結論
グローバル・リンク・マネジメントは、東京でレジデンスを建て、1 棟ごと機関投資家に売る不動産会社だ。個人向けの区分販売から、機関投資家への 1 棟販売に軸を移して伸びた。2025/12 期の売上は 693 億円、営業利益は 74 億円で、自己資本利益率は 31% に達した。
筆者の結論は「適正」である。10 年後の価値は、今の時価総額とほぼ同じだ。収益の質は高いが、その高さは続かない。今の値段は、その両方を映している。
理由は 2 つある。1 つは、利益の山が続かないことだ。中立では、営業利益率は 9〜10% にとどまり、自己資本利益率は 12% 近くまで下がる。もう 1 つは、借入に頼る商売だということだ。純有利子負債は自己資本と同じ規模で、金利と融資姿勢が悪化すれば、リーマン後のように赤字へ沈む。
気になるのは、会社の成長目標だ。経常利益を 2040 年に 1,000 億円にする計画は、年率 25% の成長が前提になる。筆者はこれを置かず、物価並みの成長を中立に置いた。計画が部分的にでも実現すれば、上振れの余地はある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべき点は 3 つある。第 1 に、10 年後も事業が残るか。東京のレジデンス需要は残るが、開発という商売は景気の波が大きく、利益が毎年続くとは限らない。第 2 に、堀が広がるか。土地を入札で取り合う商売で、広がりにくい。第 3 に、稼いだお金の使い道だ。
株主のものになる利益は、純利益から在庫の増加に使うお金を引いたものだ。在庫を増やして成長する会社は、利益が出ても現金が残りにくい。この会社も、純有利子負債が自己資本と同じ規模にある。
筆者は、自己資本利益率が 31% から 12% 近くに下がる前提を置いた。この水準でも資本コストを上回るので、事業の価値は残る。
安全域は、価格が下がるときに借入が重くなる点で薄い。それでも、中立の姿でも資本コストを上回るので、今の値段は高収益の継続を前提にしていない。割安とまでは言えず、適正と見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、東京の土地でレジデンスを開発し、1 棟ごと売ることだ。開発事業は 2025/12 期に 1,147 戸を売った。買い手は機関投資家やファンドで、個人に 1 戸ずつ売るやり方ではない。2026/12 期の計画は 758 戸と、一度減らし、利益率の高い事業に重心を移す。
土地企画事業は、相続などで売りに出た土地を仕入れ、隣地とまとめて権利を整えて、開発業者に売る。完成まで 2 年かかる開発より、半年から 1 年で回収できる。2026/12 期は 25 件、売上 200 億円を計画する。
再生事業は、中古のオフィスビルやマンションを買い、改修して賃料を上げ、投資家に売る。2025/12 期の実績では、売却時の賃料が 3 割ほど上がった。2026/12 期は 9 棟、売上 160 億円の計画だ。
子会社には、AI を作る AtPeak、建物管理の G&G Community がある。2026 年 6 月には、投資顧問の SAGL アドバイザーズを完全子会社にした。運用報酬という安定した収益の入口で、貢献は次の中期経営計画以降だ。
優良さと弱いところ
この会社の良さは、買い手の機関投資家に近いことだ。仕入れの前に、買い手の希望を聞いて企画する。会社は、買い手の潜在需要が 3.3 兆円あると説明する。販売前に売れた戸数が多く、在庫の回転が速い。2026/12 期の計画 758 戸のうち、636 戸は期の途中で売買契約を済ませた。
弱いのは堀だ。他の開発業者が同じ土地を狙い、入札で価格が決まる。ブランドや技術で値段を決める力はなく、堀、つまり他社がまねできない強みは弱い。収益は、土地と建築費、売り値の差だけで決まる。
資本効率は高い。自己資本利益率は 31% で、全産業の平均を大きく上回る。ただ要因は、借入を使った回転の速さだ。純有利子負債は自己資本と同じ規模で、財務の余力が大きいわけではない。
経営と株主の関係にも目を向けたい。創業者の金大仲氏と資産管理会社 G2A が、合わせて約 48% を持つ。経営の方向は定まりやすいが、少数株主の意見は届きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京の投資用レジデンスは、機関投資家の需要が強い。賃料が上がり、物件の取得競争が激しいためだ。国内の不動産投資の年間取引は 6 兆円ほどで、そのうちレジデンスが 1 兆円。会社はこの市場で、年 1,000 戸前後を売る。
向かい風は金利だ。10 年国債が 3% へ上がれば、買い手が求める利回りも上がる。同じ賃料でも、物件の値段は下がる。建築費は人手不足で毎年 2〜3% 上がり、土地の仕入れ値も上がる。この二つが重なると、利益率は縮む。
追い風は、土地の供給不足と賃料の上昇だ。東京の相続は年 8 万件を超え、その一部が売りに出る。土地企画事業はここを狙う。
