結論
フェイスネットワークは、世田谷・目黒・渋谷の3区で新築の一棟RCマンションを開発し、富裕層の個人とファンドに売る会社だ。設計と施工まで社内で持つ。筆者の結論は「適正」である。利益は過去最高の高さにあり、価格はそれをある程度織り込んでいる。
2026年3月期の売上は329億円、営業利益は56億円、利益率は17%と、過去12年で最高だった。ROEは約29%に達する。会社は2029年3月期に売上500億円・営業利益85億円を掲げた。
強みは、城南3区の用地を押さえる力と、金融機関の紹介で買い手を集める仕組みだ。販売の約6割が銀行の紹介だという。買い手の中心は、相続対策や資産運用を求める富裕層である。
弱みも多い。有利子負債は総資産の5割を超え、現金を引いても約91億円の借入が残る。引渡しは第4四半期に偏り、在庫が積み上がると営業キャッシュフローは赤字になる。2027年からは、相続の評価で貸付用不動産を取引価額で見る方向になり、相続対策の需要を削る。
中立の利益は、引渡しを今並みに置き、利益率を14%台へ戻したうえで、物価の分だけ増える姿とした。確率をかけて均し、資本コストで割り引いた価値は、今の時価総額とほぼ同じ水準に出る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「利益率は立派だが、持続の保証が薄い」会社だ。10年後も一棟RCの開発は存在するが、堀は深くない。
株主のものになる利益は、見た目の純利益より小さい。引渡しの前に用地と工事に資金を出し、在庫が増えるほど営業キャッシュフローは赤字になる。2026年3月期の純利益は36億円だが、営業キャッシュフローは7億円の赤字だった。利益が現金になるまでに、借入が必要だ。
資本の使い方は、成長に偏る。配当性向は35%で、残りは在庫に回る。これ自体は悪くないが、金利が上がる10年では、借入の利息が利益を削る。会社が掲げるROE30%は、借入を3倍に回した数字で、同じ水準が続くとは考えにくい。
経営者は大株主として、株価に利害を持つ。この点は安心材料だが、担保に差し入れた株がある点は気がかりだ。
結論は、価値は今の時価総額に近い。払う値段は、過去最高の利益率をある程度織り込んでいる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、城南3区の用地を仕入れ、新築の一棟RCマンションを建てて売ることだ。ブランドは「GranDuo」で、1棟の単価は10億円を超える。買い手は富裕層の個人とファンドで、小口化した商品も扱う。
売上の97%は不動産投資支援事業で、残りの3%が賃貸募集と管理を担うマネジメント事業である。利益率は前者が17%、後者が21%だ。2026年3月期の引渡しは26件、1棟あたり約12億円になった。
特徴は、設計・施工を社内で回す点だ。2023年に施工会社の岩本組を100%子会社にして、工事費の管理と品質を自分で握った。進行中のプロジェクトは43件で、世田谷が過半を占める。
売上は引渡しの時点で立つので、第4四半期に集中する。在庫(販売用不動産と仕掛)を先に積み、引渡しの時に利益と現金が入る。2026年3月期は在庫が計55億円増え、営業キャッシュフローは7億円の赤字だった。
従業員は連結で239人。1人あたりの利益が大きい少人数の会社だ。会社は2029年3月期に、年25棟、単価19億円、粗利率25%以上を掲げる。
優良さと弱いところ
最大の強みは、用地と買い手の両方を自前の経路で確保していることだ。城南3区の用地に絞った開発は、現地の情報と実績が物を言う。金融機関の紹介が販売の約6割を占め、買い手を探す費用が小さい。この仕組みが、粗利25%前後という高い水準を支えている。
次に、設計と施工を持つ強みがある。工事費が上がる局面でも、仕入れから引渡しまでを自分で管理できる。大手の分譲会社や一棟売りの同業が、外注の工事費に振り回されるのとは違う。
弱みははっきりしている。1つは、地域と商品の集中だ。城南3区の一棟RCに偏り、地価が急に上がれば用地の仕入れが滞る。もう1つは、売値を自分で決められないことだ。買い手は利回りで値段を決め、金利が上がれば買値は下がる。
財務も軽くない。有利子負債は総資産の52.6%に当たる182億円で、一部の借入には財務制限条項がある。自己資本比率は35.8%、営業利益は支払利息の14倍ある。ROEは29%と高いが、これは借入を3倍のレバレッジで回した結果で、堀の厚さを示すものではない。
過去10年のROEの中央値は20%、純利益の中央値は営業利益の6割だ。今の利益率17%は12年で最高で、筆者は堀を弱めに見ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
