結論
コスモスイニシアは、新築マンションの分譲、中古の買取再生、収益不動産の売却、そしてアパートメントホテル「MIMARU」の運営を手がける会社だ。大和ハウス工業と共立メンテナンスが、持分法適用の関連会社として資本業務提携している。
筆者の結論は「割安」だ。一番の理由は、今の値段が直近の利益の約 5 倍と、事業の中身に比べて低いこと。2026 年 3 月期は営業利益 125 億円と過去最高を更新した。ただし、この利益にはホテルの売却益が混じり、会社自身も今期の純利益を 1 割強減る見込みとしている。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 3 割強上回る。
怖いのは借入だ。純有利子負債は 704 億円と時価総額の 1.8 倍に当たり、自己資本比率は 30.6%。金利が上がり、買い手の利回りが悪化すれば、2008 年のように売却損が自己資本を削る。
筆者は、堀(他社がまねできない強み)が弱い回転型の会社として、倍率を低めに置いている。それでもホテルの運営という安定した収益が育っている点が、今の値段との差の理由になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家はまず、商売の形を問う。この会社は、マンションと収益不動産を仕入れて売る回転型で、ホテルの運営がそこに加わった。利益は売却のたびに計上され、年によって大きく変わる。10 年後の利益は見通しにくい。
オーナーが手にできる利益で見ると、再投資の負担が重い。販売用不動産の純増に 550 億円を投じる計画で、株主が自由に使える額は、見かけの純利益よりはるかに小さい。
堀は弱い。マンションは競争が激しく、価格を決める力は乏しい。ホテルのブランドは育ちつつあるが、全体を変えるほどではない。
経営の資本配分は、リーマン後の傷から学んだ慎重さと、ホテルへの積極投資が同居する。自己資本比率の下限を決めている点は評価できる。大型の借入と成長投資を続ける姿勢は、金利上昇には弱い。
安全域は、値段の低さから生まれている。直近の利益の約 5 倍で売られているが、その利益には売却益が混じる。ならした利益で見ても、10 年後の中立で今の約 2 倍の時価総額になる。借入の重さを悲観に反映し、そのうえで割安という結論だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 4 つある。一つ目は住宅販売だ。新築マンション「イニシア」を企画して売り、中古マンションを買い取ってリノベーションして売る。首都圏と関西が中心になる。新築は引渡数が減る見込みだが、粗利率は高水準を保つ。
二つ目は収益不動産の売却だ。オフィスや賃貸マンションを買い、価値を高めて投資家に売る。2027 年 3 月期の計画では、営業利益の約 5 割を稼ぐ最大の柱になる。
三つ目はホテル運営だ。アパートメントホテル「MIMARU」を展開し、2030 年までに 3,000 室をめざす。確定分と進行中の案件で約 2,600 室が見えている。客室単価は 5.2 万円から 5.4 万円へ上がる見込みで、家族やグループの長期滞在向けに強い。ホテルを開業させて売却するモデルも併用する。
四つ目は賃貸・運営、工事、海外だ。賃貸・運営は 2027 年 3 月に WOOC を完全子会社にして加わる。海外はベトナムの分譲「TT AVIO」が販売進捗 99% まで進んだ。
ストック型のホテル運営と賃貸の営業利益は、全体の約 3 割まで高まる計画だ。
優良さと弱いところ
強みは、収益の源が分散してきたことだ。新築マンション、リノベーション、収益不動産、ホテルと、それぞれ別のサイクルで動く。2026 年 3 月期は、住宅販売の利益が小さくても、ホテルと収益不動産が全体を支えた。
MIMARU は、民泊でもホテルでもない「アパートメントホテル」という立ち位置で、キッチンや複数ベッドを備えた部屋を、家族や外国人客に貸す。差別化がはっきりしており、ブランドとして育つ可能性がある。ただし、客室単価はインバウンドと景気に左右される。
弱点は 3 つある。第一に、借入の重さだ。純有利子負債は自己資本の 1.2 倍で、営業利益は支払利息の約 7 倍にとどまる。第二に、利益の質だ。2026 年 3 月期の純利益 82 億円には、固定資産売却益と段階取得差益が入っている。第三に、堀が弱い。新築マンションは用地の仕入れ競争が激しく、価格を自分で決める力は小さい。
歴史にも傷がある。2008 年のリーマン後に、純損失が 881 億円に達した。当時の教訓から、自己資本比率 30% 以上を目標にしている。ROE は 15% と高いが、過去 10 年の中央値は 10% 台だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
新築マンションは、建築費と用地の高騰で価格が上がり続けている。首都圏の販売戸数は長期で減少傾向にあり、高価格帯の物件が中心になった。需要は都心に集まるが、金利が上がれば住宅ローンの負担が増え、購入層が絞られる。
収益不動産の市場は、金利と投資家の資金で動く。10 年国債が 3% の世界では、買い手が求める利回りが上がり、売値が下がりやすい。コスモスイニシアは、大和ハウスなどの買い手や、REIT、私募ファンドへ売る。
