結論
ウィルは兵庫県宝塚市に本社を置く住宅の会社だ。中古住宅の仲介を入口に、改修工事、住宅ローンの手配、自社の分譲戸建までを一つの窓口で売る。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正というものだ。稼ぎの質は良いが、成長を借金と在庫で買っている分を割り引く必要がある。
利益の中心は仲介だ。手数料は物件の値段に比例し、在庫を持たないので利幅は3割近い。仲介で来た客に改修を勧め、ローンや保険の手数料も取る。この連携が、売上の半分を占める分譲の薄い利幅を補っている。
一方で、分譲は土地を借金で仕入れる商売だ。純負債は70億円と時価総額並みに膨らみ、2025年は値下げで分譲の利幅が3%まで落ちた。金利が上がれば、利払いと在庫の値下がりの両方が効く。
中古住宅への流れは追い風で、東京と大阪の都心への出店も効いている。ただし、成長の分だけ自己資本が積み上がり、ROEは今より下がっていく。筆者は、今の値段がこの良い面と重い面をほぼ映していると見る。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の目で見ると、ウィルは半分良い事業と、半分ふつうの事業の組み合わせだ。仲介は在庫を持たずに稼ぎ、改修とローンの手数料を重ねられる。ここは資本をほとんど使わない良い商売だ。
分譲はそうではない。土地を借金で仕入れ、建てて売る。うまく回れば利益は大きいが、景気が冷えれば在庫が値下がりし、借金だけが残る。今は売上の半分以上がこちらにある。経営が分譲の規模を追うほど、会社全体の質は分譲に引っ張られる。
オーナーとして払いたいのは、仲介の稼ぎに重みを置いた値段だ。今の時価総額は利益のおよそ8倍で、仲介の質を考えれば高くはない。ただ、借金と在庫の重さを差し引くと、安全域と呼べる余裕も大きくない。分譲の規模を抑え、仲介と改修に資本を寄せる姿勢が見えれば、筆者の評価は上がる。
今はその兆しより、分譲を伸ばす計画の方が目立つ。
何で稼ぐ会社か
事業は四つに分かれる。売上は2025年12月期で149億円、営業利益は13億円だった。
一つ目の流通事業は中古住宅の仲介だ。阪神間を地盤に、大阪・名古屋・東京に25店前後を構える。売り手と買い手から手数料を取り、在庫を持たない。売上は37億円だが、利益は12億円と全体の半分以上を稼ぐ。東京23区や大阪市の物件は値段が高く、同じ手間で手数料が大きい。
二つ目のリフォーム事業は、仲介で中古住宅を買う客に、購入の検討段階から改修を提案して請け負う。中古を買って直すという組み合わせで、売上は24億円、利幅は2割近い。
三つ目の開発分譲事業は、北摂や阪神間、名古屋で土地を仕入れ、自社ブランドの戸建を建てて売る。売上は81億円と最大だが、利幅は数%と薄い。土地の仕入れを借入で賄うため、在庫と借金の大半はここにある。
四つ目は住宅ローンの事務代行や保険代理、引越しの紹介などの付帯の手数料と、宝塚の商業施設の賃料だ。採用支援のコンサルも小さく営む。
四つの事業は互いに客を回し合う。仲介の店に来た客が分譲の家を見に行き、中古を選んだ客は改修を頼む。この流れが、店の数を増やすほど全体の売上を押し上げる仕組みだ。
優良さと弱いところ
強みは、仲介を入口にした一つの窓口の仕組みだ。客は物件探しと改修とローンを別々に頼む手間が省け、会社は1人の客から何度も手数料を取れる。仲介の店は地域の売り物件を集める力が要り、阪神間では長年の地盤がある。
弱みは、利益の半分を稼ぐ仲介の堀がそれほど深くないことだ。手数料の上限は法律で決まり、大手の仲介会社やネットの仲介も同じ客を追う。分譲は土地の仕入れの競争が激しく、値決めは市場に従う。2025年は値下げで分譲の利幅が半分近くに落ちた。
資本効率はこれまで高かった。ROEは過去10年の中央値で14%台だ。ただ、配当性向は3割で利益の7割を残し、その多くが分譲の在庫に回っている。自己資本比率は3割強で、借金に頼る形が続く。経営は創業者の色が濃く、出店と分譲の拡大に前のめりな面がある。
筆者がいちばん評価するのは、仲介の利益が在庫を持たずに出ている点だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
住宅の市場は、新築から中古へと重心が移っている。新築の建築費と土地代が上がり、都心では新築の着工が伸び悩む。その分、中古住宅を買って直す人が増える。国も中古住宅の流通と改修を後押ししている。中古の成約件数は全国で横ばいから微増だが、改修と組み合わせた需要は伸びている。
一方で、分譲戸建の市場は細る。分譲一戸建の着工は2025年に11.6万戸で、人口減と資材高で年3〜5%減る見方が中立だ。建売の大手は飯田グループとオープンハウスで、地場の中堅は土地の仕入れで消耗戦になりやすい。
