結論
グッドコムアセットは、首都圏の投資用マンションを企画・仕入れし、個人の投資家と不動産ファンドに売る会社だ。販売の半分以上はファンド向けで、売ったあとの賃貸管理も手がける。2024 年には戸建会社のリブナップ・グループを子会社にした。
筆者の結論は「適正」だ。一番の理由は、上と下の差が大きいこと。中立の筋書きなら 10 年後の時価総額は今の約 1.8 倍になるが、融資が絞られる筋書きでは大きく割れる。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 7% ほど下回る程度で、ほぼ釣り合う。2026 年 10 月期は営業利益 77 億円の計画で、前期の 2.7 倍になる。
怖いのは、利益がファンドへの一括販売という「大きな売り」に偏ることだ。前期は第 3・4 号ファンド向けで粗利が薄くなり、営業利益が半分近くに減った。今期の計画も、最後の四半期に売上と利益の半分以上が集中する。
筆者は、堀(他社がまねできない強み)が弱い会社として、倍率を低めに置いている。販売戸数の伸びとファンド組成の実績は評価できるが、借入が自己資本の 1.3 倍あり、金利と融資の姿勢が悪化したときの傷は深い。値段に安全域があるとは言えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家はまず、商売の形を問う。この会社は、仕入れて売る回転型だ。利益は売却のたびに計上され、毎年自動的に積み上がる種類のものではない。10 年後の利益を見通しにくい。
オーナー利益の面では、利益のほとんどを次の仕入れに回すため、株主が自由に使える額は小さい。ただし手付金方式と複数の出口で、資本の回転は速い。
堀は弱い。投資用マンションは競争が激しく、仕入れ価格と買い手の融資姿勢という外部要因が利益を決める。値段を決める力は小さい。
経営者の資本配分には、挑戦の色が濃い。ファンド組成、戸建の M&A、REIT の構想と、手を広げている。中計の 6,000 億円という数字も大きい。実行に失敗して価値を壊す危険は、見ておくべきだ。
安全域は、値段の低さから少し生まれている。純利益の 9 倍前後で売られている会社が、10 年後の中立で今の約 1.8 倍の時価総額になる。ただし借入が重く、谷の傷が深い。その点を悲観に反映すると、安全域は消える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、物件を仕入れて売る回転にある。東京 23 区の駅に近い土地を仕入れ、投資用のマンションを企画し、完成後に売る。買い手は 3 種類ある。個人の投資家(リテールセールス)、不動産ファンド(ホールセール)、そして戸建を買う個人だ。
ファンドへの販売は、会社が手がける新しい柱になっている。第 1 号から第 5 号まで累計で 600 億円超を組成し、運用はグループの投資顧問会社が担う。今期はさらに約 400 億円を組成する計画だ。一括で売れるため、資金の回収が早く、再び仕入れに回せる。ただし外部への売却より粗利率は低くなる。
個人向けは、公務員や会社員が中心だった。物件価格の上昇で買い手が減り、前期は約 12 億円の赤字になった。会社は富裕層向けのウェルス部門を新設し、リテールの人員を 4 割削る。
売ったあとは賃貸管理が残る。東京 23 区を中心に 235 棟、12,848 戸を管理し、入居率はコロナ禍でもほぼ 100% を保った。管理の収入は小さいが、安定している。
仕入れは手付金だけで押さえる方式だ。契約の総額は約 770 億円に上るが、貸借対照表には前渡金しか載らない。売れる前提でなければ重い約束になる。
優良さと弱いところ
強みは、仕入れの量と出口の多さだ。2025 年は 34 棟 2,105 戸を仕入れ、前期の約 2 倍になった。パイプラインは 66 棟 4,832 戸。ファンド、個人、戸建と出口が複数あり、一つの買い手が離れても別へ回せる。
資本の使い方も機敏だ。手付金で押さえ、完成後に売るので、土地の取得資金を長く寝かせない。売ったあとの賃貸管理で、入居者の質も把握できる。
弱点は 3 つある。第一に、利益が売却のタイミングに左右される。前期は営業利益が 46% 減り、今期は 2.7 倍になる計画だ。第二に、堀が弱い。投資用マンションはFJネクストホールディングスや GA technologies など競合が多く、物件の仕入れ価格が上がれば利ざやは細る。第三に、借入だ。純有利子負債は 183 億円で、自己資本の 1.3 倍。営業利益が支払利息の 7 倍あり、金利の上昇で利益が削られる。
資本政策では、自己資本比率 30% 以上を保つと明言している。社長の長嶋義和氏は大株主の一人で(2021 年時点で筆頭、約 27%)、経営と株主の距離が近い。ROE は過去 10 年の中央値が 20% と高いが、前期は 10.7% に落ちた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