ホテルは追い風だが、競争も激しい。訪日客は過去最高を更新し続けており、長期滞在向けのアパートメントホテルは需要が強い。一方で、新規参入が多く、人手の確保や開業費用の先行が利益を圧迫する。MIMARU の客室単価は高く、東京・大阪・京都などの立地が中心になる。
競合は幅広い。マンションではMIRARTHホールディングス、フージャースホールディングス、エスリードなど。収益不動産では、ロードスターキャピタルやサンフロンティア不動産。ホテルでは、共立メンテナンスの「ドーミーイン」や、アパートメントホテルの各社だ。
中東情勢の緊迫による原油高と資材高も、工期と原価の不確実性を高めている。
資本政策と M&A
配当は増える方向だ。2026 年 3 月期に続き、2027 年 3 月期も増配を予想し、配当性向は 25% から 2029 年 3 月期に 30% まで段階的に引き上げる。中計 2028 では株主還元に期間中 60 億円を見込む。自己株式の取得も行っている。
新たに、株主優待を始めた。毎年 3 月末に 300 株以上を持つ株主へ、MIMARU の宿泊割引クーポン(1.5 万相当)を贈る。対象の株主数は明らかでなく、費用は年に 2 億円前後と推定する。これは株主への現物の還元にあたり、10 年の還元に加えて数えた。
成長の資金は、借入と、物件を売って回収した資金だ。中計 2028 は、販売用不動産の純増に 550 億円、賃貸資産に 180 億円、デジタルや新規領域に 100 億円を充てる。自己資本比率は 30% 程度を保つ。
大和ハウス工業と共立メンテナンスは、2024 年に資本業務提携を結び、持分法適用の関連会社となった。両社の用地情報や買い手のネットワークは、強みになる。一方で、買収の対象にもなりうる。
10 年の還元は、配当性向 30% を保つ形で置き、優待の費用を加えた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026 年 3 月期は営業利益が 125 億円と、中計 2026 の目標 100 億円を 25% 上回った。ROE は 15.5% に上がり、自己資本比率も目標の 30% に届いた。ネット D/E レシオは 1.5 倍から 1.3 倍へ改善した。
事業の中身が変わっている。MIMARU は 2030 年に 3,000 室をめざし、運営収益が育つ。確定分と進行分で約 2,600 室が見えており、計画の確度は高い。ホテルと賃貸のストック型の営業利益は、全体の約 3 割まで上がる。収益不動産は大和ハウスなどの買い手に支えられ、売却の出口が太い。
中計 2028 は、2029 年 3 月期に経常利益 140 億円、ROE 13% を掲げる。直近の実績から無理のない水準だ。配当性向は 30% へ引き上げ、優待も始まった。
それでいて PER は 5 倍前後と、同じ領域の会社の 8〜13 倍に比べても低い。ホテルの価値を評価に織り込めば、今の値段は事業の価値より明らかに低い。
慎重な見方
純有利子負債は 704 億円と、時価総額の 1.8 倍ある。営業利益は支払利息の約 7 倍にとどまり、金利が上がれば利益が削られる。2008 年のリーマン後に純損失が 881 億円に達した前例が、この構造の危うさを示している。
直近の利益は質が低い。2026 年 3 月期の純利益 82 億円には、固定資産売却益と段階取得差益が入っており、2027 年 3 月期の純利益は 72 億円に減る計画だ。第 1 四半期の営業利益は 65% 減で、引渡の偏りが大きい。
ホテルの利益 91.8 億円も、売却益を含むとみられる。運営収益は 2027 年 3 月期に新規開業の費用で減益になる。客室単価はインバウンドと景気に左右され、人手の確保も難しい。
収益不動産の粗利率は低下する見込みで、営業利益の約 5 割を稼ぐ柱が細る。海外事業は赤字で、WOOC の連結で販管費も 56 億円増える。成長投資を続けるほど、借入が重くなる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強いと見る。理由は、事業の組み合わせが変わりつつあり、ホテルの運営という安定した収益が数字で確認できるからだ。慎重な見方の借入の重さと利益の質の指摘は正しく、悲観の深さに反映した。
確率は中立を厚くし、やや悲観を 23%、悲観を 12% と置いた。10 年の間に金利と市況の谷を一度は通る前提を織り込み、それでも本質価値は今の値段を上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,196 円1,077 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 705 円238 億円)。 今の値に割り戻すと 1,845 円622 億円、今との差 +62.1%、 期待の年率 +13.1%(資本コスト 8.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,322 円2,467 億円 | 1,160 円391 億円 | +645.4% | +22.2% | 848 円286 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,105 円1,720 億円 | 968 円326 億円 | +433.6% | +18.2% | 1,336 円450 億円 |
