結論
センチュリー21・ジャパンは、不動産仲介店に「センチュリー21」の看板と仕組みを貸し、手数料の一部を受け取る本部だ。筆者の結論は「やや割高」。事業は身軽で現金も厚いが、看板を借りる店が減り続け、先の伸びが乏しいからだ。
稼ぎ方は単純だ。加盟店が仲介で得た手数料の 6% を受け取る。店が増減しなくても、不動産の値段が上がれば手数料も増える。営業利益率は 25% と高く、従業員は 93 人しかいない。
弱みは加盟店数だ。2 年前に 1,008 店あった店は、2026 年 3 月末に 934 店へ減った。退会が新規加盟を上回る状態が続く。一方で店ごとの成約は増えており、手数料の総額は横ばいを保っている。
現金と有価証券は約 57 億円あり、時価総額の半分にあたる。ただ、大株主の伊藤忠が 49% を持ち、配当性向は 6 割台に固定されたまま、現金は使われずに残っている。中立の筋書きでは、10 年後の利益は今より 2 割ほど増えるにとどまる。割り引いた価値は今の時価総額を 1 割強下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「優れた事業モデルだが、成長の余地が乏しい会社」だ。工場も在庫もなく、売上の 4 分の 1 が営業利益になる。稼いだ利益のほぼすべてが株主のものになる。
一方で、事業の土台である加盟店が減っている。看板の力が店に伝わらなくなれば、収入は店数に比例して細る。ブランドの持ち主が変わったことも、10 年の見通しを曇らせる。
資本の使い方には注文がある。現金と有価証券が時価総額の半分あるのに、使い道が見えない。配当性向 6 割を守るのは立派だが、残りの 4 割は積み上がる一方だ。筆者は、この現金の価値を 4 分の 3 に割り引いて数える。
安全域は薄い。中立の筋書きでも、今の値段を 1 割強下回る。悲観の筋書きでは、看板が価値を失っても、現金が下値を支える。ただ、わざわざ今の値段で持つ理由は見つかりにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は「サービスフィー」だ。加盟店が仲介で受け取る手数料の 6% を毎月受け取る。直近の加盟店の手数料総額は 601 億円で、本部の収入はおよそ 36 億円にあたる。加盟店が自ら売主になる取引は、売買代金の 0.36% で計算する。
加盟金やシステム利用料も入る。2025 年 4 月には、加盟店が共同で運営する広告基金組合から IT システムの資産を引き取り、利用料を計上し始めた。収入は増えたが、同額の費用も立つため、利益はほとんど増えない。
看板の持ち主は米国の CENTURY 21 Real Estate だ。日本での独占的な使用権を「永久」の契約で得ており、本部の総収入の 10% を米国側に払う。加盟店が 1,000 店を超える間は 9% に下がる。米国側の親会社だった Anywhere は、2026 年 1 月に Compass に買収された。
加盟店数は 934 店。2026 年 3 月期は新規 33 店、退会 59 店だった。広告基金には 15 億円が集まり、本部が約 4 億円、加盟店が 11 億円を拠出する。本部は管理者として、使い道を広告に限る義務を負う。会社は新規加盟、AI を使った営業支援、アジアとの国際取引、事業承継の支援を重点に挙げる。
優良さと弱いところ
優良さは「看板の力で食べる身軽な本部」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、ブランドと、店の経営を支える仕組みにある。
強みは三つある。一つ目は資本の軽さで、営業利益率は 25%、自己資本比率は 85% だ。二つ目は手数料に連動する収入で、不動産の値上がりがそのまま収入になる。三つ目は広告と IT を束ねる規模で、個人店では持てない集客の仕組みを提供できる。
弱みも三つある。一つ目は加盟店の流出だ。看板代を払わなくても集客できる店は出ていく。二つ目は米国側との関係で、契約が「永久」でも、重大な違反があれば解除されうる。三つ目は看板の持ち主が変わった点で、Compass が日本での扱いを変えるかは見えない。
経営は慎重で、無借金だ。ただし、現金の使い方は保守的に過ぎる。有価証券を 51 億円抱えたまま、自社株買いも大型の投資もしていない。ROE は 12% と資本コストを上回るが、現金を除けば 20% 近い。現金が足を引っ張っている形だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
不動産の仲介は、成熟した市場だ。人口は減るが、中古住宅の取引は増えている。新築の価格が上がり、買い手が中古に流れているためだ。仲介手数料は法律で売買価格の 3% + 6 万円までと決まっているため、不動産の値段が上がれば手数料も増える。
競争は二層ある。大手の直営チェーンは、駅前の店舗と広告で顧客を集める。フランチャイズの同業は、看板を貸して個人店を束ねる。センチュリー21は後者で、全国に約 930 店を持つ。顧客はポータルサイトで物件を探してから店に来るため、店の看板より物件情報の量が効く時代になった。
変化の兆しは三つある。一つ目は店の高齢化と後継者難で、廃業する個人店が増える。二つ目は AI で、物件の紹介文や契約書の作成が自動化される。仲介の営業は減らないが、1 店あたりの人手は減る。三つ目は金利の上昇で、住宅ローンの負担が重くなる。
