結論
山忠は愛知県を地盤に、投資用マンションや宅地の分譲、販売後の建物管理、ビジネスホテルを営む不動産会社である。筆者の結論は「割安」だ。土地を回す商売に過度の成長を求めなくても、既存の稼ぎとホテルの着実な増設を合わせれば、現在の約29億円の時価総額を上回る価値が残る。
2026年4月期の売上55億円のうち、開発が約35億円、管理・賃貸が約6億円、ホテルが約14億円を占めた。しかし営業利益では開発が約4億円、管理・賃貸が約2億円、ホテルが約3億円である。ホテルの稼働率は84.7%と高く、開発した物件の管理を受託できる仕組みもある。単なる住宅分譲会社として見ると、この利益の違いを見落とす。
最大の留保は借金だ。保有現金は約22億円あるが、有利子負債は約68億円に達し、純現金の会社ではない。ホテル建設と販売用不動産の仕入れが重なると資金需要が膨らみ、金利4%近辺への借り換えは利益を確実に削る。近年の高いROEにも不動産売却益や上場時の増資という特殊要因が混じる。
10年後の中心筋書きは、ホテルが計画どおり10店に届かなくても、7店程度で安定し、開発の利幅は細るというものだ。保守的な利益率と資本コストで5通りを評価すると、株主還元を含む現在価値はおおむね45億円、株価基準の時価総額との差は約54%となる。これは賃貸等不動産を独立の資産として調整する前の収益価値であり、含み益を無条件に足していない。借入・更新投資・経営者支配を重く見ることが、この安全域を信用する条件である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、まず10年後にも人が駅の近くに住み、建物の手入れを頼み、宿泊するかを考える。この需要は残る。だが需要が残ることと、その会社が高い利益率を守れることは違う。山忠の土地は独占ではなく、ホテルの客室も検索画面で他社と比較される。ゆえに永続する高収益企業として値を付けるより、普通の競争が続く会社として利益を数えるべきだ。
それでも見過ごせない経済性がある。マンションを販売すれば、その後の管理契約へ顧客を導ける。今の3ホテルはほぼ5日に4日は満室相当で稼いでおり、支払った建築費から営業利益を生む段階に入っている。新しい物件でも同じ稼働を再現できれば、商売の循環は以前より安定する。長期の価値は土地の帳簿ではなく、この再投資の手取り利回りに宿る。
だが、オーナー利益、つまり維持投資と資金調達の後に株主が使える現金には慎重になる。2026年は設備投資が営業キャッシュフローを上回り、ホテル新築では古い建物の減価償却より実際の現金支出が先行する。現在の借入水準のまま金利が上がれば、客室料金の値上げだけでは吸収できない局面もある。評価益のある保有不動産も、安定賃料の源と売却可能資産の両方に満額数えてはならない。
筆者が求める安全域は、2035年の10ホテル達成を前提にしないこと、開発の数量減を隠さないこと、経営者による資本配分の失敗を悲観に入れることの三つである。それでも現在の時価総額より長期の利益価値が大きい。最後に確認したいのは、利益が増えるたびに借金も増える会社なのか、それとも配当と負債圧縮へ現金を回せる会社になるのか、という一点だ。
何で稼ぐ会社か
会社の出発点は開発である。「パルティール」などの駅近投資用マンションを開発し、主に不動産販売会社へまとめて売る。「リベルタ」の宅地分譲や中古不動産の買取販売も手掛ける。2026年4月期には1K住戸126戸と、宅地やLDK住戸など39物件を販売した。引き渡しが収益計上の時点となるため、売上は年度や四半期によって揺れる。
物件を販売した後も顧客との関係を残せることが、この会社の特徴だ。ストック事業では賃料の請求回収、入居者募集、建物の清掃・維持管理を受託する。自社保有の賃貸物件に加え、名駅周辺の貸会議室「タイムオフィス」、レンタルオフィス「オフィスプラス」、家具付き短期賃貸「マンスリープラス」も運営する。自社の開発物件から管理を積み上げることで、次の受託先を探す費用が下がる。
子会社ジャストインが運営するホテルは、名古屋駅、豊橋駅、松阪駅の3館497室が2026年時点の基盤だ。駅徒歩数分の立地でビジネス客と観光客を集め、客室稼働率84.7%、平均客室単価8,301円を実現している。宿泊を売る商売なので、収益の単位は客室泊数と1泊単価である。東海太田川駅前と名古屋駅新幹線口の2館を計画し、将来は10館体制を目指している。
開発は資金を先に使い、引き渡しで一度に回収する。管理とホテルは継続するが、管理には人手、ホテルには建物の償却や更新費用が必要だ。したがって、売上の安定性と自由に使える現金の安定性は同じではない。AIエージェント代替に直接さらされる席課金ソフトや人月販売のSIはないが、賃料請求など管理事務の一部には自動化による値下げ圧力がある。
