結論
クレハは、家庭用ラップの老舗で、電池向けの樹脂 PVDF を成長の柱に育ててきた化学会社だ。筆者の結論は割高である。稼ぎが資本コストに届く道筋が、まだ見えないからだ。
いま利益を出しているのは、NEWクレラップなどの樹脂製品である。全社売上の約 2 割で、利益の半分近くを稼ぐ。ただ国内の家庭用ラップは人口減で細る市場で、守りの事業にすぎない。
成長を担うはずの PVDF は、2026 年 3 月期に 340 億円の減損を出した。米国の EV 補助金が消え、電池メーカーの発注が細った。中国勢の増産で値段も戻らない。新工場は完成したが、稼働は低いとみられる。
この期は 30 年ぶりの赤字になった。それでも減損を除いた営業利益は 145 億円ある。会社は大型蓄電池向けの需要で立て直す構えだ。
10 年後の中立は、純利益が 130 億円台、ROE は 7% 前後にとどまる。資本コストは 9% 台なので、簿価を超える値打ちは認めにくい。純負債は時価総額の 6 割に達し、失敗への余裕も小さい。
確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額を約 4 割近く 下回る。強気の筋書きが実現しても、今の値段を大きく超えるのは難しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を長く持ちたいかと問われれば、慎重になる。
理由は、稼ぎのうち株主が自由に使える分が小さいからだ。ラップとサービス事業は安定して稼ぐが、その利益は PVDF の設備の維持と償却に吸われてきた。減価償却は大きく、設備を更新する投資も要る。残るオーナー利益は、減損前の営業利益 145 億円よりずっと少ない。
堀の見立ては二つに割れる。クレラップは年月で磨かれたブランドで、持続性がある。PVDF は、投じた資本に見合う価格を中国勢が許さない可能性が高い。事業の半分に堀がなく、残りの半分は縮む市場にある。
経営の資本配分は、この数年で信頼を損なった。大型投資と自社株買いを同じ期に実行し、直後に大きな減損を出した。新しい中計は種まきの 3 年と位置づけ、目標の達成を先送りしている。結果が出るまで、評価に織り込めない。
安全域は薄い。簿価の 9 割近い値段を今の時価総額が付けているが、稼ぐ力は資本コストに届かない。簿価は稼ぎの裏づけがあってこそ価値になる。純負債が重く、悪い筋書きでは配当も守れなくなる。
一方で、ラップの安定した利益と、PVDF の償却負担が減損で軽くなった点は、下値を支える材料だ。割高の幅は大きいが、事業が消える会社ではない。
何で稼ぐ会社か
クレハは 5 つの事業で売上 1,617 億円(2026 年 3 月期)を立てている。利益の源は樹脂製品で、成長の期待は機能製品に集まる。
機能製品(売上 613 億円)は PVDF、PGA 樹脂、PPS 樹脂、炭素製品の寄せ集めだ。PVDF はリチウムイオン電池の電極をつなぐ樹脂で、いわき事業所と中国・常熟で作る。いわきに年 8,000 トンの増設を入れ、投資は約 750 億円に膨らんだ。PGA は、シェール掘削で坑井を仕切る部品に使う分解性の樹脂だ。PPS 樹脂は米国の合弁会社 Fortron が作り、持分法で利益を取り込む。
樹脂製品(367 億円)は NEWクレラップ、業務用ラップ、釣糸のシーガー、保存容器だ。ラップは国内で旭化成のサランラップと二強を組む。会社全体で最も利益率が高く、セグメント利益は 69 億円ある。
化学製品(295 億円)は、農業・園芸用の殺菌剤、慢性腎不全用剤のクレメジン、か性ソーダなどの工業薬品だ。農薬は会社が伸ばしたい分野だが、全体の利益は 14 億円と薄い。
建設関連(160 億円)は、いわき地区を中心にプラントや土木の工事を請け負う。その他関連(182 億円)は、産業廃棄物の処理、分析・検査、運送・倉庫、医療サービスだ。この 2 つで、利益は合わせて 41 億円になる。
この会社の収益は、守りの稼ぎ頭と、まだ稼げていない成長投資の二層に分かれている。減損前の営業利益は 145 億円で、PVDF と PGA は合計でほぼ収支ゼロか赤字だ。ここが黒字に変わるかどうかで、会社の形が決まる。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、事業ごとに濃さが違う。
一番強いのはクレラップだ。1960 年に国内で初めて家庭用ラップを出した老舗で、ブランドと酸素や水蒸気を通しにくい PVDC 樹脂の技術が支える。2022 年に 10〜35% の値上げを通した。値決めの力があると見てよい。ただ市場は人口とともに細る。堀はあるが、守る城そのものが小さくなっている。
PVDF は技術力のある樹脂だが、堀は広くない。電池向けは、ソルベイ、アルケマ、中国の Sino-Fluorine や上海華誼三愛富が同じ製品を作る。値段は原料に連動し、2023 年に急落した。中国の増産が続くかぎり、日本の素材メーカーが価格を決めることは難しい。
PGA は米国のシェール事業者向けに独自の技術を持つが、売上が 98 億円と小さく、赤字が続く。会社自身が 2026 年度に黒字化しなければ抜本的に見直すと言っている。
