結論
TKPは貸会議室で国内最大手だ。ビルの空きフロアを大口で借り、会議室や宴会場に仕立て、企業へ小口で売る。近年はビジネスホテルと宿泊研修の運営を広げ、壁紙卸のリリカラと結婚式場のオンザページ(旧ノバレーゼ・エスクリ)も傘下に入れた。
筆者の結論は「割高」だ。本体の稼ぐ力は本物である。だが買収した2事業は利益が薄く、借金も増えた。10年かけて本体が伸びても、少数株主と利払いを引いた後の利益は、資本コストを払うには足りない。
前期の純利益123億円は、アパホテル日暮里の信託譲渡益118億円が押し上げた一回きりの数字だ。今期の会社予想は営業利益110億円に対し純利益40億円。本業の利益はこの水準で見る。
本体の賃貸は固定家賃を抱える。ただ変動家賃が半分超なので、不況で売上が落ちても家賃が一緒に下がる。この構造がコロナ禍の傷を浅くした。それでも当時は3期連続の赤字で、景気の波の大きさは消えていない。
買収の履歴も気がかりだ。日本リーガスは約500億円で買い、約380億円で手放した。今回の結婚式と内装材は、赤字や薄利の会社を抱え込む形で、同じ轍を踏む危うさがある。
確率を重みづけした本質価値は、今の時価総額を大きく下回る。割安に見える営業利益の倍率は、少数株主と借金が取り分を削る現実を映していない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見て、この会社に欲しいのは本体の貸会議室と宿泊だ。借りる力と売る力は10年後も通用する。投下資本に対する稼ぎも悪くない。
問題は、その稼ぎが株主の手元に残る形になっていないことだ。利益の一部は上場子会社の少数株主に回る。借入の利払いは、金利が上がる世界でさらに重くなる。家賃の約束も固定費として残る。
経営者の資本配分には慎重になる。買収で価値を増やした実績が見えず、日本リーガスでは損を出した。結婚式場の統合は、縮む市場でシェアを買う手で、買った会社が前期は赤字だった。
安全域は薄い。今の時価総額に対し、純有利子負債が半分近くあり、悲観の筋書きでは本体の稼ぎも消える。払ってよい値段は、利益の10年先を保守的に見積もった額までだ。
本体だけを切り出せれば評価は変わる。だが株主が買うのは、買収した事業を含む今のTKPである。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は4つに分かれる。
1つ目は貸会議室とフレキシブルオフィスだ。直営は200を超える施設、契約面積は11万坪、取引企業は3万社に及ぶ。オーナーから割安に借り、研修・採用・会議・懇親会の需要へ小口で貸し出す。連結売上の約3割がこの事業で、会議室料のほか、オプションや料飲の付加価値が利益を厚くしている。
2つ目は宿泊とホテルの運営で、アパホテルのフランチャイズ運営と宿泊研修施設が中心だ。直営の宿泊施設は30を超え、客室は4千室を上回る。ビジネス出張とインバウンドで稼働が高い。高稼働の物件は自社で持ち、のちに売却して賃借に切り替える手法を取る。
3つ目は壁紙などの内装材卸のリリカラで、2024年6月のTOBで53%を取った。売上は332億円と大きいが、営業利益率は2%台と薄い。
4つ目は結婚式場のオンザページ。ノバレーゼとエスクリを2026年4月に合併した新会社で、TKPの持ち分は57.7%だ。
本体の利益率は10%台前半で、この会社の利益の大半を稼ぐ。残りの2事業は売上の半分を占めながら、利益では脇役である。
優良さと弱いところ
本体の堀は「借りる力」と「売る力」の組み合わせだ。ビルオーナーは空きフロアの埋め先としてTKPを頼り、企業は急な会議にも使える全国網を頼る。三菱地所が東京駅周辺の4施設の運営を任せたのも、その表れである。
ただし堀は深くない。会議室の値段は周辺の貸会議室や自社の会議室との競争で決まり、ホテルは近隣の相場に従う。内装材は大手の壁紙メーカーが値決めを握る卸で、価格を自分で決める力は弱い。
資本効率の数字は見かけに惑わされない方がよい。前期のROEは約25%に見えるが、一回きりの売却益が押し上げた。この益を除いた利益は40億円前後で、自己資本500億円に対し8%台にとどまる。
財務は普通だ。自己資本比率は約29%、純有利子負債は334億円。借入は前期に約280億円増えた。のれんと商標権が約110億円あり、結婚式と内装材の立て直しが滞れば、減損で自己資本が目減りする。
経営の特色はオーナー色の強さだ。創業者の河野社長の資産管理会社が半数近くの株を持つ。判断は速いが、少数株主の目線で買収を止める力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
