結論
宮越ホールディングスは、中国・深圳で「ワールド・イノベーション・センター(WIC)」という大型の都市開発を進める会社だ。かつては日本で賃貸ビルを持っていたが、今は収入がほとんど無い。2026年3月期は、減損と貸倒引当金で19億円の純損失を出した。
筆者の結論は、割高だ。10年後に計画が実現した筋書きでは、価値は今の何倍にもなる。ただ、その確率は低く、資金調達と規制、中国の不動産市況という入口が何重にもある。確率で重みをつけた本質価値は、今の時価総額の1割ほどにとどまる。
強みは財務だ。自己資本比率は9割を超え、純現金も55億円ある。ただし、WICの総投資は約1,100億円で、時価総額や自己資本の4〜5倍。借入と増資がなければ進まない。
第三者割当増資を2016年から3回行い、資本金は29億円から92億円に増えた。それでも着工が確認できないまま、9年がたった。
2026年3月には、中国の銀行とのシンジケートローンの協議が始まったと発表され、進展の兆しはある。ただ、これが本当に着工につながるかは、確かめられていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社は「わからない」に分類する。
理由は3つある。1つは、10年先の利益を数字で語れないこと。WICが着工するか、いつ開業するか、稼働がどこまで上がるか。どれも、会社の意思ではなく、外部の事情で決まる。
2つ目は、再投資の規模だ。総投資1,100億円は、時価総額や自己資本の4〜5倍。借入を乗せる前提の計画で、金利の変動や稼働の遅れに弱い。
3つ目は、少数の株主が経営を変えられないこと。大株主が議決権の約4割を握り、資本政策は大株主と会社の意思で決まる。
一方、プラスの面もある。財務は強く、倒産のリスクは低い。当たれば、価値は何倍にもなる。
ただ、バリュー投資では、確率がわからない賭けに、払う値段の安全域を求めたい。今の値段は、純現金と土地使用権だけで語れる水準より高く、成功の期待をかなり先取りしている。
何で稼ぐ会社か
中心の事業は、深圳市で開発中のWICだ。敷地は約12.7万㎡、建物は約70万㎡の計画で、高さ250メートルのオフィス棟2棟と、高さ150メートルの住宅棟からなる。総投資は約1,100億円とされ、会社は2030年から2031年のグランドオープンを目指している。
建物ができれば、入居企業からの賃料が収益になる。会社は「日本品質」「百年建築」を売りにし、世界30か国200社超の企業の誘致を計画している。設計は日建設計と深圳の華陽国際が仕上げ、既存建物の解体を進めている。
土地は、子会社の深セン皇冠(中国)電子が持つ既存の土地使用権をいったん返還し、先行区画で新たに50年の使用権を取得する形をとる。
もう1つの柱が、イノベーション事業だ。中国企業からの半導体・電子部品の輸入販売から始め、WICの開業に合わせて、人材紹介や企業間の連携支援に広げる計画だ。売上はまだ小さい。
日本の賃貸ビルは売却や開発移行で収入がなくなり、2026年3月期の売上は約4億円まで縮んだ。収益のない期間が、開業まで続く。大株主の宮越グループ(東京都大田区)が議決権の38.7%を持つ。
優良さと弱いところ
堀は、まだ存在しない。WICが完成して企業が入居して初めて、立地と建物の質が堀になる。今あるのは、土地使用権と、深圳での許認可の進み具合だけだ。
強みは、ほかの小さな会社が持てない土地を、深圳の中心部に確保していることだ。中国当局がWICの実施主体として公示で確認した、という報道もあり、許認可は一定の前進を見せている。
弱みは、実行力が検証されていない点だ。2016年から2018年に3回の増資で資本を集めたが、9年たっても着工が確認できない。経営は、日本の小さな上場企業が1,100億円の都市開発を担う前例のない挑戦をしている。
中国の事業は、規制、通貨、当局の方針転換という、日本の会社が管理できないリスクを抱える。外資が中国の不動産を持ち、利益を日本に持ち帰れるかも保証されていない。
筆者は、事業の質というより、事業が存在し続けるかを先に問うべきだと考える。大株主の宮越グループが議決権の38.7%を持ち、経営への影響は大きい。少数の株主が意思決定を変えることは難しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
深圳は、中国の技術産業の中心の1つだ。ただ、中国の不動産市場は、2021年の大手デベロッパーの経営危機以降、長い調整が続いている。オフィスは供給が多く、空室率は高く、賃料は下がってきた。
一方で、深圳の中心部は需要が強く、ハイテク企業の集積が続く。WICのような大型の複合開発は、立地で選ばれれば高稼働になる可能性がある。
資金調達の環境も重い。中国の銀行は、不動産開発向けの融資を絞ってきた。シンジケートローンの正式協議が始まったことは前向きだが、実際の融資が実行されるまで、確実とは言えない。
日本の会社が中国の不動産を開発するのは、きわめて珍しい。日本品質を売りにするが、中国のデベロッパーは建設費も低く、賃料でも競争できる。
