結論
サンフロンティア不動産は、東京都心の中小型オフィスビルを買い、直して、売る会社だ。筆者の結論は「やや割安」である。稼ぎの柱がビル再生の売却益だけでなく、管理・仲介の安定収入とホテル運営にも分かれているからだ。
中心は、古いビルを買って満室にし、ファンドや資産家に売るリプランニング事業である。この売却益は景気で振れる。2009年3月期には大きな赤字を出した。ただ、管理・仲介・貸会議室の安定収入が営業利益の4分の1ほどを支える。2021年3月期の落ち込みでも赤字にはならなかった。
追い風は、2026年に伊藤忠商事が20%を出資したことだ。50億円を超える大型物件が持ち込まれ、売却先のリートも決まった。仕入れは年900億円の計画まで増える。
懸念は借金だ。在庫を積むため、有利子負債は1,300億円を超えた。金利が上がれば利払いが重くなる。売却時の利回りが3%台前半と薄いことも気がかりだ。
それでも、利払いの増加とビル価格の伸び悩みを織り込んで測ると、確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額を2割強上回る。悲観の筋書きでも、売れる資産で自己資本の7割ほどは残るとみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を永く持ちたいかと問えば、答えは「条件付きで、はい」だ。
評価する点は、事業が単純で、儲けの源が見えることだ。安く買って早く直し、利益を乗せて売る。管理と仲介が情報を運び、リスクを下げる。2021年3月期の落ち込みでも黒字を保った。
ただし、持ち続けて価値が増える事業ではない。ビルを売るたびに、新しいビルを買わないと利益が続かない。在庫を増やし続けるには借金を増やす必要がある。稼いだ利益が株主の手元に残らず、在庫に変わる点は、オーナー利益の見方では割り引く。
筆者がいちばん気にしているのは、金利と売却時の利回りだ。国債が3%の世界で、売却時の利回りが3%台前半では余裕が薄い。仕入れで十分な粗利益率を確保する規律が、この会社の安全域である。
伊藤忠という大株主の存在は安心材料だ。ただ、経営者が資本を割高な時に使っていないかは、今後も見る必要がある。安全域として、悲観でも資産の売却で自己資本の7割を確保できる点を重く見る。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく4つに分かれる。稼ぎの約7割を占める不動産再生事業、安定収入の不動産サービス事業、成長中のホテル・観光事業、そして建設とベトナムのその他事業だ。
不動産再生の中心はリプランニングである。稼働率の低い都心の中小型ビルを買い、内装や設備を改めて満室にし、富裕層・ファンド・事業会社に売る。入居者が使いやすい「セットアップオフィス」、つまり受付や会議ブースを備えて貸し出す形が得意技だ。新築ビルや小口の投資商品、レジデンスの開発も広げている。買ったビルの一部は、売るまで賃貸ビルとして保有して賃料を得る。
不動産サービスは、仲介、ビル管理(563棟受託)、メンテナンス、滞納賃料保証、貸会議室からなる。再生事業で買うビルの情報も、売る先も、この部門の網から入ってくる。ここが社内の情報の入り口になっている点が、他社にまねしにくい。
ホテル・観光は、温泉地や地方都市に自社でホテルを建て、運営する。39ホテル・4,227室(2026年6月末)まで増え、今期は9ホテルが開業する。
その他では、2025年に買収した窓・内装の大竹建窓ホールディングスの工事と、ベトナム・ダナンのマンション開発を手がける。2026年7月には、首都圏67店の賃貸仲介を持つアエラスも子会社にした。
優良さと弱いところ
筆者が評価する堀は、情報網と運営力の組み合わせだ。ビルを安く買うには、売り物が出る前に知る必要がある。管理棟数(563棟)や仲介の営業所が、その入口になる。買ったあとも、自前の管理と仲介で早く満室にできる。事業の期間は新築を除いて平均508日と短く、資金が早く回る。
仕入れの規律も評価できる。2〜3年後の賃料を今の水準で見積もり、粗利益率が25〜30%に収まる値段から逆算して買う。賃料が上がる前提で高値をつかまない姿勢は、バリュー投資家の目に好ましい。
弱みは三つある。第一に、価格を決める力は弱い。買値も売値も市場に従う。第二に、参入の壁が低い。ヒューリックやトーセイ、ファンドも同じビルを狙う。第三に、利益の質だ。売却益は景気の波を受け、2009年3月期は経常で約180億円の赤字になった。