優良さと弱いところ
強みは地域での仕入れ、駅近の小規模開発、そして完成後の管理までを同じ顧客関係でつなぐことにある。土地の所有者から相談を受け、マンションを供給し、投資家に賃貸管理を提案する。この連なりは新規顧客の獲得費を抑える。しかし売却時の価格を一方的に引き上げられるほどのブランド力や独占的な供給地は確認できない。堀、つまり競争相手を遠ざける力は局所的で、広いとは言えない。
賃貸管理は一度任せると契約書類や入居者対応の引き継ぎが必要になるため、分譲より乗り換えに手間が掛かる。一方、年率の解約率や管理報酬の値上げ実績は開示されておらず、極めて強い顧客拘束力を証明する材料はない。ホテルも駅近の利点はあるが、OTAで料金を横に比較でき、全国チェーンの価格競争から逃げられない。現場と立地の価値はAIに消されにくいが、事務処理の手数料だけに厚い利益を期待しない。
2026年4月期の自己資本は約52億円で、自己資本比率は38.7%である。ところが借入は約68億円、現金を控除した純有利子負債も約47億円ある。運転資金を借りて不動産を開発する事業として一定の合理性はあるものの、利払いの上昇や棚卸資産の滞留には弱い。2025年4月期の純利益には大きな固定資産売却益があり、見かけの高いROEをそのまま将来へ延ばすべきではない。
価値を作る再投資は、販売戸数を闇雲に増やすことではなく、仕入れから引き渡しまでの期間を短くすることと、ホテル1館当たりの現金収支を守ることだ。会社は在庫回転とホテル拡大を同時に掲げる。だが土地を買わず借りる出店モデルでも、家賃という固定の約束は消えない。増分のROICが借入金利と株主資本コストを超え続けるか、開店後数年の実績で厳しく見たい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東海・中京圏の新築分譲マンション発売戸数は2025年に6,137戸、名古屋市は4,979戸であった。不動産経済研究所による東海・中京圏の事業主別供給は、プレサンスが1,680戸、オープンハウス・ディベロップメントが1,127戸、エスリードが589戸を占める。山忠の1K販売126戸を同じ市場に機械的に当てはめると約2%だが、山忠は業者への卸売りや岐阜の物件を含むため、発売戸数ベースの厳密なシェアではない。優位は規模ではなく、駅近の土地を選別して機動的に販売することにある。
市場は人口減少と建築費上昇の両側から締め付けられる。住戸の数量は10年先まで減少を想定し、名目単価の上昇も建築原価の転嫁と同義にはしない。大手が仕入れに参入すれば土地代は先に上がり、中小企業の利幅が削られる。金利上昇は住宅ローン利用者だけでなく、投資用ワンルームの購入者の要求利回りも押し上げる。
賃貸管理の対象は長く残る。2023年の名古屋市の居住中借家は約55万戸、うち民営借家は約42万戸である。山忠が中計で掲げる2027年のPM1,450戸はこの市場の0.3%程度に相当するが、実際の事業地域は市外にもまたがる。管理戸数とビルメンテナンス戸数には重複もあるため単純合算のシェアは意味がない。全国規模の日本ハウズイングや合人社計画研究所との戦いは、単価より地域の応対品質と物件獲得効率で決まる。
ホテルには別の追い風がある。名古屋市の宿泊需要は訪日客や出張客に支えられ、2024年時点の市内ホテル・旅館の客室数は約3万3,320室である。山忠の名古屋市内181室はその約0.5%にすぎず、競合はアパホテル、東横イン、ABホテルなど多数ある。ホテルが増えれば山忠の室数シェアは上がるが、競合も増床できる。2036年には客室稼働率と単価の双方を、2026年の好調より少し低い収益性で測る。
資本政策と M&A
中期経営計画「Think Backward.2030」は、2029年4月期に売上73.4億円、営業利益11.0億円、営業利益率15.0%、経常利益9.2億円を掲げる。内訳は開発売上41.1億円、ストック型32.3億円であり、ホテル5店舗の通期稼働を前提とする。2035年4月期のホテル10店舗は長期の到達目標であり、既に完成した建物の数ではない。
株主への数字の約束もある。2029年4月期は配当性向25%以上、自己資本比率38%以上、D/Eレシオ1.4倍以下に加え、EPSの2027年4月期比26%以上の成長を掲げ、株主優待は導入予定だが内容未定とした。自社株買い額や総還元性向、ROEの具体的な数値目標は示していない。配当は2024年4月期から2026年4月期まで増配を続けたが、直近の還元は利益の約2割にとどまる。今後の計画は増配の方向を示すが、強い還元規律の実証にはまだ早い。