資本の効率は低い。過去 10 年の ROE は中央値で 6.8% にとどまり、資本コストを継続して超えた年はない。経営の見立ても外れた。前の中期計画は、特定の用途と地域への依存と市場の見通しの誤りで大幅に未達となった。2025 年には役員の不祥事も起き、会社は体制を強化している。
財務は自己資本比率 49% を保つが、純有利子負債は 899 億円、減損前の利益の 6 倍近い。ラップという安定した利益源を持つ点は評価できる。一方、新しい稼ぎ頭を立てるための投資は、これまで回収できていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の事業は、市場の性格がばらばらだ。業界の話は、事業ごとに分けて見るのがよい。
家庭用ラップは成熟市場だ。国内は約 500 億円で、クレラップとサランラップで 8 割を占める。人口が減るため、数量は 10 年で 1 割近く減ってもおかしくない。原料と物流の費用が上がるたびに値上げを通せる点だけが救いだ。
電池用 PVDF は、需要の中身が変わりつつある。EV 向けは、米国の補助金撤廃で回復が遅れている。代わりに大型蓄電池(ESS)向けのバインダー需要が、会社の見通しで年 16% 伸びる。ただ中国の電池は鉄とリンを使う LFP が主流で、ここでは安い中国製の PVDF が使われる。クレハが狙う高性能な三元系の電池は、欧米と韓国が主戦場だ。
PVDF は、技術が完成した汎用に近い領域でもある。業種共通の見方どおり、中国の過剰な生産能力が 10 年にわたり値段の天井を抑える。欧州の PFAS 規制も気がかりだ。フッ素樹脂の PVDF が対象に入れば、需要の形が変わる。
PGA はシェール坑井の数と仕上げ方法に左右される。米国の掘削が増減すると、そのまま販売個数が動く。競合は溶ける部品を作る米国の複数社だ。
農薬は、食料需要を背景に底堅い。ただ主力のメトコナゾールは BASF 向けの販売契約が 2027 年 6 月までで、更新の条件が利益を左右する。クレメジンは新薬の登場と薬価の引き下げで縮む市場だ。
化学業種全体は、構造改革の途上にある。コモディティ寄りの事業を縮め、機能材へ移る流れだ。クレハもこの流れの中にいるが、移る先の PVDF が、すでに汎用に近づいている。
資本政策と M&A
資本政策は、この数年で大きく揺れた。方針は配当をいくら出すかの目安で、DOE(自己資本に対する配当の割合)5% を基本にしている。2027 年 3 月期は、利益を超える配当を出す計画だ。
自社株買いは、2026 年 3 月期に 390 億円を実施した。一方で PVDF の増設に約 750 億円をかけ、有利子負債は 1 年で 382 億円増え 1,242 億円になった。投資と還元を借金で賄い、その直後に 365 億円の減損が出た。資本配分としては、順序が悪い。
新しい中期計画は、自社株買いを今のところ予定していない。保有する上場株 20 銘柄(187 億円)も、2030 年度までに連結純資産の 5% 程度へ減らす方針だ。売却代金が借金の返済に回れば、財務の余裕は少し戻る。
買収を主役にする会社ではない。M&A の大型案件は、見立てるかぎり出てこない。むしろ事業の見直しの方が現実的だ。PGA の撤退や、化学製品の再編があり得る。会社は 2027 年 3 月期の見通しに、事業ポートフォリオ見直しに伴う費用の可能性を織り込んだと説明している。
株主は明治安田生命、東京海上日動、みずほ銀行など金融機関が上位に並び、アクティビストの動きは確認できない。参考の機械推定では、10 年以内の買収・TOB の確率は 19% 程度とされる。純負債が重いぶん、買う側にも債務の重さが気になる材料になるはずだ。
10年の還元は、方針の株主資本配当率(DOE)5%どおり。中立で約900億円。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
PVDF の底は過ぎた。減損で設備の簿価が大きく下がり、減価償却の負担が軽くなる。ここから数量が戻れば、利益は急に改善する。
需要の中身も変わる。大型蓄電池向けのバインダーは年 16% で伸びると会社が見る。データセンターと再生可能エネルギーの普及で、電力を貯める需要は構造的に増える。EV の失速で空いた能力を、そのまま蓄電池向けに回せる。クレハの PVDF は欧米と韓国の電池メーカーに通った実績があり、品質で選ばれる。欧州で中国製に対する関税や規制が強まれば、追い風になる。
PGA は 2026 年 3 月期に売上が 57% 伸び、過去最高の本数を売った。シェール坑井の仕上げ方が分解性の部品に切り替わる流れは続く。中高温の坑井向けで実績が積み上がり、低温向けの新しい品種が加わる。ここが黒字化すれば、全社の稼ぎ方が変わる。
ライフサイエンスも伸びしろがある。農薬と医薬の売上を、100〜150 億円から 2035 年度に 400 億円へ引き上げる構想がある。殺菌剤の登録と顧客との関係は参入障壁になる。
ラップは値上げの力が残っている。数量が 1 割減っても、価格が物価並みに上がれば利益は保てる。以上が重なれば、純利益は 250 億円を超え、ROE は 11% 近くまで上がる。資本コストを超える稼ぎが出れば、時価総額は簿価を上回って評価される。
慎重な見方
PVDF の問題は需要の回復の遅さだけではない。構造として、中国の増産が値段を押さえ続ける。電池用の PVDF は、原料に連動して値段が動く商品だ。2023 年にも価格が急落し、高い原料の在庫が収益を傷めた。LFP の電池が広がり、水系の別の結着剤も登場している。
