結論
加藤産業は、メーカーから食品と酒を仕入れ、スーパーやドラッグストアに届ける総合食品卸である。売上は 1 兆 2,000 億円を超え、国内の食品卸では 4 番手にあたる。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正というものだ。事業は堅く、財務も厚い。ただ、卸の利益率は 1.5% しかなく、人口が減る国内で伸びる余地も限られる。
強みは物流と提案営業だ。全国の拠点から少量を何度も届け、売れ筋のデータを小売に示す。この積み重ねで、営業利益は 10 年で 2 倍になった。
安心材料は現金である。純現金は 660 億円と、時価総額の 3 割を占める。ここ数年は自社株買いと増配で、利益の多くを株主に戻している。
気になるのは先の 2 年だ。会社は営業利益を 175 億円と、今期・来期とも横ばいから微減で見ている。酒類が細り、物流費が増えるためである。10 年後の営業利益は、中立で 240 億円ほどと見る。強気で 350 億円、慎重なら 100 億円を割る。分かれ目は、メーカーと小売が卸を通さずに取引する流れが強まるかどうかにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社の事業は分かりやすい。食品と酒を、メーカーから小売へ運ぶだけの仕事である。人が食べる限り、事業は残る。ただし、儲けは薄い。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益に近い。工場や店舗への大きな投資は要らず、設備投資は物流センターが中心だ。利益の多くは現金になり、株主に戻る。
堀は深くない。物流と提案営業は、続けるほど強くなるが、大手 3 社も同じことをしている。小売や仕入先が卸を通さない流れが強まれば、一気に価値が下がりうる。
経営の資本の使い方は評価できる。配当性向を上げ、自社株買いを続けている。国内で大型の買収に走ることもない。
安全域を見ると、薄い。今の値段は、中立の筋書きとほぼ釣り合う。割安とまでは言えないが、割高でもない。堅い事業を適正に近い値段で持つ、というのが筆者の見立てだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの本体は常温流通で、売上の 6 割、営業利益の 8 割を占める。常温の加工食品、調味料、菓子、飲料を、メーカーから仕入れて小売に届ける。販売先はスーパーが中心で、ディスカウント店、ドラッグストア、コンビニもある。
卸の儲けは薄い。常温流通の営業利益率は 1.9% である。売上 100 億円につき、残る利益は 1.9 億円ほどだ。それでも利益が出るのは、物流の効率と、仕入先から受け取る販売協力金があるからだ。
次に大きいのが酒類流通で、売上は 2,500 億円ほど。ただ利益率は 0.6% と低く、前期の営業利益は 17% 減った。飲む人が減り、若い世代の酒離れも進んでいるためだ。
低温流通は冷凍食品とチルド商品を扱い、売上は 1,200 億円。海外は中国・ベトナム・シンガポール・マレーシアで食品卸を営み、売上は 960 億円に育ったが、利益は 2 億円にとどまる。のれんの償却を引くと、ほぼ収支とんとんである。
ほかに、自社ブランド「カンピー」の缶詰・ジャムと、グループ内の食品製造、物流の受託がある。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、物流と小売との距離の近さだ。全国の拠点網で、多品種を小口で何度も届ける。さらに、店ごとの売れ筋データを分析し、売場の提案までする。小売からすれば、取引を切りにくい。
ただし、堀は深くない。同じことをできる大手が 3 社ある。日本アクセス、三菱食品、国分である。この 3 社はそれぞれ 2 兆円規模で、物流の投資力は上だ。加藤産業は規模では 4 番手で、地方と中堅スーパーに強みを持つ。
利益率は 1.5% と低く、わずかな変化で利益が動く。販売協力金が 1 割削られれば、営業利益は大きく減る。逆に、提案営業が実れば、この 10 年のように利益率は少しずつ上がる。
資本効率は低めである。ROE は 7〜9% で、純現金が厚い分、数字が薄まっている。
経営は 2003 年から加藤和弥社長が率いる。社長は名誉会長の加藤武雄氏の長男だ。長く同じ人が見ており、方針は安定している。自己株式が発行済みの 14% を占める点は、株主を意識した資本政策の表れと言える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
舞台は国内の食品卸である。市場は人口とともに細る。食べる量は 10 年で 1 割弱減り、酒の量は 1 割強減る見込みだ。金額は物価の分だけ増えるが、量は伸びない成熟市場である。
この市場の構造は、大手による集約が進んでいる。日本アクセス、三菱食品、国分が 2 兆円前後で並び、加藤産業が 1 兆円強で続く。そのあとに伊藤忠食品、トーホー、ヤマエなどが並ぶ。小さな卸は、物流費と人件費の上昇に耐えにくく、再編の対象になる。
小売側の力も強い。イオンやセブン&アイのような大手は、価格とリベートの条件を厳しくし、自前の物流を持つ動きもある。卸が受け持つ機能は、少しずつ小売に近づく。
