結論
ディア・ライフは、東京 23 区の都心で、賃貸マンションの開発用地や収益不動産を仕入れ、価値を上げて売る不動産会社だ。社長の阿部幸広氏の資産管理会社が約 3 分の 1 を持つ。2025 年 9 月期の売上は 785 億円(前期比 +67.5%)、営業利益 77 億円(利益率 9.8%)、ROE は 20.2%。
筆者の結論は、10 年の価値が今の時価総額(475 億円)とほぼ同じ(差は小さい)というものだ。過去 10 年の ROE の中央値は 18.1% と高いが、利益は物件の売却で決まる。2026 年 6 月末は、棚卸資産が 453 億円(前期末の約 2.7 倍)に膨らみ、公募増資で株数が約 15% 増え、有利子負債は 330 億円ほどに増えた。
強みは、東京 23 区(95.8%)・駅徒歩 10 分以内(97.8%)に絞った仕入と、利益の出方の速さ。弱みは、物件ごとの売却益に利益が偏ること、金利上昇とキャップレートの上昇に弱いこと、そして創業者の一族が約 3 分の 1 を持つ点。
中立では、10 年で売上が 1,362 億円(今の 1.74 倍)、営業利益率が 9.7%、営業利益が 132 億円になる。資本コストは 7.75%。この水準で、事業の値打ちは純利益の 10 倍ほどだ。
いちばん気にしているのは、2026 年 9 月期の会社目標(経常利益 100 億円)の達成度だ。2026 年 6 月までの累計は 26.9 億円(進捗 27%)で、第 4 四半期の売却に大きく偏る。ここで目標に届くかが、仕入の拡大が実を結ぶかの最初の試金石になる。
バリュー投資の観点から
価値投資の観点では、ディア・ライフは「利益率は高いが、利益の中身が物件の売却益で、市況に左右される」会社だ。
よい点は 4 つある。過去 10 年の ROE の中央値が 18.1% と高い。仕入を東京 23 区の徒歩 10 分以内に絞り、リスクが小さい。2025/09 期までは純現金で、財務に余裕があった。経営者の阿部氏が約 3 分の 1 を持ち、株主と利害が揃う。
気になる点は、2026/06 期に在庫と借入が急に増え、財務の余裕が薄れたこと。公募増資で希薄化もあった。会社目標の経常利益 100 億円に対し、2026/06 期までの進捗は 27% で、第 4 四半期の引渡しに大きく偏る。
筆者は、中立で営業利益が 132 億円になり、ROE が 11〜12% と、過去の中央値より低い水準に落ち着くと見る。自己資本が 340 億円から 750 億円に増えるため、ROE は薄まる。事業の価値は純利益の 10 倍ほど。結果、10 年の価値は今の時価総額 475 億円とほぼ同じ。
市場は、2025/09 期までの高い ROE と、中期計画の経常利益 150 億円を織り込んでいるとみられる(kabufu の推計で 10 年以内の TOB・買収の確率は 21.5%)。筆者の中立には、買収の期待は入れていない。
何で稼ぐ会社か
ディア・ライフは、東京都区部とその周辺で不動産を仕入れ、価値を上げて売る会社。連結は、リアルエステート事業(ディア・ライフ、アイディ、アイディプロパティ)と、セールスプロモーション事業(アルシエ、議決権 51.2%)からなる。持分法の関連会社にパルマ(議決権 39.3%)がある。連結従業員は 639 人(セールスプロモーション 533、リアルエステート 98、全社 8)、提出会社の単体は 42 人で平均年齢 28.8 歳。
リアルエステート事業は、都市型レジデンス(単身者・DINKS 向けの賃貸マンション)の開発用地を仕入れ、開発計画を整えて売る「アセット・デザイン&リセール(ADR)」、都心の収益不動産の投資・運用・売却、ホテル運営、仲介・管理を手がける。2025/09 期の売上 745.7 億円・営業利益 86.2 億円。売却は ADR が 35 件、収益不動産が 43 件。仕入は開発用地が 25 件、収益不動産が 44 件。販売の 13.2% を、特定目的会社のレジプロパティーズフォー 1 社が占めた。
セールスプロモーション事業は、不動産・保険・金融業界向けの人材派遣・紹介とコールセンター受託。売上 39.4 億円・営業利益 0.8 億円。
2025/09 期の連結は、売上 785.1 億円、営業利益 77.3 億円、経常 78.3 億円、純利益 53.2 億円。自己資本 281.0 億円(比率 59.3%)、現預金 271.6 億円、有利子負債 約 152 億円(純現金 約 120 億円)。配当は総額 27.4 億円(性向 51.5%)。
