結論
大英産業は福岡を地盤に、九州と山口で新築マンション「サンパーク」と分譲戸建「サンコート」を売る地場の住宅デベロッパーだ。福岡証券取引所の本則市場に上場している。筆者の結論は、10 年で見れば今の値段は割高寄りだというものだ。
理由は借金の重さにある。純有利子負債は 200 億円を超え、時価総額の 7 倍近い。土地と建物の仕入れを借入で賄う商売なので、金利が上がれば利益の厚い部分が利払いに消える。10 年国債 3% の世界で借り換えが進むと、年 5 億円ほど税引き前の利益が減ると見る。
稼ぐ力そのものは悪くない。2025 年 9 月期は小倉駅前の大型マンションの引き渡しで営業利益 13 億円まで戻った。ただ住宅の需要は人口とともに細り、戸数は 10 年で減る。値段は上がっても、戸数の減りと利払いの増加が重なる。株価純資産倍率が 0.3 倍台なのは、その重さを市場が見ているからだろう。
筆者はその低さを割安とは見ない。自己資本利益率が資本コストに届かない会社では、ためた利益が、額面どおりの価値を持たない。創業家が株の大半を持つため、余った利益が少数株主に戻る保証も薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を持ち続けたいとは思いにくい。理由は 3 つある。
第一に、利益の源泉が在庫を借金で回す商売で、事業の質が資本の使い方に依存する。利益が出ても、次の仕入れに資金が戻り、株主の手元に残る利益が薄い。第二に、堀が弱い。ブランドで値段を決められず、買い手は立地と値段で選ぶ。第三に、金利が上がる局面で、借金の重さが利益を削る。
いい点もある。駅近の立地を選ぶ目と、30 年以上の実績は本物だ。小倉駅のタワーマンションのように、大手と組める案件を取っている。
安全域の見方は難しい。株価純資産倍率が低いのは、自己資本の中身が在庫で、その価値が景気で動くためだ。帳簿の自己資本を床と見るのは危うい。10 年先、利益が今と同じ水準を保っても、利払いの増加で時価総額は今と同じ程度にしかならないと筆者は見る。安く買う理由は見つからない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 2 つある。マンション事業は、福岡・北九州・熊本など駅に近い立地で自社ブランド「サンパーク」を企画・分譲する。1986 年から 1 万戸を超える供給実績がある。2023 年にはJR西日本不動産開発と組み、小倉駅前のタワーマンションを手がけた。2025 年 9 月期はこの物件の引き渡しで売上高が 204 億円まで伸び、セグメント利益は 17 億円だった。
住宅事業は、新築戸建「サンコート」の分譲が中心で、中古住宅の再生販売や土地の分譲もある。2025 年 9 月期は売上高 186 億円とやや減ったが、利益は 8 億円と大きく改善した。実需向けの販売戸数が減る一方、投資家向けの戸建賃貸と大型の事業用地が利益を支えた。
残りは水道の供給と不動産賃貸で、売上は 1 億円ほどにすぎない。実質は分譲の会社だ。
会社は 2028 年 9 月期に売上高 436 億円、営業利益 22 億円を目標に掲げる。方針は、実需向けの戸建への依存を下げ、法人・富裕層向けの収益不動産、大型の事業用地、投資用の戸建賃貸へ重心を移すことだ。マンションは駅近の高付加価値物件に絞り、在庫の回転を整える。2022 年に出した前の中期戦略は、2025 年 9 月期の営業利益 16 億円を目標にしたが、13 億円で届かなかった。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、九州の駅近という立地の目利きと、30 年以上積んだ分譲の実績だ。マンションの供給は 1 万戸を超え、地元の金融機関や土地の売り手との関係も長い。小倉駅のようなJR系との共同事業を取れるのは、地場では強い部類だと筆者は見る。
一方、堀と呼べるほどの強みではない。マンションも戸建も、買い手は値段と立地で選ぶ。ブランドで値段を上げ続けられる商売ではなく、土地の仕入れ競争と景気の波に利益が振られる。営業利益率は過去 9 年で 2〜7% に収まっていて、10% を超えた年はない。
弱いのは財務だ。自己資本比率は 19% 前後、純有利子負債は自己資本の 2 倍を超える。営業利益で支払利息をまかなえる倍率は 3 倍に届かない。分譲は在庫が先に積み上がる商売なので、借入が重くなりやすい。
経営は創業家の色が濃い。上場時点では創業家が株の大半を持っていた。意思決定は速いが、少数株主への還元を強く迫る力は働きにくい。配当は年 0.8 億円ほどの据え置きで、純利益の 2〜3 割にとどまる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
住宅分譲は、人口が減る国で新築を売り続ける商売だ。新設住宅の着工は 2025 年に 74 万戸と 62 年ぶりの低さになり、分譲戸建も 12 万戸を割った。九州は福岡市への人の集中があり全国よりましだが、地方の戸建は先細りが避けられない。筆者は、九州の分譲戸数は 10 年で 1〜2 割減ると見る。
値段は逆に上がった。建設費は 2021 年以降に 2〜4 割上がり、新築の価格は実需層の年収の壁に近づいている。これから建設費は物価並みに上がるが、買い手の所得はそこまで上がらない。名目の価格の伸びは物価より低くなると見る。
