結論
アグレ都市デザインは、東京都心から多摩エリアで戸建を分譲し、収益マンションや宿泊施設も扱う成長企業だ。16 期連続で増収を続け、2026/03 期は売上 370 億円、営業利益 33 億円と過去最高を更新した。筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。
理由は借入の重さにある。用地の仕入れが先行し、在庫は 293 億円。有利子負債は 260 億円で、時価総額を上回る。自己資本比率は 22% しかない。
金利が上がれば、この借入の利払いが利益を直接削る。今の利払いは 6 億円弱だが、借り換えが進めば 10 年で 3 倍近くに膨らむ。利益は名目で伸びても、株主に残る利益はそれほど増えない。
事業の実力は高い。仕入力と自社一貫の体制で、粗利率は 17.8% まで上がった。それでも、住宅は景気と金利に左右される。筆者は成長を認めつつ、谷の深さを重く見る。
中計の売上 500 億円は多摩建設の買収で前倒しで届く。ただ、買収の資金は借入で、規模が伸びるほど借入も増える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい会社かを問う。答えは、成長は評価できるが、借入の重さが気になる。
事業の質は悪くない。仕入力は本物で、粗利率も上がっている。ただ、住宅は景気と金利に振れる産業で、堀は薄い。10 年先も今の利益率が続くとは言い切れない。
資本の使い方は、借入を使って規模を伸ばす型だ。うまくいけば ROE は高いが、金利が上がる世界では、借入の費用が利益を削る。物価が 3% 上がる世界でも、土地の値段が下がる年は必ずある。その時に自己資本が薄いと、傷が深い。
払う値段に安全域があるかを考えると、10 年後の価値を今に直すと、中立の筋書きでも今の値段に届かない。悲観では売れる資産から負債を引くと、ほぼ何も残らない。成長を買う会社であり、安全域で買う会社ではない。
経営者が資本をどう配分するかも見る。利益の 6 割を事業に回し、成長を優先する姿勢は、借入が増える局面では危うさも伴う。
何で稼ぐ会社か
アグレ都市デザインは、東京・吉祥寺を創業の地とする不動産開発会社だ。2026/03 期の売上は 370 億円。事業は戸建の分譲を中心に、収益物件・宿泊と広がり、2026 年 4 月からマンションが加わって 4 本立てになる。
中心はハウジング事業で、売上は 304 億円、引渡は 394 棟。都心から環状 8 号線の周辺、多摩エリアで用地を仕入れ、自社で設計から販売まで一貫して手がける。
アセットソリューション事業は、収益マンションや木造アパート、事業用地を投資家に売る。売上は 62 億円で、前期の 1.7 倍に増えた。宿泊事業は、空き家を活用した旅館・宿泊施設の開業支援と分譲で、売上は 4 億円とまだ小さい。
2026 年 4 月には、マンションデベロッパーのホーユーコーポレーションを約 39 億円で買収した。傘下の多摩建設が「ベルジュール」の名で、小規模な低層ファミリーマンションを分譲する。売上は年 60 億円強。2028/03 期の売上 500 億円の目標を、2 年前倒しで達成する見込みだ。
優良さと弱いところ
強みは、用地を仕入れる力と自社一貫の体制だ。4 つの事業が土地の情報を融通し合い、一つの用地を戸建・アパート・マンションのどれにするかを選べる。以前なら見送った用地も事業化でき、2026/03 期は粗利率が 17.8% に上がった。
ただ、堀は強くない。住宅分譲は、土地を仕入れる力で勝負する産業で、他社が真似しにくい仕組みは少ない。価格を自分で決められず、同業の大手が同じ用地を取り合う。
資本効率は高い。ROE は 22% で、過去 10 年の中央値は 21%。ただ高い ROE の裏には、自己資本比率 22% という借入の重さがある。在庫の回転が落ちると、資金繰りが急に苦しくなる。
経営は成長を優先している。配当性向は 35% を目途とし、利益の 6 割を事業に回す。この点は、成長が続く間は妥当だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
住宅分譲は、人口が減る日本で、縮む市場に属する。分譲戸建の着工は 2025 年に 11.6 万戸と、減少の流れにある。価格は建築費の上昇で 5 年で 4 割近く上がり、買える人の範囲が狭まっている。
都心回帰で、郊外から都心近くへ需要が移っている。アグレは環状 8 号線の周辺と多摩エリアに集中し、この流れに乗る。大手のオープンハウスや飯田グループは規模が大きいが、ニッチな用地や小規模な物件では中堅が戦える。
収益物件は、投資家の資金が流れ込み、取引が活発だ。ただ金利が上がると、利回りが上がって物件価格が下がる。事業用地の売却は市況に左右される。木造アパートは参入が増え、競争が強まりつつある。
住宅ローン金利が上がれば、買い手の月々の返済が増え、需要が冷える。人手不足で施工の職人も足りず、建築費の上昇が供給を絞っている。この影響を直接受けるのが分譲会社で、金利は最大の外部要因になる。
宿泊事業は、空き家を旅館に作り替えて分譲する新しい分野だ。地方創生の流れに乗るが、売上は 4 億円とまだ小さく、全体への影響は限られる。
資本政策と M&A
資本政策は、成長への再投資が優先だ。配当性向は当期純利益の 35% を目途とし、2026/03 期は増配、2027/03 期も増配を予定している。自社株買いは目立たない。
財務は借入に頼る。現金 79 億円に対し、有利子負債は 260 億円。在庫の 293 億円を資金で支える構造だ。買収にも約 39 億円を使い、借入はさらに増える。金利が 3.5〜4% に上がると、利払いの負担が重い。
株主優待として QUO カードを出している。保有期間と株数に応じて額が変わり、費用は年 1 億円未満。数字には入れない。