競争相手は、他の開発業者やゼネコンだ。会社は「ゼネコンが土地を仕入れて開発し、完成後に買い戻す」形も使い、貸借対照表に載せない開発を増やしている。ただこの形も、買い手がつかなければ在庫を抱える。リーマン後は、多くの開発業者が赤字や破綻に追い込まれた。市場の大きさは公表の数字に頼り、シェアは筆者が戸数と単価から推定した。
金融の側から見れば、投資用の不動産は「利回り」で値付けされる。賃料が上がっても、買い手の求める利回りが上がれば、売値は伸びない。会社の利益は、この差し引きで毎年決まる。中立では、10 年で賃料が物価並みに上がる一方、利回りの上昇が値段を押さえると置いた。
資本政策と M&A
還元は配当性向 30% の累進配当だ。2026/12 期の配当は前期より約 2 割増える計画で、配当性向は 31%。自己株の取得は、経営層への株式報酬が目的で、株主への還元は主眼ではない。
財務は、2026 年 6 月末で純資産 157 億円、有利子負債 467 億円。うち約 130 億円は、土地を売った後も貸借対照表に残る仮想の負債で、実際の利払いはない。実質の自己資本比率は 35% 前後だ。
2025 年 5 月に、大株主が株式を売り出した。需要は売り出し額の約 6 倍だった。G2A が約 34%、金大仲氏が約 14% を持つ。TOB の可能性は、kabufu の試算で 10 年以内に約 26% とある。
M&A は、投資顧問の SAGL を完全子会社にした例がある。次の中期経営計画では、AM 事業の拡大と、レジデンス以外の資産(ホテル・物流)への展開が焦点になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
買い手の機関投資家の需要は強く、会社は 3.3 兆円の潜在需要を回収し終えたと説明する。2027/12 期の販売計画は 1,280 戸で、仕入れはすでに 1,362 戸を済ませた。2028/12 期の分も 1,289 戸ある。販売の見通しが 3 年先まで立っている。
土地企画と再生は、次の柱になる。相続による土地の移動は東京で年 8 万件あり、そのうち売りに出る 1 割の土地を、ビッグデータで探す。再生事業は、改修後に賃料が 3 割上がり、買い手のつく物件を選べる。
利益率は上がっている。2025/12 期は、開発事業の粗利率が計画の 13% を大きく上回った。自己資本利益率は 31% で、資本コストの 3 倍を超える。2026/12 期は経常利益 75 億円、2027/12 期は 100 億円を計画する。
配当性向は 3 割の累進配当で、増配が続く。AM 事業の SAGL を取り込み、運用報酬という安定収益を足せる。借入は、販売前の売買契約が済んだ範囲に限られ、リスクは管理されている。
慎重な見方
不動産開発は、金利と融資に依存する。10 年国債が 3% に上がれば、買い手の取得利回りも上がり、物件の売値が下がる。同じ賃料でも、利回りが 3.5% から 4.5% に上がれば、値段は 2 割下がる。建築費は毎年 2〜3% 上がり、利益を削る。
会社の純有利子負債は、自己資本と同じ規模にある。仕入れた土地や建物を売る前に、買い手が引けば、在庫と利払いだけが残る。リーマン後の 2008 年から数年間、多くの開発業者が赤字や破綻に追い込まれた。この会社の利益は、2023 年から 3 年の好環境の産物だ。
計画の信頼性も気になる。2026/12 期は、第 2 四半期までの売上が前年同期比で 20% 減、経常利益は 36% 減だった。会社は期ずれと説明するが、通期の達成は下期に偏る。
経常利益を 2040 年に 1,000 億円にする計画は、年率 25% の成長が 14 年続く前提だ。土地は限られ、買い手の資金にも限りがある。創業者と資産管理会社が約 48% を持ち、少数株主の声は届きにくい。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の言い分が勝つ。ただ景気の波と借入への弱さでは、慎重な言い分が当たる。今の高収益が続く前提は置かず、自己資本利益率が下がる姿を中立にした。
確率は中立に 34% を置き、悲観の側にやや厚くした。結果は、中立なら 10 年後の時価総額と還元の合計が今の 2.5 倍ほどになる。ただ悲観の側が価値を削り、総合では今の値段が適正になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 6,475 円1,029 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 955 円152 億円)。 今の値に割り戻すと 3,649 円580 億円、今との差 +93.5%、 期待の年率 +14.7%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 14,134 円2,246 億円 | 1,422 円226 億円 | +724.8% | +23.5% | 1,245 円198 億円 |
