結論
プロパストは、首都圏の土地を仕入れて小さな賃貸マンションを建て、個人投資家に売る不動産開発会社だ。2025年に建築会社の小川建設を買い、請負も手がけるようになった。筆者の結論は、足元の利益は力強いが、金利の上昇と在庫の重さを織り込むと、10年で測った価値は今の値段をやや下回る、というものだ。
稼ぐ力は目立つ。前期の営業利益は32億円、ROEは14%。この数年は営業利益が2割ずつ伸びた。時価総額103億円は、前期の純利益の5.5倍にすぎない。
ただし、この利益は「売った年に計上する」性質が強い。前期は賃貸開発を19件売ったが、会社は来期の計画を12件に減らしている。営業利益の計画は35億円で、純利益は1割以上減る。
買収した小川建設も、見た目ほど株主のものにならない。51%を40億円で買ったため、利益の半分近くは少数株主に流れる。借入は約220億円あり、金利が上がれば、販売用不動産の資金繰りが重くなる。
筆者は、中立の筋書きでも純利益は17億円ほどにとどまると見る。割安の根拠になるはずの自己資本137億円は、在庫と建設の運転資金に化けていて、すぐには換金できない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、利益の質を見たい会社だ。
前期の純利益19億円は、時価総額の2割弱にあたり、安く見える。ただし、この利益の大半は、仕入れた土地を建物にして売った年に出る売却益だ。毎年同じ件数が売れる保証はなく、来期の会社計画は賃貸開発を19件から12件へ減らしている。
オーナー利益、つまり事業に再投資せずに株主へ渡せる利益を考えると、開発会社は売るたびに次の土地を買う必要がある。借入で在庫を積む事業は、売れる年は大きく儲かり、売れない年は金利だけが残る。
安全域は、薄い。自己資本137億円のうち、販売用不動産と仕掛が193億円ある。市況が崩れれば、評価減が先に来る。小川建設は契約残高326億円という安定した収益源になるが、少数株主に半分近い利益が流れる。
筆者は、事業の質は並みで、10年後の姿を読みにくい会社だと見る。確信度が低いぶん、払う値段には安全域を求める。今の値段は、その安全域をやや欠く。
何で稼ぐ会社か
プロパストは、首都圏で不動産を開発して売る会社だ。事業は4つある。
中心は賃貸開発。都心部の小さな土地を仕入れ、中低層の賃貸マンションを建て、完成後に個人投資家へ売る。前期は19件を売り、売上198億円、セグメント利益37億円を上げた。1件あたり約10億円で、利益率は19%と高い。
バリューアップは、既存の収益物件を買い、改装して売る事業。前期は3件で、売上は19億円。分譲開発は、ファミリー向けのマンションを建てて売る。前期は引き渡しがなく、評価減で1億円の損失が出た。
4つ目の建築請負は、2025年10月に51%を買った小川建設が担う。明治42年創業の建築会社で、新宿に本社がある。買い取りは40億円。前期は約3か月分の売上78億円が入り、契約残高は326億円ある。
筆頭株主はシノケングループで、議決権の37%を持つ。小川建設の売り手でもあり、プロパストは以前から工事を発注していた。資本業務提携を結び、役員も兼ねている。
借入は約220億円。仕掛けの物件を担保にした借入が中心で、純資産の維持や経常赤字の回避を条件とする財務制限条項がついている。
優良さと弱いところ
事業の質は、強みと弱みがはっきりしている。
強みは、土地の目利きと企画力だ。都心の好立地を安く仕入れ、利回りの取れる小さな賃貸マンションに仕立てる。上期の賃貸開発は、計画を上回る利益率だった。売り先の個人投資家を、シノケングループの顧客網が支える面もある。
弱みは、利益が「件数」で決まる点だ。売れた年は大きく儲かり、売れなかった年は何も残らない。分譲開発のように、引き渡しがなくて評価減だけが出ることもある。ROEは過去10年で14〜25%と高いが、自己資本が小さいところに借入で在庫を積んだ結果で、堀、つまり他社がまねしにくい強みから来る数字ではない。
資本の使い方は、積極的だ。小川建設の買い取りで自己資本比率は29%に下がり、会社は30%以上を目標に掲げた。配当性向は14%と低く、利益は成長に回す方針だ。ただし、成長の中身が借入で積んだ在庫なら、金利の上昇は直撃する。
ガバナンスの面では、売り手が筆頭株主でもある取引に注意が要る。小川建設の価格と条件は、少数株主が検証しにくい。
