結論
ムゲンエステートは、首都圏を中心に中古の一棟ビル・マンションや戸建てを買い取り、手直しして売る会社だ。売上の約96%が不動産の売買で、残りが賃貸。2025年12月期は営業利益110億円と過去最高だった。
筆者の結論は「やや割高」だ。理由は、利益が景気ではなく、海外投資家の資金と銀行の融資姿勢に大きく左右されるからである。2026年の中間期は、海外需要が細り、営業利益が前年の半分に落ちた。会社は通期の営業利益を86億円へ引き下げている。
強みは、物件を早く見つけて買う目利きと資金力、そして中国・台湾・香港の投資家に売る販路だ。ただし値段は市場が決める。仕入れ値も出口の値段も自分では動かせない。堀、つまりまねされにくい強みは弱い。
稼ぎの源は「何件売るか」と「1件いくらで売るか」である。物価は3%で進む前提なので、1件あたりの値段は10年で1.34倍になる。一方で、件数は人口減と競争で横ばいが精いっぱいだ。
借金は627億円と重く、借り換えで利払いが増える。ROEは足元の18%台から、10年後の中立では9%前後まで下がる。資本コストは8.5%で、ROEがそれを下回るため、高い倍率はつかない。
配当は性向40%以上の方針で、利回りは高い。それでも、利益が谷に入れば配当も減る。実際に2026年は減配の予想に変わった。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を1割強下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「利益の質」と「資本の使い道」がいちばんの論点になる。
この会社は、毎年自分で物件を買い、売る。買った物件の値段が変わらなければ、利益は積み上がる。だが10年先も同じ利幅が続く保証はない。ほかの会社が同じ物件を探している以上、ここには堀がない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、見かけの純利益より小さい。事業を続けるために、在庫を持つ借金を毎年借り換え、増やす必要があるからだ。物価が上がれば、同じ件数でも在庫に要る資金は増える。
2025年のROEが高いのは、市況の追い風と、在庫を素早く売り切った効果が重なったからだ。筆者は、これを10年続く力とは見ない。ROEが資本コストを下回る年が長く続く姿を、中立に置く。
安全域は、悲観の筋書きでも自己資本の5〜6割が残る点にある。在庫の投げ売りで損が出ても、一棟の収益物件には賃料の下支えがあるからだ。それでも、割安と言えるだけの厚みはない。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、中古不動産の買取再販である。物件を買い、内装や設備を直して価値を高め、買い手に売る。仕入れてから売るまでの期間が短いほど、少ない資本で多く稼げる。
柱は2つある。1つは投資用不動産で、一棟のマンション・ビル・アパートを、国内の個人や法人、中国・台湾・香港などの海外投資家に売る。5億円を超える大型物件が投資用の売上の約半分を占める。もう1つは居住用不動産で、マンション・戸建て・土地を買い、実需の買い手に売る。
ほかに、自社で建てて売る開発事業(サイドプレイス・シリーズ)と、小口の出資で投資家を募る不動産特定共同事業がある。賃貸その他は売上の約4%で、仕入れた物件の保有中の賃料や管理が中心だ。
新しい取り組みは、2025年1月に設立したムゲンアセットマネジメントだ。私募ファンドを組成し、運用の手数料を積み上げる狙いである。会社は2018年にいったんアセットマネジメントに参入し、2020年に撤退した過去がある。今回は数年かけて育てる構えだ。
店は首都圏のほか大阪にあり、京都・沖縄など西日本へ広げる計画だ。従業員は約500人で、平均年齢は35歳と若い。営業が1人あたりの件数を増やせるかが、成長の条件になる。
優良さと弱いところ
優良さは「並み」だ。高い稼ぎ方ではあるが、長く続く堀があるとは言いにくい。
強みは3つある。物件の情報を早くつかんで買う力、金融機関から資金を引く力、海外の購入者へつなぐ販路だ。2025年12月期のROEは約19%で、中計の目標20%にほぼ届いた。在庫を回して資本を使い回すやり方がよく効いている。
弱みも明らかだ。仕入れ値も売る値段も市場が決める。同じ買取再販のトーセイ、LAホールディングス、サンフロンティア不動産、中古マンション再生のインテリックスなどと、同じ物件を取り合う。差が出るのは目利きと機動力であって、価格を決める力ではない。
もう1つの弱みは、利益の振れの大きさだ。過去12年の営業利益率は7%から16%の間を動いた。2020年には純利益が6億円まで落ちている。大型物件が1件売れるかどうかで、四半期の利益が動く。