一方で、追い風もある。働き手が減ると、メーカーも小売も物流を外に任せたくなる。共同配送や在庫の一括管理は、規模のある卸の仕事になる。冷凍食品は、共働きの増加で需要が底堅い。
10 年後に卸の数は減っているだろう。生き残る卸は、物流と提案営業で選ばれた側である。加藤産業は、規模で上の 3 社に及ばない代わりに、地方の中堅スーパーとの距離の近さで戦う。この立ち位置が保てるかが、利益の行方を決める。
資本政策と M&A
資本政策は、株主を向いている。累進配当を掲げ、増配の幅に上限を設けながら毎年増やし、配当性向を 40% まで段階的に引き上げる。2026 年 9 月期の配当性向は 34% ほどになる予定だ。
自社株買いも続く。2024 年は 90 億円ほどを買い、2026 年にも 60 億円ほどを取得した。株数は 3,360 万株から 3,020 万株へ、3 年ほどで 1 割減った。自己株式は発行済みの 14% にのぼる。
筆者は、この還元の姿勢を評価する。純現金が時価総額の 3 割あっても、貯め込まず、利益と同じ規模を戻している。
大株主は信託銀行が 9.7%、三井物産が 4.5%で、加藤興産、三菱商事、キユーピー、ハウス食品、カゴメなどの食品メーカー・商社が並ぶ。仕入先が株主なので、取引の安定には役立つ。一方で、買収の対象になる可能性は小さい。
M&A は海外の現地企業の取り込みが中心である。国内での大型の再編に動くかが、先の焦点だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
食品卸は、集約が続く業界だ。小さな卸は物流費と人手不足に耐えられず、加藤産業のような中堅が地方の卸や物流を引き受ける機会が増える。規模が増えれば、仕入先からの協賛金と物流の効率が同時に上がる。
この 10 年を見れば、営業利益は 90 億円から 182 億円へ 2 倍になった。売上の増え方より、利益の増え方のほうが速い。提案営業と物流の効率化が実を結んでいる証拠だ。
財務はきわめて堅い。純現金は 660 億円で、借金に頼らずに投資できる。金利が上がる世界では、この現金の受取利息が毎年の利益を押し上げる。
株主還元も強い。累進配当で配当性向は 40% へ向かい、自社株買いも続く。株数は 3 年で 1 割減った。ROE は低めだが、これは現金の厚さによる面が大きく、還元が進めば自然に上がる。
海外は売上 960 億円に育ち、のれんを引いても黒字だ。アジアの食品市場は人口が増える国が多く、日本の縮む市場を補う成長の芽になる。
慎重な見方
卸の構造は、じわじわ弱くなっている。メーカーは大手小売と直接取引を増やし、小売は自前の物流を持つ。物流費と人件費が上がるなか、卸が運ぶ価値を示し続けるのは難しい。
利益率は 1.5% と極端に低い。販売協力金が少し減るだけで、営業利益は大きく動く。会社自身が、今期・来期の営業利益を 175 億円と、前年より減る見通しで出している。
酒類流通は、飲酒人口の減少で細っている。前期の営業利益は 17% 減り、売上の 2 割を占める部門が足を引っ張る。海外は売上 960 億円に対し、営業利益は 2 億円とほぼゼロだ。成長の芽と呼ぶには利益が出ていない。
大手 3 社は、物流の投資力で上をいく。日本アクセス、三菱食品、国分の統合や提携が進めば、加藤産業は 4 番手として厳しい競争を強いられる。
ROE は 8% 前後にとどまる。純現金が厚いのは、使い道が乏しいことの裏返しとも読める。10 年で大きな成長を描く材料は見当たらない。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと還元の姿勢では、強気の言い分が正しい。ただ、成長の源泉が乏しい点では、慎重な見方が強い。利益率 1.5% の卸が、10 年で利益を 2 倍にできた時代は終わりに近い。
確率は、中立に最も厚く置いた。強気側に 27%、慎重側に 33% と、やや慎重側に寄せた。卸の構造的な弱さが、強気の再編シナリオより起こりやすいと見たためである。結果として、本質価値は今の値段のおおむね範囲内に収まる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 10,741 円3,242 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,754 円1,133 億円)。 今の値に割り戻すと 7,980 円2,408 億円、今との差 +16.0%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 17,398 円5,251 億円 | 4,499 円1,358 億円 | +218.3% | +12.3% | 1,533 円463 億円 |
| やや楽観 | 20% | 14,222 円4,293 億円 | 4,115 円1,242 億円 | +166.5% | +10.3% | 3,667 円1,107 億円 |
| 中立 | 40% | 11,891 円3,589 億円 | 3,876 円1,170 億円 | +129.2% | +8.6% | 6,307 円1,904 億円 |
| やや悲観 | 23% | 6,518 円1,967 億円 | 3,360 円1,014 億円 | +43.6% | +3.7% | 2,272 円686 億円 |