円換算では、中国の物価は日本より上がらず、賃料の上がり方も小さい。10年で物価が1.34倍になる日本の前提を、そのまま当てはめない。賃料の伸びは10年で1.1倍を中立に置いた。
深圳市は2020年代に入っても人口が増え、企業の拠点が集まる都市だ。ただし、その需要が新築の大型オフィスの供給を吸収できるかは、別の問題になる。
日本品質の建築は、建設費が高く、賃料が割高になる。中国の企業は、賃料の安い現地の物件を選ぶことも多い。
この領域の業界ノートは無いので、市場の見通しは本稿で置いた。
資本政策と M&A
配当は無配が続く。自社株買いもない。資金の使い道は、WICの開発に集約される。
財務は強く、自己資本は245億円、現金等は118億円、純現金は55億円。ただ、WICの総投資は約1,100億円で、自己資金を200億円ほど使い、残りは中国の銀行融資に頼る計画だ。2026年3月には、シンジケートローンの正式協議を始めると発表した。
追加の増資も想定される。大株主の宮越グループ(議決権の38.7%)が引き受ける形が多く、既存の少数株主の取り分は薄まる。10年後の価値は、増資後の株数に合わせて割り引いて見ている。
減価償却は、完成した建物の取得原価に対して新しく足される。既存の古い資産の償却は取得時のままで、物価で増えない。建築費の上昇は総投資を膨らませ、借入と償却を増やす。
M&Aの履歴は、深圳の子会社設立(2015〜2016年)が中心。TOBの確率は、参考値で10年18%(kabufu 推定)。大株主が議決権の約4割を持つため、買収が成立する形は限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
深圳の中心部で、12.7万㎡の敷地と50年の土地使用権を持つ会社は、ほかにない。WICは計画が具体的だ。設計は日建設計と華陽国際が完成させ、既存の建物の解体も進んでいる。中国当局がWICの実施主体として公示で確認したとも報じられた。
2026年3月には、中国の主要な金融機関と、シンジケートローンの正式協議に入った。総投資約1,100億円の大半を借入で賄える見通しだ。資金の目途がつけば、着工は現実になる。
財務は強い。自己資本比率は9割を超え、純現金は55億円。つぶれる心配は小さく、時間がかかっても待てる。
完成すれば、高さ250メートルのオフィス棟2棟が深圳の中心部に建つ。賃料収入は年150億円を超えうる。個人投資家の見立てでは、想定される不動産の評価額は約3,000億円と、時価総額の約11倍。
2026年3月期の赤字は、減損と貸倒引当金という一度きりの費用が中心で、事業の力が落ちたわけではない。この大きな賭けに、今の時価総額で参加できるのが、最大の魅力だ。
慎重な見方
着工は、まだ確認できていない。2017年と2018年に増資をして以降、9年が過ぎた。計画は何度も語られたが、数字で見える進展は遅い。
総投資約1,100億円は、時価総額や自己資本の4〜5倍。借入が必要で、中国の銀行は不動産開発向けの融資を絞っている。シンジケートローンは、協議が始まっただけで、成立していない。
中国の不動産市況は長く弱く、オフィスの空室率は高く、賃料は下がってきた。日本品質を売りにしても、賃料のプレミアムが続くとは限らない。
外資が中国で稼いだ利益を日本に持ち帰れるかは、規制次第だ。当局の方針が変われば、事業そのものが止まる。
2026年3月期は、固定資産の減損と貸倒引当金で、19億円の純損失を出した。賃貸収入はほぼゼロで、イノベーション事業も小さい。
増資を3回も重ねた会社が、追加の増資を求めない保証はない。大株主が議決権の約4割を握り、少数の株主は薄まるのを見守るだけになる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。着工が確認できていないという事実は、強気の見方の「具体的」という主張を大きく弱める。確率は、悲観とやや悲観を合わせて6割近くに寄せた。楽観とやや楽観は合わせて2割弱にとどめた。
強気の見方の「財務の強さ」は、悲観でも株主に純現金と土地使用権が残るという形で、悲観の床に反映した。ただし、床の額は、中国で使われない土地が取り上げられる規定や、10年の維持費を考え、帳簿の額を大きく下回る水準に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 231 円93 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 104 円42 億円、今との差 −83.4%、 期待の年率 −9.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 1,044 円418 億円 | 30 円12 億円 | +71.5% | +5.5% | 54 円21 億円 |
| やや楽観 | 12% | 428 円171 億円 | 10 円4 億円 | −30.1% | −3.5% | 53 円21 億円 |