経営は創業家の持分が厚く、素早い。一方で、少数株主から見ると、資本の使い方が一部の人の判断に偏る面もある。自社株買いは過去に5億円の枠を使った実績があるが、継続的ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この業界の値段を決めるのは、金利、銀行の融資姿勢、海外の資金の3つである。
2025年の日本の不動産投資額は、JLLで約6.2兆円、CBREで約6.5兆円と過去最高だった。海外投資家の買いが2兆円を超えた。収益を生む不動産の総額(ストック)は約290兆円で、買取再販が取れるのはその一部にすぎない。ムゲンエステートの投資用の売上は、取引額に対して0.6%ほどと筆者は見積もる。
追い風が止まった。日銀は2025年12月に政策金利を0.75%へ上げた。2026年に入って海外投資家の需要が細り、高価格帯と大型物件の売れ行きが落ちた。会社の中間期の粗利率は3.9ポイント下がった。
競合は分散している。都心の中小型ビルならトーセイ、サンフロンティア不動産、LAホールディングス。中古マンション再生ならインテリックス。戸建ての買取再販ならカチタスが大手だ。参入が容易で、仕入れの競争が激しいほど、利幅は薄くなる。
2008〜2009年の谷では、同業の多くが在庫の評価損と資金繰りで苦しみ、黒字倒産も出た。この型の事業は、市況が崩れると在庫が重荷になる。今の金利水準は当時と違うが、借り換えで金利が上がる点は同じだ。
10年の姿としては、物件の値段は物価並みに上がるが、売れる件数は人口減と競争で伸びにくい。利益が伸びるかどうかは、件数を保てるかと粗利率を守れるかにかかる。
資本政策と M&A
資本政策は、配当性向40%以上を柱にしている。2025年12月期の性向は40.0%だった。2026年12月期は当初、増配を予想していたが、業績の下方修正で減配に転じた。方針どおり、利益に連動して減る。
自己株買いは2024年に5億円の枠を使った。総還元性向は、その年は50%超だった。中計では株主還元に80〜100億円を充てる想定を示していた。
借金は買取のための資金だ。有利子負債は627億円で、自己資本比率は33%台である。中計は自己資本比率30〜35%、ネットDEレシオ1.2〜1.5倍を保つとしている。借金は物件の担保で支えられているが、金利が上がれば利払いは確実に増える。
M&Aは目立たない。大株主は創業家と資産管理会社で、合計すると3割台にのぼる。TOB(株式公開買い付け)で買われる可能性は、kabufuの推計で10年以内に24%とされる。ただし、筆者は筋書きの確率に直接は織り込んでいない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今は谷だが、10年では追い風が戻る。日本の不動産は、海外の資金から見て依然として割安だ。円が安く、利回りも国内金利を上回る。海外投資家は2025年に2兆円超を買い越した。需要の細りは一時的で、2027年から再び売れ始める。
ムゲンエステートは、中国・台湾・香港・韓国へ売る販路をすでに持つ。大阪、京都、沖縄へ店を広げ、物件の種類も物流施設、ホテル、ヘルスケア施設へ広げる。1人あたりの取扱件数が増えれば、売上は物価を超えて伸びる。
ムゲンアセットマネジメントの私募ファンドが育てば、売って終わりの商売に、運用手数料という積み上がる収益が加わる。ここが立ち上がれば、利益の振れが小さくなり、倍率も高く評価される。
配当性向40%以上の方針と自己資本比率33%の財務は、利益が戻れば株主還元を一気に増やせる余力でもある。2024年のように、自社株買いを重ねることもできる。
営業利益率が15%台、件数が2割増えれば、10年後の営業利益は180億円を超える。ROEも12%台に乗り、資本コストをはっきり上回る。
慎重な見方
2025年の好業績は、海外マネーと緩い金利が重なった「特別な年」だ。2026年の営業利益は、会社自身が22%減と見ている。しかも下期に回復する保証はない。中間期は売上が19%減、営業利益が49%減だった。
日本の金利は上がり始めたばかりである。10年国債3%が定着すれば、収益物件の利回り(キャップレート)が上がり、物件の値段は下がる。仕入れて売るまでの間に値段が下がれば、利幅は消える。
競争も激しい。参入しやすく、同じ物件を狙う会社が多い。仕入れ値が上がれば、粗利率はさらに下がる。中計の目標だった「売上CAGR20%」は、すでに引き下げられた。
借金は627億円と重い。借り換えのたびに金利が上がり、純利益は営業利益ほど伸びない。ROEは10年で9%前後まで下がり、資本コスト8.5%を下回る。ROEが資本コストに届かない会社に、高い倍率をつける理由はない。
さらに、海外投資家向けの販売は、為替や中国の規制といった、会社の手の届かない要因で止まる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は、利益の水準が谷から回復するだけで、ROEが資本コストを下回る姿が中立になるからだ。強気の言い分にも根拠はあり、海外の資金が戻る可能性を、やや楽観に2割置いた。