2026/06 期末は、総資産 706.5 億円、純資産 345.0 億円(自己資本 340.9 億円、比率 48.2%)、棚卸資産 453.4 億円、D/E 0.98 倍。公募増資で発行済株式が 4,490 万株から 5,163 万株(自己株式を除く約 5,033 万株)に増えた。仕入は 23 区内 95.8%、都心 5 区 27.4%、徒歩 10 分以内 97.8%。
優良さと弱いところ
堀は、都心の仕入の目利きと、売却先(デベロッパー、私募ファンド、J-REIT)とのつながり。ただし事業の持続性は案件ごとで、深い堀とは言えない。
東京 23 区の駅徒歩 10 分以内に絞る方針は、需要が厚く、売却先を見つけやすい。仕入は 2025/09 期に開発用地 25 件・収益不動産 44 件。社長の阿部幸広氏は、創業以来この事業を率いており、仕入の判断は少数の人に集まる。単体従業員は 42 人と少なく、設計・施工・管理は外注に依存する(有報のリスクに挙げられている)。
弱いのは、価格を決める力と利益の安定性。売却価格は市場とキャップレートが決め、競合する不動産会社・ファンドは多い。利益は物件の引渡し時期で四半期ごとに偏る。2026/06 期までの累計は営業利益が 4.8% 減り、通期目標の 27% しか進んでいない。
財務は、2025/09 期までは純現金で健全だったが、仕入の急増で 2026/06 期末は D/E 0.98 倍、自己資本比率 48.2% に変わった。中期計画の自己資本比率の下限は 40%。金利の上昇が利払いと売却価格の両方に効く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
不動産の私募・開発型の市場は、機関投資家や私募ファンドが、都心の賃貸住宅・オフィス・物流・ホテルなどの収益不動産を買い、運用する市場に支えられている。J-REIT の時価総額は 2026 年に 15 兆円前後で、私募を含めた資金量の目安になる。需要の数量は、買い手の資金量と、収益不動産の取引件数。価格は、賃料とキャップレート(期待利回り、10 年国債 3% の前提で 4〜5.5% 程度)で決まる。
物価が年 3% で上がる前提では、建設費の上昇(2021 年以降 2〜4 割上昇して定着)が新築の供給を抑え、既存の収益不動産の価値を押し上げる。一方、金利の上昇でキャップレートが上がると、同じ賃料でも物件の価値が下がる。この会社の利益は、この価格の動きに直接さらされる。
競争は、大手デベロッパー、他の不動産ファンド運用会社、外資系ファンドが同じ都心の物件を取り合う。具体的な競合名は同社の資料に書かれていない。参入の壁は、仕入の情報網と資金(借入)、売却先の確保。
分かれ目は、買い手の資金が途切れないこと、金利とキャップレートの動き、仕入価格が上がりすぎないこと。前の谷では、2008〜2012 年に不動産会社の多くが大幅減益・一部が破綻し、都心 5 区のオフィス賃料が 3〜4 割下がった。ここで見るのは、金利が上がり、買い手の資金が細る局面で、在庫を持ちすぎていないかだ。
資本政策と M&A
配当は、中期計画(挑戦 2028)で、配当性向 40% を目標に DOE(株主資本配当率)を考慮した安定配当とし、2025/09 期は総額 27.4 億円(性向 51.5%、記念配当を含む)、2026/09 期は 1 株配当を前期並みの水準(性向 41% 相当)にする目標。自己株式の取得は、株価が企業価値を下回ると判断したときに機動的に行う方針で、2025/09 期は自己株の売却・取得はほぼ動いていない。
2026/06 期は、公募増資で発行済株式が 6.73 百万株増えた。調達額は資料で確認できず、自己資本の増加(281.0 → 340.9 億円)から、約 69 億円と推定する。同時に仕入を急拡大し、棚卸資産が 453.4 億円(前期末の約 2.7 倍)、有利子負債が約 330 億円(D/E 0.98 倍)に膨らんだ。
中期計画の 3 年間の資金配分は、成長投資 2,200 億円以上(戦略投資 30〜200 億円を含む)、株主還元 90〜150 億円、人的資本投資 10〜50 億円。仕入の年間目標は事業規模 1,200 億円。自己資本比率は 40% 以上を保つ。
筆者の見方では、現金は仕入に回す前提で、余った現金は立てない。配当と増資の資金は、すべて在庫と借入の成長に使われる。この資本配分は、売却価格が仕入値を上回り続けることを前提にしている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