資本の使い方はこれまで堅実だった。ROEは過去10年の中央値で14%台と、中小型の再生会社としては高い。ただ、これは借金を増やして在庫を回した結果でもある。今後は在庫の積み増しと金利上昇が重なるので、高いROEが続くとは見ない。経営の収益計画は、過去の中計を完遂してきた実績がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
都心の中小型オフィス市場は、いま売り手に有利だ。都心5区の空室率は2%を下回り、募集中のビルが足りない。賃料は上がっている。新築を作るコストも2割ほど上がった水準が定着し、新築の供給は絞られる。古いビルを直して貸す再生事業には追い風である。
一方で、この追い風は価格にも出ている。再生したビルの売却時の利回りは約3.2%と低い。10年国債が3%に届く世界では、ビルの利回りも上がる圧力を受ける。利回りが上がれば売値は下がる。賃料が3%の物価で上がっても、売値の伸びは物価より小さくなりうる。筆者は、中立でビルの売値は10年で1.25倍と、物価の1.34倍より低く見る。
競合は、大手と同業に分かれる。ヒューリックは資金力で大型を取り、平和不動産やトーセイは同じ中小型を狙う。ファンドや海外の投資家も入る。ただ、情報の早さと再生の工期の短さで、サンフロンティアは対抗できている。
ホテルは別の市場だ。訪日客の増加が地方にも波及し、2025年の訪日客数は過去最高を更新した。ただ、同社の新設は地方のビジネス立地が多く、単価は伸びにくい。
不動産は金融の影響を強く受ける。金利上昇で出口が細れば、回転が止まる。2008〜2009年には再生型の会社の多くが資金繰りに苦しんだ。
資本政策と M&A
資本政策は、2026年に大きく変わった。伊藤忠商事が子会社を通じてTOB(公開買付け)と第三者割当増資で20.05%を取得し、増資で約134億円が入った。伊藤忠は、既存ビルの改修を新しい収益源にしたい。サンフロンティアは、資金・情報・資材の調達力を得る。両者の狙いは合っている。
この提携は、仕入れにすぐ出た。50億円を超える大型案件が複数持ち込まれ、100億円規模も視野に入る。売り先として伊藤忠系のリートに物件を協議する覚書も結んだ。仕入れは26/3期の600億円超から、27/3期は900億円を目指す。
株主還元は控えめだ。配当性向は23〜26%で、自社株買いはしていない。増資や2023年発行の転換社債による株の増加(希薄化)を、会社も課題に挙げる。利益を在庫に回して成長を優先する姿勢だ。
M&Aは本業の周辺で続く。大竹建窓、アエラスはいずれも小型で、短期の利益寄与は小さい。20%の出資者が現れたことで、完全子会社化などのTOBの可能性は下がり、資本関係は安定した。
点検済み(2026-10-19):起点の売却益の山・株数(伊藤忠増資後、転換社債は転換済み)・利回りの上昇を確かめた。中立の営業利益率は今より低く、穴なし。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
サンフロンティアの優位は、情報網と速さにある。管理棟数は563棟まで増え、仲介の営業所も都心に13か所ある。売り物件の情報が真っ先に入り、買ったビルを早く満室にできる。新築を除く平均事業期間は508日と、資金の回転は速い。
伊藤忠商事の20%出資は、この優位に資金と案件を足した。50億円超の大型案件が複数持ち込まれ、売却先のリートも決まった。これまで50億円規模が中心だった案件が、100億円規模へ広がる。仕入れ目標は900億円で、すでに496億円まで進んだ。在庫の含み益は、会社の見込みで762〜1,002億円ある。
都心オフィスは空室率が2%を下回り、募集物件が足りない。賃料は上がり、新築のコストは高止まりで、古いビルの価値は上がり続ける。ホテルは9棟の開業が控え、客室数は2倍になる。
さらに、管理と仲介は景気に左右されず、貸会議室の固定客は売上の8割を占める。ここが利益の下支えになり、再生事業の回転が一時止まっても会社を守る。経営は2026年5月に中計を上方修正した。長期ビジョンの2035年3月期、売上3,000億円・経常600億円は、前倒しも見えてきた。
慎重な見方
この事業は、買って売るたびに利益を作り直す必要がある。売却益は利益の7割近くを占め、景気で振れる。2009年3月期は約180億円の赤字、2021年3月期は営業利益が半減した。今回も、金利が上がれば出口が細る。
