | 26% | 418 円128 億円 | 114 円35 億円 | +10.8% | +1.0% | 138 円42 億円 |
| 悲観 | 14% | 131 円40 億円 | 10 円3 億円 | −70.7% | −11.6% | 20 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,098 円336 億円 | 178 円54 億円 | +165.9% | +10.3% | 1,276 円390 億円 |
今の株価時価総額 480 円147 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 土地の仕入れが続き、3ブランドで売上が600億円を超える 利益 45 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 2,443 円747 億円
東京の城南・城西で、駅から近い用地の仕入れが続く。年の売却は今の1.25倍の棟数まで増え、1棟あたりの価格も名目で1.30倍に上がる。賃料が物価で上がり、買い手の期待利回りがさほど上がらなければ、この値段でも売れる。
10億円を超えるLOS ARCOSの比率が高まり、粗利率も保たれる。台湾などの海外顧客が下支えする。建設は協栄組が外部の工事を取り、賃貸・管理はサブリースの物件数が伸びる。
売上は620億円、営業利益は79億円、純利益は45億円。ROEは12%で資本コストを上回る。会社の中期計画(2028年7月期に売上450億円・営業利益52億円)を、10年かけて超える形だ。
配当は性向30%に近づき、10年で約110億円になる。
(名目の前提)棟数は1.25倍、1棟の売値は1.30倍。本社費用は1.34倍。減価償却は賃貸資産が小さく、物価で増やさない。販売用不動産は在庫の積み増しで膨らみ、借入の借り換え金利3.5%が利息を押し上げる。
- 不動産開発(新築一棟投資用マンションの開発・販売):数量 53.8(売却棟数(棟相当・推定))× 価格 8.97(1棟あたり売上(億円))→ 売上 482 億円・営業利益 72 億円。数量 1.25倍・単価 1.30倍・営業利益率 15.0%
- 建設:数量 42.0(工事件数(件・推定))× 価格 2.36(1件あたり売上(億円))→ 売上 99 億円・営業利益 4 億円。数量 1.40倍・単価 1.34倍・営業利益率 4.0%
- 賃貸・管理:数量 9,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1戸あたり年間売上(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。数量 1.50倍・単価 1.34倍・営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.4% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.56 倍、時価総額 654 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:土地の仕入れ・施工・販売の一貫体制が10年続き、高価格帯のLOS ARCOSも売れる必要がある。銀行の融資姿勢が緩いまま、投資家の需要が続かなければならず、三つが重なる確率は低い。同じ領域の強気(8〜10%)より少し低い7%に置いた。
やや楽観 19% 棟数が増え、価格も物価の6割ほど上がる 利益 34 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 1,856 円568 億円
新築一棟マンションの売却が今の1.1倍に増え、1棟の売値は名目で1.26倍に上がる。仕入れ値も上がるため、利益率は第2四半期の水準(12%台)よりやや下がる。
建設は工事の受注を保ち、賃貸・管理は管理戸数が4割増える。
売上は532億円、営業利益は60億円、純利益は34億円。ROEは10%で、資本コストにほぼ並ぶ。
配当は性向27%で、10年で約85億円になる。
(名目の前提)棟数は1.10倍、売値は1.26倍。本社費用は1.34倍。減価償却は小さく、物価で増やさない。借入は在庫に合わせて増え、借り換え金利3.5%が純利益を削る。
- 不動産開発(新築一棟投資用マンションの開発・販売):数量 47.3(売却棟数(棟相当・推定))× 価格 8.69(1棟あたり売上(億円))→ 売上 411 億円・営業利益 56 億円。数量 1.10倍・単価 1.26倍・営業利益率 13.5%
- 建設:数量 36.0(工事件数(件・推定))× 価格 2.36(1件あたり売上(億円))→ 売上 85 億円・営業利益 3 億円。数量 1.20倍・単価 1.34倍・営業利益率 3.5%
