結論
ゴールドクレストは、東京とその周辺で高級マンションを分譲する、創業者が支配する会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。土台の稼ぐ力は強い。だが報道では約1,000億円を南青山の一棟に投じ、純有利子負債は時価総額を上回った。回収の時期と値段が、見えにくくなっている。
稼ぐ力は業界で飛び抜けている。営業利益率は過去10年すべて2割を超え、直近は約3割だ。住宅分譲の同業は1割前後にとどまる。2027年3月期は営業利益159億円と、過去最高を見込む。
一方で、資本の効率は低い。自己資本は1,360億円あるのに、ROEは4%台が続いた。抱え込んでいたお金を、この春に一気に使った格好だ。南青山のビルは当面オフィスとして貸し、いずれ超高級タワーマンションにする構想とされる。
10年後の見立ては割れる。タワーが予定どおり売れれば、価値は今の2倍を超える。計画が遅れれば、利息だけが先に出ていく。創業者側が株式の約6割を持ち、物言う株主との対立も続くので、少数株主に利益が回る保証は薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは2つだ。10年後も稼いでいるか。経営者は預かったお金をうまく使うか。
前者の答えは、おおむね「はい」である。都心の高級マンションは、供給が細るほど値段が保たれやすい。高い利益率は、10年続いた実績もある。
後者の答えが、いまは割れる。南青山への集中は、うまくいけば大きい。外れれば、取り返しがつかない。1,000億円規模という額は、自己資本1,360億円の7割を超える。失敗しても耐えられる余裕、つまり安全域を削る使い方だ。
所有者の目で見ると、創業者が6割を握る会社の少数株主は、創業者の判断を共有するしかない。創業者に売る意思がなく、少数株主の提案も通らない。利益をどう配るかは、創業者次第になる。配当の実績は悪くないが、増配が約束されたわけではない。
筆者は、この会社を「良い事業に、集中投資という賭けが乗った」と見る。賭けの期待値は悪くない。ただ、払う値段に安全域があると言える水準ではない。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は4つある。
最大は不動産分譲で、売上の約7割、セグメント利益の大半を占める。「クレスト」ブランドで、都心や東京近郊の大型マンションを企画して売る。最近の主力は、鎌倉大船の215戸、五番街の325戸、東小金井のタワー、南砂の396戸といった大型案件だ。土地を仕入れ、建て、引き渡した時に売上と利益が立つ。引き渡しの時期で、年ごとの数字が大きく振れる。
2つ目は不動産賃貸だ。オフィスビルと賃貸マンションを持ち、売上は約30億円、利益は13億円ほど。景気に左右されにくい安定の層である。3つ目はホテル事業で、売上は約33億円、利益は5億円。利益率は低いが、毎年の稼ぎがある。4つ目はマンション管理などで、分譲した物件が積み上がるほど仕事も増える。
この春、事業の形が変わった。報道によれば、南青山の旧エイベックスビル(パソナスクエア)を1,000億円規模で買った。会社は金額を公表していない。ただ決算の投資支出は1,000億円を超え、有利子負債は1,700億円近くまで膨らんだ。会社の発表では、当面は賃貸オフィスとして使い、中長期でタワーマンション用地の選択肢も持つという。
優良さと弱いところ
優れた点は、高い利益率が長く続いていることだ。営業利益率は過去10年すべて2割を超え、3割台の年もある。高級でない分譲の同業が1割前後で苦労するのと比べると、土地の仕入れと商品企画の腕が違うと筆者は見る。その腕は、創業者の安川秀俊氏に強く結びついている。強みであり、同時に弱みでもある。
ただ、堀(他社がまねできない強み)と呼べるほどには固まっていない。土地の仕入れは同業との競り合いで、値段は市場が決める。利益率が高いのは、安く買えた土地が多かったからだと筆者は見る。土地代が上がった今、同じ利益率を保つのは難しくなる。
資本の効率は低い。ROEは過去10年の中央値で4.8%。利益は大きいのに、自己資本が厚すぎた。現金を抱えて身を守る創業者の気質が出たものだろう。ところが今回は逆に、1件に集中して借金を増やした。自己資本比率は60%から42%に落ちた。守りの会社が攻めに転じたので、これまでの安全さは当てにできない。
統治にも課題がある。創業者側が株式の約6割を持ち、少数株主の意見は通りにくい。物言う株主は、社長の関係会社との取引に利益相反の疑いがあるとして司法手続きに入ったと報じられた。会社は、物言う株主の提案に反対している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
首都圏の新築マンションは、供給が細り、値段だけが上がる市場になった。2025年の発売は2万1,962戸で、統計のある1973年以降で最少だった。平均価格は9,182万円と過去最高で、東京23区では1億3,613万円まで上がった。買い手の購買力が追いつかず、契約率は79.2%と前年から1.8ポイント下がっている。