貸会議室は、オフィス回帰と対面の研修・採用・会議の復活で、需要の追い風が続く。企業は固定費を持たず、必要な時だけ空間を借りたい。テレワークの定着でも、この流れは変わっていない。
競合は地場の貸会議室業者や、ビルオーナー自身の貸し会議室、シェアオフィス事業者だ。参入の壁は低い。ただTKPは全国に施設を持ち、一括の手配ができる。大手の法人顧客には、この全国網が効く。
ホテル運営は国内のビジネスホテル需要とインバウンドが支える。客室単価は人件費の上昇とともに上がるが、新規開業が相次ぎ、地域によっては供給過剰になりうる。
結婚式場は縮む市場だ。婚姻は年48万組台で横ばいに見えるが、2023年に底を打っただけで、その先は人口が減る。式の規模も小さくなっており、ブライダル関連市場は1兆5千億円台で微減が続く。統合は規模で費用を削る手段であって、市場を広げるものではない。
内装材は新築住宅の減少が逆風で、改装需要が支えている。リリカラは壁紙などを大手メーカーから仕入れて売る卸で、利幅が薄い。物価で単価が上がる局面は追い風だが、仕入れ値の上昇を価格に転嫁できるかで利益が決まる。
資本政策と M&A
配当は出していない。株主への還元は自社株買いが中心で、2025年2月期と2026年2月期で約394万株、69億円分を買い入れた。
買収は積極的だ。リリカラをTOBで連結し、エスクリを2025年11月に連結子会社とした。2026年3月にはヒューリック子会社のシェアオフィス事業を買い、識学やAquaVisionにも出資している。
資本の使い方に評価は割れる。日本リーガスを約500億円で買い、約380億円で手放した失敗がある。足元の結婚式と内装材も、本体より利益率が低い会社だ。
一方で、アパホテル日暮里を信託に出して賃借に切り替え、約140億円の資金を得た。持たざる経営へ寄せる動きで、借金の増加を抑える効果がある。
上場子会社が3社あり、少数株主の取り分が連結利益を削る。支配株主が半数近くを持つため、買収されて値が付く展開は想定しにくい。
実行済みの自社株買い(約36億円)は、株数と自己資本の起点に反映し、10年の還元には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
貸会議室はオフィス回帰で需要が強く、前期は本体の営業利益が2割超伸びた。変動家賃が半分超の仕組みなので、景気が崩れても固定費の重荷は軽い。ビルオーナーが空きフロアの埋め先にTKPを選ぶ流れは、供給過剰のオフィス市場でむしろ強まる。
ホテルは高稼働で、新規開業が続く。アパホテルのフランチャイズに加え、自社で持つ物件を売却して賃借に切り替えれば、資金を次の出店に回せる。前期の売却では約140億円の現金を得た。
買収した事業にも再生の余地がある。ノバレーゼとエスクリの統合で、施設網の重なりと内製化により費用を削れる。リリカラは本体の施設の改装需要を取り込み、売上を伸ばせる。
識学やAquaVisionへの出資は、会議室の顧客3万社に研修や企画のサービスを売る布石になる。本体の利益率が12%台に乗り、子会社が薄利でも黒字を保てば、今期110億円の営業利益は10年で2倍近くに育つ。物価が年3%で上がる世界では、賃料と客室単価も同じ歩みで上がり、利益は名目で伸びやすい。
慎重な見方
前期の純利益123億円は売却益で、本業の利益は40億円前後だ。営業利益が103億円あっても、利払い、少数株主、税を引くと4割しか残らない。自己資本が500億円の会社で、この水準のROEは資本コストに届かない。
買収した2事業は構造的に厳しい。結婚式は市場が縮み、買収したエスクリは、通期に直すと前期は営業赤字だったとされる。内装材は営業利益率が2%台で、今年の上半期は営業損益がわずかに赤字へ転じた。
借入が1年で約280億円増え、金利は上がる世界にある。ホテルを売却して賃借に切り替えた分、家賃という固定費も積み上がる。コロナ禍では3期連続の赤字を出し、景気の波には脆い。
買収の履歴にも不安が残る。日本リーガスの損失から日が浅い。支配株主が半数近くを持つため、少数株主は買収の是非を止められない。強気の見方は、薄利の事業が一斉に立ち直る前提に立っている。そのうえ会議室もホテルも結婚式も、景気が悪い時に同時に落ちる事業だ。分散になっていない。
どちらに重みを置いたか
本体の強さは慎重な見方も認める。だが株主に残る利益の薄さと、買収した2事業の質については、慎重な見方が強い。この会社は営業利益の大きさに比べ、株主の取り分が小さい。