筆者は、買収で売上は伸びるが、借入と金利の重さが同時に増える点を気にしている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アグレは、縮む市場で伸びる会社だ。16 期連続の増収、2016 年から年平均 15.6% の成長がその証拠になる。仕入準備高は 895 億円と、売上の 2 年分を超える。多摩建設が加わり、中期目標の売上 500 億円は 2 年前倒しで達成する。1,000 億円も視野に入る。
4 つの事業が土地情報を融通し合う仕組みが効いている。粗利率は 17.8% に上がり、販管費率も下がった。広告費と人件費を増やしながら、率を下げている。シナジーで、同じ用地から利益を最大にできる。
ROE は 22% で、借入を使った成長が株主に高いリターンをもたらしている。今の PER が 8 倍台と低く、成長が続けば値段の見直しが入る。収益物件の需要は旺盛で、事業用地の販売も増えている。従業員も 158 人に増え、一人当たりの売上は 2 億円を超えた。配当は増え、35% の性向で株主にも返している。株主優待も出し、個人株主を増やす姿勢が見える。
慎重な見方
住宅分譲は、金利と景気に最も弱い産業の一つだ。リーマン後の 2009 年には、住宅着工が 3 割落ち、中堅の住宅会社が相次いで破綻した。在庫の評価損と資金繰りの悪化が原因だ。
アグレの自己資本比率は 22%、有利子負債は時価総額を上回る。在庫 293 億円を借入で支えている。用地の値段が 2 割下がれば、自己資本の 6 割が消える。金利が 4% に上がれば、利払いは今の 3 倍の 17 億円に増える。
業界全体では分譲戸建の着工が縮む。価格は建築費で上がり続け、買える人が減る。会社は小さいから伸びる余地はあるが、大手が同じ用地を取りに来る。用地の仕入値が上がれば、利益率はすぐ下がる。
買収にも約 39 億円を使い、借入は増える。買収後の統合に失敗すれば、重荷になる。買収価格は純資産の 1.1 倍で、割安とは言えない。成長を続けるには、借入を増やし続けるしかない。株主優待を拡充して個人株主を増やしても、事業の借入の重さは変わらない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。成長は本物だが、借入が重く、金利の上昇と住宅の谷が利益と自己資本を同時に削る。強気の見方の増収は、中立の筋書きに織り込んだ。ただ、金利が 4% に上がる世界の純利益は、増収ほどは伸びない。確率は、中立に 38% を置き、強気側に 3 割、慎重側に 3 割を置いた。悲観は、リーマン級の前例があり借入が重いので、1 割を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,245 円302 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,166 円67 億円)。 今の値に割り戻すと 2,973 円171 億円、今との差 +9.3%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,368 円654 億円 | 2,086 円120 億円 | +394.8% | +17.3% | 1,076 円62 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,376 円482 億円 | 1,616 円93 億円 | +267.5% | +13.9% | 2,198 円126 億円 |
| 中立 | 38% | 5,776 円332 億円 | 1,269 円73 億円 | +159.1% | +10.0% | 2,677 円154 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,252 円72 億円 | 660 円38 億円 | −29.7% | −3.5% | 421 円24 億円 |
| 悲観 | 10% | 226 円13 億円 | 156 円9 億円 | −85.9% | −17.8% | 38 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,245 円302 億円 | 1,166 円67 億円 | +135.8% | +9.0% | 6,410 円369 億円 |
今の株価時価総額 2,719 円156 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 戸建と収益物件が伸び続け、売上が 900 億円に近づく 利益 42 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 11,368 円654 億円
仕入準備高 895 億円を足がかりに、戸建の引渡は 10 年で 1.5 倍の 590 棟前後になる。都心回帰の流れと多摩エリアの強みで、住宅価格は年 2.7% 上がる。収益マンション・木造アパート・事業用地の販売も 2 倍近くに増える。
多摩建設のマンションも棟数を増やし、4 つの事業が土地情報を融通し合うシナジーが効く。売上は 880 億円、営業利益は 84 億円(利益率 9.6%)になる。
借入は売上の 7 割にあたる 610 億円まで膨らみ、金利が 4% に上がって利払いが 25 億円かかる。それでも純利益は 42 億円。ここまで伸びても、倍率は 14.57 倍が上限で、成長株のような値は付かない。
- ハウジング(戸建):数量 591(引渡棟数(棟))× 価格 1.00(1 棟あたりの売上(億円、名目))→ 売上 592 億円・営業利益 47 億円。数量 1.50 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 8.0%