この構図は、高く売れる商品を持つ会社には追い風で、安さで勝負する会社には逆風になる。ゴールドクレストは前者の側にいる。三菱地所レジデンス、野村不動産、三井不動産レジデンシャルなどの大手が都心の高級帯を押さえるなかで、準都心の大型物件と、都心のタワーを両方に持つのが同社の位置だ。
今後10年は、物価が年3%で上がり続ける世界を置く。土地と建築費はともに上がるので、値上げできるかが分かれ目になる。短期金利は2%、長期は3%まで上がる前提で、住宅ローンの負担は重くなる。実需の層は細るが、都心の高額帯は海外資金や富裕層の需要に支えられ、金利に鈍い。人口減は郊外から効いてくる。首都圏と都心は、ほぼ横ばいとみる。
もう1つの分かれ目は建築費だ。2021年以降の資材高と人手不足で、建築費は2〜4割上がった水準で定着した。築10年に満たないビルを壊してタワーを建てる南青山では、この重さがそのまま利益に響く。
資本政策と M&A
還元は、配当性向でおよそ5〜6割が実績だ。2027年3月期は純利益95億円の予想で、配当も大きく増える見通しである。自社株買いは目立たない。
資本政策の焦点は2つある。1つ目は借金の使い方だ。今期の投資で純有利子負債は1,100億円を超え、時価総額を上回った。回収は、南青山で何を作り、いつ売るかにかかる。
2つ目は少数株主との関係である。物言う株主のストラテジックキャピタル(株式の約16%)などが、2026年6月の株主総会に3つの提案を出した。配当の決定を株主総会の権限に戻すこと、期末配当を自己資本の8%(DOE)程度まで引き上げること、創業者側の株式を会社が買い取ることだ。会社は3つとも反対し、創業者側も売る意思はないと表明した。総会の結果は確認できていない。物言う株主は、第三者による買収も提案していると大量保有報告書に書く。
この会社は買われる側にもなりうる。ただ、創業者側の株式は自己株を除く株数の約6割にあたる。買収には創業者の同意が要り、売る意思がない以上、前提にはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
土台の儲けは本物だ。営業利益率は10年すべて2割を超え、2027年3月期は営業利益159億円と過去最高を見込む。最初の3か月だけで89億円を稼いだ。契約済みの残高も厚い。2025年9月末の契約残は209億円あった。
南青山は、買った値段が高く見えて、実は安い。このビルは2021年にエイベックスからカナダ系のファンドに渡り、5年で売りに出た。都心の一等地の希少さは、その値上がりが示している。超高級のタワーマンションは、東京23区の平均が1億3,613万円に達した市場で、値段を自分で決められる数少ない商品だ。成功すれば、数年で数百億円の利益を積める。
資本の使い方も変わった。使われなかった現金が、ようやく動き出した。物言う株主の圧力もあり、配当は今期から大きく増える。タワーが売れ始めれば、さらなる還元も視野に入る。10年後に利益が今の数倍になり、倍率が適正に戻れば、今の値段の2倍を超える価値が見える。
慎重な見方
利益の質に疑問がある。営業利益159億円の予想は、分譲の引き渡しが重なった年の数字だ。過去10年の売上は300億円前後で横ばいだった。この実績のほうが、実力に近い。
南青山は、買った時点では利益を生まない。ビルの利回りは借金の金利と同じくらいで、タワーに作り替えて売り切るまで、利息だけが出ていく。建築費は2〜4割上がった水準のままだ。築10年に満たないビルを壊す費用も重い。売値は首都圏平均の数倍という超高級帯が前提で、買える人の数は限られる。
借金は1,700億円近く。純有利子負債は時価総額を上回る。金利が3%台まで上がる世界で、返済の負担と、新築マンションの契約率が下がる市況が重なると、在庫は売れ残る。2008年のリーマン後には、中堅の分譲会社が相次いで破綻した。
統治も不安だ。創業者側が株式の約6割を持つ。物言う株主は、2025年の総会で少数株主の85%が社長の選任に反対したと主張する。利益の配分は創業者の裁量で、物件の判断を止める仕組みは弱い。
どちらに重みを置いたか
土台の収益力については、強気の見方が正しいと考える。しかし価値を決めるのは、1,000億円規模の南青山と、創業者支配の組み合わせだ。ここは慎重な見方の指摘のほうが重い。
確率は中立を最も厚く置いた。そのうえで、悲観側(やや悲観と悲観の合計36%)を、楽観側(同30%)より厚くした。タワーが成功した筋書きでは今の2倍を超えるが、遅れた筋書きでは利息が利益を食い、価値は持っている不動産の売却額で決まる。確率で重みを付けた価値は、今の時価総額を1割あまり下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,661 円1,549 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,699 円565 億円)。 今の値に割り戻すと 3,132 円1,041 億円、今との差 +9.4%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,730 円4,231 億円 | 3,912 円1,300 億円 | +481.5% | +19.2% | 1,331 円442 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,210 円2,396 億円 | 2,287 円760 億円 | +231.8% | +12.7% | 2,089 円694 億円 |