金利も効く。住宅ローンの金利が上がれば、買い手の予算は縮む。仲介の手数料は物件の値段に比例するので、値段が下がれば手数料も減る。分譲は在庫の値下がりと利払いの増加が重なる。2008年のリーマン危機では、ウィル自身も赤字に転落した。
仲介の競争相手は、三井のリハウスや住友不動産販売といった大手と、地域の中小の店だ。ネットの仲介は手数料を下げて客を集めるが、売り物件を集める力では店の地盤がまだ勝つ。
10年で見れば、中古と改修の市場は伸び、分譲は細るという二つの流れが、ウィルの中でぶつかる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は連結純利益の30%程度を目安とし、業績に連動させる。2025年12月期の配当総額は約2.4億円だった。自社株買いはほとんど無い。創業者が大株主で、買われる側に回る見込みは薄い。
資本の多くは分譲の土地と出店に向かう。2025年は分譲用の棚卸資産が23%増え、短期と長期の借入を増やした。社債も使う。東京圏は10店体制を目指し、2026年3月に文京区の茗荷谷に店を出した。
のれんはわずかで、大きな買収はしていない。成長は出店と仕入れという自前の投資で進めてきた。金利が上がる中で、借入に頼る分譲の拡大をどこまで続けるかが、資本政策の分かれ目になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ウィルの本当の姿は、在庫を持たない仲介と改修の会社だ。仲介の利益は2025年に38%増え、2026年の第1四半期もさらに倍になった。東京23区と大阪市の高い物件を扱う店が増え、手数料の単価が上がっている。東京は10店体制を目指していて、店が育つほど利益は伸びる。
中古住宅への流れは構造的だ。新築は建築費が上がって手が届きにくくなり、中古を買って直す人が増える。ウィルは購入の段階から改修を提案し、受注残は1年で7割以上増えた。ローンや保険の手数料も重なる。
分譲も名古屋で本格的に動き出し、通年で引き渡す形に変えて在庫の回転を上げている。会社は2026年に過去最高の利益を見込む。今の時価総額は利益の8倍ほどで、仲介と改修の成長を考えれば安い。
借金の多さも見かけほど怖くない。借入の大半は売るための在庫の裏付けがあり、仲介の利益が利払いを十分に賄う。リーマン危機の頃と違い、今は仲介と改修という在庫を持たない柱が利益の半分以上を占める。
慎重な見方
成長の中身は借金で買った在庫だ。純負債は70億円に膨らみ、自己資本の1.3倍を超える。分譲の利幅は2025年に3%まで落ち、値下げで在庫を回した。金利が上がれば、利払いが増え、買い手の予算も縮む。分譲の在庫は値下がりし、評価損が利益を消す。2008年にはウィル自身が赤字に落ちた。
仲介も無敵ではない。手数料の上限は法律で決まり、ネットの仲介は手数料を下げて客を奪いに来る。大手の三井のリハウスや住友不動産販売も東京と大阪の都心にいる。地方の店では人口が減る。中古の成約件数は全国でほぼ横ばいで、伸びているのはシェアを取りに出店しているからだ。出店は費用を先に食う。
配当性向は3割で、利益の多くは分譲の土地に回る。資本の使い方が株主の側を向いているとは言いにくい。
今の好調は低い金利の最後の局面に乗っているだけかもしれない。金利が普通の水準に戻る10年で、同じ成長を続けられる保証は無い。出店の数で伸ばす成長は、いつか必ず鈍る。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠があり、確率は中立に厚く置いた。仲介と改修の稼ぎは本物で、都心への出店も数字に表れている。一方で、売上の半分を占める分譲は借金頼みで、金利と在庫の値下がりに弱い。悲観側はやや厚めにし、同じ領域の分譲の会社と同じ程度の重みとした。仲介の比重がさらに高まれば楽観側に寄せる余地があるが、今はまだ分譲が売上の過半を占める。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,657 円191 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 234 円27 億円)。 今の値に割り戻すと 947 円109 億円、今との差 +58.9%、 期待の年率 +12.2%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,566 円412 億円 | 381 円44 億円 | +562.3% | +20.8% | 316 円36 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,647 円306 億円 | 312 円36 億円 | +396.5% | +17.4% | 651 円75 億円 |