- アセットソリューション(収益物件・事業用地):数量 52.2(引渡件数(件))× 価格 2.87(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 150 億円・営業利益 24 億円。数量 1.80 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 16.0%
- 宿泊:数量 56.0(引渡件数(件))× 価格 0.37(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。数量 4.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 12.0%
- マンション(多摩建設、2026/04 から連結):数量 140(売上の数量指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.81(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 113 億円・営業利益 10 億円。数量 1.40 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.57 倍、時価総額 608 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:仕入が順調に積み上がり、住宅ローン金利も大きく上がらず、さらに収益物件の需要が続く必要がある。重なる条件が多く、8% にとどめた。
やや楽観 22% 戸建は着実に伸び、収益物件も堅調で売上が 740 億円に届く 利益 31 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 8,376 円482 億円
戸建の引渡は 1.35 倍の 530 棟になる。シェアは小さく、全国の分譲戸建の 0.4% に届く程度なので、棟数を増やす余地はある。価格は年 2.3% の上昇にとどまる。
収益物件の販売は 1.5 倍に増える。ただ、事業用地の販売は市況に左右される。営業利益率は 8.7% で、直近の 8.9% から少し下がる。
売上は 740 億円、営業利益は 65 億円。借入は 520 億円で、利払いが 21 億円かかる。純利益は 31 億円になる。配当性向 35% の方針を保ち、還元は 10 年で約 90 億円になる。
- ハウジング(戸建):数量 532(引渡棟数(棟))× 価格 0.96(1 棟あたりの売上(億円、名目))→ 売上 513 億円・営業利益 38 億円。数量 1.35 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 7.5%
- アセットソリューション(収益物件・事業用地):数量 43.5(引渡件数(件))× 価格 2.79(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 121 億円・営業利益 17 億円。数量 1.50 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 14.0%
- 宿泊:数量 42.0(引渡件数(件))× 価格 0.36(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。数量 3.00 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 10.0%
- マンション(多摩建設、2026/04 から連結):数量 120(売上の数量指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.78(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 93 億円・営業利益 8 億円。数量 1.20 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.07 倍、時価総額 433 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近 10 年の増収ペース(年平均 15%)より遅い年 7% 台の成長を置く。業界全体が縮む中でシェアを取り続けられるかが分かれ目で、強気の中では最も起こりやすい。
中立 38% シェアを取りながら伸びるが、金利と利益率の低下が重い 利益 21 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,776 円332 億円
戸建の引渡は 1.2 倍の 470 棟になる。業界の着工は縮むが、都心回帰の需要を取る。住宅価格は年 2% の上昇で、建築費の上昇を転嫁しきれない。利益率は 6.8% に下がる。
収益物件は 1.2 倍、多摩建設のマンションは横ばい。売上は 620 億円、営業利益は 48 億円で、利益率は 7.7%。直近の 8.9% は過去最高に近く、10 年の標準とは置かない。
借入が増え、金利が 3 年で 3.5%、10 年で 4% の水準に上がる。利払いは 17 億円と今の 3 倍。純利益は 21 億円で、今の 19 億円から 1 割増にとどまる。
- ハウジング(戸建):数量 473(引渡棟数(棟))× 価格 0.94(1 棟あたりの売上(億円、名目))→ 売上 445 億円・営業利益 30 億円。数量 1.20 倍・価格 1.22 倍(名目)・営業利益率 6.8%
- アセットソリューション(収益物件・事業用地):数量 34.8(引渡件数(件))× 価格 2.68(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 93 億円・営業利益 11 億円。数量 1.20 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 12.0%
