結論
SREホールディングスは、ソニーグループの出身者が率いる会社だ。柱は2つある。不動産会社と医療・介護の事業者に業務用のAIサービスを売るAIクラウド事業と、自社開発の物件を売り、不動産ファンドを運用する不動産事業である。
筆者の結論は「割高」だ。2026年3月期の営業利益42億円のうち、AI事業が35億円と7割強を稼ぐ。ここが10年後も今の勢いを保てるかが、評価のすべてを決める。
理由は、AI事業が「AIエージェントに置き換えられる側」でもあるからだ。不動産の査定や顧客対応は、汎用のAIが担う領域に入りつつある。実際、不動産会社向けのAI査定は、契約社数が増えているのに売上が11%減った。
一方で、医療・介護向けは契約が1年で221社増え、売上が44%伸びた。人手の作業を含めて請け負う形なので、すぐには置き換わりにくい。筆者はここに事業の本質的な価値があるとみる。
不動産事業は物価と一緒に伸びる。運用資産は2年で2.4倍の1,552億円になった。ただし、利益は開発物件の売却時期に大きく振れる。
今の値段は、会社の予想どおり利益が伸び続ける前提に近い。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を大きく下回る。楽観でも今の値段に届かない点が、割高と言い切る根拠だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「どの利益が10年後も残るか」を分けて考える。
医療・介護向けのAI事業は、顧客の業務に入り込み、独自のデータも積み上がる。ここは本物の堀になりうる。不動産事業は、物価に連動して伸びる実物の資産を扱うので、価値の下限が読みやすい。
危ういのは、不動産会社向けのAI査定のように、AIの基本機能に近い部分だ。値段を守る力が弱く、同じことを他社が安くやれるようになる。利益の4分の1ほどは、10年後に今の姿で残るか疑わしい。
オーナー利益は、見かけの純利益より小さい。AI事業の利益は再投資に回り、配当に出るのは2割にも満たない。再投資の稼ぎが資本コストを上回る保証はなく、積み上がった自己資本は、帳簿の1単位が1単位未満の価値になりかねない。
安全域は、悲観の筋書きでも自己資本の4割ほどが残る点にある。それでも、今の値段で払うには、成長の前払いが大きすぎる。
何で稼ぐ会社か
事業は2つに分かれる。
AIクラウド&コンサルティング事業は、月額の利用料とコンサルティング料で稼ぐ。不動産向けのプロップテックは、AI査定のクラウドなどを約5,300社に提供する。医療・介護向けのライフ&ヘルスケアは、586社に業務支援のAIを提供し、運用の手間まで引き受ける。いわゆるSaaSに人手の業務を足した形だ。利益率は全体で4割と高い。
ライフ&プロパティソリューション事業は、不動産を扱う実業だ。収入源は、自社で開発した物件の売却益、不動産ファンドの運用報酬、仲介手数料の3つになる。運用資産は2026年3月末で1,552億円まで増えた。売上は262億円と大きいが、利益は12億円にとどまる。物件を開発して売る商売は、利益率が低い。
2つの事業は互いを補う。不動産事業で集めたデータと現場の知見が、AIの精度を上げる。AI事業の高い利益が、物件開発の元手になる。
配当は、不動産事業のみなし純利益の35%を目安にする。AI事業の利益は、再投資に回す方針だ。財務は、自己資本比率31%、純有利子負債は178億円である。物件を仕入れて売るまでの在庫が、借金の中身になる。
優良さと弱いところ
優良さは「AI事業は高いが、先は読みにくい」だ。
強みは、不動産とヘルスケアで自社が現場に立ち、独自のデータを蓄積している点だ。他社のAIサービスは、データを持たない状態から始める。顧客の業務に深く入り込むほど、乗り換えは面倒になる。ソニーグループが2割強を持つ安定株主であることも、信用の面で効く。
弱みも大きい。不動産会社向けのAI査定は、AIの基本機能に近く、値下がり圧力が強い。2026年3月期は契約が654社増えたのに、売上は11%減った。1社あたりの単価が下がっているということだ。
不動産事業は、物件を仕入れて売る商売で、値段も売れる時期も市場が決める。大型物件の売却が期の前半か後半かで、四半期の利益が倍も違う。2027年3月期の第1四半期は、売上が前年の2倍になったが、これは売却の時期が重なっただけだ。
資本効率は、ROEが12%前後と悪くない。ただし、AI事業の利益は再投資に回されるため、自己資本が積み上がるほどROEは下がりやすい。
経営は、2003年にソニーに入社した西山和良社長が率いる。個人の持分は小さく、ソニー出身のプロ経営者という色が濃い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の業界は、AIと不動産という2つの変化の中にある。
AIの側では、人が画面を操作して使う業務ソフトの価値が下がり始めている。AIエージェントが、査定書の作成、顧客への連絡、書類の下書きを直接こなすからだ。席や契約社数で課金する形は、値下げの圧力を受ける。逆に、規制や現場の実務と一体になった部分は残る。医療・介護の業務は、後者に近い。
不動産の側では、2025年の日本の不動産投資額が6兆円を超えて過去最高になった。海外投資家が2兆円超を買い越している。ただし、2026年に入って海外需要は細り始めた。日銀は政策金利を0.75%まで上げた。金利が上がれば、物件の利回りが上がり、開発物件の売却益は薄くなる。
