結論
ヤマイチエステートは大阪に本社を置く不動産の開発会社だ。更地を2〜3年かけて造成し、産業用地や事業用地として法人に売る。自ら開発した商業施設を持って貸し、子会社でマンションと戸建を分譲する。創業者の山田家の資産管理会社が株の過半を持つ。筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。
2026年3月期の売上は176億円、営業利益は19億円、純利益は6億円弱だった。マンションの竣工が少なく、のれんの減損も出た。会社は2027年3月期に売上314億円、純利益12億円と過去最高を計画し、2028年3月期には純利益18億円強を見込む。第1四半期はマンションの引き渡しで黒字に戻った。
ただ、成長は借金で在庫を積む形だ。棚卸資産は1年で200億円から310億円に増え、純負債は378億円と自己資本140億円の2.7倍に達する。金利が上がる中で利払いは膨らみ、営業利益の3割以上が利息に消える。10年の筋書きを数量と価格で積むと、中立の純利益は12億円前後、ROEは6%で資本コストの9.5%に届かない。悲観では分譲の在庫の値下がりで赤字になり、自己資本が大きく減る。
時価総額は69億円で、自己資本の半分ほどの値段だが、借金の重さと稼ぎの薄さを考えると、安いとは言いにくい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の目で見ると、ヤマイチエステートは腕のある土地の職人だが、借金に頼りすぎている。権利の入り組んだ土地をまとめて造成する力は本物で、産業用地の需要が強い間は高い利幅を取れる。持っている商業施設の賃料も、安定した稼ぎになる。
しかし、その稼ぎは資本の大きさに比べて薄い。ROEは過去2年で4〜5%に下がり、資本コストの9.5%を大きく下回る。来期と再来期の計画が達成されれば一時的に10%を超えるが、大型の案件とマンションの竣工が重なった年の数字で、毎年続くとは限らない。
いちばんの心配は借金だ。純負債は自己資本の2.7倍で、在庫を増やすたびに借入も増える。金利が上がり、在庫の値段が下がる局面では、利益と自己資本が同時に削られる。リーマン危機の時の中堅の分譲会社の破綻は、その典型だった。
親会社が過半を持ち、少数株主の声は届きにくい。決算の数字の訂正が続く点も、長く任せる経営としては気になる。今の値段は自己資本の半分だが、資本コストを下回る稼ぎと重い借金を考えると、安心して持てる値段ではない。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。売上は2026年3月期で176億円だった。
一つ目は不動産開発・賃貸事業だ。奈良、大阪、兵庫などで自ら開発した商業施設や事業用の建物を持ち、スーパーや量販店などのテナントに貸す。2025年度には奈良県桜井市に新しい商業施設を開いた。売上は33億円、セグメントの利益は10億円で、利益率は3割を超える。建物の修繕や管理のその他の事業も小さくある。賃料は安定しており、会社の利益の土台になる。
二つ目は不動産開発・販売事業だ。権利の入り組んだ土地を買い、地主との調整と造成に2〜3年をかけ、産業用地や物流施設の用地として法人に売る。戸建住宅の分譲もここに入る。売上は83億円、利益は21億円だった。2026年3月期は大型の法人向けの案件が予定より早く売れ、利益率は26%と高かった。前の期は11%で、案件の有無で年ごとに大きく振れる。
三つ目はマンション事業だ。子会社を通じて関西と首都圏で分譲マンションを建てて売る。2026年3月期は5棟119戸の引き渡しで、売上は58億円、利益は2億円にとどまった。前の期は8棟237戸だった。2027年3月期は大型の物件の竣工で売上が150億円に増える計画だ。
この三つのセグメントの利益から、本社の費用が年に14〜15億円引かれる。さらに借入の利息が年に7億円前後かかる。2026年10月には住宅会社の安住コーポレーションの株を取得する予定で、買収で事業を広げる方針も持つ。
優良さと弱いところ
強みは、権利の入り組んだ土地をまとめ、造成して付加価値をつける力だ。地主が多い土地や農地の転用は、調整に年月がかかり、大手は手を出しにくい。地元の関西で長く土地を扱ってきた経験と人脈が、仕入れの源になる。物流施設や工場の用地の需要が強い間は、この力が高い利益率を生む。自ら持つ商業施設の賃料も、景気に左右されにくい安定した稼ぎだ。
ただ、堀は弱い。造成した用地の販売は案件の有無で年ごとに大きく振れ、マンションと戸建の分譲は同業が多く、値段を決める力は弱い。土地の仕入れの競争は首都圏で特に激しく、建築費の高騰が利幅を削る。