いま売却時の利回りは約3.2%だ。10年国債が3%になる世界で、この水準が続くとは考えにくい。利回りが4%に上がれば、同じ賃料でも売値は2割ほど下がる。仕入れで稼ぐ粗利益が消える。
借金も増えている。有利子負債は1,300億円を超え、1Qだけで126億円増えた。在庫は2,300億円規模まで積む計画だ。借り換えのたびに金利が上がり、利払いは増える。回転が止まれば、在庫は売れない資産に変わる。
伊藤忠の出資は安心材料だが、大型案件は競争が激しく、利回りが低い。100億円規模のビルは、ヒューリックやファンドも狙う。ホテルも地方のビジネス立地が多く、単価が上がりにくい。
配当性向は2割台で、株主に返す割合も低い。増資や転換社債で株は増え、1株当たりの利益は伸びが鈍る。仕入れの規律が緩むと、不良在庫になりやすい。
どちらに重みを置いたか
強気の見方が優勢だが、悲観を軽く見ない。情報網・管理の安定収入・伊藤忠の出資は、事業の質を下支えする。他方、売却益の波と借金の増加は、10年のどこかで利益を傷つけうる。中立に最も厚い確率(35%)を置き、悲観を12%とやや厚めにした。悲観は構造的に負ける筋書きで、仕入れ競争と利回りの上昇で再生の利益が消える形だ。楽観は、伊藤忠との連携が大型化と速い回転につながる形で8%にとどめた。ビル再生は景気の影響を強く受ける。この点を考え、確率を悲観側へやや寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,889 円3,370 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,002 円573 億円)。 今の値に割り戻すと 3,556 円2,034 億円、今との差 +65.7%、 期待の年率 +12.4%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,460 円7,129 億円 | 1,456 円833 億円 | +548.5% | +20.6% | 1,113 円637 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,820 円5,047 億円 | 1,250 円715 億円 | +369.2% | +16.7% | 2,215 円1,268 億円 |
| 中立 | 35% | 6,451 円3,691 億円 | 1,082 円619 億円 | +251.0% | +13.4% | 2,636 円1,508 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,153 円1,232 億円 | 827 円473 億円 | +38.8% | +3.3% | 685 円392 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,660 円950 億円 | 350 円200 億円 | −6.3% | −0.7% | 241 円138 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,889 円3,370 億円 | 1,002 円573 億円 | +221.1% | +12.4% | 6,892 円3,943 億円 |
今の株価時価総額 2,146 円1,228 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 伊藤忠との連携で大型化が進み、長期ビジョンを前倒しで達成 利益 414 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 12,460 円7,129 億円
伊藤忠商事の網を通じて、100億円規模のビルを毎年取れるようになる。売却先の伊藤忠系リートも安定して物件を受け入れ、再生事業の回転は速いまま、売却額の大型化で利益が積み上がる。売却時の利回りは大きく上がらず、ビルの売値は賃料の上昇とともに10年で4割強伸びる。
ホテルは地方で9,500室まで増え、稼働率が安定する。賃貸住宅仲介のアエラスは再生事業の出口にもなり、レジデンシャル(居住用不動産)が第4の柱に育つ。管理棟数は900棟に迫り、貸会議室も拠点が増える。
経営は長期ビジョンの前倒しを実現し、2036年3月期の売上は3,000億円を超える。借金は増えるが、利益の伸びがこれを上回る。配当性向は3割程度で、伊藤忠との提携が安定した成長の背骨になる。