投資用マンションの市場は、融資の姿勢と金利で一気に変わる。2008 年のリーマン後には、販売が止まって赤字に沈む会社が相次いだ。2020 年代は、低金利と不動産の値上がりに支えられて拡大してきたが、物価 3%、10 年国債 3% の世界では、買い手の利回り要求が上がる。
首都圏の新築ワンルームは、供給が年 4,000 戸前後で、建築費の高騰もあり減りやすい。競合は、FJネクストホールディングス(供給戸数で首位)や GA technologies(中古の再販)、系列の大手デベロッパーなどがいる。同じ価格帯で個人に売る競争は激しい。
ファンド向けは別の市場だ。私募ファンドや REIT は、機関投資家のお金を不動産に向ける。賃貸住宅は入居率が安定し、運用しやすい資産として、年金や海外勢が買う。ただし金利が上がれば、ファンドの利回り要求も上がる。
2026 年の個人投資家は、物件価格の上昇で買い控えが目立つ。会社が公務員向けの販売減を認めている通り、新築ワンルームのブームは一段落した。次の成長は、ファンドと戸建、富裕層向けの大型物件になる。
資本政策と M&A
配当性向は 35% 以上が目標で、実際の総還元は前期に 65% だった。配当は 9 期連続で増える見込みで、2026 年 10 月期も増配の予想だ。上場 10 周年を記念した 1,000 株以上への年 10 万円相当のデジタルギフトは、一時的な記念で、還元の恒常的な部分とは見ない。
自己株式は当面 M&A に使う方針だ。建設会社、ホテル、REIT、金融商品取引業、海外などを対象に、株式交換も視野に入れる。2024 年にリブナップ・グループを子会社にし、2026 年には売上約 90 億円が加わる。
中計は、2030 年 10 月期に売上 6,000 億円、営業利益 770 億円を目指す。今の売上の 11 倍で、M&A を含む野心的な数字だ。筆者は、この達成を中立にはおかず、楽観の一部にしか入れない。
借入には余裕を持たせる方針で、自己資本比率 30% 以上を守りながら、大型案件では有利子負債や増資も検討する。増資の可能性は、既存の株主にとって薄まりの危険がある。
10 年の還元は、配当性向 35% を保つ形で置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ファンドという大口の出口を確立したことで、販売は個人の買い控えに左右されにくくなった。第 5 号の約 180 億円を含め、今期は約 600 億円を組成する。運用はグループの投資顧問が担い、運用資産が積み上がれば手数料が入る。
仕入れは前期の約 2 倍の 2,105 戸。パイプラインは 4,832 戸あり、成長の原料は揃っている。手付金方式は資本の回転を速め、借入は増えても在庫は積み上がらない。2026 年の 3 四半期累計の営業利益は前年の 2.4 倍で、通期の計画に向かって進んでいる。
戸建会社のリブナップ・グループが加わり、売上は約 90 億円増える。賃貸管理は入居率がほぼ 100% で、売った後の安定した収入になる。
配当は 9 期連続で増え、PER は 9 倍前後と低い。10 年国債が 3% でも、都心の賃貸住宅の需要は人口の集中で支えられる。ファンドの買い手は年金や海外勢まで広がっており、持続しやすい。
慎重な見方
売上の半分以上がファンド向けで、買い手は少数の私募ファンドに偏る。この出口が一つ閉じれば、仕入れ済みの物件が在庫に滞る。手付金で押さえた契約の総額は約 770 億円で、売れなければ違約金や没収の約束になる。
前期は営業利益が 46% 減った。今期の計画は、最後の四半期に売上の 56%、営業利益の 66% を集中させなければ届かない。ファンドの組成が一つ遅れれば、計画は崩れる。
個人向けは、物件価格の上昇で主力の公務員が買えなくなった。リテールは約 12 億円の赤字で、人員を 4 割削ることになった。成長の看板はファンドに移ったが、粗利率が低い。
純有利子負債は自己資本の 1.3 倍で、金利が上がるたびに利益が削られる。中計の売上 6,000 億円、営業利益 770 億円は、M&A に頼る大風呂敷だ。買収で価値を壊した不動産会社は多い。さらに、粗利率の低いファンド向けが販売の半分を占める構造では、売上が増えても利益が付いてこない年が続く危険がある。2025 年がその例だった。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや優勢と見る。理由は、ファンドの実績が複数あり、仕入れとパイプラインが数字で確認できるからだ。慎重な見方の言う出口の偏りと利益の振れは本物で、堀が弱いことは倍率に反映した。