| やや楽観 | 20% | 10,813 円1,718 億円 | 1,240 円197 億円 | +539.1% | +20.4% | 2,411 円383 億円 |
| 中立 | 34% | 7,941 円1,262 億円 | 1,070 円170 億円 | +377.8% | +16.9% | 3,064 円487 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,821 円289 億円 | 749 円119 億円 | +36.3% | +3.1% | 617 円98 億円 |
| 悲観 | 14% | 319 円51 億円 | 352 円56 億円 | −64.4% | −9.8% | 94 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,475 円1,029 億円 | 955 円152 億円 | +293.9% | +14.7% | 7,430 円1,180 億円 |
今の株価時価総額 1,886 円300 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 機関投資家の需要が厚いまま、土地企画と再生が柱になる 利益 105 億円 · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 14,134 円2,246 億円
首都圏のレジデンスに機関投資家の資金が入り続け、1 棟販売の値段が下がらない。会社は GLM100 の次の計画も達成し、土地企画と再生が開発に並ぶ柱になる。相続で出る土地の仕入れが仕組みとして回り、中古オフィスの買取再販は件数も 1 件あたりの額も増える。ホテルや物流など、レジデンス以外の資産にも広がる。自己資本はためた利益で厚くなり、借入に頼らず回せる。営業利益率は 11% 台に上がり、自己資本利益率は 15% 台で、資本コストを大きく上回る。レジデンスの 1 棟販売は 1,600 戸近くまで増え、会社の目標をも超える姿だ。10 年続けて金利も融資姿勢も味方になる姿で、実現するのは難しい。
- 開発事業(新築レジデンス・ホテルの 1 棟販売):数量 1,548(販売戸数(戸))× 価格 6,246(1 戸あたり平均販売額(万円)。rev_factor は 0.0001(戸 × 万円 = 万円 → 億円))→ 売上 967 億円・営業利益 92 億円。数量 1.35 倍・値段 1.28 倍、営業利益率 9.5%
- 土地企画事業:数量 41.8(販売件数(件))× 価格 6.29(1 件あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 263 億円・営業利益 50 億円。数量 1.90 倍・値段 1.85 倍、営業利益率 19.0%
- 再生事業(中古ビル・マンションの買取再販):数量 14.0(販売棟数(棟))× 価格 16(1 棟あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 227 億円・営業利益 31 億円。数量 2.00 倍・値段 1.95 倍、営業利益率 13.5%
倍率:事業の純利益 105 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 30.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 19.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.8 倍。全体の PER 19.81 倍、時価総額 2,080 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利も融資も味方で、三つの事業がそろって伸びる姿。開発不動産は景気の波が大きく、10 年続くとは考えにくい。8% にとどめた。
やや楽観 20% 会社の計画に近い形で、土地企画と再生が伸びる 利益 81 億円 · PER 19.4 倍 · 株価時価総額 10,813 円1,718 億円
レジデンスの販売は年 1,200 戸台まで増え、土地企画と再生は件数が 1.6 倍ほどになる。会社は GLM100 の経常利益 100 億円を達成し、その先も年 10% を超えて伸ばす。機関投資家の需要は続くが、金利の上昇で買い手の利回りの要求は上がり、値段の伸びは物価に届かない。営業利益率は 10% 台で、直近の山と同じ水準を保つ。自己資本は配当性向 3 割を引いても積み上がり、自己資本利益率は 14% 近い。大きな失敗がなく、計画がほぼ実現する姿だ。ホテルなどレジデンス以外の資産も少しずつ広がり、運用報酬の収益も加わる。ただし金利の上昇で、売値の伸びは物価に届かない。