創業経営者の山﨑恭裕氏は議決権の約70%を保有し、上位10株主で81.6%を占める。2025年の名証上場に伴う増資は財務の厚みを増したが、少数株主が不採算の買収やホテル出店を止める力は弱い。計画には不動産M&Aの可能性があるものの、大型買収を繰り返して利益率を高めた長期実績は確認できない。余剰現金の株主への戻り方は0.75で扱い、経営権支配だけを理由に0.5にはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
山忠の魅力は、不動産分譲の利益をホテルと管理という二つの継続収益へ移し始めたことにある。2026年4月期には、売上規模が開発の半分以下のホテルが3億円を超える営業利益を稼いだ。稼働率は84.7%に達し、立地の良い宿泊施設を運営する技術が数字になった。名古屋駅と豊橋駅、松阪駅の既存3館に、東海太田川と名古屋駅新幹線口の2館が加わる見通しがある。
計画は単なる希望ではない。中計には新規2館の開業時期、店舗ごとの稼働を集計したADRとRevPAR、在庫の販売期間まで数値を掲げた。開発は転売先となる不動産業者との関係を持ち、売った物件の管理契約も積み上がる。開発とホテルが同時に拡大しなくても、建物管理の手数料が毎年残る。ホテルを自社所有から土地賃借型へ移すことで初期資金を抑え、立地の選択肢も広げられる。
東海地域の宿泊市場には、国際交流と企業出張という長く続く需要がある。競争相手は多いが、駅徒歩数分の立地は動かせず、同じ値段なら便利な施設が選ばれやすい。今の時価総額29億円は自己資本約52億円より小さく、わずかな営業利益の持続だけでも株主の取得価格を説明しやすい。ただし帳簿が安いから買うのではない。仮にホテルの規模が現在の3倍超となり、管理の固定収入も倍増すれば、2036年の利益と株主還元には今の評価を大きく超える余地がある。
慎重な見方
山忠の最も脆いところは、成長投資を支える現金が十分に厚くない点だ。現金約22億円に対して有利子負債は約68億円ある。開発物件は引渡しまで現金にならず、ホテルは開業前に建築費や設備費が流出する。10年国債3%の世界では借り換え利率4%が標準になり、過去の低金利で成り立った採算がそのまま続く保証はない。
分譲需要も人口と住宅ローンに依存する。投資用マンションを仕入れた販売業者は、利回りが国債や預金に見劣りすれば仕入れを控える。名古屋にはプレサンスやオープンハウスという資本力で優る企業があり、土地を競り負ければ開発事業の数量が減る。現場の人件費と建築費は物価に連動して増え、販売価格だけが頭打ちになれば高い利益率は失われる。
ホテル10館にも注意が要る。今の3館の好稼働は既存立地の成果であり、新規出店でも同じ顧客を集められるとは限らない。土地賃借型は土地購入額を減らす半面、景気後退でも払い続ける家賃を作る。新リース会計ではその負債が見えるようになるだけで、現金の支払いは以前からあった。創業経営者の支配が強く、少数株主の立場では大型出店や買収の実行を止めにくい。競争と金利と資本配分の三重苦に陥れば、会計上の自己資本を残しても稼ぐ力は赤字に変わり得る。
どちらに重みを置いたか
実物の建物と継続する賃貸需要があるため、事業がAIだけで消滅する筋書きは考えにくい。一方、借入依存と経営者の議決権集中を無視できない。上側26%に対し、下側38%へ重みを寄せた理由は、出店が資金調達と現場運営の両方を必要とする会社固有の構造である。中立にはホテル7館にとどまる未達を既に織り込み、下振れ確率はさらに借入条件の悪化と在庫評価損が重なる場合に限った。そのうえでも10年価値は現在価格を大きく上回る。最大の不確実性はホテル増設後の投下資本利益率であり、利益の数字だけでなく建設費と借入残高を追って結論を更新する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 8,362 円105 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,183 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 4,486 円56 億円、今との差 +85.7%、 期待の年率 +16.2%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 19,899 円249 億円 | 2,553 円32 億円 | +829.7% | +28.1% | 1,572 円20 億円 |
| やや楽観 | 19% | 13,546 円170 億円 | 1,914 円24 億円 | +540.2% | +22.8% | 2,937 円37 億円 |