| 悲観 | 10% | 4,233 円1,278 億円 | 2,929 円884 億円 | +4.1% | +0.4% | 716 円216 億円 |
| 加重平均 | 100% | 10,741 円3,242 億円 | 3,754 円1,133 億円 | +110.7% | +7.7% | 14,495 円4,375 億円 |
今の株価時価総額 6,880 円2,077 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 再編の受け皿になり、シェアと利益率がともに上がる 利益 256 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 17,398 円5,251 億円
卸の再編が進み、加藤産業が地方の中堅卸や物流を引き受ける側に回る。常温流通のシェアは 5% 近くまで上がり、提案営業の成果が仕入先の協賛金に反映されて、利益率は 2% を超える。低温流通は冷凍食品の伸びに乗り、海外はアジアの現地卸との提携で黒字が厚くなる。営業利益は 350 億円ほどまで伸びる。配当性向は 40% に近づき、自社株買いも続く。手元の現金が事業の拡大に使われ、資本効率は 11% 台まで上がる。三井物産や三菱商事など商社の株主と組んだ海外展開も進む。食品卸が 3〜4 社に集約される姿の中で、規模を持つ 4 番手として存在感を保つ。
- 常温流通:数量 4.7(常温加工食品の卸市場(約 18 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 136.0%(価格指数(仕入価格+配送マージンの名目。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 1,800 億円)→ 売上 11,395 億円・営業利益 239 億円。シェア 4.9% × 市場 0.95 倍(実質)× 価格 1.36 倍、営業利益率 2.10%
- 低温流通:数量 2.5(冷凍・チルド食品の卸市場(約 7 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 136.0%(価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 700 億円)→ 売上 2,399 億円・営業利益 34 億円。シェア 2.4% × 市場 1.05 倍(実質)× 価格 1.36 倍、営業利益率 1.40%
- 酒類流通:数量 3.2(酒類卸の市場(約 8 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 136.0%(価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 800 億円)→ 売上 3,525 億円・営業利益 26 億円。シェア 3.6% × 市場 0.9 倍(実質)× 価格 1.36 倍、営業利益率 0.75%
- 海外事業:数量 13.5(対象国の輸入・日系食品の流通市場(約 1.5 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 132.0%(価格指数(為替は 150 円で固定、現地の物価の差を含む。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 150 億円)→ 売上 2,673 億円・営業利益 37 億円。シェア 9.0% × 市場 1.5 倍(実質)× 価格 1.32 倍、営業利益率 1.40%
倍率:事業の純利益 251 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)350 億円。全体の PER 18.02 倍、時価総額 4,875 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:7% 程度。再編で取引先を増やし、低温と海外も黒字を厚くする姿。卸の利益率は 10 年で大きく上がりにくいため、確率は低めにとどめた。
やや楽観 20% 提案営業と低温・海外が育ち、利益率がじわり上がる 利益 213 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 14,222 円4,293 億円
提案営業が引き続き効き、スーパーやドラッグストアとの取引が広がる。常温流通のシェアは 4.6% に上がり、利益率は 2% 近くを保つ。冷凍食品の需要は共働き世帯の増加で底堅く、低温流通は 2 割ほどシェアを伸ばす。海外は中国とベトナムで黒字が定着する。営業利益は 285 億円ほどで、この 10 年の増え方に近い。配当性向は 40% へ段階的に上がり、自社株買いも適度に続く。酒類は飲酒人口の減少で細るが、全体の利益を壊すほどではない。会社が 10 年かけて築いた小売との関係が、そのまま利益に表れる姿である。海外も黒字が定着し、全体の安定感が増す。
- 常温流通:数量 4.3(常温加工食品の卸市場(約 18 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 135.0%(価格指数(仕入価格+配送マージンの名目。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 1,800 億円)→ 売上 10,507 億円・営業利益 208 億円。シェア 4.6% × 市場 0.94 倍(実質)× 価格 1.35 倍、営業利益率 1.98%