新工場は能力が足りないのではなく余っている。いわきとクレハ中国の能力は合わせて 1.9 万トンに迫るが、販売は筆者の推定で 1 万トンに届かない。減損を出しても、設備は残り、人と費用も残る。ここで需要が戻らなければ、もう一度の減損に進む。
欧州の PFAS 規制も、フッ素樹脂の需要を壊す可能性がある。規制が広がれば、電池以外の工業用途も制限を受ける。
PGA は黒字になっていない。会社自身が見直しの条件を示した事業で、シェールの掘削が減速すれば真っ先に影響を受ける。ライフサイエンスの構想も、クレメジンの縮小を新しい農薬で埋められるかが読めない。BASF との契約更新で条件が悪化すれば、農薬の利益も落ちる。
今の時価総額は簿価の約 9 割に付いているが、過去 10 年の ROE は 6.8%、資本コストに届いた年はない。ここから事業を直して資本コストを超える会社になる確率は低い。借金が 1,242 億円あり、配当を利益を超えて払う今の方針は長く続かない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。強気の根拠は、需要の中身が変わる見込みと減損後の軽さだが、いずれも利益が出てから評価すべきものだ。過去 10 年の稼ぎは資本コストに届かず、新しい工場は能力が余り、財務の余裕は小さい。そこで確率は悲観側に寄せた。やや悲観と悲観で合わせて 4 割を超え、楽観とやや楽観は 2 割台半ばにとどめた。ラップという安定した利益源があるため、最悪でも事業が消える形は取らず、悲観の床を高めに見積もっている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,483 円1,331 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,035 円778 億円)。 今の値に割り戻すと 2,894 円1,106 億円、今との差 −25.4%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,765 円3,351 億円 | 3,008 円1,150 億円 | +203.4% | +11.7% | 824 円315 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,841 円2,233 億円 | 2,616 円1,000 億円 | +118.0% | +8.1% | 1,522 円582 億円 |
| 中立 | 33% | 4,092 円1,564 億円 | 2,354 円900 億円 | +66.1% | +5.2% | 2,127 円813 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,295 円495 億円 | 1,700 円650 億円 | −22.8% | −2.6% | 809 円309 億円 |
| 悲観 | 15% | 785 円300 億円 | 785 円300 億円 | −59.5% | −8.7% | 235 円90 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,483 円1,331 億円 | 2,035 円778 億円 | +42.2% | +3.6% | 5,518 円2,109 億円 |
今の株価時価総額 3,880 円1,483 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 強気:蓄電池向けが立ち上がり、PVDF と PGA が黒字の柱になる 利益 255 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 8,765 円3,351 億円
大型蓄電池向けの PVDF が立ち上がり、いわきの新工場が稼働の大半を使うようになる。欧米・韓国の電池メーカーに通った品質が評価され、販売は今の 2 倍を超える。値段は中国勢に押さえられ、物価ほどは上がらない。それでも減価償却の軽くなった設備から、利益率は 14% まで上がる。
PGA はシェールの仕上げで分解性の部品が標準になり、販売個数が 2 倍を超える。赤字を脱して 1 割台の利益を出す。
ライフサイエンスでは新しい殺菌剤が登録を広げ、化学製品の利益率が改善する。ラップは数量が 1 割落ちても、値上げで利益を守る。
以上が重なり、営業利益は今の 2.7 倍近く、ROE は 11% 前後になる。資本コストを超える稼ぎが出る世界で、会社は借金を減らしながら増配できる。
- PVDF(フッ化ビニリデン樹脂。電池用バインダーと工業用):数量 18.0(電池用・工業用 PVDF の販売重量(千トン、推定))× 価格 340(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 612 億円・営業利益 86 億円。益率14.0%。単価は中国勢の圧力で物価ほど上がらない
- PGA(ポリグリコール酸)樹脂・加工品:数量 120(フラックプラグ向け販売数量(万個、推定))× 価格 26,000(1個あたり単価(円、名目))→ 売上 312 億円・営業利益 37 億円。益率12.0%。単価は競争で物価ほど上がらない
