結論
サンネクスタグループは、企業の社宅・寮の管理を丸ごと代行する会社だ。社宅の受託は32万件を超え、分譲マンションの管理も2万5千戸ほど持つ。売上は89億円、営業利益は8億円。現金は76億円と、時価総額102億円の4分の3にあたる。
筆者の結論は「やや割高」だ。ただし理由は事業の弱さではない。社宅の代行は、人の手間を売る仕事である。AIエージェントがこの手間を安くすれば、件数が同じでも単価に下げ圧力がかかる。利益の半分以上をこの事業が稼ぐので、10年先を置く手は慎重にならざるを得ない。
一方で、現金の厚みは本物だ。累進配当を掲げ、配当は利益の7割近い。光通信が3割を持つ株主構成は、買収の観点でも見ておきたい。
会社は2028年6月期に営業利益10億円を掲げる。次の期の予想は営業利益6億円と、逆に落ちる。投資を先行させる局面で、成果が出るのは先だ。筆者は、中立の10年で営業利益は今と同じ9億円前後と見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くない事業と、厚い現金」の組み合わせだ。社宅の代行は毎年積み上がる継続型で、資本をほとんど要さない。設備投資は年1億円ほどで、稼いだ利益の多くが株主のものになる。
一方で、10年先を確信を持って言い切れない。人の手間を売る仕事は、AIエージェントが最も得意とする分野の近くにある。単価が下がる速度は読めない。読めない事業には高い値段を付けない、というのが守りの基本になる。
堀は一定ある。顧客企業の内部に入り込んだ事務は、乗り換えの手間が大きい。ただ、堀が守るのは「今の単価」であり、AIで作業が安くなる未来の単価までは守らない。
資本配分は誠実で、累進配当と自社株買いを実際に行う。時価総額の4分の3を現金が占めるので、事業の価値が多少ぶれても、安全域は厚い。ただし預り金の分を引くと、見かけほどは厚くない。筆者は、厚い現金に引かれすぎないよう、事業の稼ぎを先に置いて値を付けた。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は社宅マネジメントだ。売上46億円、営業利益12億円で、セグメント利益の大半を占める。企業の人事・総務部門に代わって、借上社宅の契約、家賃の支払い、入居と退去の手続き、原状回復の費用チェックを請け負う。受託件数は32万件と、前の期より2%増えた。
2つめがマンションマネジメントで、売上41億円、営業利益4億円。クラシテなど子会社が709棟・約2万5千戸を管理する。会社は戸数を追わず、委託費の値上げと業務の見直しで利益率を上げる方針だ。利益は前期比2割増えた。
3つめがインキュベーションで、売上2億円、営業損失0.3億円。見守りセキュリティ、保険代理店、マンション管理のDX支援を試している。まだ利益を出す段階にない。
連結の従業員は692人、臨時を入れると1,000人を超え、利益の源は人の手間だ。ほかに、全社の費用が約8億円あり、セグメント利益の合計16億円から連結の営業利益8億円へ半分近く削る。2026年10月に人材紹介・派遣のキミノミライを買収し、不動産管理会社向けの人手不足支援を広げる。社宅管理代行事業の承継(タスリンク設立)も済ませた。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、顧客企業の人事・総務に深く入り込んだ継続契約だ。社宅の受託は毎年積み上がるストック型で、件数が32万件に届いた。家賃の支払い、契約更新、退去時の精算という記録を一手に持つため、乗り換えには移行の手間がかかる。売上の4分の3近くが継続型とみられ、景気で急に崩れにくい。
弱みは、稼ぎの源が人の手間であることだ。連結の従業員の約半数が社宅サービスの子会社にいる。AIエージェントが契約書の確認や家賃の突合、問い合わせ対応を肩代わりすれば、顧客は代行料の引き下げを求めるだろう。自社もAIで原価を下げられるが、値下げ圧力と引き換えになる。
マンション管理は、現場の管理員や清掃を伴う分、AIの影響は小さい。ただ利益率は10%で、薄く、値上げが通るかが肝になる。
財務は盤石だ。自己資本比率は71%、現金76億円、借入はほぼ無い。ROEは7.7%と、資本コストにはわずかに届かない。中期計画ではROE10%を掲げるが、達成の実績はまだない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
企業の人事・総務のアウトソーシングは、人手不足とテレワークの広がりで需要が伸びている。社宅も、借上社宅の事務を外に出す動きが続く。ただし、社宅制度そのものは縮小気味だ。住宅手当に切り替える企業が増え、借上社宅の数は伸びにくい。件数の伸びは、新規の大手企業の獲得と既存先の人員増で支える形になる。