競合は事業ごとに違う。不動産会社向けのAI査定には、専業のスタートアップや、大手の不動産会社が自社で開発したものがある。ファンド運用では、大手の不動産会社が先行する。
10年の姿は、物件の値段は物価並みに上がるが、AI事業の単価と契約数は読みにくい、というものだ。筆者は不動産事業の伸びを確かな柱とし、AI事業は大きく割り引いて見る。
資本政策と M&A
配当は、不動産事業のみなし純利益の35%を目安とし、2027年3月期は増配を計画する。自社株買いは、今のところ実績が見当たらない。
AI事業の利益は、再投資に回す方針である。M&Aで事業領域を広げることも、会社は掲げている。2026年3月期には、事業の再編に伴う減損を計上した。買収や投資の成果は、これから問われる。
大株主はソニーグループで、持分は23%だ。親会社に近い存在であり、TOB(株式公開買い付け)で買われる可能性は、kabufuの推計で10年以内に16%とされる。筆者は筋書きの確率には織り込まず、起きたときに再評価する。
還元の割合が低いのは、株主から見ると弱みだ。ただし、再投資の稼ぎが資本コストを上回るなら、それは正しい配分になる。AI事業が資本コスト以上で再投資できるか否かが、資本政策の評価の分かれ目である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI事業はまだ入り口にいる。不動産会社は全国で10万社を超え、病院や介護施設は数万カ所ある。会社の顧客はそのごく一部だ。2026年3月期の医療・介護向けは、契約が221社増え、売上が44%伸びた。
不動産会社向けも、契約社数は5,279社と654社増えた。単価を62千円から71千円へ引き上げる計画もある。AIに機能を足し続ければ、値下げの圧力を上回って単価を上げられる。
会社はAIエージェントを自社の売り物にしており、すでに売上が出ている。置き換えられる側ではなく、置き換える側に立つ。不動産とヘルスケアの現場に入り込み、データを持つ点が他社との差だ。
不動産事業も強い。運用資産は2年で2.4倍になった。ファンドの運用報酬は、一度積み上がれば景気に左右されにくい。
2027年3月期の予想は、営業利益52億円で25%増だ。この勢いが10年続かなくても、半分でも続けば、営業利益は140億円を超える。
慎重な見方
AI事業が稼ぐ利益は、AIエージェントの普及で最も狙われる。人が画面を操作する前提の業務ソフトは、エージェントに置き換えられる。AI査定は、すでに契約が増えても売上が減っている。単価の下落は、始まっている。
医療・介護向けも安全ではない。顧客の業務に入り込んでいるのは、人手を含む請負だからで、AIで人手が減れば、売上の単価も下がる。
不動産事業は、利益率が低く、市況に振れる。金利が上がり、海外投資家の需要が細れば、開発物件は売れ残る。2026年の中間は、同業のムゲンエステートの営業利益が半分に落ちた。
今の値段は、利益が毎年2割以上伸びる前提に近い。10年国債3%の世界で、資本コストは8.75%だ。毎年の増益が止まれば、倍率は一気に縮む。
配当は、不動産事業の利益の35%にとどまる。利益の大半は再投資に回るが、その稼ぎが資本コストを上回る保証はない。
医療・介護向けの伸びも、一時の追い風かもしれない。顧客の数が増えるほど、解約や値引き交渉の声も大きくなる。大手のIT企業が同じ領域に入れば、会社の独自データという強みも、時間とともに薄れる。ソニーグループの持分が将来売られる可能性も、株価の重しになる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は、利益の7割を占めるAI事業が、10年で縮む側にも伸びる側にも振れるからだ。強気の言い分に根拠はあるが、楽観でも今の値段に届かない。
確率は、楽観8%・やや楽観20%・中立33%・やや悲観25%・悲観14%とした。AIエージェント代替の影響を、中立の数量と価格に主に織り込み、確率にはやや悲観・悲観で4割を置く程度にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,161 円510 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 274 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 1,546 円249 億円、今との差 −32.7%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,807 円1,421 億円 | 446 円72 億円 | +302.8% | +15.0% | 740 円119 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,329 円860 億円 | 360 円58 億円 | +147.6% | +9.5% | 1,138 円184 億円 |
| 中立 | 33% | 3,483 円562 億円 | 304 円49 億円 | +64.9% | +5.1% | 1,250 円202 億円 |