| 中立 | 33% | 3,389 円1,142 億円 | 798 円269 億円 | +267.9% | +13.9% | 1,382 円466 億円 |
| やや悲観 | 23% | 783 円264 億円 | 386 円130 億円 | +2.7% | +0.3% | 269 円91 億円 |
| 悲観 | 12% | 356 円120 億円 | 199 円67 億円 | −51.2% | −6.9% | 67 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,196 円1,077 億円 | 705 円238 億円 | +242.8% | +13.1% | 3,901 円1,315 億円 |
今の株価時価総額 1,138 円383 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% MIMARU が 3,000 室を超え、収益の柱が二本になる 利益 192 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 7,322 円2,467 億円
MIMARU は 2030 年に 3,000 室を超え、さらに首都圏と京都・大阪で増える。客室単価は物価以上に上がり、稼働も高く保たれる。ホテルの運営収益が、売却益に頼らない柱になる。収益不動産は大和ハウスとの関係を生かして買い手が途切れず、年に数百億円規模で売却できる。新築マンションは都心の高価格帯に集中し、粗利率を保つ。借入は増えるが、自己資本比率 30% は守る。配当性向は 30% を超え、自社株買いも加わる。営業利益率は過去最高圏の 8% 台に乗る。株主優待を含めた還元も厚くなり、アパートメントホテルの会員基盤が株主を通じて広がる。大和ハウスや共立メンテナンスとの提携が深まり、用地や運営の面で優位に立つ。優待の費用は年に数億円規模と小さく、利益への影響は限られる。
- 住宅販売(新築マンション・リノベ・賃貸等):数量 1,300(戸数換算(新築・リノベの引渡と賃貸等の合算の目安))× 価格 0.63(1 戸あたりの売上(億円・名目))→ 売上 819 億円・営業利益 51 億円。1,300 戸 × 1 戸 0.630 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 6.2%
- 収益不動産販売・ホテル運営:数量 3,100(売却・運営の対象になる資産(億円・今の値段で測った実質・推定))× 価格 1.00(売上÷対象資産(名目))→ 売上 3,091 億円・営業利益 356 億円。資産 3,100 億円 × 売上÷資産 0.997(今の 1.40 倍)、営業利益率 11.5%
- 工事・その他:数量 200(年間の施工件数(件・推定))× 価格 0.84(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 168 億円・営業利益 3 億円。工事 200 件 × 1 件 0.84 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 192 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.4% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.87 倍、時価総額 2,467 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホテルの運営と収益不動産の売却が両輪で育つ好条件が 10 年続く必要がある。ホテルは先行投資と開業費用が重く、連続して計画を上回る確度は高くないため 1 割にとどめる。
やや楽観 22% 中計 2028 をおおむね達成し、ホテルが安定収入になる 利益 141 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 5,105 円1,720 億円
中計 2028 の経常利益 140 億円をほぼ達成し、その後も緩やかに伸びる。MIMARU は 3,000 室に届き、客室単価は物価に近いペースで上がる。収益不動産の売却は安定して続くが、粗利率は少しずつ薄れる。新築マンションは引渡数が減るものの、高価格帯の比率が上がって利益額を保つ。WOOC の連結で賃貸・運営の収益も加わる。営業利益率は 7% 前後に落ち着く。ホテルの利益は売却益に頼らず、運営収益で支えられる割合が増える。WOOC の完全子会社化で賃貸・運営の収益も加わり、ストック型の営業利益が全体の 3 割を超える。新築マンションは引渡数が減っても、粗利率が高水準を保つ。
- 住宅販売(新築マンション・リノベ・賃貸等):数量 1,100(戸数換算(新築・リノベの引渡と賃貸等の合算の目安))× 価格 0.62(1 戸あたりの売上(億円・名目))→ 売上 683 億円・営業利益 40 億円。1,100 戸 × 1 戸 0.621 億円(今の 1.38 倍)、営業利益率 5.8%