一棟RCの投資用不動産は、利回りと融資で動く市場だ。買い手が見るのは、家賃収入を価格で割った利回りである。10年国債が3%になれば、買い手はより高い利回りを求め、価格は物価ほどには上がらない。
城南3区は、東京でも地価と家賃が高く、空室が出にくい。一方で、用地の供給は限られ、仕入れの競争が強い。同社の開発は年間で数十棟に限られるので、市場そのものの大きさより、仕入れられる用地の数が伸びを決める。
税制の向かい風が来る。2026年度の税制改正大綱は、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産を、通常の取引価額で評価する方針を示した。2027年1月以後の相続から適用される。相続税の節約を目的に一棟マンションを買う層には痛手で、買い手の動機が節税から収益へ移る。
金融機関の姿勢も鍵を握る。同社の販売の約6割は銀行の紹介だ。金利が3%に上がれば、融資の審査は厳しくなる。
同業では、中古一棟を扱うムゲンエステート、投資用ワンルームのFJネクストホールディングスが近い。ただし新築の一棟RCを城南3区に絞って売る会社は少なく、同社は小さな市場で高い利益率を取っている。市場の規模とシェアは開示がなく、競合から推定するしかない。
資本政策と M&A
資本政策は、成長に資金を回しながら、還元を厚くする途上にある。新しい中期計画は、配当性向35%以上と累進配当を掲げた。2026年3月期の配当性向は35.1%、2029年3月期にかけて累進配当で増やす計画である。
自己株式の取得は、2026年8月に上限1億円で決議した。9月末までに金額は上限にほぼ達したが、規模は時価総額の0.5%にすぎない。目的に、将来のM&Aで株式を対価に使う余地を挙げており、買収の準備と読める。岩本組を買った実績があり、キッチンメーカーも傘下に入れた。
筆頭株主は代表取締役の資産管理会社で、持株比率は約40%だ。そのうち約8%分を証券会社に担保として差し入れている。株価が大きく下がれば、担保株の処分が需給を重くする恐れがある。ガバナンスの面では、オーナー支配と少数株主の関係を注視したい。
株主優待は確認できなかった。政策保有株も、今回の調べでは確認できず、価値には足していない。
借入の使い方が肝心だ。在庫を積むために借入を増やすと、利息が膨らむ。会社のROE30%の目標は、レバレッジ3倍を前提にしており、金利が上がる局面では高いハードルになる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
城南3区の一棟RCという、狭くて強い市場を押さえた会社だ。進行中の案件は43件で、引渡しの数は当面見えている。2027年3月期の第1四半期は、投資支援の売上が66%伸びた。
用地と買い手を自前の経路で確保できるのが強みだ。販売の約6割が金融機関の紹介で、買い手に困らない。設計と施工を社内に持ち、工事費の上昇も吸収できる。
会社は2029年3月期に、売上500億円、営業利益85億円を掲げた。ROE30%以上と累進配当も約束している。平均単価は3年で7億円から12億円に上がり、最高級帯のTHE GRANDUOがさらに引き上げる。
相続税の評価の見直しは、一時的に需要を削るが、収益で選ぶ買い手と、ファンド向けの需要は残る。物価が年3%で上がる世界では、不動産の価格も追いつく。
今の利益の高さが定着するなら、10年先の価値は今を大きく上回る。
加えて、自己株式の取得を始めたことは、経営が株価と資本効率を意識している証拠だ。M&Aに株式を使う余地も確保している。代表取締役が筆頭株主として約4割を持ち、株主と利害が一致している点も、この種の会社では安心材料になる。
慎重な見方
今の利益は、過去最高の高さにある。営業利益率17%は12年で最高で、過去の中央値の倍近い。粗利25%は、土地の値上がりと工事費の上昇に削られる。
借入が重い。有利子負債は総資産の5割を超え、財務制限条項もある。営業キャッシュフローは赤字で、在庫が積み上がるほど借入が膨らむ。金利が3.5%へ上がれば、利息は倍になる。
買い手の動機も細る。2027年からは相続の評価の見直しで、節税目的の買いが減る。販売の6割は銀行の紹介で、融資が絞られれば一気に止まる。
地域も1つに絞られ、地価が急騰すれば用地が仕入れられない。筆頭株主は担保に株を差し入れている。
会社の計画は強気に過ぎる。売上500億円には、単価19億円と年25棟の両立が要る。景気の波に敏感な商売で、10年の平均利益率を17%に置くのは無理がある。
さらに、10年の間には金利のサイクルと不動産の調整が必ず来る。2009年前後には、投資用不動産の会社の多くが、在庫の評価損と借入の返済で行き詰まった。城南3区という1つの地域に集中した会社は、その時に分散の利かない構造になる。