- リプランニング事業(中小型ビルの再生・売却):数量 36.0(年間の売却件数(件))× 価格 49(1 件当たりの売却額(億円、名目))→ 売上 1,762 億円・営業利益 476 億円。件+80%・売値+45%
- 賃貸ビル事業:数量 90.0(賃貸中の保有ビルの数(棟))× 価格 1.83(1 棟当たりの年間賃料収入(億円、名目))→ 売上 164 億円・営業利益 63 億円。棟+64%・賃料+34%
- 不動産サービス事業(管理・仲介・貸会議室):数量 900(管理受託棟数(棟。仲介・会議室など他の収益も含めた規模の目安))× 価格 0.41(管理 1 棟当たりのサービス売上(億円、名目。仲介・会議室を含む))→ 売上 367 億円・営業利益 173 億円。管理+61%・単価+40%
- ホテル・観光事業:数量 9,500(運営客室数(室、期末))× 価格 0.07(1 室当たりの年間売上(億円、名目。宿泊単価×稼働率に飲食等を含む))→ 売上 679 億円・営業利益 136 億円。客室+156%・単価+40%
- その他(建設・ベトナム):数量 1,100(工事・開発の受注件数(件))× 価格 0.13(1 件当たりの売上(億円、名目))→ 売上 139 億円・営業利益 15 億円。件+69%・単価+40%
倍率:事業の純利益 414 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.22 倍、時価総額 7,129 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:伊藤忠との連携で大型化が進み、売却先も確保できたうえ、利回りが上がらず、ホテルも計画どおりに開業する。条件が重なるので確率は抑えた。
やや楽観 22% 大型案件とホテルの積み増しが重なり、計画に近い成長 利益 317 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 8,820 円5,047 億円
仕入れは年900億円の水準を保ち、50億円超の大型案件が毎年複数成約する。再生事業の売却件数は10年で6割増え、ビルの売値は物価並みの1.34倍まで上がる。売却時の利回りは緩やかに上がるが、賃料の上昇が吸収する。
ホテルは8,600室まで増える。新規の立地は地方のビジネス需要が多く、客室単価の伸びは物価より小さい。管理は800棟を超え、貸会議室は固定客に支えられる。大竹建窓やアエラスなどのM&Aも、小さな追加の利益になる。
利益は中計の水準に近い形で積み上がるが、金利上昇による利払いの増加で、利益率は今より少し低い。会社の目標(2028年3月期の経常300億円)は、遅れながらも達成する。
- リプランニング事業(中小型ビルの再生・売却):数量 32.0(年間の売却件数(件))× 価格 45(1 件当たりの売却額(億円、名目))→ 売上 1,447 億円・営業利益 369 億円。件+60%・売値+34%
- 賃貸ビル事業:数量 80.0(賃貸中の保有ビルの数(棟))× 価格 1.83(1 棟当たりの年間賃料収入(億円、名目))→ 売上 146 億円・営業利益 55 億円。棟+45%・賃料+34%
- 不動産サービス事業(管理・仲介・貸会議室):数量 820(管理受託棟数(棟。仲介・会議室など他の収益も含めた規模の目安))× 価格 0.40(管理 1 棟当たりのサービス売上(億円、名目。仲介・会議室を含む))→ 売上 328 億円・営業利益 152 億円。管理+47%・単価+37%
- ホテル・観光事業:数量 8,600(運営客室数(室、期末))× 価格 0.07(1 室当たりの年間売上(億円、名目。宿泊単価×稼働率に飲食等を含む))→ 売上 571 億円・営業利益 109 億円。客室+132%・単価+30%
- その他(建設・ベトナム):数量 1,000(工事・開発の受注件数(件))× 価格 0.12(1 件当たりの売上(億円、名目))→ 売上 124 億円・営業利益 12 億円。件+54%・単価+37%
倍率:事業の純利益 317 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.92 倍、時価総額 5,047 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:仕入れ 900 億円の達成と大型案件の成約が見込め、過去の中計を完遂してきた実績もある。ただし利回りの上昇で売値の伸びは物価より小さく見るので、楽観とは分けた。