- 賃貸・管理:数量 8,400(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1戸あたり年間売上(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 3 億円。数量 1.40倍・単価 1.34倍・営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.5% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14.03 倍、時価総額 474 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年7月期に売上・利益とも大きく伸び、中期計画の初年度は順調に進む。仕入れの18物件が積み上がっている点を、強気側の中心に置いた。
中立 34% 棟数は少し減り、価格は物価より低く上がる。利益は今の7割ほど 利益 23 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,317 円403 億円
買い手の期待利回りが上がる。賃料が物価で3割強上がっても、利回りの上昇で売値は1.20倍にとどまる。売値が物価並みの1.34倍に届かない理由は、金利上昇で買い手の期待利回りが上がり、同じ賃料でも売値が下がるためだ。年の売却棟数は今の0.9倍に減る。土地の仕入れ競争が続き、1棟あたりの利益率は12%に下がる。
建設は工事が1.1倍に増えるが、利益は薄い。賃貸・管理はサブリースの物件数が増え、1.3倍になる。
売上は432億円、営業利益は42億円(利益率9.7%)、純利益は23億円。借入が増え、借り換え金利3.5%が利息を押し上げる。
ROEは7.5%で、資本コストに届かない。配当は性向27%で、10年で約62億円になる。
(名目の前提)棟数は0.9倍、売値は1.20倍。本社費用は1.34倍。減価償却は小さく、物価で増やさない。純利息は今の約7億円から10億円前後に増える。
- 不動産開発(新築一棟投資用マンションの開発・販売):数量 38.7(売却棟数(棟相当・推定))× 価格 8.28(1棟あたり売上(億円))→ 売上 320 億円・営業利益 38 億円。数量 0.90倍・単価 1.20倍・営業利益率 12.0%
- 建設:数量 33.0(工事件数(件・推定))× 価格 2.36(1件あたり売上(億円))→ 売上 78 億円・営業利益 2 億円。数量 1.10倍・単価 1.34倍・営業利益率 3.0%
- 賃貸・管理:数量 7,800(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1戸あたり年間売上(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。数量 1.30倍・単価 1.34倍・営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.28 倍、時価総額 307 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:賃料は物価で上がるが、金利が上がって買い手の期待利回りも上がるため、売値は物価の6割ほどしか上がらない。棟数は仕入れの競争と融資の引き締めで少し減る。2027年7月期の会社予想(純利益28億円)の水準を、10年後も保てない中心の筋書きに最も重く置いた。
やや悲観 26% 融資が絞られ、投資家の買いが細って売却棟数が3割減る 利益 8 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 418 円128 億円
政策金利が上がり、銀行が投資用マンションの融資を絞る。買い手の期待利回りが上がり、売値は名目でも1.08倍にとどまる。売却棟数は今の0.7倍に減り、在庫が積み上がる。利益率は8%に落ちる。
建設は件数が減り、賃貸・管理だけが堅い。
売上は307億円、営業利益は19億円、純利益は8億円。ROEは3%。借入の利息が利益を大きく削る。
配当は性向を保てず、10年で約35億円にとどまる。
(名目の前提)棟数は0.7倍、売値は1.08倍。本社費用は1.20倍。減価償却は物価で増やさない。借入は減らず、金利3.5%で純利息が利益を圧迫する。
- 不動産開発(新築一棟投資用マンションの開発・販売):数量 30.1(売却棟数(棟相当・推定))× 価格 7.45(1棟あたり売上(億円))→ 売上 224 億円・営業利益 18 億円。数量 0.70倍・単価 1.08倍・営業利益率 8.0%
- 建設:数量 27.0(工事件数(件・推定))× 価格 2.11(1件あたり売上(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90倍・単価 1.20倍・営業利益率 1.0%
- 賃貸・管理:数量 6,600(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1戸あたり年間売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。数量 1.10倍・単価 1.20倍・営業利益率 6.0%