どちらに重みを置いたか
今の利益が山に近いという指摘に、より重みがある。中立では、引渡しを今並みの25件、利益率を14%台に落とした。一方で、案件が43件ある事実と、岩本組を含む設計施工の力は強みである。
確率は中立に4割弱、強気側に2割台、慎重な側に3割台半ばとした。借入の重さと、2027年からの税制の変更を見て、慎重な側をやや厚くしている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,200 円651 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 430 円127 億円)。 今の値に割り戻すと 1,285 円380 億円、今との差 +72.7%、 期待の年率 +13.5%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,468 円1,322 億円 | 750 円222 億円 | +601.3% | +21.5% | 365 円108 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,558 円1,053 億円 | 561 円166 億円 | +453.6% | +18.7% | 824 円244 億円 |
| 中立 | 38% | 2,724 円806 億円 | 466 円138 億円 | +328.8% | +15.7% | 1,212 円359 億円 |
| やや悲観 | 24% | 533 円158 億円 | 297 円88 億円 | +11.6% | +1.1% | 199 円59 億円 |
| 悲観 | 11% | 118 円35 億円 | 152 円45 億円 | −63.7% | −9.6% | 30 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,200 円651 億円 | 430 円127 億円 | +253.5% | +13.5% | 2,630 円778 億円 |
今の株価時価総額 744 円220 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 中期計画の路線が実り、大型化と引渡しの数がそろう 利益 71 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 4,468 円1,322 億円
城南3区の用地を毎年8件以上仕入れ、年間の引渡しが30件台に乗る。THE GRANDUOのような最高級帯の割合が増え、1棟の単価は物価を上回って上がる。岩本組の施工力が仕入れから引渡しまでの期間を縮め、工事費の上昇も吸収できる。金融機関の紹介は地方の銀行にまで広がり、小口化商品とファンド向けが買い手の層を厚くする。相続税の評価の見直しは、収益で選ぶ買い手が残るため、台数を削る力が小さい。営業利益は110億円台に乗る。ただし借入は膨らみ、金利は3.5%へ上がるので、利息は10億円ほどになる。自己資本は厚くなるが、ROEは3割から15%台へ下がる。
- 不動産投資支援(新築一棟RCマンション「GranDuo」の開発・販売・施工):数量 32.0(年間の引渡し件数(不動産商品と建築商品の合計))× 価格 20(1件あたり売上(億円)=大きさ × 値段の指数)→ 売上 630 億円・営業利益 107 億円。引渡し 32 件、1 棟あたり 値段の指数 1.60 倍、利益率 17.0%
- 不動産マネジメント(賃貸募集・管理・サブリース):数量 3,300(管理戸数(戸、推定))× 価格 0.01(1戸あたり年間売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 5 億円。管理戸数 3300 戸、値段の指数 1.34 倍、利益率 22%
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.52 倍、時価総額 1,239 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:年間の引渡しが30件を超え、1棟の単価が20億円に近づき、融資も緩まない。会社の2029年3月期の目標(売上500億円・営業利益85億円)を超えて伸びる姿で、条件が重なる必要があるので7%にとどめる。
やや楽観 20% 大型化が進み、計画にやや届かないまま伸びる 利益 54 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 3,558 円1,053 億円