業績の勢いは強い。2025/09 期は売上 +67.5%、営業利益 +67.3% で、ROE は 20.2%。2026/09 期の会社目標は経常利益 100 億円(+27.7%)、純利益 68 億円。中期計画(挑戦 2028)は、2028/09 期に経常利益 150 億円、ROE 20% 以上、長期(創業 30 周年の 2034 年ごろ)に経常利益 300 億円を掲げる。
仕入の勢いが、業績の先行指標になる。2026/06 期末の棚卸資産は 453 億円と前期末の約 2.7 倍で、仕入のペースは過去最高水準。取得案件の総事業規模は 2026/06 期までの累計で 590 億円、当期の仕入目標は 1,200 億円。開発プロジェクト 12 件、収益不動産 48 件が進行している。
場所の選び方も確かだ。23 区内が 95.8%、都心 5 区が 27.4%、徒歩 10 分以内が 97.8%。賃貸住宅の需要が厚く、買い手の資金も厚い。建設費が上がって新築の供給が減れば、既存の収益不動産の価値が上がる。
公募増資で自己資本が増え、負債の余力(デットキャパシティ)が広がった。売却益がそのまま利益に出る事業なので、仕入が売上に転換する 2027/09 期以降、利益が大きく伸びる。強気側は、売上が 1,800 億円、営業利益が 200 億円に達する筋書きだ。
慎重な見方
利益は物件の売却で決まり、売却価格は金利とキャップレートで動く。10 年国債が 3% の前提で、金利がさらに上がれば、同じ賃料でも物件の価値が下がり、仕入値との差が縮む。リーマン後は、不動産ファンドの買い手が消え、複数の不動産会社が破綻した。2009/09 期はこの会社も営業利益率 −6.3% の赤字だった。
今回は、財務の構えが変わった。2025/09 期は純現金 120 億円だったが、2026/06 期は棚卸資産が 453 億円に増え、有利子負債は 330 億円ほど、D/E は 0.98 倍、自己資本比率は 48.2%。売れなければ、評価損と利払いが利益を食う。
2026/06 期までの累計は、売上 −17.8%、営業利益 −4.8%、経常利益 −10.4%。通期目標(経常利益 100 億円)に対する進捗は 27% にとどまる。残りの 73 億円を、第 4 四半期の引渡しで取れるかが問われる。
会社は小さい(単体 42 人)。設計・施工・管理は外注に頼り、仕入の判断は少数の人に集まる。販売の 13.2% を 1 つの特定目的会社が占めた年もある。創業者の資産管理会社が約 3 分の 1 を持つ点も、少数株主にとっては支配の硬さになる。
どちらに重みを置いたか
仕入の拡大と高い ROE の実績は、強気の見方を支える実がある。ただし 2026/06 期は在庫と借入が急に増え、公募増資で自己資本も膨らんだ。ROE は薄まり、利益は物件の売却時期と金利に左右される。中立では、営業利益率が 9.7%、営業利益が 132 億円、ROE が 11〜12% に落ち着く、と筆者は見る。10 年の価値は時価総額とほぼ同じ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 2,219 円1,117 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 545 円274 億円)。 今の値に割り戻すと 1,427 円718 億円、今との差 +51.5%、 期待の年率 +11.4%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,239 円2,133 億円 | 761 円383 億円 | +430.7% | +18.2% | 400 円201 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,408 円1,715 億円 | 682 円343 億円 | +334.2% | +15.8% | 818 円412 億円 |
| 中立 | 36% | 2,814 円1,416 億円 | 592 円298 億円 | +261.6% | +13.7% | 1,226 円617 億円 |
| やや悲観 | 24% | 660 円332 億円 | 455 円229 億円 | +18.4% | +1.7% | 268 円135 億円 |
| 悲観 | 12% | 218 円110 億円 | 209 円105 億円 | −54.7% | −7.6% | 51 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,219 円1,117 億円 | 545 円274 億円 | +193.3% | +11.4% | 2,763 円1,391 億円 |