| 中立 | 34% | 4,040 円1,343 億円 | 1,685 円560 億円 | +100.0% | +7.2% | 1,946 円647 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,107 円700 億円 | 1,204 円400 億円 | +15.7% | +1.5% | 795 円264 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,473 円490 億円 | 181 円60 億円 | −42.2% | −5.3% | 198 円66 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,661 円1,549 億円 | 1,699 円565 億円 | +122.2% | +8.3% | 6,360 円2,114 億円 |
今の株価時価総額 2,862 円951 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 超高級タワーが完売し、還元も増える 利益 305 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 12,730 円4,231 億円
南青山のタワーが予定どおりに進む。2030年代前半に建築が終わり、2036年3月期までに220戸ほどを引き渡す。1戸は6億円を超え、買い手は海外資金と国内の富裕層で、売れ残りはほとんど出ない。この一年だけでタワーの営業利益は340億円に達する。
本業も強い。高級帯への集中で分譲の利益率は3割台を保ち、引き渡しは年330戸まで増える。物言う株主の圧力と完成後の現金の流入で、創業者側も大幅な増配に動く。10年間の還元は純利益の合計に迫る規模になり、自己資本を膨らませない形が定着する。
この筋書きでも、タワーの利益は一度きりだ。完成後の事業は元の姿に戻るので、利益の質は割り引いて見る。それでも価値は今の2倍を超える。
- 不動産分譲(マンション):数量 330(年間引渡戸数(戸))× 価格 1.00(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 329 億円・営業利益 109 億円。戸数+6%・単価+50%
- 不動産賃貸(既存のビル・賃貸マンション):数量 12,000(賃貸面積(坪))× 価格 0.00(1坪あたり年間賃料(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 18 億円。面積+7%・賃料+25%
- 南青山のオフィスビル(2026年3月取得):数量 0.0(保有棟数(棟))× 価格 44(1棟あたり年間賃料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。計画は建て替えに進み、ビルは残らない
- ホテル事業:数量 17.9(年間宿泊者数(万人泊))× 価格 2.80(1人泊あたり売上(億円/万人泊))→ 売上 50 億円・営業利益 9 億円。宿泊+10%・単価+40%
- マンション管理・その他:数量 33.0(管理受託戸数(千戸))× 価格 1.75(1千戸あたり年間売上(億円))→ 売上 58 億円・営業利益 10 億円。管理戸数+10%・単価+34%
- 南青山の超高級タワー(引き渡し):数量 220(年間引渡戸数(戸))× 価格 6.50(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 1,430 億円・営業利益 343 億円。引渡220戸・1戸6.5億円
倍率:事業の純利益 305 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.57 倍、時価総額 4,139 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:タワーの計画・価格・買い手・資金繰り・創業者の還元姿勢がすべて良い方に揃う必要があり、確率は低く置く。ただし用地は一等地で、買い手の層は海外資金を含めて厚い。
やや楽観 22% タワーが計画どおり売れ、本業も堅調 利益 191 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 7,210 円2,396 億円
南青山のタワーは大きな遅れなく進み、2036年3月期には160戸ほどを引き渡す。1戸は6億円台で、完売に近い。分譲は年305戸と横ばいを保ち、値段は物価を上回って上がる。賃貸とホテルは堅調で、管理の収益も積み上がる。
借金は完成が近づくほど減り、利息の負担は和らぐ。配当は純利益の6割台で続き、物言う株主への配慮から増配が重なる。創業者側が上場を続ける理由は薄れ、買収や非公開化の提案が通る余地も、この筋書きでは少し広がる。
利益は今の3倍強に増えるが、タワーに寄った山のある利益なので、倍率は控えめにとどまる。