財務は脆い。成長を借金で在庫を積む形で進め、純負債は自己資本の2.7倍、自己資本比率は22%まで下がった。営業利益に対する利息の倍率は3倍しかない。金利が1%上がれば、利払いは年に4億円近く増える。
開示の正確さにも課題がある。決算の補足資料と決算短信の数字が食い違い、過去3年は毎年のように決算短信を後から訂正している。管理の体制は改善の途中と見ておく。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
住宅の分譲の市場は縮んでいる。2025年の新設住宅着工は74万戸と62年ぶりの低い水準で、分譲戸建は11.6万戸だった。人口の減少と建築費の高騰で、着工の数は長い目で年に数%ずつ減る見通しだ。分譲マンションは都心の高い物件が値段を押し上げる一方、郊外と地方では買い手の予算が追いつかない。住宅ローンの金利が上がれば、買える人はさらに減る。
一方、事業用の土地の需要は強い。ネット通販の広がりで物流施設の用地が求められ、半導体などの工場の国内回帰も続く。関西では大阪の湾岸と奈良・京都の幹線道路の沿いで、産業用地が不足している。農地や市街化調整区域の転用は手続きに時間がかかり、造成のできる会社は限られる。
商業施設の賃貸は、ネット通販に押される面がある一方、食品スーパーやドラッグストアなどの生活に近い店は底堅い。地方の郊外では人口の減少でテナントが抜けるリスクもある。
金利は全体の重しだ。日本の金利は上がる局面にあり、借金で在庫を持つ開発の会社は、利払いの増加と在庫の評価の下落の両方を受ける。リーマン危機の時には、住宅の着工が3割前後減り、在庫の投げ売りで中堅の分譲会社の破綻が相次いだ。業界の数量は10年で横ばいから減少、値段は物価並みというのが中立の見立てだ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、安定配当を方針とする。2026年3月期の配当総額は2.6億円で、配当性向は46%だった。2027年3月期は小幅の増配を予想する。自社株買いはしていない。株主優待として、800株以上の株主にポイントを贈り、3年以上の保有で上乗せする。優待の費用は開示が無く、年に1億円に届かない規模とみて、還元の額には足していない。
利益の多くは在庫と開発に回る。棚卸資産は1年で100億円以上増え、借入金で賄った。2026年10月には安住コーポレーションの株を取得する予定で、買収にもお金を使う。
創業者の山田家の資産管理会社が株の55.66%を持つ親会社で、経営は創業家が握る。役員の報酬に譲渡制限付株式を使い、株数は毎年少しずつ増えている。親会社が過半を持つので、溜まったお金が少数株主に戻る度合いは半分とみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ヤマイチエステートは、来期から利益が大きく伸びる局面に入る。2027年3月期は売上314億円、純利益12億円と過去最高の計画で、第1四半期もマンションの引き渡しで黒字に戻った。2028年3月期の計画では純利益は18億円を超え、今の時価総額はその4倍弱にすぎない。
在庫が増えたのは、大型の開発の案件と首都圏のマンションを仕込んだからだ。物流施設や工場の用地の需要は強く、権利の調整と造成のできる会社は少ない。2026年3月期は法人向けの用地を予定より早く売り、利益率は26%に達した。仕込んだ在庫が売れれば、借金は減り、自己資本は積み上がる。
賃貸の商業施設は年に10億円を稼ぎ、利息を賄える。土地と建物の簿価は200億円を超え、時価はさらに高い可能性がある。時価総額は自己資本の半分しかない。買収で住宅の事業を広げ、関西と首都圏の両方で成長できる。計画が数字になれば、今の値段は安い。
金利の上昇も、賃料と地価の上昇で打ち消せる。物価が上がる局面では、土地と建物を持つ会社の資産の値打ちも上がる。借金は在庫の裏付けがあり、売れば返せる。
慎重な見方
計画が過去最高でも、それは借金で積んだ在庫を売った結果だ。棚卸資産は1年で100億円以上増え、純負債は378億円と自己資本の2.7倍に達した。営業のキャッシュフローは2026年3月期に85億円の赤字で、借入で埋めている。金利が上がれば利払いは膨らみ、在庫を売るまでの時間が長いほど利益は削られる。
マンションと戸建の分譲は、建築費の高騰と住宅ローンの金利の上昇で、買い手の予算が追いつかない。2026年3月期のマンションの利益率は4%弱だった。法人向けの用地の高い利幅は、物流施設の建設の波に乗った一時的なものかもしれない。
ROEは2年続けて5%を下回り、資本コストに遠く届かない。決算の補足資料と短信の数字が食い違い、短信の訂正が毎年続く。親会社が過半を持ち、少数株主に還元が戻る保証は無い。景気が後退すれば、在庫の評価損と借金の重さで、自己資本は一気に削られる。