金利も効く。住宅ローン金利が上がれば、買える人が減る。同時に、デベロッパー自身の借入の利払いが増える。大英産業のように借金で在庫を持つ会社は、この両方を受ける。
競合は、九州ではタカラレーベンやJR九州系、地場の工務店、全国の大手の飯田グループなど。マンションは大手が福岡市内の大型案件を取り、地場は北九州や熊本など周辺に回りやすい。戸建は参入が多く、値段で選ばれる。
業界の追い風は、新築の高騰で中古や賃貸に目が向くことと、投資家の戸建賃貸への関心だ。大英産業が収益不動産と投資用戸建賃貸へ寄せるのは、この流れに沿う。
資本政策と M&A
資本政策は保守的というより、動きが少ない。配当は年 0.8 億円ほどで、中間と期末に半分ずつ払う。2026 年 9 月期も据え置きの予想だ。自社株買いの実績は見つからなかった。純利益に対する還元の割合は 2〜3 割ほどで、利益が増えても配当を増やす方針は強くない。
借入は在庫に連動して増減する。2025 年 9 月期の純有利子負債は 208 億円で、前の年の 139 億円から増えた。大型マンションの仕入れが先行したためだ。自己資本比率の目標は 2028 年 9 月期に 20.3% と、ほぼ今の水準を維持するにとどまる。
M&Aの実績は見つからなかった。TOBやMBOの発表もない。創業家と関係者が株の大半を持つので、買収される場合も創業家の判断になる。時価総額が 29 億円と小さく、流動性は薄い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
駅近の高付加価値マンションと、投資家向けの戸建賃貸・事業用地は、実需向け戸建の縮小を補える。2025 年 9 月期は、住宅事業の利益が 89% 増えた。販売戸数が減っても利益が増えたのは、商品の組み替えが効いている証拠だ。
会社は 2028 年 9 月期に営業利益 22 億円を掲げる。小倉駅前のようなJR系との共同事業を重ねれば、利益率の高い大型案件が積み上がる。福岡は人口が増える数少ない大都市圏で、九州全体の需要を引っ張る。
金利上昇も、不動産の値段が物価と一緒に上がる世界なら吸収できる。在庫の値段が上がれば、借入が増えても担保は厚くなる。借入の返済は物件の売却で進み、実質の負担は在庫が回るほど軽くなる。
株価純資産倍率が 0.3 倍台という今の値段は、資産の価値を大きく割り引いている。創業家が大株主で経営が安定しており、10 年で利益が今の 2 倍になれば、時価総額は大きく上がる余地がある。
慎重な見方
戸数の減りと金利の上昇が同時に来る。九州の分譲戸数が 10 年で 2 割減れば、固定費の多い会社は利益率が落ちる。2018 年から 2025 年の営業利益率は 2〜7% で、平均すると 3% 台にすぎない。ここに借入の利払いが 5 億円ほど増えれば、営業利益 13 億円のうち 4 割近くが追加の利払いに消える。
会社の目標は、前の中期戦略でも届いていない。2025 年 9 月期に 16 億円を目標にして、実績は 13 億円だった。2028 年 9 月期の 22 億円も、大型マンションの引き渡しが一巡した 2026 年 9 月期の予想で営業利益 13 億円、中間期は営業赤字という出発点を考えれば厳しい。
株価純資産倍率が低いのは、自己資本の大半が在庫だからだ。景気が崩れれば、評価損が出て自己資本が薄くなる。リーマン後に地場の分譲会社が破綻した例は多い。
配当が据え置きで、創業家が大株主の会社に、少数株主へ利益が戻る保証もない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、組み替えが効けば 10 年で利益が伸びるという点だ。弱気の言い分は、利払いと戸数の減りが先に来るという点だ。筆者は弱気を強いとみる。
借金が営業利益に対して重く、金利の上昇は確実に来る。組み替えの効果は大型案件に左右され、毎年は続かない。そこで、確率は中立に 4 割弱、やや悲観に 2 割強を置いた。楽観は 1 割にとどめた。
悲観は、利払いの増加と評価損が重なり、自己資本が削られる筋書きだ。確率は 1 割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 1,284 円43 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 220 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 685 円23 億円、今との差 −22.4%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,736 円124 億円 | 420 円14 億円 | +370.8% | +16.8% | 416 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,967 円66 億円 | 300 円10 億円 | +156.8% | +9.9% | 454 円15 億円 |
| 中立 | 38% | 949 円32 億円 | 240 円8 億円 | +34.7% | +3.0% | 452 円15 億円 |
