結論
モーニングスターは、投資信託の情報、未公開企業のデータ、信用格付け、資産運用を束ねる金融情報会社である。独自データの強みは本物だが、席課金をAIが置き換えるため、現在の時価総額には安全域がなく、割高と判断する。2025年の売上は24.5億ドル、営業利益は5.3億ドル、純利益は3.7億ドルだった。信用格付けとPitchBookのデータには競争力がある一方、画面を人が操作する仕組みを守るだけでは、10年後の成長は保証されない。
2026年4〜6月期は売上が前年同期比9.6%増え、営業利益率も24.2%へ改善した。信用格付けが23.4%増と好調だった一方、DirectとPitchBookの利用席数はほぼ横ばいである。2月に約3.65億ドルで買収を完了したCRSPは、連動資産が3兆ドルを超える指数をもたらした。10月にはDirect AIを正式に投入したが、新しいAI機能の売上規模は開示されておらず、席数の減少を埋めると決めつけない。
10年後の中立では、格付けと指数が伸びても、利用席数とその単価の伸び悩みで純利益は4.8億ドルにとどまる。確率をかけた10年後の時価総額と正味還元を資本コスト8%で割り戻すと、現在価値は約43.9億ドルで、基準時価総額約85.0億ドルの約半分だ。事業がなくなるとの予想ではない。独自データの価値と、株主がいくら払ってよいかは別の問題なのである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10年後にも金融機関が投資信託を比較し、企業の信用力を測り、年金資産を管理する必要があることは疑いにくい。データを正確に整備して利用者の仕事へ埋め込む事業には、見えにくいが持続的な競争力がある。Morningstar Data、DBRS、CRSPはその条件に近い。情報を集める技術が進歩するほど、出所の明らかな正確なデータはむしろ大切になる。
しかし、情報を所有することと、その情報を見るための席を販売することは違う。AIエージェントが業務ソフトの画面を経由せずに投資情報を取得し、調査や報告書まで作るなら、顧客が必要とする席数は減る。Direct AIの投入や外部AIへのデータ提供は合理的な防衛策だが、それが有料契約の増加につながった金額は示されていない。誤って過去の増収率を将来へ伸ばすより、データと席の価値を分けておく方が株主に誠実である。
オーナー利益は会計上の純利益から顧客データの更新、製品開発、システム維持への投資を差し引いて考える。2025年には多額の買い戻しで借金が増え、自由現金収支を超えた還元は毎年続けられない。独自データへの再投資利回りが高くても、株価に対して高く買い戻せば長期株主の取り分は減る。事業は魅力的でも、不確実な席課金を含む全社に高い値を払うほどの安全域はない。
何で稼ぐ会社か
顧客が買うのは相場の見出しではなく、投資判断に使える比較可能なデータである。主力のMorningstar Dataは投資信託や株式の分類、格付け、保有銘柄、調査内容を金融機関へ提供し、データの範囲と利用用途に応じた契約料を受け取る。Morningstar Directは分析や報告書作成を支える席課金のソフトで、2025年末に約1.88万のライセンスを持つ。アドバイザー向けのWorkstationは225社を超える金融機関へ届き、約17万人の助言担当者が利用可能な契約網を持つ。
PitchBookは未公開企業の取引履歴、投資家、ファンド、企業価値を蓄積する。2025年末に約1.02万顧客と11.35万の利用者がおり、年間収入の大部分は利用席と企業契約による。独自の企業取材と情報整備には模倣費用がかかるが、検索画面を利用する人数とデータ自体の価値は分けて考えなければならない。信用格付け部門のMorningstar DBRSは発行体から格付料を受け取り、定期的な監視料も得る。格付け対象は4,000超の発行体と6万超の証券で、発行市場が好調な年ほど手数料が増える。
Morningstar Wealthはモデル運用や助言サービスを、Retirementは米国の確定拠出年金向け管理勘定や受託者サービスを提供する。2025年末の運用・助言資産は両部門で約3,780億ドルで、主として資産残高に報酬率を掛けて稼ぐ。このほかSustainalyticsがESG関連データを、Indexesが運用商品の基準指数を販売する。2026年にCRSPの指数を取得したことで、指数を提供する顧客の裾野は大きく広がった。ただし連動資産の多い大口顧客ほど料率は低いため、残高が何十倍になっても売上が同じ割合で伸びるわけではない。
優良さと弱いところ
最も深い堀は、長年蓄積した投資商品と未公開企業の独自データである。データの分類や履歴が顧客の報告書、商品設計、規制対応に入り込むほど、別の供給者へ切り替える費用が高くなる。2025年の年間収入更新率はMorningstar Dataが101%、Directが104%、PitchBookが103%であり、契約を維持した上で単価を上げる力が残っている。特に投資信託の評価方法とPitchBookの非公開取引履歴は、一般的な生成AIが無断で再現できる情報ではない。
その堀が全商品に及ぶわけではない。Directのライセンスは2025年に横ばいで、2026年上期にも人数はほとんど増えていない。PitchBookでも法人顧客の解約が増え、更新率は前年の108%から低下した。信用格付けは当局の登録、発行体との関係、投資家に認知された方法論が参入障壁になる。一方、退職資産管理は受託責任と記録管理会社との接続が効き、指数はCRSP買収で幅が広がったが、両方とも値下げ競争を受ける。
資本効率は良好だ。2025年の税引き後営業利益を自己資本と純負債の合計で割る簡便な投下資本利益率は約20%で、資本コスト8%を上回る。ただし買収によるのれん、2025年の大規模自社株買い、事業売却益が数字を動かしており、これをそのまま将来の増分利回りにはできない。新しい資本を向ける先は、格付け、独自データ、指数であり、席課金ソフトの延命に高額を投じるなら利益率は下がる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
金融情報・分析市場は拡大するが、顧客が払う相手は変わる。民間調査によると2025年の世界の金融市場データ支出は約492億ドルで、ブルームバーグ、LSEG、S&Pグローバル、ファクトセットなどの大手と競合する。ただし市場全体にはリアルタイム取引データも含まれるため、Morningstar Dataの狭い分野におけるシェアをこの数字で断定することはできない。未公開市場データでは、ブラックロック傘下のプレキンが2024年に約2.4億ドルの売上見込みだった。PitchBookの2025年売上6.7億ドルはこれを大きく上回るが、両者は商品範囲が異なる。
信用格付けの市場は比較的測りやすい。会社の推計する世界市場は2025年に約118億ドルで、Morningstar Creditの売上からみた取り分は約3%である。米国の発行済み格付け件数ではS&Pグローバルとムーディーズが合計約8割を占め、フィッチが続く。DBRSは第四の選択肢として、証券化商品やプライベートクレジットで存在感を高められるかが焦点になる。発行件数と格付単価を同時に増やせる余地はあるが、景気が悪化すれば新規発行は急減する。