確率は、楽観8%・やや楽観20%・中立36%・やや悲観24%・悲観12%とした。借金の重さと、融資の引き締めで販売が止まる谷の怖さから、悲観側を厚くしている。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,941 円693 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 926 円218 億円)。 今の値に割り戻すと 1,916 円452 億円、今との差 +19.8%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,578 円1,315 億円 | 1,366 円322 億円 | +334.0% | +15.8% | 555 円131 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,312 円1,017 億円 | 1,196 円282 億円 | +244.3% | +13.2% | 1,102 円260 億円 |
| 中立 | 36% | 3,290 円776 億円 | 1,014 円239 億円 | +169.0% | +10.4% | 1,549 円365 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,440 円340 億円 | 759 円179 億円 | +37.5% | +3.2% | 528 円124 億円 |
| 悲観 | 12% | 848 円200 億円 | 254 円60 億円 | −31.1% | −3.7% | 132 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,941 円693 億円 | 926 円218 億円 | +141.7% | +9.2% | 3,867 円912 億円 |
今の株価時価総額 1,600 円377 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 海外資金が戻り、販路と私募ファンドで利益が伸びる 利益 95 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 5,578 円1,315 億円
2026年の谷は一年で終わり、海外と国内の資金が戻る。日本の不動産は海外から見て割安で、円安と金利差が続く。ムゲンエステートは中国・台湾・香港に加え、韓国の購入者も掘り起こす。
大阪・京都・沖縄の店が立ち上がり、営業1人あたりの件数が増える。物流施設・ホテル・ヘルスケア施設へ品ぞろえを広げ、大型物件の粗利率も戻る。
ムゲンアセットマネジメントの私募ファンドが育ち、運用手数料が安定収益の柱になる。10年後の営業利益は180億円台、営業利益率は15%台で、2025年の山にあと一歩まで戻る。ROEは12%台に乗り、資本コストをはっきり上回る。
- 投資用不動産の買取再販:数量 150(年間の販売件数(件))× 価格 4.82(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 724 億円・営業利益 123 億円。150 × 4.824、営業利益率 17%
- 居住用・開発ほかの売買:数量 320(年間の販売件数(件))× 価格 1.25(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 401 億円・営業利益 38 億円。320 × 1.252、営業利益率 10%
- 賃貸その他:数量 420(賃貸収入を生む保有不動産の簿価(億円・今の値段のまま))× 価格 0.16(簿価あたりの収入(比率)× 賃料の物価の指数)→ 売上 66 億円・営業利益 22 億円。420 × 0.158、営業利益率 33%
倍率:事業の純利益 95 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.83 倍、時価総額 1,315 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:資金流入が10年続き、粗利率も守られるには、金利と為替の運に恵まれる必要がある。借金の重さも考え、1割に届かない確率にとどめた。
やや楽観 20% 市況が戻り、計画の7割まで進む 利益 78 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 4,312 円1,017 億円
海外投資家の需要は2027年ごろから戻り、国内の法人・個人の買いが下支えする。仕入れの競争は続くが、金融機関との関係と目利きで、件数は今より1〜2割増える。
価格は物価並みに上がり、大型物件の割合も戻る。営業利益率は14%台で、2025年の山には届かない。大型物件の販売が戻る一方、仕入れ値の上昇で、粗利率は山の水準までは戻らない。