競合は、日本社宅サービスの同業やカーブアウトした社宅管理会社、不動産仲介大手の社内事業などだ。価格競争は目立たないが、AIの登場で参入障壁は下がる。契約書の読み取りや家賃の突合は、AIエージェントが得意な分野である。大手の不動産仲介や人材会社が内製に動けば、価格競争が一気に強まる可能性もある。
マンション管理は、築年数が進んだストックが増えて修繕の需要が高まる一方、新築の供給は微減だ。管理会社は人手不足と委託費の値上げ交渉に追われる。管理戸数は業界全体で横ばいで、買収と人材の確保が競争の中心になる。
金利が上がると、マンションの管理組合が持つ修繕積立金の運用や、顧客企業の社宅の家賃水準にも影響が出る。この会社自身は借入が少なく、受取利息が増える側にいる。2024年問題以降の人手不足で、管理員や事務の確保にかかる費用は年々増える。委託費をどこまで転嫁できるかが、業界全体の利益率を左右する。
資本政策と M&A
還元は、DOE(純資産配当率)5%を目安にした累進配当だ。2011年6月期以降、増配を続けている。年間の配当総額は4億円ほどで、純利益の7割近い。自己株式の取得は、2024年12月から2025年6月に約1億円を実施した。
現金76億円は、単純な余剰ではない。社宅の家賃は顧客から預かって払う流れで、預り金の残高が年末に膨らむ。実際、前期末の純現金は46億円まで減っていた。自由に使える額は40億円ほどとみている。
M&Aは小粒だ。2023年に全日総管理を取得して売却し、2026年10月にキミノミライを子会社にする。対価は開示されていない。投資有価証券は小さく、含み益を当てにする規模ではない。
光通信が議決権の約3割を持つ。親会社ではないが、筆頭の株主だ。TOBの可能性は否定できないものの、価格は不明で、見込みには入れていない。10年の還元は、中立でDOEの水準に沿って45億円を置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
社宅の受託件数は32万件で、毎年増えている。顧客は大手企業が中心で、一度入ると外れにくい。2028年6月期に営業利益10億円、ROE10%という計画を掲げ、人材とシステムに先行投資している。キミノミライの買収で、不動産管理会社向けの人手不足支援という新しい売り物も加わる。
AIは脅威ではなく武器になる。自社でAIを使えば、契約書の確認や問い合わせ対応の原価を下げられる。利益率は今の26%からさらに上がる余地がある。マンション管理は値上げの余地が大きく、利益率を10%から13%へ上げられる。
現金は76億円と時価総額の4分の3で、借入は無い。累進配当とDOE5%という方針は、株主に利益を返し続けると約束しているに等しい。光通信という強い株主がいることは、資本効率の改善を後押しする。
会社が自己株式の取得も実際に行った事実は重い。価値のない会社の株は買わない。さらに、社宅管理は個人情報とマイナンバーを扱い、法令や税制の知識も要る。この種の事務は、AIが単純に置き換えにくい責任と信用の領域でもある。顧客の人事部門が、安価な新興勢にいきなり切り替えるとは考えにくい。
慎重な見方
社宅管理は、人の手間を売る仕事だ。AIエージェントが契約・家賃・退去精算を処理すれば、顧客は代行料の引き下げを求める。社宅制度そのものも、住宅手当への切り替えで縮んでいる。受託件数が伸びても、単価が下がれば売上は増えない。
会社が掲げる2028年6月期の営業利益10億円に対し、次の期の予想は6億円と大きく落ちる。投資の成果が出る保証はなく、計画の達成実績もない。マンション管理は薄利で、人件費が上がれば簡単に利益が消える。
現金は76億円あるが、預り金の分が混ざる。前期末は46億円に減っていた。自由に使える額は半分ほどにすぎない。ROEは7.7%と、資本コストに届いていない。
光通信が3割を持つ株主構成では、少数株主の価値が適切に反映される保証はない。買収されるにしても、価格は現金を考慮した水準にとどまるだろう。さらに、社宅制度に頼る大手企業の中には、住宅手当への切り替えや、自社でのシステム化に動くところが出てきている。受託件数の伸びは2%程度と鈍く、新規獲得の営業コストも上がり続けている。件数の伸びだけで、10年先の利益成長を支えるのは難しい。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと現金の厚みでは強気の見方に分がある。ただし、人の手間を売る事業という点で、AIの影響は慎重な見方のほうが重い。10年の中立は、営業利益が今とほぼ同じ9億円で、倍率は資本コストの逆数に近い水準にした。