確率は中立を厚くし、やや悲観を 23%、悲観を 12% と置いた。融資の姿勢が変わると会社の形が変わる点を重く見たが、10 年の間に一度は必ず来る谷として織り込むと、本質価値は今の値段とほぼ釣り合う。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 3,187 円915 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 528 円152 億円)。 今の値に割り戻すと 1,798 円516 億円、今との差 +25.3%、 期待の年率 +10.0%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,075 円2,031 億円 | 892 円256 億円 | +455.2% | +18.7% | 797 円229 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,980 円1,429 億円 | 721 円207 億円 | +297.3% | +14.8% | 1,254 円360 億円 |
| 中立 | 33% | 3,571 円1,025 億円 | 585 円168 億円 | +189.6% | +11.2% | 1,372 円394 億円 |
| やや悲観 | 23% | 768 円221 億円 | 314 円90 億円 | −24.6% | −2.8% | 249 円71 億円 |
| 悲観 | 12% | 244 円70 億円 | 125 円36 億円 | −74.3% | −12.7% | 44 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,187 円915 億円 | 528 円152 億円 | +158.9% | +10.0% | 3,716 円1,067 億円 |
今の株価時価総額 1,435 円412 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% ファンド・REIT 組成が軌道に乗り、規模が一段上がる 利益 128 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 7,075 円2,031 億円
ファンドの運用資産は 3,000 億円を超え、上場または私募の REIT を組成して物件を売却する。投資用マンションの仕入れは関西・九州にも広がり、M&A で建設会社を取り込み、仕入れから施工まで内製する。戸建は都心・城南で定着する。販売は年 5,000 戸を超え、物価の上昇分も価格に乗る。営業利益率は過去最高圏の 9% 台を保つ。管理戸数も 4 万戸まで増え、賃貸管理が安定した収入になる。運用会社のグッドコムアセット投資顧問が預かる資産は 3,000 億円を超え、ファンドの運用手数料が自己資金を使わない収入として定着する。リテール部門は富裕層向けに集約され、人員の削減で固定費が下がる。新ブランド「G-classt」は好立地の大型物件で受け入れられ、ファミリー向けにも客層が広がる。
- 不動産販売(投資用マンション・ファンド向け・戸建):数量 5,200(年間の販売戸数(戸・戸建と土地を含む))× 価格 0.44(1 戸あたりの売上(億円・名目))→ 売上 2,275 億円・営業利益 216 億円。5,200 戸 × 1 戸 0.438 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 9.5%
- 賃貸管理・その他:数量 40,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1 戸あたりの年間収入(億円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 24 億円。管理 40,000 戸 × 1 戸 年 18.7 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 32%
倍率:事業の純利益 128 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.93 倍、時価総額 2,031 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の拡大(REIT 組成・M&A・関西と九州への展開)が実現し、運用の手数料も育つ。ただし 10 年の間に金利や融資姿勢の逆風が一度も来ない前提で、確率は 1 割にとどめる。
やや楽観 22% ファンド向けが柱に育ち、中計の半分を達成 利益 92 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 4,980 円1,429 億円