- その他の機能品(PPS 樹脂の持分法利益・炭素製品・球状活性炭など):数量 10.5(高付加価値品の販売重量(千トン、推定))× 価格 480(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 504 億円・営業利益 86 億円。益率17.0%
- 樹脂製品(NEWクレラップ・業務用フィルム・シーガー釣糸・食品容器):数量 24.0(出荷重量(千トン、推定))× 価格 200(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 480 億円・営業利益 89 億円。益率18.5%
- 化学製品(農薬・クレメジン・か性ソーダ・塩酸):数量 110(出荷重量(千トン、推定))× 価格 43(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 473 億円・営業利益 57 億円。益率12.0%
- 建設関連(土木・建築工事):数量 800(工事件数(件、推定))× 価格 27(1件あたり工事額(百万円、名目))→ 売上 216 億円・営業利益 21 億円。益率9.5%
- その他関連(産業廃棄物処理・分析検査・運送倉庫・医療サービス):数量 9.3(取扱件数(万件、推定))× 価格 28(1件あたり売上(万円、名目))→ 売上 256 億円・営業利益 36 億円。益率14.0%
倍率:事業の純利益 255 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.14 倍、時価総額 3,351 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:PVDF の ESS 需要・PGA の黒字化・ライフサイエンスの拡大がそろう筋書き。会社の構想が、ほぼ実現することを前提にした上の端なので、確率は 1 割に届かない 7% にとどめた。前の中計が大幅に外れた実績もある。
やや楽観 18% やや強気:PVDF は黒字に戻るが、中国勢の値下げで伸びは限られる 利益 185 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,841 円2,233 億円
PVDF は ESS 向けで数量が戻るが、中国勢との競争が続き値段は物価ほど上がらない。利益率は 10% まで回復し、全社の営業利益を押し上げる。
PGA は黒字になるが、シェール市況に左右される。ライフサイエンスは、会社の構想の半分ほどの規模になる。
ラップは成熟市場のままで、数量は緩やかに減る。値上げで利益を保つ。
結果として、営業利益は今の倍の 300 億円近くまで増える。ROE は 9% 前後で、資本コストにほぼ並ぶ。ただ利払いが増えるため、財務の余力は 10 年を通じて大きくは増えない。会社が掲げる 2035 年度の長期計画のうち、ROE 12% には届かず、途中の目標の達成にとどまる姿だ。
- PVDF(フッ化ビニリデン樹脂。電池用バインダーと工業用):数量 15.0(電池用・工業用 PVDF の販売重量(千トン、推定))× 価格 320(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 480 億円・営業利益 48 億円。益率10.0%。単価は中国勢の圧力で物価ほど上がらない
- PGA(ポリグリコール酸)樹脂・加工品:数量 100(フラックプラグ向け販売数量(万個、推定))× 価格 25,000(1個あたり単価(円、名目))→ 売上 250 億円・営業利益 23 億円。益率9.0%。単価は競争で物価ほど上がらない
- その他の機能品(PPS 樹脂の持分法利益・炭素製品・球状活性炭など):数量 10.0(高付加価値品の販売重量(千トン、推定))× 価格 465(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 465 億円・営業利益 74 億円。益率16.0%
- 樹脂製品(NEWクレラップ・業務用フィルム・シーガー釣糸・食品容器):数量 24.0(出荷重量(千トン、推定))× 価格 195(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 468 億円・営業利益 84 億円。益率18.0%
- 化学製品(農薬・クレメジン・か性ソーダ・塩酸):数量 106(出荷重量(千トン、推定))× 価格 40(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 424 億円・営業利益 38 億円。益率9.0%
- 建設関連(土木・建築工事):数量 800(工事件数(件、推定))× 価格 27(1件あたり工事額(百万円、名目))→ 売上 214 億円・営業利益 19 億円。益率9.0%
- その他関連(産業廃棄物処理・分析検査・運送倉庫・医療サービス):数量 9.1(取扱件数(万件、推定))× 価格 27(1件あたり売上(万円、名目))→ 売上 248 億円・営業利益 33 億円。益率13.5%