筆者が一番気にするのは、利益の質だ。売却益に近い利益の積み上げで、株主が受け取れる現金は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
投資用不動産の市場は、金利と融資姿勢で大きく動く。
日銀が利上げを進める世界では、不動産の利回りに対する借入の金利が上がり、個人投資家の買いは細りやすい。2008〜09年の金融危機では、同業の破綻が相次いだ。プロパストも2010年5月期に純損失284億円を出した。
一方、都心の立地は強い。土地と建築費は上がり続け、新築の賃貸マンションの供給は絞られる。供給が少ないうえ、人手不足でゼネコンが仕事を選ぶ中、自前の建築会社を持つことは、工期と原価の面で強みになる。
競争は分散している。賃貸の開発は、地場の中堅デベロッパーが多数並び、シノケン、ムゲンエステート、サムティなど同じ顧客層を取り合う。大手は都心の大型案件に注力するため、小さな土地の開発では直接ぶつからない。
建築請負の市場は、人手不足で好調だ。ゼネコンは受注を選別でき、利益率を保ちやすい。ただ、資材と労務費の上昇を価格に転嫁できる契約かどうかが分かれ目だ。民間の工事が止まれば、固定費の重い建築会社の利益は急に落ちる。
物価3%の世界では、土地と建物の値段も上がる。開発の売上は名目で伸びやすいが、売れる件数は個人投資家の資金力で決まる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。前期の配当性向は14%と低い。来期は配当を増やす予定だが、水準は小さい。自社株買いは実績がなく、会社は自己資本比率30%以上の積み上げを優先する。
借入は約220億円で、純有利子負債は104億円。支払利息は4億円で、実質の金利は2%前後と低い。借り換えのたびに3.5%前後へ上がると、利払いは10年で3億円ほど増える。担保は仕掛販売用不動産で、純資産の維持と経常赤字の回避を求める財務制限条項が付く。
M&Aは、2025年10月の小川建設が大きい。51%に40億円を払い、のれんは小さい。小川建設の純資産は69億円で、51%分の35億円とほぼ同額だった。割安の買い物ではなく、事業の定着が目的の買収だ。
シノケングループが議決権の37%を持つ。TOBの可能性は、同グループが保有を高める形で考えられるが、現時点で観測はない。残り49%の小川建設の株主は、開示から確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
前期の営業利益は32億円で、3年前の1.2倍、5年前の2倍に増えた。賃貸開発の利益率は19%と高く、都心の好立地を仕入れる力が、数字に出ている。小川建設の買収で契約残高は326億円に膨らみ、受注の見通しが立った。ゼネコンの人手が足りない今、自前の施工力は強みだ。
時価総額103億円は、前期の純利益の5.5倍にすぎない。小川建設の少数株主の取り分を引いても、純利益は16億円と、PERは6倍台にとどまる。市場は、成長を一切織り込んでいない。
自己資本は137億円まで積み上がり、ROEは14%。前期の営業キャッシュフローは62億円のプラスで、借入は減りつつある。自己資本比率の目標30%が達成されれば、金融機関の目も変わる。
筆頭株主のシノケングループは、販路と資金の面で支える。同グループは個人投資家向けの販売網を持ち、売却の確実性が高い。
小川建設の価値も見落とされている。明治42年創業で、ゼネコン需要が逼迫する中、プロパストの発注を受けるだけでなく、外部からも受注を積める。取得時の純資産は69億円で、40億円の買い物は簿価を割らない水準だ。
金利が上がれば、都心の賃貸マンションの利回りは上がるが、新築の供給も絞られる。小さな土地を安く仕入れる力がある会社は、市況が厳しいほど優位に立つ。
慎重な見方
この会社の利益は、いつまでも続かない可能性が高い。前期は賃貸開発を19件売ったが、会社自身が来期の計画を12件に減らした。計画の営業利益は35億円で、純利益は16億円と、今期より1割以上減る。
金利が上がれば、借入220億円の利払いが増える。個人投資家向けの融資が引き締まれば、売り先が細る。2010年5月期には、同じ事業で純損失284億円を出した。担保は在庫で、財務制限条項に触れれば、資産を急いで売る場面もある。