ファンド向けの販売が年 500〜600 億円で続き、戸建とあわせて販売は年 4,000 戸台になる。リテールは富裕層向けに絞られ、赤字が解消する。M&A は小粒で、事業の幅は広がるが主役にならない。営業利益率は 8.5% 前後。借入は増えるが、自己資本比率 30% 以上は保つ。配当は増え、配当性向は 35% を超える。ファンドの買い手は、年金や機関投資家を含めて広がる。上場 REIT の組成には至らないが、私募 REIT が 1〜2 本育つ。仕入れ契約の総額は、売上の拡大に合わせて手付金で積み上がる。賃貸管理の収入も、管理戸数の増加で安定して増える。
- 不動産販売(投資用マンション・ファンド向け・戸建):数量 4,200(年間の販売戸数(戸・戸建と土地を含む))× 価格 0.43(1 戸あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1,798 億円・営業利益 156 億円。4,200 戸 × 1 戸 0.428 億円(今の 1.37 倍)、営業利益率 8.7%
- 賃貸管理・その他:数量 30,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1 戸あたりの年間収入(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 17 億円。管理 30,000 戸 × 1 戸 年 18.3 万円(今の 1.37 倍)、営業利益率 30%
倍率:事業の純利益 92 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.4 倍、時価総額 1,417 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:FY2026 の予想が通れば、ファンド組成の実績は 5 本以上になる。販売の過半を占めるファンド向けは、運用会社との関係が深く、確率を厚めにおく。
中立 33% 販売は倍増するが、利益率は過去の平均へ 利益 66 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 3,571 円1,025 億円
販売戸数は今の約 2 倍の 3,300 戸に増え、価格は物価並みに上がる。ファンド向けの粗利率は外部売却より低く、営業利益率は FY2026 の計画(約 10%)を下回る 7〜8% 台に落ち着く。仕入れ価格の高騰で個人向けは伸びにくく、会社は富裕層向けの販売に切り替える。借入は利益の範囲で増え、金利負担が営業利益を削る。M&A は限定的で、中計の売上 6,000 億円には遠く届かない。手付金だけで仕入れる方式は、買い手が見つかる限り資金の回転が速い。仕入れ契約の総額は売上と同じペースで増える。ファンドの買い手が離れない限り、在庫は積み上がらない。ただし利益が出るのは販売のタイミングに限られ、四半期ごとの振れは大きいままだ。ROE は 15% 前後で、資本コストは上回る。
- 不動産販売(投資用マンション・ファンド向け・戸建):数量 3,300(年間の販売戸数(戸・戸建と土地を含む))× 価格 0.42(1 戸あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1,382 億円・営業利益 111 億円。3,300 戸 × 1 戸 0.419 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 8.0%
- 賃貸管理・その他:数量 22,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1 戸あたりの年間収入(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 12 億円。管理 22,000 戸 × 1 戸 年 17.9 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 30%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.06 倍、時価総額 988 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:実績(販売戸数の増加、ファンド 4 本の組成)と、金利上昇や仕入れ価格の高騰が重なる局面を合わせた中心の見立て。FY2026 の計画は 4Q に偏り、達成に不確実性がある。
やや悲観 23% 金利上昇でファンドの買い手が離れ、販売が細る 利益 22 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 768 円221 億円