中立 35% 再生の売却益は堅調だが、利回りの上昇で伸びは物価並みに落ち着く 利益 243 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 6,451 円3,691 億円
仕入れ増と伊藤忠との連携で再生事業は伸びるが、売却時の利回りは緩やかに上がる。ビルの売値は10年で1.25倍にとどまり、賃料の上昇ほどは伸びない。売却件数は10年で4割増え、利益率は今の26%から24%に下がる。
管理・仲介は着実に伸び、管理棟数は750棟になる。ホテルは7,600室まで増え、新規が地方のビジネス立地に偏るため、単価は物価より低い伸びにとどまる。大竹建窓やアエラスは、小さな上乗せにとどまる。
在庫を積むための借金は2,500億円まで増え、借り換えの金利で利払いが大きく増える。営業利益は450億円規模、純利益は240億円ほどで、ROEは9%ほどに下がる。会社の長期ビジョンには届かないが、再生と管理の組み合わせは10年後も機能している。
- リプランニング事業(中小型ビルの再生・売却):数量 28.0(年間の売却件数(件))× 価格 42(1 件当たりの売却額(億円、名目))→ 売上 1,181 億円・営業利益 284 億円。件+40%・売値+25%・利益率24%
- 賃貸ビル事業:数量 72.0(賃貸中の保有ビルの数(棟))× 価格 1.83(1 棟当たりの年間賃料収入(億円、名目))→ 売上 132 億円・営業利益 49 億円。棟+31%・賃料+34%
- 不動産サービス事業(管理・仲介・貸会議室):数量 750(管理受託棟数(棟。仲介・会議室など他の収益も含めた規模の目安))× 価格 0.39(管理 1 棟当たりのサービス売上(億円、名目。仲介・会議室を含む))→ 売上 293 億円・営業利益 135 億円。管理+34%・単価+34%
- ホテル・観光事業:数量 7,600(運営客室数(室、期末))× 価格 0.06(1 室当たりの年間売上(億円、名目。宿泊単価×稼働率に飲食等を含む))→ 売上 485 億円・営業利益 87 億円。客室+105%・単価+25%
- その他(建設・ベトナム):数量 900(工事・開発の受注件数(件))× 価格 0.12(1 件当たりの売上(億円、名目))→ 売上 109 億円・営業利益 10 億円。件+38%・単価+34%
倍率:事業の純利益 243 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.86 倍、時価総額 3,611 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再生の仕入れと売却が回り、ホテルも増えるが、利回りは緩やかに上がり、金利負担も増える筋書き。領域の物差し(中立 32〜36%)の中央付近に置いた。
やや悲観 23% 利回りの上昇と金利負担で再生の利益が細り、ホテルも伸び悩む 利益 115 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 2,153 円1,232 億円
売却時の利回りが上がり、ビルの売値は10年で1.1倍までしか伸びない。再生事業は仕入れを抑え、売却件数は10%強の増加にとどまる。粗利益率は19%まで落ち、売却益は景気の谷でさらに減る。
ホテルは6,300室で開業のペースが鈍り、単価も地方のビジネス需要の弱さで伸びない。管理や仲介は堅調で、安定収入として全体を支える。M&Aは小粒で、採算の悪いものも出る。
借金は2,000億円規模まで増え、金利負担が営業利益の3割近くを食う。純利益は115億円と今の7割にとどまり、ROEは5%まで下がる。成長企業という評価は後退するが、財務の安全性は保たれ、赤字にはならない。
- リプランニング事業(中小型ビルの再生・売却):数量 22.0(年間の売却件数(件))× 価格 37(1 件当たりの売却額(億円、名目))→ 売上 817 億円・営業利益 155 億円。件+10%・売値+10%・利益率19%
- 賃貸ビル事業:数量 62.0(賃貸中の保有ビルの数(棟))× 価格 1.75(1 棟当たりの年間賃料収入(億円、名目))→ 売上 108 億円・営業利益 36 億円。棟+13%・賃料+28%
- 不動産サービス事業(管理・仲介・貸会議室):数量 650(管理受託棟数(棟。仲介・会議室など他の収益も含めた規模の目安))× 価格 0.38(管理 1 棟当たりのサービス売上(億円、名目。仲介・会議室を含む))→ 売上 246 億円・営業利益 106 億円。管理+16%・単価+30%