- 不動産分譲(マンション):数量 305(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.93(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 284 億円・営業利益 85 億円。戸数-2%・単価+40%
- 不動産賃貸(既存のビル・賃貸マンション):数量 12,000(賃貸面積(坪))× 価格 0.00(1坪あたり年間賃料(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 17 億円。面積+7%・賃料+20%
- 南青山のオフィスビル(2026年3月取得):数量 0.0(保有棟数(棟))× 価格 44(1棟あたり年間賃料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。建て替えに進み、ビルは残らない
- ホテル事業:数量 17.1(年間宿泊者数(万人泊))× 価格 2.68(1人泊あたり売上(億円/万人泊))→ 売上 46 億円・営業利益 8 億円。宿泊+5%・単価+34%
- マンション管理・その他:数量 31.0(管理受託戸数(千戸))× 価格 1.75(1千戸あたり年間売上(億円))→ 売上 54 億円・営業利益 10 億円。管理戸数+3%・単価+34%
- 南青山の超高級タワー(引き渡し):数量 160(年間引渡戸数(戸))× 価格 6.20(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 992 億円・営業利益 208 億円。引渡160戸・1戸6.2億円
倍率:事業の純利益 191 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 11.98 倍、時価総額 2,293 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:土台の収益力は実績がある。タワーが大きな遅れなく進む姿は、一等地の希少さを考えれば十分ありうる。創業者の還元姿勢の不確かさを考えて、中立より薄く置く。
中立 34% タワーは動き出すが、利益は途中 利益 108 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 4,040 円1,343 億円
南青山は、オフィスとしての貸し出しを終えて建て替えに入り、2036年3月期に最初の引き渡しが始まる。引き渡しは100戸にとどまり、残りは翌年以降に回る。建築費の上昇と、売り出し時の慎重な価格設定が重なり、タワーの利益率は2割を切る。
本業は穏やかだ。首都圏の新築マンションの供給は細り続けるが、同社は物件の大型化と高級化で戸数を保つ。分譲は年290戸で、1戸の値段は物価並みに上がる。土地代が上がるぶん、利益率は3割を割る。
借金は完成まで膨らんだままで、利息が営業利益の4分の1ほどを食う。配当は純利益の5〜6割で、自己資本はゆっくり積み上がる。ROEは6%台にとどまり、資本コストに届かない。会社の価値は、本業の稼ぎと完成を待つ在庫を合わせて、今とほぼ同じ水準に落ち着く。
- 不動産分譲(マンション):数量 290(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.89(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 258 億円・営業利益 72 億円。戸数-6%・単価+34%
- 不動産賃貸(既存のビル・賃貸マンション):数量 11,600(賃貸面積(坪))× 価格 0.00(1坪あたり年間賃料(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 16 億円。面積+4%・賃料+20%
- 南青山のオフィスビル(2026年3月取得):数量 0.0(保有棟数(棟))× 価格 44(1棟あたり年間賃料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。建て替えに入り、ビルの賃料は止まる
- ホテル事業:数量 16.3(年間宿泊者数(万人泊))× 価格 2.68(1人泊あたり売上(億円/万人泊))→ 売上 44 億円・営業利益 7 億円。宿泊横ばい・単価+34%
- マンション管理・その他:数量 30.0(管理受託戸数(千戸))× 価格 1.75(1千戸あたり年間売上(億円))→ 売上 53 億円・営業利益 9 億円。管理戸数横ばい・単価+34%
- 南青山の超高級タワー(引き渡し):数量 100(年間引渡戸数(戸))× 価格 6.00(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 600 億円・営業利益 108 億円。最初の引渡100戸・1戸6.0億円
倍率:事業の純利益 108 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 1,236 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:土台の稼ぎは続くが、タワーは建築費と市況の影響を受けて遅れやすい。自己資本の効率が資本コストに届かない姿を、最も厚く置く。