倍率:ROE は約3%で k 8.75% を大きく下回る。PER の上限 1÷k=10.3 倍の約73%の7.5倍に置いた。利益が薄く、在庫の評価損が残る筋書きのため。
確率:住宅ローンでなく事業用の融資は、銀行の姿勢が変わると一度に止まる。2018年以降の投資用マンションの融資引き締めがその例だ。借入が重く在庫を抱える会社は、売却が3割減るだけで利益が半分以下になる。同じ領域の悲観側(23〜27%)の中ほどに置いた。
悲観 14% 融資が止まり、在庫の値引き売却で赤字と増資に追い込まれる 利益 −9 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 131 円40 億円
景気と金融の急変で、銀行が不動産の融資を止める。投資家の買いが消え、売値は名目で0.80倍に下がる。売却棟数は今の3分の1に減り、完成した物件は値引きして売るしかない。
建設は外部工事も細り、管理だけが残る。
売上は127億円まで縮み、営業利益は5億円の赤字になる。10年に販売用不動産の評価損が約70億円出て、自己資本は約45億円に削られる。増資や資産売却が避けられない。
価値の支えは稼ぐ力でなく、売れる土地と建物になる。配当は止まり、10年で約3億円にとどまる。
(名目の前提)棟数は0.35倍、売値は0.80倍。本社費用は1.10倍。減価償却は小さく、物価で増やさない。借入は在庫の投げ売りで返済に回る。
- 不動産開発(新築一棟投資用マンションの開発・販売):数量 15.1(売却棟数(棟相当・推定))× 価格 5.52(1棟あたり売上(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 −3 億円。数量 0.35倍・単価 0.80倍・営業利益率 -4.0%
- 建設:数量 15.0(工事件数(件・推定))× 価格 1.76(1件あたり売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.50倍・単価 1.00倍・営業利益率 -3.0%
- 賃貸・管理:数量 5,400(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1戸あたり年間売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90倍・単価 1.00倍・営業利益率 3.0%
倍率:稼ぐ力はマイナス。売れる資産の床(floor_assets_oku)をそのまま時価総額に置いた。今の自己資本(facts の最新は95億円)に対する PBR は約0.42倍。値引き売却と負債の返済で、帳簿の自己資本は価値の床にならない。
確率:2008〜2011年に、この会社は3期連続の赤字になり、純損失は2009年7月期だけで約100億円に達した。2008年7月期と2023年7月期には株数を増やす資金調達も行っている。自己資本比率が3割で借入が重く、同じ領域の悲観(12〜14%)の上端の14%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産開発(新築一棟投資用マンションの開発・販売)
東京23区の城南・城西で土地を仕入れ、「EL FARO」「MIJAS」「LOS ARCOS」の新築一棟マンションを建て、投資家に売る。収益用不動産や開発用地の売却も含む。
| 数量売却棟数(棟相当・推定) | 価格1棟あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 43.0 | 6.90 | 297 | 46 |
| 10 年後 中立 | 38.7 | 8.28 | 320 | 38 |
取り方:2026年7月期の連結売上368.94億円に、第2四半期累計の構成比(開発80.4%)を当てて296.6億円と推定。第2四半期は新築16棟の平均売却価額が6.82億円で、通期計画は37棟前後。収益用不動産や用地の売却を棟に直した43棟相当で割ると、1棟あたり約6.9億円。営業利益は通期の営業利益47.04億円から、他のセグメントの推定を引いた値で、推定。
建設
グループ会社の協栄組・明豊エンジニアリングが、グループ外の工事とリフォーム、一部の自社物件の施工を請け負う。
| 数量工事件数(件・推定) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 30.0 | 1.76 | 53 | 1 |
| 10 年後 中立 | 33.0 | 2.36 | 78 | 2 |
取り方:通期売上の14.3%(第2四半期累計の構成比)を当てて52.8億円と推定。第2四半期は売上21.3億円、利益0.12億円。件数は開示がなく、30件と推定(1件あたり約1.8億円)。営業利益は第2四半期の黒字転換を受けた推定。
賃貸・管理
自社ブランド物件の賃貸管理、サブリース、関西圏の管理。管理戸数は5,951戸、稼働率は97.7%(第2四半期末)。