- 収益不動産販売・ホテル運営:数量 2,500(売却・運営の対象になる資産(億円・今の値段で測った実質・推定))× 価格 0.98(売上÷対象資産(名目))→ 売上 2,458 億円・営業利益 270 億円。資産 2,500 億円 × 売上÷資産 0.983(今の 1.38 倍)、営業利益率 11.0%
- 工事・その他:数量 175(年間の施工件数(件・推定))× 価格 0.83(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 145 億円・営業利益 3 億円。工事 175 件 × 1 件 0.83 億円(今の 1.38 倍)、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 141 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.19 倍、時価総額 1,720 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年 3 月期は営業利益 125 億円と、中計 2026 の目標 100 億円を超えた。実績がある分、中計 2028 の経常 140 億円も届く範囲にある。
中立 33% ホテルは 3,000 室に届くが、売却益は平常へ戻る 利益 100 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,389 円1,142 億円
MIMARU は 3,000 室に届き、運営収益は安定するが、2026 年 3 月期のようなホテル売却益は毎年は続かない。収益不動産の売却は中立の水準で、粗利率は 10% 台前半に戻る。新築マンションの引渡は人口と建築費の高騰で緩やかに減り、価格の上昇がそれを補う。借入は成長に合わせて増え、金利上昇が経常利益を削る。営業利益率は 6.5% 前後と、直近の最高水準の 8.4% を下回る。配当性向は 30% へ段階的に上がる。ROE は 9% 弱に落ち着き、資本コストとほぼ並ぶ。大和ハウスと共立メンテナンスとの提携は続くが、劇的な追い風にはならない。海外事業はベトナムの販売が一巡し、赤字幅が縮む程度にとどまる。優待の費用は年 2 億円ほどで、還元の一部として数える。
- 住宅販売(新築マンション・リノベ・賃貸等):数量 1,000(戸数換算(新築・リノベの引渡と賃貸等の合算の目安))× 価格 0.60(1 戸あたりの売上(億円・名目))→ 売上 603 億円・営業利益 33 億円。1,000 戸 × 1 戸 0.603 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 5.5%
- 収益不動産販売・ホテル運営:数量 2,000(売却・運営の対象になる資産(億円・今の値段で測った実質・推定))× 価格 0.95(売上÷対象資産(名目))→ 売上 1,909 億円・営業利益 200 億円。資産 2,000 億円 × 売上÷資産 0.954(今の 1.34 倍)、営業利益率 10.5%
- 工事・その他:数量 160(年間の施工件数(件・推定))× 価格 0.80(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 2 億円。工事 160 件 × 1 件 0.80 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 100 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 1,142 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年 3 月期の利益にはホテルの売却益や段階取得差益が含まれ、そのまま続かない。2027 年 3 月期の計画も純利益は減る。中計の路線は続くが、利益率は過去の平均へ戻るとみる。
やや悲観 23% 金利上昇とインバウンドの減速で、売却益が細る 利益 23 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 783 円264 億円
国債金利の上昇で、収益不動産の買い手の利回り要求が上がり、売却益が細る。ホテルは新規開業の費用が先行し、インバウンドが鈍れば客室単価が伸びない。マンションの引渡は減り、在庫の回転が遅れる。営業利益率は 3% 台まで下がり、金利負担が利益を大きく削る。販売用不動産の積み増しは止まり、借入の返済を優先する。それでも事業は黒字を保ち、ホテルの運営収益が下支えとなる。配当は縮みながら続く。ベトナムなど海外事業の業績が伸びず、販管費の増加(WOOC の連結で約 20 億円)が重荷になる。優待の費用は小さいが、株価の下支えにはならない。大型の用地の仕入れは慎重になり、事業の拡大は止まる。
- 住宅販売(新築マンション・リノベ・賃貸等):数量 800(戸数換算(新築・リノベの引渡と賃貸等の合算の目安))× 価格 0.52(1 戸あたりの売上(億円・名目))→ 売上 414 億円・営業利益 17 億円。800 戸 × 1 戸 0.517 億円(今の 1.15 倍)、営業利益率 4.0%