やや悲観 24% タワー計画が止まり、利息だけが重い 利益 30 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 2,107 円700 億円
南青山の建て替えは、建築費の上昇と需要の鈍りで先送りになる。ビルは賃貸のまま残り、家賃の利回りは借金の金利を下回る。タワーの引き渡しは、10年のうちに1戸もない。
本業も厳しい。住宅ローン金利の上昇で、首都圏の新築マンションの契約率が下がる。分譲は年240戸まで減り、土地代の上昇で利益率は2割前後に落ちる。売れ残りを値引きする年が出て、在庫の評価損も立つ。
借金は1,500億円ほどのまま残り、利息が営業利益の半分以上を使う。配当は削られ、創業者側と少数株主の対立も長引く。利益は小さく、価値を支えるのは稼ぎではなく、持っている不動産だ。
- 不動産分譲(マンション):数量 240(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.83(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 199 億円・営業利益 44 億円。戸数-23%・単価+25%
- 不動産賃貸(既存のビル・賃貸マンション):数量 11,000(賃貸面積(坪))× 価格 0.00(1坪あたり年間賃料(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 13 億円。面積-2%・賃料+10%
- 南青山のオフィスビル(2026年3月取得):数量 1.0(保有棟数(棟))× 価格 38(1棟あたり年間賃料(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 27 億円。建て替えが止まり、賃貸オフィスのまま
- ホテル事業:数量 15.5(年間宿泊者数(万人泊))× 価格 2.50(1人泊あたり売上(億円/万人泊))→ 売上 39 億円・営業利益 5 億円。宿泊-5%・単価+25%
- マンション管理・その他:数量 29.0(管理受託戸数(千戸))× 価格 1.60(1千戸あたり年間売上(億円))→ 売上 46 億円・営業利益 8 億円。管理戸数-3%・単価+22%
- 南青山の超高級タワー(引き渡し):数量 0.0(年間引渡戸数(戸))× 価格 6.00(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。引き渡しは無い
倍率:利益は小さく、ROEも資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)では約320億円にしかならない。株主に残るのは、持っている不動産を値下げして売り、借入を返したあとの分。その手取りを今の自己資本に対する0.515倍として置いた。
確率:建築費の高止まりと、築10年未満のビルを壊す費用の重さを考えれば、先送りは現実的な筋書き。住宅ローン金利の上昇も重なる。
悲観 12% 金利と市況の急変で、物件を売って借金を返す 利益 −12 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,473 円490 億円
金利が想定を超えて上がり、新築マンションの市況がリーマン後のように冷え込む。売れ行きが止まって分譲は年160戸まで落ち、値引きしても利益は残らない。南青山のタワーは凍結され、買った値段を大きく下回る価格で売るか、借入の担保として差し出す形になる。
借金の返済を優先するため、配当は不動産の売却代金から最低限だけ払う。自己資本の大部分が評価損で消え、創業者側が握る支配権の使い方にも、少数株主から厳しい目が向く。
この筋書きでも会社は事業としては生き残るが、優良さは失われる。価値は、売れる資産から借金を引いた残りで決まる。
- 不動産分譲(マンション):数量 160(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.70(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 112 億円・営業利益 7 億円。戸数-48%・単価+5%
- 不動産賃貸(既存のビル・賃貸マンション):数量 10,500(賃貸面積(坪))× 価格 0.00(1坪あたり年間賃料(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 10 億円。面積-6%・賃料横ばい
- 南青山のオフィスビル(2026年3月取得):数量 0.0(保有棟数(棟))× 価格 35(1棟あたり年間賃料(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。ビルは売却して借入を返す
- ホテル事業:数量 14.0(年間宿泊者数(万人泊))× 価格 2.00(1人泊あたり売上(億円/万人泊))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。宿泊-14%・単価横ばい