私募ファンドは小さく始まり、手数料収益が少しずつ加わる。10年後の営業利益は150億円前後で、ROEは11%と資本コストを少し上回る。配当性向40%の方針を保ち、自社株買いも時々行う。
- 投資用不動産の買取再販:数量 135(年間の販売件数(件))× 価格 4.65(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 627 億円・営業利益 100 億円。135 × 4.645、営業利益率 16%
- 居住用・開発ほかの売買:数量 300(年間の販売件数(件))× 価格 1.22(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 365 億円・営業利益 31 億円。300 × 1.216、営業利益率 8%
- 賃貸その他:数量 350(賃貸収入を生む保有不動産の簿価(億円・今の値段のまま))× 価格 0.16(簿価あたりの収入(比率)× 賃料の物価の指数)→ 売上 55 億円・営業利益 18 億円。350 × 0.158、営業利益率 32%
倍率:事業の純利益 78 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.12 倍、時価総額 1,017 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中計の目標線に近い、ほぼ計画どおりの姿だ。計画の達成実績があり、2割を置く。
中立 36% 山の利益は戻らず、件数は横ばいで普通の会社になる 利益 58 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,290 円776 億円
追い風は戻らず、市況は普通に戻る。件数は10年で今とほぼ同じ水準にとどまる。人口減と競争で、増えもしないが、減りもしない。
価格は物価並みに上がり、売上は物価の分だけ増える。粗利率は2025年の山から下がり、営業利益率は12〜13%に落ち着く。これは2015〜2018年や2023年の水準に近い。
借金は在庫の増加とともに膨らみ、借り換えで利払いが増える。10年後の営業利益は110億円強、純利益は60億円弱で、今の水準とほぼ変わらない。自己資本は650億円ほどに積み上がるが、稼ぐ力は伸びないので、ROEは9%まで下がる。資本コストを下回る、普通の不動産会社になる。
- 投資用不動産の買取再販:数量 118(年間の販売件数(件))× 価格 4.47(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 527 億円・営業利益 74 億円。118 × 4.467、営業利益率 14%
- 居住用・開発ほかの売買:数量 270(年間の販売件数(件))× 価格 1.19(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 322 億円・営業利益 24 億円。270 × 1.192、営業利益率 8%
- 賃貸その他:数量 300(賃貸収入を生む保有不動産の簿価(億円・今の値段のまま))× 価格 0.16(簿価あたりの収入(比率)× 賃料の物価の指数)→ 売上 47 億円・営業利益 14 億円。300 × 0.158、営業利益率 30%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.47 倍、時価総額 727 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年の減益が示すとおり、2025年の山は特別だった。市況が戻っても、山の利益率には戻らないとみる。最も確率の高い筋書きとして3割台半ばを置いた。
やや悲観 24% 金利と競争で利幅が薄くなり、回転が鈍る 利益 32 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,440 円340 億円
金利の上昇が続き、仕入れ競争も激しくなって、構造的に利幅が薄くなる。海外投資家の需要が戻らず、大型物件の販売が減る。件数は今より1割ほど減り、投資用の粗利率が下がる。
金融機関の融資姿勢が慎重になり、在庫を回すスピードが落ちる。借り換えで金利負担が増え、純利益は営業利益の4割強にとどまる。
10年後の営業利益は70億円台で、利益率は10%を割る。ROEは5%台まで下がる。配当性向40%の方針は守るが、額は減る。ムゲンアセットマネジメントは、予定より育たない。それでも、会社は赤字には沈まない。仕入れる物件を選び、在庫を軽く保つ経営に切り替えるからだ。2020年の谷でも純利益は黒字を保った。
- 投資用不動産の買取再販:数量 100(年間の販売件数(件))× 価格 4.24(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 424 億円・営業利益 47 億円。100 × 4.243、営業利益率 11%