| 中立 | 36% | 8,735 円110 億円 | 1,236 円16 億円 | +312.9% | +16.8% | 3,590 円45 億円 |
| やや悲観 | 25% | 4,423 円55 億円 | 638 円8 億円 | +109.6% | +8.3% | 1,265 円16 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,117 円14 億円 | 279 円4 億円 | −42.2% | −5.8% | 181 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,362 円105 億円 | 1,183 円15 億円 | +295.3% | +16.2% | 9,546 円120 億円 |
今の株価時価総額 2,415 円30 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 駅近ホテル10館が成長を牽引 利益 18 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 19,899 円249 億円
ホテル展開が計画を上回る十年である。2029年の5館を予定どおり完成させた後、駅近の新規用地を確保し、2035年までに10館、約1800室へ達する。年平均稼働率86%を保ち、付帯収入を含む客室泊単価は12,700円相当に上がる。名古屋の観光と出張需要が想定以上に増え、アパホテルや東横インとの競争を避けられる立地を選べる。
分譲では、プレサンスやオープンハウスが強い市場でも小規模物件の仕入れを安定させ、年間245件の引渡しを実現する。管理の延べ契約は5800件まで積み上がる。AIエージェントは請求事務の労務費削減に使い、浮いた費用を現場サービスと顧客維持に回す。資金調達では土地の賃借方式と営業現金を組み合わせ、借入依存度を低下させる。ホテルの開業投資と建物償却を吸収しても、営業利益31億円を維持する。
- 開発(マンション・宅地等):数量 245(マンション引渡戸数+宅地区画等の販売件数(件、混合))× 価格 0.31(マンション・宅地等の1引渡件数当たり売上(億円、混合平均))→ 売上 76 億円・営業利益 9 億円。245件、平均3100万円。駅近投資用住戸の卸販路が拡大し、開発粗利を確保。
- ストック(管理・賃貸・レンタル):数量 5,800(管理契約戸数の延べ件数に相当する指標(PM+BM、重複あり))× 価格 0.00(管理契約戸数相当1件当たり年間売上(億円、賃貸・レンタル事業も包含))→ 売上 15 億円・営業利益 5 億円。延べ5800契約。現場管理・賃貸面積が増える一方、AIにより事務単価は圧縮。
- ホテル(ジャストイン):数量 565,020(年間販売済み客室泊数(室泊))× 価格 1.27(1室泊当たり宿泊・朝食等を含む平均売上(万円))→ 売上 72 億円・営業利益 17 億円。1800室×365日×86%=565020室泊。単価1.27万円、営業利益率24%。
倍率:2036年事業ROE13.15%、k8.50%、弱い堀の残存率1/3によるRONIC10.05%と長期g2.5%から、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.521倍。利益の質はkとmoatで織り込んだので上限からさらに控除しない。ホテルの新規償却・金利増を純利益に入れた。
確率:良い立地で増設を連続成功させ、稼働86%と好調を保ち、分譲も増加する複合好況なので7%に限る。
やや楽観 19% ホテル9館と管理が安定成長 利益 12 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13,546 円170 億円
開発は大手との競争を受けながらも駅近のワンルームと宅地に特化し、引渡しは年間205件へ増える。客室は2036年までに9館相当の1500室となり、平均稼働率84%を維持する。既存の名古屋・豊橋・松阪3館の運営手法を新店に移し、宿泊・朝食等を含む販売済み客室泊の平均収入は12,000円程度になる。
賃貸管理は自社開発物件の供給と第三者の受託で約5000延べ契約へ伸びる。ただしAIによる請求回収の効率化は管理料金の引き下げにもつながり、委託価格の伸びは物価3%をやや下回る。高齢化で地方の新築住宅着工は細るが、人口の集まる駅周辺へ供給を集中させる。ホテルの設備更新費と4%近辺への借り換えを払った後も、全社営業利益は22億円程度を得る。