年間の引渡しは28件前後で止まり、用地の確保が伸びを決める。1棟の単価は平均で18億円台へ上がり、売上は500億円台に乗る。粗利は会社の目標の25%を上回る年が多いが、人件費と工事費の上昇で営業利益率は16%台に落ち着く。マネジメント事業は管理戸数が増え、安定した利益を積む。相続税の評価の見直しで、相続対策だけを目的に買う層は減る。ただし収益性で選ぶ個人とファンドが、その分を埋める。借入の金利は3.5%へ上がるが、利益の伸びがそれを上回る。配当は累進を守り、自社株買いは小さな規模で続く。営業利益は90億円近くになる。
- 不動産投資支援(新築一棟RCマンション「GranDuo」の開発・販売・施工):数量 28.0(年間の引渡し件数(不動産商品と建築商品の合計))× 価格 18(1件あたり売上(億円)=大きさ × 値段の指数)→ 売上 517 億円・営業利益 83 億円。引渡し 28 件、1 棟あたり 値段の指数 1.50 倍、利益率 16.0%
- 不動産マネジメント(賃貸募集・管理・サブリース):数量 2,800(管理戸数(戸、推定))× 価格 0.01(1戸あたり年間売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。管理戸数 2800 戸、値段の指数 1.34 倍、利益率 22%
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.68 倍、時価総額 962 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:進行中のプロジェクトは43件あり、引渡しの数は当面見えている。計画の数字には届かなくても、近い形で伸びる姿は十分にありうるので2割に置く。
中立 38% 引渡しは今並み、単価は物価を少し上回る。利益はほぼ横ばい 利益 41 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 2,724 円806 億円
年間の引渡しは今とほぼ同じ25件にとどまる。城南3区という狭い地域では、用地の仕入れが伸びを抑える。1棟の単価は大型化の分だけ物価を上回って上がり、売上は450億円ほどになる。営業利益率は今の17%から14%台へ落ち着く。粗利の高さは新しい土地の値上がりに削られ、人件費も物価並みに増える。相続税の評価の見直しで、2027年以降は相続対策目的の需要がやや細る。借入は在庫に合わせて200億円を超え、金利は3.5%へ上がるので利息は倍の8億円になる。営業利益は物価の分だけ増えるが、純利益は40億円ほどにとどまる。配当は性向35%を守り、少額の自社株買いが加わる。
- 不動産投資支援(新築一棟RCマンション「GranDuo」の開発・販売・施工):数量 25.0(年間の引渡し件数(不動産商品と建築商品の合計))× 価格 17(1件あたり売上(億円)=大きさ × 値段の指数)→ 売上 437 億円・営業利益 63 億円。引渡し 25 件、1 棟あたり 値段の指数 1.42 倍、利益率 14.5%
- 不動産マネジメント(賃貸募集・管理・サブリース):数量 2,400(管理戸数(戸、推定))× 価格 0.01(1戸あたり年間売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。管理戸数 2400 戸、値段の指数 1.34 倍、利益率 21%
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.2 倍、時価総額 709 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今の営業利益率17%は過去12年で最高で、会社の計画は強気に見える。かといって、仕入れた用地と進行中の案件が崩れる材料もない。中立に4割弱を置く。
やや悲観 24% 相続対策の需要と融資が細り、引渡しが3割減る 利益 15 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 533 円158 億円
相続対策を目的に買う層が減り、金融機関の紹介も細る。引渡しは年17件ほどに落ち、1棟の単価は物価に追いつかない。用地の仕入れ値は下がらず、粗利が縮む。営業利益率は10%台前半になる。借入は在庫が積み上がって膨らみ、金利が3.5%へ上がるので、営業利益の3割が利息に消える。純利益は10年前の水準に近い15億円ほどになる。配当は累進の方針を守れず、増配を止める。会社は在庫を値引きして現金を作り、財務制限条項に触れないよう借入を抑える。代表者の持株の担保が外れず、株価が下がるほど需給が重くなる点も気になる。