確率はやや悲観と悲観に35%を置き、AIに晒された事業としての重みを反映した。現金の厚みは悲観の床として効くが、上振れの理由にはしていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,459 円136 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 444 円41 億円)。 今の値に割り戻すと 1,079 円101 億円、今との差 −0.8%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 6.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,136 円293 億円 | 556 円52 億円 | +239.4% | +13.0% | 258 円24 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,308 円216 億円 | 513 円48 億円 | +159.3% | +10.0% | 508 円47 億円 |
| 中立 | 40% | 1,633 円153 億円 | 481 円45 億円 | +94.4% | +6.9% | 846 円79 億円 |
| やや悲観 | 25% | 555 円52 億円 | 385 円36 億円 | −13.6% | −1.5% | 235 円22 億円 |
| 悲観 | 10% | 321 円30 億円 | 235 円22 億円 | −48.9% | −6.5% | 56 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,459 円136 億円 | 444 円41 億円 | +74.9% | +5.7% | 1,903 円178 億円 |
今の株価時価総額 1,088 円102 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 7% AIを武器に原価を下げ、BPOを広げる 利益 14 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 3,136 円293 億円
自社でAIを使い、契約確認や問い合わせ対応の原価を大きく下げる。単価は物価並みの伸びを保ち、受託件数も新規の大手獲得で5%増える。社宅の利益率は30%まで上がる。マンション管理は委託費の値上げが通り、利益率が14%に届く。インキュベーションのDX支援は外販が3倍に増え、黒字になる。買収したキミノミライも不動産管理会社向けの支援で貢献する。会社の中計を超える水準で、営業利益は18億円に達する。配当はDOEに沿って増え、10年で52億円。それでもROEは12%前後で、資本コストを大きく上回るのは限られた期間にとどまる。この筋書きが成り立つには、AIの効果が単価を下げずに原価だけを下げる形で出ることが条件になる。
- 社宅マネジメント:数量 336(年間の受託件数(千件))× 価格 0.19(1千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 19 億円。件数1.05倍、営業利益率30%
- マンションマネジメント:数量 26.1(管理戸数(千戸))× 価格 2.25(1千戸あたり売上(億円・名目。管理委託費とリフォーム等を含む))→ 売上 59 億円・営業利益 8 億円。戸数1.05倍、営業利益率14%
- インキュベーション(見守り・保険代理店・DX支援):数量 21.0(契約・利用先の数(千件換算・推定))× 価格 0.36(1千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。3倍、営業利益率10%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.7% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.7%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 18.19 倍、時価総額 278 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIで原価を下げつつ、件数を伸ばし、人事総務のBPOも広げる連続成功が要る。計画の達成実績が無く、AIの値下げ圧力もあるため低く置いた。
やや楽観 18% 件数は微減、単価と利益率で支える 利益 10 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 2,308 円216 億円
