結論
ファンドクリエーショングループは、不動産・太陽光発電・車両のファンドを組成して運用する小さな資産運用会社だ。自らも不動産などに投資し、ファンドや投資家へ売って稼ぐ。売上は約 58 億円、従業員は 23 人しかいない。
筆者の結論は「やや割高」だ。10 年後の中立で時価総額は今の 2 倍ほどになるが、年率では 7% 台で、資本コストの 9.75% に届かない。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 3 割弱下回る。
良いところは、ファンドの運用残高が 440 億円まで積み上がり、報酬の収入が毎年増えていることだ。今期は営業利益が 3 割伸びた。弱いところは、利益の大半が不動産の売却益で、在庫を借入で抱える点。営業キャッシュフローは赤字だった。
創業者の社長に頼る小さな組織で、一つのファンド(レジット)が運用報酬の 3 割弱を占める。強い堀は無い。PER が 9 倍前後と低く見えるのは、利益の質の低さを映した値段で、割安の証拠にはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「小さくて速いが、堀の無い仲介型」の会社だ。ファンドの組成と売却で稼ぎ、資産を長く抱えない。10 年後も残る事業だが、その稼ぎは毎年の案件の成否で決まり、予測しにくい。
株主のものになる利益は、見かけの純利益より小さい。利益の大半は在庫(不動産・太陽光・車両)の積み増しに回り、営業キャッシュフローは赤字だった。物価が上がるほど、同じ件数をこなすための在庫の金額も増える。
経営の資本配分は、成長に資金を回す一方、株主への還元は薄い。創業者への依存度が高く、後継の姿も見えにくい。
安全域は薄い。PER が 9 倍前後と低いのは、利益の質を反映した値段で、割安の証拠にはならない。事業が傾いた時の床は、借入を返した後の売れる資産で、今の自己資本のごく一部だ。中立の筋書きでも資本コストに届かない値段だと、筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
事業は二つ。アセットマネジメントは、ファンドの組成と運用で、不動産・太陽光・車両の 3 種類が中心。運用資産は 233 億円、不動産などの受託資産は 207 億円(うち太陽光 58 億円、車両 42 億円)。売上は 9 億円で、営業利益は 3.8 億円と利益率が高い。
インベストメントバンクは、自社で不動産・太陽光・車両へ投資して売る事業と、証券投資、金融商品の仲介。売上 49 億円、営業利益 5.3 億円で、売上の 8 割以上を占める。不動産の売却益が収益の中心だ。
創業は 2002 年。社長の田島克洋氏が創業し、経営の舵を取る。連結従業員は 23 人で、大手の資産運用会社に比べて身軽だが、人に頼る度合いは高い。
有報が挙げる主なリスクは、不動産ファンド「レジット」関連の報酬がアセットマネジメント売上の約 28% を占めること、アイザワ証券の取り扱いに頼ること、創業者への依存、借入と金利上昇。
事業の規模は小さい。連結の総資産は約 73 億円、純資産は約 33 億円で、時価総額はそれとほぼ同じ 30 億円ほどだ。
優良さと弱いところ
堀は薄い。ファンドの組成は、信用と運用実績、販売網が壁になるが、資金の出し手を呼び込む力は小さな会社には限られる。強みは、太陽光や車両のような小口で組成しやすい資産に特化し、個人投資家向けの販路(アイザワ証券など)を築いた点だ。
財務は普通からやや重い。自己資本比率は 45% で、前期より 7 ポイント下がった。純有利子負債は 17 億円で、営業利益は支払利息の 6 倍。今期は売掛金と在庫が増え、営業キャッシュフローは 6 億円の赤字。借入で在庫を積む運転資金型の構造だ。
ROE は今期 9.9% で、資本コストにほぼ並ぶ。過去 10 年の中央値は 6%。2018 年に赤字、2009〜2012 年にも赤字の年があり、不動産市況の波を直接受ける。
経営は創業者が握り、配当は利益の 1 割ほどと薄い。自社株買いは無い。成長に必要な資金を借入と内部留保で賄う姿勢だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
私募ファンドは、年金・事業法人・個人富裕層などの資金を集め、物流・データセンター・ホテル・太陽光・車両などに投資する仕組みだ。J-REIT の時価総額は約 15 兆円規模で、私募市場も含めて資金の流入は続いている。
同社が主戦場にするのは、大手がやらない小口の領域だ。太陽光発電は買取制度の期間が残る案件の売買と運用、車両は個人投資家向けのファンド。大手の三井物産・三菱商事系や外資系ファンドが主戦場とする物流・データセンターとは棲み分けている。大手が手を出しにくい小さな案件を数多くこなすのが、この会社の立ち位置だ。
金利が 10 年国債で 3% になる世界では、不動産のキャップレートが上がり、物件価格の下押しが続く。売却益で稼ぐ自社投資の側は、金利上昇に弱い。一方、運用報酬は資産残高に連動するので、金利よりも資金流入に左右される。