確率は中立をいちばん厚くし、悲観側(やや悲観と悲観)を4割近くに寄せた。コロナ禍の3期赤字と買収の失敗歴があり、事業の波と財務の薄さが同時に来た時の傷が深いためだ。結論は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,475 円897 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 364 円132 億円)。 今の値に割り戻すと 1,282 円465 億円、今との差 −33.9%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,029 円1,822 億円 | 784 円284 億円 | +199.6% | +11.6% | 465 円168 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,646 円1,321 億円 | 585 円212 億円 | +118.1% | +8.1% | 762 円276 億円 |
| 中立 | 36% | 2,834 円1,027 億円 | 425 円154 億円 | +68.0% | +5.3% | 1,173 円425 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,282 円464 億円 | 174 円63 億円 | −25.0% | −2.8% | 349 円127 億円 |
| 悲観 | 14% | 635 円230 億円 | 8 円3 億円 | −66.9% | −10.5% | 90 円33 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,475 円897 億円 | 364 円132 億円 | +46.4% | +3.9% | 2,839 円1,029 億円 |
今の株価時価総額 1,940 円703 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 再生の型が全国に広がり、子会社も黒字で立ち直る 利益 143 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 5,029 円1,822 億円
貸会議室は大手ビルオーナーからの運営受託が続き、契約面積が10年で8割増える。企業の研修・採用・懇親会が強く、料飲やオプションの付加価値で利益率は14%に届く。
ホテルは客室数が2.5倍強に増え、自社で持つ物件の売却と賃借の組み合わせで資金を回しながら出店を続ける。稼働は高く、客室単価は物価を上回って上がる。
結婚式のオンザページは、エスクリとの統合で施設の重なりを整理し、内製化で費用を削る。組数の減少は大都市の施設に絞ることで抑え、利益率は7%まで戻る。リリカラも改装需要を取り込み、営業利益率が4%台に乗る。
借金は増えるが、利益の伸びがそれを上回り、自社株買いを続けられる。ROEは13%に近づき、資本コストを超える稼ぎが定着する。
- 貸会議室・フレキシブルオフィス:数量 19.8(契約面積(万坪))× 価格 49(1 万坪あたりの売上(億円。会議室料・オプション・料飲・その他の合計))→ 売上 963 億円・営業利益 135 億円。面積+80%・価格+40%
- ホテル・宿泊研修:数量 10,400(運営する客室数(室。年間の平均))× 価格 0.05(1 室あたりの年間売上(億円。客室単価×稼働日数))→ 売上 512 億円・営業利益 87 億円。客室+160%・価格+40%
- 内装材卸(リリカラ):数量 33.9(壁紙換算の取扱面積(百万㎡。市場規模×シェアで推定))× 価格 14(1 百万㎡あたりの売上(億円))→ 売上 474 億円・営業利益 21 億円。取扱+5%・価格+36%
- 結婚式場(オンザページ):数量 12.3(婚礼・宴会の施行組数(千組))× 価格 49(1 千組あたりの売上(億円。1 組約 350 万円))→ 売上 601 億円・営業利益 42 億円。組数+47%(通期化込み)・価格+40%
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.75 倍、時価総額 1,822 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:本体の拡大・ホテルの倍増・結婚式の黒字化・内装材の利益率改善がそろう姿で、条件が重なるので確率は抑える。