社宅の件数は5%減るが、付加サービスで単価は物価の9割ほど伸び、利益率は28.5%を保つ。マンション管理は値上げが通り、利益率が13%に上がる。インキュベーションは2倍に育ち、損益はほぼ均衡する。全社の営業利益は13億円で、中計の10億円を超える。配当はDOE5%を維持して年4.8億円前後、10年で48億円。ROEは9%台で、資本コストをようやく超える。AIが原価を下げる効果と、値下げ圧力が打ち消し合う形で、会社が掲げる計画に近い水準へ届く。ただし達成には人材とシステムへの投資が実を結ぶことが前提になる。
- 社宅マネジメント:数量 304(年間の受託件数(千件))× 価格 0.18(1千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 15 億円。件数0.95倍、営業利益率28.5%
- マンションマネジメント:数量 24.9(管理戸数(千戸))× 価格 2.22(1千戸あたり売上(億円・名目。管理委託費とリフォーム等を含む))→ 売上 55 億円・営業利益 7 億円。戸数1.0倍、営業利益率13%
- インキュベーション(見守り・保険代理店・DX支援):数量 14.0(契約・利用先の数(千件換算・推定))× 価格 0.36(1千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。2倍、営業利益率5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.6% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 17.73 倍、時価総額 204 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標に近い形で、AIの影響が値下げに出ず、マンション管理の値上げが通る筋書き。実績が乏しく、やや低めに置いた。
中立 40% 件数は微減、AIが単価を抑えて利益は横ばい 利益 7 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 1,633 円153 億円
社宅の受託件数は、住宅手当への切り替えで15%減る。AIが事務を安くするため、単価は物価の伸びに届かず、10年で1.15倍にとどまる。売上は今とほぼ同じで、利益率は原価の自動化で27%を保つ。マンション管理は戸数が横ばいで、値上げが通って利益率は12%まで上がる。インキュベーションはほぼ均衡する。全社費用は賃金の上昇で約9.5億円に増え、営業利益は9億円、今と同じ水準にとどまる。受取利息が増えて純利益は7.4億円。配当は年4〜5億円で、10年45億円。この筋書きは特別な好材料を要さず、今の事業をほぼ維持した形になる。現金は配当と投資に使われ、積み上がる速度は鈍る。
- 社宅マネジメント:数量 272(年間の受託件数(千件))× 価格 0.17(1千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 12 億円。件数0.85倍、AIで単価は1.15倍止まり、営業利益率27%
- マンションマネジメント:数量 24.1(管理戸数(千戸))× 価格 2.19(1千戸あたり売上(億円・名目。管理委託費とリフォーム等を含む))→ 売上 53 億円・営業利益 6 億円。戸数0.97倍、営業利益率12%
- インキュベーション(見守り・保険代理店・DX支援):数量 10.5(契約・利用先の数(千件換算・推定))× 価格 0.36(1千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。1.5倍、営業利益率0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 17.04 倍、時価総額 145 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画は届かないが崩れもしない筋書き。AIによる事務の自動化は、件数を減らさず単価を抑える形で効く。過去12年の営業利益が8億〜10億円で横ばいだった実績とも合う。
やや悲観 25% AIで代行料が下がり、件数も縮む 利益 3 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 555 円52 億円