| やや悲観 | 25% | 739 円119 億円 | 198 円32 億円 | −59.2% | −8.6% | 234 円38 億円 |
| 悲観 | 14% | 403 円65 億円 | 118 円19 億円 | −77.3% | −13.8% | 73 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,161 円510 億円 | 274 円44 億円 | +49.5% | +4.1% | 3,435 円554 億円 |
今の株価時価総額 2,297 円371 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% AIを売る側に立ち続け、運用報酬も積み上がる 利益 86 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 8,807 円1,421 億円
AI事業が、置き換える側に立ち続ける。医療・介護向けは契約が1,800社まで増え、不動産向けも6,500社へ伸びる。AIエージェントを自社の売り物にして、単価を物価並みに上げる。
不動産事業では、運用資産が4,500億円まで増え、運用報酬が安定した柱になる。開発売却は年20件まで増える。
10年後の営業利益は140億円台で、利益率は17%近い。ROEは13%台に乗り、資本コストをはっきり上回る。
配当は不動産事業の利益の35%を保つが、AI事業の利益が大きいので、再投資の稼ぎも資本コストを上回る。ソニーグループとの関係も保たれ、信用の面で大型の案件を取れる。
- プロップテック(不動産会社向けAI査定ほか):数量 6,500(契約社数(社))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 28 億円。6500 × 0.0089、営業利益率 48%
- ライフ&ヘルスケア(医療・介護向けAI業務支援):数量 1,800(契約社数(社))× 価格 0.12(1社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 213 億円・営業利益 70 億円。1800 × 0.1185、営業利益率 33%
- 開発・売却(自社開発物件):数量 20.0(年間の売却件数(件))× 価格 24(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 472 億円・営業利益 19 億円。20 × 23.6179、営業利益率 4%
- 運用・仲介(ファンドの運用と仲介):数量 4,500(運用資産残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.02(運用資産に対する売上の比率)→ 売上 108 億円・営業利益 34 億円。4500 × 0.0239、営業利益率 32%
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.12 倍、時価総額 1,297 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の予想どおりの勢いが続くには、AI事業の単価を守り、不動産の市況にも恵まれる必要がある。楽観は1割に届かない確率にとどめた。
やや楽観 20% 医療・介護が伸び、不動産向けは横ばい 利益 54 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 5,329 円860 億円
AI事業は、医療・介護向けが伸び、不動産向けは横ばいで落ち着く。単価は物価をやや下回る程度に下がる。
不動産事業は運用資産が3,600億円まで増え、運用報酬が積み上がる。開発売却は年17件で、利益率は低いまま保たれる。
10年後の営業利益は90億円台で、2027年3月期の予想の2倍弱にとどまる。ROEは11%台、資本コストを少し上回る。
AIエージェントの普及は織り込むが、医療・介護の現場に入り込んだ部分は残る。金利は10年国債3%に落ち着き、開発物件の売却は市況に応じて淡々と続く。
会社は買収や新規事業にも資金を回すが、成果は計画の半分ほどにとどまる。配当は不動産事業の利益に連動して、緩やかに増える。ソニーグループの持分は保たれ、経営の継続性は損なわれない。
- プロップテック(不動産会社向けAI査定ほか):数量 5,800(契約社数(社))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 19 億円。5800 × 0.0080、営業利益率 42%
- ライフ&ヘルスケア(医療・介護向けAI業務支援):数量 1,300(契約社数(社))× 価格 0.11(1社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 144 億円・営業利益 42 億円。1300 × 0.1105、営業利益率 29%
- 開発・売却(自社開発物件):数量 17.0(年間の売却件数(件))× 価格 22(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 382 億円・営業利益 13 億円。17 × 22.4932、営業利益率 4%