ファンドの組成が年 1〜2 本に鈍り、戸建も思うように売れない。物件価格の高止まりで個人向けも回復しない。販売は年 2,000 戸にとどまり、値引きで在庫を減らす。営業利益率は 5% 台に下がる。仕入れ契約の解除や手付金の没収の負担も出る。それでも賃貸管理が黒字を保ち、配当は利益に連動して維持される。物件価格が高止まりしたまま、買い手の利回り要求が上がる。ファンドは第 5 号以降の組成に慎重になり、仕入れ済みの物件が在庫に残る。会社は仕入れを絞り、借入を減らす。人員の整理も進み、利益は伸びない。ROE は 7% 台まで落ちる。
- 不動産販売(投資用マンション・ファンド向け・戸建):数量 2,000(年間の販売戸数(戸・戸建と土地を含む))× 価格 0.38(1 戸あたりの売上(億円・名目))→ 売上 750 億円・営業利益 41 億円。2,000 戸 × 1 戸 0.375 億円(今の 1.20 倍)、営業利益率 5.5%
- 賃貸管理・その他:数量 16,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1 戸あたりの年間収入(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 7 億円。管理 16,000 戸 × 1 戸 年 16.1 万円(今の 1.20 倍)、営業利益率 28%
倍率:ROE 7.1% が k 8.25% 近辺、またはそれ以下なので、ためた利益は額面未満。正当化 PER の上限は 1÷k=11.1 倍で、売却益が細り回転も落ちる局面を見て約 7 割の 7.8 倍に置いた。
確率:10 年国債 3% の世界では、不動産ファンドの資金調達コストが上がり、買い手の利回り要求が高まる。投資用マンションは過去に融資の引き締めで販売が半減した。
悲観 12% 融資が止まり、在庫を安く売らされる 利益 3 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 244 円70 億円
金利が上がり、銀行が投資用の融資を絞る。ファンドの買い手も消え、仕入れ済みの物件を安値で売る。手付金の没収や契約解除で損が出る。販売は年 1,000 戸に落ち、営業利益率は 1 桁前半に沈む。戸建も売れず、M&A で取り込んだ会社の減損も出る。配当は大きく削られ、自己資本は薄くなる。賃貸管理の収益だけが残る。過去にも、投資用マンションの会社は融資の引き締め一つで赤字に転落した。手付金で押さえた契約を履行できず、没収と違約金が出る。販売用不動産は簿価を割り、自己資本が削られる。新しい買収で取り込んだ戸建会社や、拡大した人員も重荷になる。株主の取り分は借入の返済の後で、大きく減る。
- 不動産販売(投資用マンション・ファンド向け・戸建):数量 1,000(年間の販売戸数(戸・戸建と土地を含む))× 価格 0.33(1 戸あたりの売上(億円・名目))→ 売上 328 億円・営業利益 13 億円。1,000 戸 × 1 戸 0.328 億円(今の 1.05 倍)、営業利益率 4.0%
- 賃貸管理・その他:数量 12,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1 戸あたりの年間収入(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 3 億円。管理 12,000 戸 × 1 戸 年 13.4 万円(今の 1.00 倍)、営業利益率 20%
倍率:悲観は稼ぐ力でなく売れる資産で置く。今の自己資本 142 億円に PBR 0.49 倍(保有不動産を 2 割引きで売って借入を返した後の額)を掛けた。EV ÷ 営業利益(時価総額+純有利子負債)は高く見えるが、悲観の営業利益は谷の薄い値で、価値は売れる資産で測るため利益の倍率は根拠にしない。
確率:手付金で仕入れる方式は、買い手が離れると契約総額(約 770 億円)が重荷になる。リーマン後に投資用マンション会社が倒れた構造と同じ。1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産販売(投資用マンション・ファンド向け・戸建)
投資用マンション・戸建の企画と、個人投資家・不動産ファンドへの販売。
| 数量年間の販売戸数(戸・戸建と土地を含む) | 価格1 戸あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 1,692 | 0.31 | 529 | 32 |
| 10 年後 中立 | 3,300 | 0.42 | 1,382 | 111 |