| 数量管理戸数(戸) | 価格1戸あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 6,000 | 0.00 | 19 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7,800 | 0.00 | 33 | 3 |
取り方:通期売上の5.2%を当てて19.2億円と推定。管理戸数は第2四半期末で5,951戸(東京3,519戸・関西2,432戸)、期末は約6,000戸と置いた。営業利益は第2四半期の0.2億円を基にした推定。
リスクと懸念
買い手の融資への依存
一棟マンションの買い手は、多くが銀行の融資で物件を買う。融資姿勢が変われば、売上が一度に止まる。2018年の不正融資の発覚後には、投資用不動産の貸し出しが絞られた。政策金利の上昇も、買い手の返済負担を直接増やす。
借入の重さと金利
自己資本比率は3割、純有利子負債は自己資本を上回る。用地の取得のため、長期借入の実行は上期だけで56億円にのぼった。借り換えで金利が3.5%まで上がれば、利息が利益を大きく削る。売却が遅れれば、利息が先に重くなる。
利益の山と持続性
2026年7月期の営業利益率12.8%は、過去10年の中央値を上回る。違約金などの一過性の収入も含まれる。会社の2027年7月期予想は営業利益50億円で、伸びは鈍る。山の利益に高い倍率はつけられない。
用地の仕入れと在庫の評価
用地は競りで、仕入れ値は上がり続けている。高く買った土地は将来の利益率を下げる。市況が悪化すれば、販売用不動産の評価損が自己資本を直接削る。2009〜2011年には、3期連続で赤字となった。
創業者の持ち分と資本政策
創業者の矢吹満氏が44.8%を持つ。少数株主の影響力は小さい。過去には2008年7月期と2023年7月期に株数が増える資金調達を行った。借入が重い会社が、必要に応じて増資に動く可能性は残る。
税制と規制の変化
一棟マンションの需要には、相続や節税の動機が混じる。相続税の評価の見直しや、外国人の不動産取得の規制は、買い手層を狭めうる。台湾など海外顧客は一部の下支えだが、為替と規制の影響を受ける。
建築費と人手不足
建築費の上昇と人手不足は、工期の遅れと採算の悪化を招く。自前の施工会社を持つ点は強みだが、協力会社の確保は難しくなる。工期が延びると、利息と広告費が先に膨らむ。
今後の分かれ目
- 2027年7月期の営業利益が会社予想の50億円を上回る
- 売却の勢いと粗利率が保たれた合図で、やや強気の筋書きに寄る。中期計画(2028年7月期に営業利益52億円)の前倒しも見える。
- 新築の売却棟数が年30棟を割り込む
- 買い手の需要か融資が細った合図だ。在庫が積み上がり、やや悲観の筋書きに寄る。
- 銀行が投資用不動産の融資を絞る、または政策金利が1.5%を超える
- 買い手の期待利回りが上がり、売値が下がる合図だ。悲観側に寄る。
- 自己資本比率が25%を割る、または増資の発表が出る
- 借入の重さが表に出た合図だ。既存株主の取り分が薄まるため、悲観の筋書きに寄る。
- LOS ARCOS(10億円以上)の売却が定着し、1棟あたりの売上が伸びる
- 高価格帯の需要が育つ合図で、強気側に寄る。
- 創業者の持ち分が動く、またはTOBの発表が出る
- 再編の合図だ。参考確率は25%だが、条件が少数株主に有利かは分からない。価値は事業の稼ぎで測る。
見ておくもの
- 年の売却棟数と1棟あたりの売却価額、粗利率
- 棚卸資産の回転と、有利子負債・自己資本比率
- 銀行の投資用不動産向け融資の姿勢、政策金利
- 中期計画(2028年7月期に売上450億円・営業利益52億円)の進み具合
- LOS ARCOSの売却と高価格帯の比率
- 創業者の持ち分、配当性向と優待
倍率と資本コストの決め方
数量(売却棟数・工事件数・管理戸数)と名目の単価から利益を積み、倍率は式で置いた。今の市場の評価(PER 5倍台・PBR 1.2倍前後)には寄せていない。k は基本7.5%に quality 2.25%(循環+0.75・値決め+0.5・借金+0.75・寿命+0.25)を足した9.75%で、同じ領域(投資用マンション)の k 9.0〜10.0%の中ほどにある。売値は、賃料が物価で上がる分と、期待利回りの上昇で下がる分を合わせ、中立で名目1.20倍とした。ROEがkを下回る中立・やや悲観は、PERの上限1÷k=10.3倍の8割・7割強に置いた。強気側は、堀が弱い(残る割合1/3)として上限の約9割にとどめた。減価償却は小さく、物価で増やさない。新リース会計は、借りて営む資産が少なく、影響は小さい。2026年7月期の決算がすでに出ているため、起点を進めた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→14.56 倍・やや楽観 PER 9→14.03 倍・中立 PER 8.2→13.28 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 2.25% = 9.75%。創業者の持ち分や用地の仕入れの失敗などの個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.75% → 8.75%。