- 開発(マンション・宅地等):数量 205(マンション引渡戸数+宅地区画等の販売件数(件、混合))× 価格 0.29(マンション・宅地等の1引渡件数当たり売上(億円、混合平均))→ 売上 59 億円・営業利益 7 億円。205件、平均2860万円。都市集中でシェアを維持。
- ストック(管理・賃貸・レンタル):数量 5,000(管理契約戸数の延べ件数に相当する指標(PM+BM、重複あり))× 価格 0.00(管理契約戸数相当1件当たり年間売上(億円、賃貸・レンタル事業も包含))→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。延べ5000契約。請求回収のAI代替で名目単価は物価以下。
- ホテル(ジャストイン):数量 459,900(年間販売済み客室泊数(室泊))× 価格 1.20(1室泊当たり宿泊・朝食等を含む平均売上(万円))→ 売上 55 億円・営業利益 12 億円。1500室×365日×84%=459900室泊。新規ホテルの償却を含む。
倍率:2036年事業ROE10.47%、k8.50%、弱い堀の残存率1/3によるRONIC9.16%と長期g2.5%から、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.116倍。利益の質はkとmoatで織り込んだので上限からさらに控除しない。ホテルの新規償却・金利増を純利益に入れた。
確率:公表済みの2館に続く追加出店が成功し、現在の高い客室稼働がほぼ続く可能性はあるが、建設資金負担を考慮して19%。
中立 36% 分譲は縮小、ホテル7館で成熟 利益 7 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8,735 円110 億円
新築分譲市場は人口減少と住宅ローン金利上昇を受けて、今より厳しくなる。競合のプレサンス、オープンハウス、エスリードに比べた規模の弱さは残り、山忠の開発引渡しは年158件へ緩やかに減る。資材費の物価上昇を単価へ転嫁しても、土地仕入れ費用が上がるため開発利益率は1桁台にとどまる。
ホテルは既存3館と発表済み2館の成功を基盤に追加出店するが、2035年10館目標は未達となり、7館・約1200室で落ち着く。2026年の高稼働率84.7%より保守的な80%を使い、年間販売客室泊数は約35万泊となる。賃貸管理は延べ4400契約まで伸びるが、AIエージェントにより事務価値が下がり、混合単価の上昇は物価を下回る。金利4%、新築分の追加償却、建物の維持更新に現金が必要で、営業利益14億円に対する純利益は7億円弱にとどまる。
- 開発(マンション・宅地等):数量 158(マンション引渡戸数+宅地区画等の販売件数(件、混合))× 価格 0.27(マンション・宅地等の1引渡件数当たり売上(億円、混合平均))→ 売上 42 億円・営業利益 4 億円。158件、平均2650万円。数量165→158で微減、価格上昇は1.24倍と物価以下。
- ストック(管理・賃貸・レンタル):数量 4,400(管理契約戸数の延べ件数に相当する指標(PM+BM、重複あり))× 価格 0.00(管理契約戸数相当1件当たり年間売上(億円、賃貸・レンタル事業も包含))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。延べ4400契約、名目の混合単価1.21倍。現場管理増を事務料金のAI値引きが一部相殺。
- ホテル(ジャストイン):数量 350,400(年間販売済み客室泊数(室泊))× 価格 1.18(1室泊当たり宿泊・朝食等を含む平均売上(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 7 億円。1200室×365日×80%=350400室泊。新館の減価償却・修繕後の営業利益率18%。
倍率:2036年ROEは6.97%でk8.5%を下回る。留保して成長しても資本コストを超えないので、ROE≤kのPER上限1÷k=11.7647倍をそのまま使用。売上成長は数量・単価、金利と新規ホテルの更新投資は純利益に計上した。
確率:中計の確定していないホテル10館達成を外し、人口減少と借入金利上昇を中心値に織り込む。下に寄せる理由:借入への依存と代表者70%の議決権集中により、追加投資を止めにくい会社固有のリスクがある。
やや悲観 25% マンション需要減と出店減速 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,423 円55 億円
名古屋圏の投資用ワンルームの販売が鈍り、開発引渡しは年115件まで減る。住宅価格が上がっても住宅ローン利用者の返済負担が重く、土地仕入れコストの上昇を売値に十分転嫁できない。開発利益率は6%まで落ち、分譲会社としての回転優位は小さくなる。