米国の確定拠出年金資産は2025年末に約14.2兆ドルと大きく、Morningstar Retirementの受託・助言資産3,052億ドルはその約2%に相当する。ただし契約対象は市場全体とは一致せず、厳密なシェアではない。競合はフィデリティ、エデルマン・ファイナンシャル・エンジンズ、エンベストネットで、低コスト化と運用の内製化が続く。指数ではMSCI、FTSEラッセル、S&Pダウ・ジョーンズとの競争が厳しい。2026年のCRSP統合で連動資産は6月末に約3.6兆ドルへ跳ねたが、バンガードなど大口の低料率契約が収益の伸びを制限する。
資本政策と M&A
経営はデータと格付けへの買収を続ける一方、採算の悪いサービスから撤退してきた。PitchBookの取得、2019年のDBRS統合、2025年のLumonicとDealX、2026年2月のCRSP取得は、情報の幅と顧客の接点を増やす一連の動きである。CRSPの取得費用は約3.65億ドルで、既存の基準指数に加えて3兆ドル超の連動資産を持ち込んだ。ただし買収代金が将来の手数料収入と追加投資に見合うかは、まだ検証途上である。
2025年は自社株買いに約7.9億ドル、配当に約0.8億ドルを使った。同年の自由現金収支は約4.4億ドルにとどまり、還元を大きく上回る資金を投じたため純負債が増えた。2025年10月には2028年までの10億ドルの買い戻し枠を設定し、2026年上期には4億ドルを実行した。6月末時点の残枠は3億ドルである。2025年の株式報酬費用約0.6億ドルは本当の株主還元から差し引く。
創業者・会長の保有比率は2026年夏時点で約39%に達し、長期の視点と同時に、少数株主が資本配分を変えにくい構造をつくっている。会社は長期売上・利益について拘束力のある数値目標を示していない。今後の配当と買い戻しを自動的に過去最高水準へ延長せず、利益と買収資金に合わせた正味の還元額で考える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
データの正確さと履歴は、AIが普及するほど貴重になる。Morningstar Dataの収入更新率101%は顧客が契約を維持している証拠であり、財務データを生成AIに渡す側に回れば、画面利用が減っても採算を保てる。PitchBookは非公開企業の資金調達と売買を網羅し、独自の取材網を持つ。ブラックロックがプレキンを買収したこと自体、希少なデータ基盤の価値を示している。
DBRSは格付市場の3%程度しか占めず、金融危機後の発行体の選択肢拡大とプライベートクレジットを追い風にできる。2026年4〜6月期の信用格付け収入は23%伸びた。大手二社へ集中した市場で第三、第四の格付けを求める動きが続けば、発行件数と平均料金の両方が伸びる。運用商品の基準指数ではCRSP取得により数兆ドル規模の長期契約が加わり、バンガードとの関係も継続した。これらは席課金より長く残る収入である。
さらに、退職資産管理は受託者としての責任と規制対応が必要で、単なるチャット画面では代替できない。情報提供と運用管理の両方を持つことで顧客の意思決定に深く入れる。AIのデータ整備費用削減が現金利益へ転じ、再投資の効率が保てば、10年後には信用格付けと指数が利益の主役になり、純利益が10億ドルを超える筋道も残る。
慎重な見方
画面で投資情報を調べる行為の対価は、AIエージェントの普及で薄れる。会社はDirectを席単位、PitchBookも主として席単位で売ってきた。2025年も2026年上期も席数がほぼ伸びていないのに、AI時代の成長率を過去から延長するのは危険である。解約を単価の値上げで埋める方法には限界があり、企業が一つの代理人に複数のデータ源をつなげれば、個別の操作画面が不要になる。
独自データの価値も保証されてはいない。ブルームバーグ、LSEG、ファクトセット、S&Pグローバルは既に広い顧客接点を持ち、AI向けデータ供給で競う。プライベート市場ではプレキンを買ったブラックロックが運用ソフトとデータを一体化し、PitchBookの利用席を減らすかもしれない。ESG情報の需要は政策によって変わり、Sustainalyticsの更新率93%は既に弱い。
格付け市場は大手二社が強く、DBRSの成長は低いシェアからの挑戦に過ぎない。2026年の発行市場の好調も循環の山であり、10年後も高い伸びが続くとは限らない。CRSPで連動資産は急増したが、低い手数料を取る大口顧客に依存する。さらに2025年は自由現金収支以上の自社株買いを行い、純負債が増えた。資産のブランド価値を守るには再投資が要るため、会計利益を丸ごと株主へ戻せるわけではない。
どちらに重みを置いたか
独自データと格付けの持続性は高く評価する。しかし現在のライセンス収入の相当部分は席課金で、AIに置き換わる経路が具体的である。2026年10月のDirect AI投入は必要な施策だが、その収益化はまだ立証されていない。やや悲観と悲観の確率を合わせて42%とし、楽観側の28%より厚くした。AIによる席数の縮小は数量と長期成長率に入れ、資本コストの寿命や確率に同じ危険を重ねてはいない。仮に長期の事業存続を信じても、現在の値段には十分な安全域がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 158.39 ドル60 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 62.70 ドル24 億ドル)。 今の値に割り戻すと 116.04 ドル44 億ドル、今との差 −48.7%、 期待の年率 −0.3%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 399.26 ドル151 億ドル | 119.05 ドル45 億ドル | +129.1% | +10.1% | 46.65 ドル18 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 286.62 ドル108 億ドル | 92.59 ドル35 億ドル | +67.7% | +6.2% | 72.05 ドル27 億ドル |
| 中立 | 30% | 178.40 ドル67 億ドル | 68.78 ドル26 億ドル | +9.3% | +1.0% | 74.15 ドル28 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 35.98 ドル14 億ドル | 37.04 ドル14 億ドル | −67.7% | −13.3% | 18.25 ドル7 億ドル |
| 悲観 | 17% | 32.28 ドル12 億ドル | 26.46 ドル10 億ドル | −74.0% | −15.1% | 9.98 ドル4 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 158.39 ドル60 億ドル | 62.70 ドル24 億ドル | −2.3% | −0.3% | 221.09 ドル84 億ドル |
今の株価時価総額 226.19 ドル85 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:格付けと独自データが利益の主役になる 利益 10 億ドル · PER 14.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 399.26 ドル151 億ドル