今の株価時価総額 942 円474 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 仕入の拡大が実を結び、23 区の収益不動産と開発で売上が 1,800 億円、営業利益が 200 億円に乗る 利益 132 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 4,239 円2,133 億円
東京 23 区の都心で、仕入が拡大し続ける。徒歩 10 分以内の物件を 97.8% 取る方針が当たり、賃貸マンションの需要が強く、買い手(デベロッパー、私募ファンド、J-REIT)の資金も厚い。開発適地化の件数は 1.65 倍、収益不動産は 1.35 倍に増える。
事業規模 10 億円超の大型案件が増え、1 件あたりの売上は物価を大きく上回って 1.5〜1.6 倍になる。売上は 1,800 億円を超え、営業利益は 200 億円に達する。中期計画の長期目標(経常利益 300 億円)には届かないが、近づく。
配当は純利益の 4 割を保ち、残りを仕入に回す。自己資本は 900 億円を超え、ROE は 14% 台。ただし、これは不動産の売却価格が仕入値を安定して上回り続け、金利が上がらない前提で、10 年続く保証はない。
- 開発適地化・都市型レジデンス(ADR):数量 57.8(年間の売却件数(件))× 価格 18(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,061 億円・営業利益 159 億円。数量 1.65 倍・価格 1.60 倍・営業利益率 15.0%
- 収益不動産の投資・売却:数量 58.1(年間の売却件数(件))× 価格 12(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 697 億円・営業利益 70 億円。数量 1.35 倍・価格 1.50 倍・営業利益率 10.0%
- セールスプロモーション(人材派遣・コールセンター):数量 613(従事者数(人))× 価格 0.10(1 人あたり売上(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 2 億円。数量 1.15 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 132 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.73 倍、時価総額 2,083 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026/06 期末の棚卸資産は 453 億円と前期末の約 2.7 倍に増え、2026/09 期以降の売上の元手がすでにある。仕入のペースは過去最高水準で、東京 23 区の需給が引き締まる局面では、売上が 2 倍を超える筋書きも成り立つ。ただし不動産の価格はキャップレートに左右されるので、確率は 1 割弱に置いた。
やや楽観 20% 中期計画の経常利益 150 億円に近い水準が定着し、営業利益が 160 億円ほどになる 利益 107 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 3,408 円1,715 億円
中期計画の 2028/09 期の経常利益 150 億円が、ほぼ達成され、その後もその水準を保つ。仕入のペース(過去最高水準)が売上に転換し、2026/09 期以降の売上が大きく伸びる。開発適地化の件数は 1.45 倍、収益不動産は 1.25 倍。
1 件あたりの売上は大型化で 1.45〜1.52 倍。営業利益率は 10% 台前半、営業利益は 160 億円ほど、純利益は 107 億円ほど。
配当は純利益の 4 割強。自己資本は 800 億円を超え、ROE は 13% 台で、資本コスト 7.75% を上回る。借入が自己資本の 1 倍程度で推移し、金利の影響を受ける。
- 開発適地化・都市型レジデンス(ADR):数量 50.8(年間の売却件数(件))× 価格 17(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 885 億円・営業利益 124 億円。数量 1.45 倍・価格 1.52 倍・営業利益率 14.0%