賃貸の商業施設も、地方の郊外では人口の減少でテナントが抜けるおそれがあり、借金の担保としての値打ちは下がりうる。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠があり、確率は中立に厚く置いた。来期と再来期の計画は大型の案件とマンションの竣工が重なった年の数字で、10年の平均の利益としては割り引いた。借金が重く、金利の上昇と在庫の値下がりに弱いので、悲観とやや悲観の確率は同じ領域の会社より少し厚くした。賃貸の稼ぎと造成の力は、中立とやや楽観の利益に反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,375 円119 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 314 円27 億円)。 今の値に割り戻すと 801 円69 億円、今との差 +3.6%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,258 円283 億円 | 461 円40 億円 | +381.1% | +17.0% | 260 円23 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,315 円201 億円 | 392 円34 億円 | +250.3% | +13.4% | 542 円47 億円 |
| 中立 | 34% | 1,610 円140 億円 | 346 円30 億円 | +153.0% | +9.7% | 665 円58 億円 |
| やや悲観 | 25% | 367 円32 億円 | 277 円24 億円 | −16.7% | −1.8% | 161 円14 億円 |
| 悲観 | 14% | 324 円28 億円 | 115 円10 億円 | −43.2% | −5.5% | 61 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,375 円119 億円 | 314 円27 億円 | +118.5% | +8.1% | 1,689 円146 億円 |
今の株価時価総額 773 円67 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 産業用地とマンションが伸び、計画を超えて利益が4倍に 利益 24 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,258 円283 億円
物流施設と半導体などの工場の用地の需要が10年続き、関西と首都圏で大型の造成の案件を毎年重ねる。用地の販売の件数は1.4倍、単価は地価の上昇で1.4倍になる。マンションは首都圏と関西で年に330戸を引き渡し、利益率は9%に戻る。賃貸の商業施設は新しい開発で床を1.6倍に増やし、賃料も物価並みに上がる。
売上は450億円を超え、営業利益は57億円になる。在庫の回転が上がって借金の伸びは抑えられ、利息を引いても純利益は24億円に達する。ROEは資本コストをわずかに上回り、配当も増える。買収した住宅の会社も利益に貢献する。
- 不動産開発・賃貸事業(その他を含む):数量 160(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 0.48(1 千㎡あたりの年間の賃料など(億円))→ 売上 77 億円・営業利益 25 億円。床 1.6 倍・賃料 1.34 倍
- 不動産開発・販売事業:数量 84.0(販売の件数(大型の用地と戸建の合計・件・推定))× 価格 1.93(1 件あたりの販売額(億円))→ 売上 162 億円・営業利益 36 億円。件数 1.4 倍・単価 1.4 倍
- マンション事業:数量 333(引き渡し戸数(戸))× 価格 0.65(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 217 億円・営業利益 19 億円。年 330 戸・単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.75 倍、時価総額 282 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物流施設と工場の用地の需要が続き、首都圏のマンションも売れ、金利の上昇も緩やかという、全部がそろう筋書き。借金が重く外れた時の損が大きいので、低い確率に置く。
やや楽観 20% 会社の計画に近い形で育ち、利益は今の3倍に 利益 18 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,315 円201 億円