2008〜09 年のリーマン危機では、私募ファンド市場が機能不全に陥り、多くのファンド運用会社が破綻した。同社も赤字になった過去がある。市場の資金の流れが一度止まると、組成した後の売却も、新規の組成も、両方が止まる。
資本政策と M&A
配当は総額約 0.4 億円で、利益の 1 割ほど。「業績に応じた還元」を方針とし、自社株買いは無い。創業者が経営を握り、余った現金を積極的に戻す実績はない。
成長のための資金は、借入で賄っている。今期は借入の調達が 17 億円、返済が 12 億円で、財務キャッシュフローは 12 億円のプラス。売掛金と在庫に回った。金利が上がれば利払いが利益を食う。
M&A や提携の大きな動きは見当たらない。海外はケイマンの関係会社が 1 社あるだけ。TOB の話は確認できない。
10 年の中立は、純利益の合計 約 45 億円のうち 7 億円ほど(1 割台半ば)を還元する形に置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
運用・受託資産は 440 億円まで積み上がり、報酬収入は毎年増えている。今期は営業利益が前期比 34% 増の 5.8 億円、純利益は 63% 増の 3.3 億円と、業績の改善が鮮明だ。車両・太陽光のファンドは小口で組成しやすく、アイザワ証券を通じた個人投資家の資金も呼び込める。
不動産の売却益に頼る側も、ファンドへ売る出口を持っているので、在庫を長く抱えずに回転させられる。アセットマネジメントの営業利益率は 4 割を超え、残高が伸びれば利益率の高い報酬が全体を押し上げる。
今の PER は 9 倍前後、PBR は 1 倍を割る。従業員 23 人という身軽さで、機動的に案件を拾える。大手が見向きしない小口の案件に特化している点も、競争を避ける強みになる。創業者のもとで意思決定も速い。経営の迷いが少ないのは、小さな会社の強みだ。今期の営業キャッシュフローの赤字も、成長のための在庫の積み増しで、案件を売れば現金に戻る。残高の拡大が続けば、時価総額は 2 倍にも 3 倍にもなりうる。
慎重な見方
利益の大半は不動産の売却益で、不動産市況と金利にそのまま左右される。10 年国債が 3% の世界では、キャップレートが上がり、売却益は細りやすい。今期の営業キャッシュフローは 6 億円の赤字で、売掛金と在庫が増えた。利益は出ていても、現金は出ていっている。
借入への依存は重い。純有利子負債は 17 億円で、自己資本比率は 7 ポイント低下した。金利が上がれば利払いが増え、不動産市況が悪化すれば在庫の評価損と返済の両方が襲う。
従業員 23 人の会社で、創業者に依存し、運用報酬の約 28% を一つのファンド(レジット)に頼る。アイザワ証券の販路が細れば、個人向けの組成が止まる。過去には 2009〜2012 年と 2018 年に赤字があり、2008 年の谷では存亡の危機にもなった。配当が利益の 1 割ほどと薄く、株主に報いる姿勢も弱い。運転資金の借入に頼って成長する構図は、金利が上がるほど重くなる。
どちらに重みを置いたか
ファンドの積み上げは確かだが、争点は利益の質だ。強気の見方の根拠である残高の増加は本物だが、利益の大半が売却益と借入に支えられる構造を、慎重な見方が突いている。
そこで確率は中立に 36%、やや悲観を 25%、悲観を 13% と厚めに置き、やや楽観以上を 26% にとどめた。結果として本質価値は今の時価総額を 3 割弱下回る。安全域は厚くない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 169 円63 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 14 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 82 円31 億円、今との差 +6.9%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 375 円141 億円 | 27 円10 億円 | +421.6% | +18.0% | 28 円11 億円 |
| やや楽観 | 19% | 274 円103 億円 | 23 円9 億円 | +285.1% | +14.4% | 56 円21 億円 |
| 中立 | 36% | 205 円77 億円 | 18 円7 億円 | +189.1% | +11.2% | 80 円30 億円 |
| やや悲観 | 25% | 60 円23 億円 | 7 円3 億円 | −13.2% | −1.4% | 17 円6 億円 |
| 悲観 | 13% | 13 円5 億円 | 0 円0 億円 | −82.7% | −16.1% | 2 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 169 円63 億円 | 14 円5 億円 | +137.7% | +9.0% | 183 円69 億円 |