- 宿泊:数量 28.0(引渡件数(件))× 価格 0.35(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。数量 2.00 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 8.0%
- マンション(多摩建設、2026/04 から連結):数量 100(売上の数量指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.76(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 76 億円・営業利益 6 億円。数量 1.00 倍・価格 1.22 倍(名目)・営業利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.9% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.3 倍、時価総額 283 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界全体の戸建需要は細る。その中で会社は仕入力で伸びるが、金利の上昇で利払いが重くなる。最も無理のない落としどころで、確率が最大になる。
やや悲観 22% 住宅ローン金利が上がり、戸建の需要が細る 利益 5 億円 · PER 5.8 倍 · 株価時価総額 1,252 円72 億円
住宅ローン金利が上がり、戸建の引渡は 5% 減る。価格は年 1.1% しか上がらず、仕入れた用地の値下がりを引き受ける年も出る。利益率は 4.5% に下がる。
収益物件は需要が弱まり、2 割減る。借入は売上の 7 割、金利が 4.5% に上がる。利払いが 14 億円かかり、営業利益 21 億円から差し引くと、純利益は 5 億円にとどまる。
配当性向 30% では 10 年の還元が 38 億円。ROE は 3% 台に下がる。在庫の回転が落ち、資金繰りに余裕がなくなる。用地を高く仕入れた年の在庫が重荷になり、値引き販売を迫られる。
- ハウジング(戸建):数量 374(引渡棟数(棟))× 価格 0.86(1 棟あたりの売上(億円、名目))→ 売上 323 億円・営業利益 15 億円。数量 0.95 倍・価格 1.12 倍(名目)・営業利益率 4.5%
- アセットソリューション(収益物件・事業用地):数量 23.2(引渡件数(件))× 価格 2.36(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 55 億円・営業利益 4 億円。数量 0.80 倍・価格 1.10 倍(名目)・営業利益率 7.0%
- 宿泊:数量 14.0(引渡件数(件))× 価格 0.31(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.10 倍(名目)・営業利益率 3.0%
- マンション(多摩建設、2026/04 から連結):数量 80.0(売上の数量指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.68(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。数量 0.80 倍・価格 1.10 倍(名目)・営業利益率 5.0%
倍率:事業の ROE は約 3.4%、RONIC は約 6.4%、正当化 PER は約 6.8 倍。上限の 85% の 5.8 倍に置いた。ためた利益は額面未満の価値にとどまる。
確率:金利上昇と住宅価格の上昇が重なり、住宅需要が縮む。仕入れた土地の在庫の回転が落ちる。住宅分譲は 10 年に 1 度は需要の谷がある。
悲観 10% 用地の値下がりと資金の枯渇で、リーマン級の谷に落ちる 利益 −7 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 226 円13 億円
金利の急上昇と景気の後退で、戸建の販売が 3 割落ちる。用地を高く仕入れていた分は、値下げして売るしかなく、価格は今の 95% に下がる。粗利が消え、営業損益は赤字になる。
借入が売上の 7 割あり、金利は 5% に上がる。利払い 9 億円が重く、最終赤字は 7 億円。在庫の評価損で、積み上げた自己資本は今の 86 億円まで戻る。
銀行が借り換えに慎重になれば、在庫を投げ売りして資金を作る。利益で測れば会社の値打ちは小さい。売れる資産から負債を引くと、残りは約 13 億円しかない。買い手がつかない用地は、さらに安く手放すことになる。
- ハウジング(戸建):数量 276(引渡棟数(棟))× 価格 0.73(1 棟あたりの売上(億円、名目))→ 売上 202 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 倍・価格 0.95 倍(名目)・営業利益率 0.0%
- アセットソリューション(収益物件・事業用地):数量 14.5(引渡件数(件))× 価格 2.04(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。数量 0.50 倍・価格 0.95 倍(名目)・営業利益率 0.0%
- 宿泊:数量 7.0(引渡件数(件))× 価格 0.28(1 件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量 0.50 倍・価格 1.00 倍(名目)・営業利益率 -10.0%