やや楽観 18% 本体が着実に伸び、子会社は薄利で黒字を保つ 利益 110 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 3,646 円1,321 億円
貸会議室は新規の出店と増床が続き、契約面積は10年で6割増える。テレワークが定着しても、研修や懇親会などの対面需要は底堅い。
ホテルは客室数が2倍を超え、フランチャイズ収入と直営の宿泊が伸びる。賃借への切り替えで固定家賃は増えるが、稼働の高さで吸収する。
オンザページは統合の効果で費用が下がり、利益率が5%台まで上がる。婚姻の減少は続くが、組数の落ち込みを抑える。リリカラは薄利のまま、営業利益率は3%台後半にとどまる。
借入の利払いは金利上昇でかさむものの、本体の利益の伸びで受け止められる。自社株買いは純利益の3割強に届く。ROEは11%前後で、資本コストをわずかに上回る。
- 貸会議室・フレキシブルオフィス:数量 17.6(契約面積(万坪))× 価格 48(1 万坪あたりの売上(億円。会議室料・オプション・料飲・その他の合計))→ 売上 838 億円・営業利益 111 億円。面積+60%・価格+37%
- ホテル・宿泊研修:数量 8,400(運営する客室数(室。年間の平均))× 価格 0.05(1 室あたりの年間売上(億円。客室単価×稼働日数))→ 売上 405 億円・営業利益 65 億円。客室+110%・価格+37%
- 内装材卸(リリカラ):数量 32.3(壁紙換算の取扱面積(百万㎡。市場規模×シェアで推定))× 価格 14(1 百万㎡あたりの売上(億円))→ 売上 452 億円・営業利益 16 億円。取扱横ばい・価格+36%
- 結婚式場(オンザページ):数量 11.7(婚礼・宴会の施行組数(千組))× 価格 48(1 千組あたりの売上(億円。1 組約 350 万円))→ 売上 560 億円・営業利益 31 億円。組数+40%(通期化込み)・価格+37%
倍率:事業の純利益 110 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12 倍、時価総額 1,321 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:近年の本体の伸びの延長線で、買収した2事業が赤字に戻らず薄利で続く姿。やや楽観として相応の厚みを置く。
中立 36% 本体は物価並みに伸び、子会社は薄利のまま 利益 87 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 2,834 円1,027 億円
貸会議室は契約面積が10年で4割強増え、価格は物価並みに上がる。競争は続くが、全国網と大手法人の取引が堀として働き、利益率は12%台で保つ。
ホテルの客室数は7割強増える。新規の開業は増えても、地域によって供給が過剰になり、利益率は15%前後で伸び悩む。
結婚式のオンザページは、婚姻の減少に合わせて組数が1割ほど減る。統合で費用は下がるが、新しい施設への投資も要り、利益率は4%台にとどまる。リリカラは新築の減少で取扱量が減り、3%の利益率が上限になる。
営業利益は10年で7割ほど伸びる。ただ利払いと少数株主の取り分を引くと、純利益は90億円に届かない。自社株買いは続けるが、資本コストを超える稼ぎには届かない。
- 貸会議室・フレキシブルオフィス:数量 16.0(契約面積(万坪))× 価格 47(1 万坪あたりの売上(億円。会議室料・オプション・料飲・その他の合計))→ 売上 742 億円・営業利益 93 億円。面積+45%・価格+34%
- ホテル・宿泊研修:数量 7,000(運営する客室数(室。年間の平均))× 価格 0.05(1 室あたりの年間売上(億円。客室単価×稼働日数))→ 売上 330 億円・営業利益 50 億円。客室+75%・価格+34%
- 内装材卸(リリカラ):数量 30.7(壁紙換算の取扱面積(百万㎡。市場規模×シェアで推定))× 価格 14(1 百万㎡あたりの売上(億円))→ 売上 423 億円・営業利益 13 億円。取扱-5%・価格+34%
- 結婚式場(オンザページ):数量 11.0(婚礼・宴会の施行組数(千組))× 価格 47(1 千組あたりの売上(億円。1 組約 350 万円))→ 売上 514 億円・営業利益 23 億円。組数+32%(通期化込み)・価格+34%