倍率:事業の純利益 185 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.07 倍、時価総額 2,233 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:PVDF が黒字に戻り、PGA も損益ゼロ以上になる、会社の中計に近い上振れ。会社の構想より控えめだが、中立よりは改善が大きい筋書きなので、2 割弱とした。
中立 33% 中立:ラップが守りを固め、電池材料は小さな黒字にとどまる 利益 133 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,092 円1,564 億円
PVDF は ESS 向けの数量が増える。中国勢との競争で単価は 10 年で 1.1 倍ほどにとどまり、物価の 1.34 倍には届かない。利益率は 6% で、全社の利益に大きくは寄与しない。
PGA は損益が小幅な黒字にとどまり、分解性部品の競争で単価も物価ほどは上がらない(10 年で 1.2 倍)。ライフサイエンスは構想の 4 割ほどの規模になる。その他の機能品と農薬は、物価並みに伸びる。
ラップは数量が緩やかに減るが、値上げで利益を維持する。建設・サービスも物価並みに伸びる。
営業利益は 220 億円前後で、今の約 1.5 倍になる。ただ借り換えで利払いが増え、純利益は 130 億円台にとどまる。ROE は 7% で、資本コストには届かない。配当は DOE 5% の目安を続ける。
- PVDF(フッ化ビニリデン樹脂。電池用バインダーと工業用):数量 12.5(電池用・工業用 PVDF の販売重量(千トン、推定))× 価格 300(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 375 億円・営業利益 23 億円。益率6.0%。単価は中国勢の圧力で物価ほど上がらない
- PGA(ポリグリコール酸)樹脂・加工品:数量 80.0(フラックプラグ向け販売数量(万個、推定))× 価格 23,500(1個あたり単価(円、名目))→ 売上 188 億円・営業利益 9 億円。益率5.0%。単価は競争で物価ほど上がらない
- その他の機能品(PPS 樹脂の持分法利益・炭素製品・球状活性炭など):数量 9.5(高付加価値品の販売重量(千トン、推定))× 価格 450(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 428 億円・営業利益 60 億円。益率14.0%
- 樹脂製品(NEWクレラップ・業務用フィルム・シーガー釣糸・食品容器):数量 23.5(出荷重量(千トン、推定))× 価格 191(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 449 億円・営業利益 76 億円。益率17.0%
- 化学製品(農薬・クレメジン・か性ソーダ・塩酸):数量 102(出荷重量(千トン、推定))× 価格 38(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 392 億円・営業利益 26 億円。益率6.5%
- 建設関連(土木・建築工事):数量 800(工事件数(件、推定))× 価格 27(1件あたり工事額(百万円、名目))→ 売上 212 億円・営業利益 18 億円。益率8.5%
- その他関連(産業廃棄物処理・分析検査・運送倉庫・医療サービス):数量 9.0(取扱件数(万件、推定))× 価格 27(1件あたり売上(万円、名目))→ 売上 241 億円・営業利益 31 億円。益率13.0%
倍率:事業の純利益 133 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,564 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:PVDF の黒字化は進むが、構想ほどは稼げないという最も現実的な筋書き。ラップの安定と電池材料の遅れが同時に続く。最大の確率とした。
やや悲観 27% やや弱気:PVDF の赤字が続き、PGA も整理に向かう 利益 55 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,295 円495 億円
PVDF は ESS 向けが伸びない。中国勢の安値に対抗できず、数量は今の水準を少し上回る程度で、値段は物価を大きく下回る。利益率は赤字のままになる。
PGA はシェールの掘削減速で販売が戻らず、会社は縮小か撤退に動く。クレメジンも新薬に押され、化学製品の利益は薄いままだ。
ラップとサービス事業がグループの稼ぎを支え続けるため、全体では黒字を保つ。ただ営業利益は 100 億円台前半にとどまる。
利払いが増える中で、純利益は 50 億円台に落ちる。ROE は 3% 台になる。配当は DOE の目安を引き下げ、財務の安全を優先する。
- PVDF(フッ化ビニリデン樹脂。電池用バインダーと工業用):数量 9.0(電池用・工業用 PVDF の販売重量(千トン、推定))× 価格 230(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 207 億円・営業利益 −4 億円。益率-2.0%。単価は中国勢の圧力で物価ほど上がらない