- 開発事業(新築レジデンス・ホテルの 1 棟販売):数量 1,399(販売戸数(戸))× 価格 6,002(1 戸あたり平均販売額(万円)。rev_factor は 0.0001(戸 × 万円 = 万円 → 億円))→ 売上 840 億円・営業利益 71 億円。数量 1.22 倍・値段 1.23 倍、営業利益率 8.5%
- 土地企画事業:数量 36.3(販売件数(件))× 価格 5.85(1 件あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 212 億円・営業利益 38 億円。数量 1.65 倍・値段 1.72 倍、営業利益率 18.0%
- 再生事業(中古ビル・マンションの買取再販):数量 12.6(販売棟数(棟))× 価格 15(1 棟あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 190 億円・営業利益 24 億円。数量 1.80 倍・値段 1.82 倍、営業利益率 12.5%
倍率:事業の純利益 81 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.4 倍。全体の PER 19.38 倍、時価総額 1,570 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画に近く進む姿。売上と利益を伸ばしてきた実績はあるが、金利上昇と建設費の高止まりが重なるため、中立より薄く置いた。
中立 34% 戸数は横ばい、土地企画と再生が少しずつ育つ 利益 60 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 7,941 円1,262 億円
開発事業は年 1,250 戸前後で横ばいになる。東京の土地は限られ、建築費も毎年 2〜3% 上がるからだ。買い手の機関投資家は、金利上昇で利回りを上げて要求する。そのため 1 戸あたりの値段は 10 年で 1.18 倍と、物価に届かない。土地企画と再生は、件数が 1.5 倍ほどに増え、大型の案件を扱う。営業利益率は 9〜10% で、2023 年から 2025 年の水準をやや下回る。自己資本は積み上がり、自己資本利益率は 12% 近くまで下がる。資本コストは上回るが、今の 31% とは別の会社になる。会社の成長目標には届かない、現実的な姿だ。
- 開発事業(新築レジデンス・ホテルの 1 棟販売):数量 1,262(販売戸数(戸))× 価格 5,758(1 戸あたり平均販売額(万円)。rev_factor は 0.0001(戸 × 万円 = 万円 → 億円))→ 売上 727 億円・営業利益 55 億円。数量 1.10 倍・値段 1.18 倍、営業利益率 7.5%
- 土地企画事業:数量 31.9(販売件数(件))× 価格 5.44(1 件あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 174 億円・営業利益 30 億円。数量 1.45 倍・値段 1.60 倍、営業利益率 17.0%
- 再生事業(中古ビル・マンションの買取再販):数量 10.5(販売棟数(棟))× 価格 14(1 棟あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 148 億円・営業利益 16 億円。数量 1.50 倍・値段 1.70 倍、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍。全体の PER 18.78 倍、時価総額 1,127 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も確からしい姿として、最大の確率を置いた。会社の計画には届かず、直近の高収益も続かないが、事業が傾くほどでもない。
やや悲観 24% 金利上昇で買い手が引き、販売が減る 利益 24 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,821 円289 億円
金利が上がり、機関投資家の取得利回りの要求が上がる。1 棟ごとの販売価格は下がり、買い手がつくまでの期間も延びる。開発事業の戸数は 15% 減り、1 戸あたりの額もほとんど上がらない。土地企画と再生は、買い手を探す時間が延びて販売が遅れ、在庫が増える。銀行は融資姿勢を厳しくし、仕入れも絞る。営業利益率は 6% 台と、2020 年のコロナ禍に近い水準まで下がる。自己資本利益率は 6% 台と資本コストを下回り、配当性向 3 割は守るが、成長は止まる。リーマン後ほどの打撃ではないが、停滞が長く続く。会社は仕入れを絞り、在庫を減らして凌ぐ。ただ、買い手がつくまでの時間が延びた分、利払いが利益を削り続ける。
- 開発事業(新築レジデンス・ホテルの 1 棟販売):数量 975(販売戸数(戸))× 価格 5,270(1 戸あたり平均販売額(万円)。rev_factor は 0.0001(戸 × 万円 = 万円 → 億円))→ 売上 514 億円・営業利益 26 億円。数量 0.85 倍・値段 1.08 倍、営業利益率 5.0%