今の株価時価総額 77 円29 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% ファンドの残高が膨らみ、報酬収入が柱になる 利益 10 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 375 円141 億円
運用・受託資産は車両・太陽光・不動産の各ファンドの追加組成で 10 年で 8 割近く増える。アイザワ証券以外の販路も広がり、報酬のうち一時的な部分への依存が下がる。収益率も物価の分は取れ、報酬収入は 20 億円を超える。
自社投資の側は、案件の数と規模を広げながらも、売却の目利きを保って営業利益率 12% を保つ。借入で在庫を抱える構造は変わらないが、ファンドへ早く売り抜ける回転が利益を作る。
営業利益は 14 億円台まで伸びる。ただし創業者に頼る小さな組織が、そこまで拡大を管理できるかは別の問題だ。配当は利益の 15% 程度にとどまる。
- アセットマネジメント(ファンドの組成・運用):数量 780(運用・受託資産の残高(億円・今の値段の実質))× 価格 0.03(残高あたりの収益率(報酬÷残高)。物価の分は報酬の上昇として入れる)→ 売上 22 億円・営業利益 10 億円。780.0 × 1 単位 0.0287(今の 1.37 倍)、営業利益率 44.0%
- インベストメントバンク(不動産・太陽光・車両への投資と売買):数量 28.0(年間の売買・運用案件数(件・推定))× 価格 2.76(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 9 億円。28.0 × 1 単位 2.76(今の 1.40 倍)、営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.34 倍、時価総額 133 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運用残高が 10 年で 1.8 倍近くに伸び、売却益に頼らない報酬の柱が育つ必要がある。従業員 23 人の会社では実現の確度は高くない。
やや楽観 19% ファンド事業が着実に積み上がる 利益 8 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 274 円103 億円
運用・受託資産は 10 年で 6 割ほど増え、報酬は物価の分も含めて 2 倍近くになる。車両ファンドや太陽光は小口で組成しやすく、毎年の積み上げが効く。
自社投資は案件数が横ばいから微増で、1 件あたりの規模が物価で大きくなる。営業利益率は 11%。不動産市況が堅調なら売却益が安定して出る。金利が緩やかに上がる中でも、小口の案件は買い手がつきやすい。
営業利益は 11 億円台。借入への依存は続くが、利払いを上回る売却益を稼ぎ続ける。ファンドの出口が途切れず、在庫の回転も保たれる。太陽光と車両の小口ファンドは、個人投資家の資金で毎年少しずつ組成でき、売上を安定させる。
- アセットマネジメント(ファンドの組成・運用):数量 700(運用・受託資産の残高(億円・今の値段の実質))× 価格 0.03(残高あたりの収益率(報酬÷残高)。物価の分は報酬の上昇として入れる)→ 売上 20 億円・営業利益 8 億円。700.0 × 1 単位 0.0284(今の 1.36 倍)、営業利益率 42.0%
- インベストメントバンク(不動産・太陽光・車両への投資と売買):数量 26.0(年間の売買・運用案件数(件・推定))× 価格 2.70(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 8 億円。26.0 × 1 単位 2.7(今の 1.37 倍)、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.66 倍、時価総額 95 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車両・太陽光など小口のファンドは組成が続いており、残高の増加は確度が比較的高い。
中立 36% 中立:ファンド残高は伸びるが、売却益が利益の大半を決める 利益 6 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 205 円77 億円
運用・受託資産の残高は 10 年で 5 割増え、報酬は物価を含めて 2 倍弱になる。報酬収入は安定した基盤になるが、一時的な報酬と運用報酬の比率は大きく変わらない。
自社投資は年 24 件前後で、1 件あたりの売上は物価並み。不動産の売却益は景気と金利に左右され、営業利益率は 10%。過去 12 年の最高 16.8% は特需の年のもので、再現を前提にしない。
営業利益は 9 億円台で、今の 1.6 倍。増えるのは物価の分が大きい。無借金ではなく、在庫を借入で抱える構造のため、利益の大半は在庫の積み増しに回り、配当は利益の 15% 程度と小さい。