- PGA(ポリグリコール酸)樹脂・加工品:数量 40.0(フラックプラグ向け販売数量(万個、推定))× 価格 19,000(1個あたり単価(円、名目))→ 売上 76 億円・営業利益 −4 億円。益率-5.0%。単価は競争で物価ほど上がらない
- その他の機能品(PPS 樹脂の持分法利益・炭素製品・球状活性炭など):数量 8.5(高付加価値品の販売重量(千トン、推定))× 価格 420(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 357 億円・営業利益 39 億円。益率11.0%
- 樹脂製品(NEWクレラップ・業務用フィルム・シーガー釣糸・食品容器):数量 22.0(出荷重量(千トン、推定))× 価格 175(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 385 億円・営業利益 58 億円。益率15.0%
- 化学製品(農薬・クレメジン・か性ソーダ・塩酸):数量 98.0(出荷重量(千トン、推定))× 価格 34(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 333 億円・営業利益 10 億円。益率3.0%
- 建設関連(土木・建築工事):数量 780(工事件数(件、推定))× 価格 24(1件あたり工事額(百万円、名目))→ 売上 187 億円・営業利益 13 億円。益率7.0%
- その他関連(産業廃棄物処理・分析検査・運送倉庫・医療サービス):数量 8.8(取扱件数(万件、推定))× 価格 25(1件あたり売上(万円、名目))→ 売上 220 億円・営業利益 26 億円。益率12.0%
倍率:ROE 3.6% で資本コストに大きく届かない。稼ぐ力(純利益 ÷ k)の範囲で、PER 9.0 倍とした。純利益 55 億円のうち、赤字の PVDF と PGA の損失がラップの利益を削っている。
確率:PVDF の赤字が続き、PGA も縮小に向かう。前の中計が外れた実績に照らせば現実味の高い筋書きなので、3 割近い確率を置いた。
悲観 15% 弱気:PVDF が追加減損で行き詰まり、売れる事業を売って凌ぐ 利益 −25 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 785 円300 億円
PFAS 規制と中国勢の安値が重なり、PVDF は販売が今の 3 分の 2 に落ちて大きな赤字を続ける。追加の減損が出て、いわきの設備は事実上の遊休になる。
PGA は撤退し、クレメジンと農薬も縮む。ラップの利益は残るが、人口減で細る。
会社は自己資本の毀損を止めるため、配当を大幅に下げ、保有株や周辺事業を売る。配当の一部は、その売却代金で払う。それでも借金が重く、貸し手の求める条件は厳しくなる。
営業利益はごく小さく、利払いを払うと純利益は赤字になる。この筋書きの値打ちは、稼ぐ力ではなく、売れる事業の価値から借金を引いた残りで決まる。
- PVDF(フッ化ビニリデン樹脂。電池用バインダーと工業用):数量 5.0(電池用・工業用 PVDF の販売重量(千トン、推定))× 価格 150(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 75 億円・営業利益 −19 億円。益率-25.0%。単価は中国勢の圧力で物価ほど上がらない
- PGA(ポリグリコール酸)樹脂・加工品:数量 15.0(フラックプラグ向け販売数量(万個、推定))× 価格 17,000(1個あたり単価(円、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 −8 億円。益率-30.0%。単価は競争で物価ほど上がらない
- その他の機能品(PPS 樹脂の持分法利益・炭素製品・球状活性炭など):数量 7.0(高付加価値品の販売重量(千トン、推定))× 価格 380(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 266 億円・営業利益 16 億円。益率6.0%
- 樹脂製品(NEWクレラップ・業務用フィルム・シーガー釣糸・食品容器):数量 20.0(出荷重量(千トン、推定))× 価格 160(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 320 億円・営業利益 38 億円。益率12.0%
- 化学製品(農薬・クレメジン・か性ソーダ・塩酸):数量 92.0(出荷重量(千トン、推定))× 価格 30(1トンあたり平均単価(万円、名目))→ 売上 276 億円・営業利益 −6 億円。益率-2.0%
- 建設関連(土木・建築工事):数量 740(工事件数(件、推定))× 価格 21(1件あたり工事額(百万円、名目))→ 売上 155 億円・営業利益 8 億円。益率5.0%
- その他関連(産業廃棄物処理・分析検査・運送倉庫・医療サービス):数量 8.5(取扱件数(万件、推定))× 価格 22(1件あたり売上(万円、名目))→ 売上 187 億円・営業利益 17 億円。益率9.0%