- 居住用・開発ほかの売買:数量 240(年間の販売件数(件))× 価格 1.16(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 278 億円・営業利益 15 億円。240 × 1.157、営業利益率 6%
- 賃貸その他:数量 270(賃貸収入を生む保有不動産の簿価(億円・今の値段のまま))× 価格 0.15(簿価あたりの収入(比率)× 賃料の物価の指数)→ 売上 41 億円・営業利益 12 億円。270 × 0.153、営業利益率 28%
倍率:事業のROE 5.5% は資本コスト 8.5% 以下なので、PER は 1÷k=10.5 倍が上限。利益が薄く、在庫の回転も鈍るので、上限の約 7.1 割、7.5 倍に置いた。
確率:金利の上昇と融資の引き締めで利幅が薄くなる姿は、この型の会社で現実に起こりやすい。2割台半ばを置いた。
悲観 12% 融資の停止と在庫の損で、規模を縮める 利益 3 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 848 円200 億円
海外の需要が戻らず、国内の金利も上がって、収益物件の値段が下がる。仕入れた物件の値段が売るまでに下がり、利幅が消える。
2008〜2009年と同じ形で、同業の多くが在庫の評価損を出す。ムゲンエステートも在庫を投げ売りし、自己資本を1〜2割失う。金融機関は新規の融資を絞り、仕入れが止まる。
10年後は、規模を縮めた会社として生き残る。営業利益は30億円前後、利益はほぼ出ない。配当は大きく減る。倍率ではなく、売れる資産の価値で測る局面になる。ただし清算されるわけではなく、少数株主は現金の使い道を決められない。資産の価値から、さらに割り引いて見るのが妥当だ。
- 投資用不動産の買取再販:数量 70.0(年間の販売件数(件))× 価格 3.80(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 266 億円・営業利益 16 億円。70 × 3.797、営業利益率 6%
- 居住用・開発ほかの売買:数量 190(年間の販売件数(件))× 価格 1.07(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 204 億円・営業利益 6 億円。190 × 1.073、営業利益率 3%
- 賃貸その他:数量 250(賃貸収入を生む保有不動産の簿価(億円・今の値段のまま))× 価格 0.14(簿価あたりの収入(比率)× 賃料の物価の指数)→ 売上 36 億円・営業利益 8 億円。250 × 0.142、営業利益率 22%
倍率:稼ぐ力(純利益 3 億円÷k)はほぼ 0。価値は売れる資産の税後の水準まで下がる。今の自己資本 357 億円に 0.56 を掛けた。EV÷営業利益でも見た。純有利子負債436億円を足すと約21倍で高く見えるが、営業利益が谷の底の年の値で、倍率で語る水準ではない。
確率:リーマン級の市況の反転と融資の停止が重なる、構造的な負けの筋書き。借金の重い会社なので、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
投資用不動産の買取再販
一棟のマンション・ビル・アパートを買い、手直しして国内外の投資家に売る。5億円超の大型が売上の約半分。
| 数量年間の販売件数(件) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 120 | 3.33 | 400 | 76 |
| 10 年後 中立 | 118 | 4.47 | 527 | 74 |
取り方:2025年12月期の不動産売買653億円のうち、投資用は約400億円と推定した(事業別の通期開示は未確認)。大型物件が多いので年約120件・1件3.3億円と置く。営業利益率は約19%と推定。件数は実質の数量で、物価と大型化は1件あたり売上の側に入れる。
居住用・開発ほかの売買
マンション・戸建て・土地の買取再販と、自社開発(サイドプレイス)、不動産特定共同事業。
| 数量年間の販売件数(件) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 285 | 0.89 | 254 | 25 |
| 10 年後 中立 | 270 | 1.19 | 322 | 24 |
取り方:不動産売買653億円から投資用の約400億円を引いた約254億円を、居住用・開発・特定共同事業とした(推定)。1億円以下の小口が増えており、年約285件・1件0.89億円と置く。営業利益率は約10%。開発は2025年に1件の販売にとどまった。
賃貸その他
保有中の物件の賃料と管理などの収入。売上の約4%。