10 年先は、店の数が減るなかで、1 店あたりの成約が増える姿を筆者は見る。本部の収入は、店数の減少を値上がりが補う形で、実質では緩やかに細る。看板が個人店に必要とされ続けるかが、10 年の分かれ目になる。
資本政策と M&A
資本政策の柱は安定配当で、配当性向は 6 割台に固定されている。直近の年間配当は 3 年前から 2 割ほど増えたが、性向は変わらない。自社株買いの実績はなく、自己株式は 106 万株で長く動いていない。
手元資金は現金と有価証券で約 57 億円ある。ほかに上場株を 18 銘柄、投資有価証券として 11 億円持つ。こうした資金を何に使うのか、会社は説明していない。国際取引と事業承継の支援に使う可能性はあるが、投資額は小さい。
大株主は伊藤忠商事で、議決権の 49% を持つ。取締役と監査役を各 1 人出し、情報提供を受けている。連結子会社にはなっていない。完全子会社化の可能性は常にあるが、今のところ公開買付けの発表も観測もない。筆者は、持株比率が過半に届かないことから、現金の戻り方を少し割り引く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
身軽な事業モデルは崩れない。収入は加盟店の手数料に連動し、不動産の値段が上がれば自動的に増える。直近の 5 年間で、加盟店の手数料総額は 252 億円から 288 億円(上期)へ 14% 増えた。店数が減っても、1 店あたりの成約が増えて補っている。
店の流出は止まりつつある。退会は 2 年前の 77 店から 59 店へ減り、新規加盟は 33 店まで戻した。事業承継とアジアとの国際取引が加盟店の増加につながれば、1,000 店への回復も見える。1,000 店を超えれば、米国側に払う料率が 10% から 9% に下がり、利益が上積みされる。
財務は盤石だ。現金と有価証券が 57 億円あり、借金はない。配当性向 6 割を守りながら、手元資金は積み上がっている。大株主の伊藤忠が支えているため、買収されても少数株主が割安に扱われにくい。今の値段は、事業の価値を現金の分しか認めていない。成長に頼らない安定した収益源として見直されてよい。
慎重な見方
加盟店の減少は止まらない。2 年で 1,008 店から 934 店へ減り、2026 年 3 月期は退会が新規の 2 倍近くに上った。個人店の高齢化と後継者難は構造的で、看板代を払う意味が薄れれば、店は離れる。本部の収入は店の数に比例するので、店が減れば確実に細る。
看板の持ち主が変わった。Anywhere が Compass に買収され、日本での契約の扱いは不透明になった。契約は「永久」でも、重大な違反があれば解除されうる。米国側へ払う 10% は、利益率を削る固定費だ。
成長の手段が見えない。国際取引や事業承継の支援を掲げるが、収入に効くほどの規模ではない。AI は仲介の営業を省力化し、1 店あたりの人手を減らす。手数料の仕組みも、一部の仲介業者が手数料を下げれば崩れる。
現金は資産だが、使われなければ価値にならない。大株主は過半を持たず、清算を決められるのは少数株主ではない。配当性向 6 割で安定して配っているのは評価できるが、成長のない会社の適正な値段は、すでに織り込まれている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。強気の見方が示す手数料総額の伸びは本物だが、本部の収入は店の数と成約の両方で決まり、店の減少が長く続く点が重い。
確率は、中立に 4 割弱を置き、やや悲観に 3 割近くを置いた。悲観を 1 割にとどめたのは、現金が下値を支え、手数料の仕組みが急に消えることは考えにくいためだ。楽観は 1 割に満たない。看板の持ち主が変わったことで、店数の回復を信じる根拠が弱まった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,920 円197 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 565 円58 億円)。 今の値に割り戻すと 1,326 円136 億円、今との差 +17.9%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,213 円330 億円 | 731 円75 億円 | +250.8% | +13.4% | 276 円28 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,771 円284 億円 | 653 円67 億円 | +204.7% | +11.8% | 616 円63 億円 |
| 中立 | 38% | 2,382 円244 億円 | 594 円61 億円 | +164.8% | +10.2% | 1,131 円116 億円 |
| やや悲観 | 26% | 960 円99 億円 | 516 円53 億円 | +31.4% | +2.8% | 384 円39 億円 |
| 悲観 | 11% | 380 円39 億円 | 331 円34 億円 | −36.7% | −4.5% | 78 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,920 円197 億円 | 565 円58 億円 | +121.2% | +8.3% | 2,486 円255 億円 |