2027年3月期と2028年3月期は計画に近い利益を出し、その後も造成の案件とマンションの竣工が続く。用地の販売の件数は1.2倍、単価は物価並みに上がる。マンションは年に300戸で、利益率は8.5%を保つ。賃貸の床は1.45倍に増える。
売上は390億円、営業利益は44億円になる。金利の上昇で利息は年に15億円を超えるが、純利益は18億円弱と今の3倍になる。自己資本は220億円に増え、ROEは8%近くまで戻るが、資本コストにはわずかに届かない。配当は増え、借金の比率は少し下がる。買収した住宅の会社も、関西での分譲の数を下支えする。
- 不動産開発・賃貸事業(その他を含む):数量 145(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 0.47(1 千㎡あたりの年間の賃料など(億円))→ 売上 67 億円・営業利益 21 億円。床 1.45 倍・賃料 1.3 倍
- 不動産開発・販売事業:数量 72.0(販売の件数(大型の用地と戸建の合計・件・推定))× 価格 1.85(1 件あたりの販売額(億円))→ 売上 133 億円・営業利益 28 億円。件数 1.2 倍・単価 1.34 倍
- マンション事業:数量 298(引き渡し戸数(戸))× 価格 0.63(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 188 億円・営業利益 16 億円。年 300 戸・単価 1.3 倍
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 201 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027〜2028年の会社の計画を延長し、その後も造成とマンションが続く筋書き。計画に沿うので厚めに置くが、大型の案件の重なりは割り引いた。
中立 34% 計画の山を越えたあと、利益は今の2倍で落ち着く 利益 12 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,610 円140 億円
2027年から2028年にかけて計画に近い利益が出たあと、大型の用地の案件は年ごとの平均に戻る。用地の販売の件数は今と同じで、単価は物価並みに上がる。利益率は2026年3月期の26%から20%に戻る。マンションは年に260戸前後を引き渡し、利益率は8%になる。賃貸の床は新しい開発で1.3倍に増えるが、地方の郊外の店の賃料は物価ほど上がらない。
売上は320億円強、営業利益は33億円になる。純負債は在庫とともに高止まりし、金利の上昇で利息は年に13億円に増える。純利益は12億円前後で、今の2倍強になる。自己資本は200億円に増え、ROEは6%にとどまる。配当は安定して続く。
- 不動産開発・賃貸事業(その他を含む):数量 130(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 0.45(1 千㎡あたりの年間の賃料など(億円))→ 売上 58 億円・営業利益 17 億円。床 1.3 倍・賃料 1.25 倍
- 不動産開発・販売事業:数量 60.0(販売の件数(大型の用地と戸建の合計・件・推定))× 価格 1.80(1 件あたりの販売額(億円))→ 売上 108 億円・営業利益 22 億円。件数据え置き・単価 1.3 倍
- マンション事業:数量 262(引き渡し戸数(戸))× 価格 0.61(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 159 億円・営業利益 13 億円。年 260 戸・単価 1.25 倍
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 140 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027〜2028年の計画の山は来るが、その後は用地の案件とマンションが平均に戻る落としどころ。最も起こりやすい筋書きとして厚く置く。
やや悲観 25% 金利の上昇で分譲が冷え、利息が利益を食う 利益 4 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 367 円32 億円
金利が上がり、マンションと戸建の買い手の予算が縮む。マンションは年に215戸にとどまり、値下げで利益率は5%に落ちる。物流施設の建設の波が一巡し、用地の販売の件数は0.8倍に減り、利益率も15%に下がる。賃貸の床は1.2倍に増えるが、賃料の伸びは物価に届かない。