取り方:2025 年 10 月期の販売実績 39 棟 1,692 戸に、売上 528.8 億円(全体 545.8 億円から管理等 17.2 億円を除く)を割って 1 戸 0.3125 億円(3,125 万円)とした。セグメント別の開示はなく推定。数量は実質の戸数、物価の分は 1 戸あたりの売上に入れる。営業利益は本社費 -8 億円を別に引く前の値で、利益率は 6.05%。
賃貸管理・その他
売却後の賃貸管理、賃料収入、その他の手数料。
| 数量管理戸数(戸) | 価格1 戸あたりの年間収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 12,848 | 0.00 | 17 | 5 |
| 10 年後 中立 | 22,000 | 0.00 | 40 | 12 |
取り方:管理戸数 12,848 戸(2026 年 6 月時点)に、1 戸あたり年約 13.4 万円(推定)を掛けて売上 17.2 億円。開示はなく推定。物価の分は 1 戸あたりの収入に入れる。
リスクと懸念
ファンドという出口の偏り
販売の半分以上が少数の私募ファンド向けで、買い手が離れると在庫に滞る。外部への売却より粗利率が低く、組成の時期で利益が大きく振れる。
手付金で押さえた仕入れ契約
契約総額は約 770 億円で、貸借対照表には前渡金だけが載る。売れる前提を欠くと、違約金や手付金の没収が現れる。リーマン後の投資用マンション会社の破綻と同じ形だ。
金利と融資姿勢
10 年国債 3% の世界では、買い手の利回り要求と借入の金利が上がる。純有利子負債は自己資本の 1.3 倍で、営業利益は支払利息の 7 倍にとどまる。
計画の偏りと下方修正
2026 年 10 月期の計画は、最後の四半期に利益の約 3 分の 2 が集中する。ファンド組成が一つ遅れれば下方修正になる。
リテールの縮小と M&A の実行
公務員向けの個人販売が停滞し、リテールの人員を 4 割削る。中計の売上 6,000 億円は M&A に頼る。買収した会社の減損や株式交換による薄まりの危険がある。
規制と東京都心の供給
東京の特別区には投資用ワンルームの規制が広がっている。許認可の更新や住民対策のコストも増える。
今後の分かれ目
- 第5〜7号ファンドの組成が計画どおり 600 億円に届き、営業利益 77 億円を達成したら
- ファンドという出口が確立したと見て、楽観・やや楽観の確率を引き上げる。
- ファンドの組成が遅れ、通期計画が下方修正されたら
- 出口の偏りが現実になったと見て、やや悲観の確率を引き上げる。
- 10 年国債が 3% を超え、銀行の投資用融資が絞られ始めたら
- 悲観の確率を大きく引き上げる。手付金契約の重さが最初に出る。
- 運用資産が 1,000 億円を超え、運用の手数料が営業利益の 1 割を超えたら
- 利益の質が上がったと見て、倍率を上限寄りに置く。
- リテールの赤字が解消し、富裕層向けの販売が戸数の 3 割を超えたら
- 個人向けの再建が進んだと見て、販売戸数の伸びを引き上げる。
- 株式交換による大型 M&A が発表されたら
- 買収額と薄まりを確かめ、価値を壊す危険を悲観側に加味する。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益と、ファンド向け販売の時期(直近 3 四半期累計は営業利益 26.3 億円)
- 販売用不動産と前渡金、有利子負債の残高
- 10 年国債の金利と、投資用ローンの融資姿勢
- ファンドの運用資産残高(2025 年 10 月末の約 430 億円から 2026 年に約 1,000 億円の計画)
倍率と資本コストの決め方
数量は年間の販売戸数、価格は 1 戸あたり売上(名目)で積み、物価はその価格に入れた。倍率は k 8.25%(基本 7.5% に循環 +0.75%・値決め力 +0.25%・借金 +0.5%)、g 4%、堀が弱く残る割合を 1/3 とする式から出し、中立は ROE が k を上回るため 1÷k の 11.1 倍を下限にした。今の PER(9 倍前後)や同業の倍率には寄せていない。FY2025 の純利益 15 億円は一時的に低いので net_start を 31 億円とし、今の低い利益に引きずられないようにした。純利益は(営業利益 − 純有利子負債 × 3.6%)に過去の比 0.66 を掛けて出した。悲観は稼ぐ力でなく売れる資産で置き、今の自己資本に PBR を掛けた。2026 年 10 月期は会計方針の変更で FY2025 が遡及されており、過去の値の連続性に注意が必要。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.7→15.93 倍・やや楽観 PER 11.2→15.4 倍・中立 PER 11.2→15.06 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。