ホテルは発表済み2館が稼働した後、追加出店の計画を縮める。850室の稼働率は72%に下がり、全国チェーンの値下げに合わせて客室泊当たりの実質収入が伸び悩む。固定賃料と建築投資の償却が重なり、ホテル利益率も12%程度となる。賃貸管理は契約数を増やせるが、請求事務のAI代替で手数料単価に圧力が掛かる。年ごとの利益減少を踏まえ配当も縮小し、資本効率は大きく下がる。
- 開発(マンション・宅地等):数量 115(マンション引渡戸数+宅地区画等の販売件数(件、混合))× 価格 0.25(マンション・宅地等の1引渡件数当たり売上(億円、混合平均))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。115件、平均2470万円。仕入れ負担と値引きで利幅を圧迫。
- ストック(管理・賃貸・レンタル):数量 3,800(管理契約戸数の延べ件数に相当する指標(PM+BM、重複あり))× 価格 0.00(管理契約戸数相当1件当たり年間売上(億円、賃貸・レンタル事業も包含))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。延べ3800契約。契約は残っても事務手数料の伸びは鈍い。
- ホテル(ジャストイン):数量 223,380(年間販売済み客室泊数(室泊))× 価格 1.04(1室泊当たり宿泊・朝食等を含む平均売上(万円))→ 売上 23 億円・営業利益 3 億円。850室×365日×72%=223380室泊。家賃の固定費が重い。
倍率:2036年ROEは2.36%でk8.5%を大きく下回る。稼ぐ力の上限1÷k=11.76倍に対し、分譲の買い手が縮む場合の短い超過利益寿命を考えPER10.0倍とする。収益価値19億円はストレス時の現有資産の税後換価額14億円を上回る。
確率:開発用地価格と住宅ローン金利が同時に上がり、ホテルの稼働も下がる場合は十分考えられるため25%。
悲観 13% 在庫評価損とホテル不振の複合危機 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,117 円14 億円
住宅ローン金利の上昇と名古屋圏の人口構成変化が重なり、投資用マンションの卸先が仕入れを減らす。引渡しは72件まで減り、滞留した分譲在庫を値引きして売るため開発は赤字になる。銀行の融資枠も絞られ、土地仕入れの再開に時間が掛かる。管理受託ではビル清掃は残るが、解約と手数料引き下げで延べ契約数は2700件へ減る。
ホテルは新規投資が十分に回収できず、保有・賃借物件の一部を整理して630室相当まで縮む。稼働率61%では家賃と人件費を賄えず、旅館営業でも損失が出る。全社の営業赤字に借入利息が重なり、純損失は年3億円程度となる。在庫や建物に12億円の減損を加え、自己資本は約49億円に目減りする。金融債務を返済して残る資産の税後換価額しか信じられず、収益力による恒久価値は認めない。
- 開発(マンション・宅地等):数量 72.0(マンション引渡戸数+宅地区画等の販売件数(件、混合))× 価格 0.23(マンション・宅地等の1引渡件数当たり売上(億円、混合平均))→ 売上 16 億円・営業利益 −1 億円。72件、平均2260万円。売れ残りの投げ売りで営業赤字。
- ストック(管理・賃貸・レンタル):数量 2,700(管理契約戸数の延べ件数に相当する指標(PM+BM、重複あり))× 価格 0.00(管理契約戸数相当1件当たり年間売上(億円、賃貸・レンタル事業も包含))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。延べ2700契約。管理事務にAI代替、現場の維持費は残る。
- ホテル(ジャストイン):数量 140,270(年間販売済み客室泊数(室泊))× 価格 0.95(1室泊当たり宿泊・朝食等を含む平均売上(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 −1 億円。630室×365日×61%≒140270室泊。固定家賃で赤字。
倍率:2036年に在庫・ホテル建物の減損12億円を反映して自己資本は48.6億円。継続損失3億円のため稼ぐ力による値付けはしない。PBR0.2881倍×減損後自己資本48.6億円≒14億円で、これは現有の現金・売れる資産の税後回収額14億円に一致する。過去PBRの安値ではない。
確率:開発の構造的な負け、ホテル損失、融資枠の縮小が重なる厳しいケース。現物資産は残るため全損ではないが13%を排除しない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