倍率:赤字で稼ぐ力では値が付かない。売れる資産の税後から純負債を引いた約 300 億円に置き、今の自己資本 1,652 億円に対する PBR は 0.18 倍になる。営業利益が小さく EV ÷ 営業利益は 54 倍と意味を持たず、借金を引いた後の売却価値だけで見ている。
確率:PVDF の追加減損と財務の悪化が重なる筋書き。純負債が時価総額の 6 割あり、営業利益 ÷ 支払利息の余裕も小さいので、1 割台半ばの確率を置いた。悲観の確率は、資本コストの上乗せと重ねて二重に上げていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
PVDF(フッ化ビニリデン樹脂。電池用バインダーと工業用)
電池の電極をつなぐ樹脂。いわきと中国・常熟で生産し、欧米・韓国の電池メーカーが主な顧客。
| 数量電池用・工業用 PVDF の販売重量(千トン、推定) | 価格1トンあたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.5 | 267 | 200 | −10 |
| 10 年後 中立 | 12.5 | 300 | 375 | 23 |
取り方:会社は PVDF の売上を開示しないため、機能製品の売上 613 億円から PGA(98 億円)と PPS・炭素製品を引いた残りの約 200 億円を PVDF と推定した。いわきの現能力 6,000t、常熟 5,000t の稼働が低いことから販売を 7,500t とみて単価を割り戻した。営業利益は、減損前のセグメント利益 21 億円から PGA の赤字と他の機能品の利益を差し引いた推定で、棚卸評価減の戻入益を含む。
PGA(ポリグリコール酸)樹脂・加工品
シェール掘削で坑井を仕切るフラックプラグ用の分解性樹脂。米国のシェール事業者向け。
| 数量フラックプラグ向け販売数量(万個、推定) | 価格1個あたり単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 19,600 | 98 | −20 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 23,500 | 188 | 9 |
取り方:2026/03 期の PGA 売上 98 億円(前期比 +57%、会社開示)を、販売数量と単価に分けた推定値。個数は開示がなく、1 個あたり約 2 万円は加工品としてみた置き方。営業損益は会社が 2026 年度の黒字化を求めている水準(赤字)として推定。
その他の機能品(PPS 樹脂の持分法利益・炭素製品・球状活性炭など)
PPS 樹脂(米国合弁 Fortron を持分法で取り込む)、球状活性炭、炭素繊維断熱材など。
| 数量高付加価値品の販売重量(千トン、推定) | 価格1トンあたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.0 | 350 | 315 | 51 |
| 10 年後 中立 | 9.5 | 450 | 428 | 60 |
取り方:機能製品の売上 613 億円から PVDF 約 200 億円と PGA 98 億円を引いた約 315 億円。品目が混在するため販売重量と平均単価は推定。営業利益 51 億円は、機能製品のセグメント利益 21 億円から PVDF と PGA の赤字を戻して逆算したもので、PPS の持分法利益を含む。
樹脂製品(NEWクレラップ・業務用フィルム・シーガー釣糸・食品容器)
国内の家庭用ラップ首位級ブランドと、業務用ラップ・釣糸・保存容器。
| 数量出荷重量(千トン、推定) | 価格1トンあたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 147 | 367 | 69 |
| 10 年後 中立 | 23.5 | 191 | 449 | 76 |
取り方:2026/03 期の樹脂製品の売上 367 億円・セグメント利益 69 億円(会社開示)。品目別の重量は開示がなく、家庭用ラップ(国内約 500 億円市場の 35% を約 175 億円と推定)、業務用フィルム、釣糸、容器を合わせた重量を 2.5 万トンと推定して単価を割り戻した。
化学製品(農薬・クレメジン・か性ソーダ・塩酸)
農業・園芸用殺菌剤(メトコナゾールなど)、慢性腎不全用剤クレメジン、いわきの工業薬品。
| 数量出荷重量(千トン、推定) | 価格1トンあたり平均単価(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 30 | 295 | 14 |
| 10 年後 中立 | 102 | 38 | 392 | 26 |
取り方:2026/03 期の化学製品の売上 295 億円・セグメント利益 14 億円(会社開示)。か性ソーダなど安い基礎品の量が大半を占め、農薬・医薬が単価を押し上げる構成なので、10 万トン規模の平均単価として推定した。
建設関連(土木・建築工事)
クレハ系の工事会社が、いわき地区を中心にプラント・土木・建築工事を請け負う。
| 数量工事件数(件、推定) | 価格1件あたり工事額(百万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 20 | 160 | 15 |
| 10 年後 中立 | 800 | 27 | 212 | 18 |