小川建設は、購入価格が簿価とほぼ同じで、株主に渡る利益が半分に減る。残り49%の株主が誰か、開示では確認できない。売り手が筆頭株主であるため、価格の検証もしにくい。
ROEの高さは、自己資本の小ささによる面が大きい。在庫を借入で積んだだけで、堀から来る数字ではない。景気の山で売り抜けた年の利益に、高い倍率は払えない。
最後に、のれんと簿価の問題がある。小川建設の買収で自己資本比率は29%に下がり、会社は30%超を目標に掲げた。目標に届くには、利益を配当に回さず積み上げる必要がある。つまり、株主が受け取る現金は小さいままだ。
5〜6倍という今の低いPERは、割安の印というより、利益が続かないことへの疑いを映しているとみるのが自然だ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が勝つ。強気の根拠は、前期までの実績と市場の安い値付けだ。ただし、実績は売った年の利益で、来期の計画は強気の筋書きに沿っていない。
中立は、会社計画に近い形(営業利益が名目で伸び、純利益は17億円)を置いた。確率は、中立に3割強、やや楽観に2割強、悲観側に3割半を置いた。
決め手は、金利の上昇と、少数株主の取り分だ。強気側が頼る前期の純利益は、小川建設の少数株主分を含まない。同じ水準の営業利益が出ても、親会社の取り分は4割減る。この点を重く見て、総合の価値は今の値段を2割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 656 円217 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 115 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 399 円132 億円、今との差 +30.7%、 期待の年率 +9.7%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,522 円504 億円 | 217 円72 億円 | +470.0% | +19.0% | 174 円58 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,015 円336 億円 | 167 円55 億円 | +287.6% | +14.5% | 260 円86 億円 |
| 中立 | 33% | 673 円223 億円 | 124 円41 億円 | +161.0% | +10.1% | 263 円87 億円 |
| やや悲観 | 23% | 182 円60 億円 | 65 円22 億円 | −18.9% | −2.1% | 57 円19 億円 |
| 悲観 | 12% | 137 円45 億円 | 10 円3 億円 | −52.1% | −7.1% | 18 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 656 円217 億円 | 115 円38 億円 | +152.8% | +9.7% | 771 円255 億円 |
今の株価時価総額 305 円101 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 開発の件数を保ち、請負も伸びて利益が6割増える 利益 32 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 1,522 円504 億円
首都圏の小規模賃貸マンションは、個人投資家の買いが続く。高い金利のもとでも都心の好立地は利回りが取れ、開発の売却は年22件を保つ。土地と建築費の上昇で1件あたりの売上は4割上がる。
建築請負は、小川建設が取引先を広げる。人手の足りないゼネコン需要は続き、年間の延べ床面積は今の1.1倍に届く。請負の利益率は10%に乗る。
全社の営業利益は79億円と今の約2.5倍。ここまで来ると自己資本は300億円を超え、ROEは約10%と資本コストの9.5%をわずかに超える。ただ、少数株主が小川建設の利益の半分近くを持つため、親会社の純利益は営業利益の4割にとどまる。
- 開発(賃貸開発・分譲開発・バリューアップ):数量 22.0(年間の売却・引渡プロジェクト数(件))× 価格 14(1件あたり売上(億円))→ 売上 303 億円・営業利益 52 億円