- アセットマネジメント(ファンドの組成・運用):数量 660(運用・受託資産の残高(億円・今の値段の実質))× 価格 0.03(残高あたりの収益率(報酬÷残高)。物価の分は報酬の上昇として入れる)→ 売上 19 億円・営業利益 7 億円。660.0 × 1 単位 0.028(今の 1.34 倍)、営業利益率 40.0%
- インベストメントバンク(不動産・太陽光・車両への投資と売買):数量 24.0(年間の売買・運用案件数(件・推定))× 価格 2.64(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 6 億円。24.0 × 1 単位 2.64(今の 1.34 倍)、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 11.95 倍、時価総額 68 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車両・太陽光・不動産の積み上げは続くが、売却益の振れと資金調達の重さを抱え、中心の筋書きに最も厚く置いた。
やや悲観 25% 不動産市況が冷え、売却が遅れる 利益 2 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 60 円23 億円
金利上昇でキャップレートが上がり、買い手がつきにくくなる。自社投資は案件数が 3 割減り、売却を急ぐと値引きも出る。営業利益率は 7%。ファンド運用も残高の伸びが鈍り、報酬は一時的な部分が細る。
営業利益は 3 億円台まで下がる。借入の利払いが増え、利益はさらに削られる。配当は据え置きか減配。在庫の回転が遅れると、借入が積み上がる悪循環にもなる。
資金の出し手の姿勢が慎重になると、新しいファンドの組成が遅れる。会社は存続するが、成長の勢いは失う。借入の返済を優先するため、新しい案件を取る余力も限られる。
- アセットマネジメント(ファンドの組成・運用):数量 500(運用・受託資産の残高(億円・今の値段の実質))× 価格 0.03(残高あたりの収益率(報酬÷残高)。物価の分は報酬の上昇として入れる)→ 売上 13 億円・営業利益 5 億円。500.0 × 1 単位 0.0262(今の 1.25 倍)、営業利益率 35.0%
- インベストメントバンク(不動産・太陽光・車両への投資と売買):数量 18.0(年間の売買・運用案件数(件・推定))× 価格 2.36(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 3 億円。18.0 × 1 単位 2.36(今の 1.20 倍)、営業利益率 7.0%
倍率:ROE は 3.1% で k 8.75% を下回るので、ためた利益は額面未満。PER の上限は 1÷k=10.3 倍。ROE が k を大きく下回り、稼ぐ力は薄い。上限の約 7 割(7.0 倍)に置いた。
確率:金利上昇とキャップレートの上昇で不動産の売却益が細る形は、過去の低収益期(2018〜20 年)と重なる。現実味が高い。
悲観 13% 資金調達が止まり、在庫が売れず赤字に転じる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 13 円5 億円
資金の出し手が引き、新規のファンド組成が止まる。保有する不動産・太陽光・車両は売れず、評価損を計上する。借入の返済が重くのしかかり、営業利益は赤字に転じる。
運用報酬のうち、レジットのような一つのファンドに頼る部分が失われ、残高も 4 分の 3 に縮む。従業員が 23 人の会社では、人員を減らしても固定費は重い。
会社の価値は稼ぐ力ではなく、売れる資産で測る。借入が現金を大きく上回るため、床は今の自己資本の 15% にとどまる。創業者が離れれば、事業は一気に弱る。リーマン危機の後に多くの同業が姿を消した経緯と重なる。
- アセットマネジメント(ファンドの組成・運用):数量 330(運用・受託資産の残高(億円・今の値段の実質))× 価格 0.02(残高あたりの収益率(報酬÷残高)。物価の分は報酬の上昇として入れる)→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。330.0 × 1 単位 0.0235(今の 1.12 倍)、営業利益率 20.0%
- インベストメントバンク(不動産・太陽光・車両への投資と売買):数量 10.0(年間の売買・運用案件数(件・推定))× 価格 2.00(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。10.0 × 1 単位 2(今の 1.02 倍)、営業利益率 -5.0%
倍率:ROE がマイナスで稼ぐ力は無く、価値は売れる資産の税後で測る。今の自己資本 33 億円の約 15% を床とする。