取り方:2026/03 期の建設関連の売上 160 億円・セグメント利益 15 億円(会社開示)。件数と 1 件あたりの額は開示がなく、1 件約 2,000 万円として推定。
その他関連(産業廃棄物処理・分析検査・運送倉庫・医療サービス)
グループ内外から受ける処理・検査・運送・医療の周辺サービス。
| 数量取扱件数(万件、推定) | 価格1件あたり売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.1 | 20 | 182 | 26 |
| 10 年後 中立 | 9.0 | 27 | 241 | 31 |
取り方:2026/03 期のその他関連の売上 182 億円・セグメント利益 26 億円(会社開示)。取扱件数と単価は開示がなく、1 件約 20 万円として推定。
リスクと懸念
PVDF の需要回復の遅れと追加減損
いわきの新工場は能力が余り、販売が戻らなければ追加の減損と減価償却の重さが残る。米国の EV 補助金は撤廃され、電池メーカーの発注は先送りが続く。ESS 向けの立ち上がりが遅れると、会社が示す黒字化の道筋が崩れる。
中国勢の増産による価格の低迷
電池用 PVDF は原料に連動して値段が動く商品で、2023 年に急落した前例がある。Sino-Fluorine など中国勢が増産を続けると、値段の天井が下がり続ける。LFP の電池が広がり、より安価な品が主流になる点も重い。
欧州の PFAS 規制
フッ素樹脂の PVDF が規制の対象に入れば、電池以外の工業用途も制限を受ける。会社は主要リスクに挙げている。結論が出るまでの数年、顧客は調達先を見直し、需要の形が読めなくなる。
PGA の黒字化の失敗
シェール掘削の増減で販売個数が大きく動く。会社は 2026 年度に黒字化しなければ抜本的な見直しを検討するとしており、撤退の場合は設備の整理費用が出る。
BASF 向け農薬契約の更新
化学製品の利益の柱であるメトコナゾールの BASF 向けの契約は 2027 年 6 月までだ。更新の価格や数量が悪化すれば、ライフサイエンスの育成計画の出発点が崩れる。
財務の余裕の薄さと配当の持続性
純有利子負債は 899 億円で、減損前の営業利益の 6 倍近い。借り換えのたびに利払いが増える。DOE 5% の配当は、利益が出なければ自己資本を減らして払う形になり、続かなくなる可能性がある。
ラップ市場の縮小
国内の家庭用ラップは人口減で数量が緩やかに減る。サランラップとの価格競争や、プライベートブランドの攻勢が強まれば、守りの稼ぎ頭の利益率も下がる。
今後の分かれ目
- 2027 年度に PVDF の営業損益が黒字化し、稼働の上がる兆しが出たら
- 強気・やや強気の確率を上げる。黒字の中身が棚卸評価減の戻入などの一時要因でないかを確かめる。
- 大型蓄電池向けの PVDF の受注が、会社が示す年 16% の伸びを上回って決まったら
- 新工場の稼働が上がり、中立の PVDF の数量を引き上げる。値段の下落が続いていないかを併せて見る。
- 2026 年度に PGA が黒字化しないまま、会社が見直しを公表したら
- 機能製品の赤字が減る一方、整理費用が出る。やや弱気の確率を上げる。
- 欧州が PFAS 規制の対象に PVDF を含める方針を示したら
- PVDF の需要の形が崩れ、弱気の確率を上げる。工業用途の売上への影響も見る。
- メトコナゾールの BASF 向け契約が条件を改善して更新されたら
- 化学製品の利益が安定し、ライフサイエンスの構想が現実味を帯びる。
- 保有する上場株の売却益で、借入金を大きく減らしたら
- 財務の余力が戻り、悲観の確率を少し下げる。ただ稼ぐ力の改善にはならない。
見ておくもの
- PVDF の四半期の営業損益と、いわき新工場の稼働率
- 大型蓄電池(ESS)向けバインダーの受注と中国勢の価格
- PGA の営業損益と、2026 年度の黒字化の成否
- メトコナゾールの BASF 向け契約の更新条件
- 有利子負債の残高と、保有する上場株の売却の進捗
- 欧州の PFAS 規制の方針
倍率と資本コストの決め方
数量は実質、価格は物価 3% の名目で、7 つの事業ごとに積み上げた。PVDF の価格は中国勢の圧力を理由に物価の半分ほどの上昇にとどめ、PGA も同様に抑えた。資本コストは基本 7.5% に quality(循環 +0.5・値決め力 +0.25・借金 +0.75・寿命 +0.25 で +1.75%)を足した 9.25%。倍率は利益ベースの正当化 PER を上限に、強気を 9 割、やや強気を 85%、中立を 88% に置いた。悲観は赤字なので、売れる資産の税後から純負債を引いた額に置いた。今の株価・今の PER・過去の PBR の底は参照していない。形の変化として、新リース会計基準(2028/03 期から)でも、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。自己資本の流れは、2026/03 期の純損失に 365 億円の一度きりの減損が入っているため、net_start_oku に 2027/03 期の会社予想の純利益 75 億円を置いて起点にした。最後に今の時価総額と比べ、差は -37%。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。