2035年末には、一般的な情報検索がAIに置き換わっても、モーニングスターのデータの信頼性が金融機関の仕組みに残る。DirectとPitchBookの席数は現在水準を守るにとどめ、AIの便利さを理由に席を増やすとは考えない。独自データの利用範囲は広がり、解約を抑えた契約更新が続く。プレキンと競ってもPitchBookの未公開取引履歴の深さは失われない。
信用格付けは世界の発行市場が広がる中、DBRSが米国の証券化商品と私募債でシェアを奪う。格付証券の換算対象は13.2万件となり、部門売上は約11.7億ドルへ増える。CRSP買収で指数の採用先が拡大し、連動資産の増加が低い報酬率を補う。米国の退職資産管理も法的な受託責任を強みに残高を増やし、利益率を高める。
大きな買収失敗はなく、研究投資とデータ更新を維持しながら本社費用の増加を抑える。10年のGAAP純利益の累計は約69.2億ドルで、株式報酬を引いた正味還元は45億ドルとなる。期末自己資本は約36.4億ドル、純利益は約10.1億ドルに届く。
- Morningstar Data(独自データ・基盤):数量 100(契約されたデータ用途の実質指数(2025年=100))× 価格 0.06(1用途指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 3 億ドル。独自データを維持、販売範囲は拡大
- Morningstar Direct(席課金):数量 18,780(有料ライセンス席数)× 価格 18(1席の年間ライセンス料(千ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 2 億ドル。席数は現状を維持
- アドバイザー向け業務ソフト:数量 225(導入金融機関の契約相当社数)× 価格 482(1社あたり年間料金(千ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。大手への既存契約が残る
- PitchBook(席課金):数量 113,451(有料ライセンス席数)× 価格 5.45(1席の年間料金(千ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル。中核用途が残り席数維持
- PitchBook(包括・直接データ):数量 100(包括契約・API利用範囲の実質指数(2025年=100))× 価格 0.02(契約指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。API契約は堅調
- Morningstar Credit(信用格付):数量 132,000(格付け対象の証券数(社債等のストック、件))× 価格 8.86(1証券当たり年間売上換算(千ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 5 億ドル。格付対象が拡大し高単価化
- Morningstar Wealth(資産連動):数量 1,347(運用・助言資産の2025年実質ドル換算残高(億ドル))× 価格 26(運用・助言資産に対する年間報酬(bp))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。資産流入とモデル採用
- Morningstar Wealth(ライセンス・媒体):数量 95.0(会員・ソフト契約・媒体枠の実質複合指数(2025年=100))× 価格 0.01(複合契約指数あたり年間売上(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。有料会員・広告を維持
- Morningstar Retirement:数量 5,799(2025年ドル実質換算の運用・助言資産(億ドル))× 価格 6.31(資産残高に対する平均報酬(bp))→ 売上 4 億ドル・営業利益 2 億ドル。法的受託責任が堀
- Sustainalytics(ESGデータ):数量 100(データ利用契約の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(1指数単位の年間料金(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。法対応の新需要
- Morningstar Indexes:数量 350(実効指数ライセンス・連動資産の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(指数ライセンス指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 2 億ドル。CRSP買収をてこに販路拡大
倍率:資本コストk8.0%、10年後ROE27.74%、通常の堀の残存率1/2でRONIC17.87%、長期g2.0%(独自データ・格付の拡大と席型の縮小の加重)で正当化翌期利益PERは約14.80倍。10年末利益への換算で1.02倍し上限約15.10倍。AIエージェント代替による縮みは売上とgに反映済みのため、その99%の14.947倍を用いる。GAAP純利益に償却や株式報酬を足し戻していない。
確率:信用格付けとCRSPの収益化が進み、席課金がAI時代でも横ばいを守る展開である。実績のない新AI製品の急成長は前提に含めず、成立の条件が多いので9%とする。
やや楽観 19% やや楽観:データを守り信用格付けが拡大 利益 7 億ドル · PER 14.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 286.62 ドル108 億ドル
画面の利用席は減るが、強い顧客ほどMorningstarの原データを使い続ける。Directのライセンスは2025年比で約1割減り、PitchBookの席も同程度減る。ただし調査と規制報告に用いるデータの契約は維持され、独自データの料金は名目で引き上げられる。AIのために生じるデータ整理費の削減は、研究体制を壊さずに利益率へつながる。
信用格付けはフィッチや大手二社に及ばないものの、社債と証券化商品の発行市場に乗って換算対象を10.8万件へ広げる。CRSPの指数顧客との関係は続き、運用資産の実質増加が資産連動収入を支える。退職資産管理ではフィデリティなどと競いながら、受託者サービスの採用を増やす。
格付けと退職資産管理の改善が、PitchBookとDirectの席数減を上回る。大きな増資や新たな巨額買収を伴わず、10年間の純利益累計は約55.8億ドルとなる。そのうち35億ドルを正味で返し、期末純利益は約7.4億ドルを確保する。
- Morningstar Data(独自データ・基盤):数量 98.0(契約されたデータ用途の実質指数(2025年=100))× 価格 0.06(1用途指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 3 億ドル。データ配信は堅調
- Morningstar Direct(席課金):数量 16,902(有料ライセンス席数)× 価格 18(1席の年間ライセンス料(千ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。席数0.9、上位機能へ単価改善
