結論
ビーロットは、問題を抱えた不動産を買い、手を入れて、ファンドや富裕層に売る会社だ。ホテルや宿泊施設の再生も手がける。稼ぎの 8 割以上は売却益で、残りが管理と仲介の手数料だ。
筆者の結論は「やや割高」だ。売上は 4 年で 2.5 倍になり、営業利益率は 20% と高い。ただ、これは不動産市況が良い今の姿だ。借金で在庫を積む商売なので、金利と価格の変化に弱い。
足元の問題は借金だ。純有利子負債は前期末に約 610 億円と、1 年で 2.8 倍になった。自己資本比率は 20% を割る水準。支払利息は今年の上期だけで 8 億円と、前年の 5 億円から増えた。借り換えのたびに金利が上がる世界では、利益が目減りする。
会社は 2027 年に純利益 55 億円を掲げ、配当性向 30% 以上を約束する。今期は純利益 50 億円、配当は前期から増やす予定だ。ただ、在庫の積み上げが続く限り、営業キャッシュは赤字が続く。
筆者は、10 年後の中立を営業利益 95 億円と見る。今期の予想 84 億円から、ほとんど伸びない。10 年の筋書きを確率で重みづけした本質価値は、今の時価総額を 1 割強下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点でまず見るのは、借金の大きさだ。ビーロットは、ここが最も気になる。
純有利子負債は自己資本の 3 倍。在庫の価値が 2 割下がれば、自己資本の半分以上が消える。営業利益率が 20% と高い今は、その危うさが見えにくい。利益は過去最高だが、営業キャッシュ・フローは 95 億円の赤字だ。会計上の利益と、手元に残る現金は別物だ。
次に資本の使い方を見る。借金で在庫を積み、売って利益を出し、また積む。この回転が止まらない限り、ROE は高い。止まったとき、残るのは在庫と借金だ。
安全域はどうか。今の時価総額は自己資本の 1.3 倍。ROE が 22% なら高くないが、この ROE は借金で作られている。10 年の平均で ROE が 10% 前後に落ちるなら、今の値段に安全域は無い。
10 年後も存在し、今より強いか。筆者の答えは「存在する。ただし、市況に左右され続ける」だ。確信を持てない事業には、安全域を厚くとる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは、3 つの事業から成る。
1 つ目は不動産投資開発。売上の 83% を占める主力だ。問題を抱えた事業用不動産を買い、手を入れて、ファンドや富裕層、事業会社に売る。新築の開発もある。ホテルも対象で、インバウンドの回復で収益が戻った。在庫は 61 件、販売用不動産は 707 億円と過去最高だ。利益率は 21%。最大の売り先は、野村不動産マスターファンド投資法人で、売上の約 1 割を占める。
2 つ目は不動産マネジメント。売上は 50 億円ほどだが、利益率は 50% を超える。建物を管理する事業と、ファンドの運用を受ける事業で、手数料が毎年入る。管理運営は 166 件。宿泊系の不動産の稼働が上がり、利益が増えた。
3 つ目は不動産コンサルティング。売買や賃貸の仲介、新築マンションの販売受託などで、売上は 16 億円。今期は大型案件の波で、売上が 2 割ほど減った。
2024 年には、売買・仲介のクマシュー工務店を子会社にした。会社は、中期的に利益の 1 割ほどを不動産以外から得たいとしている。
売却益が主力なので、利益は物件を売った時期で大きく振れる。管理の手数料は、その波を和らげる役目だ。
優良さと弱いところ
事業の質は「普通」だが、足元は強い。
強みは三つある。一つ目は、目利きと再生の力だ。傷んだ物件を安く買い、価値を上げて売る。2023 年から営業利益率は 20% 台を保っている。二つ目は、売り先の厚みだ。ファンドや富裕層、事業会社に売れる出口を持つ。三つ目は、管理と運用の手数料。利益率が 50% と高く、景気が悪い年も入る。
弱みは財務だ。純有利子負債は自己資本の 3 倍。在庫を借金で持つ商売で、価格が下がれば自己資本が直接削られる。営業キャッシュ・フローは前期に 95 億円の流出だった。
もう一つの弱みは、利益の質だ。売却益に偏り、物件の売却時期が数か月ずれるだけで、利益が大きく変わる。過去には、2020 年の営業利益が 40 億円から 17 億円に半減した。
ROE は 22% と高いが、これは自己資本が小さいことの裏返しだ。借金を増やして在庫を積み、利益を伸ばしている。ROE が高い理由は、事業の強さより、借金の大きさにある。
堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるものは、情報網と出口の関係くらい。強い堀とは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の不動産投資は、資金が流れ込む局面にある。ただ、金利の上昇が重しになりつつある。