今の株価時価総額 1,124 円115 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 店数が回復し、看板の価値が保たれる 利益 14 億円 · PER 21.4 倍 · 株価時価総額 3,213 円330 億円
事業承継の支援で個人店の廃業が減り、新規加盟が増える。加盟店は 1,000 店を超え、米国側に払う料率が 9% に下がる。成約件数は 15% 増え、手数料の値段も物価を上回って伸びる。
営業収益は 68 億円、営業利益は 19 億円まで増える。配当性向 6 割台は守られ、自己資本は 100 億円を超える。ただし、店数の回復は過去 5 年に一度もなく、看板の持ち主が変わった局面でそれを前提にはできない。当たれば大きいが、起きる可能性は低い筋書きだ。広告基金と IT の費用も売上に応じて増えるが、固定費の比率は下がり、利益率が 29% まで改善する。
- サービスフィー収入:数量 52.0(加盟店の取扱件数(万件、実質))× 価格 1.11(1 万件あたりのサービスフィー(億円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 17 億円。サービスフィー収入:数量 52.05 × 単価 1.11、利益率 29.0%
- IT・加盟金等:数量 1,042(平均加盟店数(店))× 価格 0.01(1 店あたり収入(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。IT・加盟金等:数量 1041.70 × 単価 0.01、利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 21.38 倍、時価総額 326 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事業承継と国際取引で加盟店が増え、1,000 店を超える筋書き。看板の持ち主が変わった今、店数の回復を信じる根拠は弱く、確率は低く置く。
やや楽観 18% 店数が下げ止まり、手数料の値上がりが収入を押し上げる 利益 12 億円 · PER 21.3 倍 · 株価時価総額 2,771 円284 億円
退会が減り、加盟店は 900 店台で下げ止まる。1 店あたりの成約は増え続け、成約件数は 5% 増える。手数料の値段は物価を少し上回る。営業収益は 61 億円、営業利益は 16 億円ほどになる。
配当性向 6 割台を守りつつ、利益が増えて配当も増える。ROE は 11% 台で資本コストを上回る。現金は 10 年で積み上がるが、使い道は変わらない。看板の力は保たれるものの、店数の回復には届かない、穏やかな 10 年だ。強気に傾きすぎず、現状の延長を素直に描いた形になる。米国側への支払いは売上と連動して増え、利益率は 27% 台にとどまる。広告基金への拠出も、収入に応じて緩やかに増える。
- サービスフィー収入:数量 47.5(加盟店の取扱件数(万件、実質))× 価格 1.08(1 万件あたりのサービスフィー(億円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 14 億円。サービスフィー収入:数量 47.52 × 単価 1.08、利益率 27.5%
- IT・加盟金等:数量 947(平均加盟店数(店))× 価格 0.01(1 店あたり収入(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。IT・加盟金等:数量 947.00 × 単価 0.01、利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 21.3 倍、時価総額 278 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店数が横ばいに近づき、不動産の値上がりで収入が伸びる。現状の延長に近い筋書きで、やや厚く置く。
中立 38% 店数は緩やかに減り、手数料の値上がりが穴を埋める 利益 10 億円 · PER 21.2 倍 · 株価時価総額 2,382 円244 億円
加盟店は 10 年で 1 割ほど減るが、1 店あたりの成約が増えて、成約件数は 3% 減にとどまる。手数料の値段は物価並みの 1.34 倍になる。営業収益は 55 億円、営業利益は 13 億円。利益率は今の 25% から 24% にわずかに下がる。
配当は性向 6 割台のまま、利益の伸びとともに増える。ROE は 10% 前後で、資本コストを少し上回る。現金は 10 年で 20 億円ほど積み上がり、有価証券を含めると 80 億円に近い。看板の力は保たれるが、成長は物価の分だけだ。大きな成功も失敗もなく、手数料が物価に連れて増える分だけ利益が伸びる。
- サービスフィー収入:数量 43.9(加盟店の取扱件数(万件、実質))× 価格 1.06(1 万件あたりのサービスフィー(億円・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 12 億円。サービスフィー収入:数量 43.90 × 単価 1.06、利益率 25.5%