| 中立 | 25% | 250 円100 億円 | 0 円0 億円 | −60.1% | −8.8% | 62 円25 億円 |
| やや悲観 | 28% | 112 円45 億円 | 0 円0 億円 | −82.0% | −15.8% | 31 円13 億円 |
| 悲観 | 30% | 112 円45 億円 | 0 円0 億円 | −82.0% | −15.8% | 34 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 231 円93 億円 | 3 円1 億円 | −62.6% | −9.4% | 234 円94 億円 |
今の株価時価総額 626 円250 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 5% WICが期限どおり開業し、高稼働で回る 利益 44 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,044 円418 億円
WICは計画どおり2031年に開業する。深圳市の中心部に建つ高さ250メートルのオフィス棟2棟は、「日本品質」を売りに、世界の企業の中国拠点を集める。稼働は85%まで上がり、賃料は周辺より2割高い。
中国の銀行からのシンジケートローンは組成され、総投資1,100億円の大半が借入で賄われる。増資は小さく、既存の株主の取り分は大きくは削られない。
イノベーション事業は、WICに入る企業との商談で、半導体・電子部品の輸入販売を伸ばす。
10年後には、賃料収入は年150億円を超える。借入の利払いを払っても利益が出て、配当を再開できる位置に立つ。
ただし、これは9年待たされた計画が一度の遅れもなく実現する姿だ。
- 賃貸(WIC・既存):数量 38.2(稼働床面積(万㎡))× 価格 4.20(1万㎡あたりの年間賃料(億円、名目))→ 売上 160 億円・営業利益 94 億円。稼働床38.2万㎡×年間賃料4.2億円/万㎡(今の1.20倍)、NOI率75%、償却26億円
- イノベーション事業:数量 180(年間の取引件数(推定))× 価格 0.12(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。180件×0.12億円/件、営業利益率5%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.89 倍、時価総額 522 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:着工、資金調達、期限どおりの完成、高稼働、日本品質の賃料プレミアムが全部そろう必要がある。2017年の増資から9年たっても着工の確認が取れておらず、5%にとどめた。
やや楽観 12% WICが遅れて開業し、稼働が着実に上がる 利益 18 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 428 円171 億円
WICは数年遅れて開業する。設計は日建設計と華陽国際が仕上げ、既存建物の解体が終わり、2027年ごろに着工する。シンジケートローンは組成されるが、金利と担保で条件が重くなる。
稼働は10年後に75%まで上がる。賃料は物価並みに少し上乗せされる。住宅棟は賃貸ではなく、サービスアパートメントとして運営する。
増資は80億円ほど必要になり、既存株主の取り分は2割削られる。ただし、賃料収入は年110億円を超え、借入の利払いを払える。
中国の不動産市況の低迷が続いても、立地の良さが稼働を支える。住宅棟はサービスアパートメントとして運営し、企業の駐在員需要を取り込む。イノベーション事業も、入居企業との商談で件数が伸びる。
- 賃貸(WIC・既存):数量 30.0(稼働床面積(万㎡))× 価格 3.85(1万㎡あたりの年間賃料(億円、名目))→ 売上 116 億円・営業利益 61 億円。稼働床30.0万㎡×年間賃料3.85億円/万㎡(今の1.10倍)、NOI率72%、償却22億円
- イノベーション事業:数量 100(年間の取引件数(推定))× 価格 0.12(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。100件×0.12億円/件、営業利益率4%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 214 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シンジケートローンが成立し、数年遅れて開業して稼働が着実に上がる筋書き。設計は完了し、既存建物の解体も進んでおり、実現しうる幅の上側として12%に置いた。
中立 25% 中立:縮小して開業し、稼働は半分強にとどまる 利益 10 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 250 円100 億円