- 不動産投資支援(新築一棟RCマンション「GranDuo」の開発・販売・施工):数量 17.0(年間の引渡し件数(不動産商品と建築商品の合計))× 価格 15(1件あたり売上(億円)=大きさ × 値段の指数)→ 売上 262 億円・営業利益 28 億円。引渡し 17 件、1 棟あたり 値段の指数 1.25 倍、利益率 10.5%
- 不動産マネジメント(賃貸募集・管理・サブリース):数量 2,000(管理戸数(戸、推定))× 価格 0.01(1戸あたり年間売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。管理戸数 2000 戸、値段の指数 1.20 倍、利益率 18%
倍率:事業の ROE 6.1% が k 8.25% を下回り、ためた利益は額面未満。上限 1÷k=10.5 倍の約 6 割の 6.5 倍に置く(稼ぐ力に見合う倍率で、7 割へ引き上げない)。
確率:2027年からの評価の見直しと、金利3%の下での銀行の姿勢が重なる。城南3区に絞った会社は、需要が細ると逃げ場が少ない。慎重な側を2割台半ばに厚く置く。
悲観 11% 相続の税制と融資の引き締めで、一棟マンションの買い手が消える 利益 −4 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 118 円35 億円
貸付用不動産の評価の見直しが相続対策の需要を根こそぎにし、金利の上昇が利回りを押し下げる。銀行は不動産向けの融資を絞り、買い手の過半が消える。引渡しは年10件を切り、在庫の売却には大幅な値引きが要る。評価損が出て自己資本が削られ、財務制限条項に触れる。会社は借入の返済を優先し、配当は大きく減る。仕掛中の案件は止まり、岩本組の施工も回らなくなる。会社は存続するが、少数株主に残るのは、在庫を値引きして売り、借入を返したあとの額に絞られる。筆頭株主の担保株が売られれば、価格は需給で決まる。借入の返済が先に来るので、配当と自社株買いは止まり、株主への還元は10年のうちの最初の数年に限られる。景気が戻るまでの間、会社は用地の仕入れを止め、人員を絞って耐える。
- 不動産投資支援(新築一棟RCマンション「GranDuo」の開発・販売・施工):数量 9.0(年間の引渡し件数(不動産商品と建築商品の合計))× 価格 13(1件あたり売上(億円)=大きさ × 値段の指数)→ 売上 116 億円・営業利益 4 億円。引渡し 9 件、1 棟あたり 値段の指数 1.05 倍、利益率 3.0%
- 不動産マネジメント(賃貸募集・管理・サブリース):数量 1,500(管理戸数(戸、推定))× 価格 0.00(1戸あたり年間売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。管理戸数 1500 戸、値段の指数 1.00 倍、利益率 12%
倍率:稼ぐ力は赤字で、価値は在庫を値引きして売り、借入を返したあとの額で決まる。今の自己資本 124 億円に PBR 0.282 倍を掛けた 35 億円は、下の床の内訳に合わせたもの。ためた利益や在庫の帳簿価額には掛けない。EV÷営業利益は 27 倍と高く見えるが、赤字に近い筋書きでは意味を持たないので、EV でも売れる資産から負債を引いた額で見た。
確率:2009年前後には、投資用不動産の会社が在庫の評価損と資金繰りで次々に行き詰まった。借入が総資産の5割を超える今の会社は、同じ打撃を受けうる。1割強に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産投資支援(新築一棟RCマンション「GranDuo」の開発・販売・施工)
城南3区で用地を仕入れ、設計・施工まで自社で行い、富裕層の個人とファンドに1棟ごと売る。小口化商品と最高級賃貸も含む。
| 数量年間の引渡し件数(不動産商品と建築商品の合計) | 価格1件あたり売上(億円)=大きさ × 値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 26.0 | 12 | 320 | 54 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 17 | 437 | 63 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上320億円・利益54億円(利益率17.0%)。件数は不動産商品22件と建築商品4件の合計26件(有報)。1件あたり約12.3億円で、平均単価は2023/03期の7.1億円から3年で急に上がった。会社の計画は年25棟・単価19億円(2029/03期)。件数は実質、単価は名目で、物価の分と物件の大型化の分が入る。