倍率:事業の純利益 87 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.45 倍、時価総額 992 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:本体の拡大が物価を少し上回る程度で続き、買収2事業は薄利のまま残る姿を中心に置く。直近の勢いと、利益の薄さの両方を踏まえた。
やや悲観 24% 対面需要が頭打ちになり、買収事業が足を引っ張る 利益 50 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,282 円464 億円
対面の会議・研修の需要が頭打ちになり、貸会議室の契約面積は2割の増加にとどまる。ビルオーナー系の競合が増え、価格は物価の伸びを下回る。
ホテルは新規開業の増加で客室単価の上昇が鈍り、稼働も落ちる。賃借に切り替えた物件の固定家賃が利益を圧迫する。
結婚式は婚姻の減少で組数が減り、統合の効果は費用の増加で相殺される。利益率は2%に低下し、赤字の施設を閉じる費用も出る。リリカラは薄利のまま、取扱量が1割強減る。
営業利益は今の水準をわずかに上回る程度で、利払いと少数株主の取り分を引くと純利益は50億円ほどだ。自社株買いは細り、のれんの減損が一部出る。
- 貸会議室・フレキシブルオフィス:数量 13.2(契約面積(万坪))× 価格 45(1 万坪あたりの売上(億円。会議室料・オプション・料飲・その他の合計))→ 売上 596 億円・営業利益 63 億円。面積+20%・価格+30%
- ホテル・宿泊研修:数量 5,800(運営する客室数(室。年間の平均))× 価格 0.05(1 室あたりの年間売上(億円。客室単価×稼働日数))→ 売上 265 億円・営業利益 32 億円。客室+45%・価格+30%
- 内装材卸(リリカラ):数量 28.4(壁紙換算の取扱面積(百万㎡。市場規模×シェアで推定))× 価格 13(1 百万㎡あたりの売上(億円))→ 売上 380 億円・営業利益 8 億円。取扱-12%・価格+30%
- 結婚式場(オンザページ):数量 9.7(婚礼・宴会の施行組数(千組))× 価格 45(1 千組あたりの売上(億円。1 組約 350 万円))→ 売上 433 億円・営業利益 9 億円。組数+16%(通期化込み)・価格+28%
倍率:事業の ROE 5.9% は資本コスト 9% 以下。新しく投じるお金が価値を増やさないので、PER は 1÷k=10.3 倍まで。この筋書きは稼ぐ力(純利益 50 億円÷k)で測り、利益の質が低いので約 8 割、8.0 倍に置いた。
確率:テレワークの定着と宿泊の供給過剰、結婚式の縮小が同時に来る姿。コロナ禍で3期赤字を出した事業の波を考え、中立に近い厚みを置く。
悲観 14% 対面需要の構造変化と買収の失敗が重なり、赤字へ 利益 −34 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 635 円230 億円
企業が会議・研修を社内やオンラインに移し、貸会議室の需要が構造的に縮む。ビルオーナー自身が会議室を運営する動きも広がり、契約面積は減り、価格は物価の上昇に追いつかない。
ホテルは過剰な供給で単価が崩れ、賃借に切り替えた物件の固定家賃が重くのしかかる。
結婚式は婚姻の減少で組数が大きく減り、統合後も黒字化できずに赤字が続く。内装材も新築の減少で赤字に沈む。
借入の返済と固定家賃が資金繰りを圧迫し、のれん・商標権の減損と施設の閉鎖費用で自己資本が目減りする。上場子会社の売却や出資の整理で資金をつくり、会社は残るが、成長の物語は終わる。
- 貸会議室・フレキシブルオフィス:数量 9.4(契約面積(万坪))× 価格 42(1 万坪あたりの売上(億円。会議室料・オプション・料飲・その他の合計))→ 売上 390 億円・営業利益 16 億円。面積-15%・価格+20%
- ホテル・宿泊研修:数量 4,000(運営する客室数(室。年間の平均))× 価格 0.04(1 室あたりの年間売上(億円。客室単価×稼働日数))→ 売上 162 億円・営業利益 5 億円。客室横ばい・価格+15%
- 内装材卸(リリカラ):数量 24.2(壁紙換算の取扱面積(百万㎡。市場規模×シェアで推定))× 価格 12(1 百万㎡あたりの売上(億円))→ 売上 299 億円・営業利益 −3 億円。取扱-25%・価格+20%
- 結婚式場(オンザページ):数量 7.8(婚礼・宴会の施行組数(千組))× 価格 40(1 千組あたりの売上(億円。1 組約 350 万円))→ 売上 312 億円・営業利益 −9 億円。組数-7%(通期化込み)・価格+15%