WICは縮小して進む。第1期が2033年ごろに開業し、貸せる面積は34万㎡にとどまる。10年後の稼働は60%で、賃料は中国の物価の低さを反映して、10年で1.1倍しか上がらない。
借入は520億円ほどで、利払いは年20億円。賃料収入は80億円弱で、償却と利払いを引くと、利益は10億円ほどしか残らない。完成した物件の価値は、建設費をわずかに下回る。
増資は100億円規模になる。残りの区画は着工されないまま保有され、土地使用権の価値だけが帳簿に残る。
イノベーション事業は半導体・電子部品の輸入販売で小さな利益を出すが、全体の赤字を埋めるほどではない。
- 賃貸(WIC・既存):数量 20.4(稼働床面積(万㎡))× 価格 3.85(1万㎡あたりの年間賃料(億円、名目))→ 売上 79 億円・営業利益 40 億円。稼働床20.4万㎡×年間賃料3.85億円/万㎡(今の1.10倍)、NOI率70%、償却14.5億円
- イノベーション事業:数量 60.0(年間の取引件数(推定))× 価格 0.12(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。60件×0.12億円/件、営業利益率3%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 118 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画は進むが、規模と時期を縮めて、稼働が半分強にとどまる中心の筋書き。中国のオフィス市況が弱く、期限どおりにはいかないとみた。
やや悲観 28% 開業はするが小さく、借入が価値を食う 利益 −12 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 112 円45 億円
開業はするが、規模は縮み、稼働は45%にとどまる。賃料は据え置きで、中国の不動産市況の弱さが続く。
貸せる面積は22万㎡。賃料収入は年35億円ほどで、借入の利払い(年16億円)と償却を払うと、利益は赤字になる。物件の価値は借入を下回り、株主の取り分は、土地使用権の残りと純現金の合計程度になる。
増資は60億円を超え、既存の株主の取り分はさらに削られる。
配当は出ず、株価は資産の残り分で語られる。物件は借入の返済に回り、株主に回るのは、純現金と、使われなかった区画の土地使用権の残りだ。中国の遊休地の規定により、使われない土地は当局に取り上げられる危険もある。
- 賃貸(WIC・既存):数量 9.9(稼働床面積(万㎡))× 価格 3.50(1万㎡あたりの年間賃料(億円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 12 億円。稼働床9.9万㎡×年間賃料3.5億円/万㎡(今の1.00倍)、NOI率60%、償却9億円
- イノベーション事業:数量 30.0(年間の取引件数(推定))× 価格 0.12(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。30件×0.12億円/件、営業利益率2%
倍率:赤字で稼ぐ力では測れない。物件は借入の返済に充てられ、株主に残る売れる資産の税後50億円を、今の自己資本245億円に掛けて置いた(PBR 0.20倍)。
確率:開業はしても小さく、賃料は上がらず、借入の重さが価値を削る。中国の不動産市況の低迷が続く場合の筋書き。
悲観 30% 着工できず、現金と土地使用権だけが残る 利益 −6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 112 円45 億円
WICは着工できないか、途中で止まる。中国の主要な金融機関とのシンジケートローンは成立せず、あるいは規制や地政学の変化で、事業が進まなくなる。
会社に残るのは、純現金と、深圳の土地使用権、小さなイノベーション事業だ。賃貸収入はほぼない。固定費は年8億円ほどかかり、現金は10年かけて細る。
株主の取り分は、現金と土地使用権を売った額から、維持費を引いた分になる。会社の財務は自己資本比率9割と強く、倒産はしないが、成長の物語は終わる。中国では、使われない土地が当局に取り上げられる規定がある。使用権の価値は、帳簿の額を大きく下回る可能性が高い。
- 賃貸(WIC・既存):数量 0.5(稼働床面積(万㎡))× 価格 3.50(1万㎡あたりの年間賃料(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。稼働床0.5万㎡×年間賃料3.5億円/万㎡(今の1.00倍)、NOI率60%、償却0億円
- イノベーション事業:数量 20.0(年間の取引件数(推定))× 価格 0.12(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。20件×0.12億円/件、営業利益率1%