| やや悲観 | 22% | 529 円18 億円 | 120 円4 億円 | −26.5% | −3.0% | 143 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 396 円13 億円 | 0 円0 億円 | −55.1% | −7.7% | 40 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,284 円43 億円 | 220 円7 億円 | +70.3% | +5.5% | 1,504 円50 億円 |
今の株価時価総額 883 円29 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 高採算の組み替えが効き利益が倍になる 利益 11 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,736 円124 億円
収益不動産と投資用の戸建賃貸、大型の事業用地が柱に育つ。実需向けの戸建は減るが、利益の厚い案件が穴を埋めて利益率が上がる。小倉駅前のようなJR系との共同事業が毎年のように取れ、マンションの利益率は 9% を超える。
福岡の人口が伸び続け、九州の駅近は値崩れしない。価格は物価を少し上回って 10 年で 1.4 倍になる。営業利益は 25 億円近くに届く。
利払いは 5 億円ほど増えるが、利益の伸びがそれを上回る。それでも自己資本利益率は資本コストに届かず、倍率は低いままだ。
大手が九州で攻勢をかけても、地場の駅近物件を確保する力が保たれ、金融機関の融資姿勢も落ち着いている。会社の自己資本比率は 20% 台に乗り、借入への依存が少し下がる。
- マンション事業:数量 462(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.59(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 272 億円・営業利益 26 億円。戸数-5%・単価+40%
- 住宅事業:数量 588(年間販売件数(戸・区画・案件の合計))× 価格 0.42(1 件あたり平均価格(億円))→ 売上 247 億円・営業利益 14 億円。件数-5%・単価+40%
- その他(水道供給・不動産賃貸):数量 1.0(年 1 式)× 価格 2.00(売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸の増加
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 124 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期目標の 22 億円どおりに進む道は細い。借金と前の目標の未達を考え、楽観は 1 割にとどめた。
やや楽観 20% 組み替えが一定進み利益が 1.5 倍になる 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,967 円66 億円
駅近のマンションと投資家向けの戸建賃貸が伸び、実需向けの戸建の減りを補う。マンションの利益率は 9% 前後に保たれ、住宅事業も 4% 台まで戻る。
価格は物価をわずかに下回る年 2.8% で上がる。戸数は 1 割減る。営業利益は 17 億円まで伸びる。
借入は在庫の増加で 250 億円前後に膨らみ、利払いは 5 億円ほど増える。純利益は 6 億円弱にとどまる。
九州の人口は福岡市に集まり、駅近の需要は底堅い。JR系との共同事業の実績が、新しい案件の入口になる。中期目標の 22 億円には届かないが、前の中期戦略の未達よりは近づく。自己資本比率も 20% 前後で安定する。
- マンション事業:数量 437(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.55(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 243 億円・営業利益 22 億円。戸数-10%・単価+32%
- 住宅事業:数量 569(年間販売件数(戸・区画・案件の合計))× 価格 0.39(1 件あたり平均価格(億円))→ 売上 222 億円・営業利益 10 億円。件数-8%・単価+30%
- その他(水道供給・不動産賃貸):数量 1.0(年 1 式)× 価格 1.80(売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 66 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:小倉駅前のような大型案件が続き、事業用地の販売も安定する筋書き。ただし戸数は減り、確率は中立の約半分とした。
中立 38% 戸数の減りと利払いの増加で今の利益が目減りする 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 949 円32 億円
九州の分譲戸数は 10 年で 1〜2 割減る。会社は収益不動産や投資用の戸建賃貸で穴を埋めるが、大型案件は毎年は来ない。価格は物価を下回る年 2.5% で上がり、10 年で 1.28 倍になる。
マンションの利益率は 8.5%、住宅事業は 4% で、本社費などは物価並みに増える。営業利益は 13 億円前後と、今の水準を保つ。