AIエージェントが契約・家賃・退去精算を処理し、顧客は代行料を毎期見直す。社宅の件数は25%減り、単価は物価に届かず10年でほぼ横ばい。利益率は22%に下がる。マンション管理は値上げが通りきらず、利益率は10%。インキュベーションは赤字が続く。営業利益は3.4億円まで落ちる。現金は預り金の増減と投資で食われ、余った現金は3割減る。配当はDOEを下げて10年で36億円。それでも事業は残り、マンション管理の安定が下支えする。インキュベーションの赤字は続き、新規事業の整理も視野に入る。買収したキミノミライも期待した相乗効果を出せず、のれんの償却が重荷になる。人件費の上昇は止まらず、全社費用の圧縮にも限りがある。
- 社宅マネジメント:数量 240(年間の受託件数(千件))× 価格 0.14(1千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 8 億円。件数0.75倍、単価横ばい、営業利益率22%
- マンションマネジメント:数量 23.6(管理戸数(千戸))× 価格 2.12(1千戸あたり売上(億円・名目。管理委託費とリフォーム等を含む))→ 売上 50 億円・営業利益 5 億円。戸数0.95倍、営業利益率10%
- インキュベーション(見守り・保険代理店・DX支援):数量 7.0(契約・利用先の数(千件換算・推定))× 価格 0.32(1千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。横ばい、赤字
倍率:事業のROEは約5%でk 6.75%以下なので、正当化PERの上限は1÷k=12.5倍。稼ぎが細り、堀の持ちを低く見て、上限の約6.8割の8.5倍に置いた。余った現金は3割減の30億円に戻り方0.75を掛けて足した。
確率:社宅の事務はAIが最も得意な分野に近い。顧客の値下げ要求と制度の縮小が同時に来る筋書きで、AIに晒された事業として厚めに置いた。
悲観 10% AIに代行を奪われ、規模が縮む 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 321 円30 億円
AIによって社宅事務が自動化され、件数は45%減り、単価も15%下がる。社宅の利益率は12%まで落ちる。マンション管理も人件費に押されて利益率が8%。インキュベーションは半分に縮み、赤字が続く。全社費用を減らしても営業利益は赤字に沈む。配当は大きく削る。事業の稼ぐ力は細り、株主の価値は預り金を除いた現金が下支えする水準になる。この筋書きでは、光通信など大株主による整理の動きも現実味を帯びる。マンション管理だけは現場が残るため、事業として生き残るが、利益の源泉は細る。人材の流出も重なり、新規獲得の営業力が落ちていく。
- 社宅マネジメント:数量 176(年間の受託件数(千件))× 価格 0.12(1千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。件数0.55倍、単価0.85倍、営業利益率12%
- マンションマネジメント:数量 22.4(管理戸数(千戸))× 価格 1.99(1千戸あたり売上(億円・名目。管理委託費とリフォーム等を含む))→ 売上 45 億円・営業利益 4 億円。戸数0.9倍、営業利益率8%
- インキュベーション(見守り・保険代理店・DX支援):数量 3.5(契約・利用先の数(千件換算・推定))× 価格 0.27(1千件あたり売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。半分、赤字
倍率:赤字の年で、今の自己資本80億円に約0.38倍。稼ぐ力ではなく、預り金を除いた現金の税後が床になる。市場の値付けからは置いていない。
確率:AIエージェントが社宅事務の大半を自動化し、顧客が内製や安価な競合に移る。構造的に負ける筋書きで、一定の確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
社宅マネジメント
企業の借上社宅・寮の契約、家賃の支払い、入退去の手続き、原状回復費の確認までを代行する。受託件数に応じて売上が積み上がるストック型。
| 数量年間の受託件数(千件) | 価格1千件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 320 | 0.14 | 46 | 12 |
| 10 年後 中立 | 272 | 0.17 | 45 | 12 |
取り方:2026/06期の受託件数320,048件、セグメント売上46.3億円(有報)。1件あたり売上は約1.4万円。受託件数は実質の数量、単価は名目。
マンションマネジメント
クラシテなどが分譲マンションの管理組合から管理業務を受託する。管理費の収受、清掃・設備管理の手配、修繕の提案まで。