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。今の自己資本 500 億円から、のれん・商標権(約 110 億円)の全額減損と、結婚式・内装材の撤退費用・評価損(約 160 億円)を引いた約 230 億円を、売れる資産の床に置いた。
確率:テレワーク定着・ホテル過剰・結婚式の縮小・内装材の赤字・借金と固定家賃が同時に効く構造的な負け筋。コロナ禍の赤字と買収の失敗歴を考え、同じ領域の会社より厚く置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
貸会議室・フレキシブルオフィス
空きフロアを借りて会議室・宴会場・レンタルオフィスに再生し、企業へ小口で貸す本体の中核事業(宿泊を除く)。
| 数量契約面積(万坪) | 価格1 万坪あたりの売上(億円。会議室料・オプション・料飲・その他の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 11.0 | 35 | 382 | 45 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 47 | 742 | 93 |
取り方:直営の契約面積は2025年8月末で約11万坪(FISCO・財形ニュース)。本体の売上522.77億円から宿泊売上140.72億円を引いた382.05億円を面積で割り、1 万坪あたり約34.7億円とした。セグメント利益67.49億円は宿泊との内訳が開示されておらず、宿泊の利益率を15.6%と置いて残りの45.49億円をこちらに充てた(推定)。価格は中立で物価並み(10 年 1.34 倍)。
ホテル・宿泊研修
アパホテルのフランチャイズ運営や宿泊研修施設など、直営の宿泊事業。一部の高稼働物件は自社で保有し、のちに売却して賃借に切り替える。
| 数量運営する客室数(室。年間の平均) | 価格1 室あたりの年間売上(億円。客室単価×稼働日数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4,000 | 0.04 | 141 | 22 |
| 10 年後 中立 | 7,000 | 0.05 | 330 | 50 |
取り方:宿泊売上は140.72億円(2026年2月期)。運営は2025年8月末で直営30施設・4,126室、期末は34施設(未開業を含む)なので、期中の平均を4,000室と置き、1 室あたり年約350万円(日額で約1万円)を導いた。利益は本体の利益率を踏まえた推定15.6%。価格は中立で物価並み。 数量は客室数(実物)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は新規開業の施設。価格は物価の 1.34 倍。
内装材卸(リリカラ)
壁紙・カーテン・床材などの内装材を仕入れて建築・内装業者へ販売する卸。TKP の持ち分は 53%。
| 数量壁紙換算の取扱面積(百万㎡。市場規模×シェアで推定) | 価格1 百万㎡あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 32.3 | 10 | 332 | 9 |
| 10 年後 中立 | 30.7 | 14 | 423 | 13 |
取り方:国内の壁紙出荷は約6.0億㎡(日本壁装協会 2023年度)。内装材の市場は約6,200億円(NIF 2023年度)で、リリカラの売上332億円はその約5.4%。同じ割合を壁紙の出荷面積に掛け、取扱面積を約32百万㎡と推定した。カーテン・床材も含めた換算なので、面積は目安である。営業利益は決算のセグメント利益8.56億円(利益率2.6%)。
結婚式場(オンザページ)
ノバレーゼとエスクリを2026年4月に合併した結婚式場の新会社。TKP の持ち分は 57.7%。
| 数量婚礼・宴会の施行組数(千組) | 価格1 千組あたりの売上(億円。1 組約 350 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 8.3 | 35 | 292 | 27 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 47 | 514 | 23 |