- アドバイザー向け業務ソフト:数量 203(導入金融機関の契約相当社数)× 価格 478(1社あたり年間料金(千ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。契約相当数0.9
- PitchBook(席課金):数量 102,106(有料ライセンス席数)× 価格 5.45(1席の年間料金(千ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル。席数0.9、価格は微増
- PitchBook(包括・直接データ):数量 100(包括契約・API利用範囲の実質指数(2025年=100))× 価格 0.02(契約指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。独自DBの配信を維持
- Morningstar Credit(信用格付):数量 108,000(格付け対象の証券数(社債等のストック、件))× 価格 8.27(1証券当たり年間売上換算(千ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 3 億ドル。社債・私募信用を獲得
- Morningstar Wealth(資産連動):数量 1,201(運用・助言資産の2025年実質ドル換算残高(億ドル))× 価格 25(運用・助言資産に対する年間報酬(bp))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。資産増と緩やかな単価改善
- Morningstar Wealth(ライセンス・媒体):数量 85.0(会員・ソフト契約・媒体枠の実質複合指数(2025年=100))× 価格 0.01(複合契約指数あたり年間売上(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。有料サービスの縮小は限定
- Morningstar Retirement:数量 4,883(2025年ドル実質換算の運用・助言資産(億ドル))× 価格 5.95(資産残高に対する平均報酬(bp))→ 売上 3 億ドル・営業利益 2 億ドル。企業型年金で採用拡大
- Sustainalytics(ESGデータ):数量 95.0(データ利用契約の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(1指数単位の年間料金(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。政策対応を継続
- Morningstar Indexes:数量 280(実効指数ライセンス・連動資産の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(指数ライセンス指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。CRSPと新商品の統合が進む
倍率:k8.0%、ROE22.48%、残存率1/2でRONIC15.24%、g2.0%とすると正当化翌期利益PERは約14.48倍、10年末利益に対する上限は14.77倍。席の減少を織り込んだGAAP純利益を用い、上限の99%に当たる14.621倍。
確率:独自データと信用格付けが席数減を上回ることは十分ありうるが、PitchBook法人向けの解約増とAI製品の収益化未証明を踏まえ19%とする。
中立 30% 中立:席課金が縮み、格付けと指数が補う 利益 5 億ドル · PER 14.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 178.40 ドル67 億ドル
人が端末を操作する席課金は、AIエージェントの普及に伴い小さくなる。Directは2025年の約1.88万席から約1.50万席へ、PitchBookは約11.35万席から約8.85万席へ減る。残る利用者の単価は10年で約1.1倍にとどまる。一方、投資信託の元データは正確な履歴と規制用途が必要なため、契約利用範囲の縮小は軽く、価格上昇を維持できる。
信用格付けではDBRSがプライベートクレジットと証券化商品の地位を保ち、格付証券の換算対象は約9.9万件となる。2026年に成立したCRSP買収で指数事業の顧客基盤は広がるが、バンガードなど大口の低い報酬率で規模ほどは稼げない。退職資産管理は米国の企業年金の成長を取り込み、投資家向け媒体とESGの不振を補う。
全社の売上は約31.5億ドルとなり、2025年より増えても営業利益率は約21%にとどまる。GAAP純利益は約4.8億ドルで、10年の累計純利益42.6億ドルから正味26億ドルを株主へ返す。自己資本は約28.8億ドルとなり、事業が続くことと高い投資利回りが同じではないと示す筋書きである。
- Morningstar Data(独自データ・基盤):数量 96.0(契約されたデータ用途の実質指数(2025年=100))× 価格 0.06(1用途指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 2 億ドル。データ契約の実質数量0.96、単価1.28倍
- Morningstar Direct(席課金):数量 15,024(有料ライセンス席数)× 価格 18(1席の年間ライセンス料(千ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。席数0.8、AI代替で実質単価1.1倍止まり
- アドバイザー向け業務ソフト:数量 176(導入金融機関の契約相当社数)× 価格 462(1社あたり年間料金(千ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。契約相当数0.78、AI代替
- PitchBook(席課金):数量 88,492(有料ライセンス席数)× 価格 5.21(1席の年間料金(千ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。席数0.78、AI代替で減少
- PitchBook(包括・直接データ):数量 95.0(包括契約・API利用範囲の実質指数(2025年=100))× 価格 0.02(契約指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。独自データ需要は残り数量0.95
- Morningstar Credit(信用格付):数量 99,000(格付け対象の証券数(社債等のストック、件))× 価格 7.68(1証券当たり年間売上換算(千ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 3 億ドル。発行市場の実質拡大とシェア増
- Morningstar Wealth(資産連動):数量 983(運用・助言資産の2025年実質ドル換算残高(億ドル))× 価格 24(運用・助言資産に対する年間報酬(bp))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質運用資産1.35倍、報酬率実質低下