10 年国債が 3% になれば、不動産の期待利回りは 4〜5.5% 程度に上がる。オフィスの一等地で 3% 台後半、中小型で 5% 台が目安だ。利回りが上がれば、物件の価格は下がる。再生屋は、仕入れた値段と売る値段の差で稼ぐので、利回りの上昇は利幅に直接響く。
建築費は 2021 年以降に 2〜4 割上がった水準で定着し、今後も年 2〜3% 上がる。新築が減り、既存の物件の価値を押し上げる。再生屋には追い風だ。
インバウンドは 2025 年に過去最高を更新した。ホテルの客室単価が上がり、宿泊施設の再生が進む。感染症や地政学の悪化で急減する恐れは常にある。
競争は分散している。参入の壁が低く、地場の業者や私募ファンドも同じ物件を狙う。大手は資金力で強い。ビーロットは、富裕層向けの販売や小口化といった出口の多様さで差をつける。
2008 年のリーマン危機では、不動産ファンドの出口が閉じ、在庫を売れず、中小の不動産会社が資金繰りで行き詰まった。この谷の深さが、この業界の最大のリスクだ。
資本政策と M&A
資本政策は、借金を使って在庫を積み、利益の 3 割を配当に回す形だ。
配当は今期、前期から小幅に増やす予定だ。配当性向 30% 以上を目標に掲げる。自己株は 6% ほど持つ。
2027 年までの中期経営計画は、純利益 55 億円を目指す。重点は、富裕層向けの拡大と、企業投資・M&A だ。クマシュー工務店のような買収で、不動産以外の収益を伸ばす。
問題は資金の出どころだ。在庫の積み上げは、借入で賄っている。有利子負債は 1 年で 2.2 倍の約 760 億円に増えた。公募増資に頼れば、既存の株主の取り分が薄まる。過去にも 2014 年・2015 年・2021 年に株が増えた。
株主では、創業メンバーの個人が上位に並ぶ。TOB の確率は 26% と推計されるが、創業者の持分が厚く、動きは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
売上は 4 年で 2.5 倍、営業利益は約 4 倍に増えた。2023 年から営業利益率が 20% を超え、利益の質も上がっている。管理と運用の手数料が、売却益の波を和らげる。
在庫は 61 件に増え、販売用不動産は過去最高の 707 億円。仕入れが強いのは、売り先に自信がある証拠だ。野村不動産の投資法人や富裕層に売れる出口を持つ。上期は売上が 37% 増え、営業利益も 1 割増えた。通期の営業利益 84 億円は、すでに 6 割を達成している。
建築費が上がり、新築が減る。既存の物件の価値が上がり、再生の需要が増える。インバウンドの回復で、ホテルの再生は追い風だ。
配当は前期から増え、配当性向 30% 以上を約束する。会社の計画では、2027 年に純利益 55 億円。M&A で不動産以外の収益も育てる。借金は増えたが、在庫は担保付きで売れる資産だ。
売上の 1 割を占める投資法人など、買い手の顔ぶれも厚い。管理と運用の手数料は、不動産の市況に関わらず入る。
慎重な見方
利益の中身が危うい。営業キャッシュ・フローは 95 億円の流出で、在庫を借金で積んでいるだけに見える。有利子負債は 1 年で 2.2 倍になり、自己資本比率は 20% を割る水準だ。
金利が上がる世界は、再生屋に二重に効く。借入の利払いが増え、不動産の利回りが上がって、売る値段が下がる。上期は売上が 37% 増えたのに、経常利益は 3.6% しか増えなかった。支払利息が 5 億円から 8 億円に増えたことが響いた。
2008 年のリーマン危機では、出口のファンド市場が止まり、在庫を売れない不動産会社が行き詰まった。2020 年のコロナ禍でも、営業利益は 40 億円から 17 億円に半減している。
ROE の高さは、借金の大きさの裏返しだ。10 年先まで高い ROE が続く保証は無い。売却益が主力で、物件の売却時期がずれるだけで、利益は大きく変わる。
資金の出どころも気になる。増資に頼れば、既存の株主の取り分が薄まる。過去にも株が増えている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は三つ。第一に、借金が自己資本の 3 倍あり、市況の悪化に弱い。第二に、利払いが増え、利益の伸びを削る。第三に、営業キャッシュが赤字で、在庫が売れる前提に立っている。
強気の見方にも確かな材料がある。管理の手数料と、目利きの実績、売り先の厚みは評価できる。そこで悲観の確率は 14% にとどめた。
確率は、中立を 37%、やや悲観を 26%、悲観を 14% に置いた。楽観は 6%、やや楽観は 17%。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,828 円533 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 719 円136 億円)。 今の値に割り戻すと 1,662 円313 億円、今との差 +19.1%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 9.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,913 円1,302 億円 | 1,327 円250 億円 | +490.7% | +19.4% | 494 円93 億円 |