- 運用・仲介(ファンドの運用と仲介):数量 3,600(運用資産残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.02(運用資産に対する売上の比率)→ 売上 86 億円・営業利益 27 億円。3600 × 0.0239、営業利益率 31%
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.5% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.1 倍、時価総額 766 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI事業の伸びが一部で続く現実的な上振れ。2割を置いた。
中立 33% AIエージェントに単価を削られ、不動産が物価並みに伸びる 利益 37 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 3,483 円562 億円
AI事業は、AIエージェントの普及で単価と契約社数に圧力がかかる。不動産会社向けは契約が今の9割に減り、単価は横ばいだ。医療・介護向けは契約が1,000社まで伸びるが、単価は物価の半分程度しか上がらない。
不動産事業は、運用資産が3,000億円まで増え、運用報酬が育つ。開発売却は年15件で、市況に左右される。
10年後の営業利益は60億円強、純利益は37億円ほどにとどまる。会社が掲げる成長は、物価の分だけ伸びる程度に落ち着く。ROEは8〜9%で、資本コストを下回る。
この筋書きでは、AI事業の利益が名目でほぼ横ばいに終わる。不動産事業の利益だけが物価と運用資産の増加で伸び、全社の利益を支える。会社の中期の成長イメージには遠いが、事業が壊れるわけではない。
- プロップテック(不動産会社向けAI査定ほか):数量 4,750(契約社数(社))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 11 億円。4750 × 0.0066、営業利益率 35%
- ライフ&ヘルスケア(医療・介護向けAI業務支援):数量 1,000(契約社数(社))× 価格 0.10(1社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 97 億円・営業利益 25 億円。1000 × 0.0972、営業利益率 26%
- 開発・売却(自社開発物件):数量 15.0(年間の売却件数(件))× 価格 22(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 337 億円・営業利益 10 億円。15 × 22.4932、営業利益率 3%
- 運用・仲介(ファンドの運用と仲介):数量 3,000(運用資産残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.02(運用資産に対する売上の比率)→ 売上 72 億円・営業利益 22 億円。3000 × 0.0239、営業利益率 30%
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 13.04 倍、時価総額 480 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIエージェントによる代替を、数量と価格に織り込んだ最も確率の高い筋書き。3割台前半を置いた。
やや悲観 25% 代替が早く進み、金利で開発の利益も薄くなる 利益 10 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 739 円119 億円
AIエージェントの代替が想定より早く進む。不動産向けは契約が7割に減り、単価も1割下がる。医療・介護向けは契約が700社にとどまり、単価も下がる。
不動産事業は金利の上昇で、開発物件の売却益が薄くなる。運用資産は2,200億円までしか増えない。
10年後の営業利益は20億円強で、利益率は6%を割る。ROEは3%台に下がる。AI事業の再投資が減損に変わり、自己資本の増え方も鈍る。
配当は不動産事業の利益に連動して減る。それでも、純有利子負債は物件の担保に支えられ、資金繰りに行き詰まることはない。AI事業は小さな規模で残る。
- プロップテック(不動産会社向けAI査定ほか):数量 3,700(契約社数(社))× 価格 0.01(1社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 5 億円。3700 × 0.0060、営業利益率 22%
- ライフ&ヘルスケア(医療・介護向けAI業務支援):数量 700(契約社数(社))× 価格 0.08(1社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 9 億円。700 × 0.0840、営業利益率 15%
- 開発・売却(自社開発物件):数量 12.0(年間の売却件数(件))× 価格 20(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 243 億円・営業利益 4 億円。12 × 20.2439、営業利益率 2%