- ホテル・観光事業:数量 6,300(運営客室数(室、期末))× 価格 0.06(1 室当たりの年間売上(億円、名目。宿泊単価×稼働率に飲食等を含む))→ 売上 370 億円・営業利益 52 億円。客室+70%・単価+15%
- その他(建設・ベトナム):数量 700(工事・開発の受注件数(件))× 価格 0.11(1 件当たりの売上(億円、名目))→ 売上 79 億円・営業利益 5 億円。件+8%・単価+25%
倍率:事業の ROE 5.2% は資本コスト 7.5% 以下。新しく投じるお金が価値を増やさないので、PER は 1÷k=11.8 倍まで。この筋書きは稼ぐ力(純利益 115 億円÷k)で測り、利益の質が低いので上限の 8.0 割、9.4 倍に置いた。
確率:売却益は景気で振れ、利回りが上がると粗利益が薄くなる。ホテルの地方ビジネス立地は単価が上がりにくい。同じ領域のヒューリック・トーセイ(20〜23%)と同じ水準にした。
悲観 12% 仕入れ競争と利回りの急上昇で再生が止まり、資産売却で凌ぐ 利益 −56 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 1,660 円950 億円
仕入れ競争が激しくなり、売値は金利上昇による利回りの上昇で下がる。再生事業の売却件数は半分近くまで減り、利益が消える。在庫に評価損が出て、2009年3月期に似た赤字局面が来る。
ホテルは開業を止め、一部を売却して資金を確保する。管理と仲介は規模が縮み、貸会議室も企業の需要の細りで減る。M&Aの買収先にも減損が出る。
有利子負債の返済のため、在庫の投げ売りが進む。伊藤忠は大株主として資金を支えるが、成長は止まる。自己資本は1,190億円まで減り、売れる資産で見ると今の自己資本の7割ほどが残る。配当は大きく減らさざるを得ない。
- リプランニング事業(中小型ビルの再生・売却):数量 11.0(年間の売却件数(件))× 価格 32(1 件当たりの売却額(億円、名目))→ 売上 353 億円・営業利益 7 億円。件-45%・売値-5%・赤字すれすれ
- 賃貸ビル事業:数量 50.0(賃貸中の保有ビルの数(棟))× 価格 1.57(1 棟当たりの年間賃料収入(億円、名目))→ 売上 78 億円・営業利益 22 億円。棟-9%・賃料+15%
- 不動産サービス事業(管理・仲介・貸会議室):数量 520(管理受託棟数(棟。仲介・会議室など他の収益も含めた規模の目安))× 価格 0.34(管理 1 棟当たりのサービス売上(億円、名目。仲介・会議室を含む))→ 売上 174 億円・営業利益 66 億円。管理-7%・単価+15%
- ホテル・観光事業:数量 4,300(運営客室数(室、期末))× 価格 0.05(1 室当たりの年間売上(億円、名目。宿泊単価×稼働率に飲食等を含む))→ 売上 220 億円・営業利益 13 億円。客室+16%・単価横ばい・一部売却
- その他(建設・ベトナム):数量 450(工事・開発の受注件数(件))× 価格 0.09(1 件当たりの売上(億円、名目))→ 売上 41 億円・営業利益 −2 億円。件-31%・赤字
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。26/3 期末の自己資本 1,197 億円に掛ける形で床を置いた(増資後の 1,331 億円に対しては 0.71 倍)。中身は、在庫の投げ売りの損と含み益の税後の残りを織り込んだ売れる資産の税後 950 億円。純有利子負債を足した EV÷営業利益は赤字のため意味を持たず、この筋書きは利益でなく資産で測るので、倍率の高さは床の評価を変えない。ためた利益には掛けていない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.794 倍・時価総額 950 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:再生型は景気の波を強く受け、2009 年に赤字を出した。10 年で一度は需給が悪化する可能性がある。同じ領域は 10〜13% で、伊藤忠が大株主になった安心感と相殺し、12% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リプランニング事業(中小型ビルの再生・売却)