| やや楽観 | 17% | 5,138 円968 億円 | 1,115 円210 億円 | +348.3% | +16.2% | 1,063 円200 億円 |
| 中立 | 37% | 3,400 円640 億円 | 743 円140 億円 | +197.0% | +11.5% | 1,533 円289 億円 |
| やや悲観 | 26% | 796 円150 億円 | 531 円100 億円 | −4.9% | −0.5% | 345 円65 億円 |
| 悲観 | 14% | 531 円100 億円 | 265 円50 億円 | −42.9% | −5.5% | 111 円21 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,828 円533 億円 | 719 円136 億円 | +154.3% | +9.8% | 3,547 円668 億円 |
今の株価時価総額 1,395 円263 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:資金が流れ込み続け、手数料事業も育つ 利益 91 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 6,913 円1,302 億円
私募ファンドとインバウンドの資金が流れ込み、物件の売り値は年 4〜5% で上がる。売却件数は今の 1.45 倍に増え、1 件あたり売上は 1.45 倍。大型化と富裕層向けの販売が効く。再生の利益率は 20%。
管理と運用の受託は 1.9 倍に増え、手数料が積み上がる。M&A で不動産以外の収益も育つ。
営業利益は 177 億円前後。借入は増えるが、利益が利払いを上回る。純利益は 91 億円、ROE は 13% 台。
金利は上がるが、利回りの上昇より売り値の伸びが大きく、利幅は保たれる。富裕層向けの販売や小口化の商品が育ち、出口の幅が広がる。
- 不動産投資開発(再生・新築・ホテル):数量 45.0(年間の売却件数(件))× 価格 15(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 656 億円・営業利益 131 億円。売却 1.45 倍、1 件あたり 1.45 倍。利益率 20%
- 不動産マネジメント:数量 315(管理運営の受託件数(件))× 価格 0.42(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 132 億円・営業利益 66 億円。受託 1.9 倍、単価 1.40 倍。利益率 50%
- 不動産コンサルティング:数量 466(仲介の成約件数と販売受託の引渡戸数の合計(件・戸))× 価格 0.06(1 件・1 戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 11 億円。件数 1.2 倍、単価 1.35 倍。利益率 42%
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.6% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.27 倍、時価総額 1,208 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出口の資金が潤沢で、物件の売り値が上がり続け、金利の上昇も小さい必要がある。借金が重い会社なので、楽観は 6% にとどめた。
やや楽観 17% やや楽観:市況が保たれ、会社の計画を上回る 利益 68 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 5,138 円968 億円
出口の資金が保たれ、物件の売り値は年 3% ほど上がる。売却件数は今の 1.3 倍、1 件あたり売上は 1.32 倍。再生の利益率は 19%。
管理と運用の受託は 1.7 倍に増える。コンサルは大型案件の仲介が戻る。
営業利益は 137 億円前後。借入が増え、利払いも重くなる。純利益は 68 億円、ROE は 11% 台。
会社の計画(2027 年に純利益 55 億円)を超える水準が続く姿だ。ただ、借入が増え、利払いが営業利益を削る。増資は避けられ、配当は利益の 3 割強を保つ。
ホテルの再生も進み、宿泊系の管理の手数料が積み上がる。物件の出口は、野村不動産の投資法人のような大口の買い手が支える。
- 不動産投資開発(再生・新築・ホテル):数量 40.3(年間の売却件数(件))× 価格 13(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 536 億円・営業利益 102 億円。売却 1.3 倍、1 件あたり 1.32 倍。利益率 19%