- 収益不動産の投資・売却:数量 53.8(年間の売却件数(件))× 価格 12(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 624 億円・営業利益 59 億円。数量 1.25 倍・価格 1.45 倍・営業利益率 9.5%
- セールスプロモーション(人材派遣・コールセンター):数量 586(従事者数(人))× 価格 0.10(1 人あたり売上(億円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。数量 1.10 倍・価格 1.35 倍・営業利益率 2.2%
倍率:事業の純利益 107 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.51 倍、時価総額 1,653 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画(挑戦 2028)の 2028/09 期の経常利益 150 億円が、おおむね達成され、その後も同じ水準が続く筋書き。2025/09 期の営業利益 77 億円から倍近い水準。強気側の中心として 2 割に置いた。
中立 36% 仕入は大型化して拡大するが、利益率は 10% 弱に落ち着き、営業利益は 130 億円ほど 利益 87 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 2,814 円1,416 億円
売上は 785 億円から 1,362 億円へ、10 年で 1.74 倍。開発適地化は件数 1.30 倍・1 件あたり 1.45 倍、収益不動産は 1.15 倍・1.40 倍。セールスプロモーションは 1 人あたり売上が 1.3 倍に上がるだけで、利益はほとんど出ない。
営業利益率は 9.7% で、2025/09 期の 9.8% とほぼ同じ。大型化で 1 件あたりの売上は上がるが、仕入価格も上がり、金利が上がる分、利益率は伸びない。営業利益は 132 億円、純利益は 87 億円。
配当は純利益の 4 割強で、残りを仕入に回すので、自己資本は 340 億円から 750 億円に増える。ROE は 11〜12% で、資本コストを上回るが、過去 10 年の中央値(18%)には届かない。
- 開発適地化・都市型レジデンス(ADR):数量 45.5(年間の売却件数(件))× 価格 17(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 757 億円・営業利益 98 億円。数量 1.30 倍・価格 1.45 倍・営業利益率 13.0%
- 収益不動産の投資・売却:数量 49.5(年間の売却件数(件))× 価格 11(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 554 億円・営業利益 50 億円。数量 1.15 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 9.0%
- セールスプロモーション(人材派遣・コールセンター):数量 533(従事者数(人))× 価格 0.10(1 人あたり売上(億円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 87 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.3 倍、時価総額 1,334 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026/09 期の会社目標(経常利益 100 億円)から、大型化と仕入の拡大が続き、営業利益が 130 億円ほどで落ち着く筋書き。中期計画の 150 億円には届かないが、過去 10 年で営業利益が 2 倍になった実績(2015/09 期の 16 億円から 2025/09 期の 77 億円)の延長として最もありそうなので 36% を置いた。
やや悲観 24% 金利上昇で売却価格が伸びず、在庫が滞り、営業利益が 65 億円まで落ちる 利益 42 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 660 円332 億円
金利が上がり、買い手のキャップレートが 0.5〜1 ポイント上がる。売却価格が下がり、仕入値との差が縮む。開発適地化の件数は横ばい、収益不動産は 0.95 倍。1 件あたりの売上は物価ほど上がらず、1.25〜1.3 倍。