- 土地企画事業:数量 24.2(販売件数(件))× 価格 4.59(1 件あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 111 億円・営業利益 12 億円。数量 1.10 倍・値段 1.35 倍、営業利益率 11.0%
- 再生事業(中古ビル・マンションの買取再販):数量 7.7(販売棟数(棟))× 価格 12(1 棟あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 90 億円・営業利益 6 億円。数量 1.10 倍・値段 1.40 倍、営業利益率 7.0%
倍率:事業の自己資本利益率 6.4% は資本コストを下回る。ためた利益は額面を下回る価値になり、PER の上限は 1÷k=10.5 倍。利益が谷に近い姿として、7.5 倍に置いた。
確率:金利上昇と融資の引き締めが重なる姿。不動産開発は金利と融資に弱く、売上が借入に依存する。中立の次に厚く置いた。
悲観 14% 融資が止まり、在庫の処分に追われる 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 319 円51 億円
金利が急に上がり、銀行が不動産向けの融資を絞る。機関投資家も買い控え、1 棟ごとの販売が半分近くまで減る。在庫は売れず、利払いが重くなる。2008 年のリーマン後と同じように、仕入れた土地や建物を値引きして売るしかなくなる。営業利益はほぼゼロまで下がり、一部は減損になる。配当は減り、自己資本は取り崩される。会社は存続するが、成長企業としての評価は消える。借入に頼る商売の限界が出る 10 年だ。土地や建物の値段が下がり、銀行が貸さなくなる局面は、過去にも起きた。投資家の取得も止まり、売ろうにも買い手がいない。
- 開発事業(新築レジデンス・ホテルの 1 棟販売):数量 631(販売戸数(戸))× 価格 4,880(1 戸あたり平均販売額(万円)。rev_factor は 0.0001(戸 × 万円 = 万円 → 億円))→ 売上 308 億円・営業利益 5 億円。数量 0.55 倍・値段 1.00 倍、営業利益率 1.5%
- 土地企画事業:数量 13.2(販売件数(件))× 価格 3.74(1 件あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。数量 0.60 倍・値段 1.10 倍、営業利益率 3.0%
- 再生事業(中古ビル・マンションの買取再販):数量 4.2(販売棟数(棟))× 価格 9.13(1 棟あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1)→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。数量 0.60 倍・値段 1.10 倍、営業利益率 3.0%
倍率:事業の自己資本利益率 1% 台で、稼ぐ力は付かない。床は、2026 年 6 月末の貸借対照表の売れる資産(税後の売却額)から負債を引いた約 50 億円。今の自己資本に 0.34 倍を掛けて置いた。EV ÷ 営業利益(時価総額+純有利子負債 151 億円)でも見たが、この筋書きは営業利益がほぼ消えており、借金の重さを織り込んだ床の資産で測るのが妥当と判断した。
確率:構造的な負け:金利と融資の急な悪化で、仕入れた在庫を損して売る。借入の多さを考えると、この深さはありうるので 14% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
開発事業(新築レジデンス・ホテルの 1 棟販売)
東京の城東・城南・城西を中心に、レジデンスを企画・建築して 1 棟ごと機関投資家などに売る。ホテルも始めた。
| 数量販売戸数(戸) | 価格1 戸あたり平均販売額(万円)。rev_factor は 0.0001(戸 × 万円 = 万円 → 億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,147 | 4,880 | 560 | 53 |
| 10 年後 中立 | 1,262 | 5,758 | 727 | 55 |
取り方:開示は 2025/12 期のレジデンス販売 1,147 戸(全戸契約済み)と、2026/12 期計画の売上 390 億円・758 戸。事業別の売上は開示を確認できず、全体 692.6 億円から土地企画・再生を引いた約 560 億円を戸数で割り、1 戸あたり約 4,900 万円と置いた推定。営業利益 52.5 億円は、全体 74.4 億円を事業別の売上総利益の見込みで配った推定(売上高営業利益率 9.4%)。10 年後の値段は物価の 3% ではなく、年 1.7% 程度(10 年で 1.18 倍)と置いた。賃料が物価並みに上がっても、金利が上がれば買い手の求める利回りが上がり、売値は賃料ほど伸びない(業種ノートも単価は名目年 1〜2%)。