- 不動産マネジメント:数量 282(管理運営の受託件数(件))× 価格 0.40(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 56 億円。受託 1.7 倍、単価 1.35 倍。利益率 49%
- 不動産コンサルティング:数量 427(仲介の成約件数と販売受託の引渡戸数の合計(件・戸))× 価格 0.05(1 件・1 戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 9 億円。件数 1.1 倍、単価 1.30 倍。利益率 41%
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.1% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.75 倍、時価総額 867 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利は上がるが、出口の資金が細らず、会社の計画を上回る可能性は十分ある。ただ借金の重さを考え 17% とした。
中立 37% 中立:営業利益 95 億円で頭打ち、利払いが利益を削る 利益 43 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 3,400 円640 億円
物件の売り値は年 1〜2% の上昇にとどまる。金利上昇で利回りが上がり、価格の伸びを抑えるためだ。売却件数は今の 1.15 倍。1 件あたり売上は 1.20 倍で、再生の利益率は 16.5%。
管理と運用の受託は 1.45 倍に増える。ホテルなど宿泊系の管理が伸びる。手数料の単価は 1.30 倍で、利益率は 48%。
営業利益は 95 億円前後。全社費用は物価で増える。借入は 850 億円ほどに増え、借り換えで金利は 3.5% 前後に上がる。利払いは 30 億円を超え、純利益は 43 億円。
配当は利益の 3 割強を保つが、残りの利益は在庫の積み増しに回る。自己資本は 500 億円台に増えるが、借入も増え、自己資本比率は 2 割台にとどまる。
- 不動産投資開発(再生・新築・ホテル):数量 35.7(年間の売却件数(件))× 価格 12(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 431 億円・営業利益 71 億円。売却 1.15 倍、1 件あたり 1.20 倍(利回りの上昇が売り値の伸びを年 1〜2% に抑える)。利益率 16.5%
- 不動産マネジメント:数量 241(管理運営の受託件数(件))× 価格 0.39(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 45 億円。受託 1.45 倍、単価 1.30 倍。利益率 48%
- 不動産コンサルティング:数量 388(仲介の成約件数と販売受託の引渡戸数の合計(件・戸))× 価格 0.05(1 件・1 戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 8 億円。件数横ばい、単価 1.25 倍。利益率 40%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.24 倍、時価総額 526 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気と慎重の議論の落としどころ。今期予想の 84 億円からほぼ伸びない水準で、利益率は 2023 年以降の 20% を下回る。借金の重さと金利上昇を考え、中立に最も厚く 37% を置いた。
やや悲観 26% やや悲観:利回りが上がり、売り値が下がる 利益 4 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 796 円150 億円
利回りが 0.5〜1 ポイント上がり、物件の売り値は今の水準から横ばいに近い。売却件数は今の 0.9 倍にとどまり、1 件あたり売上も 1.05 倍。在庫の売却が長引き、利益率は 10% に落ちる。
管理と運用の受託は 1.15 倍。手数料は底堅く、利益率は 44%。
営業利益は 35 億円前後。借入は 800 億円で、利払いが営業利益に迫る。純利益は 4 億円まで下がる。配当は減らされ、増資の議論も出る。
出口の資金が細り、在庫の売却に時間がかかる。借り換えの金利が上がり、金融機関は融資を絞る。経営は在庫を圧縮して借入を返す方向へ動く。
- 不動産投資開発(再生・新築・ホテル):数量 27.9(年間の売却件数(件))× 価格 11(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 295 億円・営業利益 30 億円。売却 0.9 倍、1 件あたり 1.05 倍。利益率 10%