| 数量賃貸収入を生む保有不動産の簿価(億円・今の値段のまま) | 価格簿価あたりの収入(比率)× 賃料の物価の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 250 | 0.12 | 29 | 10 |
| 10 年後 中立 | 300 | 0.16 | 47 | 14 |
取り方:賃貸その他の売上29.4億円(2025年12月期)を、収入を生む保有物件の簿価約250億円(推定)で割った。営業利益率は約32%。数量は実物の積み上がりで、賃料の物価分は価格の側に入れる。
リスクと懸念
海外投資家の需要が戻らない
中国・台湾・香港などの購入者は、為替、中国の資本規制、各国の景気で動く。2026年の中間期は、この需要の細りで大型物件が売れず、営業利益が半減した。国内の個人・法人向けで穴を埋める策の効果は、まだ限定的だ。
金利上昇とキャップレートの切り上がり
政策金利は2025年12月に0.75%へ上がった。10年国債3%が続けば、収益物件の利回りが上がり、仕入れた物件の値段が下がる。仕入れてから売るまでの間に価格が動くと、利幅が消え、在庫に評価損が出る。
有利子負債の重さ
有利子負債は627億円で、純負債は自己資本の1.2倍だ。借り換えのたびに金利が3.5%前後へ上がり、利払いが増える。金融機関が不動産融資を絞れば、仕入れそのものが止まる。2008年にはこの形で資金繰りに詰まった同業が多かった。
仕入れ競争の激化
買取再販は参入が容易で、同じ物件をトーセイ、LAホールディングス、インテリックスなどが狙う。仕入れ値が上がれば、粗利率が構造的に下がる。2026年の中間期は、粗利率が3.9ポイント下がった。
利益の偏りと業績の読みにくさ
利益は大型物件の売れるタイミングに左右される。5億円超の物件が投資用の売上の約半分を占めるため、1件の遅れが四半期の数字を動かす。会社の予想も1年で何度か変わっており、将来の読みが難しい。
新規事業の実行
私募ファンドを手がけるムゲンアセットマネジメントは、2025年に設立したばかりで、目標の運用資産額は1年後ろ倒しになった。会社は2018年に参入して2020年に撤退した経験がある。育たなければ、利益の振れを抑える狙いは外れる。
少数株主の立場
創業家と関連の資産管理会社の持分は3割台にのぼる。経営判断が速い反面、買収や資本政策が少数株主の利益と一致するとは限らない。配当は方針で守られているが、業績の悪化時は減配もありうる。
今後の分かれ目
- 2027年にかけて海外投資家向けの販売が回復し、大型物件の件数が戻る
- 営業利益率が14%台に戻り、やや楽観以上の筋書きの確率が上がる。
- 10年国債が3%を大きく超えて上がり、収益物件の利回りが切り上がる
- 仕入れ値と売値が逆転し、在庫の評価損が出る。やや悲観・悲観の確率が上がる。
- 金融機関の不動産融資が引き締まり、仕入れ額が計画の435億円を大きく割る
- 売上が縮み、借金の返済に追われる。悲観の筋書きに近づく。
- ムゲンアセットマネジメントの運用資産が計画どおりに育つ
- 手数料収益が加わり、利益の振れが小さくなる。倍率を上げる材料になる。
- 創業家がTOBなどで非公開化や再編を行う
- 買い付け価格が本質価値に近づくかが焦点になる。確率には織り込まず、起きれば再評価する。
- 配当性向40%以上の方針が見直される、または総還元性向が上がる
- 還元の見通しを変える。方針が下がれば価値は下がり、自社株買いが続けば上がる。
見ておくもの
- 四半期の販売件数・粗利率・仕入れ額(決算説明資料)
- 海外投資家向けの販売比率(中国・台湾・香港)
- 日銀の政策金利と10年国債の利回り
- 収益不動産のキャップレートと取引額(JLL・CBRE)
- ムゲンアセットマネジメントの運用資産残高
倍率と資本コストの決め方
先に投資用・居住用・賃貸の3つに分け、件数と1件の値段(物価で1.34倍)で10年の売上を積み、そのあとで利益率を置いた。倍率は資本コスト8.5%(基本7.5%に+2.0%)と、事業のROEから決まる式で置いた。中立のROEは9%で資本コストを下回るため、PERは1÷kの10.5倍が上限で、8.5倍に置いた。今の株価や過去のPERは使っていない。借り換えの利払いの増加は、純利益÷営業利益を0.52とすることで織り込んだ。事業別の売上は短信を開かず推定した。新リース会計の影響は小さく、今の形にそろえている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.2→13.83 倍・やや楽観 PER 9.8→13.12 倍・中立 PER 8.5→12.47 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +2.0% を足した 9.5%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.50%。