| 中立 | 35% | 1,908 円220 億円 | 260 円30 億円 | +263.7% | +13.8% | 759 円88 億円 |
| やや悲観 | 23% | 431 円50 億円 | 156 円18 億円 | −1.5% | −0.1% | 135 円16 億円 |
| 悲観 | 12% | 187 円22 億円 | 69 円8 億円 | −56.9% | −8.1% | 31 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,657 円191 億円 | 234 円27 億円 | +217.3% | +12.2% | 1,891 円218 億円 |
今の株価時価総額 596 円69 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 都心の仲介が育ち、改修と合わせて利益が倍以上に 利益 21 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 3,566 円412 億円
東京圏は10店体制を超え、大阪市内と名古屋にも都心の店を増やす。高い物件の仲介で手数料の単価が上がり、取扱件数は今の1.6倍になる。購入の段階からの改修の提案が定着し、改修の件数も5割増える。
分譲は名古屋の地盤が育ち、戸数は3割増える。通年で引き渡す形が根付き、値下げせずに在庫を回せるようになる。利幅は6%に戻る。営業利益は今の2.5倍を超え、借入は増えるが利益の伸びが上回る。会社は配当を業績に沿って増やす。
仲介の比重が高まり、会社は在庫を持たない稼ぎ方へと重心を移す。借入は増えても、利益に対する重さは今より軽くなる。
- 流通事業(中古住宅の仲介):数量 6,400(仲介の取扱件数(件・片手換算・推定))× 価格 0.01(1 件あたりの仲介手数料(億円))→ 売上 81 億円・営業利益 24 億円。件数 1.6 倍・単価 1.38 倍
- リフォーム事業:数量 890(請負の引き渡し件数(件・推定))× 価格 0.05(1 件あたりの請負額(億円))→ 売上 48 億円・営業利益 10 億円。件数 1.5 倍・単価 1.36 倍
- 開発分譲事業(戸建):数量 234(分譲戸建の引き渡し戸数(戸・推定))× 価格 0.56(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 131 億円・営業利益 8 億円。戸数 1.3 倍・単価 1.25 倍
- 不動産取引派生・賃貸・その他:数量 6,000(仲介・分譲の取引件数(件・推定))× 価格 0.00(1 件あたりの付帯の売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 4 億円。件数 1.5 倍
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍。全体の PER 18.44 倍、時価総額 390 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東京と大阪の都心の店が育ち、改修と分譲も伸び続ける組み合わせ。金利の上昇の中で全部がうまく回る必要があり、低い確率に置く。
やや楽観 22% 出店が実を結び、分譲も持ち直す 利益 16 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 2,647 円306 億円
東京圏の10店体制が数年で整い、仲介の取扱件数は今の1.45倍になる。手数料の単価は物件の値段とともに上がる。改修は仲介の客から受注を重ね、件数は3割強増える。
分譲は戸数を15%増やし、値下げの年を過ぎて利幅は5%台に戻る。金利の上昇で利払いは増えるが、仲介の利益で吸収できる。配当は利益の3割を配る方針を守り、自己資本は着実に積み上がる。
仲介と改修の利益が全体の6割を超え、分譲の浮き沈みが会社全体を揺らす度合いは今より小さくなる。ただし、自己資本が利益以上に積み上がるので、ROEは今より下がる。資本の効率を保つには、還元を厚くする必要がある。
- 流通事業(中古住宅の仲介):数量 5,800(仲介の取扱件数(件・片手換算・推定))× 価格 0.01(1 件あたりの仲介手数料(億円))→ 売上 72 億円・営業利益 21 億円。件数 1.45 倍・単価 1.36 倍
- リフォーム事業:数量 801(請負の引き渡し件数(件・推定))× 価格 0.05(1 件あたりの請負額(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 8 億円。件数 1.35 倍・単価 1.34 倍