- 不動産マネジメント:数量 191(管理運営の受託件数(件))× 価格 0.34(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 29 億円。受託 1.15 倍、単価 1.15 倍。利益率 44%
- 不動産コンサルティング:数量 310(仲介の成約件数と販売受託の引渡戸数の合計(件・戸))× 価格 0.05(1 件・1 戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 4 億円。件数 0.8 倍、単価 1.10 倍。利益率 28%
倍率:稼ぐ力は小さく、価値は売れる資産が中心になる。在庫の評価を 15% 下げたあとの売却価値を床の資産 約 150 億円とし、評価減後の自己資本 200 億円で割った。中立より低い PBR に収まる。EV÷営業利益は 22 倍前後と高いが、利益が小さい局面では意味が薄く、残る資産で測った。
確率:金利の上昇で不動産の利回りが上がり、売り値が下がる筋書きは、借金の重い再生屋には起きやすい。26% を置いた。
悲観 14% 悲観:出口が閉じ、在庫を抱えて自己資本が削られる 利益 −45 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 531 円100 億円
私募ファンドと投資家の資金が止まり、売却件数は今の半分。売り値は 5% 下がり、利益率は赤字になる。在庫の評価減が出る。
管理と運用の手数料は底堅いが、受託は 0.85 倍に減る。コンサルは仲介が半減する。
営業利益は赤字。利払いが重く、純損益は 45 億円の赤字。増資で自己資本を補うことになり、既存の株主の取り分は薄まる。株主に残る価値は、管理事業と在庫の売却後の残りに縮む。
金融機関が融資を引き揚げ、物件を安く売らざるをえなくなる。売り手が増えて価格がさらに下がり、悪循環になる。
保有するホテルは稼働が落ち、固定費が重い。管理事業の手数料は残るが、事業の規模は半分以下に縮む。
- 不動産投資開発(再生・新築・ホテル):数量 15.5(年間の売却件数(件))× 価格 9.57(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 148 億円・営業利益 −9 億円。売却 0.5 倍、1 件あたり 0.95 倍。利益率 -6%
- 不動産マネジメント:数量 141(管理運営の受託件数(件))× 価格 0.31(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 15 億円。受託 0.85 倍、単価 1.05 倍。利益率 33%
- 不動産コンサルティング:数量 194(仲介の成約件数と販売受託の引渡戸数の合計(件・戸))× 価格 0.04(1 件・1 戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。件数 0.5 倍、単価 1.05 倍。利益率 10%
倍率:赤字で、増資の希薄化も避けられない。今の自己資本 200 億円に 0.5 倍を掛け、管理事業の価値と、在庫を売って借入を返したあとの残りに合わせた。市場の PBR は根拠にしていない。EV÷営業利益は意味を持たない水準。
確率:構造的に負ける筋書き。リーマン級に出口の資金が止まり、在庫を売れず、評価減と利払いで自己資本が削られる。利益が過去最高で、管理の手数料もあるので、14% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産投資開発(再生・新築・ホテル)
傷んだ事業用不動産を買って直し、ファンドや富裕層に売る。ホテルの再生も含む。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 31.0 | 10 | 312 | 65 |
| 10 年後 中立 | 35.7 | 12 | 431 | 71 |
取り方:不動産投資開発の売上 312.2 億円・セグメント利益 65.3 億円(2025/12 期)。件数の開示が無く、在庫 61 件・販売用不動産 707 億円(1 件あたり約 11.6 億円)の水準から、1 件あたり売上を約 10 億円とみて売却件数を年 31 件と推定した。
不動産マネジメント
建物の管理と、ファンドの運用を受ける。手数料が毎年入り、利益率が高い。
| 数量管理運営の受託件数(件) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 166 | 0.30 | 50 | 25 |
| 10 年後 中立 | 241 | 0.39 | 93 | 45 |
取り方:不動産マネジメントの売上 49.5 億円・セグメント利益 24.9 億円(2025/12 期)。管理運営の受託 166 件で割り、1 件あたり約 0.3 億円とした。
不動産コンサルティング
売買・賃貸の仲介、新築マンションの販売受託。
| 数量仲介の成約件数と販売受託の引渡戸数の合計(件・戸) | 価格1 件・1 戸あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 388 | 0.04 | 16 | 7 |