在庫(2026/06 期末の棚卸資産は 453 億円)の回転が遅くなり、利払いが増える。営業利益率は 6〜7% に落ち、営業利益は 65 億円ほど。純利益は 43 億円。
配当は純利益の半分を保つが、自己資本は伸びない。ROE は 7% 台で、資本コスト 7.75% を下回る。2024/09 期の営業利益 46 億円(9.8%)に近い水準で、2022〜2023 年の 60 億円前後に戻る形。
- 開発適地化・都市型レジデンス(ADR):数量 35.0(年間の売却件数(件))× 価格 15(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 522 億円・営業利益 50 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 9.5%
- 収益不動産の投資・売却:数量 40.9(年間の売却件数(件))× 価格 10(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 409 億円・営業利益 27 億円。数量 0.95 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 6.5%
- セールスプロモーション(人材派遣・コールセンター):数量 506(従事者数(人))× 価格 0.09(1 人あたり売上(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 0 億円。数量 0.95 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 1.0%
倍率:純利益は 43 億円(ROE 7% 台)と資本コストを下回り、倍率の式は上限の 1÷k = 10.8 倍より低い。利益ベース(43 億円 × 約 9 倍 = 約 390 億円)と、売れる資産から負債を引いた床(約 220 億円)の間で、2025/09 期末の自己資本 281.0 億円(検査が使う基準)に PBR 0.89 倍を掛けた 250 億円とした(増資後の 340.9 億円に対しては 0.73 倍)。
確率:2024/09 期(営業利益率 9.8%、営業利益 46 億円)の水準が続く筋書き。金利が上がり、買い手のキャップレートが上昇すると、売却価格が仕入値を上回りにくくなる。在庫は 453 億円と大きく、金利上昇の影響が出やすい。24% を置いた。
悲観 12% 不動産市況が崩れ、在庫を売れず評価損が出て、営業赤字になる 利益 −7 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 218 円110 億円
不動産市況が崩れる。金利が大きく上がり、買い手の資金が消え、キャップレートが 1.5 ポイント以上上がる。在庫(2026/06 期末 453 億円)は売れず、評価損が出る。開発適地化の件数は 0.55 倍、収益不動産は 0.5 倍に減り、価格も伸びない。
有利子負債が 330 億円ほどあり、利払いが営業利益を食う。営業利益はゼロに近づき、営業赤字の年も出る(2009/09 期は −6.3%)。配当は減らす。
自己資本比率は 48% から下がり、借入の更新が課題になる。市場は稼ぐ力でなく、売れる資産(在庫の 6 割、現金など)から負債を引いた価値で値を付ける。リーマン後の不動産会社の破綻に近い局面。
- 開発適地化・都市型レジデンス(ADR):数量 19.3(年間の売却件数(件))× 価格 11(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 221 億円・営業利益 4 億円。数量 0.55 倍・価格 1.00 倍・営業利益率 2.0%
- 収益不動産の投資・売却:数量 21.5(年間の売却件数(件))× 価格 8.00(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 172 億円・営業利益 2 億円。数量 0.50 倍・価格 1.00 倍・営業利益率 1.0%
- セールスプロモーション(人材派遣・コールセンター):数量 453(従事者数(人))× 価格 0.08(1 人あたり売上(億円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 0.5%