土地企画事業
相続などで出る都内の土地を仕入れ、隣地とまとめて権利を整え、開発業者に売る。
| 数量販売件数(件) | 価格1 件あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22.0 | 3.40 | 75 | 15 |
| 10 年後 中立 | 31.9 | 5.44 | 174 | 30 |
取り方:2025 年の販売計画は 18 件で、実績は約 22 件と置いた推定。1 件あたり約 3.4 億円で売上は約 75 億円。2026/12 期計画は 25 件・売上 200 億円で、隣地をまとめて付加価値を乗せる方針のため 1 件が大型化している。営業利益 14.5 億円は推定。
再生事業(中古ビル・マンションの買取再販)
中古のオフィスビルやマンションを買い、改修して賃料を上げ、投資家に売る。
| 数量販売棟数(棟) | 価格1 棟あたり平均販売額(億円)。rev_factor は 1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 7.0 | 8.30 | 58 | 7 |
| 10 年後 中立 | 10.5 | 14 | 148 | 16 |
取り方:2025 年は販売 7 棟の計画で、売上は約 58 億円と置いた推定(1 棟 8.3 億円)。2026/12 期計画は 9 棟・160 億円で、物件が大型化している(仕入計画も 12 棟から 10 棟に変更)。営業利益 7.4 億円は推定。
リスクと懸念
金利上昇と融資の引き締め
買い手の取得利回りが上がれば売値が下がり、銀行が不動産向けの融資を絞れば、仕入れと販売の両方が止まる。純有利子負債は自己資本と同じ規模で、影響が大きい。
利益の山が続かない
2023 年から 2025 年は、営業利益率が 9〜11% と、過去の 5〜7% を大きく上回った。この水準が続く保証はなく、中立では 9〜10% を置いた。
期ずれと販売時期
2026/12 期の第 2 四半期までの売上は前年同期比で 2 割減った。会社は期ずれと説明するが、通期の達成は下期に偏る。土地企画と再生は、買い手探しで時期がずれやすい。
建築費と人手不足
建築費は人手不足と資材高で毎年上がる。中東情勢などで納期が遅れる可能性もある。売値に転嫁できなければ、粗利が縮む。
成長目標の大きさ
2040 年に経常利益 1,000 億円という計画は、年率 25% の成長が 14 年続く前提だ。実現しなければ、期待が剥がれる。
支配株主の影響
創業者の金大仲氏と資産管理会社 G2A が約 48% を持つ。経営は安定しやすいが、少数株主の意見は届きにくく、保有株の売却や再編の動きが株価に影響する。
今後の分かれ目
- 10 年国債の利回りが 3% を超えて上がり、機関投資家の取得利回りが上がったら
- 1 戸あたりの売値の伸びを下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 銀行が不動産向けの融資を絞り、仕入れの資金調達が難しくなったら
- 販売戸数を減らし、悲観の確率を上げる。
- 2027/12 期に経常利益 100 億円を達成し、その後も維持できたら
- やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 土地企画と再生の売上が計画どおりに積み上がり、利益率が開発事業を上回ったら
- 利益率の見通しを引き上げ、倍率の上限を見直す。
- 自己資本比率が 30% を割るか、実質の有利子負債が増えたら
- 借金の重さを示す。資本コストを引き上げ、悲観の確率を上げる。
- G2A や創業者の保有株の売却、または TOB の話が出たら
- 価格はプレミアムを含みうる。本質価値は事業の稼ぐ力で測り直す。
見ておくもの
- 販売戸数と、期末までの売買契約の進捗
- 売上総利益率(開発・土地企画・再生別)
- 純有利子負債と実質自己資本比率
- 10 年国債の利回りと不動産向け融資の姿勢
- 土地企画・再生の仕入れ棟数と販売棟数
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の自己資本利益率と資本コスト 8% から式で決めた。今の株価や同業の倍率は使っていない。中立の自己資本利益率は 11.8% で、資本コストを上回る。堀は弱く(残る割合 1/3)、g は 4% まで。式の上限 11.3 倍の約 84% の 9.5 倍を置いた。数量は実質、価格は物価の 3% より低く置き、理由は金利上昇による買い手の利回りの上昇。10 年後の数字は、今と同じ形で置いている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→19.81 倍・やや楽観 PER 10→19.38 倍・中立 PER 9.5→18.78 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。