- 運用・仲介(ファンドの運用と仲介):数量 2,200(運用資産残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.02(運用資産に対する売上の比率)→ 売上 51 億円・営業利益 11 億円。2200 × 0.0232、営業利益率 22%
倍率:事業のROE 3.2% は資本コスト 8.75% 以下なので、PER は 1÷k=10 倍が上限。利益が薄く、AI事業の再投資も実らないので、上限の 7.2 割、7.2 倍に置いた。
確率:AIエージェント代替の影響が重い型の事業では、中立が既に縮む筋書きでも、さらに悪い筋書きは4分の1ほど起こりうる。
悲観 14% AI事業が縮み、不動産市況も崩れる 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 403 円65 億円
AIエージェントがほぼ全面的に置き換わり、AI事業の売上は半分以下に減る。契約が減り、解約が続く。
不動産市況も崩れる。金利が上がり、海外の需要が戻らない。開発物件は投げ売りになり、運用資産の拡大も止まる。
10年後の営業利益は赤字に近い。規模を縮めて生き残るが、AI事業の再投資は損失に変わる。価値は、売れる不動産の資産で測る局面になる。
配当はほぼ維持できず、自己資本の増え方も止まる。ソニーグループが支援に動くかどうかは不透明で、少数株主は現金の使い道を決められない。
AI事業の人材は流出し、競合の無料のAIに顧客を奪われる。不動産事業も、取得競争と融資の引き締めで、新しい物件を仕入れられなくなる。
- プロップテック(不動産会社向けAI査定ほか):数量 2,400(契約社数(社))× 価格 0.00(1社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。2400 × 0.0050、営業利益率 8%
- ライフ&ヘルスケア(医療・介護向けAI業務支援):数量 450(契約社数(社))× 価格 0.07(1社あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。450 × 0.0707、営業利益率 2%
- 開発・売却(自社開発物件):数量 7.0(年間の売却件数(件))× 価格 18(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 126 億円・営業利益 −1 億円。7 × 17.9946、営業利益率 -1%
- 運用・仲介(ファンドの運用と仲介):数量 1,200(運用資産残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.02(運用資産に対する売上の比率)→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。1200 × 0.0214、営業利益率 5%
倍率:稼ぐ力はほぼ 0。価値は売れる資産の税後の水準まで下がる。今の自己資本 153 億円に 0.425 を掛けた。EV÷営業利益は営業利益が赤字に近く意味を持たない。純有利子負債 178 億円は物件の担保で支えられている。
確率:AIエージェント代替と市況の反転が重なる、構造的な負けの筋書き。1割台半ばを置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
プロップテック(不動産会社向けAI査定ほか)
不動産会社や金融機関向けに、AI査定や業務支援のクラウドを月額で提供する。
| 数量契約社数(社) | 価格1社あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,279 | 0.01 | 35 | 18 |
| 10 年後 中立 | 4,750 | 0.01 | 32 | 11 |
取り方:2026年3月期の売上35.1億円、セグメント利益17.5億円(利益率49.9%)。契約社数5,279社、月額の単価は約62千円。売上÷契約社数で1社あたり約66万円と置く。契約が654社増えたが売上は10.9%減った。AIエージェント代替の型は「契約課金の業務SaaS」。
ライフ&ヘルスケア(医療・介護向けAI業務支援)
医療・介護の事業者に業務支援のAIを提供し、運用の手間まで引き受ける。SaaSに人手の業務を足した形。
| 数量契約社数(社) | 価格1社あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 586 | 0.09 | 52 | 17 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.10 | 97 | 25 |
取り方:2026年3月期の売上51.8億円(44.3%増)、利益17.2億円(利益率33.3%)。契約社数586社(221社増)。売上÷契約社数で1社あたり約884万円。人手を含む請負の部分があり、AIエージェント代替の型は「人月・業務請負」と「契約課金」の中間。
開発・売却(自社開発物件)
マンションなどを自社で開発し、投資家やファンドに売る。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.0 | 17 | 235 | 4 |