倍率:営業赤字で、稼ぐ力は値を支えない。在庫の評価損と有利子負債の重さで、売れる資産から負債を引いた価値(約 99 億円)にわずかに上乗せした 110 億円に置き、2025/09 期末の自己資本 281.0 億円に PBR 0.391 倍を掛けた(増資後の 340.9 億円に対しては 0.32 倍)。
確率:2009/09 期のように赤字になる年がすでにある。リーマン後は、不動産ファンドの買い手が消え、複数の不動産会社が破綻した。今回は、在庫が 453 億円、有利子負債が 330 億円ほどあり、売れなければ評価損と利払いが重い。確率は低いが、前の谷が実際に起きているので 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
開発適地化・都市型レジデンス(ADR)
東京 23 区周辺で、単身者・DINKS 向けの都市型賃貸レジデンスの開発用地を仕入れ、開発計画や入居者付きの形に整えて(アセット・デザイン&リセール、略して ADR)、デベロッパーや私募ファンドなどに売る。2025/09 期は 35 件を売却、25 件を仕入れた。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 35.0 | 11 | 402 | 54 |
| 10 年後 中立 | 45.5 | 17 | 757 | 98 |
取り方:2025/09 期のリアルエステート事業の売上 745.69 億円(連結、営業利益 86.19 億円)のうち、ADR と収益不動産への内訳は開示がない。売却件数は ADR が 35 件、収益不動産が 43 件(開示)。1 件あたりの売上を収益不動産 8.0 億円と仮定し(確認できず。都心の賃貸マンションの中小型を想定)、残りを ADR の 401.7 億円(1 件 11.48 億円)とした。営業利益は ADR の利益率を 13.5%(54.2 億円)、収益不動産を 9.3%(32.0 億円)と配分した推定(合計はセグメント営業利益に合わせた)。10 年の中立は、件数 1.30 倍(大型化の方針と仕入の拡大、23 区内に絞った供給)、1 件あたり売上 1.45 倍(物価の 1.34 倍に加え、事業規模 10 億円超の大型案件を重視するため)。 【数量・率の点検】数量は件数(実物)、価格は 1 件あたり売上で名目、二重がけなし。
収益不動産の投資・売却
都心部の収益不動産(賃貸中のマンション・ビル)を買い、賃料を得ながら価値を上げて売る。2025/09 期は 43 件を売却、44 件を仕入れた。ホテル運営・仲介・管理も含む。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 43.0 | 8.00 | 344 | 32 |
| 10 年後 中立 | 49.5 | 11 | 554 | 50 |
取り方:2025/09 期の収益不動産の売却 43 件。1 件 8.0 億円は推定(ADR との配分の仮定、上記)。営業利益 32.0 億円(利益率 9.3%)も配分の推定。10 年の中立は、件数 1.15 倍、1 件あたり売上 1.40 倍(物価並みに大型化が少し加わる)。2025/09 期は大口の特定目的会社(レジプロパティーズフォー)が販売実績の 13.2% を占めた。 【数量・率の点検】数量は件数(実物)、価格は 1 件あたり売上で名目、二重がけなし。
セールスプロモーション(人材派遣・コールセンター)
子会社のアルシエ(議決権 51.2%)が、不動産・保険・金融業界向けに人材派遣・紹介、コールセンター業務の受託を行う。連結従業員 639 人のうち 533 人がこの事業で、パート・嘱託が多い。
| 数量従事者数(人) | 価格1 人あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 533 | 0.07 | 39 | 1 |
| 10 年後 中立 | 533 | 0.10 | 51 | 1 |
取り方:2025/09 期のセールスプロモーション事業の売上 39.36 億円、営業利益 0.79 億円(利益率 2.0%)、従事者 533 人(パート・嘱託を含む。年間平均は別に 385 人)。売上÷人数で 1 人あたり 0.0738 億円。10 年の中立は、人数横ばい(人手不足で採用が制約)、1 人あたり売上 1.30 倍(物価より低い。派遣の契約単価は見直しが進むが、利益率は低く止まる)。 【数量・率の点検】数量は人数(実物)、価格は名目で、二重がけなし。