- Morningstar Wealth(ライセンス・媒体):数量 75.0(会員・ソフト契約・媒体枠の実質複合指数(2025年=100))× 価格 0.01(複合契約指数あたり年間売上(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。ソフト終了とAIによる媒体縮小
- Morningstar Retirement:数量 4,273(2025年ドル実質換算の運用・助言資産(億ドル))× 価格 5.64(資産残高に対する平均報酬(bp))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質受託資産1.4倍、単価上昇は物価未満
- Sustainalytics(ESGデータ):数量 85.0(データ利用契約の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(1指数単位の年間料金(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。ESG縮小を承知で残存契約
- Morningstar Indexes:数量 200(実効指数ライセンス・連動資産の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(指数ライセンス指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。CRSP買収後の広がりを含む実効契約2倍
倍率:k8.0%、期末自己資本28.835億ドルに対しGAAP純利益4.785億ドルでROE16.59%。残存率1/2のRONICは12.30%。市場実質成長、シェア横ばい、AIによる席課金の目減りを合成した長期g2.0%で正当化翌期利益PERは13.95倍、期末利益への換算後の上限は14.24倍。上限の99%の14.093倍とし、他社や現在の市場倍率は根拠にしない。
確率:FY2025の更新率101〜104%という堀を尊重しつつ、2026年までの席数停滞と新事業の不確実性を組み合わせた中心の筋書きで、30%とする。
やや悲観 25% やや悲観:画面の価値が薄れ利益率が低下 利益 1 億ドル · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 35.98 ドル14 億ドル
大手顧客が自社AIや汎用エージェントをデータ基盤につなぎ、分析席をまとめる。Directの席数は2025年比で約4割減り、PitchBookも約4.5割減る。料金を大幅に上げれば契約そのものが失われるため、席の平均価格はほぼ横ばいになる。プレキンを取り込んだブラックロックやファクトセットが外部AIの販路を奪い、独自データも利用範囲を減らす。
格付市場は不況と発行延期に見舞われ、DBRSの換算対象は6.6万件しか残らない。金融機関は運用ソフトを内製化し、退職資産管理でも大口契約の価格を引き下げる。CRSPの連動資産は維持するものの、新しい指数事業の収益力は買収時の期待に届かず、ESGデータにも追加の解約が出る。
固定費と研究費が残るため、売上が約21.4億ドルでも営業利益は約1.8億ドルに落ちる。10年の純利益累計は約24.7億ドル、正味還元は14億ドルまで絞られる。期末自己資本は約22.9億ドルとなるが、自己資本利益率は約5%に下がる。
- Morningstar Data(独自データ・基盤):数量 88.0(契約されたデータ用途の実質指数(2025年=100))× 価格 0.05(1用途指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 2 億ドル。更新契約減と値引き
- Morningstar Direct(席課金):数量 11,268(有料ライセンス席数)× 価格 16(1席の年間ライセンス料(千ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。席数0.6、統合と画面離れ
- アドバイザー向け業務ソフト:数量 124(導入金融機関の契約相当社数)× 価格 420(1社あたり年間料金(千ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。顧客の内製・切替
- PitchBook(席課金):数量 62,398(有料ライセンス席数)× 価格 4.74(1席の年間料金(千ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。小規模法人の解約
- PitchBook(包括・直接データ):数量 85.0(包括契約・API利用範囲の実質指数(2025年=100))× 価格 0.02(契約指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。包括契約の予算削減
- Morningstar Credit(信用格付):数量 66,000(格付け対象の証券数(社債等のストック、件))× 価格 6.50(1証券当たり年間売上換算(千ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。発行市場が停滞
- Morningstar Wealth(資産連動):数量 801(運用・助言資産の2025年実質ドル換算残高(億ドル))× 価格 22(運用・助言資産に対する年間報酬(bp))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。競合の低価格モデルが優勢
- Morningstar Wealth(ライセンス・媒体):数量 50.0(会員・ソフト契約・媒体枠の実質複合指数(2025年=100))× 価格 0.01(複合契約指数あたり年間売上(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。検索流入・業務ソフトが減少
- Morningstar Retirement:数量 3,357(2025年ドル実質換算の運用・助言資産(億ドル))× 価格 4.73(資産残高に対する平均報酬(bp))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。運用会社の内製化
- Sustainalytics(ESGデータ):数量 60.0(データ利用契約の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(1指数単位の年間料金(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。ESGの優先順位下落
- Morningstar Indexes:数量 170(実効指数ライセンス・連動資産の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(指数ライセンス指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。CRSPの低手数料を吸収しきれず
倍率:期末ROEは約5.22%でk8.0%に届かず、将来再投資の超過利益がない。従って上限は1/k=12.5倍であり、事業基盤の劣化と固定費負担を反映して11.4倍とする。中立の倍率より低く、営業利益に対する純利益の比率も悪化させている。