| 10 年後 中立 | 15.0 | 22 | 337 | 10 |
取り方:不動産事業(L&P)の売上262.7億円、利益12.0億円のうち、開発・売却を約235億円・利益約4億円と推定した(内訳の開示は未確認)。年14件・1件約17億円と置く。件数は実質、物価と大型化は1件あたり売上の側。
運用・仲介(ファンドの運用と仲介)
不動産ファンドの運用報酬と、SREリアルティの仲介手数料。
| 数量運用資産残高(億円・今の値段のまま) | 価格運用資産に対する売上の比率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,552 | 0.02 | 28 | 8 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 0.02 | 72 | 22 |
取り方:運用資産は2026年3月末で1,552億円(2年前の648億円から2.4倍)。L&Pの売上262.7億円から開発・売却の約235億円を引いた約28億円を運用・仲介の売上と推定し、営業利益は約8億円とした。数量は実質の積み上がりで、報酬の物価分は価格の側に入れる。
リスクと懸念
AIエージェントによる代替
利益の7割を稼ぐAI事業は、人が画面で使う業務ソフトの色が濃い。汎用のAIエージェントが査定や顧客対応をこなせば、契約社数も単価も下がる。不動産会社向けは、契約が増えても売上が11%減った。この傾向が強まる。
不動産事業の利益の振れ
自社開発物件の売却は、時期と金額が毎期で大きく変わる。2027年3月期の第1四半期は売上が倍になったが、通期の予想は据え置かれた。ファンド組成が下期に集中する予定で、四半期ごとの数字は読みにくい。
金利上昇と海外投資家の需要の細り
日銀は政策金利を0.75%まで上げた。10年国債3%が定着すれば、物件の利回りが上がり、開発物件の売却益が薄くなる。海外の購入者が減れば、売却そのものが遅れる。
再投資の稼ぎが資本コストを下回る
AI事業の利益は再投資に回り、配当は不動産事業の利益の35%にとどまる。事業再編で減損も出した。M&Aや新規投資が資本コストを上回れなければ、積み上げた自己資本の価値は、帳簿より低くなる。
財務の重さ
純有利子負債は178億円で、自己資本の1.2倍に上る。物件の在庫を担保に借りており、金利が上がれば利払いが増える。融資の姿勢が厳しくなれば、仕入れそのものが止まりうる。
ソニーグループの持分と株式需給
ソニーグループが23%を持つ。この持分が将来売却されれば、株式需給の悪化になる。逆に、完全子会社化の動きがあれば、価値の評価が変わる。どちらも会社が決められない。
医療・介護向けの制度と競争
医療・介護の報酬や規制の変更は、顧客の収益に直接効く。顧客の支払い余力が落ちれば、契約の解約が増える。この分野にも、大手のIT企業が参入しうる。
今後の分かれ目
- 医療・介護向けの契約社数が年200社のペースで増え続ける
- AI事業の柱が育ち、楽観に近い筋書きの確率が上がる。
- 不動産会社向けAI査定の単価が、さらに下がる
- AIエージェント代替が進んだ証拠になり、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 運用資産が3,000億円を超え、運用報酬が不動産事業の利益の半分を占める
- 不動産事業が景気に左右されにくくなり、倍率の質が上がる。
- 日銀が追加利上げし、10年国債が3%を大きく超える
- 開発物件の売却益が薄くなり、不動産事業の利益が減る。
- ソニーグループが保有株を売る、または完全子会社化に動く
- 株式需給の悪化、またはTOBによる再評価の材料になる。
- AI事業の利益の再投資が、買収や新規事業で減損を出す
- 資本配分の評価が下がり、利益の質を割り引く。
見ておくもの
- AIクラウド事業の契約社数・ARPU(決算説明資料)
- 運用資産残高とファンド組成の時期(下期集中の見込み)
- 四半期ごとの開発物件の売却額と粗利率
- 日銀の政策金利と10年国債
- ソニーグループの持分の動き
倍率と資本コストの決め方
先にプロップテック・ヘルスケア・開発売却・運用仲介の4つに分け、契約社数や件数と1件の値段(AI事業は物価より低く置いた)で10年の売上を積み、そのあとで利益率を置いた。倍率は資本コスト8.75%(基本7.5%に+2.5%)と、事業のROEから決まる式で置いた。中立のROEは8.6%で資本コストを下回るため、PERは1÷kの10倍が上限で、8.2倍に置いた。今の株価や過去のPERは使っていない。事業別の売上は、会社が開示する数字と推定を分けて書いた。新リース会計の影響は小さく、今の形にそろえている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.8→15.12 倍・やや楽観 PER 9→14.1 倍・中立 PER 8.2→13.04 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +2.5% を足した 10.0%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.00% → 9.25%。