| 数量管理戸数(千戸) | 価格1千戸あたり売上(億円・名目。管理委託費とリフォーム等を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 24.9 | 1.63 | 41 | 4 |
| 10 年後 中立 | 24.1 | 2.19 | 53 | 6 |
取り方:管理戸数24,876戸(709棟)、セグメント売上40.6億円(有報)。1戸あたり売上は年約16万円。戸数は実質、単価は名目。
インキュベーション(見守り・保険代理店・DX支援)
見守りセキュリティ、保険代理店、マンション管理DX支援「osumait」など新規事業。赤字が続く育成段階。
| 数量契約・利用先の数(千件換算・推定) | 価格1千件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 7.0 | 0.27 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 10.5 | 0.36 | 4 | 0 |
取り方:セグメント売上1.9億円、営業損失0.3億円。契約数は開示が無く、売上から推定した換算件数。
リスクと懸念
AIエージェントによる代替
社宅の契約確認、家賃の突合、問い合わせ対応は、AIが得意とする事務だ。顧客が代行料の引き下げを求め、競合の参入障壁も下がる。件数は伸びても、売上が伸びない可能性がある。
社宅制度の縮小
企業が借上社宅をやめて住宅手当に切り替える動きがある。受託件数は新規獲得で支えているが、制度の縮小が速まれば、ストック型の売上が細る。
投資の成果が出ない
次期予想は営業利益6億円と減益だ。人材・システム・新事業への先行投資が、2028年6月期の10億円につながる保証はない。インキュベーションは赤字が続く。
買収の失敗
キミノミライなど、小粒でも買収は続く。人材紹介・派遣は景気の影響を受けやすく、価額が開示されていないため、割高だったかどうかを検証できない。
現金の中身
現金76億円には、顧客から預かる家賃などが含まれる。前期末は46億円に減っていた。自由に使える額を多く見積もりすぎると、安全域を誤る。
株主構成と情報管理
光通信が約3割を持つ。大株主の意向で資本政策が決まる面がある。個人情報とマイナンバーの管理の不備は、信用に直結する。
人件費の上昇
事業の中心は人で、人手不足で賃金が上がる。マンション管理は委託費の値上げが通らなければ、薄い利益が消える。
今後の分かれ目
- 社宅の受託件数の伸びが年2%を下回って鈍る
- 社宅制度の縮小が速まっている合図。やや悲観の確率を上げる。
- 次の期の営業利益が6億円を上回り、2028年6月期の10億円が現実味を帯びる
- 計画が実績を伴う証拠。中立の上側、やや楽観に寄せる。
- 大手顧客が代行料の引き下げを求め、1件あたり売上が減る
- AIによる単価下落の兆し。社宅の単価の置き方を物価未満へ見直す。
- 光通信が追加で株を買い増す、またはTOBに動く
- 価格次第。現金の厚みを背景にした価格かどうかを確かめる。見込みには入れていない。
- 預り金の残高が開示され、自由な現金が想定より少ない
- 余った現金の額を引き下げる。安全域は薄くなる。
- インキュベーションが黒字化し、DX支援の外販が増える
- AIを売り物にできている証拠。新しい売上として評価し直す。
見ておくもの
- 社宅の受託件数と1件あたり売上
- 営業利益(次の期の予想6億円と2028年6月期の目標10億円)
- マンション管理の利益率と委託費の改定
- 預り金を含む現金残高と配当
- 光通信の持株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(資本コスト6.75%、事業のROEから求めた正当化PER)から置き、中立は上限の約8割。今の株価や過去のPERには寄せていない。現金76億円のうち、前期末に純現金が46億円まで減っていた事実から、預り金などの運転上の分を除いた40億円だけを余った現金とし、戻り方は0.75、時価総額には(純利益−現金×1.4%)×PER+現金×戻り方で足した。AIによる代替は数量0.85倍・単価1.15倍・寿命+0.75%・確率で重ね引きしていない。数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→18.19 倍・やや楽観 PER 11.8→17.73 倍・中立 PER 11→17.04 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。