開発(マンション・宅地等)
名古屋圏の投資用1Kマンション、居住用住戸、宅地の分譲と不動産売買仲介。業者への一括販売が多く、引渡し時に売上を認識する。
| 数量マンション引渡戸数+宅地区画等の販売件数(件、混合) | 価格マンション・宅地等の1引渡件数当たり売上(億円、混合平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 165 | 0.21 | 35 | 4 |
| 10 年後 中立 | 158 | 0.27 | 42 | 4 |
取り方:2026年4月期有報の事業別実績:1Kタイプ126戸(名西7、高畑アネックス18、笠寺64、八田26、岐阜11)、ソリューション事業のLDK・宅地・買取販売39物件を合算して165引渡件数。開発売上35.35829億円÷165=0.21429億円/件。1Kマンション1戸と宅地区画・中古物件は同一単価ではなく、区分別売上・実単価は非開示。成約件数ベースの混合平均であり、将来は物件構成による平均単価の変化を含める。東海・中京圏の2025年マンション供給6137戸と直接同じ母集団ではない。
ストック(管理・賃貸・レンタル)
PM/BMの管理受託、建物・賃貸スペースの賃料、貸会議室、レンタルオフィス、短期賃貸を含む。賃貸管理の事務は一部自動化されるが、清掃と修繕は現場業務。
| 数量管理契約戸数の延べ件数に相当する指標(PM+BM、重複あり) | 価格管理契約戸数相当1件当たり年間売上(億円、賃貸・レンタル事業も包含) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 3,100 | 0.00 | 6 | 2 |
| 10 年後 中立 | 4,400 | 0.00 | 10 | 3 |
取り方:中計の2027年4月期KPIはPM1450戸・BM1800戸、2029年PM1630戸・BM1920戸。FY2026の期末戸数は不開示のため、2027予想より少し低いPM1350戸+BM1750戸=3100延べ契約と推定した(同一物件で重複するため実戸数ではない)。有報の売上の内訳は受託管理3.53475億円、貸会議室・自社保有物件賃貸など2.35675億円。全売上5.8915億円÷3100で年約19万円相当。賃貸収入も分子に入るため実際のPM管理料単価を意味しない。管理の事務部分にはAI自動化の値引きを織り込み、数量成長の主因は新築供給を受けた物理管理戸数増加とする。
ホテル(ジャストイン)
名古屋駅、豊橋駅、松阪駅の3館497室を運営し、宿泊・朝食等の収益を得る。中期計画では新規2館と2035年の10館を目指す。
| 数量年間販売済み客室泊数(室泊) | 価格1室泊当たり宿泊・朝食等を含む平均売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 153,650 | 0.89 | 14 | 3 |
| 10 年後 中立 | 350,400 | 1.18 | 41 | 7 |
取り方:2026年有報の実績として客室単価8301円・稼働率84.7%、中計記載の既存客室181+171+145=497室。年間販売客室泊=497×365日×84.7%=153,650泊(各店の稼働を同率とする推定)。ホテル売上13.74326億円÷153,650泊=約8944円/泊で、ADR8301円との差額は朝食等の付帯売上や集計定義・加重の相違を含む。将来も室数×稼働率で数量を、物価と顧客単価で価格を置く。
リスクと懸念
金利4%と借入条件の悪化
販売用不動産の仕入れとホテルの建設を借入で先行させる構造にあり、2026年4月期末の有利子負債は約68億円に達する。低金利下の借入が国債3%、民間借入4%程度で更新されれば利払いが増える。財務制限条項のある借入も存在し、在庫が売れない時に借入枠まで絞られれば新規開発と配当の両方が止まり得る。
投資用マンション需要と業者販路
「パルティール」の1K物件は最終顧客に直接売るだけでなく、不動産業者向けの卸売りに依存する。投資家のローン金利が上がると購入利回りの魅力が薄れ、業者が仕入れを絞る。プレサンスやオープンハウスとの土地取得競争が重なれば、販売数量と粗利率が同時に落ち、在庫の評価損も発生し得る。
ホテル出店、賃貸借の固定費と更新投資
2035年の10館計画に対し、2026年時点の営業は3館にすぎない。新規出店地でも84.7%の稼働を再現できる保証はなく、土地を保有せず借りる方式では、売上が落ちても地代や建物賃料が残る。新リース基準の適用は負債の見せ方を変えるだけであり、改装費と老朽設備の更新は引き続き現金流出となる。