- マンション管理・その他:数量 27.0(管理受託戸数(千戸))× 価格 1.50(1千戸あたり年間売上(億円))→ 売上 41 億円・営業利益 5 億円。管理戸数-10%・単価+15%
- 南青山の超高級タワー(引き渡し):数量 0.0(年間引渡戸数(戸))× 価格 6.00(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。タワーは凍結
倍率:赤字で稼ぐ力は0とみる(EV÷営業利益は、営業利益がほぼ無く意味を持たない)。株主に残るのは、不動産と在庫を値下げして売り、借入を返したあとの分。その手取りを今の自己資本に対する0.36倍として置いた。
確率:借金が時価総額を上回り、1棟に自己資本の7割超を投じた構造は、市況の急変に弱い。リーマン後に中堅の分譲会社が相次いで破綻した前例を踏まえ、やや厚めに置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産分譲(マンション)
「クレスト」ブランドの大型マンションを企画・販売する中核事業。引き渡した時に売上と利益が立つ。
| 数量年間引渡戸数(戸) | 価格1戸あたり平均価格(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 310 | 0.66 | 206 | 64 |
| 10 年後 中立 | 290 | 0.89 | 258 | 72 |
取り方:セグメント売上206億円(2026年3月期)を、25年9月中間期の実績(165戸・売上112億円=1戸約6,800万円)から推定した1戸単価0.664億円で割り、年約310戸とした。引渡戸数の通期開示は確認できていない。セグメント利益64億円(利益率31%)。単価は中立で物価並み(10年1.34倍)。
不動産賃貸(既存のビル・賃貸マンション)
オフィスビルと賃貸マンションを持ち、家賃を受け取る安定した層。
| 数量賃貸面積(坪) | 価格1坪あたり年間賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11,200 | 0.00 | 27 | 13 |
| 10 年後 中立 | 11,600 | 0.00 | 33 | 16 |
取り方:外部売上27億円、セグメント利益13億円(2026年3月期)。賃貸面積は開示を確認できず、東京のオフィス・住宅の賃料の目安(坪あたり年24万円)で割った推定で約1.1万坪とした。賃料は中立で10年1.2倍(業種ノートのオフィス賃料は年1%前後、住宅賃料は物価に近く、混ぜて物価より低め)。
南青山のオフィスビル(2026年3月取得)
報道で約1,000億円規模とされる旧エイベックスビル(パソナスクエア)。当面は賃貸オフィス、中長期でタワーマンション用地の選択肢を持つ。
| 数量保有棟数(棟) | 価格1棟あたり年間賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 35 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 44 | 0 | 0 |
取り方:取得は2026年3月末で、今期の収益はほぼ無い。年間賃料は、取得額を報道の約1,000億円とし、都心の一等地の賃貸の期待利回り3〜4%(業種ノート)の上側で割った推定で35億円。会社は取得額を公表していない。
ホテル事業
同社が運営するホテルの宿泊・飲食の収益。利益率は低いが毎年の稼ぎがある。
| 数量年間宿泊者数(万人泊) | 価格1人泊あたり売上(億円/万人泊) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.3 | 2.00 | 33 | 5 |
| 10 年後 中立 | 16.3 | 2.68 | 44 | 7 |
取り方:セグメント売上33億円・利益5億円(2026年3月期)。宿泊者数は開示を確認できず、宿泊と飲食を合わせた1人泊あたり約2万円(推定)で割って約16万人泊とした。価格は中立で物価並み(10年1.34倍)。
マンション管理・その他
分譲した物件の管理受託などの手数料収入。分譲が積み上がるほど管理も増える。
| 数量管理受託戸数(千戸) | 価格1千戸あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 1.31 | 39 | 7 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 1.75 | 53 | 9 |
取り方:全社売上304億円から分譲・賃貸・ホテルを引いた約39億円。管理戸数は開示を確認できず、1戸あたり年約13万円(推定)で割って約3万戸とした。利益6.7億円は全社の営業利益89億円からほかのセグメント利益を引いた残り(本社費を含む)。
南青山の超高級タワー(引き渡し)
南青山の用地に建てる超高級タワーマンションの引き渡し。報道による構想で、規模・時期は未公表。
| 数量年間引渡戸数(戸) | 価格1戸あたり平均価格(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 4.50 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 6.00 | 600 | 108 |