- 低温流通:数量 2.1(冷凍・チルド食品の卸市場(約 7 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 135.0%(価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 700 億円)→ 売上 2,024 億円・営業利益 26 億円。シェア 2.1% × 市場 1.02 倍(実質)× 価格 1.35 倍、営業利益率 1.28%
- 酒類流通:数量 3.1(酒類卸の市場(約 8 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 135.0%(価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 800 億円)→ 売上 3,317 億円・営業利益 23 億円。シェア 3.45% × 市場 0.89 倍(実質)× 価格 1.35 倍、営業利益率 0.68%
- 海外事業:数量 11.1(対象国の輸入・日系食品の流通市場(約 1.5 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 131.0%(価格指数(為替は 150 円で固定、現地の物価の差を含む。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 150 億円)→ 売上 2,176 億円・営業利益 22 億円。シェア 7.8% × 市場 1.42 倍(実質)× 価格 1.31 倍、営業利益率 1.00%
倍率:事業の純利益 208 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)350 億円。全体の PER 17.09 倍、時価総額 3,906 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:20% 程度。この 10 年の流れ(売上と利益の着実な増加、増配)が続く姿。実績に近いので中立に次ぐ厚みで置いた。
中立 40% 量は細るが物価の分だけ伸び、利益率は今の水準を保つ 利益 180 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 11,891 円3,589 億円
人口の減少で食べる量は細る。それでも金額は物価の分だけ伸び、売上は 1 兆 6,000 億円台に乗る。常温流通は新規の取引先とデータを使った提案で、シェアを少しだけ上げる。利益率は今の 1.9% からわずかに下がる程度に収まる。酒類は量が 1 割ほど細り、利益率も下がる。海外は黒字が少しずつ育つが、まだ小さい。営業利益は 240 億円ほどになる。累進配当と自社株買いで、利益の 75% ほどが株主に戻る。会社が予想する 2 年先の営業利益は横ばいで、強気の増益は見込んでいない。派手さはないが、10 年たっても食品の流通を担う堅い事業である。
- 常温流通:数量 4.0(常温加工食品の卸市場(約 18 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 134.0%(価格指数(仕入価格+配送マージンの名目。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 1,800 億円)→ 売上 9,757 億円・営業利益 181 億円。シェア 4.35% × 市場 0.93 倍(実質)× 価格 1.34 倍、営業利益率 1.85%
- 低温流通:数量 1.9(冷凍・チルド食品の卸市場(約 7 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 134.0%(価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 700 億円)→ 売上 1,735 億円・営業利益 20 億円。シェア 1.85% × 市場 1.0 倍(実質)× 価格 1.34 倍、営業利益率 1.15%
- 酒類流通:数量 2.9(酒類卸の市場(約 8 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 134.0%(価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 800 億円)→ 売上 3,113 億円・営業利益 19 億円。シェア 3.3% × 市場 0.88 倍(実質)× 価格 1.34 倍、営業利益率 0.60%
- 海外事業:数量 9.5(対象国の輸入・日系食品の流通市場(約 1.5 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 130.0%(価格指数(為替は 150 円で固定、現地の物価の差を含む。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 150 億円)→ 売上 1,843 億円・営業利益 13 億円。シェア 7.0% × 市場 1.35 倍(実質)× 価格 1.3 倍、営業利益率 0.70%