確率:2025年から席数は横ばいで、法人向けPitchBookは解約が高い。AIエージェント代替による契約集約が進み、値上げが鈍る展開を25%とする。
悲観 17% 悲観:席課金が崩れ、事業の再建に向かう 利益 0 億ドル · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 32.28 ドル12 億ドル
AIエージェントが調査、企業比較、報告書の作成まで引き受け、独立した情報端末の利用が急減する。Directの席数は現在の35%、PitchBookも35%まで落ち、単価も下がる。顧客のデータ取得経路を競合の大規模なAI基盤が握り、Morningstar Dataのデータ契約も減る。Sustainalyticsでは規制対応需要が弱まり、研究費に見合う受注がなくなる。
格付市場は競争と発行縮小が重なり、DBRSは二大格付会社やフィッチからシェアを奪えない。CRSPは低料率の大口契約を維持するだけで新規開拓ができず、退職資産運用も競合の安いモデルに顧客を失う。2028〜2031年には事業整理費と減損が発生し、すでに始まった自社株買いは停止する。管理機能と人件費を大幅に削っても営業利益はほぼ消える。
売上は約10.2億ドルに縮み、最終年の純利益は約0.1億ドルとなる。途中の再編損失を含む10年の純利益累計は13億ドル、初期に行った正味還元は10億ドルにとどまり、期末自己資本は約15.2億ドルとなる。もはや成長企業として値付けできず、今の自己資本12.2億ドルを売却可能な事業資産と比較する保守的な床だけが下支えになる。
- Morningstar Data(独自データ・基盤):数量 65.0(契約されたデータ用途の実質指数(2025年=100))× 価格 0.04(1用途指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。基礎データの独自性も損なう
- Morningstar Direct(席課金):数量 6,573(有料ライセンス席数)× 価格 12(1席の年間ライセンス料(千ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。席数0.35、機能が代理人に置換
- アドバイザー向け業務ソフト:数量 56.3(導入金融機関の契約相当社数)× 価格 315(1社あたり年間料金(千ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。顧客が代理人経由に移行
- PitchBook(席課金):数量 39,708(有料ライセンス席数)× 価格 3.32(1席の年間料金(千ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。席の大半を他社AIに奪われる
- PitchBook(包括・直接データ):数量 50.0(包括契約・API利用範囲の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(契約指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。企業データのコモディティー化
- Morningstar Credit(信用格付):数量 36,000(格付け対象の証券数(社債等のストック、件))× 価格 5.32(1証券当たり年間売上換算(千ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。格付けの信用・競争力を失う
- Morningstar Wealth(資産連動):数量 473(運用・助言資産の2025年実質ドル換算残高(億ドル))× 価格 20(運用・助言資産に対する年間報酬(bp))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。顧客流出と手数料競争
- Morningstar Wealth(ライセンス・媒体):数量 25.0(会員・ソフト契約・媒体枠の実質複合指数(2025年=100))× 価格 0.01(複合契約指数あたり年間売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。広告検索が崩れ、Office終了
- Morningstar Retirement:数量 2,289(2025年ドル実質換算の運用・助言資産(億ドル))× 価格 4.06(資産残高に対する平均報酬(bp))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。低価格の代替管理が浸透
- Sustainalytics(ESGデータ):数量 35.0(データ利用契約の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(1指数単位の年間料金(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。法規制緩和と契約大量解約
- Morningstar Indexes:数量 100(実効指数ライセンス・連動資産の実質指数(2025年=100))× 価格 0.01(指数ライセンス指数あたり年間料金(億ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。大手の手数料圧力で伸びない
倍率:最終年の利益0.128億ドルに永続倍率を掛けても資産売却価値を十分表さない。成長で積み上げた自己資本15.2億ドルに床の倍率を掛けず、2025年末の自己資本12.2億ドルを基準にPBR1.0倍とする。信用格付け登録、独自データ、指数の譲渡可能性を検討する床であり、過去の市場PBRから逆算した値ではない。
確率:信用格付け・指数まで競争力を失う重い筋書きであり、一般的な景気後退より厳しい。データ資産は残るため過半とはせず、構造的な破壊の可能性を17%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
Morningstar Data(独自データ・基盤)
投信・株式・債券の履歴、分類、評価、独立調査をライセンス提供する。Direct Platformの小額の周辺サービスも含む。
| 数量契約されたデータ用途の実質指数(2025年=100) | 価格1用途指数あたり年間料金(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.04 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 96.0 | 0.06 | 5 | 2 |
取り方:2025年のMorningstar Dataは開示の成長率から約4.215億ドルと復元し、Direct Platformのその他約0.157億ドルを加え4.372億ドルとする。実契約数と市場シェアは未公表なのでデータ利用用途を2025年=100の指数で表す。会社が示す更新率101%、長期の独自履歴、顧客の規制報告・商品設計への組込みの三点を「記録の正本」の証拠と判断。AIエージェント代替を受けても中立数量0.96・価格1.28、gは2%程度。