確率:不動産ファンド市場が機能不全になった 2008〜09 年の谷(同社も赤字だった)に近い形が、10 年のうちに一度来る確率を 13% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アセットマネジメント(ファンドの組成・運用)
不動産・太陽光・車両のファンドを組成し、運用・管理の報酬と、物件を入れる時の一時的な報酬(アクイジションフィー)を受ける。
| 数量運用・受託資産の残高(億円・今の値段の実質) | 価格残高あたりの収益率(報酬÷残高)。物価の分は報酬の上昇として入れる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 440 | 0.02 | 9 | 4 |
| 10 年後 中立 | 660 | 0.03 | 19 | 7 |
取り方:売上 9.2 億円・営業利益 3.84 億円は開示(前期実績)。ファンド運用資産 233 億円と不動産等の受託資産 207 億円(太陽光 58 億円・車両 42 億円を含む)の合計 440 億円を数量とし、収益率は 9.2÷440=約 2.1% と置いた。一時的な報酬が混ざる。
インベストメントバンク(不動産・太陽光・車両への投資と売買)
自社で不動産・太陽光発電・車両などに投資し、ファンドや投資家へ売却して差益を得る。証券投資と金融商品の仲介も含む。
| 数量年間の売買・運用案件数(件・推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 25.0 | 1.97 | 49 | 5 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 2.64 | 63 | 6 |
取り方:売上 49.2 億円・営業利益 5.31 億円は開示(前期実績)。案件数は開示が無いので、年に約 25 件・1 件あたり約 2 億円と推定した(不動産の売却が中心で、太陽光・車両は小口)。
リスクと懸念
不動産市況と金利
利益の大半は不動産の売却益。10 年国債が 3% になる世界でキャップレートが上がれば、売却が遅れ、評価損も出る。
借入への依存
純有利子負債は 17 億円、自己資本比率は 45% で 7 ポイント低下。借入で在庫を積む構造で、金利上昇と市況悪化が同時に来ると苦しい。
創業者と小さな組織
従業員は 23 人で、創業者の田島克洋氏に頼る。人に頼る度合いが高く、後継や不祥事のリスクが大きい。
レジットへの報酬の偏り
アセットマネジメントの売上のうち、一つのファンド「レジット」関連が約 28%。ファンドの償還や運用方針の変更で、報酬が細る。
販路の偏り
個人向けの組成はアイザワ証券の取り扱いに頼る。販路が細れば、ファンドの組成が止まる。
営業キャッシュフローの赤字
今期は売掛金と在庫が増え、営業キャッシュフローは 6 億円の赤字。利益が出ても現金が出ていく状態が続けば、借入がさらに膨らむ。
今後の分かれ目
- 運用・受託資産の残高が 600 億円を超え、一時的でない報酬が増えたら
- 報酬の柱が育ったと見て、アセットマネジメントの利益率と数量の前提を上げる。
- 営業キャッシュフローが 2 期続けて赤字になったら
- 在庫の積み増しが回収されていない恐れ。やや悲観に確率を移す。
- 金利上昇でキャップレートが上がり、売却益が減ったら
- 自社投資の利益率を下げ、悲観側に重みを移す。
- 還元の方針(配当性向・自社株買い)が引き上げられたら
- 余った現金の戻り方を上げ、本質価値を見直す。
- レジットなど一つのファンドが償還・運用方針の変更になったら
- 報酬の前提を下げる。
- 創業者が経営から離れたり、持株を売却したりしたら
- 組織の人への依存が顕在化する。確率を下振れに寄せ、TOB の可能性も点検する。
見ておくもの
- 運用・受託資産の残高(ファンド 233 億円・受託 207 億円)の推移
- 営業キャッシュフローと販売用不動産・棚卸資産の残高
- 純有利子負債と自己資本比率
- レジット関連報酬の比率とアイザワ証券への依存度
- 配当方針と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
数量(運用残高・案件数)と価格(報酬率・1 件の売上)を別々に置き、物価の分は価格に入れた。自社投資の営業利益率は過去 12 年の山 16.8% でなく、実力に近い 10% を中立とした。ROE が k を下回るので PER の上限は 1÷k=10.3 倍で、中立はその約 8 割に置いた。今の株価や過去の倍率からは置いていない。利益が少ない分は 10 年で溜まる現金(戻り方 0.5)も時価総額に足されるので、PER に現金を混ぜていない。悲観は売れる資産の税後を床とした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.8→13.34 倍・やや楽観 PER 9→12.66 倍・中立 PER 8.5→11.95 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。