倍率:事業の純利益 175 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)350 億円。全体の PER 16.24 倍、時価総額 3,194 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:40% で最も厚く置いた。人口減で量は細り、物価と提案営業の分で金額が伸びる姿。会社自身が 2 年先まで営業利益を横ばいと見ている点も織り込んだ。
やや悲観 23% 大手に押され、リベートと物流費で利益率が削られる 利益 128 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 6,518 円1,967 億円
小売の再編が進み、大手の小売は価格とリベートの条件を厳しくする。物流費と人件費は物価以上に上がり、卸が負担する分が増える。常温流通のシェアは 4% 前後に戻り、利益率は 1.5% 台に下がる。冷凍・チルドは、日本アクセスのような専業の大手との競争で伸びない。海外ののれん償却が重く、利益に貢献しない。営業利益は 170 億円ほどと、今とほぼ同じ水準にとどまる。減配はしないが、増配の余地は小さくなる。卸が持つ在庫と配送の機能に、小売側が自前の物流で近づく動きも出てくる。堅いが伸びない事業として評価される姿だ。株主還元は続くが、成長で報いる余地は小さい。
- 常温流通:数量 3.7(常温加工食品の卸市場(約 18 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 132.0%(価格指数(仕入価格+配送マージンの名目。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 1,800 億円)→ 売上 8,744 億円・営業利益 136 億円。シェア 4.0% × 市場 0.92 倍(実質)× 価格 1.32 倍、営業利益率 1.55%
- 低温流通:数量 1.6(冷凍・チルド食品の卸市場(約 7 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 132.0%(価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 700 億円)→ 売上 1,494 億円・営業利益 13 億円。シェア 1.65% × 市場 0.98 倍(実質)× 価格 1.32 倍、営業利益率 0.90%
- 酒類流通:数量 2.6(酒類卸の市場(約 8 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 132.0%(価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 800 億円)→ 売上 2,724 億円・営業利益 11 億円。シェア 3.0% × 市場 0.86 倍(実質)× 価格 1.32 倍、営業利益率 0.40%
- 海外事業:数量 7.5(対象国の輸入・日系食品の流通市場(約 1.5 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 128.0%(価格指数(為替は 150 円で固定、現地の物価の差を含む。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 150 億円)→ 売上 1,440 億円・営業利益 3 億円。シェア 6.0% × 市場 1.25 倍(実質)× 価格 1.28 倍、営業利益率 0.20%
倍率:事業の純利益 124 億円・事業 ROE 7.3% は k 7.25% 以下なので、上限は 1÷k=13.3 倍。競争に押されて利益率が削られる筋書きのため、その約 75% の 10.0 倍に置いた。
確率:23% 程度。小売の価格交渉と物流費の上昇で、卸の取り分が少しずつ削られる姿。卸業界の歴史に近く、強気側より厚く置いた。
悲観 10% 取引が外へ抜け、卸としての存在感を失う 利益 76 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 4,233 円1,278 億円
メーカーと大手小売が直接取引を増やし、卸を通さない流れが進む。三菱食品や日本アクセスなど大手は物流の統合で効率を高め、加藤産業はシェアを失う。常温流通のシェアは 3.5% に下がり、利益率は 1.2% まで落ちる。酒類は赤字に近づき、海外は損失で撤退も検討される。営業利益は 100 億円を割る。減配は避けても、配当性向は上がる。株主は高い配当性向を維持しようとして、手元の現金を使い続ける。10 年たっても倒産の恐れは小さいが、事業の価値は大きく落ちる。卸という業態が構造的に縮む筋書きである。会社の強みだった提案営業も、取引量が減れば成果を出しにくくなる。