- 建築請負(小川建設):数量 7.4(施工する延べ床面積(万㎡・年間))× 価格 63(1㎡あたり請負単価(万円))→ 売上 466 億円・営業利益 47 億円
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.84 倍、時価総額 504 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気は、開発の売却件数が今の22件を保ち、小川建設の請負も増える場合に限る。会社自身が来期は賃貸開発12件・バリューアップ6件と件数を減らす計画なので、確率は1割にとどめた。
やや楽観 22% 開発は件数を落とすが利益率を保ち、請負が支える 利益 24 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 1,015 円336 億円
開発の売却は年20件。来期の計画(賃貸12件・バリューアップ6件)から回復し、価格の上昇で売上は270億円に届く。利益率は16%で、今の17%台からわずかに下がる。
建築請負は年6.6万㎡。契約残高326億円を消化したあとも、既存の発注元からの更新需要が続く。利益率は9%。
全社の営業利益は62億円。金利の上昇で支払利息は9億円に増えるが、純利益は24億円と今の水準を上回る。
配当は来期から段階的に増えるが、筆頭株主の方針もあり、配当性向は3割までにとどまる。自己資本は280億円に積み上がる。余った資金は次の仕入れと小川建設の運転資金に回り、株主への戻りは限られる。ROEは8%台で、資本コストにはまだ届かない。
- 開発(賃貸開発・分譲開発・バリューアップ):数量 20.0(年間の売却・引渡プロジェクト数(件))× 価格 13(1件あたり売上(億円))→ 売上 270 億円・営業利益 43 億円
- 建築請負(小川建設):数量 6.6(施工する延べ床面積(万㎡・年間))× 価格 62(1㎡あたり請負単価(万円))→ 売上 407 億円・営業利益 37 億円
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.23 倍、時価総額 336 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:来期の会社計画(営業利益35.5億円)の達成を前提に、開発の件数がやや減る一方で利益率を保つ筋書き。実現可能性が高く、2割強を置いた。
中立 33% 開発は件数を絞り、請負が利益の半分を担う 利益 17 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 673 円223 億円
開発の売却は年18件。来期の計画に近く、今の22件より減る。仕入れ価格の上昇と金利の上昇で、個人投資家向けの利回りが取りにくくなり、利益率は14.5%と今より下がる。
建築請負は年6万㎡。都心の再開発や物流施設の工事が続き、契約残高を消化しながら受注を積み上げる。利益率は8.5%で、直近の3か月(9.9%)より少し低い。本社費は物価で増え、17.6億円になる。
営業利益は48億円。物価で名目の利益は増えるが、実質では来期計画と同じ水準だ。
支払利息は8億円に増える。小川建設の少数株主の取り分を引くと、親会社の純利益は17億円。10年後の自己資本は260億円と今の倍近いが、ROEは6%台にとどまる。
- 開発(賃貸開発・分譲開発・バリューアップ):数量 18.0(年間の売却・引渡プロジェクト数(件))× 価格 13(1件あたり売上(億円))→ 売上 237 億円・営業利益 34 億円
- 建築請負(小川建設):数量 6.0(施工する延べ床面積(万㎡・年間))× 価格 60(1㎡あたり請負単価(万円))→ 売上 362 億円・営業利益 31 億円
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 223 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中立は、会社計画に近い姿が続く筋書き。開発の件数が18件(来期計画と同じ)にとどまり、請負が利益の半分を稼ぐと置いた。計画どおりの営業利益35.5億円が名目で伸びる形。