- IT・加盟金等:数量 900(平均加盟店数(店))× 価格 0.01(1 店あたり収入(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。IT・加盟金等:数量 899.65 × 単価 0.01、利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 21.2 倍、時価総額 237 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店の流出が続く一方、1 店あたりの成約と手数料の値上がりが補う。強気の見方と慎重な見方のちょうど間で、最も確率が高い。
やや悲観 26% 加盟店の流出が続き、収入が細る 利益 7 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 960 円99 億円
加盟店は 700 店台まで減る。成約件数は 15% 減り、手数料の値段は競争で物価に届かない 1.30 倍にとどまる。営業収益は 47 億円、営業利益は 9 億円ほどに下がる。
米国側に払う 10% と広告基金への拠出は固定に近く、利益率は 20% 前後に落ちる。配当は性向を保てず、減配もありうる。ROE は 7% 台に下がり、資本コストに届かない。現金は残るが、成長のない会社として評価される。店の減少に歯止めがかからず、手数料の値上がりでも補いきれない10 年である。退会が続けば広告基金の規模も縮み、加盟店の集客力が落ちて、さらに退会を呼ぶ悪循環に入る。
- サービスフィー収入:数量 38.5(加盟店の取扱件数(万件、実質))× 価格 1.03(1 万件あたりのサービスフィー(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 8 億円。サービスフィー収入:数量 38.47 × 単価 1.03、利益率 21.0%
- IT・加盟金等:数量 805(平均加盟店数(店))× 価格 0.01(1 店あたり収入(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。IT・加盟金等:数量 804.95 × 単価 0.01、利益率 10.0%
倍率:ROE 7.6%(純利益 7.2 億円 ÷ 自己資本 95 億円)。k 7.5% 以下なので PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。ROE÷k が 0.9 を下回り、利益が細る局面で、上限の 8 割の 9.5 倍に置いた。余った現金は谷で食われる想定で 0.75 倍の 33.75 億円とし、戻り方 0.75 を掛けた。
確率:店の高齢化と後継者難で退会が新規を大きく上回り、手数料の値上がりが追いつかない。確率を厚めに置いた。
悲観 11% 構造的に負け、看板代を払う店がいなくなる 利益 3 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 380 円39 億円
構造的に負ける。個人店は看板がなくても集客できるようになり、加盟店は 500 店台まで減る。米国側との契約は条件が厳しくなり、本部の収入は半分以下に縮む。営業収益は 28 億円、営業利益は 3 億円ほどだ。
広告基金への拠出と米国側への支払いは固定費として残り、利益率は 12% まで落ちる。配当は大きく減らされる。事業の稼ぐ力は小さいので、価値は現金と有価証券で測る。清算するかを決めるのは大株主であり、少数株主が全額を取り戻せる保証はない。現金が下値を支えるとはいえ、事業の価値はほぼ失われた姿である。
- サービスフィー収入:数量 24.9(加盟店の取扱件数(万件、実質))× 価格 0.95(1 万件あたりのサービスフィー(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。サービスフィー収入:数量 24.89 × 単価 0.95、利益率 14.0%
- IT・加盟金等:数量 521(平均加盟店数(店))× 価格 0.01(1 店あたり収入(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。IT・加盟金等:数量 520.85 × 単価 0.01、利益率 0.0%
倍率:構造的に優良でなくなり、純利益は 3 億円ほどで稼ぐ力は 35 億円に届かない。床は売れる資産で測る。現金と有価証券 57 億円、投資有価証券を 7 割で売り、負債を払うと約 52 億円が残るが、大株主が過半を持たず清算を少数株主が決められないため 0.75 を掛けて 39 億円に置いた。今の自己資本 69.6 億円に対する PBR は 0.56 倍にあたる。
確率:看板の持ち主が変わり、AI とポータルで個人店が自立できる時代になる。店数が半分近くに減る負け筋で、確率は 1 割強に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
サービスフィー収入
加盟店の仲介手数料の 6% を受け取る本部の主力収入。
| 数量加盟店の取扱件数(万件、実質) | 価格1 万件あたりのサービスフィー(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.3 | 0.79 | 36 | 9 |
| 10 年後 中立 | 43.9 | 1.06 | 47 | 12 |