不動産マネジメント(賃貸募集・管理・サブリース)
売った物件の賃貸募集と管理を受託する。売上は小さいが、利益率は20%を超える。
| 数量管理戸数(戸、推定) | 価格1戸あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.00 | 9 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,400 | 0.01 | 15 | 3 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上9億円・利益2億円(利益率21.6%)。管理戸数は開示がなく、2,000戸と推定した。1戸あたり年46万円は、家賃の数%の管理料とサブリースの差益を合わせた数字。
リスクと懸念
相続税の評価の見直し
2027年1月以後の相続から、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産は、通常の取引価額で評価される方向だ。買い手の中心は相続対策を求める富裕層なので、台数と単価に響く。
借入の重さと金利の上昇
有利子負債は182億円で総資産の5割を超える。借り換えで金利が3.5%に上がれば、利息は倍になる。一部の借入には財務制限条項がある。
銀行の紹介への依存
販売の約6割は金融機関の紹介だ。融資姿勢が変わると、買い手が一気に減る。地方金融機関の拡大が止まる場合も同じだ。
地域と商品の集中
城南3区の新築一棟RCに集中している。地価の急騰、近隣との紛争、条例の強化が、用地の仕入れと工期を直撃する。
在庫の評価損と資金繰り
販売用不動産と仕掛は、2026年3月期に計55億円増えた。売れ残りは評価損になり、営業キャッシュフローが赤字になる局面では借入に頼る。
オーナー支配と担保株
代表取締役の資産管理会社が約40%を持ち、その約8%分が担保に入っている。株価が急落した時の需給と、少数株主の取り分が論点になる。
AIエージェントによる代替は限られる
扱うのは土地と建物という現物で、AIエージェントに置き換わるのは設計の下書きや賃貸の問い合わせ対応など一部にとどまる。売上の縮小要因にはしていない。
今後の分かれ目
- 年間の引渡しが25件を超え、平均単価が17億円を超えたら
- 強気の筋書きの確率を上げる。大型化の前提を引き上げる。
- 貸付用不動産の評価の通達が決まり、相続対策の買いが減る兆しが出たら
- 慎重な筋書きに重みを移す。引渡しの件数の前提を下げる。
- 販売用不動産と仕掛が積み上がり、営業キャッシュフローの赤字が続いたら
- 借入の重さを織り込み、慎重な筋書きの確率を上げる。
- 金融機関の紹介が地方銀行に広がり、販売の紹介比率が上がったら
- 買い手の厚みが増える。中立の引渡しの前提を上げる余地が出る。
- M&Aで株式を対価に使う案件が出たら
- 買収の中身と資本効率を見て、資本政策の評価を見直す。
- 担保に入った株が売られ、筆頭株主の持分が下がったら
- 需給とガバナンスの両面で、慎重な筋書きの確率を上げる。
見ておくもの
- 年間の引渡し件数と1棟あたりの平均単価
- 販売用不動産・仕掛の残高と営業キャッシュフロー
- 貸付用不動産の相続税評価の通達と買い手の動き
- 有利子負債の平均金利と財務制限条項
- 金融機関の紹介比率と融資の姿勢
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROEとk 8.25%から、正当化PERの上限(10.5〜12.5倍)を出し、中立・楽観はその9割台に置いた。中立ではROEがkを上回るので、1÷k=10.5倍を下回らせていない。やや悲観はROEがk以下なので上限10.5倍の約6割、悲観は在庫を値引きして売り、借入を返したあとの額にした。今の株価や同業の倍率は使っていない。営業利益率14〜17%は過去12年の山(17.1%)以下に置いた。セグメント利益は本社費を配賦したあとの数字で、合計が営業利益に近いので調整額は小さく、物価で増やした。純現金はなく、余った現金は分けていない。賃貸は管理の受託が中心で、自社で賃借する店舗は小さいので、新リース会計基準の影響は小さい。市場の規模とシェアは開示が無く推定のため、精度は低い。管理戸数は推定。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.9→17.52 倍・やや楽観 PER 11.3→17.68 倍・中立 PER 10.6→17.2 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。