Morningstar Direct(席課金)
資産運用会社が情報検索、銘柄比較、ポートフォリオ分析、報告書を作る席課金のソフト。
| 数量有料ライセンス席数 | 価格1席の年間ライセンス料(千ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 18,780 | 16 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 15,024 | 18 | 3 | 1 |
取り方:2025年末の会社公表18,780席と、2025年のMorningstar Direct増収額1,930万ドル・前年比6.9%からの売上約2.99億ドルで割り戻した平均単価。2026年6月末は18,688席と前年より0.6%減。操作画面・席課金なのでAIエージェント代替の型は席。中立10年数量0.80、単価1.10。直接提供するデータの価値はdataへ分ける。
アドバイザー向け業務ソフト
金融アドバイザー向けの業務画面。販売は大手機関の包括契約が中心。
| 数量導入金融機関の契約相当社数 | 価格1社あたり年間料金(千ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 225 | 420 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 176 | 462 | 1 | 0 |
取り方:2025年のWorkstation対象は225超の金融機関・約17万人の助言者。Direct Platform売上8.306億ドルからData4.372・Direct2.99を差し引いた0.944億ドルを包括契約225社へ配賦した推定で、全社員の席単価ではない。AIエージェント代替の型は画面中心のSaaSとみて、中立数量0.78・価格1.10。
PitchBook(席課金)
非公開企業データのPitchBook画面を個人・担当者へ提供する。
| 数量有料ライセンス席数 | 価格1席の年間料金(千ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 113,451 | 4.74 | 5 | 2 |
| 10 年後 中立 | 88,492 | 5.21 | 5 | 1 |
取り方:2025年末の113,451席とPitchBook売上6.718億ドルを用いる。2024年末時点の年間契約額構成が席契約約80%、包括契約約20%で大きく変わっていないという会社回答を2025年へ仮に適用し、5.3744億ドルを席に配賦した推定。座席数は2025年横ばい、AIエージェント代替の席型として中立数量0.78・価格1.10、長期g0%以下。
PitchBook(包括・直接データ)
非公開企業の独自DBを企業包括契約とAPI・データフィードで提供する。
| 数量包括契約・API利用範囲の実質指数(2025年=100) | 価格契約指数あたり年間料金(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 0.02 | 2 | 1 |
取り方:PitchBook売上の残る20%を包括・直接データ契約の代理値1.3436億ドルとして分離。ただし包括契約は席の大量契約も含むため、全額が純粋なデータ販売とは限らない。更新率103%・独自企業取材の蓄積・企業システムへのAPI統合を証拠とし、この部分だけAIエージェント代替に耐える記録の正本型。中立数量0.95・価格1.28。
Morningstar Credit(信用格付)
DBRSによる社債・資産担保証券・私募債の格付け、監視、調査。
| 数量格付け対象の証券数(社債等のストック、件) | 価格1証券当たり年間売上換算(千ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60,000 | 5.91 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 99,000 | 7.68 | 8 | 3 |
取り方:2025年末の会社公表の格付証券6万件と売上3.544億ドルから年間平均約5.91千ドルを算出。実際の収入は新規発行に伴う一時金3.337億ドルが中心なので、発行件数を継続格付証券ストックで代理する推定であり、件数と単価の因果は不確か。会社推計の世界格付市場118億ドルに対する売上シェアは約3.0%。AIエージェント代替の席課金ではなく、規制と信用が必要な役務。
Morningstar Wealth(資産連動)
モデル運用と国際運用プラットフォームの資産連動収入。
| 数量運用・助言資産の2025年実質ドル換算残高(億ドル) | 価格運用・助言資産に対する年間報酬(bp) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 728 | 20 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 983 | 24 | 2 | 0 |
取り方:2025年末のInvestment Management AUMA728億ドルとWealthの資産連動売上1.425億ドルから19.57bp。数量は2025年ドル価値に直した実質の顧客資産で、名目の市場価格上昇は価格にのみ反映し二重計上しない。2026年には一部顧客喪失でAUMAが減った。資産連動でありAIエージェント代替の席型には当たらず、手数料低下を価格の実質マイナスに含める。
Morningstar Wealth(ライセンス・媒体)
個人投資家会員、退役したOfficeソフト、金融機関向けライセンス、媒体広告。
| 数量会員・ソフト契約・媒体枠の実質複合指数(2025年=100) | 価格複合契約指数あたり年間売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 75.0 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:Wealthの2025年ライセンス0.740億ドルと取引・広告0.349億ドルを合算。会員は約10.5万人だが他のソフト・媒体枠の件数が未公表なので、100の指数とした。Officeは2026年初に終了、媒体への検索流入はAI要約で弱まる。AIエージェント代替の席・媒体型として中立数量0.75・価格1.08。
Morningstar Retirement
米国年金向け運用管理勘定、受託者サービス、モデル運用。
| 数量2025年ドル実質換算の運用・助言資産(億ドル) | 価格資産残高に対する平均報酬(bp) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,052 | 4.51 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4,273 | 5.64 | 2 | 1 |
取り方:2025年末のAUMA3052億ドル、売上1.376億ドルを割り、平均4.51bpとする。資産連動売上のほか小規模なライセンスも含むため厳密な受託報酬率ではない。2025年末の対象は約29.8万プラン、230万人の管理勘定参加者。受託責任はAI単体に置換されず、事務部分のAI効率化は価格の低下として折り込む。