やや悲観 23% 金利と融資の引き締めで、開発が細る 利益 4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 182 円60 億円
融資の引き締めで、個人投資家の買いが細る。開発の売却は年14件に減り、値引きしないと売れない案件が増える。利益率は11%に落ちる。
建築請負は年5万㎡。ゼネコン需要は落ち着き、小川建設の受注単価が下がる。人件費は上がるため、利益率は6%に低下する。
営業利益は21億円、純利益は4億円。支払利息8億円弱と少数株主の取り分で、親会社の利益はほとんど残らない。
財務制限条項付きの借入24億円は、純資産の維持が条件。利益が出ないため配当は据え置きで、条項に触れる手前で資産を売って対応する。売却は市況の悪い中で行われるため、値引きが利益を削る。小川建設への工事の発注も減り、グループ内の取引も縮む。
- 開発(賃貸開発・分譲開発・バリューアップ):数量 14.0(年間の売却・引渡プロジェクト数(件))× 価格 13(1件あたり売上(億円))→ 売上 179 億円・営業利益 20 億円
- 建築請負(小川建設):数量 5.0(施工する延べ床面積(万㎡・年間))× 価格 56(1㎡あたり請負単価(万円))→ 売上 281 億円・営業利益 17 億円
倍率:稼ぐ力は小さく(ROE約1.7%)、床の資産で測った。自己資本137億円と販売用不動産・仕掛193億円の評価減1.5割を土台に、PBR 0.44倍。
確率:日銀の利上げと個人投資家向け融資の引き締めが重なり、開発の売却が3割落ちる筋書き。2008〜09年に同業の破綻が相次いだ前例があり、やや悲観を2割強置いた。
悲観 12% 市況が崩れ、在庫を売って借入を返す 利益 −12 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 137 円45 億円
不動産市況が崩れ、開発の売却は年8件に落ちる。利益率は3%まで下がり、評価減が続く。
小川建設の請負も、民間の工事が止まり、年3.8万㎡に細る。利益率3%で、固定費を賄えるかどうかの水準。
営業利益は赤字。本社費の削減も追いつかず、純損失は12億円に達する。財務制限条項に触れ、金融機関の要請で在庫を売って借入を返す。
株主に残るのは、評価減後の在庫の処分価値から借入を返した残りだ。2010年5月期のような存続の危機までは想定せず、自己資本の3割強に相当する45億円を床に置く。ただし、市況の谷では換金できる価格が帳簿を大きく下回りうる。少数株主の持ち分を除いた親会社の取り分は、在庫の売却先が見つかるかに左右される。
- 開発(賃貸開発・分譲開発・バリューアップ):数量 8.0(年間の売却・引渡プロジェクト数(件))× 価格 11(1件あたり売上(億円))→ 売上 91 億円・営業利益 3 億円
- 建築請負(小川建設):数量 3.8(施工する延べ床面積(万㎡・年間))× 価格 50(1㎡あたり請負単価(万円))→ 売上 188 億円・営業利益 6 億円
倍率:赤字のため、PBRで置いた。今の自己資本137億円に対して0.33倍。稼ぐ力はゼロで、床は在庫の処分価値で測った。
確率:10年の悲観は構造的な負け。金利の上昇と融資の引き締めで不動産市況が崩れ、2008〜09年の再来となる筋書き。同社は2010年5月期に純損失284億円を出した実績があり、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
開発(賃貸開発・分譲開発・バリューアップ)
首都圏の土地を仕入れ、小規模の賃貸マンションや分譲マンションを開発して、主に個人投資家に売る。買って手を入れて売るバリューアップも含む。
| 数量年間の売却・引渡プロジェクト数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 22.0 | 9.84 | 217 | 38 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 13 | 237 | 34 |
取り方:賃貸開発19件(売上198億円)とバリューアップ3件(19億円)の合計22件。分譲開発は引渡ゼロで評価減のみ(損失1.4億円)。セグメント利益は賃貸開発37.1億円、バリューアップ2.2億円、分譲開発マイナス1.4億円の合計。会社は次期に賃貸開発12件・バリューアップ6件の販売を予定。
建築請負(小川建設)