売上は256億円、営業利益は17億円にとどまる。在庫を売るまでの時間が延び、利息は年に10億円を超える。純利益は4億円弱で、今を下回る。自己資本は160億円台に増えるが、ROEは2%台に沈む。配当は維持するが、増配は止まる。在庫の値下げで借金を少しずつ返すが、成長の投資は止まる。
- 不動産開発・賃貸事業(その他を含む):数量 120(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 0.43(1 千㎡あたりの年間の賃料など(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 14 億円。床 1.2 倍・賃料 1.2 倍
- 不動産開発・販売事業:数量 48.0(販売の件数(大型の用地と戸建の合計・件・推定))× 価格 1.66(1 件あたりの販売額(億円))→ 売上 80 億円・営業利益 12 億円。件数 0.8 倍・単価 1.2 倍
- マンション事業:数量 214(引き渡し戸数(戸))× 価格 0.58(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 125 億円・営業利益 6 億円。年 215 戸・単価 1.2 倍
倍率:事業の ROE 2.3% は資本コスト 8.75% を大きく下回るので、PER の上限は 1÷k の 10.5 倍。利益が利息に食われる筋書きなので上限の 80%、8.4 倍。純利益 3.8 億円に掛けた。借金を足した事業の値段(EV)で見ると、純負債 378 億円を足して営業利益の 25 倍前後になり、在庫と賃貸の資産の簿価約 530 億円の 8 割弱にあたる。資本コストを下回る事業として、資産の簿価を割り込む値段は筋が通る。自己資本から在庫の評価損を引いた売れる資産は 60 億円台だが、親会社が過半を持ち清算や売却をしない限り少数株主に届かないので、この筋書きの値段には使わない。
確率:住宅ローンの金利の上昇で分譲の買い手が減り、用地の需要も一巡する筋書き。借金で在庫を持つ形なので、同じ領域の会社より少し厚い確率を置く。
悲観 14% 在庫が値崩れし、赤字と借金で自己資本が半分に 利益 −18 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 324 円28 億円
金利の上昇と景気の後退が重なり、住宅と事業用の土地の売買が急に冷える。造成した用地は買い手がつかず、値下げと評価損で赤字になる。マンションも売れ残り、年に95戸まで減る。銀行は融資を絞り、在庫を安く手放して借金を返す。
賃貸の商業施設は稼ぎ続けるが、本社の費用と利息を賄えない。営業利益は赤字に落ち、利息を払うと毎年大きな赤字が出る。数年の赤字で自己資本は70億円前後まで減り、配当も大きく減らす。親会社が過半を持つので、資産を売って少数株主に戻す道も細い。借金の返済のために、持っている商業施設の一部も売ることになる。
- 不動産開発・賃貸事業(その他を含む):数量 100(賃貸の床面積(千㎡・推定))× 価格 0.38(1 千㎡あたりの年間の賃料など(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 9 億円。床据え置き・賃料 1.05 倍
- 不動産開発・販売事業:数量 30.0(販売の件数(大型の用地と戸建の合計・件・推定))× 価格 1.31(1 件あたりの販売額(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 −2 億円。件数半減・在庫の評価損
- マンション事業:数量 95.2(引き渡し戸数(戸))× 価格 0.46(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 −2 億円。年 95 戸・値下げ
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。床は売れる資産で、今の自己資本 140.4 億円の 0.2 倍にあたる 28.1 億円。内訳は floor_assets_why。
確率:金利の上昇と景気の後退が重なり、在庫の値崩れで赤字に落ちる構造的な負け。純負債が自己資本の2.7倍と重いので、同じ領域の会社よりやや厚い確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産開発・賃貸事業(その他を含む)
奈良・大阪・兵庫などで自ら開発した商業施設や事業用の建物を持ち、テナントに貸す。建物の修繕・管理などのその他事業を含む。安定した賃料で利益の土台になる。
| 数量賃貸の床面積(千㎡・推定) | 価格1 千㎡あたりの年間の賃料など(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.36 | 36 | 11 |