稼働率の低い都心の中小型ビルを買い、改修して満室にしたうえで、資産家・ファンド・REIT・事業会社に売る回転型の事業。新築ビルや小口商品、レジデンスの開発もここに入る。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1 件当たりの売却額(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 34 | 675 | 177 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 42 | 1,181 | 284 |
取り方:開示は売却件数でなく売上。27/3 期 1Q は 5 件・再生セグメント売上 187 億円で、賃貸ビルの収入を除くと 1 件約 33 億円。通期は約 20 件・1 件約 33.75 億円と推定(26/3 期の再生売上約 750 億円から賃貸ビル約 75 億円を除いた 675 億円)。営業利益率 26%(再生の 1Q セグメント利益率 27%)。売却価格は賃料の上昇が値段に出る一方、売却時の利回り(約 3.2%)は国債 3% では薄いので、中立は 10 年 1.25 倍とした。
賃貸ビル事業
再生の途中や売却待ちのビルのうち、賃貸中のものから得る賃料収入。商品化の途中は賃貸原価率が高い。
| 数量賃貸中の保有ビルの数(棟) | 価格1 棟当たりの年間賃料収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 1.36 | 75 | 28 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 1.83 | 132 | 49 |
取り方:開示は賃貸ビル事業の収入のみ。在庫約 1,900 億円のうち賃貸中を 55 棟・1 棟当たり約 1.36 億円(計 75 億円)と推定。営業利益率 37%(商品化の途中のビルが多く、1Q は賃貸原価率が上がった)。中立の賃料は物価並み(10 年 1.34 倍)。
不動産サービス事業(管理・仲介・貸会議室)
売買・賃貸の仲介、プロパティマネジメント(ビルの運営管理)、ビルメンテナンス、滞納賃料保証、貸会議室。再生事業の案件を紹介し合う社内の連携が強み。
| 数量管理受託棟数(棟。仲介・会議室など他の収益も含めた規模の目安) | 価格管理 1 棟当たりのサービス売上(億円、名目。仲介・会議室を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 559 | 0.29 | 163 | 78 |
| 10 年後 中立 | 750 | 0.39 | 293 | 135 |
取り方:26/3 期末の管理受託は 559 棟(27/3 期 1Q で 563 棟、期末目標 600 棟)。売上約 163 億円(27/3 期の計画 172.7 億円が 5.9% 増から逆算)を棟数で割って 1 棟約 0.29 億円。営業利益率 48%(1Q のセグメント利益率 53%、年間は仲介の波で薄まると見た推定)。人件費が物価で上がるので価格は物価並み(10 年 1.34 倍)が中立。
ホテル・観光事業
地方の温泉・リゾート、ビジネス立地などでホテルを開発し、自社運営するほか、再生して売る。39 ホテル 4,227 室(2026 年 6 月末)。
| 数量運営客室数(室、期末) | 価格1 室当たりの年間売上(億円、名目。宿泊単価×稼働率に飲食等を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,710 | 0.05 | 190 | 36 |
| 10 年後 中立 | 7,600 | 0.06 | 485 | 87 |
取り方:27/3 期 1Q に 517 室が開業したので、26/3 期末は約 3,710 室と推定。売上約 189.5 億円(27/3 期計画 219.5 億円が 15.8% 増から逆算)を期末室数で割ると 1 室約 511 万円(期中に開業した分は半年分なので低めに出る)。営業利益率 19%。27/3 期開業分は地方のビジネス立地が多く単価は下がる見込み。中立の価格は物価より低い 10 年 1.25 倍とした。
その他(建設・ベトナム)
窓・内装の建設会社(大竹建窓ホールディングス)の工事と、ベトナム・ダナンのマンション開発。
| 数量工事・開発の受注件数(件) | 価格1 件当たりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 650 | 0.09 | 59 | 5 |