取り方:セグメント売上291.90億円は、ノバレーゼの通期にエスクリの2025年12月以降の分を足したもの。1 組あたり約350万円(婚礼の平均的な費用)と置いて組数を逆算した。合併後の会社は年約450億円規模と発表されており、通期の組数は約12.9千組に当たる。セグメント利益27.43億円は、2027年2月期第1四半期の利益率1.5%(売上115.85億円・利益1.68億円)と大きく違い、一回きりの要因の有無は確認できなかった。
リスクと懸念
対面需要の構造変化
貸会議室は研修・採用・懇親会の需要で稼ぐ。企業が社内の会議室やオンラインに移れば、契約面積当たりの売上が落ちる。ビルオーナー自身が会議室を運営する動きも競合になる。
買収した2事業の収益性
結婚式のオンザページは、買収したエスクリが前期は通期換算で営業赤字だったとされる。リリカラも営業利益率が2%台で、上半期は営業損益がわずかに赤字へ転じた。統合の効果が出なければ、のれんと商標権の約110億円が減損の対象になる。
借金と固定家賃
有利子負債は前期に約280億円増えて790億円ほどになった。金利が上がる世界では利払いが重くなる。ホテルを売却して賃借に切り替えた分、家賃という固定の約束も積み上がる。変動家賃が半分超でも、残りは固定のままだ。
景気とイベントの波
会議・宴会・宿泊・結婚式は、どれも景気と社会の出来事で大きく振れる。コロナ禍では3期連続で赤字となり、日本リーガスの損失も重なって、2023年2月期の純損益は赤字だった。
資本配分と支配株主
資産管理会社を通じて創業者が半数近くを持つ。買収の判断は速いが、少数株主が止めることは難しい。日本リーガスを約120億円安く手放した過去がある。上場子会社3社の少数株主の取り分も、連結利益を削る。
結婚式市場の縮小
婚姻は年48万組台で、2023年に底を打ったあとも長くは増えない。式の規模も縮み、ブライダル関連市場は1兆5千億円台で微減が続く。統合で費用は減るが、市場そのものは広がらない。
今後の分かれ目
- 貸会議室の契約面積が年1割ペースで増え、本体の営業利益率が13%台に乗る
- 本体の稼ぎが利払いや少数株主の取り分を上回る形で積み上がり、本質価値は楽観に近い筋書きに寄る。
- オンザページが2期続けて営業黒字を保ち、利益率が5%台に近づく
- 結婚式の統合が機能したことになり、買収事業の重荷が軽くなる。本質価値は中立よりやや上の筋書きに寄る。
- リリカラの営業赤字が続くか、オンザページで減損が出る
- のれん・商標権の減損が自己資本を削り、筋書きはやや悲観に寄る。買収の失敗が繰り返されたと受け取られる。
- 企業の会議・研修が社内やオンラインへ移り、契約面積当たりの売上が落ちる
- 本体の利益率が下がり、固定家賃の重さが表に出る。筋書きは悲観に近づく。
- 金利が想定を超えて上がり、借り換えの利払いが急増する
- 純利益が削られ、本質価値は慎重な側へ動く。借金が重い分、効き方が大きい。
- 追加の売却と賃借への切り替えで、借金が大きく減る
- 財務の不安は和らぐが、固定家賃が増える。利益の質をどう見るかで評価が分かれる。
見ておくもの
- 貸会議室の契約面積と坪当たり売上(決算説明資料)
- 本体の営業利益率(12〜13%台を保てるか)
- オンザページの営業利益率と、減損・施設閉鎖の発表
- リリカラの営業損益(半期ごと)
- 有利子負債と固定家賃(賃借に切り替えた物件の数)
- 追加の買収・出資の発表と、のれんの残高
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、4 つの事業ごとに数量(契約面積・客室数・取扱面積・組数=実質)と価格(物価 3% 込みの名目)を積み、利払いと少数株主の取り分を引いて純利益を出した。倍率は資本コスト 9%(基本 7.5% に quality +2.25%)と正当化 PER から出した。中立・やや楽観・楽観は上限の 8〜8.5 割、やや悲観は稼ぐ力(純利益÷k)の約 8 割、悲観は今の自己資本から減損を引いた売れる資産で測った。前期の純利益は売却益で押し上がっているので、流れの起点は会社予想の 40 億円に置いた。新リース会計基準(2028/03 期から)で営業利益とリース負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.6→12.75 倍・やや楽観 PER 8.55→12 倍・中立 PER 8.7→11.45 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +2.25% を足した 9.75%。事業が傾いているわけではないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.75% → 9.00%。