2025年10月に51%を取得した小川建設による建築工事の請負。契約残高は326億円。
| 数量施工する延べ床面積(万㎡・年間) | 価格1㎡あたり請負単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 1.7 | 45 | 78 | 8 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 60 | 362 | 31 |
取り方:今期に連結に入ったのは約3か月分(みなし取得日は2025年12月31日)で売上78億円。年間に直すと約4倍。延べ床面積と請負単価(約45万円/㎡)は開示がなく、売上を単価の推定で割った値。筋書きの数量は年間の面積で置く。
リスクと懸念
金利上昇と融資の引き締め
借入約220億円の多くは仕掛販売用不動産を担保にした短期の借入。借り換えのたびに金利が上がり、個人投資家向けの融資が細れば、売却そのものが難しくなる。2010年5月期には純損失284億円を出した前例がある。
財務制限条項
借入4件(合計24億円)に、純資産の維持や経常赤字の回避を求める条項が付く。市況が崩れて評価減が出れば、条項に触れて資産を急いで売る場面が起こりうる。
売却益型の利益の振れ
賃貸開発は売った年に利益が計上される。来期は19件から12件へ減る計画で、営業利益はほぼ横ばい、純利益は1割以上減る。件数が読めない事業に、高い倍率は払いにくい。
小川建設の取引条件と少数株主
51%を40億円で買い、利益の半分近くが少数株主に流れる。売り手が筆頭株主のシノケングループで、価格の検証が難しい。残り49%の株主が誰かも開示から確認できなかった。
建築の原価と人手
請負は、資材と労務費の上昇を契約価格に転嫁できないと利益が削られる。契約残高326億円の工事が、着工時の価格で受けたものなら、上昇分を吸収しきれない可能性がある。
AIエージェントによる代替
設計・施工管理など一部の事務は代替の影響を受けるが、土地の仕入れと現場の施工が中心で、影響は小さい。
今後の分かれ目
- 来期の賃貸開発の売却が計画の12件を上回り、営業利益が35億円を超える
- 中立の利益が低すぎることになり、価値が上方修正される。
- 個人投資家向けの不動産融資が引き締まる
- 開発の売却件数が細り、やや悲観・悲観の確率が上がる。
- 小川建設の契約残高が400億円を超え、利益率が10%を保つ
- 請負が利益の柱として定着し、強気側の確率が上がる。
- 財務制限条項に触れる、または自己資本比率が25%を割る
- 資産売却を迫られ、悲観の筋書きに近づく。
- シノケングループが保有比率を高める、または小川建設の残り株式を取得する
- 少数株主の取り分の整理や非上場化の可能性が出る。買付価格が本質価値を上回るかが焦点。
見ておくもの
- 賃貸開発・バリューアップの販売件数(来期は計12件と6件の予定)
- 建築請負の契約残高(前期末326億円)と利益率
- 個人投資家向け不動産融資の姿勢と、日銀の金利
- シノケングループとの関係(販売・資金・小川建設の残り株主)
- 財務制限条項付き借入の余裕(純資産の維持)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業ROEが資本コスト7.5%を下回る筋書きで上限を1÷k=約10.5倍とし、在庫の重さと件数に左右される利益の質に応じて、その7.6〜8.7割に置いた。今のPER・PBR、過去の倍率、同業の値付けは使っていない。中立の営業利益は来期の会社計画35.5億円を物価で伸ばした48億円で、計画を超える成長は置いていない。前期の純利益19億円をそのまま延ばさなかったのは、少数株主の取り分と利払いの増加を反映したため。本社費は物価で増やした。減価償却は小さな会社で数字を分けて置いていない。新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→15.84 倍・やや楽観 PER 8.7→14.23 倍・中立 PER 8→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.0% を足した(決まり v2)。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 7.50%。