倍率:着工できず、稼ぐ力は赤字。売れる資産の税後45億円を、今の自己資本245億円に掛けて置いた(PBR 0.18倍)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.184 倍・時価総額 45 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:着工できないか、途中で止まる構造的な負け。9年間で着工の確認が取れておらず、中国の銀行融資が成立しない、規制や地政学の変化で事業が進まないなど、複数の入口がある。3割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸(WIC・既存)
深圳のWICの賃貸と、既存の小さな賃貸。今はほぼ収入がない。
| 数量稼働床面積(万㎡) | 価格1万㎡あたりの年間賃料(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 3.00 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.4 | 3.85 | 79 | 40 |
取り方:売上高約3.9億円のうち、賃貸は約3億円と推定。稼働床面積は既存の小さな賃貸のみで1万㎡、賃料は年約3億円/万㎡(1㎡あたり約3万円)。WICが開業すると、年間賃料は今の値段で3.5億円/万㎡(約3.5万円/㎡)を基準に置く。中国は物価が低く、円換算の賃料の伸びは10年で1.10倍を中立とした。
イノベーション事業
中国企業からの半導体・電子部品などの輸入販売と、WIC開業後の企業連携支援。
| 数量年間の取引件数(推定) | 価格1件あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.0 | 0.10 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.12 | 7 | 0 |
取り方:件数は開示がなく、売上約0.9億円を1件あたり0.1億円で割り戻した9件の推定。新規参入で営業利益は小さな赤字。中立は件数が増え、価格は物価並みに上がるとみる。
リスクと懸念
着工・資金調達
着工は確認できておらず、シンジケートローンは協議が始まっただけ。総投資約1,100億円は時価総額の4〜5倍で、融資が実行されなければ進まない。
中国の規制と地政学
外資が中国で稼いだ利益を日本に持ち帰れる保証はない。当局の方針転換や日中関係の悪化で、事業が止まる危険がある。
中国の不動産市況
オフィスの空室率は高く、賃料は下がってきた。稼働が計画を下回れば、借入の利払いを賄えない。
増資による希薄化
2016年から3回増資をしてきた。WICの建設で追加の増資が必要になれば、少数の株主の取り分は薄まる。
大株主の影響
宮越グループが議決権の38.7%を持ち、資本政策や開発の判断は大株主に左右される。少数の株主は意思決定を変えにくい。
収益のない期間
賃貸収入はほぼなく、2026年3月期は営業赤字。開業まで赤字が続き、現金が細る。
今後の分かれ目
- シンジケートローンが正式に成立し、着工が確認される
- 最大の入口を通ったことになり、中立から強気寄りに動く。
- 着工が再び延期され、2031年のグランドオープンが修正される
- 悲観の確率が上がる。
- 追加の第三者割当増資が発表される
- 一株の取り分が薄まる。増資の値段と使い道で評価が変わる。
- 入居意向の企業が具体的に公表される
- 稼働の見通しが立ち、強気の確率を上げる。
- 中国当局による事業の許認可が取り消される、または見直される
- 事業が止まる筋書きの確率が大きく上がる。
見ておくもの
- WICの着工の有無と進捗
- シンジケートローンの成立と融資額
- 大株主(宮越グループ)の持株比率と増資の動き
- イノベーション事業の売上
- 現金残高の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は、完成後の物件の価値(NOI÷キャップレート)から借入を引いた額を、自己資本で割った値として置いた。キャップレートは日本の一等地4〜5.5%に、中国の政治・市況の上乗せ(楽観5.5%、中立6.5%、悲観8%以上)を加えた。今の株価(PBR約1倍)や、個人投資家の想定評価額(約3,000億円)には寄せていない。賃料は物価でなく、中国の物価が低いことを理由に10年1.10倍。減価償却は完成する新しい建物に対して足し、物価で増やさない。悲観の床は、純現金(戻り方0.5)と土地使用権などの売れる資産の税後から置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→11.89 倍・やや楽観 PER 8.5→11.76 倍・中立 PER 8.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。