- 開発分譲事業(戸建):数量 207(分譲戸建の引き渡し戸数(戸・推定))× 価格 0.55(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 113 億円・営業利益 6 億円。戸数 1.15 倍・単価 1.22 倍
- 不動産取引派生・賃貸・その他:数量 5,400(仲介・分譲の取引件数(件・推定))× 価格 0.00(1 件あたりの付帯の売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 4 億円。件数 1.35 倍
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.66 倍、時価総額 284 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の出店計画と2026年の予想の延長で、仲介と改修が伸び、分譲も利幅を少し戻す筋書き。足元の数字に沿うので厚めに置く。
中立 35% 仲介と改修は伸びるが、自己資本が積み上がりROEは下がる 利益 12 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 1,908 円220 億円
仲介は都心の出店でシェアを取り、取扱件数は今の1.3倍になる。手数料は物件の値段とともに物価並みに上がる。ただネットの仲介との競争で、利幅は今の3割弱から少し下がる。改修は件数が25%増え、利幅は2割弱を保つ。
分譲は着工の減少と土地の仕入れの競争で戸数は横ばい、利幅は4%台にとどまる。借り換えのたびに金利が上がり、利払いは年3億円を超える。営業利益は今の1.6倍になるが、配当性向3割で自己資本は2倍強に積み上がる。ROEは10%を切る水準まで下がる。
利益は伸びても、株主の価値の伸びは利益の伸びほど大きくない。
- 流通事業(中古住宅の仲介):数量 5,200(仲介の取扱件数(件・片手換算・推定))× 価格 0.01(1 件あたりの仲介手数料(億円))→ 売上 64 億円・営業利益 17 億円。件数 1.3 倍・単価 1.34 倍
- リフォーム事業:数量 741(請負の引き渡し件数(件・推定))× 価格 0.05(1 件あたりの請負額(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 7 億円。件数 1.25 倍・単価 1.34 倍
- 開発分譲事業(戸建):数量 180(分譲戸建の引き渡し戸数(戸・推定))× 価格 0.54(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 97 億円・営業利益 4 億円。戸数据え置き・単価 1.2 倍
- 不動産取引派生・賃貸・その他:数量 4,800(仲介・分譲の取引件数(件・推定))× 価格 0.00(1 件あたりの付帯の売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。件数 1.2 倍
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.66 倍、時価総額 199 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種のノートの分譲戸建の数量の減少と、中古住宅への流れを合わせた落としどころ。最も起こりやすい筋書きとして厚く置く。
やや悲観 23% 金利の上昇で売買が冷え、分譲の在庫が重荷になる 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 431 円50 億円
住宅ローンの金利が上がり、買い手の予算が縮む。中古住宅の値段は伸びが止まり、仲介の件数は出店しても今とほぼ同じにとどまる。手数料の単価は物価ほど上がらず、ネットの仲介に客を奪われて利幅は2割強に落ちる。
分譲は売れ残りを値下げで処分し、戸数は4分の1減り、利幅は1%台になる。借入の金利は上がり続け、利払いが利益の多くを食う。会社は出店を止め、配当は利益に沿って減る。
仲介と改修は黒字を保つが、分譲の重さで会社全体の利益は今の3分の1ほどに落ちる。在庫を減らして借入を返す数年が続き、成長の物語はいったん止まる。
- 流通事業(中古住宅の仲介):数量 4,200(仲介の取扱件数(件・片手換算・推定))× 価格 0.01(1 件あたりの仲介手数料(億円))→ 売上 46 億円・営業利益 10 億円。件数 1.05 倍・単価 1.2 倍
- リフォーム事業:数量 593(請負の引き渡し件数(件・推定))× 価格 0.05(1 件あたりの請負額(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 4 億円。件数据え置き・単価 1.2 倍