含み益と担保資産の二重評価
賃貸等不動産は簿価約24億円に対し会社算定時価約46億円で、税前含み益がある。ただし賃貸損益は年約1億円と時価に対する利回りが低く、金利3%の世界で会社評価額のまま現金化できるとは限らない。これらの土地・建物には金融機関の担保も付されており、含み益を利益価値に重ねて満額足すのは誤りになる。
創業経営者の議決権集中
創業経営者が議決権約70%を握り、経営方針と配当の最終的な決定権は強く集中している。大幅増配の実績はあるが、上場からの期間は短く、余剰資産が少数株主に確実に還元される証拠にはまだならない。店舗買収や不採算物件への追加投資を抑制する仕組みが十分に機能するか、独立社外役員の監督も含めて注視したい。
AIエージェント代替による管理事務の単価下落
賃料請求、入金確認、募集資料作成や賃借人対応の定型部分はAIエージェントで省力化できる。山忠は席課金SaaSや人月売りのSI企業ではなく、物件管理は現場の修繕・清掃も伴うため事業全部の消滅は想定しない。しかし事務の手数料率には値下げ圧力が及び、管理戸数が伸びても契約1件当たりの実質収入は物価ほど増えないおそれがある。
東海集中と自然災害・規制
開発とホテルの多くは愛知・三重・岐阜の狭い地域に集中する。名古屋駅周辺の宿泊需要やマンション投資市況が同時に冷えれば、事業間で十分に相殺できない。地震や浸水、食品衛生事故、旅館業法・マンション管理規制への対応が資産の損傷や営業停止につながる場合もある。
今後の分かれ目
- 2029年4月期にホテル5館通期稼働、売上73.4億円、営業利益11億円を達成したら
- ホテルの稼働と新規出店費の回収が立証され、やや楽観への確率を上げる。借入残高が同時に抑制されていることを条件とする。
- 2029年4月期にD/E比率1.4倍以下、自己資本比率38%以上、配当性向25%以上を同時に実現したら
- 資本配分の約束が実績になったとして、余剰資金の戻り方と資本コストの質的な評価を見直す。
- 新規ホテルの開業後12か月の稼働率が80%を下回り、RevPARも会社目標を割ったら
- ホテルの売上数量と利益率を下げ、10館への拡大前提を縮小する。建設費と賃借料が残るため慎重側を厚くする。
- パルティールの1K引渡件数が100戸を割り、販売期間も計画の9.5か月に縮まらなかったら
- 市場の縮小より速いシェア低下と在庫滞留を疑い、開発売上・利幅と床の在庫換価率を下げる。
- 有利子負債が100億円を超え、利払い増加で経常利益率が10%を下回ったら
- ホテル増設の利益を金融費用が食っていると判断し、増分ROICの前提を引き下げる。
- PM管理戸数が2029年の1630戸を超えて伸び、管理料収入も増え続けたら
- 分譲後の受託継続が有効と判断し、管理事業の長期売上と安定利益を引き上げる。ただしAIによる事務料率の下落は別に点検する。
- 賃貸等不動産の売却で税後の手取りが確認され、借入圧縮か増配に充てられたら
- 未実現の評価益が現金と株主還元に変わった分のみ別途価値に加え、賃貸損益と土地価値を重複計上しない。
見ておくもの
- ジャストイン既存3館と新規2館の稼働率、ADR、RevPAR、開業時期
- 会社の2029年4月期ホテル売上24.5億円、開発売上41.1億円、全社営業利益11.0億円の達成度
- 不動産販売の1K引渡戸数、LDKと宅地区画の契約数、竣工後の販売期間
- PMとBMの管理戸数、解約率の開示、戸当たり手数料
- 有利子負債、支払利息、営業キャッシュフロー、設備投資額、契約上の賃借料
- 販売用・仕掛販売用不動産の残高と評価損、金融機関の財務制限条項
- 配当性向25%目標の達成と、自社株買い・株式希薄化の有無
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額29.05億円や過去のPER、PBRを将来倍率の起点にしていない。10年後の収入は開発の引渡し165件、PM/BMの延べ管理契約3100、ホテル497室の84.7%稼働を基点に、数量と名目価格を別々に積んだ。物価年3%は単価側のみ。資本コスト8.5%、長期名目成長2.5%、弱い堀による新規投資の超過利益残存3分の1から正当化PERを算出し、資本コスト以下のROEは1÷kを上限とする。賃貸物件の帳簿外含み益は利息・賃料と二重に足さず、悲観は換価後の床14億円で検算した。新リース会計で家賃がBSに載っても、2036年の利益は従来どおり家賃を費用とする比較可能な形とした。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。