取り方:2026/03 期の総取扱件数は 45.3 万件、サービスフィー収入は 35.8 億円(有価証券報告書)。1 件あたり約 7.9 万円が価格に当たり、不動産の値段と同じく物価で上がる。利益は営業利益 10.6 億円のうち、この部門が約 9.5 億円(利益率 26.5%)と推定した(推定)。
IT・加盟金等
IT システム利用料、加盟金、その他の収入。IT 利用料は費用と同額が立つため、利益はほとんど出ない。
| 数量平均加盟店数(店) | 価格1 店あたり収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 947 | 0.01 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 900 | 0.01 | 9 | 1 |
取り方:営業収益 43.0 億円からサービスフィー収入 35.8 億円を引いた 7.2 億円。平均加盟店数 947 店で割った 1 店あたり 757 万円が価格に当たる。営業利益は残りの 1.1 億円(利益率 16%)と推定した(推定)。
リスクと懸念
加盟店の減少が止まらない
加盟店は 2 年で 1,008 店から 934 店に減った。個人店の高齢化と後継者難は構造的で、退会が新規を上回る状態が続く。本部の収入は店の数と成約に比例するため、店数が 1 割減れば収入もほぼ同じだけ細る。
米国側との契約とブランドの持ち主
日本での使用権は「永久」の契約だが、重大な違反が是正されなければ解除されうる。米国側の親会社だった Anywhere は、2026 年 1 月に Compass に買収された。新しい持ち主が料率や条件を変えれば、利益率に直接響く。
住宅市況と金利の上昇
本部の収入は加盟店の手数料に連動し、手数料は不動産の値段と取引件数で決まる。金利が上がれば住宅ローンの負担が増え、取引が細る。不動産の値段が下がれば、手数料の総額も減る。
仲介の置き換えと手数料の引き下げ
AI とポータルサイトの進化で、個人店が看板なしに集客できるようになれば、サービスフィーの支払いを渋る動きが出る。仲介手数料を下げる業者が増えれば、6% の受取額も減る。
現金が使われない
現金と有価証券が約 57 億円あるが、使い道は示されていない。大株主は伊藤忠で、清算や大型の還元を少数株主が決められない。配当性向は 6 割台で固定されており、積み上がる現金は価値に変わりにくい。
完全子会社化の価格
伊藤忠は議決権の 49% を持つ。公開買付けは発表も観測もないが、実施されれば少数株主は提示された価格で手放すことになる。本質価値より低い価格なら、少数株主に不利な取引になる。
今後の分かれ目
- 加盟店数が 2 期続けて増加に転じたら
- 看板の力が戻ったとみて、楽観・やや楽観の確率を増やし、中立の店数の減りを 1 割から小さくする。
- 退会が新規の 2 倍を超える状態が 3 期続いたら
- 構造的な流出とみて、やや悲観・悲観の確率を上げ、中立の成約件数を引き下げる。
- Compass が日本のマスターフランチャイズの契約条件を変更したら
- 料率の変更幅に応じて、中立の利益率を見直す。解除の通知なら悲観の確率を大きく上げる。
- 現金・有価証券を使った自社株買いや投資が発表されたら
- 現金の戻り方を 0.75 から 1.0 へ上げる。大型の買収なら、買収の収益力を見て評価する。
- 伊藤忠が公開買付けを発表したら
- 価格が本質価値を上回るか下回るかで評価が変わる。下回る価格なら少数株主に不利な取引になる。
- 成約件数が 2 期続けて前年を下回ったら
- 住宅市況の反転とみて、中立の成約件数を引き下げ、手数料の総額の伸びを再計算する。
見ておくもの
- 加盟店数の月次推移(新規加盟・退会)
- 加盟店の手数料総額と成約件数
- 米国側(Compass)との契約条件と通知
- 現金・有価証券の使い道と配当性向
- 伊藤忠の持株比率の変化
- 住宅ローン金利と中古住宅の成約動向
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k 7.5%(基本 7.5% + quality 1.0%)を超える楽観〜中立は式の正当化 PER(楽観 14.0 倍・中立 12.6 倍)の 9〜10 割で置き、中立は 1÷k(11.8 倍)を下回らせなかった。やや悲観は ROE が k 以下のため上限 1÷k の 8 割に置いた。今の株価や今の PER を見てから決めたわけではない。現金と有価証券は 57 億円で、うち事業の運転資金 12 億円を除いた 45 億円を余った現金とし、戻り方は 0.75 とした。投資有価証券 11 億円の配当は利益に入っているため、余った現金には足していない。悲観の床は売れる資産の 0.75 倍(39 億円)で、過去の PBR の底は使っていない。サービスフィー収入の数量は取扱件数から取った実績で、利益の配分は推定のため誤差がある。新リース会計基準の影響は小さい(賃借は支店の事務所程度)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→21.38 倍・やや楽観 PER 12→21.3 倍・中立 PER 12→21.2 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。