| 10 年後 中立 | 900 | 0.12 | 109 | 10 |
取り方:27/3 期の計画 74.8 億円が 27.4% 増から逆算して 26/3 期は約 58.7 億円。年約 650 件・1 件約 0.09 億円と推定(小口の工事が中心)。営業利益率 9%(推定)。ベトナムは 28/3 期以降に売却を見込む。価格は物価並み(10 年 1.34 倍)。
リスクと懸念
売却時の利回りの上昇
再生したビルの売却時の利回りは約3.2%と薄い。10年国債が3%に近づけば、利回りは上がる圧力を受ける。利回りが4%に上がれば売値は2割ほど下がり、仕入れで確保した粗利益が消える。この会社の利益の質を左右する最大の変数である。
借金の増加と借り換えの金利
有利子負債は27/3期1Qで1,300億円を超え、在庫の積み増しでさらに増える。借り換えのたびに金利が上がるので、利払いの増加が営業利益を削る。回転が止まると、在庫が担保に入ったまま売れない資産に変わる。
景気の谷で在庫が売れなくなる
再生型は仕入れて売る回転の事業だ。2009年3月期に約180億円の経常赤字、2021年3月期は営業利益が半減した。融資姿勢が厳しくなると出口が細り、在庫の評価損が自己資本を削る。
大型案件の競争と規律の緩み
伊藤忠との連携で50〜100億円規模の案件が増える。ただ、大型のビルはヒューリックやファンドも狙い、利回りが低くなりやすい。取得を急ぎ、粗利益率25〜30%の規律が緩むと、不良在庫になる。
ホテルの単価と運営の難しさ
新設の9ホテルは地方のビジネス立地が多く、客室単価は下がる見込みだ。開業直後は認知度が低く、立ち上がりに時間がかかる。訪日客の減少や人手不足で稼働が落ちると、固定費が重い。
株の希薄化と株主還元の低さ
増資と転換社債の転換で株は増えた。配当性向は2割台で、自社株買いもない。利益が在庫に回って株主に戻りにくく、1株当たりの利益は利益の伸びより遅れる。
今後の分かれ目
- 10年国債が3%を大きく超えて上がり、売却時の利回りが4%台に乗る
- ビルの売値が下がり、再生の粗利益が薄くなる。本質価値は中立よりやや悲観に近づく。
- 伊藤忠のルートで100億円規模の案件を年に複数取り、売却先のリートも受け入れる
- 大型化で回転と利益が伸び、本質価値は中立から強気寄りに動く。
- 都心中小型ビルの取引が細り、金融機関の不動産融資が厳しくなる
- 在庫の回転が止まり、評価損が出る。悲観の筋書きに近づき、配当も抑えられる。
- ホテルの新設9棟が計画どおり稼働し、客室単価も保てる
- 安定収入が増えて利益の波が小さくなり、資本コストの見方も改善する余地が出る。
- 仕入れ目標900億円を達成しながら、粗利益率25〜30%の規律を保つ
- 在庫の含み益が積み上がり、本質価値は中立以上で安定する。
見ておくもの
- 再生事業の売却時の利回り(キャップレート)と平均事業期間
- 期末の在庫(棚卸資産)と有利子負債、自己資本比率
- 伊藤忠ルートの大型案件の成約数・売却先リートへの売却実績
- ホテルの開業数・客室数と客室単価・稼働率
- 都心5区のオフィス空室率と賃料、不動産融資の貸出態度
倍率と資本コストの決め方
今の株価やPERから倍率を作っていない。セグメントごとに数量(売却件数・賃貸棟数・管理棟数・客室数・受注件数)と名目の価格を積み、利益率は構造から置いた。倍率は資本コスト7.5%(基本7.5%に quality+1.0%)と正当化PERの式だけで決め、市場の倍率は使っていない。伊藤忠のTOB価格も根拠にしない。悲観の床は今の自己資本(増資後)に掛けた。借り換えの利払いは純利益に入れ、リース会計の変更はないので、同じ形で比べた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→17.22 倍・やや楽観 PER 12→15.92 倍・中立 PER 11.8→14.86 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。事業は傾いていないので extra は置かない。同じ領域のトーセイ(+1.25%)より借金は軽く、ヒューリック(+1.0%)と同じ水準にした。再生の売却益が営業利益の大半を占める点はトーセイより景気に敏感だが、管理・仲介の安定収入が支える。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。