- 収益不動産販売・ホテル運営:数量 1,300(売却・運営の対象になる資産(億円・今の値段で測った実質・推定))× 価格 0.85(売上÷対象資産(名目))→ 売上 1,111 億円・営業利益 78 億円。資産 1,300 億円 × 売上÷資産 0.855(今の 1.20 倍)、営業利益率 7.0%
- 工事・その他:数量 140(年間の施工件数(件・推定))× 価格 0.69(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 97 億円・営業利益 1 億円。工事 140 件 × 1 件 0.69 億円(今の 1.15 倍)、営業利益率 1.0%
倍率:ROE 2.7% が k 8.75% を下回るので、ためた利益は額面未満。正当化 PER の上限は 1÷k=10.8 倍で、売却益が細り回転が落ちる局面を見て約 7 割の 7.5 倍に置いた。
確率:10 年国債 3% の世界では、収益不動産の買い手の利回り要求が上がる。ホテルの客室単価も景気とインバウンドに左右される。純有利子負債が自己資本の 1.2 倍あり、金利の影響が大きい。
悲観 12% 在庫とホテルを安く売らされ、自己資本が削られる 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 356 円120 億円
金利が上がり、銀行が不動産向けの融資を絞る。収益不動産の買い手が消え、ホテルも安く売らされる。マンションは在庫のまま積み上がり、値引きで処分する。2008 年のリーマン後のように、売却損と評価損で自己資本が削られる。営業利益は赤字に近づき、配当は大きく縮む。MIMARU の運営は残るが、売却益は期待できない。新築マンションは契約が進まず、竣工した物件を値引きで売る。ホテルは新規開業の費用が先行して赤字になり、売却も思うようにいかない。大和ハウスや共立メンテナンスの支援が議論されるが、少数株主の取り分は借入の返済の後になる。
- 住宅販売(新築マンション・リノベ・賃貸等):数量 500(戸数換算(新築・リノベの引渡と賃貸等の合算の目安))× 価格 0.45(1 戸あたりの売上(億円・名目))→ 売上 225 億円・営業利益 5 億円。500 戸 × 1 戸 0.450 億円(今の 1.00 倍)、営業利益率 2.0%
- 収益不動産販売・ホテル運営:数量 800(売却・運営の対象になる資産(億円・今の値段で測った実質・推定))× 価格 0.71(売上÷対象資産(名目))→ 売上 570 億円・営業利益 26 億円。資産 800 億円 × 売上÷資産 0.712(今の 1.00 倍)、営業利益率 4.5%
- 工事・その他:数量 110(年間の施工件数(件・推定))× 価格 0.60(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 1 億円。工事 110 件 × 1 件 0.60 億円(今の 1.00 倍)、営業利益率 1.0%
倍率:悲観は稼ぐ力でなく売れる資産で置く。今の自己資本 568 億円に PBR 0.21 倍(保有資産を 2 割強引き下げて売り、借入を返した後の額)を掛けた。ためた利益には掛けない。EV ÷ 営業利益(時価総額+純有利子負債)は高く見えるが、悲観の営業利益は谷の薄い値で、価値は売れる資産で測るため利益の倍率は根拠にしない。
確率:自己資本比率 30% で純有利子負債が時価総額を上回る。2008 年に赤字が 881 億円まで膨らんだ前例がある。融資が絞られ、在庫の売却を急がされる構造的な負けとして 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住宅販売(新築マンション・リノベ・賃貸等)
新築マンション「イニシア」、中古の買取再生、賃貸・海外を含む旧レジデンシャル。
| 数量戸数換算(新築・リノベの引渡と賃貸等の合算の目安) | 価格1 戸あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,060 | 0.45 | 477 | 22 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.60 | 603 | 33 |
取り方:売上 477 億円は、全体 1,493 億円からソリューション 636 億円、宿泊 290 億円、工事約 90 億円を除いた値(推定)。営業利益 22.0 億円は旧レジデンシャルの開示。戸数と 1 戸あたり 0.45 億円は目安で、引渡戸数の開示は確認できていない。数量は実質の戸数、物価の分は 1 戸あたりの売上に入れる。
収益不動産販売・ホテル運営
収益不動産の仕入れ・売却(ソリューション)と、MIMARU などホテルの運営・開業・売却(宿泊)。
| 数量売却・運営の対象になる資産(億円・今の値段で測った実質・推定) | 価格売上÷対象資産(名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,300 | 0.71 | 926 | 136 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 0.95 | 1,909 | 200 |