- 常温流通:数量 3.2(常温加工食品の卸市場(約 18 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 130.0%(価格指数(仕入価格+配送マージンの名目。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 1,800 億円)→ 売上 7,371 億円・営業利益 89 億円。シェア 3.5% × 市場 0.9 倍(実質)× 価格 1.3 倍、営業利益率 1.20%
- 低温流通:数量 1.3(冷凍・チルド食品の卸市場(約 7 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 130.0%(価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 700 億円)→ 売上 1,210 億円・営業利益 7 億円。シェア 1.4% × 市場 0.95 倍(実質)× 価格 1.3 倍、営業利益率 0.60%
- 酒類流通:数量 2.2(酒類卸の市場(約 8 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 130.0%(価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 800 億円)→ 売上 2,271 億円・営業利益 3 億円。シェア 2.6% × 市場 0.84 倍(実質)× 価格 1.3 倍、営業利益率 0.15%
- 海外事業:数量 5.5(対象国の輸入・日系食品の流通市場(約 1.5 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1))× 価格 125.0%(価格指数(為替は 150 円で固定、現地の物価の差を含む。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 150 億円)→ 売上 1,031 億円・営業利益 −5 億円。シェア 5.0% × 市場 1.1 倍(実質)× 価格 1.25 倍、営業利益率 -0.50%
倍率:事業の純利益 74 億円・事業 ROE 4.4% は k 7.25% 以下なので、上限は 1÷k=13.3 倍。構造的に負けて稼ぐ力が資本コストを大きく下回る筋書きのため、その約 64% の 8.5 倍に置いた。
確率:10% 程度。メーカーと小売の直接取引、大手卸との物流統合に負けてシェアを落とす構造的な負け。低採算の卸で、10 年先の事業環境の不確かさを考え 1 割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
常温流通
加工食品・調味料・菓子・飲料を、メーカーから仕入れてスーパーなどに届ける中核事業。
| 数量常温加工食品の卸市場(約 18 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1) | 価格価格指数(仕入価格+配送マージンの名目。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 1,800 億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 4.1 | 100.0% | 7,417 | 144 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 134.0% | 9,757 | 181 |
取り方:常温の加工食品・菓子・飲料の卸経由の流通額を約 18 兆円(日本アクセス・三菱食品・国分の売上と加藤産業の常温流通から逆算した推定)とみて、売上 7,417 億円を割ると約 4.1%。数量はシェア × 市場の実質の大きさ、物価の分は価格に入れた。
低温流通
冷凍食品・チルド商品の卸。共働きの増加で需要は底堅い。
| 数量冷凍・チルド食品の卸市場(約 7 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1) | 価格価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 700 億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1.7 | 100.0% | 1,179 | 13 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 134.0% | 1,735 | 20 |
取り方:冷凍・チルド食品の卸経由の流通額を約 7 兆円と推定(日本アクセスの低温が約 1 兆円強)。売上 1,179 億円を割ると約 1.7%。
酒類流通
ビール・日本酒・ワイン・洋酒などの卸。酒税を含む売上で、利益率は低い。
| 数量酒類卸の市場(約 8 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1) | 価格価格指数(今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 800 億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 3.2 | 100.0% | 2,547 | 16 |
| 10 年後 中立 | 2.9 | 134.0% | 3,113 | 19 |