取り方:今は引き渡しが無い。今の値段で売るなら1戸4.5億円とみた(首都圏の新築平均0.92億円、東京23区平均1.36億円の3〜5倍にあたる超高級帯の推定)。10年後は物価並みに上げて6億円前後。
リスクと懸念
南青山への一点集中(回収の時期と値段)
1,000億円規模の投資は、自己資本の7割を超える。完成まで数年、売り切るまでさらに数年かかる。建築費・売り出し時の相場・買い手の数のどれが外れても、計画は崩れる。築10年に満たないビルを壊す費用が重いとの指摘もある。規模と時期は会社から出ていない。
借金と金利
純有利子負債は1,100億円を超え、時価総額の約1.1倍。借り換えのたびに金利は3.5%前後へ上がる。タワーの建築費も借入で賄うので、利息が先に出て、売上は遅れて入る。金利がさらに上がれば、完成前に利益が食われる。
創業者支配と少数株主との対立
創業者側が株式の約6割を持ち、少数株主の提案は通らない。物言う株主は、社長の関係会社との取引に利益相反の疑いがあると主張し、司法手続きに入ったと報じられた。利益の配分や投資判断を、少数株主の側から止める手段は乏しい。
利益の振れ(引き渡し基準)
売上は引き渡した時に立つので、期ごとの数字が大きく振れる。過去10年の売上は300億円前後で横ばいだったのに、2027年3月期は420億円を見込む。今の高い利益が、そのまま10年続くとは限らない。
住宅ローン金利と需要
短期金利2%・長期3%への上昇で、住宅ローンの負担が増す。首都圏の新築マンションは、2025年に統計のある1973年以降で最少の供給となり、契約率も下がった。都心の高額帯は鈍いが、準都心の大型物件は金利の影響を受けやすい。
建築費と用地の仕入れ競争
建築費は2021年以降に2〜4割上がり、その水準で定着した。さらに年2〜3%で上がれば、利益率は薄くなる。用地は同業と競り合いで、高く買えば将来の利益率を食う。今の約3割の利益率が10年保てるかが焦点になる。
ガバナンスと買収の不確実性
物言う株主は第三者による買収も提案していると報告書に書くが、創業者側に売る意思はないと会社は説明する。買収の可能性は低い。一方で、利益相反をめぐる司法手続きの結果次第では、経営の信頼が揺らぐ。
今後の分かれ目
- 南青山のタワーの規模・着工時期・価格帯が発表され、前売りが好調
- 引き渡しの時期と利益が見え、楽観側の確率を引き上げる。借金の回収が現実味を持つ。
- 建て替えの計画が再び先送りされ、ビルを賃貸のまま持ち続ける
- 家賃の利回りは借金の金利を下回り、利息だけが出る。やや悲観の確率を引き上げる。
- 創業者側が、自己資本の数%を超える配当や自社株買いの方針を明示する
- 少数株主への配分が増え、自己資本が膨らまない。10年の還元の合計が上がり、価値を押し上げる。
- 10年国債が3%を大きく超えて上昇する
- 住宅ローンの負担と借り換えの金利が上がり、契約率と利益が同時に落ちる。悲観側の確率を引き上げる。
- 第三者による買収・非公開化の提案が創業者側の同意のもとで出る
- 少数株主には上振れの余地がある。ただし条件次第で、価格は筋書きの範囲に収まる。
- 2027年3月期の営業利益が予想の159億円を達成する
- 土台の収益力が10年の水準に近いことの裏付けになる。ただしタワーと借金の問題は解消しない。
見ておくもの
- 分譲の引渡戸数・契約残(決算短信のセグメント表)
- 純有利子負債と借入の金利(決算短信・有価証券報告書)
- 南青山の計画(規模・着工時期・価格帯。会社の適時開示)
- 首都圏の新築マンションの契約率・平均価格(不動産経済研究所の月次)
- 株主総会の議案と議決結果、大量保有報告書の保有目的
- 建築費・用地価格の動き(建設物価・地価公示)
倍率と資本コストの決め方
今の株価や倍率から筋書きを作っていない。セグメントごとに戸数・面積・宿泊者数などの数量(実質)と、物価3%を含む名目の価格を積み、営業利益から利払いを引いた。利払いは、現在の純有利子負債に借り換えの3.5%を当てた推定(10年で約28億円の悪化)に、南青山の建築費を借入で賄う分を足して置いた。倍率は資本コスト8.75%と、弱い堀(残る割合1/3)の正当化PERから出し、利益がタワーの引き渡しに偏る分だけ上限から割り引いた。悲観側は、持っている不動産を値下げして売った手取りから出し、過去のPBRの底は使っていない。含み益は有価証券報告書の注記を確認できず、数えていない。今の時価総額は最後に比べただけで、EV÷営業利益でも確かめた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.7→13.57 倍・やや楽観 PER 8.9→11.98 倍・中立 PER 9.2→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality+1.75%を足した9.25%。創業者支配・物言う株主との対立・南青山への集中は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.75%。