取り方:ソリューション(売上 636 億円・営業利益 44.1 億円)と宿泊(売上 290 億円・営業利益 91.8 億円)を合算した。対象資産 1,300 億円は推定(自己資本 568 億円と純有利子負債 704 億円の資金基盤の約 1 割強)で、開示ではない。宿泊の営業利益にはホテル売却益を含むとみて、10 年の利益率は下げる。
工事・その他
工事、その他の小さな事業。
| 数量年間の施工件数(件・推定) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 0.60 | 90 | 1 |
| 10 年後 中立 | 160 | 0.80 | 129 | 2 |
取り方:工事の営業利益 0.9 億円は開示。売上約 90 億円は 2027 年 3 月期の予想 115 億円と前期並みの記載から推定し、年 150 件(推定)× 1 件 0.6 億円とした。数量は件数、物価の分は 1 件あたりの売上に入れる。
リスクと懸念
借入の重さと金利
純有利子負債は 704 億円で、時価総額の 1.8 倍、自己資本の 1.2 倍。営業利益は支払利息の約 7 倍にとどまる。10 年国債 3% の世界では、借り換えのたびに利払いが増える。
利益の質
2026 年 3 月期の純利益 82 億円には、固定資産売却益と段階取得差益が入っている。ホテルの利益 91.8 億円も売却益を含むとみられ、2027 年 3 月期は純利益が減る計画だ。
売却益の偏りと市況
営業利益の約 5 割を収益不動産の売却が稼ぐ。買い手の利回り要求が上がれば、売値と粗利率が下がる。2008 年のリーマン後には、純損失が 881 億円に達した。
ホテルの先行投資とインバウンド
MIMARU は 2030 年に 3,000 室をめざすが、開業費用が先行する。客室単価は訪日客と景気に左右され、人手の確保も難しい。
新築マンションの価格と建築費
建築費と用地の高止まり、中東情勢による原油高と資材の混乱がある。引渡数は減る見込みで、金利上昇は住宅ローンの購入層を絞る。
海外と M&A の実行
海外事業は赤字で、ベトナム以外は力不足だ。WOOC の完全子会社化で販管費が約 20 億円増える。買収した事業の統合に失敗すれば、減損が出る。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の通期予想(営業利益 136 億円、純利益 72 億円)を上回る実績が出たら
- 楽観・やや楽観の確率を引き上げる。ホテル運営の利益が安定したことの証拠になる。
- 10 年国債が 3% を超え、収益不動産の売買利回りが上がったら
- やや悲観・悲観の確率を引き上げる。売却益が細り、借入の負担が増える。
- MIMARU の客室単価が 5.4 万円を下回り、稼働が落ちたら
- ホテル運営の収益前提を下げ、ホテルの評価を悲観側に加味する。
- 自己資本比率が 30% を割り込む、または財務制限条項に抵触する動きが出たら
- 悲観の確率を大きく引き上げる。リーマン後の再来を警戒する。
- 大和ハウス工業や共立メンテナンスが持株を増やす、またはTOBの話が出たら
- 買収の可能性として楽観側を厚くする。ただし条件次第で少数株主に不利にもなる。
- 株主優待の対象株主数や費用が開示されたら
- 優待の還元額を修正する。現在は年 2 億円と推定している。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益と引渡の時期(2027 年 3 月期 1Q は営業利益 14.7 億円)
- MIMARU の客室数・客室単価・稼働率(客室単価は 5.2 万→5.4 万円の計画)
- 自己資本比率と純有利子負債(30.6%・704 億円)
- 10 年国債の金利と、収益不動産の売買利回り
倍率と資本コストの決め方
数量は戸数換算・対象資産・工事売上、価格は 1 単位あたりの売上(名目)で積み、物価はその価格に入れた。倍率は k 8.75%(基本 7.5% に循環 +0.75%・値決め力 +0.25%・借金 +0.75%)、g 4%、堀が弱く残る割合を 1/3 とする式から出し、ROE が k をわずかに下回る中立は 1÷k の 10.8 倍を上限にして、その 8.5 割に置いた。今の PER(5 倍前後)や同業の倍率には寄せていない。2026 年 3 月期の純利益 82 億円は一過性の益を含むので、流れの起点を 65 億円にならした。純利益は(営業利益 − 純有利子負債 × 3.6%)に 0.68 を掛けて出し、金利の上昇を織り込んだ。悲観は稼ぐ力でなく売れる資産で置き、今の自己資本に PBR を掛けた。優待の費用(推定年 2 億円)は還元に加えた。セグメントは旧区分で置いたため、新区分(2027 年 3 月期予想)とは対応しない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→12.87 倍・やや楽観 PER 10.9→12.19 倍・中立 PER 9.2→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。