一方、借入の借り換えで利払いは 5 億円ほど増え、純利益は 3 億円を割る。配当は年 0.8 億円を保つが、純利益に対する割合は上がる。自己資本は 120 億円近くまで積み上がる。
- マンション事業:数量 413(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.54(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 222 億円・営業利益 19 億円。戸数-15%・単価+28%
- 住宅事業:数量 557(年間販売件数(戸・区画・案件の合計))× 価格 0.38(1 件あたり平均価格(億円))→ 売上 209 億円・営業利益 8 億円。件数-10%・単価+25%
- その他(水道供給・不動産賃貸):数量 1.0(年 1 式)× 価格 1.50(売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年のあいだ九州の分譲戸数が緩やかに減り、利払いが増える筋書きがいちばんありそうだ。大きな崩れも飛躍もない。
やや悲観 22% 戸数が 2 割以上減り、利払いで赤字に沈む 利益 −6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 529 円18 億円
金利の上昇で買える人が減り、九州の分譲戸数が 2 割以上減る。値段は物価に追いつかず、10 年で 1.15 倍にとどまる。固定費は物価で増えるので、マンションの利益率は 6.5%、住宅事業は 2.5% に落ちる。
営業利益はほぼゼロになる。借入の利払いは 5 億円増え、純利益は 6 億円の赤字になる。
配当は減らし、利益が出る年まで維持できない。借入の借り換え条件は厳しくなり、在庫を急いで売る必要が出る。
創業家が支える姿勢は続くが、新しい仕入れを抑えるため、大型案件の機会を逃し、戸数がさらに減る悪循環に入る。
- マンション事業:数量 379(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.48(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 183 億円・営業利益 12 億円。戸数-22%・単価+15%
- 住宅事業:数量 464(年間販売件数(戸・区画・案件の合計))× 価格 0.35(1 件あたり平均価格(億円))→ 売上 160 億円・営業利益 4 億円。件数-25%・単価+15%
- その他(水道供給・不動産賃貸):数量 1.0(年 1 式)× 価格 1.20(売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円
倍率:稼ぐ力は赤字。評価の中心は在庫と借入の差で、今の自己資本 88 億円に 0.2 倍を掛けた(中立の PBR 0.22 を下回る)。EV ÷ 営業利益は 250 倍で、利益の倍率は意味を持たない、純有利子負債 208 億円は在庫の担保として別に見ている。
確率:九州の分譲需要が想定より速く細り、金利上昇が重なる筋書き。借金の重さを考えると、起こりやすい悪い方向の筋書きだ。
悲観 10% 九州の分譲が縮み、在庫の評価損で自己資本が削られる 利益 −12 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 396 円13 億円
人口減少と金利上昇で九州の分譲戸数が 3 割以上減る。値段は下がり、売れ残りの在庫に評価損が出る。マンションの利益率は 3% に落ち、住宅事業は赤字になる。
営業利益はマイナスに沈み、利払いは 5 億円増える。純利益は 12 億円の赤字になる。配当は止まる。
金融機関は担保の評価を引き下げ、在庫を早く売る必要が出る。創業家が増資で支える可能性もあるが、少数株主の取り分は薄まる。自己資本は評価損で 5 割強まで減る。
10 年のあいだに、景気の谷が一度は来る。大英産業のように借入で在庫を抱える会社は、谷の深さで生き残れるかが決まる。
- マンション事業:数量 316(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.40(1 戸あたり平均価格(億円))→ 売上 126 億円・営業利益 4 億円。戸数-35%・単価-5%
- 住宅事業:数量 371(年間販売件数(戸・区画・案件の合計))× 価格 0.29(1 件あたり平均価格(億円))→ 売上 106 億円・営業利益 −1 億円。件数-40%・単価-5%
- その他(水道供給・不動産賃貸):数量 1.0(年 1 式)× 価格 1.00(売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円
倍率:赤字で稼ぐ力は 0。売れる資産は在庫を値引きして売り、借入を返した残り。今の自己資本 88 億円に 0.15 倍を掛けた。
確率:リーマン後のように在庫の評価損が出て、借り換えも厳しくなる筋書き。10 年で 1 割は起こりうると見た。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
マンション事業
九州・山口で新築マンション「サンパーク」を企画・分譲する。小倉駅前など駅近の大型物件が中心。