Sustainalytics(ESGデータ)
ESGリスク評価、気候データと企業調査のライセンス。
| 数量データ利用契約の実質指数(2025年=100) | 価格1指数単位の年間料金(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:会社開示の2025年売上1.120億ドル、ライセンス更新率93%。実際の契約件数は未公表なので100指数。ESGデータは独自の評価履歴があるが政策依存も強く、2026年にセカンドパーティ・オピニオンから撤退。AIエージェント代替の情報サービス型に従い、中立数量0.85、価格1.15を超えさせない。
Morningstar Indexes
株式や債券指数の使用料と、連動資産に対する報酬。
| 数量実効指数ライセンス・連動資産の実質指数(2025年=100) | 価格指数ライセンス指数あたり年間料金(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 200 | 0.01 | 2 | 1 |
取り方:2025年売上0.877億ドル。連動資産は2025年の正確な通年末値が未公表なので、2025年6月約2210億ドルの開示を物差しに、料率差を補正した実効ライセンス指数を100とした。2026年2月CRSPを約3.65億ドルで取得し、6月には約3.3兆ドルのCRSP連動資産が加わった。低料率のバンガード等は数量に単純合算せず、実効指数を増やして価格は別に表す。AIエージェント代替の席型に該当しない。
リスクと懸念
AIエージェント代替と席課金の解体
DirectとPitchBookの中核は、分析・比較・調査のための席契約である。外部AIがデータ源を呼び出して報告書まで作れば、同じ人数が必要とする契約席は減る。2025年に席数の伸びは止まり、2026年上期も改善していない。Direct AIの提供自体は好材料だが、追加売上の開示はない。契約更新率だけを根拠に現在の単価上昇を延長できない。
原データの独自性と価格の低下
Morningstarの投資商品データ、PitchBookの非公開取引情報には蓄積の価値がある。しかしブルームバーグ、LSEG、ファクトセット、ブラックロック傘下のプレキンがAI向けデータ流通を競い、企業顧客が契約を統合する可能性が高い。直接データ契約を守れても、販売用途を狭められれば数量と価格の両方が下がる。データ更新の費用は残る。
信用格付けの発行循環と寡占
DBRSの売上は主に債券の発行に伴う取引手数料で決まる。2026年上期の高成長は米国の証券化市場と社債発行が好調だった影響を含み、10年間持続する保証はない。S&Pグローバルとムーディーズの寡占、フィッチやKBRAとの競争、格付けの品質問題や規制措置で発行体からの選択が減れば、積み上げた格付け件数は収益に変わらない。
CRSPの買収対価と指数手数料
2026年2月のCRSP取得は約3.65億ドルの投資で、連動資産3兆ドル超という見栄えのよい規模を得た。しかしバンガードを含む大口の低コスト商品は料率が低く、指数を使う資産の増加は売上と比例しない。競合するMSCI、FTSEラッセル、S&Pダウ・ジョーンズが値下げすれば、のれんを回収する追加収入が得られない恐れがある。
借金、自社株買い、株式報酬
2025年の自社株買い7.9億ドルは自由現金収支4.4億ドルを大きく超え、純負債は約7.3億ドルまで増えた。さらに2026年上期も4億ドルを買い戻し、CRSPも取得した。借換金利5%台の環境で負債と買戻しを同時に拡大すれば、信用格付けや製品開発への再投資余力が細る。株式報酬の希薄化分を差し引かない還元総額は過大評価になる。
ESG規制、検索流入、データ品質
Sustainalyticsの収入更新率は93%で、2026年にはセカンドパーティ・オピニオン製品から撤退した。ESGの法規制が弱まれば、残った格付け・気候情報も解約される。一般向けの調査記事はAI検索の要約によって流入が減る恐れがある。格付けやデータの重大な誤りが出れば、独立性という会社の評判と長年の顧客関係を同時に失う。
今後の分かれ目
- PitchBookの席数が前年同期比で5%以上減る四半期が続き、収入更新率も100%を割ったら
- AIエージェント代替が会社の売上に現れたとみなし、席課金の実質数量を中立0.78倍より下げ、やや悲観の確率を増やす。
- DirectとPitchBookのAPI・包括契約の増収額が席契約の減収を2年以上上回り、開示されたら
- 独自データの収益化が示されたと判断し、記録の正本型の数量と売上比率を引き上げ、楽観寄りの確率を増やす。
- DBRSの格付証券数と年間の信用格付売上が発行市況の悪い年でも増えたら
- 第四の格付機関としてシェアを獲得した証拠になる。中立の格付数量を増やすが、利率と単価を分けて再評価する。
- CRSP買収後のMorningstar Indexes売上が取得前比で2倍を超え、営業利益率が改善したら
- 連動資産の規模が実際のキャッシュ収益になった証拠として、指数の数量と利益率を引き上げる。
- 売上が伸びない中でも自社株買いが年の自由現金収支を継続して上回ったら
- 借金で買戻しを続けるリスクとし、将来の正味還元を引き下げ、自己資本と資金調達の持続可能性を再検討する。
- 米国の退職口座の受託資産が流出に転じ、契約先の内製化が広がったら
- 受託者業務の堀が弱まったと判断し、Retirementの実質数量と利益率を下げ、悲観側の比重を増す。
見ておくもの
- Directの有料席数、席単価、AI機能の有料契約化と直接データ契約の増収額
- PitchBookの有料席数と年間収入更新率、企業顧客の解約率、API売上
- DBRSの新規発行格付け件数と信用格付収入、世界格付市場に対するシェア
- CRSP統合後の指数連動資産と、指数事業の実際の売上・利益
- RetirementとWealthの純流入、実質運用資産、報酬率
- GAAP営業利益率と株式報酬費用、FCF、純有利子負債、買い戻し残枠
- Sustainalyticsの更新率とESG規制、創業者の保有比率の変化
倍率と資本コストの決め方
2025年の事業別の数量と価格から2035年の売上、利益、正味還元を先に積み上げた。2026年2月に成立したCRSP取得は指数の数量へ反映し、第三四半期は10月28日の米国市場引け後公表予定のため7〜9月期の未公表数字を使わない。資本コストはβを使わず8.0%。AIエージェント代替は席数と単価、長期g2.0%にだけ織り込み、寿命の上乗せと悲観確率に機械的な二重計上はしていない。倍率はROE、RONIC、g、kの式から求め、GAAP純利益にSBCや買収償却を足し戻していない。10年後の自己資本はFY2025の12.2億ドルに利益累計を加え、正味還元を引く。悲観の床には将来積み上がった自己資本を用いない。ASC842のリース約束も純現金と見なさない。算出した価値を現在の株価に合わせて動かしていない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国共通の基本8.0%+事業の質0.0%=8.0%。市場β、足元や同業の株価倍率は用いない。存続が危うい財務状況ではないのでextraも0とする。