- 開発分譲事業(戸建):数量 135(分譲戸建の引き渡し戸数(戸・推定))× 価格 0.47(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 64 億円・営業利益 1 億円。戸数 0.75 倍・単価 1.05 倍
- 不動産取引派生・賃貸・その他:数量 4,000(仲介・分譲の取引件数(件・推定))× 価格 0.00(1 件あたりの付帯の売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。件数据え置き
倍率:事業の ROE 2.9% は資本コスト 7.75% を下回るので PER は 1÷k の 12.88 倍まで。稼ぐ力(純利益 2.66 億円 ÷ k)で測った。
確率:住宅ローンの金利の上昇で売買が冷え、分譲の利幅がほぼ消える筋書き。借金で在庫を持つ形なので、同じ領域の分譲の会社と同程度の確率を置く。
悲観 12% 分譲の在庫が値崩れし、赤字に転落する 利益 −5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 187 円22 億円
金利の上昇と景気の後退が重なり、住宅の売買が急に冷える。分譲の在庫は売れ残り、値下げと評価損で分譲は赤字になる。戸数は半分に減る。仲介の件数も2割減り、ネットの仲介の値下げ競争で利幅は1割台に落ちる。
借入の返済のために在庫を投げ売りし、会社は数年にわたって赤字を出す。配当は止まり、出店した店の一部を閉じる。2008年の時と同じく、借金で在庫を持つ形の弱さがそのまま出る。
仲介の店は残るので会社は生き延びるが、自己資本は減り、株主の取り分は大きく目減りする。立て直しには数年を要する。出店の計画も白紙に戻る。
- 流通事業(中古住宅の仲介):数量 3,200(仲介の取扱件数(件・片手換算・推定))× 価格 0.01(1 件あたりの仲介手数料(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 4 億円。件数 0.8 倍・単価 1.05 倍
- リフォーム事業:数量 445(請負の引き渡し件数(件・推定))× 価格 0.04(1 件あたりの請負額(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。件数 0.75 倍・単価 1.05 倍
- 開発分譲事業(戸建):数量 90.0(分譲戸建の引き渡し戸数(戸・推定))× 価格 0.43(1 戸あたりの販売額(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 −2 億円。戸数半減・在庫の評価損
- 不動産取引派生・賃貸・その他:数量 3,200(仲介・分譲の取引件数(件・推定))× 価格 0.00(1 件あたりの付帯の売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。件数 0.8 倍
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。床は売れる資産で、今の自己資本 54 億円の 4 割にあたる 21.6 億円。内訳は floor_assets_why。
確率:リーマン危機の時のように分譲の在庫が値崩れし、赤字に転落する構造的な負け。借金で在庫を持つ回転型の宿命として、同じ領域の会社並みの確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
流通事業(中古住宅の仲介)
関西・中部・東京の 25 店前後の店で、中古住宅の売買を仲介して手数料を得る。ワンストップの入口で、利益の過半を稼ぐ。
| 数量仲介の取扱件数(件・片手換算・推定) | 価格1 件あたりの仲介手数料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,000 | 0.01 | 37 | 12 |
| 10 年後 中立 | 5,200 | 0.01 | 64 | 17 |
取り方:外部売上 36.64 億円を、阪神間の中古住宅 3 千万円台の片手の手数料約 92 万円(上限の 3%+6 万円に近い)で割って件数を推定(件数の開示は無い)。利益はセグメント利益 12.12 億円(内部売上 4 億円を含む)。
リフォーム事業
仲介で中古住宅を買う客に、購入の検討段階から改修を提案して請け負う。
| 数量請負の引き渡し件数(件・推定) | 価格1 件あたりの請負額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 593 | 0.04 | 24 | 5 |
| 10 年後 中立 | 741 | 0.05 | 40 | 7 |