| 10 年後 中立 | 388 | 0.05 | 20 | 8 |
取り方:不動産コンサルティングの売上 16.1 億円・セグメント利益 7.0 億円(2025/12 期)。成約 65 件と分譲マンションの引渡し 323 戸の合計 388 で割り、1 件・1 戸あたり約 0.04 億円とした。
リスクと懸念
借金が自己資本の 3 倍
純有利子負債は約 610 億円で、自己資本 200 億円の約 3 倍。在庫の価値が 2 割下がれば、自己資本の半分以上が消える。営業キャッシュ・フローは 95 億円の流出で、在庫の積み上げが続いている。
金利の上昇
借入は 1 年で 2.2 倍の約 760 億円になった。借り換えのたびに金利が上がり、上期の支払利息は前年の 5 億円から 8 億円に増えた。不動産の利回りも上がり、売り値を押し下げる。二重に効く。
出口市場の縮小
売り先のファンド・投資法人・富裕層の資金が細れば、在庫を売れない。リーマン危機では私募ファンド市場が止まり、複数の運用会社が破綻した。売上の約 1 割を占める野村不動産マスターファンド投資法人への依存もある。
利益の振れ
売却益が主力で、物件の売却時期が数か月ずれるだけで、利益が大きく変わる。2020 年のコロナ禍では営業利益が 40 億円から 17 億円に半減した。
増資による希薄化
在庫を積むには資金が要る。借入に限りがあれば、増資が必要になる。過去にも 2014 年・2015 年・2021 年に株が増えた。既存の株主の取り分が薄まる。
ホテル・宿泊系の波
インバウンドの回復が利益を押し上げているが、感染症や地政学の悪化で急減する恐れがある。保有するホテル(有形固定資産は上期に約 1.6 倍の 94 億円)の稼働が落ちれば、固定費が重くなる。
今後の分かれ目
- 営業キャッシュ・フローが 2027 年末までに黒字に転じ、在庫が回り始めたら
- 借金の増えが止まり、利払いの重さが和らぐ。中立から楽観寄りへ確率を少し移す。赤字が続けば、やや悲観の確率を上げる。
- 国債金利が想定より上がり、借り換え金利が 5% 近くになったら
- 利払いが年 15 億円以上増え、純利益は中立でも 3 割以上減る。不動産の利回りも上がり、売り値が下がる。
- 自己資本比率が 15% を割ったら
- 増資や在庫の圧縮が避けられない。希薄化を考え、悲観の確率を上げる。
- 2026〜2027 年の売上が会社計画(純利益 55 億円)に届いたら
- 管理事業の拡大も含め、計画どおりの成長が確認できる。中立の営業利益 95 億円は低すぎないか見直す。
- 管理と運用の事業の利益が 40 億円を超えたら
- 売却益に頼らない収益が育つ。景気の波に強くなるので、悲観の確率を下げる材料になる。
- 創業メンバーが持株を売却、または TOB の動きが出たら
- 支配株主の構図が変わる。買収価格と少数株主への条件を見て判断する。
見ておくもの
- 営業キャッシュ・フローと、販売用不動産・有利子負債の増え方
- 支払利息と、借り換えの金利
- 不動産の取引利回り(キャップレート)と、私募ファンドへの資金流入
- 管理運営の受託件数と、宿泊系不動産の稼働率
- 売上上位の売り先の比率(野村不動産マスターファンド投資法人など)
- 自己資本比率と、増資・自己株の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の経済性だけで置いた。10 年後の中立は、純利益 43 億円・ROE 8% 台。ROE が資本コスト 9% に届かないので、正当化 PER の上限は 1÷k の約 10.5 倍。借金の重さと弱い堀は k の上乗せと残る割合 1/3 で見ているので重ねて引かず、上限の約 86% の 9.0 倍に置いた。同じ領域の会社(霞ヶ関キャピタル 10.8 倍、エスコン 8.6 倍)と比べ、ROE の水準の差で説明できる。市場の PER・PBR や今の株価からは逆算していない。今の株価が倍になっても半分になっても、この計算は動かない。純有利子負債が時価総額の 2 倍を超えるので EV÷営業利益でも確かめ、中立で約 9 倍に収まる。リースは、新リース会計基準で 2028/12 期から BS に載るが、再生・販売の会社で影響は小さい。10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。償却は、保有するホテルなど固定資産が小さいので、物価で増やさず、新規取得分だけ高い値段で足した。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.0% を足した。赤字の期はなく、利益も過去最高なので上乗せ(distress)は付けない。金利上昇で売り値が下がるリスク、増資による希薄化、在庫の評価減などは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.00%。