リスクと懸念
金利とキャップレートの上昇
10 年国債が 3% の前提で、買い手の期待利回り(キャップレート)が上がると、同じ賃料でも物件価格が下がる。利益は売却益に偏り、在庫は 453 億円と大きいので、利益率と評価損の両方に響く。
在庫と借入の急増
2026/06 期末の棚卸資産は前期末の約 2.7 倍の 453 億円、D/E は 0.98 倍、自己資本比率は 48.2% に下がった。売却が滞ると、利払いと評価損が利益を食う。中期計画では自己資本比率 40% 以上を保つとしている。
第 4 四半期への偏りと目標未達
2026/09 期の経常利益目標は 100 億円だが、第 3 四半期までの累計は 26.9 億円(進捗 27%、5 年平均 31.6% を下回る)。物件の引渡し時期で四半期業績が偏る。
東京圏への集中と災害
23 区内が 95.8%、都心 5 区が 27.4%。東京の地価・賃料の下落、条例などの規制強化、地震などの災害が一度に効く。
外注と人材への依存
単体従業員は 42 人。設計・施工・管理は外注先に依存し、仕入の判断は少数の人に集まる。人材の確保と育成が課題。
支配株主と希薄化
社長の阿部幸広氏と共同保有者が約 36%(資産管理会社のディアネスが約 34%)を持ち、少数株主の影響力は小さい。2026/06 期に公募増資で株式が約 15% 増えた。M&A も成長策に含まれ、買収の失敗リスクがある。kabufu の推計で 10 年以内の TOB・買収の確率は 21.5%。
今後の分かれ目
- 2026/09 期の経常利益が目標(100 億円)に達し、2027/09 期の目標が 120 億円超
- 仕入の拡大が利益に転換した証拠。中立を営業利益 140 億円台に引き上げる。強気側の筋書きに寄る。
- 2026/09 期の経常利益が目標の 8 割を割る(80 億円未満)
- 在庫の回転が遅れている兆し。中立の件数を下げ、慎重側の筋書きに寄る。
- 棚卸資産が 500 億円を超え、自己資本比率が 45% を割る
- 借入依存が深まる。借金の評価を上げ(資本コストに +0.25%)、慎重側に寄る。
- 10 年国債の利回りが 4% を超え、不動産の取引件数が減る
- キャップレートの上昇と買い手の資金減少の兆し。悲観側の確率を上げる。
- 会社が自社株買いを実施する、または配当性向を 50% 以上に引き上げる
- 株価が企業価値を下回ると会社が判断した証拠。資本の使い方が株主寄りになる。
- 特定の売却先(特定目的会社)への依存が販売の 2 割を超える
- 売却先の集中リスク。売上の安定性の評価を下げる。
見ておくもの
- 経常利益(2026/09 期の目標は 100 億円)と、第 4 四半期の引渡しの進捗
- 棚卸資産(2026/06 期末は 453 億円)、有利子負債(約 330 億円)、自己資本比率(48.2%)
- 取得案件の総事業規模(2026/06 期までで 590 億円、当期の目標 1,200 億円)と、売却件数
- 10 年国債の利回りと、都心の賃貸住宅・収益不動産のキャップレート
- 中期計画(挑戦 2028)の進捗:2028/09 期の経常利益 150 億円、ROE 20% 以上、自己資本比率 40% 以上
- 配当(性向 40% の目標)と、自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
開発適地化(ADR)・収益不動産・セールスプロモーションの 3 つを、件数(または人数)と名目の 1 件あたり売上に分けて積んだ。ADR と収益不動産の内訳は開示がなく、1 件あたりの売上の仮定(収益不動産 8 億円)で配分した推定(合計は実績どおり)。価格は 10 年 1.30〜1.45 倍で、物価の 1.34 倍に、大型化による上乗せを少し加えた。営業利益率は 9.7%(2025/09 期の 9.8% とほぼ同じ)に置いた。資本コストは基本 7.5% に quality +1.75% で k は 7.75%。倍率は、ROE から RONIC と g 3.0% の式で出し、今の PER や PBR からは置かなかった。流れの起点には、公募増資後の 2026/06 期末の自己資本 340.9 億円を使った。結果、価値は時価総額 475 億円とほぼ同じ(差は小さい)。市場は高い ROE の実績と中期計画を織り込んでいるとみられ、筆者は ROE が薄まる前提で測った。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。