| 数量年間引渡戸数(戸) | 価格1 戸あたり平均価格(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 486 | 0.42 | 204 | 17 |
| 10 年後 中立 | 413 | 0.54 | 222 | 19 |
取り方:売上高 204.2 億円・セグメント利益 16.7 億円(開示)。戸数は開示がないので、九州の駅近マンションの平均価格 4,200 万円で割った推定(約 486 戸)。2025 年 9 月期は小倉駅前の大型物件の引き渡しで押し上げられた年。
住宅事業
新築戸建「サンコート」の分譲、中古住宅の再生販売、土地分譲、投資用戸建賃貸・大型事業用地の販売。
| 数量年間販売件数(戸・区画・案件の合計) | 価格1 件あたり平均価格(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 619 | 0.30 | 186 | 8 |
| 10 年後 中立 | 557 | 0.38 | 209 | 8 |
取り方:売上高 185.6 億円・セグメント利益 7.5 億円(開示)。件数は開示がないので、戸建・土地・事業用地を混ぜた平均 3,000 万円で割った推定(約 619 件)。
その他(水道供給・不動産賃貸)
水道供給と不動産賃貸。規模は小さい。
| 数量年 1 式 | 価格売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1.0 | 1.10 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.50 | 2 | 0 |
取り方:売上高 1.1 億円・セグメント利益 0.25 億円(開示)。
リスクと懸念
借入の借り換えで利払いが膨らむ
純有利子負債は 208 億円で、営業利益で支払利息をまかなえる倍率は 3 倍に届かない。10 年国債 3% の世界で借り換えが進むと、利払いは 5 億円ほど増える。営業利益 13 億円の約 4 割にあたり、純利益を大きく削る。
九州の分譲戸数が人口減少で細る
地方の戸建を中心に新築の需要は先細りする。福岡市への人の集中はあるが、北九州や熊本、山口などの周辺では戸数が減る。固定費が重い会社は、戸数が 1〜2 割減るだけで利益率が大きく落ちる。
在庫の評価損と資金繰り
分譲は在庫を先に抱える。景気が崩れれば、評価損が出て自己資本が薄くなる。自己資本比率は 19% 前後と薄く、金融機関が担保の評価を引き下げると、在庫を急いで売る必要が出る。
大型案件への依存
2025 年 9 月期の営業利益は、小倉駅前の大型マンションの引き渡しで押し上げられた。大型案件は毎年は来ず、2026 年 9 月期は営業利益が減る予想で、中間期は営業赤字だった。利益は年によって大きく振れる。
中期目標の未達
2022 年の中期戦略は 2025 年 9 月期の営業利益 16 億円を目標にして 13 億円で届かなかった。2028 年 9 月期の 22 億円や、2032 年 9 月期の 50 億円といった長期の目標も、実績の積み上げが追いついていない。
創業家支配と流動性の低さ
上場時点で創業家と関係者が株の大半を持っていた。時価総額は 29 億円と小さく、売買が薄い。少数株主への還元を求める力は弱く、株を売りたい時に思った値段で売れないおそれがある。
今後の分かれ目
- 2028 年 9 月期に営業利益 20 億円以上を達成する
- 高採算の組み替えが機能したことになり、楽観寄りに確率を寄せる。ただし利払いの増加で純利益はそこまで伸びない。
- 10 年国債の利回りが 4% を超える
- 借入の利払いが想定を超えて増え、中立でも赤字に近づく。やや悲観の確率を上げる。
- 九州の新築マンション・戸建の販売価格が下落に転じる
- 在庫の評価損と借り換えの厳しさが同時に来る。悲観の確率を上げる必要がある。
- 創業家が自社株買いや増配で還元を強める
- 余った利益が少数株主に戻る道が開く。資本政策の点は改善する。
- 小倉駅前のようなJR系・大手との共同事業が毎年取れる
- 大型案件の安定が見え、利益の振れが小さくなる。確率を中立から楽観側へ寄せる。
見ておくもの
- 期末の純有利子負債と自己資本比率
- マンションの契約進捗率と引き渡し戸数
- 九州の新築マンション・分譲戸建の販売価格
- 10 年国債の利回りと借入の平均金利
- 2028 年 9 月期の中期目標の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式(g 4%・k 9%)から置いた。ROE が k を下回るので上限は 1÷k の 10.3 倍で、利益の質を見て 9.5〜10 倍にした。今の株価純資産倍率 0.3 倍台や過去の水準は倍率の根拠にしていない。今の時価総額は最後に比べただけで、中立の時価総額が今と同程度になったのは、利払いの増加が営業利益を削る計算の結果である。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.8→11.11 倍・中立 PER 9.5→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.25%。事業が傾いている会社ではないので上乗せはなし。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.75% → 9.00%。