取り方:酒類卸の市場を約 8 兆円(酒税込み・推定)とみて、売上 2,547 億円を割ると約 3.2%。飲酒人口の減少で市場の量は縮む。
海外事業
中国・ベトナム・シンガポール・マレーシアの現地食品卸。のれんの償却後の利益は小さい。
| 数量対象国の輸入・日系食品の流通市場(約 1.5 兆円・実質)に占めるシェア(%)× 市場の実質の大きさ(今=1) | 価格価格指数(為替は 150 円で固定、現地の物価の差を含む。今=1.00)。1% のシェアは今の値段で約 150 億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 6.4 | 100.0% | 957 | 2 |
| 10 年後 中立 | 9.5 | 130.0% | 1,843 | 13 |
取り方:対象国の輸入・日系食品の流通市場は開示がなく、約 1.5 兆円と置いた粗い推定。売上 957 億円を割ると約 6.4%。数字の精度は低い。利益はのれん償却 4.6 億円を引いた後。 数量は市場の実質の大きさ(1.35 倍)×シェア(買収の取り込み)で、名目の伸びではない。
リスクと懸念
卸を通さない取引の広がり
メーカーと大手小売が直接取引を増やし、小売が自前の物流を持つ動きが進めば、卸の取り分が構造的に減る。大手 3 社は物流の統合で効率を高めており、4 番手の加藤産業は規模の差で不利になりうる。
利益率の薄さ
営業利益率は 1.5% で、売上の 1% の変化が利益の 6 割に響く。仕入先の販売協力金の削減、小売へのリベートの増加、物流費の上昇のどれかで、営業利益は簡単に 1〜2 割動く。会社は 26 年 9 月期・27 年 9 月期の営業利益を 175 億円と、前期より減る見通しで出している。
酒類の縮小
飲酒人口の減少と若年層の酒離れで、酒類の量は細る。2025 年 9 月期の酒類の営業利益は 17% 減り、中間期の営業利益も 7% 減った。売上の 2 割を占めるが、利益は 1 割に満たず、赤字に落ちる年もありうる。
物流費と人手不足
ドライバー不足で運賃は上がる。卸は小口の配送を何度も行うため、影響を受けやすい。値上げを小売に転嫁できなければ、利益が削られる。物流の自動化への投資も要る。
海外事業の採算
海外の売上は 960 億円に育ったが、営業利益は 2 億円で、のれん償却を引くと収支とんとんである。中国経済の減速や現地の競争で、のれんの減損が出る恐れがある。
小売の再編と取引先の集中
販売先はスーパーが中心で、大手小売への依存が高まれば、価格交渉力は弱まる。取引先が大手の別の卸に移ると、売上が一度に動く。
資本の使い方
自社株買いと増配は評価できるが、割高な水準で買えば価値を損なう。純現金が減って自己株が増える一方で、成長への投資が小さいことも、先の成長を弱める。
今後の分かれ目
- 中間・本決算で営業利益率が 1.4% を割る期が続いたら
- 販売協力金や物流費の悪化が表れた合図。やや悲観の筋書きに重みを移す。
- 地方の卸や物流会社の買収・提携が発表されたら
- 再編の受け皿になる動き。買収額が稼ぐ力に見合うかを見て、見合うなら強気の筋書きの確率を上げる。
- 酒類流通が赤字に転じたら
- 量の縮小が利益率を割り込んだサイン。酒類の事業の整理が議題になる。
- 大手の小売が卸を通さない取引や自前物流の拡大を打ち出したら
- 卸の機能が小売に近づく動き。慎重な筋書きの確率を上げる。
- 配当性向 40% の目標が前倒しされるか、大きな自社株買いが出たら
- 株主還元がさらに厚くなる合図。同じ利益でも株主に回る分が増え、本質価値は上向く。
- 海外でのれんの減損が出たら
- 海外の事業価値の見直し。海外の成長を織り込んだ強気の筋書きの根拠が弱まる。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益率(常温流通・低温流通・酒類流通別)
- 仕入先の販売協力金と、小売へのリベートの動き
- 酒類流通の営業利益
- 海外事業の営業利益とのれんの償却
- 配当性向と自社株買いの規模、純現金の水準
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益と資本コスト 7.25%(基本 7.5%、quality 合計 0)・長期成長 g 4%から求めた正当化 PER の 9〜10 割に置いた。確率は動かしていない。今の PER や株価に寄せていない。純現金 661 億円のうち 350 億円を余った現金として分け、PER に混ぜず帳簿の値で足した。悲観は事業の稼ぐ力から出し、谷の PBR は使っていない。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえ、新リース会計基準で数字の形が変わる点は、物流センターが自社保有中心とみて影響を軽くみた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.8→18.02 倍・やや楽観 PER 14.8→17.09 倍・中立 PER 14→16.24 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality の合計 0 を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。