取り方:外部売上 23.72 億円を、中古住宅の全面改修 1 件 400 万円で割って件数を推定。請負件数は前期比 18.8% 増・単価 7.5% 増の開示。利益はセグメント利益 4.65 億円。
開発分譲事業(戸建)
阪神間・北摂・名古屋で土地を仕入れ、自社ブランドの戸建住宅を建てて売る。売上の過半を占めるが利幅は薄い。
| 数量分譲戸建の引き渡し戸数(戸・推定) | 価格1 戸あたりの販売額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 180 | 0.45 | 81 | 3 |
| 10 年後 中立 | 180 | 0.54 | 97 | 4 |
取り方:外部売上 80.89 億円を、北摂・名古屋の分譲戸建 1 戸約 4,500 万円で割って戸数を推定。2025 年は一部の分譲地の値下げで利益率 3.2%(前期は約 5%)。
不動産取引派生・賃貸・その他
住宅ローンの事務代行・保険代理・引越しの紹介などの手数料、宝塚の商業施設の賃料、採用コンサルなど。
| 数量仲介・分譲の取引件数(件・推定) | 価格1 件あたりの付帯の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,000 | 0.00 | 8 | 2 |
| 10 年後 中立 | 4,800 | 0.00 | 12 | 3 |
取り方:派生 2.70・賃貸 2.33・その他 2.50 の外部売上 7.53 億円を、仲介の取扱件数で割った付帯の売上。利益は 1.42−0.22+0.73=1.93 億円。
リスクと懸念
住宅ローン金利の上昇
金利が上がれば買い手の予算が縮み、中古住宅の値段と取引の件数がともに落ちる。仲介の手数料は物件の値段に比例し、分譲は売れ残りが増える。利払いの増加も同時に効く。
分譲の在庫と借入
純負債は70億円で、多くは分譲の土地と建物の在庫を賄う借入だ。在庫が値下がりすれば評価損が出て、借金だけが残る。2025年はすでに一部の分譲地を値下げした。
仲介の手数料の競争
手数料の上限は法律で決まっていて、上げる余地は無い。ネットの仲介は手数料を下げて客を集め、大手の仲介も都心で競う。手数料の値下げが広がれば、利益の柱が細る。
出店の費用と人材
東京と大阪の都心への出店は、店が育つまで費用が先に出る。仲介の営業の人材の採用と定着も要る。店が想定ほど育たなければ、出店は利益の重荷になる。
創業者の経営と資本の使い方
創業者が大株主で、経営は拡大に前のめりな面がある。配当性向は3割で、利益の多くは分譲の在庫に回る。規模を追う投資が資本コストに見合わなければ、株主の価値は伸びない。
今後の分かれ目
- 住宅ローンの金利が2%台後半まで上がる
- 売買が冷え、分譲の在庫が重くなる。やや悲観に近づく。
- 東京圏の10店体制が整い、仲介の利益が年15億円を超える
- 仲介の比重が増して利益の質が上がり、やや楽観に近づく。
- 分譲の利幅が2年続けて3%を下回る
- 在庫の回転に無理が出ている印で、中立より下を見る。
- 配当性向を上げる、または分譲の在庫を絞って借入を減らす
- 資本の使い方が株主の側を向き、評価が上がる。
- ネットの仲介が手数料の半額を広く打ち出す
- 仲介の単価が下がり、利益の柱が細る。
見ておくもの
- 住宅ローン金利(変動・固定)
- 近畿・中部・首都圏の中古住宅の成約件数(レインズ)
- 流通の店舗数と手数料の単価
- 分譲の棚卸資産と利益率
- 純有利子負債と支払利息
- リフォームの受注残
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER(8 倍前後)から置かず、10 年後の事業の ROE と資本コスト 7.75%、普通の堀(残る割合 2 分の 1)から正当化 PER を出した。中立は ROE が k をわずかに上回るので 1÷k の下限が効いた。悲観は稼ぐ力と売れる資産の床で、過去の PBR の底は使っていない。2025 年の純利益は減損 2.22 億円を含むので、流れの起点は税後で足し戻した 8.2 億円とした。今の時価総額とは最後に比べただけ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.24→18.44 倍・やや楽観 PER 11.11→17.66 倍・中立 PER 11.11→16.66 倍・やや悲観 PER 11.11→12.88 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.5%で9.0%。同じ領域のオープンハウス(9.0%)と同じ水準。仲介の比重が高い分を分譲の在庫と借金の重さが打ち消す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 7.75%。