- マンション(多摩建設、2026/04 から連結):数量 55.0(売上の数量指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.59(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。数量 0.55 倍・価格 0.95 倍(名目)・営業利益率 0.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は無い。値の下支えは売れる資産から負債を引いた約 13 億円。今の自己資本 86 億円に対して 0.151 倍として置いた。
確率:リーマン級の谷(2008〜09 年は住宅着工が 3 割減り、中堅の住宅会社が破綻した)が来る。借入が売上の 7 割で、在庫の評価損が自己資本を削るため、10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ハウジング(戸建)
東京都心から多摩エリアで用地を仕入れ、戸建住宅を建てて分譲する。戸建用地の分譲も含む。
| 数量引渡棟数(棟) | 価格1 棟あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 394 | 0.77 | 304 | 23 |
| 10 年後 中立 | 473 | 0.94 | 445 | 30 |
取り方:売上 303.7 億・394 棟(決算補足説明資料)。営業利益はセグメント別の開示が無く、全社 32.8 億を売上・粗利の比で 23.2 億に推定配分。
アセットソリューション(収益物件・事業用地)
収益マンション・木造アパート・事業用地を仕入れ、投資家や事業者に売る。
| 数量引渡件数(件) | 価格1 件あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.0 | 2.14 | 62 | 9 |
| 10 年後 中立 | 34.8 | 2.68 | 93 | 11 |
取り方:売上 62.2 億・29 件(収益マンション 7・木造アパート 6・事業用地 15・請負 1)。営業利益は推定配分 9.2 億。
宿泊
空き家などを活用した宿泊施設の開業・運営支援と分譲。
| 数量引渡件数(件) | 価格1 件あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.0 | 0.28 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 0.35 | 10 | 1 |
取り方:売上 3.9 億・14 件。営業利益は推定 0.4 億。
マンション(多摩建設、2026/04 から連結)
多摩・練馬を中心に、小規模な低層ファミリーマンション「ベルジュール」を分譲する。
| 数量売上の数量指数(直近 1 年 =100) | 価格指数 1 あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.62 | 62 | 5 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.76 | 76 | 6 |
取り方:2026/04 に子会社化した多摩建設。2025/11 期の売上 62 億円(会社資料)を 2026/03 期の連結に入れていないが、今の稼ぐ力として参考値で置く。営業利益は経常利益 5.3 億円から推定 5.0 億。
リスクと懸念
借入と金利の上昇
有利子負債は 260 億円で、時価総額を上回る。金利が 4% に上がれば利払いは 17 億円近くに膨らみ、純利益の伸びを抑える。
住宅市場の谷
リーマン後の 2009 年は着工が 3 割減り、中堅の住宅会社が破綻した。在庫の評価損と資金繰りが同時に悪化する。
在庫の評価損
販売用・仕掛の不動産は 293 億円で、総資産の 76%。用地の値段が 2 割下がれば、自己資本の 6 割が消える。
買収の統合
2026 年 4 月に約 39 億円でホーユーコーポレーション(多摩建設)を買収した。統合が進まなければ、借入だけが残る。
人手と建築費
従業員は 158 人。建築費と人件費は物価を超えて上がりやすい。売値に転嫁できなければ粗利率が落ちる。
大手との用地競争
同じ用地を飯田グループやオープンハウスが取りに来る。仕入値が上がれば利益率が下がる。
今後の分かれ目
- 住宅ローンの変動金利が 1 ポイント以上上がり、戸建の受注棟数が 2 期続けて減る
- やや悲観の確率を上げる。在庫の回転が落ちるかを見る。
- 粗利率が 17.8% の水準を保ったまま売上が 500 億円に届く
- 強気の筋書きの確率を上げる。多摩建設の統合がうまくいった証拠になる。
- 有利子負債が売上の 7 割を超え、銀行の借り換えが厳しくなる
- 悲観の確率を上げる。在庫の投げ売りの可能性が出る。
- 収益物件の引渡が減り、事業用地の売却が止まる
- アセットソリューションの利益率の前提を下げる。
- 配当性向を引き上げ、自社株買いを始める
- 成長の再投資から還元へ方針が移る。倍率の見方を見直す。
見ておくもの
- 戸建の引渡棟数と受注残
- 粗利率(17.8% の維持)
- 有利子負債と自己資本比率
- 仕入準備高の推移
- 住宅ローン金利
- 多摩建設の統合と売上への寄与
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コストを上回る事業の式(RONIC を k と ROE の中間に置く)から、上限の 85〜90% で置いた。今の株価や PER は見ていない。今の PER が 8 倍台と低いことは根拠にしていない。金利が 4% に上がる前提で、純利益を組み直した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→14.57 倍・やや楽観 PER 10.2→14.07 倍・中立 PER 9.5→13.3 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。