| 10 年後 中立 | 130 | 0.45 | 58 | 17 |
取り方:賃貸の売上 32.73 億円とその他 3.05 億円の合計 35.78 億円を、保有する土地 135 億円・建物 82 億円(簿価)の規模から推定した床 100 千㎡で割った。利益はセグメント利益 10.39+0.60 億円(全社費用の前)。
不動産開発・販売事業
更地から 2〜3 年かけて造成した産業用地・事業用地を法人に売るほか、戸建住宅を分譲する。大型の案件の有無で年ごとの振れが大きい。
| 数量販売の件数(大型の用地と戸建の合計・件・推定) | 価格1 件あたりの販売額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 1.38 | 83 | 21 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 1.80 | 108 | 22 |
取り方:売上 82.88 億円を、法人向けの大型の用地数件と戸建 50 棟強の合計 60 件で割った推定。2026 年 3 月期は権利調整が前倒しで進んだ法人向けの案件で利益率 25.6% と高い(前期は 10.6%)。
マンション事業
子会社を通じて関西と首都圏で分譲マンションを建てて売る。竣工の時期で戸数が大きく動く。
| 数量引き渡し戸数(戸) | 価格1 戸あたりの販売額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 119 | 0.48 | 58 | 2 |
| 10 年後 中立 | 262 | 0.61 | 159 | 13 |
取り方:売上 57.70 億円を引き渡し 119 戸(5 棟)で割った。前期は 237 戸(8 棟)。利益はセグメント利益 2.15 億円。
リスクと懸念
金利の上昇
純負債は378億円で、金利が1%上がれば利払いは年に4億円近く増える。住宅ローンの金利の上昇は分譲の買い手も減らし、利益と在庫の価値を同時に削る。
在庫と借入の膨張
棚卸資産は1年で200億円から310億円に増え、営業のキャッシュフローは85億円の赤字だった。在庫が売れるまでの時間が延びれば、借金はさらに膨らむ。
大型の案件への依存
法人向けの用地の販売は案件の有無で年ごとに大きく振れる。2026年3月期の高い利益率は大型の案件が前倒しで売れた結果で、毎年続くとは限らない。
開示の正確さ
決算の補足資料と短信の数字が食い違い、過去3年は毎年のように決算短信を後から訂正している。管理の体制の弱さは投資家の信頼を損なう。
親会社の支配
創業家の資産管理会社が55.66%を持つ。経営と資本の使い方は創業家が決め、少数株主への還元や資産の売却は進みにくい。
今後の分かれ目
- 2027年3月期に純利益12億円の計画を達成し、在庫が減り始める
- 借金の比率が下がり、やや楽観に近づく。
- 棚卸資産がさらに増え、純負債が450億円を超える
- 金利と在庫の値下がりへの弱さが増し、やや悲観に近づく。
- 住宅ローンの変動金利が2%を超える
- 分譲の買い手が減り、やや悲観に近づく。
- 物流施設と工場の用地の大型の案件を毎年続けて売る
- 利益率の高い事業が厚くなり、やや楽観に近づく。
- 決算短信の訂正が再び起きる
- 管理の弱さが続き、確率を悲観の側に寄せる。
見ておくもの
- 棚卸資産と純有利子負債の残高
- 営業キャッシュフロー
- マンションの引き渡し戸数と利益率
- 法人向けの用地の販売の件数
- 住宅ローン金利と長期金利
- 決算短信の訂正の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は今のPER(12倍前後)やPBR(0.5倍)から置かず、10年後の事業のROEが資本コスト8.75%を下回ることから、PERの上限を1÷kとして筋書きごとに割り引いた。悲観は過去のPBRの底でなく、赤字の後に残る売れる資産から床を出した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.04→11.75 倍・やや楽観 PER 9.47→11.43 倍・中立 PER 8.95→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +2.0%で9.5%。同じ領域の会社(9.0〜10.0%)の中では、借金の重さで高めの側に置いた。賃貸の安定した稼ぎがある分、ケイアイスター不動産の10.0%よりは低い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.75%。